Minkowskiの不等式

同義語:ミンコフスキーの不等式Minkowski's inequality

概要

Minkowskiの不等式(Minkowski's inequality)とは、$1\le p\le\infty$ のとき、数の組・数列・測度空間上の関数の $p$ ノルムについて三角不等式 $\|f+g\|_p\le\|f\|_p+\|g\|_p$ が成り立つという不等式である。Hölder の不等式から、あるいは $t\mapsto t^p$ の凸性による単位球の凸性から導かれ、$\ell^p$ や $L^p$ がノルム空間になる根拠である。$1<p<\infty$ では等号は一方が他方の $0$ 以上の実数倍のときに限るが、$p=1,\infty$ ではそうとは限らない。$0<p<1$ では三角不等式が成り立たず、成分が $0$ 以上なら向きが逆になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角不等式, Lp空間, Hölderの不等式

何を述べる不等式か

数の組や関数の大きさを $p$ 乗和の $p$ 乗根 $\|a\|_p=\bigl(\sum_i|a_i|^p\bigr)^{1/p}$ で測るとき、それが「長さ」として使えるためには、和の長さが長さの和を超えないこと、すなわち三角不等式
$$ \|a+b\|_p\le\|a\|_p+\|b\|_p $$
が要る。Minkowski の不等式は、これが $1\le p\le\infty$ で成り立つことを述べる。$p=2$ では内積から来るノルムの三角不等式であり、Cauchy–Schwarzの不等式 から出る。$p\ne2$ では内積がないので、代わりに Hölderの不等式 を使って示す。この不等式によって数列の空間 $\ell^p$ や関数の空間 $L^p$ がノルム空間になり、完備性とあわせて Banach 空間になる(Lp空間)。
幾何的には、Minkowski の不等式は「$p$ ノルムの単位球 $\{\|x\|_p\le1\}$ が凸である」ことと同じ内容である。$0< p<1$ では単位球が凸でなくなり、三角不等式は成り立たない。
同じ Minkowski の名がつく定理に、凸体と格子点についての Minkowskiの凸体定理 や、凸体の体積についての Brunn–Minkowski の不等式があるが、これらはこの記事の不等式とは別の定理である。

主張と Hölder の不等式による証明

以下 $\|\cdot\|_p$ は数の組については $\|a\|_p=\bigl(\sum_i|a_i|^p\bigr)^{1/p}$、$\|a\|_\infty=\max_i|a_i|$、測度空間 $(X,\mathcal{F},\mu)$ 上の可測関数については $\|f\|_p=\bigl(\int|f|^p\,d\mu\bigr)^{1/p}$ と本質的上限 $\|f\|_\infty$ を表す(Lp空間 の記事の定義「$p$ ノルムと本質的上限」)。$1< p<\infty$ の共役指数を $q=\frac p{p-1}$ と書く。

Minkowskiの不等式(数の組)

$1\le p\le\infty$ とする。$a,b\in\mathbb{C}^n$ について
$$ \|a+b\|_p\le\|a\|_p+\|b\|_p $$
が成り立つ。さらに $1< p<\infty$ のとき、等号が成り立つのは、少なくとも一方は $0$ でない $\lambda,\kappa\ge0$ で $\lambda a=\kappa b$ となるもの(一方が他方の $0$ 以上の実数倍)があるときに限る。

