サイクル類写像(cycle class map)とは、滑らかな代数多様体 $X$ の余次元 $p$ の代数的サイクル(部分多様体の形式和)にコホモロジー類を対応させる準同型 $\mathrm{cl}\colon CH^p(X)\to H^{2p}(X)$ である。複素数体上では部分多様体の基本類の Poincaré 双対として $H^{2p}(X,\mathbb{Z})$ に、任意の体上では純性により $H^{2p}(X,\mathbb{Z}_\ell(p))$ に値をとり、有理同値・代数的同値で不変で、交叉積をカップ積に写す。複素射影多様体の $p=1$ では第 1 Chern 類で、像は $(1,1)$ 型の整数類の全体、核は $\operatorname{Pic}^0$ である。像が Hodge 類・Galois 不変類を尽くすかを問うのが Hodge 予想・Tate 予想である。
前提知識: Chow環, 代数的サイクル, 特異コホモロジー, Poincaré双対性, エタールコホモロジー, Hodge分解
サイクル類写像は、代数多様体 $X$ の代数的サイクル(部分多様体の整数係数の形式和)に、$X$ のコホモロジー群の元を対応させる写像である。部分多様体という代数幾何の対象を、特異コホモロジーやエタールコホモロジーという位相的・コホモロジー的な対象に写す橋であり、有理同値で不変なので Chow環(Chow 群)$CH^p(X)$ の上で定義される。用いるコホモロジー論に応じて、位相的(Betti)版、$\ell$ 進エタール版、Hodge 版・de Rham 版がある。以下、$X$ は体 $k$ 上の滑らかな準射影多様体、$n=\dim X$ とする。
$X$ の余次元 $p$ の代数的サイクルとは、余次元 $p$ の既約な閉部分多様体 $Z\subset X$ の有限個の整数係数の形式和 $\alpha=\sum_i n_i[Z_i]$ のことをいい、その全体のなす自由アーベル群を $Z^p(X)$ と書く。余次元 $p-1$ の既約閉部分多様体 $W$ と $W$ の有理関数 $r\in k(W)^\times$ に対して、$r$ の因子 $[\operatorname{div}(r)]\in Z^p(X)$($W$ の余次元 1 の部分多様体に沿う $r$ の位数を係数とするサイクル)を考え、このような $[\operatorname{div}(r)]$ の全体が生成する部分群を $\operatorname{Rat}^p(X)$ とする。商群
$$
CH^p(X):=Z^p(X)/\operatorname{Rat}^p(X)
$$
を $X$ の余次元 $p$ の Chow 群という。$\operatorname{Rat}^p(X)$ に属するサイクルを有理同値で $0$ であるという。
位数の定義や $CH^*(X)=\bigoplus_pCH^p(X)$ の環構造(交叉積)については Chow環 を参照する。本記事で使うのは、$X$ が滑らかなので Weil因子と Cartier因子が一致し $CH^1(X)\cong\operatorname{Pic}(X)$(Picard群)であること、および有理同値の次の言い換えである(Ful98 Proposition 1.6)。$\alpha\in Z^p(X)$ が有理同値で $0$ であることと、$X\times\mathbb{P}^1$ の余次元 $p$ の既約閉部分多様体 $V_1,\dots,V_m$ で、どのファイバー $X\times\{t\}$ にも含まれないものがあって
$$
\alpha=\sum_{j=1}^m\bigl([V_j(0)]-[V_j(\infty)]\bigr)
$$
となることとは同値である。ここで $[V(t)]$ は、交叉 $V\cap(X\times\{t\})$ の各既約成分にスキーム論的な重複度(交叉重複度)を付けたサイクル(交叉サイクル $V\cdot(X\times\{t\})$)を、同型 $X\times\{t\}\cong X$ で $X$ に移したものである。
$k=\mathbb{C}$ とする。$X$ の複素点の集合に通常の位相を入れた $X^{\mathrm{an}}$ は複素 $n$ 次元(実 $2n$ 次元)の複素多様体であり、複素構造から定まる標準的な向きをもつ。位相的なサイクル類は、部分多様体の基本類を Poincaré双対性によってコホモロジーへ移して定める。$X$ がコンパクトでない場合も扱うため、Borel–Mooreホモロジー $H^{\mathrm{BM}}_i(Y,\mathbb{Z})$(局所有限な鎖のホモロジー。$Y$ がコンパクトなら通常の特異ホモロジーに一致する)を用い、次の事実を引用する(Ful98 §19.1、Voi02 §11.1、GH78 Chapter 0 §2・§4):(a)閉集合 $C\subset Y$ と $U=Y\setminus C$ について長完全列 $\cdots\to H^{\mathrm{BM}}_i(C)\to H^{\mathrm{BM}}_i(Y)\to H^{\mathrm{BM}}_i(U)\to H^{\mathrm{BM}}_{i-1}(C)\to\cdots$ がある;(b)複素次元 $\le m$ の複素代数多様体 $Y$ では $i>2m$ で $H^{\mathrm{BM}}_i(Y)=0$;(c)連結(連結空間)で向き付けられた $m$ 次元位相多様体 $M$ では $H^{\mathrm{BM}}_m(M,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ で、向きが生成元(基本類 $[M]$)を定め、基本類との cap 積(キャップ積)が Poincaré 双対性の同型 $H^{i}(M,\mathbb{Z})\cong H^{\mathrm{BM}}_{m-i}(M,\mathbb{Z})$ を与える;(d)既約な複素代数多様体 $Z$ の滑らかな点の集合 $Z_{\mathrm{reg}}$ は通常の位相で連結である。
