三角形の重心(高校数学)

同義語:centroid of a triangle (high school mathematics)

概要

三角形の重心(centroid of a triangle)とは、三角形の 3 本の中線(頂点と対辺の中点を結ぶ線分)が交わる 1 点 $G$ である。$G$ は各中線を頂点の側から $2:1$ に内分し、位置ベクトルは $\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$(座標は 3 頂点の平均)である。$G$ と 2 頂点でできる 3 つの三角形の面積は等しい。どの点 $P$ についても $PA^2+PB^2+PC^2=GA^2+GB^2+GC^2+3PG^2$ が成り立つので、重心は 3 頂点までの距離の 2 乗の和を最小にする点で、平均値と二乗誤差の関係と同じ式である。一様な三角形の板を積分で定めた重心も $G$ に一致し、回転体の体積は Pappus–Guldinus の定理で求まる。四角形では、頂点の平均と板の重心は一般に一致しない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位置ベクトルと内分点, ベクトルの内積(高校数学), 中点連結定理

高校での出発点:中線を 3 本引く

三角形の頂点と、向かい合う辺(対辺)の中点を結ぶ線分を 中線 という。教科書では「三角形の 3 本の中線は 1 点で交わり、その点は各中線を $2:1$ に分ける。この点を 重心 という」と習う。まず座標で、本当にそうなるかを確かめてみる。
この記事では、点 $A,B,C,\dots$ の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c,\dots$ と書く。平面の点を座標 $(x,y)$ で表すときは、位置ベクトルも同じ成分で書く。辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点をそれぞれ $M_A$、$M_B$、$M_C$ と書く(添字は向かい合う頂点の名前)。

3 本の中線の交点を座標で求める

$A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$ とする。

  1. 中点:$M_A=\bigl(\frac{8+4}2,\frac{2+10}2\bigr)=(6,6)$、$M_B=\bigl(\frac{4+0}2,\frac{10+0}2\bigr)=(2,5)$、$M_C=\bigl(\frac{0+8}2,\frac{0+2}2\bigr)=(4,1)$。
  2. 中線 $AM_A$:$(0,0)$ と $(6,6)$ を通るので $y=x$。
  3. 中線 $BM_B$:$(8,2)$ と $(2,5)$ を通る。傾きは $\frac{5-2}{2-8}=-\frac12$ なので $y-2=-\frac12(x-8)$、つまり $y=-\frac12x+6$。
  4. 2 と 3 の交点:$x=-\frac12x+6$ より $\frac32x=6$、$x=4$。交点は $G(4,4)$。
  5. 中線 $CM_C$:$(4,10)$ と $(4,1)$ を通るので $x=4$。$G(4,4)$ はこの上にある。
    3 本の中線は $G(4,4)$ で交わる。$G$ の座標は、3 頂点の座標の平均 $\bigl(\frac{0+8+4}3,\frac{0+2+10}3\bigr)=(4,4)$ と一致している。
中線が 2:1 に分けられることを確かめる

ex-cen-first の $G(4,4)$ で、各中線の 2 つの部分の長さを比べる。

  1. 中線 $AM_A$:$AG=\sqrt{4^2+4^2}=4\sqrt2$、$GM_A=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2$。比は $2:1$。
  2. 中線 $BM_B$:$\overrightarrow{BG}=(-4,2)$ で $BG=\sqrt{20}=2\sqrt5$、$\overrightarrow{GM_B}=(-2,1)$ で $GM_B=\sqrt5$。比は $2:1$。
  3. 中線 $CM_C$:$CG=10-4=6$、$GM_C=4-1=3$。比は $2:1$。
    $\overrightarrow{BG}=(-4,2)$ と $\overrightarrow{GM_B}=(-2,1)$ は向きが同じで、長さがちょうど $2$ 倍になっている。

