楕円型偏微分方程式

同義語:elliptic partial differential equation楕円型方程式elliptic equation

概要

楕円型偏微分方程式(elliptic partial differential equation)とは、2 階の係数行列 $(a^{ij})$ が正定値である 2 階線形偏微分方程式 $-\sum a^{ij}\partial_i\partial_ju+\sum b^i\partial_iu+cu=f$ やその発散形のことであり、Laplace 方程式と Poisson 方程式がその代表である。1 階の項のない発散形で、有界領域・係数が有界かつ一様楕円型・$c\ge0$ なら、零境界値の Dirichlet 問題は Lax–Milgram の定理によりただ一つの弱解をもち、係数が対称なら解はエネルギーの最小点である。古典解には弱最大値原理が成り立ち、比較原理と解の一意性が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 偏微分方程式, Sobolev空間の基本事項, Lax–Milgramの定理, 正定値行列

Laplace 方程式 $\Delta u=0$ や Poisson 方程式 $-\Delta u=f$ は、熱の釣り合い、膜のたわみ、静電ポテンシャルのような「時間が経ったあとの釣り合いの状態」を表す。これらを含む 2 階の方程式のうち、2 階の係数が定符号の行列をなすものを楕円型偏微分方程式という。楕円型の方程式は時間の向きをもたず、初期値ではなく領域の境界での値を与えて解く。解の理論には 2 本の柱がある。一つは方程式を積分の等式に書き直して Hilbert 空間で解く変分法(弱解)であり、もう一つは解が内部で最大値をとれないという最大値原理である。この記事では 2 階の線形方程式に絞り、両方の柱の基本定理を証明する。一般の階数の作用素と多様体の上の見方は 楕円型作用素、解の滑らかさは 楕円正則性 で扱う。

定義

以下、$\Omega\subset\mathbb{R}^n$ を空でない開集合、関数はすべて実数値とし、$\partial_i=\partial/\partial x_i$ と書く。$a^{ij},b^i,c$($1\le i,j\le n$)を $\Omega$ 上の関数、$f$ を与えられた関数とする。

2 階の線形楕円型偏微分方程式

方程式
$$ Lu:=-\sum_{i,j=1}^na^{ij}(x)\,\partial_i\partial_ju+\sum_{i=1}^nb^i(x)\,\partial_iu+c(x)\,u=f\qquad(1) $$
を非発散形、
$$ Lu:=-\sum_{i,j=1}^n\partial_j\bigl(a^{ij}(x)\,\partial_iu\bigr)+\sum_{i=1}^nb^i(x)\,\partial_iu+c(x)\,u=f\qquad(2) $$
を発散形の 2 階線形偏微分方程式という。$\partial_i\partial_ju=\partial_j\partial_iu$ なので、非発散形では $a^{ij}=a^{ji}$ としてよい。点 $x$ で行列 $(a^{ij}(x))$ が正定値($\xi\ne0$ なら $\sum_{i,j}a^{ij}(x)\xi_i\xi_j>0$)であるとき、方程式は $x$ で楕円型であるといい、$\Omega$ のすべての点で楕円型であるとき $\Omega$ で楕円型であるという。さらに定数 $\theta>0$ があって
$$ \sum_{i,j=1}^na^{ij}(x)\,\xi_i\xi_j\ge\theta|\xi|^2\qquad(x\in\Omega,\ \xi\in\mathbb{R}^n)\qquad(3) $$
が成り立つとき、一様楕円型であるという。

2 階の項に負号を付けるのは、$-\Delta$ が「正の」作用素になるようにするためである。$(a^{ij})$ が負定値なら、全体に $-1$ を掛ければ正定値の場合になる。$n\ge2$ のとき、実係数の 2 階作用素の主表象が $\xi\neq0$ で $0$ にならないことは係数行列が定符号であることと同値なので(楕円型作用素 の命題「実係数 2 階作用素の楕円性」)、上の定義はその記事の楕円性と一致する。発散形 (2) は、$a^{ij}$ が $C^1$ 級なら $b^i$ を $b^i-\sum_j\partial_ja^{ij}$ に替えた非発散形 (1) に書き直せる。発散形は係数が微分できなくても意味をもつ弱い定式化(下の弱解)に向いている。