$Z\subset X$ を余次元 $p$ の既約閉部分多様体、$d:=n-p$ とする。このとき制限写像 $H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z,\mathbb{Z})\to H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z_{\mathrm{reg}},\mathbb{Z})$ は同型であり、したがって $H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ である。$Z_{\mathrm{reg}}$(複素構造による向きをもつ連結な $2d$ 次元多様体)の基本類に対応する元を $Z$ の基本類 $[Z]\in H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z,\mathbb{Z})$ という。
$Z_{\mathrm{sing}}:=Z\setminus Z_{\mathrm{reg}}$ は $Z$ の真の閉部分集合であり、$Z$ が既約なので $\dim_{\mathbb{C}}Z_{\mathrm{sing}}\le d-1$ である。閉集合 $Z_{\mathrm{sing}}\subset Z$ とその補集合 $Z_{\mathrm{reg}}$ に対する Borel–Moore ホモロジーの長完全列
$$
H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z_{\mathrm{sing}})\to H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z)\to H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z_{\mathrm{reg}})\to H^{\mathrm{BM}}_{2d-1}(Z_{\mathrm{sing}})
$$
において、両端は次元の理由($2d>2(d-1)$ かつ $2d-1>2(d-1)$)で $0$ である。よって中央の制限写像は同型である。$Z_{\mathrm{reg}}$ は連結で向き付けられた $2d$ 次元多様体だから $H^{\mathrm{BM}}_{2d}(Z_{\mathrm{reg}})\cong\mathbb{Z}$ であり、向きの定める基本類 $[Z_{\mathrm{reg}}]$ が生成元である。その同型による逆像が $[Z]$ である。$\square$
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の滑らかな準射影多様体、$n=\dim X$ とする。余次元 $p$ の既約閉部分多様体 $Z$ に対し、閉埋め込み $i\colon Z\to X$(固有射)による基本類の押し出し $i_*[Z]\in H^{\mathrm{BM}}_{2(n-p)}(X,\mathbb{Z})$ を Poincaré 双対性 $H^{2p}(X,\mathbb{Z})\cong H^{\mathrm{BM}}_{2(n-p)}(X,\mathbb{Z})$ で移した元を、$Z$ のサイクル類 $\mathrm{cl}(Z)\in H^{2p}(X,\mathbb{Z})$ という。これを線形に拡張した準同型
$$
\mathrm{cl}\colon Z^p(X)\to H^{2p}(X,\mathbb{Z}),\qquad \sum_i n_i[Z_i]\mapsto\sum_i n_i\,\mathrm{cl}(Z_i)
$$
は有理同値で $0$ のサイクルを $0$ に写し(thm-cycle-class-map-rational)、したがって準同型
$$
\mathrm{cl}\colon CH^p(X)\to H^{2p}(X,\mathbb{Z})
$$
を定める。これを(位相的な、あるいは Betti の)サイクル類写像という。
$\mathbb{Q}$ 係数や $\mathbb{C}$ 係数のサイクル類写像は、係数を拡大して得る。$X$ が射影的(したがってコンパクト)なら Borel–Moore ホモロジーは通常のホモロジーであり、$\mathrm{cl}(Z)$ は「$Z$ の上で積分する」類である。すなわち、$X$ 上の $2(n-p)$ 次の閉微分形式(閉形式)$\alpha$ について
$$
\int_X\mathrm{cl}(Z)\wedge\alpha=\int_{Z_{\mathrm{reg}}}\alpha
$$
が成り立つ(右辺の積分の収束を含めて GH78 Chapter 0 §2、Voi02 §11.1.2)。ここで左辺は $\mathrm{cl}(Z)$ を de Rhamの定理で閉形式の類とみなしている。
$k$ を完全体(一般の体については定義の末尾で述べる)、$\ell$ を標数 $\operatorname{char}k$ と異なる素数とし、エタールコホモロジー、Tate捻り $\mathbb{Z}/\ell^\nu(p)=\mu_{\ell^\nu}^{\otimes p}$、ℓ進コホモロジー $H^i(X,\mathbb{Z}_\ell(p))=\varprojlim_\nu H^i(X,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))$ を用いる。位相的な場合の基本類と Poincaré 双対の役割を果たすのはコホモロジー的純性(純性定理)である。$Z\subset X$ が余次元 $c$ の滑らかな閉部分スキームなら、$Z$ に台をもつコホモロジー(局所コホモロジー)について標準的な同型
$$
H^i_Z(X,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))\cong H^{i-2c}(Z,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p-c))
$$