三角形 !FORMULA[56][1360680324][0]、!FORMULA[57][-2039393201][0]、!FORMULA[58][-1463376229][0] の 3 本の中線(破線)と重心 !FORMULA[59][-1900534254][0]。中線で分けた 6 つの小さな三角形(色を交互に塗った)の面積がどれも !FORMULA[60][36306][0] で等しいことを見る図。 三角形 $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$ の 3 本の中線(破線)と重心 $G(4,4)$。中線で分けた 6 つの小さな三角形(色を交互に塗った)の面積がどれも $6$ で等しいことを見る図。
この例から、次の問いが出てくる。

  1. なぜ、どんな三角形でも 3 本の中線は 1 点で交わり、しかも $2:1$ に分けられるのか。→ thm-cen-main(証明を 2 通り与える)
  2. 重心の座標が頂点の座標の平均になるのはなぜか。→ thm-cen-main の 3
  3. 紙で作った三角形の板は、なぜ重心で釣り合うのか。→ prop-cen-area、rem-cen-plate、prop-cen-integral
  4. 重心は、3 頂点からの「距離の 2 乗の和」をいちばん小さくする点である。これは統計の平均とどうつながるのか。→ thm-cen-leibniz、cor-cen-min
    高校の計算この記事での見方ボックス
    内分点の公式で $2:1$ の点を求める3 本の中線の $2:1$ の点は同じ点 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$thm-cen-main
    高さの比で面積を比べる重心は三角形を面積の等しい 3 つに分けるprop-cen-area
    平方完成で最小値を求める$\sum PA^2=\sum GA^2+3PG^2$(平均と二乗誤差と同じ式)thm-cen-leibniz
    回転体の体積を積分で求める面積 × 重心の動く距離(Pappus–Guldinus の定理)ex-cen-pappus

中線と重心

三角形の中線

一直線上にない 3 点 $A,B,C$ を頂点とする三角形 $ABC$ で、頂点 $A$ と辺 $BC$ の中点 $M_A$ を結ぶ線分 $AM_A$ を、頂点 $A$ からの 中線 という。$B$ からの中線 $BM_B$、$C$ からの中線 $CM_C$ も同じように定める。位置ベクトルでは
$$ \vec m_A=\frac{\vec b+\vec c}2,\qquad \vec m_B=\frac{\vec c+\vec a}2,\qquad \vec m_C=\frac{\vec a+\vec b}2 $$
である。

線分 $PQ$ を $m:n$ に内分する点の位置ベクトルは $\frac{n\vec p+m\vec q}{m+n}$ である(位置ベクトルと内分点)。これを中線に使う。

中線を 2:1 に内分する点を公式で求める

ex-cen-first の三角形で、3 本の中線をそれぞれ頂点の側から $2:1$ に内分する点を求める。

  1. 中線 $AM_A$:$\frac{1\cdot(0,0)+2\cdot(6,6)}{3}=(4,4)$。
  2. 中線 $BM_B$:$\frac{1\cdot(8,2)+2\cdot(2,5)}{3}=\frac{(12,12)}3=(4,4)$。
  3. 中線 $CM_C$:$\frac{1\cdot(4,10)+2\cdot(4,1)}{3}=\frac{(12,12)}3=(4,4)$。
    3 つとも同じ点 $(4,4)$ になった。次の定理は、これがいつでも起こることを示す。

主定理:中線は 1 点で交わり 2:1 に分ける

3 本の中線の交点

三角形 $ABC$ について、次が成り立つ。

  1. 3 本の中線 $AM_A$、$BM_B$、$CM_C$ は 1 点で交わる。
  2. その点 $G$ は、各中線を頂点の側から $2:1$ に内分する。つまり $AG:GM_A=BG:GM_B=CG:GM_C=2:1$ である。
  3. $G$ の位置ベクトルは $\vec g=\dfrac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ である。座標でいえば、$G$ の座標は 3 頂点の座標の平均である。
    この点 $G$ を三角形 $ABC$ の 重心 という。
内分点の公式で示す