楕円型の方程式の例
  1. Poisson 方程式 $-\Delta u=f$:$a^{ij}=\delta_{ij}$、$b=0$、$c=0$ で、(3) は $\theta=1$ で成り立つ。$f=0$ が Laplace 方程式で、解は 調和関数 である。
  2. 定常拡散 $-\operatorname{div}(k(x)\nabla u)=f$:熱伝導率や拡散係数 $k$ が $\theta\le k(x)\le\Lambda$ をみたせば一様楕円型である。$k$ が物質の境目で跳んでも発散形として意味をもつ。
  3. 吸収項つきの方程式 $-\Delta u+c(x)u=f$($c\ge0$):$c$ は吸収や減衰の強さを表す。

波動作用素 $\partial_t^2-\Delta_x$ や熱作用素 $\partial_t-\Delta_x$ は楕円型ではなく、Tricomi 作用素 $y\partial_x^2+\partial_y^2$ は上半平面でだけ楕円型である(楕円型作用素 の例「波動作用素・熱作用素・Tricomi 作用素」)。

Dirichlet 問題

$\Omega$ を有界とし、$\partial\Omega$ 上の関数 $g$ を与える。$Lu=f$($\Omega$ 内)、$u=g$($\partial\Omega$ 上)をみたす $u$ を求める問題を、$L$ の Dirichlet 問題という。$u\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ が各点で方程式と境界条件をみたすとき古典解という。

Laplace 方程式の Dirichlet 問題を球の Poisson 積分と Perron の方法で解く理論は Dirichlet問題 にある。以下では係数が一般の場合に、境界条件を $g=0$ とした問題を変分法で解く。

弱解

この節では $\Omega$ を有界とし、発散形 (2) で $b=0$ とした
$$ -\sum_{i,j}\partial_j\bigl(a^{ij}\partial_iu\bigr)+c\,u=f\quad(\Omega\text{ 内}),\qquad u=0\quad(\partial\Omega\text{ 上})\qquad(4) $$
を考える。$a^{ij},c\in L^\infty(\Omega)$、$f\in L^2(\Omega)$ とし、$a^{ij}$ の対称性は仮定しない。$H^1_0(\Omega)$ は $C_c^\infty(\Omega)$ の $H^1(\Omega)$ での閉包である(Sobolev空間の基本事項 の定義「零境界値Sobolev空間」)。

弱解

$u\in H^1_0(\Omega)$ が (4) の弱解であるとは、すべての $v\in H^1_0(\Omega)$ について
$$ B(u,v):=\int_\Omega\Bigl(\sum_{i,j}a^{ij}\,\partial_iu\,\partial_jv+c\,uv\Bigr)dx=\int_\Omega fv\,dx $$
が成り立つことをいう。ここで $\partial_iu$ は弱微分である。

$u\in H^1_0(\Omega)$ という条件が境界条件 $u=0$ の弱い言い表しであり、等式は (4) に $v$ を掛けて部分積分した形である。滑らかな場合には古典的な意味の方程式と一致する。

古典的な解と弱解

$a^{ij}\in C^1(\Omega)$、$c\in C(\Omega)$、$f\in C(\Omega)$ とし、$a^{ij},c$ は有界、$f\in L^2(\Omega)$ とする。$u\in C^2(\Omega)\cap H^1_0(\Omega)$ について、$u$ が (4) の弱解であることと、$u$ が $\Omega$ の各点で方程式 (4) をみたすことは同値である。

要点:$\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ に対して部分積分すると、台がコンパクトなので境界項が出ず、$\int(Lu)\varphi=B(u,\varphi)$ となる。

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$Lu:=-\sum\partial_j(a^{ij}\partial_iu)+cu$ は $\Omega$ 上の連続関数である。$\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について、$\operatorname{supp}\varphi$ の近傍で各変数ごとに部分積分すると $\int_\Omega(Lu)\varphi\,dx=B(u,\varphi)$ である。

(4) が各点で成り立てば $B(u,\varphi)=\int f\varphi$ がすべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ で成り立つ。両辺は $\varphi$ について $H^1$ ノルムで連続であり($a^{ij},c$ の有界性と Cauchy–Schwarz の不等式)、$C_c^\infty(\Omega)$ は $H^1_0(\Omega)$ で稠密なので、すべての $v\in H^1_0(\Omega)$ に広がる。