があり、とくに $i<2c$ では左辺は $0$ である(Mil80 VI §5、SGA4h Cycle §2)。より一般に、余次元 $\ge c$ の任意の閉部分スキーム $Y$ について $i<2c$ で $H^i_Y(X,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))=0$ である(半純性。Mil80 VI §5、余次元フィルトレーション)。
$Z\subset X$ を余次元 $p$ の既約閉部分多様体とし、$Z_{\mathrm{reg}}$ を $Z$ の滑らかな稠密開部分スキーム、$Z_{\mathrm{sing}}=Z\setminus Z_{\mathrm{reg}}$、$X^\circ=X\setminus Z_{\mathrm{sing}}$ とおく。$Z_{\mathrm{sing}}$ の $X$ における余次元は $\ge p+1$ なので、局所コホモロジーの長完全列
$$
H^{2p}_{Z_{\mathrm{sing}}}(X)\to H^{2p}_Z(X)\to H^{2p}_{Z_{\mathrm{reg}}}(X^\circ)\to H^{2p+1}_{Z_{\mathrm{sing}}}(X)
$$
(係数は $\mathbb{Z}/\ell^\nu(p)$)の両端が半純性により消え、制限写像 $H^{2p}_Z(X,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))\to H^{2p}_{Z_{\mathrm{reg}}}(X^\circ,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))$ は同型である。純性により右辺は $H^0(Z_{\mathrm{reg}},\mathbb{Z}/\ell^\nu)$ に等しく、$Z_{\mathrm{reg}}$ は連結なのでこれは $\mathbb{Z}/\ell^\nu$ である。その $1$ に対応する $H^{2p}_Z(X,\mathbb{Z}/\ell^\nu(p))$ の元を、台を忘れる写像 $H^{2p}_Z(X)\to H^{2p}(X)$ で送った元を $\mathrm{cl}_\nu(Z)$ とする。$\nu$ を動かすと両立するので、極限をとって
$$
\mathrm{cl}_\ell(Z)\in H^{2p}(X,\mathbb{Z}_\ell(p))
$$
を得る。線形に拡張した $\mathrm{cl}_\ell\colon Z^p(X)\to H^{2p}(X,\mathbb{Z}_\ell(p))$ は有理同値で不変であり(Mil80 VI §9、SGA4h Cycle §2.3)、$\ell$ 進サイクル類写像
$$
\mathrm{cl}_\ell\colon CH^p(X)\to H^{2p}(X,\mathbb{Z}_\ell(p))
$$
を定める。$k$ が代数閉体でないときは、$X_{\bar k}=X\times_k\bar k$ のコホモロジーに送った $\mathrm{cl}_\ell\colon CH^p(X)\to H^{2p}(X_{\bar k},\mathbb{Z}_\ell(p))$ もサイクル類写像と呼ぶ。$k$ が完全体でないときは既約な $Z$ が滑らかな稠密開部分スキームをもたないことがあるので、$k$ 上のサイクルの類はこの形($X_{\bar k}$ へ引き戻したサイクルの類)で定める。
$k=\mathbb{C}$ のとき、Artinの比較定理による同型 $H^{2p}(X,\mathbb{Z}_\ell(p))\cong H^{2p}(X^{\mathrm{an}},\mathbb{Z})\otimes\mathbb{Z}_\ell$($\mathbb{Z}_\ell(1)$ は $\exp(2\pi i/\ell^\nu)$ により $\mathbb{Z}_\ell$ と同一視する)のもとで、$\mathrm{cl}_\ell$ は位相的なサイクル類写像 $\mathrm{cl}\otimes\mathbb{Z}_\ell$ に一致する(Mil80 VI §9、SGA4h Cycle §2.3)。
$k=\mathbb{C}$、$X$ を滑らかな射影多様体とする。Hodge分解 $H^{2p}(X,\mathbb{C})=\bigoplus_{r+s=2p}H^{r,s}(X)$ に関して、Hodge 類(Hodge類)の群を
$$
\operatorname{Hdg}^{2p}(X):=\{c\in H^{2p}(X,\mathbb{Z})\mid c\text{ の }H^{2p}(X,\mathbb{C})\text{ における像が }H^{p,p}(X)\text{ に属する}\}
$$
とおく。
位相的なサイクル類写像の像は $\operatorname{Hdg}^{2p}(X)$ に含まれる(prop-cycle-class-map-hodge-type)。値域を制限した準同型
$$
\mathrm{cl}\colon CH^p(X)\to\operatorname{Hdg}^{2p}(X)
$$
を Hodge 版のサイクル類写像という。また、$H^{2p}(X,\mathbb{C})$ を $X^{\mathrm{an}}$ の de Rhamコホモロジーとみなし、
$$
\mathrm{cl}_{\mathrm{dR}}(Z):=(2\pi i)^p\,\mathrm{cl}(Z)\in H^{2p}_{\mathrm{dR}}(X^{\mathrm{an}})
$$
とおいたものを de Rham 版のサイクル類という。因子 $(2\pi i)^p$ は Tate 捻り $\mathbb{Z}(p)=(2\pi i)^p\mathbb{Z}\subset\mathbb{C}$ の規約に合わせるためのもので、この正規化のもとで $\mathrm{cl}_{\mathrm{dR}}(Z)$ は、代数的 de Rham コホモロジー $H^{2p}_{\mathrm{dR}}(X/\mathbb{C})$ の中で純代数的に構成される類(Har75 Chapter II §7)に比較同型のもとで一致し、Hodgeフィルトレーションの $F^pH^{2p}_{\mathrm{dR}}$ に属する。