$p=1$ のときは各成分の $|a_i+b_i|\le|a_i|+|b_i|$ を加えればよく、$p=\infty$ のときは $|a_i+b_i|\le\|a\|_\infty+\|b\|_\infty$ の左辺の最大値をとればよい。
$1< p<\infty$ とし、$c:=a+b$ とおく。各 $i$ で $|c_i|^p=|c_i|\,|c_i|^{p-1}\le|a_i|\,|c_i|^{p-1}+|b_i|\,|c_i|^{p-1}$ であり、$i$ について加えて右辺の 2 つの和にそれぞれ Hölderの不等式 の定理「Hölderの不等式(数の組)」を指数 $p,q$ で使う。$(p-1)q=p$ から
$$ \sum_i|a_i|\,|c_i|^{p-1}\le\|a\|_p\Bigl(\sum_i|c_i|^{(p-1)q}\Bigr)^{1/q}=\|a\|_p\,\|c\|_p^{p/q}=\|a\|_p\,\|c\|_p^{p-1} $$
であり、$b$ についても同じなので
$$ \|c\|_p^p\le\bigl(\|a\|_p+\|b\|_p\bigr)\|c\|_p^{p-1} $$
を得る。$\|c\|_p=0$ なら結論は明らかであり、そうでなければ両辺を $\|c\|_p^{p-1}>0$ で割ればよい。
等号の条件($1< p<\infty$):$a=s b$($s\ge0$)なら $\|a+b\|_p=(1+s)\|b\|_p=\|a\|_p+\|b\|_p$ であり、$b=sa$ でも同じである。逆に等号が成り立ち、$a\ne0$、$b\ne0$ とする。このとき $c\ne0$ であり($c=0$ なら $0=\|a\|_p+\|b\|_p>0$ となる)、上の 3 つの不等号(各点の三角不等式と 2 回の Hölder の不等式)はすべて等号である。Hölder の不等式の等号条件から、$|a_i|^p$ と $|c_i|^p$、$|b_i|^p$ と $|c_i|^p$ はそれぞれ比例し、$a,b,c\ne0$ なので正の数 $s,t$ で $|a_i|=s|c_i|$、$|b_i|=t|c_i|$(すべての $i$)となる。とくに $c_i=0$ なら $a_i=b_i=0$ である。各点の三角不等式の等号から、$c_i\ne0$ となる $i$ で $|a_i+b_i|=|a_i|+|b_i|$ となり、$a_i,b_i$ は複素平面で同じ向きをもつ($\overline{a_i}b_i\ge0$)。$|a_i|=\frac st|b_i|$ とあわせて $a_i=\frac st\,b_i$ となり、$c_i=0$ の $i$ でも成り立つ。よって $a=\frac stb$ である。$\square$

$p=1,\infty$ では等号条件は成り立たない:$\|(1,0)+(0,1)\|_1=2=\|(1,0)\|_1+\|(0,1)\|_1$、$\|(1,0)+(1,-1)\|_\infty=2=\|(1,0)\|_\infty+\|(1,-1)\|_\infty$ だが、どちらの組も一方が他方の実数倍ではない。$1< p<\infty$ の等号条件は、$\|\cdot\|_p$ が狭義凸なノルムである(等号が同じ向きのベクトルに限られる)ことを述べており、三角不等式 の記事の注意「等号条件と狭義凸性」が述べていることの証明になっている。$p=3$、$a=(1,2)$、$b=(2,4)=2a$ では $\|a+b\|_3=\|(3,6)\|_3=6.2402\ldots=\|a\|_3+\|b\|_3$ で等号になり、同じ長さの $a=(1,0)$、$b=(0,1)$ では $\|a+b\|_3=2^{1/3}=1.259\ldots<2$ である。

Minkowskiの不等式(積分)

$1\le p\le\infty$ とし、$f,g$ を $\|f\|_p,\|g\|_p<\infty$ の可測関数とする。このとき $\|f+g\|_p<\infty$ であり
$$ \|f+g\|_p\le\|f\|_p+\|g\|_p $$
が成り立つ。$1< p<\infty$ のとき、等号が成り立つのは、少なくとも一方は $0$ でない $\lambda,\kappa\ge0$ で、ほとんどいたるところ $\lambda f=\kappa g$ となるものがあるときに限る。

不等式は Lp空間 の記事の定理「Minkowskiの不等式」で、thm-minkowski-finite と同じ筋(和を積分に替え、積分の形の Hölder の不等式を使う)で証明されている。等号の条件も、prf-minkowski-finite の「すべての $i$ で」を「ほとんどすべての $x$ で」に替えれば同じ議論で示せる(Hölder の不等式の等号条件は Hölderの不等式 の定理「Hölderの不等式(積分)」のもの、各点の三角不等式の等号は、非負の関数 $|f|+|g|-|f+g|$ に $|f+g|^{p-1}$ を掛けたものの積分が $0$ になることから、ほとんどいたるところで成り立つ)。$\square$