逆に弱解なら、$\int(Lu-f)\varphi=0$ がすべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ で成り立つ。軟化子 の系「変分法の基本補題」により $Lu-f=0$ がほとんど至る所成り立ち、$Lu-f$ は連続なので各点で $0$ である。$\square$

弱解の存在の鍵は、$H^1_0$ の関数が勾配で制御されることである。$\Omega$ は有界なので、ある $\alpha<\beta$ について $\Omega\subset\{x\mid\alpha< x_1<\beta\}$ となる。$d:=\beta-\alpha$ とおく。

$H^1_0$ の Poincaré の不等式

すべての $u\in H^1_0(\Omega)$ について $\|u\|_{L^2(\Omega)}\le d\,\|\partial_1u\|_{L^2(\Omega)}\le d\,\|\nabla u\|_{L^2(\Omega)}$ である。

要点:台がコンパクトな滑らかな関数は $x_1$ 方向に左端から積分して得られ、Cauchy–Schwarz の不等式で押さえられる。

詳しい証明を開く

$\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ を $\Omega$ の外で $0$ と延ばし、$x=(x_1,x')$ と書く。$\varphi(\alpha,x')=0$ なので、Cauchy–Schwarz の不等式により $\alpha< x_1< \beta$ で

$$|\varphi(x_1,x')|^2=\Bigl|\int_\alpha^{x_1}\partial_1\varphi(t,x')\,dt\Bigr|^2\le d\int_\alpha^\beta|\partial_1\varphi(t,x')|^2\,dt$$

である。$x_1\in(\alpha,\beta)$ と $x'\in\mathbb{R}^{n-1}$ で積分すると $\|\varphi\|_2^2\le d^2\|\partial_1\varphi\|_2^2$ を得る。両辺は $H^1$ ノルムについて連続なので、閉包 $H^1_0(\Omega)$ の元にも広がる。$\square$

領域の正則性は要らない。有界でなくても、ある方向の幅が有限なら同じ不等式が成り立つ。

弱解の存在と一意性

$\Omega$ を有界な開集合とし、$a^{ij},c\in L^\infty(\Omega)$ が、定数 $\theta>0$ についてほとんどすべての $x\in\Omega$ で (3) をみたし、ほとんど至る所 $c\ge0$ であるとする。このとき各 $f\in L^2(\Omega)$ について (4) の弱解 $u\in H^1_0(\Omega)$ がただ 1 つ存在し、
$$ \|\nabla u\|_{L^2(\Omega)}\le\frac{d}{\theta}\,\|f\|_{L^2(\Omega)} $$
が成り立つ。さらに $a^{ij}=a^{ji}$ なら、$u$ は汎関数
$$ E(v):=\frac12\int_\Omega\Bigl(\sum_{i,j}a^{ij}\,\partial_iv\,\partial_jv+c\,v^2\Bigr)dx-\int_\Omega fv\,dx\qquad(v\in H^1_0(\Omega)) $$
の最小値をとるただ一つの元である(Dirichlet の原理)。