サイクル類写像は「部分多様体を、その上で積分するという操作に置き換える」写像である。余次元 $p$ の部分多様体 $Z$ は、次数 $2(n-p)$ の微分形式を $Z$ の上で積分する線形汎関数を定め、Poincaré 双対性によってそれは $2p$ 次のコホモロジー類である。代数幾何の同値関係(有理同値・代数的同値)は、部分多様体を連続的に動かす操作を含んでいるので、積分の値はその操作で変わらず、サイクル類は Chow 群の上で定まる。逆向きに見れば、サイクル類写像は Chow 群という捉えにくい群を、有限生成アーベル群である $H^{2p}(X,\mathbb{Z})$ に写して測る道具であり、$\operatorname{Pic}$ の場合の Néron–Severi群がその典型である。像がどれだけ大きいか(Hodge 類・Galois 不変類を尽くすか)を問うのが Hodge予想・Tate予想であり、核がどれだけ大きいか(ホモロジー同値と代数的同値の差)を問うのが Griffiths群の理論である。
$X=\mathbb{P}^n_{\mathbb{C}}$(射影空間)とする。Chow環 の記事にある通り $CH^*(\mathbb{P}^n)=\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1})$ であり、$h\in CH^1$ は超平面 $H$ の類、$h^p$ は余次元 $p$ の線形部分空間の類である。一方 $H^*(\mathbb{P}^n,\mathbb{Z})=\mathbb{Z}[\xi]/(\xi^{n+1})$($\xi$ は $H^2(\mathbb{P}^n,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ の生成元)であり、直線 $L\cong\mathbb{P}^1\subset\mathbb{P}^n$ への制限 $H^2(\mathbb{P}^n,\mathbb{Z})\to H^2(L,\mathbb{Z})$ は同型である(Hat02 Theorem 3.12 と胞体分解)。サイクル類写像は環準同型で(thm-cycle-class-map-compatibility)、$\mathrm{cl}(H)=c_1(\mathcal{O}(1))$ である(prop-cycle-class-map-pic)。$\mathcal{O}(1)|_L=\mathcal{O}_L(\text{1 点})$ と $c_1$ の引き戻しとの両立から $\mathrm{cl}(H)|_L=\mathrm{cl}_L(\text{1 点})$ であり、これは ex-cycle-class-map-curve により $H^2(L,\mathbb{Z})$ の生成元である。よって $\mathrm{cl}(H)$ は $H^2(\mathbb{P}^n,\mathbb{Z})$ の生成元であり、$\xi:=\mathrm{cl}(H)$ ととれば
$$
\mathrm{cl}\colon CH^*(\mathbb{P}^n)=\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1})\to\mathbb{Z}[\xi]/(\xi^{n+1})=H^{2*}(\mathbb{P}^n,\mathbb{Z}),\qquad h\mapsto\xi
$$
は環の同型である。とくに $\mathbb{P}^n$ のすべてのコホモロジー類は代数的サイクルの類であり、整数係数の形の Hodge 予想さえ成り立つ。$\ell$ 進版 $\mathrm{cl}_\ell\colon CH^*(\mathbb{P}^n_k)\otimes\mathbb{Z}_\ell\to\bigoplus_pH^{2p}(\mathbb{P}^n_{\bar k},\mathbb{Z}_\ell(p))$ も同型である(Mil80 VI §5)。
$C$ を $\mathbb{C}$ 上の連結で滑らかな射影曲線(コンパクト Riemann面)とする。$C$ は連結な向き付けられた閉 2 次元多様体なので $H_0(C,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ であり、任意の点 $x\in C$ の基本類 $[x]\in H_0(C,\mathbb{Z})$ は同じ生成元である(連結な多様体では任意の 2 点は道で結ばれ、道の境界が 2 点の差なので、2 点は同じホモロジー類を定める)。Poincaré 双対性により $\mathrm{cl}(x)\in H^2(C,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ は点によらない生成元であり、$\int_C\mathrm{cl}(x)=1$ である。したがって 0 サイクル $\alpha=\sum_i n_i[x_i]$ について
$$
\mathrm{cl}(\alpha)=\Bigl(\sum_i n_i\Bigr)\mathrm{cl}(x)=\deg(\alpha)\cdot\mathrm{cl}(x)
$$
であり、$\mathrm{cl}\colon CH^1(C)=\operatorname{Pic}(C)\to H^2(C,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ は次数写像 $\deg$ に一致する。その像は全体(全射)、核は次数 $0$ の因子類の群 $\operatorname{Pic}^0(C)$ である。$C$ の種数を $g$ とすると $\operatorname{Pic}^0(C)$ は $g$ 次元の複素トーラス(Jacobi多様体。アーベル多様体)であり、$g\ge1$ なら $\mathrm{cl}$ は単射でない。$C=\mathbb{P}^1$ では $\operatorname{Pic}^0=0$ で $\mathrm{cl}$ は同型である。