積分の形の不等式は Axl20 7.14(p. 199)、等号条件は同書の Exercise 7A.20(p. 201)にある。$\mathbb{N}$ 上の数え上げ測度に当てると数列の空間 $\ell^p$ での不等式になり、Lp空間 の記事の系「$L^p$ はノルム空間」のとおり、$\ell^p$・$L^p$($1\le p\le\infty$)はノルム空間になる。$p=1$ の等号は、ほとんどいたるところ $f\overline g$ が $0$ 以上の実数であるときに限る(実数値の場合の $fg\ge0$ という形は同 Exercise 7A.21、p. 201)。実際、$f,g\in L^1$ なら、非負の関数 $|f|+|g|-|f+g|$ の積分が $0$ であることは、ほとんどいたるところ $|f+g|=|f|+|g|$ であることと同値であり、複素数 $a,b$ について $|a+b|=|a|+|b|$ は $|a+b|^2-(|a|+|b|)^2=2(\operatorname{Re}(a\overline b)-|a\overline b|)$ から $a\overline b\ge0$ と同値である。

単位球の凸性による証明

三角不等式は単位球の凸性と同値である(三角不等式 の記事の命題「三角不等式と単位球の凸性」:$N(x)\ge0$ と $N(ax)=|a|N(x)$ を満たす $N$ について、$N$ が三角不等式を満たすことと $\{N\le1\}$ が凸であることは同値)。この見方では、Minkowski の不等式は 1 変数の関数 $t\mapsto t^p$ の凸性に帰着する。
R^2 の単位球。p=1/2 は凸でない星形、p=1 は正方形を傾けた菱形、p=2 は円、p=∞ は正方形で、p が大きいほど外側にある。p=1/2 の球の上の 2 点を結ぶ線分の中点が球の外に出ている R^2 の単位球。p=1/2 は凸でない星形、p=1 は正方形を傾けた菱形、p=2 は円、p=∞ は正方形で、p が大きいほど外側にある。p=1/2 の球の上の 2 点を結ぶ線分の中点が球の外に出ている

$p$$\mathbb{R}^2$ の単位球 $\lvert x_1\rvert^p+\lvert x_2\rvert^p\le1$凸か三角不等式等号が同じ向きに限るか
$0< p<1$軸に沿ってとがった星形いいえ成り立たない―
$1$頂点 $(\pm1,0),(0,\pm1)$ の菱形はい成り立つ限らない
$1< p<\infty$角のない丸い凸集合($p=2$ は円)はい(狭義)成り立つ限る
$\infty$正方形 $\max(\lvert x_1\rvert,\lvert x_2\rvert)\le1$はい成り立つ限らない

$p\le r$ なら $\|x\|_r\le\|x\|_p$ なので(Lp空間 の記事の命題「数列の空間での包含」は $1\le p$ の場合だが、同じ証明が $0< p<1$ でも通る)、単位球は $p$ とともに大きくなる。図の $p=1/2$ の球の上の 2 点 $(\frac19,\frac49)$、$(\frac49,\frac19)$ の中点 $(\frac5{18},\frac5{18})$ は $\|\cdot\|_{1/2}=\bigl(2\sqrt{5/18}\bigr)^2=\frac{10}9>1$ で球の外にある。単位球の辺が平らな部分($p=1,\infty$)をもつと、その部分の 2 点で三角不等式が等号になり、等号条件が崩れる。

$p$ ノルムの単位球は凸

$1\le p<\infty$ とする。$B_p:=\{x\in\mathbb{C}^n\mid\sum_i|x_i|^p\le1\}$ は凸集合である。同じく、$\int|f|^p\,d\mu\le1$ を満たす可測関数 $f$ 全体も凸である。したがって 三角不等式 の記事の命題「三角不等式と単位球の凸性」により、$\|\cdot\|_p$ は三角不等式を満たす。

$\varphi(t):=t^p$ は $[0,\infty)$ で増加する凸関数である($(0,\infty)$ では $\varphi''(t)=p(p-1)t^{p-2}\ge0$ なので 凸関数 の記事の系「2階導関数による判定」により凸であり、端点 $0$ を含めても、$0\le\lambda\le1$、$y\ge0$ について $\varphi(\lambda\cdot0+(1-\lambda)y)=(1-\lambda)^py^p\le(1-\lambda)y^p$ なので凸性の不等式が成り立つ)。$x,y\in B_p$、$0\le\lambda\le1$ とすると、各 $i$ で、三角不等式・$\varphi$ の増加・凸性を順に使って
$$ |\lambda x_i+(1-\lambda)y_i|^p\le\bigl(\lambda|x_i|+(1-\lambda)|y_i|\bigr)^p\le\lambda|x_i|^p+(1-\lambda)|y_i|^p $$
である。$i$ について加えると $\sum_i|\lambda x_i+(1-\lambda)y_i|^p\le\lambda+(1-\lambda)=1$ なので $\lambda x+(1-\lambda)y\in B_p$ である。関数の場合は同じ各点の不等式を積分すればよい。$\|\cdot\|_p$ は $0$ 以上で $\|ax\|_p=|a|\,\|x\|_p$ を満たし、$\{\|x\|_p\le1\}=B_p$ なので、最後の主張は引いた命題による(関数の場合は、$\|f\|_p<\infty$ の関数全体がベクトル空間になることを $|f+g|^p\le2^p(|f|^p+|g|^p)$ から確かめたうえで同じ命題を使う)。$\square$