$H^1_0(\Omega)$ は Hilbert 空間 $H^1(\Omega)$(Sobolev空間の基本事項 の定理「Sobolev空間の完備性」)の閉部分空間なので完備である。lem-epde-poincare により $\|u\|_{H^1}^2=\|u\|_2^2+\|\nabla u\|_2^2\le(1+d^2)\|\nabla u\|_2^2$ なので、$\langle u,v\rangle:=\int\nabla u\cdot\nabla v\,dx$ は $H^1$ のノルムと同値なノルム $\|\nabla u\|_2$ を与え、$H:=H^1_0(\Omega)$ はこの内積で実 Hilbert 空間になる。
有界性:$A:=\max_{i,j}\|a^{ij}\|_\infty$ とおく。各点で $\bigl|\sum a^{ij}\eta_i\zeta_j\bigr|\le A\sum_i|\eta_i|\sum_j|\zeta_j|\le nA|\eta||\zeta|$ なので、Cauchy–Schwarz の不等式と lem-epde-poincare から
$$ |B(u,v)|\le nA\|\nabla u\|_2\|\nabla v\|_2+\|c\|_\infty\|u\|_2\|v\|_2\le\bigl(nA+d^2\|c\|_\infty\bigr)\|\nabla u\|_2\|\nabla v\|_2 $$
である。
強圧性:(3) と $c\ge0$ から、ほとんどすべての点で $\sum a^{ij}\partial_iu\,\partial_ju\ge\theta|\nabla u|^2$、$cu^2\ge0$ なので $B(u,u)\ge\theta\|\nabla u\|_2^2$ である。
右辺:$\ell(v):=\int fv$ は $|\ell(v)|\le\|f\|_2\|v\|_2\le d\|f\|_2\|\nabla v\|_2$ をみたす $H$ 上の連続線形汎関数で、そのノルムは $d\|f\|_2$ 以下である。
Lax–Milgramの定理(実 Hilbert 空間の場合。その記事の規約に合わせて $a(v,u):=B(u,v)$ とおく)により、すべての $v\in H$ で $B(u,v)=\ell(v)$ となる $u\in H$ がただ 1 つ存在し、$\|\nabla u\|_2\le\|\ell\|/\theta\le d\|f\|_2/\theta$ である。
最後に $a^{ij}=a^{ji}$ とすると $B$ は対称である。$w\in H$ について展開すると
$$ E(u+w)-E(u)=B(u,w)-\ell(w)+\frac12B(w,w)=\frac12B(w,w)\ge\frac\theta2\|\nabla w\|_2^2 $$
であり、右辺は $w\ne0$ なら正である($\|\nabla w\|_2$ は $H$ のノルム)。よって $u$ は $E$ のただ一つの最小点である。$\square$

$b\ne0$ の項や $c<0$ の部分があると $B$ は強圧的とは限らない。その場合も、$f=0$ の弱解の空間は有限次元で、それと同じ次元の条件を $f$ がみたすときに限り弱解が存在する(Fredholm の択一定理。Bre11 Theorem 9.23、p. 295。この記事では証明しない)。$c\ge0$ を外すと一意性も存在も崩れうる(ex-epde-counter の 3 行目)。弱解がどれだけ滑らかかは別の問題で、$\Omega$ の境界が $C^2$ 級なら $-\Delta u+u=f\in L^2$ の弱解は $H^2(\Omega)$ に属する(Bre11 Theorem 9.25、p. 298。この記事では証明しない)。内部での滑らかさは 楕円正則性 と Weylの補題、Hölder ノルムでの評価は Hölder空間の基本事項 の主題である。時間発展の方程式 $\partial_tu+Lu=0$ は、$-L$ を生成作用素とする 強連続半群 で解かれ、その生成を確かめるところで上の定理と同じ Lax–Milgram の議論が使われる(Hille–吉田の定理 の例「熱方程式」)。

最大値原理

変分法が $L^2$ の大きさで解を捉えるのに対し、最大値原理は解の値の大小を各点で比べる。この節では $\Omega$ を有界とし、非発散形の作用素
$$ Lu=-\sum_{i,j}a^{ij}\partial_i\partial_ju+\sum_ib^i\partial_iu+cu\qquad(a^{ij}=a^{ji}) $$
の係数が (3) をみたし、$\beta:=\sup_{x\in\Omega}|b(x)|<\infty$($b=(b^1,\dots,b^n)$)とする。係数の連続性は仮定しない。$u^+:=\max(u,0)$ と書く。

内部の最大点での符号

$u\in C^2(\Omega)$ が $x_0\in\Omega$ で極大になり、対称行列 $A=(a^{ij})$ が半正定値なら、$\nabla u(x_0)=0$ かつ $\sum_{i,j}a^{ij}\,\partial_i\partial_ju(x_0)\le0$ である。