$E$ を $\mathbb{C}$ 上の楕円曲線、$O$ をその原点、$P\ne O$ を点とする。0 サイクル $\alpha=[P]-[O]$ は次数 $0$ なので ex-cycle-class-map-curve により $\mathrm{cl}(\alpha)=0$、すなわち $\alpha$ はホモロジー同値で $0$ である。しかし $\alpha$ は有理同値で $0$ でない。実際、$[P]-[O]=\operatorname{div}(r)$ なら $r$ は $E$ 上の次数 $1$ の有理関数、すなわち $E\to\mathbb{P}^1$ の次数 $1$ の射で同型になり、種数 $1$ と $0$ が食い違う。この例は、サイクル類写像が単射でないこと(有理同値はホモロジー同値より細かい)を示す。ただし $\alpha$ は代数的同値では $0$ である($P$ を $O$ へ、$E$ 自身をパラメータ曲線として動かせる)。代数的同値でも $0$ にならないホモロジー的に自明なサイクルの例、すなわち Griffiths群 $\operatorname{Griff}^p(X)=\ker(\mathrm{cl})/(\text{代数的同値で }0\text{ のサイクル})$ が $0$ でない例は、Griffiths が $\mathbb{P}^4$ の一般の 5 次超曲面($p=2$)で与えた(Gri69。証明は本記事の範囲を超える)。したがって「サイクル類写像の核は代数的同値で $0$ のサイクルの全体に等しい」は $p\ge2$ では一般に成り立たない($p=1$ では成り立つ。rem-cycle-class-map-equivalences)。
Hodge 版のサイクル類写像 $\mathrm{cl}\colon CH^p(X)\to\operatorname{Hdg}^{2p}(X)$ は一般に全射でない。Atiyah と Hirzebruch は、$H^{2p}(X,\mathbb{Z})$ の捩れ類($H^{2p}(X,\mathbb{C})$ で $0$ になるのでつねに Hodge 類である)で、どの代数的サイクルの類でもないものをもつ滑らかな射影多様体を構成した(AH62。Steenrod作用素による障害)。捩れでない反例も知られている(Kol92)。これらは $\mathbb{Q}$ 係数の Hodge 予想を否定するものではない(Hodge予想)。
$C\subset\mathbb{P}^2_{\mathbb{Q}}$ を $x^2+y^2+z^2=0$ で定まる円錐曲線、$G=\operatorname{Gal}(\bar{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})$(Galois群)とする。$C$ は有理点をもたない(実点さえもたない)が、$C_{\bar{\mathbb{Q}}}\cong\mathbb{P}^1$ である。Kummer完全列と $\operatorname{Br}(\mathbb{P}^1_{\bar{\mathbb{Q}}})=0$ により $G$ 同変な同型 $H^2(C_{\bar{\mathbb{Q}}},\mathbb{Z}_\ell(1))\cong\operatorname{Pic}(C_{\bar{\mathbb{Q}}})\otimes\mathbb{Z}_\ell\cong\mathbb{Z}_\ell$ があり(Tate捻り の記事の射影直線の例)、$G$ は $\operatorname{Pic}(C_{\bar{\mathbb{Q}}})\cong\mathbb{Z}$ に次数を保って作用するので $H^2(C_{\bar{\mathbb{Q}}},\mathbb{Z}_\ell(1))$ への作用は自明であり、生成元は $\bar{\mathbb{Q}}$ 上の 1 点のサイクル類である。一方 $\operatorname{Pic}(C)\to\operatorname{Pic}(C_{\bar{\mathbb{Q}}})=\mathbb{Z}$ は単射で(Hilbertの定理90)、像は $2\mathbb{Z}$ である。実際、次数 $1$ の因子類 $L$ があれば Riemann–Rochの定理により $h^0(L)=2$ で、$L$ の切断の零点が次数 $1$ の有効因子すなわち有理点を与えて矛盾し、他方で標準因子は次数 $-2$ である。よって $\mathrm{cl}_\ell\otimes\mathbb{Z}_\ell\colon CH^1(C)\otimes\mathbb{Z}_\ell\to H^2(C_{\bar{\mathbb{Q}}},\mathbb{Z}_\ell(1))^G=\mathbb{Z}_\ell$ の像は $2\mathbb{Z}_\ell$ であり、$\ell=2$ では指数 $2$ の真部分群である($\ell$ が奇素数なら $2\mathbb{Z}_\ell=\mathbb{Z}_\ell$ で全射)。$\mathbb{Q}_\ell$ 係数では全射になるので、Tate予想($\mathbb{Q}_\ell$ 係数で述べられる)とは矛盾せず、整数係数の形が成り立たないことを示す。
位相的なサイクル類写像の基本的な両立性を先に述べる。以下この節では $k=\mathbb{C}$ とする。
$X,Y$ を $\mathbb{C}$ 上の滑らかな準射影多様体とする。