方針:$\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ で点 $G$ を定め、$G$ が 3 本の中線それぞれの $2:1$ の内分点であることを示す。最後に、2 本の中線の交点がただ 1 つであることを確かめる。
段 1(中線 $AM_A$ の $2:1$ の点)。線分 $AM_A$ を $2:1$ に内分する点の位置ベクトルは、内分点の公式から
$$ \frac{1\cdot\vec a+2\,\vec m_A}{2+1}=\frac{\vec a+2\cdot\frac{\vec b+\vec c}2}3=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\vec g $$
である。よって $G$ は中線 $AM_A$ の上にあり、$AG:GM_A=2:1$ である。
段 2(残りの 2 本)。同じ計算で、$BM_B$ を $2:1$ に内分する点は $\frac{\vec b+2\vec m_B}3=\frac{\vec b+\vec c+\vec a}3=\vec g$、$CM_C$ を $2:1$ に内分する点は $\frac{\vec c+2\vec m_C}3=\frac{\vec c+\vec a+\vec b}3=\vec g$ である。よって $G$ は 3 本の中線の上にあり、どれも $2:1$ に内分する。これで 2 と 3 が示せた。
段 3(交点はただ 1 つ)。中線 $AM_A$ と $BM_B$ を含む 2 直線が平行だとすると、$\overrightarrow{AM_A}=\frac{\vec b+\vec c}2-\vec a$ と $\overrightarrow{BM_B}=\frac{\vec c+\vec a}2-\vec b$ が平行になる。この 2 つの差は
$$ \overrightarrow{AM_A}-\overrightarrow{BM_B}=\frac{\vec b+\vec c-2\vec a-\vec c-\vec a+2\vec b}2=\frac32(\vec b-\vec a) $$
なので、$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$ も同じ向きに平行になる。すると $\overrightarrow{AM_A}$ と $\overrightarrow{AB}$ が平行で、$M_A$ は直線 $AB$ の上にある。$M_A$ は辺 $BC$ の中点なので、直線 $AB$ の上に $B$ と $M_A$ があり、$C$ も直線 $BM_A$、つまり直線 $AB$ の上にある。これは $A,B,C$ が一直線上にないことに反する。よって 2 本は平行でなく、交点はただ 1 つで、それが $G$ である。3 本目も $G$ を通るので、1 が示せた。$\square$

段 3 で「平行な 2 つのベクトルの差もそれらと平行」を使った。$\vec u=k\vec v$ なら $\vec u-\vec v=(k-1)\vec v$ だからである。
同じ定理は、ベクトルを使わずに、中点連結定理と相似でも示せる。

中点連結定理で示す

方針:まず 2 本の中線(線分)が三角形の内側の 1 点で交わることを確かめ、その交点がそれぞれを $2:1$ に分けることを相似で示す。どの 2 本の組でも同じことが言えるので、3 本は同じ点で交わる。
段 1(中点連結定理)。三角形 $ABC$ で、辺 $CA$ の中点 $M_B$ と辺 $AB$ の中点 $M_C$ を結ぶ。中点連結定理 により、$M_CM_B\parallel BC$ かつ $M_CM_B=\frac12BC$ である。
段 2(2 本の中線は交わる)。次の事実を使う(平面図形の出発点として認め、この記事では証明しない):直線 $\ell$ は、$\ell$ の上にない点全体を 2 つの側に分ける。$\ell$ の上にない 2 点は、2 点を結ぶ線分が $\ell$ と交わるときちょうど反対側にあり、交わらないときちょうど同じ側にある。また、$P$ と $Q$ が同じ側、$Q$ と $R$ が反対側にあれば、$P$ と $R$ は反対側にある。