要点:Hesse 行列 $D^2u(x_0)$ は半負定値で、$A$ を対角化すると和は $D^2u(x_0)$ の 2 次形式の非負係数の和になる。

詳しい証明を開く

$\xi\in\mathbb{R}^n$ について $g(t):=u(x_0+t\xi)$ は $t=0$ で極大なので $g'(0)=0$ である。もし $g''(0)>0$ なら $0$ の近くで $g''>0$ となり、$g$ は $0$ の近くで狭義凸で $g'(0)=0$ だから $t\ne0$ で $g(t)>g(0)$ となって極大に反する。よって $\xi^{\mathsf T}D^2u(x_0)\xi=g''(0)\le0$ である。$A$ を正規直交基底 $e_1,\dots,e_n$ と固有値 $\lambda_k\ge0$ で $A=\sum_k\lambda_ke_ke_k^{\mathsf T}$ と書くと、$\sum_{i,j}a^{ij}\partial_i\partial_ju(x_0)=\operatorname{tr}\bigl(AD^2u(x_0)\bigr)=\sum_k\lambda_k\,e_k^{\mathsf T}D^2u(x_0)e_k\le0$ である。$\square$

弱最大値原理

$\Omega$ を有界な開集合、$L$ を上の作用素とし、$u\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ が $\Omega$ で $Lu\le0$ をみたすとする。

  1. $c\equiv0$ なら $\displaystyle\max_{\overline\Omega}u=\max_{\partial\Omega}u$ である。
  2. $c\ge0$ なら $\displaystyle\max_{\overline\Omega}u\le\max_{\partial\Omega}u^+$ である。

$\Omega$ は有界なので $\overline\Omega$ はコンパクトで、$\partial\Omega$ は空でない($\Omega\ne\mathbb{R}^n$)。
1.まず $c\equiv0$ で、$\Omega$ の各点で $Lv<0$ をみたす $v\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ は $\Omega$ の内部で最大値をとらないことを示す。内部の点 $x_0$ で最大なら、lem-epde-hessian により $\nabla v(x_0)=0$、$\sum a^{ij}\partial_i\partial_jv(x_0)\le0$ なので $Lv(x_0)\ge0$ となり矛盾する。よって $v$ の最大値は $\partial\Omega$ でとられる。
次に $w(x):=e^{\gamma x_1}$ とおく。(3) に $\xi=e_1$ を入れると $a^{11}\ge\theta$ なので
$$ Lw=\bigl(-a^{11}\gamma^2+b^1\gamma\bigr)e^{\gamma x_1}\le\bigl(-\theta\gamma^2+\beta\gamma\bigr)e^{\gamma x_1}<0\qquad(\gamma>\beta/\theta) $$
である。$\varepsilon>0$ について $v:=u+\varepsilon w$ は $Lv=Lu+\varepsilon Lw<0$ をみたすので、
$$ \max_{\overline\Omega}u\le\max_{\overline\Omega}v=\max_{\partial\Omega}v\le\max_{\partial\Omega}u+\varepsilon\max_{\overline\Omega}w $$
である。$\varepsilon\to0$ として $\max_{\overline\Omega}u\le\max_{\partial\Omega}u$ を得る。逆向きの不等号は明らかである。
2.$u$ が $\overline\Omega$ で最大値をとる点を $x^*$ とする。$u(x^*)\le0$ なら主張は明らかで、$x^*\in\partial\Omega$ でも明らかである。そこで $x^*\in\Omega$、$u(x^*)>0$ とし、開集合 $V:=\{x\in\Omega\mid u(x)>0\}$ を考える。$V$ の上では $c\ge0$、$u>0$ なので、$c$ の項を除いた作用素 $L_0:=L-c$ について $L_0u=Lu-cu\le0$ である。$L_0$ は 1 の仮定をみたすので、1 を有界な開集合 $V$ に当てると $u(x^*)=\max_{\overline V}u=\max_{\partial V}u$ である。$y\in\partial V$ とする。$y\in\Omega$ なら、$V$ は開集合なので $y\notin V$ から $u(y)\le0$ である。$y\in\partial\Omega$ なら $u(y)\le\max_{\partial\Omega}u^+$ である。いずれにしても $u(x^*)\le\max_{\partial\Omega}u^+$ である。$\square$

比較原理と古典解の一意性

$c\ge0$ とし、$u,v\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ が $\Omega$ で $Lu\le Lv$、$\partial\Omega$ で $u\le v$ をみたせば、$\Omega$ で $u\le v$ である。とくに Dirichlet 問題 $Lu=f$、$u=g$ の古典解は高々 1 つであり、$Lu=0$ の解は $\max_{\overline\Omega}|u|=\max_{\partial\Omega}|u|$ をみたす。