1・2 は Ful98 §19.1(Lemma 19.1.2、Proposition 19.1.2)、3〜7 は Ful98 Corollary 19.2、Voi02 §11.1.2・§11.3 にある。2 の証明の要点は、直線束の Thom 類(Euler類)が $c_1$ に等しいことと切断の零点集合の基本類が Thom 類の Poincaré 双対であること、あるいは Poincaré–Lelong の公式 $\frac{i}{2\pi}\partial\bar\partial\log\|s\|^2=[D]-\frac{i}{2\pi}\Theta$($s$ は $\mathcal{O}(D)$ の切断、$\Theta$ はエルミート計量の曲率形式)である(GH78 Chapter 1 §1)。$\ell$ 進版は Mil80 VI §9・§10、SGA4h Cycle §2、Galois 不変性の証明の筋は Tate予想 の記事にある。本記事では 1 と 2 を用いて有理同値・代数的同値での不変性を証明し、残りは引用する。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の滑らかな準射影多様体とする。$\alpha\in Z^p(X)$ が有理同値で $0$ なら $\mathrm{cl}(\alpha)=0$ である。したがって $\mathrm{cl}$ は $CH^p(X)$ の上で定まる。
有理同値の言い換え(Ful98 Proposition 1.6)により $\alpha=\sum_j([V_j(0)]-[V_j(\infty)])$ と書けるので、$X\times\mathbb{P}^1$ の余次元 $p$ の既約閉部分多様体 $V$ でどのファイバーにも含まれないものについて $\mathrm{cl}(V(0))=\mathrm{cl}(V(\infty))$ を示せばよい。$\operatorname{pr}_1\colon X\times\mathbb{P}^1\to X$、$\operatorname{pr}_2\colon X\times\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ を射影とし、$t\in\{0,\infty\}$ に対して $D_t:=X\times\{t\}=\operatorname{pr}_2^{*}(\{t\})$ を Cartier 因子とみなす。定義により $[V(t)]=\operatorname{pr}_{1*}(D_t\cdot V)$ である($V\cap D_t\to X$ は閉埋め込みなので、押し出しは各成分を重複度ごとその像に移す)。$\operatorname{pr}_1$ は固有なので、thm-cycle-class-map-compatibility の 1 と 2 により
$$
\mathrm{cl}(V(t))=\operatorname{pr}_{1*}\mathrm{cl}(D_t\cdot V)=\operatorname{pr}_{1*}\bigl(c_1(\mathcal{O}_{X\times\mathbb{P}^1}(D_t))\cup\mathrm{cl}(V)\bigr)
$$
である。ここで $\mathcal{O}_{X\times\mathbb{P}^1}(D_t)=\operatorname{pr}_2^*\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(\{t\})$ であり、$\mathbb{P}^1$ 上では $\{0\}-\{\infty\}$ が座標関数 $z$ の因子なので $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(\{0\})\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(\{\infty\})$ である。よって $\mathcal{O}(D_0)\cong\mathcal{O}(D_\infty)$、$c_1(\mathcal{O}(D_0))=c_1(\mathcal{O}(D_\infty))$ であり、上の式から $\mathrm{cl}(V(0))=\mathrm{cl}(V(\infty))$ が従う。$\square$
$\alpha\in Z^p(X)$ が代数的同値で $0$ なら $\mathrm{cl}(\alpha)=0$ である。すなわち、ホモロジー同値($\mathrm{cl}(\alpha)=0$ で定める同値関係)は代数的同値より粗い。
代数的同値の定義(Ful98 §10.3。パラメータ空間を滑らかな射影曲線にとれることは Example 10.3.2)により、$\alpha$ は、連結で滑らかな射影曲線 $T$、その 2 点 $t_0,t_1$、$X\times T$ の余次元 $p$ の既約閉部分多様体 $V_1,\dots,V_m$ でどのファイバー $X\times\{t\}$ にも含まれないものを用いて $\alpha=\sum_j([V_j(t_0)]-[V_j(t_1)])$ と書ける。prf-cycle-class-map-rational と同じ計算で、$D_t:=X\times\{t\}=\operatorname{pr}_2^*(\{t\})$ とおくと
$$
\mathrm{cl}(V(t))=\operatorname{pr}_{1*}\bigl(\operatorname{pr}_2^{*}c_1(\mathcal{O}_T(\{t\}))\cup\mathrm{cl}(V)\bigr)
$$
である($c_1$ が引き戻しと両立することを使った)。$T$ 上では prop-cycle-class-map-pic により $c_1(\mathcal{O}_T(\{t\}))=\mathrm{cl}_T(t)$ であり、ex-cycle-class-map-curve により $\mathrm{cl}_T(t)\in H^2(T,\mathbb{Z})$ は点 $t$ によらない。$\mathcal{O}_T(\{t_0\})$ と $\mathcal{O}_T(\{t_1\})$ は同型とは限らないが、第 1 Chern 類は等しいので、$\mathrm{cl}(V(t_0))=\mathrm{cl}(V(t_1))$ が従う。$\square$
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の滑らかな準射影多様体とする。因子 $D\in Z^1(X)$ について $\mathrm{cl}(D)=c_1(\mathcal{O}_X(D))$ であり、したがって $p=1$ のサイクル類写像は、同型 $CH^1(X)\cong\operatorname{Pic}(X)$ と指数完全列の連結準同型の合成