この証明は Hölder の不等式を使わず、$t^p$ の凸性だけから Minkowski の不等式を導いている。$0< p<1$ では $t^p$ が凹関数になり、2 つ目の不等号が逆向きになる。

双対表示による証明

Hölderの不等式 の定理「$p$ ノルムの双対表示」により、$\|a\|_p=\max\bigl\{\bigl|\sum_ia_ib_i\bigr|:\|b\|_q\le1\bigr\}$ である($q$ は $p$ の共役指数)。$\|b\|_q\le1$ なら $\bigl|\sum_i(a_i+c_i)b_i\bigr|\le\bigl|\sum_ia_ib_i\bigr|+\bigl|\sum_ic_ib_i\bigr|\le\|a\|_p+\|c\|_p$ であり、左辺の最大値をとると $\|a+c\|_p\le\|a\|_p+\|c\|_p$ を得る。三角不等式は「長さ $1$ の $b$ との積の和」という線形な量の最大値として $p$ ノルムを書くと自動的に従う。Axl20 7.14(p. 199)は積分の形をこの筋で証明している(7.12、p. 198 の表示を使う)。

有限個・可算個の和

三角不等式を繰り返すと、$k$ 個の和について $\|f_1+\cdots+f_k\|_p\le\|f_1\|_p+\cdots+\|f_k\|_p$ が成り立つ。和の順序を入れ替えた形として読むと、次の不等式になる。

和の入れ替え

$1\le p<\infty$ とし、$a_{ij}\ge0$($1\le i\le m$、$1\le j\le n$)とする。
$$ \Bigl(\sum_{j=1}^n\Bigl(\sum_{i=1}^ma_{ij}\Bigr)^p\Bigr)^{1/p}\le\sum_{i=1}^m\Bigl(\sum_{j=1}^na_{ij}^p\Bigr)^{1/p} $$
が成り立つ。すなわち「$i$ について和をとってから $j$ について $p$ ノルムをとる」ほうが、「$j$ について $p$ ノルムをとってから $i$ について和をとる」より小さい。

$a_i:=(a_{i1},\dots,a_{in})\in\mathbb{R}^n$ とおくと、左辺は $\|a_1+\cdots+a_m\|_p$、右辺は $\|a_1\|_p+\cdots+\|a_m\|_p$ である。thm-minkowski-finite を $m-1$ 回使えばよい($m$ についての帰納法)。$\square$

たとえば $p=2$、$a_1=(1,2)$、$a_2=(3,1)$ では、左辺は $\|(4,3)\|_2=5$、右辺は $\sqrt5+\sqrt{10}=5.398\ldots$ である。

非負の関数の級数

$1\le p<\infty$ とし、$f_k\colon X\to[0,\infty]$($k=1,2,\dots$)を可測関数とする。このとき
$$ \Bigl\|\sum_{k=1}^\infty f_k\Bigr\|_p\le\sum_{k=1}^\infty\|f_k\|_p $$
が成り立つ(両辺は $\infty$ でもよい)。

右辺が $\infty$ なら明らかなので、有限とする。すると各 $\|f_k\|_p<\infty$ であり、部分和 $S_m:=\sum_{k=1}^mf_k$ について、有限個の和の Minkowski の不等式から $\|S_m\|_p\le\sum_{k\le m}\|f_k\|_p\le\sum_{k=1}^\infty\|f_k\|_p$ である(値に $\infty$ をとる点は零集合なので、そこで $0$ に取り替えて thm-minkowski-integral を使えばよい。Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 2・3)。$S_m^p$ は $S:=\sum_kf_k$ の $p$ 乗に各点で増加して収束するので、単調収束定理(Lebesgue積分 の記事の定理「単調収束定理」)により $\int S^p\,d\mu=\lim_m\int S_m^p\,d\mu$ であり、$\|S\|_p=\lim_m\|S_m\|_p\le\sum_k\|f_k\|_p$ である。$\square$