  • 直線 $BM_B$ は直線 $CA$ と $M_B$ だけで交わり、$M_B$ は $A$ と $C$ の間にあるので、$A$ と $C$ は直線 $BM_B$ について反対側にある。
  • 直線 $BM_B$ は直線 $AB$ と $B$ だけで交わり、$B$ は線分 $AM_C$ の上にないので、$M_C$ は直線 $BM_B$ について $A$ と同じ側にある。
    よって $M_C$ と $C$ は直線 $BM_B$ について反対側にあり、線分 $CM_C$ は直線 $BM_B$ と 1 点で交わる。その点は $C$ でも $M_C$ でもない(どちらも直線 $BM_B$ の上にない)ので、$C$ と $M_C$ の間にある。まったく同じ理由で($A$ と $B$ は直線 $CM_C$ について反対側にあり、$M_B$ は $A$ と同じ側にある)、線分 $BM_B$ は直線 $CM_C$ と、$B$ と $M_B$ の間の 1 点で交わる。直線 $BM_B$ と直線 $CM_C$ は異なる($C$ は直線 $BM_B$ の上にない)ので、交わる点は 1 つしかなく、この 2 つの点は同じ点である。これを $G'$ とすると、$G'$ は $B$ と $M_B$ の間にあり、$C$ と $M_C$ の間にもある。
    段 3(相似)。段 2 から、$M_C$ と $C$ は直線 $BM_B$ について反対側にある。$M_CM_B\parallel BC$ なので、錯角が等しく $\angle G'M_BM_C=\angle G'BC$、$\angle G'M_CM_B=\angle G'CB$ である。よって三角形 $G'M_BM_C$ と三角形 $G'BC$ は相似で、相似比は $M_CM_B:BC=1:2$ である。
    段 4(比)。段 3 から $G'M_B:G'B=1:2$、$G'M_C:G'C=1:2$ である。$G'$ は $B$ と $M_B$ の間、$C$ と $M_C$ の間にある(段 2)ので、$G'$ は中線 $BM_B$ を $2:1$ に、中線 $CM_C$ を $2:1$ に内分する点である。
    段 5(3 本目)。段 2〜段 4 と同じ議論を中線 $AM_A$ と $BM_B$ に使うと、2 本は交わり、その交点は $BM_B$ を $2:1$ に内分する点である。線分 $BM_B$ を $2:1$ に内分する点はただ 1 つなので、それは $G'$ と一致する。よって 3 本の中線は $G'$ で交わり、$G'$ はどの中線も $2:1$ に分ける。$\square$

2 つの証明は同じことを別の言葉で言っている。1 つ目の証明の段 1 の計算「$\vec a+2\vec m_A=\vec a+\vec b+\vec c$」は、3 つの文字について対称な式が出てくることで 3 本の中線を一度に扱っている。2 つ目の証明は、相似という図形の言葉で $2:1$ を導いている。

重心の座標を 2 つ計算する
  1. $A(1,2)$、$B(7,-1)$、$C(-2,5)$:$G=\bigl(\frac{1+7-2}3,\frac{2-1+5}3\bigr)=(2,2)$。確かめ:$M_A=\bigl(\frac52,2\bigr)$ で、$\frac{\vec a+2\vec m_A}3=\frac{(1,2)+(5,4)}3=(2,2)$。
  2. 空間の点でも同じ式が使える。$A(3,0,0)$、$B(0,3,0)$、$C(0,0,3)$ の三角形の重心は $G(1,1,1)$ である。$G$ は 3 頂点を含む平面 $x+y+z=3$ の上にある($1+1+1=3$)。

重心は面積を 3 等分する

紙で三角形を切り抜き、重心の位置に指を当てると、板は釣り合う。この節では、まず重心が三角形の面積をどう分けるかを見る。

重心で分けた 3 つの三角形の面積

三角形 $ABC$ の重心を $G$ とすると、三角形 $GBC$、$GCA$、$GAB$ の面積はどれも三角形 $ABC$ の面積の $\frac13$ である。さらに、3 本の中線で分けた 6 つの三角形 $GBM_A$、$GM_AC$、$GCM_B$、$GM_BA$、$GAM_C$、$GM_CB$ の面積はどれも $\frac16$ である。