$w:=u-v$ は $Lw\le0$、$\partial\Omega$ で $w^+=0$ をみたすので、thm-epde-maximum-principle の 2 により $w\le0$ である。2 つの古典解の差には両方の向きでこれを当てればよい。$Lu=0$ なら $u$ と $-u$ に 2 を当てて $\max_{\overline\Omega}|u|\le\max_{\partial\Omega}|u|$ を得る。$\square$

$L=-\Delta$ で $Lu=0$ の場合は、調和関数 の定理「弱最大値原理」(平均値の性質による証明)と重なる。一様楕円性は、証明の 1 で $a^{11}\ge\theta$ により 1 次の項 $b^1\gamma$ を押さえ込むところで使われる。弱解についても最大値原理があり、たとえば $-\Delta u+u=f$ の弱解 $u\in H^1(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ は $\max\{\sup_{\partial\Omega}u,\ \operatorname{ess\,sup}_\Omega f\}$ 以下である。これは Stampacchia の切り詰めの方法で示される(Bre11 Theorem 9.27、p. 307。この記事では証明しない)。

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
係数行列の正定値性$\Omega=(0,\pi)^2$、$Lu=-(\partial_x^2-\partial_y^2)u$、$u=\sin x\sin y$弱最大値原理、Dirichlet 問題の解の一意性
$\Omega$ の有界性$\Omega=\{x_1>0\}$、$L=-\Delta$、$u=x_1$弱最大値原理、Dirichlet 問題の解の一意性
$c\ge0$$\Omega=(0,\pi)$、$Lu=-u''-u$弱解の一意性と存在、弱最大値原理
一様楕円性$\Omega=(0,1)$、$-(x^2u')'=1$$H^1_0$ の弱解の存在
表の反例の確認

1 行目:$u_{xx}=u_{yy}=-u$ なので $Lu=0$ で、$u$ は $\partial\Omega$ で $0$、内部で正である。係数行列 $\operatorname{diag}(1,-1)$ は不定値である。$0$ と $u$ はどちらも境界値 $0$ の解である。
2 行目:$u=x_1$ は調和で、境界 $\{x_1=0\}$ で $0$ だが内部で正であり、$0$ とともに境界値 $0$ の解である。
3 行目:$u=\sin x$ は $-u''-u=0$、$u(0)=u(\pi)=0$ をみたす $0$ でない解で、$Lu\le0$、境界で $0$ なのに最大値は $1$ である。$f=\sin x$ には弱解がない。実際、弱解 $u\in H^1_0(0,\pi)$ があれば $v=\sin x$ を試すと、部分積分 $\int_0^\pi u'\cos x\,dx=\int_0^\pi u\sin x\,dx$($u$ を $C_c^\infty$ の関数で近似して得られる)から左辺は $\int u'\cos x-\int u\sin x=0$ となるが、右辺は $\int_0^\pi\sin^2x\,dx=\pi/2$ である。
4 行目:$a(x)=x^2$ は $(0,1)$ の各点で正だが、下限は $0$ である。弱解 $u\in H^1_0(0,1)$ があるとすると、すべての $v\in C_c^1(0,1)$($\subset H^1_0(0,1)$)で $\int x^2u'v'=\int v=-\int xv'$ だから $\int(x^2u'+x)v'=0$ であり、$x^2u'+x$ はほとんど至る所定数 $C$ に等しい(Bre11 Lemma 8.1、pp. 204–205)。すると $u'=-1/x+C/x^2$ であり、$C\ne0$ でも $C=0$ でも $u'$ は $(0,1)$ の上で 2 乗可積分でなく、$u\in H^1$ に反する。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Universitext, Springer, 2011, Lemma 8.1(pp. 204–205)。Corollary 9.19(p. 290、Poincaré の不等式)。§9.5:Theorem 9.21(p. 292)、Example 3(pp. 294–295、一般の 2 階楕円型方程式の弱解)、Theorem 9.23(p. 295)。Theorem 9.25(p. 298)。§9.7:Theorem 9.27(p. 307)、Remark 27(p. 309、古典解に対する最大値原理の古典的な証明)

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