$f_k$ が符号をもつ(あるいは複素数値の)場合、$\sum_k\|f_k\|_p<\infty$ なら、$\sum_k|f_k|$ にこの命題を使うと $\sum_kf_k$ がほとんどいたるところ絶対収束し、$\bigl\|\sum_kf_k\bigr\|_p\le\sum_k\|f_k\|_p$ となる。これが Lp空間 の記事の定理「$L^p$ 空間の完備性(Riesz–Fischer)」の証明の中心の評価であり、Minkowski の不等式が $L^p$ の完備性を支えている。

$0< p<1$ の場合

$0< p<1$ でも $\|a\|_p=\bigl(\sum_i|a_i|^p\bigr)^{1/p}$ は定義できるが、三角不等式は成り立たない(三角不等式 の記事の例「反例:指数が1未満の冪和」)。$p=\frac12$、$a=(1,4)$、$b=(4,1)$ では $\|a\|_{1/2}=(1+2)^2=9$、$\|b\|_{1/2}=9$ だが $\|a+b\|_{1/2}=\|(5,5)\|_{1/2}=(2\sqrt5)^2=20>18$ である(図の 2 点を $9$ 倍したもの)。成分が $0$ 以上のときには、向きがそろって逆になる。

逆向きの Minkowski の不等式

$0< p<1$ とし、$a_i,b_i\ge0$($i=1,\dots,n$)とする。このとき
$$ \Bigl(\sum_{i=1}^n(a_i+b_i)^p\Bigr)^{1/p}\ge\Bigl(\sum_{i=1}^na_i^p\Bigr)^{1/p}+\Bigl(\sum_{i=1}^nb_i^p\Bigr)^{1/p} $$
が成り立つ。

$a_i+b_i=0$ となる $i$ では $a_i=b_i=0$ なので、その項を除いてよい。除いた結果、項が 1 つも残らなければ両辺は $0$ なので、すべての $i$ で $c_i:=a_i+b_i>0$ としてよい。$q:=\frac p{p-1}<0$ とおく。$\sum_ic_i^p=\sum_ia_ic_i^{p-1}+\sum_ib_ic_i^{p-1}$ の右辺の各和に、Hölderの不等式 の命題「逆向きの Hölder の不等式」を $c_i^{p-1}>0$ について使うと、$(p-1)q=p$ から
$$ \sum_ia_ic_i^{p-1}\ge\Bigl(\sum_ia_i^p\Bigr)^{1/p}\Bigl(\sum_ic_i^p\Bigr)^{1/q}=\|a\|_p\,\|c\|_p^{p/q}=\|a\|_p\,\|c\|_p^{p-1} $$
であり、$b$ についても同じである。よって $\|c\|_p^p\ge(\|a\|_p+\|b\|_p)\|c\|_p^{p-1}$ であり、$\|c\|_p>0$ で割って結論を得る。$\square$

符号の違う成分があると、この逆向きの不等式も成り立たない:$p=\frac12$、$a=(1,1)$、$b=(-1,0)$ では $\|a+b\|_{1/2}=\|(0,1)\|_{1/2}=1$、$\|a\|_{1/2}+\|b\|_{1/2}=4+1=5$ である。したがって $0< p<1$ では、どちら向きの不等式も一般の数の組では成り立たない。

成り立たない場合

外す条件反例成り立たなくなること
$p\ge1$$p=\frac12$、$a=(1,4)$、$b=(4,1)$三角不等式
$1< p$($p=1$ にする)$a=(1,0)$、$b=(0,1)$「等号なら同じ向き」
$p<\infty$($p=\infty$ にする)$a=(1,0)$、$b=(1,-1)$「等号なら同じ向き」
成分が $0$ 以上(逆向きの不等式)$p=\frac12$、$a=(1,1)$、$b=(-1,0)$prop-minkowski-reverse の不等式

各行の数値は本文で確かめた。1 行目は prop-minkowski-convex-ball の証明の 2 つ目の不等号($t^p$ の凸性)が $0< p<1$ で逆になることに、2・3 行目は単位球の辺が平らであることに対応する。

関連項目

参考文献

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