$$
CH^1(X)\cong\operatorname{Pic}(X)\xrightarrow{\ c_1\ }H^2(X,\mathbb{Z})
$$
に等しい。$\ell$ 進版では、$\mathrm{cl}_\ell\colon CH^1(X)\cong\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X,\mathbb{Z}_\ell(1))$ は Kummer完全列 $0\to\mu_{\ell^\nu}\to\mathbb{G}_m\xrightarrow{\ell^\nu}\mathbb{G}_m\to0$ の連結準同型 $\operatorname{Pic}(X)=H^1(X,\mathbb{G}_m)\to H^2(X,\mu_{\ell^\nu})$ の極限に等しい。
$D$ が素因子のときは、thm-cycle-class-map-compatibility の 2 を $V=X$($X$ が連結でなければその各連結成分)に適用すると、$D\cdot X=D$、$\mathrm{cl}(X)=1$ なので $\mathrm{cl}(D)=c_1(\mathcal{O}_X(D))$ である。一般の $D=\sum n_iD_i$ については、$\mathrm{cl}$ の線形性と $c_1(\mathcal{O}(D))=\sum n_ic_1(\mathcal{O}(D_i))$($c_1$ の加法性)から従う。連結準同型 $c_1$ が主因子で $0$ であることは $\mathcal{O}(\operatorname{div}(r))\cong\mathcal{O}_X$ から明らかで、これは thm-cycle-class-map-rational の $p=1$ の場合の別証明である。$\ell$ 進版の主張は、純性の同型が $\mathrm{cl}_\nu(D)$ を Kummer 列の連結準同型による $\mathcal{O}(D)$ の像に写すという事実であり、SGA4h Cycle §2.1、Mil80 VI §9 にある(本記事ではこの一致を引用する)。$\square$
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の滑らかな射影多様体とする。任意の $\alpha\in CH^p(X)$ について $\mathrm{cl}(\alpha)\in\operatorname{Hdg}^{2p}(X)$ である。すなわち $\mathrm{cl}(\alpha)$ の $H^{2p}(X,\mathbb{C})$ における像は $H^{p,p}(X)$ に属する。
$Z$ を余次元 $p$ の既約閉部分多様体、$d=n-p$ とする。積分公式 $\int_X\mathrm{cl}(Z)\wedge\alpha=\int_{Z_{\mathrm{reg}}}\alpha$ において、$\alpha$ を $(r,s)$ 型($r+s=2d$、$(r,s)\ne(d,d)$)の閉形式とすると、$r>d$ または $s>d$ であり、$d$ 次元複素多様体 $Z_{\mathrm{reg}}$ に引き戻した $(r,s)$ 型の形式は $0$ なので右辺は $0$ である。Hodge 分解と積分の対 $H^{r',s'}\times H^{n-r',n-s'}\to\mathbb{C}$ の非退化性により、$\mathrm{cl}(Z)$ の $(r',s')$ 成分は $(p,p)$ 以外で $0$ である。積分公式の成立(Lelong の定理)は GH78 Chapter 0 §2、Voi02 §11.1.2 による。$\square$
$p=1$ では逆も成り立ち、像を完全に記述できる。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の連結で滑らかな射影多様体とする。$p=1$ のサイクル類写像 $\mathrm{cl}\colon CH^1(X)=\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X,\mathbb{Z})$ の像は $\operatorname{Hdg}^2(X)=H^2(X,\mathbb{Z})\cap H^{1,1}(X)$ に等しく、核は $H^1(X,\mathcal{O}_X)$ の像、すなわち $\operatorname{Pic}^0(X)$ である。したがって Néron–Severi群 $\operatorname{NS}(X)=\operatorname{Pic}(X)/\operatorname{Pic}^0(X)$ について
$$
\mathrm{cl}\colon\operatorname{NS}(X)\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Hdg}^2(X)
$$
である。
次の 2 つの事実を用いる。(H1)指数完全列の長完全列
$$
H^1(X,\mathcal{O}_X)\to\operatorname{Pic}(X)\xrightarrow{\ c_1\ }H^2(X,\mathbb{Z})\xrightarrow{\ \iota\ }H^2(X,\mathcal{O}_X)
$$
において、$\iota$(包含 $\mathbb{Z}\subset\mathcal{O}_X$ が誘導する写像)は、係数拡大 $H^2(X,\mathbb{Z})\to H^2(X,\mathbb{C})$ と Hodge 分解の射影 $H^2(X,\mathbb{C})\to H^{0,2}(X)$ および Dolbeault 同型 $H^{0,2}(X)\cong H^2(X,\mathcal{O}_X)$(Dolbeaultコホモロジー)の合成に等しい(GH78 Chapter 1 §2、Voi02 §7.1)。(H2)複素共役は $H^{r,s}$ を $H^{s,r}$ に写し、$H^2(X,\mathbb{Z})$ の像の元は複素共役で不変である(Hodge分解)。ここで GAGA により $\operatorname{Pic}(X)=\operatorname{Pic}(X^{\mathrm{an}})$、$H^i(X,\mathcal{O}_X)=H^i(X^{\mathrm{an}},\mathcal{O}_{X^{\mathrm{an}}})$ である。
prop-cycle-class-map-pic により $\mathrm{cl}=c_1$ である。像が $\operatorname{Hdg}^2(X)$ に含まれること:$c=c_1(L)$ とすると完全性から $\iota(c)=0$ なので、(H1)により $c$ の $(0,2)$ 成分は $0$ である。(H2)により $c$ の $(2,0)$ 成分は $(0,2)$ 成分の複素共役なので $0$ である。よって $c\in H^{1,1}$ である。逆に $c\in\operatorname{Hdg}^2(X)$ とすると、$(0,2)$ 成分が $0$ なので(H1)により $\iota(c)=0$ であり、完全性から $c=c_1(L)$ となる $X^{\mathrm{an}}$ 上の正則直線束 $L$ がある。GAGA により $L$ は代数的であり、$X$ は連結で滑らか(したがって整)なので $L\cong\mathcal{O}_X(D)$ となる因子 $D$ がある(Har77 II Proposition 6.15)。よって $c=\mathrm{cl}(D)$ である。核が $H^1(X,\mathcal{O}_X)$ の像であることは完全性そのものであり、その像が $\operatorname{Pic}^0(X)$($\operatorname{Pic}$ の単位元の連結成分の点の群)と一致することは Néron–Severi群 の記事の通りである(Voi02 §7.2)。$\square$
Lefschetz の $(1,1)$ 定理は $\mathbb{Q}$ 係数の Hodge予想 の $p=1$ の場合を与える。$p\ge2$ では像の記述は予想の形でしか知られていない(2026 年現在)。
サイクル類写像の像を記述する 2 つの予想がある。Hodge予想は、$X$ が $\mathbb{C}$ 上の滑らかな射影多様体のとき $\mathrm{cl}\otimes\mathbb{Q}\colon CH^p(X)\otimes\mathbb{Q}\to\operatorname{Hdg}^{2p}(X)\otimes\mathbb{Q}$ が全射であるという主張で、thm-cycle-class-map-lefschetz により $p=1$ で正しく、整数係数の形は ex-cycle-class-map-integral により偽である。Tate予想は、$k$ を素体上有限生成な体、$X$ を $k$ 上の滑らかな射影多様体、$G=\operatorname{Gal}(\bar k/k)$ とするとき $\mathrm{cl}_\ell\otimes\mathbb{Q}_\ell\colon CH^p(X)\otimes\mathbb{Q}_\ell\to H^{2p}(X_{\bar k},\mathbb{Q}_\ell(p))^G$ が全射であるという主張で(Tat65)、像が $G$ 不変な部分に入ることは thm-cycle-class-map-compatibility の最後の主張であり、整数係数の形は ex-cycle-class-map-conic により偽である。どちらも「コホモロジーの側の線形代数的な条件(Hodge 型、Galois 不変性)だけで、代数的サイクルから来る類を特徴づけられる」という主張である。
サイクルの同値関係には、有理同値 $\subset$ 代数的同値 $\subset$ ホモロジー同値 $\subset$ 数値的同値(交叉数がすべて $0$)の階層があり、サイクル類写像の核はホモロジー同値で $0$ のサイクルの群である。$p=1$ では thm-cycle-class-map-lefschetz により核は $\operatorname{Pic}^0(X)$、すなわち代数的同値で $0$ の因子の群に一致し、像は Néron–Severi 群である。したがって $\operatorname{NS}(X)$ は $H^2(X,\mathbb{Z})$ の部分群として有限生成である(Néron–Severi の基底の定理の複素数体上での証明)。$p\ge2$ では Griffiths 群が $0$ でないことがあり(ex-cycle-class-map-not-injective)、ホモロジー同値が $\ell$ によらないか、数値的同値と一致するか(Grothendieck の標準予想 D)は 2026 年現在未解決である。
Hodge 類とは、prop-cycle-class-map-hodge-type の意味で「代数的サイクルの類がもつべき必要条件」を満たす類である。代数的でない Hodge 類が存在するとは、この必要条件が十分でないことを意味する。整数係数ではそのような類が実際に存在し(ex-cycle-class-map-integral)、$\mathbb{Q}$ 係数では存在しないというのが Hodge 予想である。射影的でないコンパクト Kähler多様体では $\mathbb{Q}$ 係数でも解析的サイクルの類でない Hodge 類が存在する(Voisin 2002 年。Hodge予想 の記事)。Hodge 類と分かっているが代数的かどうか分かっていない類の代表例は、ある種のアーベル多様体の Weil 類である。Hodge 類の条件が線形代数的である一方、代数的サイクルの存在は代数幾何的な問題であり、この隔たりが予想の難しさである。
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