高さの比で面積を比べる

方針:底辺が同じ三角形の面積の比は高さの比であり、高さが同じ三角形の面積の比は底辺の比である。これを重心の $2:1$ に使う。
段 1($GBC$)。三角形 $ABC$ と三角形 $GBC$ は底辺 $BC$ が共通である。$A$ から直線 $BC$ までの距離を $h$ とする。$G$ は中線 $AM_A$ を $2:1$ に内分するので、$G$ は直線 $BC$ の上の点 $M_A$ から $A$ に向かって $AM_A$ の $\frac13$ だけ進んだ点である。$A$ と $G$ から直線 $BC$ に垂線を下ろすと、2 本の垂線は平行なので、平行線と線分の比により、$G$ から直線 $BC$ までの距離は $\frac13h$ である。よって三角形 $GBC$ の面積は $\frac12BC\cdot\frac13h=\frac13\cdot\frac12BC\cdot h$ で、三角形 $ABC$ の面積の $\frac13$ である。
段 2(残りの 2 つ)。同じく、中線 $BM_B$、$CM_C$ を使うと、三角形 $GCA$、$GAB$ の面積も $\frac13$ である。
段 3(6 つの三角形)。三角形 $GBM_A$ と $GM_AC$ は、$G$ から直線 $BC$ までの高さが共通で、底辺 $BM_A=M_AC$ が等しいので面積が等しい。2 つを合わせると三角形 $GBC$ なので、それぞれ $\frac13\cdot\frac12=\frac16$ である。ほかの 4 つも同じである。$\square$

6 つの三角形の面積を計算する

ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$、$G(4,4)$ で確かめる。3 点 $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$、$(x_3,y_3)$ の三角形の面積は $\frac12\bigl|(x_2-x_1)(y_3-y_1)-(y_2-y_1)(x_3-x_1)\bigr|$ である(靴ひも公式)。

  1. 三角形 $ABC$:$\frac12|8\cdot10-2\cdot4|=\frac12\cdot72=36$。
  2. 三角形 $GBC$:$\overrightarrow{GB}=(4,-2)$、$\overrightarrow{GC}=(0,6)$ で $\frac12|4\cdot6-(-2)\cdot0|=12$。
  3. 三角形 $GBM_A$:$\overrightarrow{GB}=(4,-2)$、$\overrightarrow{GM_A}=(2,2)$ で $\frac12|4\cdot2-(-2)\cdot2|=\frac12\cdot12=6$。
  4. 三角形 $GM_BA$:$\overrightarrow{GM_B}=(-2,1)$、$\overrightarrow{GA}=(-4,-4)$ で $\frac12|(-2)(-4)-1\cdot(-4)|=\frac12\cdot12=6$。
    $12=\frac13\cdot36$、$6=\frac16\cdot36$ で、prop-cen-area のとおりである(図1)。

面積が 3 等分されることは、重心が三角形の「真ん中」であることの 1 つの表れである。板の釣り合いそのものは、次のように考えると中線と結びつく。

板を細い帯に切って考える

厚さが一様な三角形の板を、辺 $BC$ に平行な細い帯に切る。$A$ からの距離の割合が $t$($0< t\le1$)のところの帯は、辺 $AB$ 上の点 $\vec a+t(\vec b-\vec a)$ と辺 $AC$ 上の点 $\vec a+t(\vec c-\vec a)$ を結ぶ線分である。その中点は
$$ \frac{\bigl(\vec a+t(\vec b-\vec a)\bigr)+\bigl(\vec a+t(\vec c-\vec a)\bigr)}2=\vec a+t\Bigl(\frac{\vec b+\vec c}2-\vec a\Bigr)=\vec a+t(\vec m_A-\vec a) $$
で、中線 $AM_A$ の上にある。細い帯はその中点で釣り合うので、どの帯も中線 $AM_A$ の上で釣り合い、板全体も直線 $AM_A$ の上で釣り合う。同じく板は直線 $BM_B$ の上でも釣り合う。2 本の中線の上で釣り合うので、釣り合いの点は 2 本の交点、つまり重心 $G$ である。
「細い帯はその中点で釣り合う」「帯ごとに釣り合えば全体も釣り合う」は物理の考え方で、ここでは証明ではない。数学としては、板の釣り合いの点(面積の重心)を積分で定め、それが $G$ と一致することを prop-cen-integral で示す。

距離の 2 乗の和を最小にする点

重心には、長さの言葉でのもう 1 つの特徴がある。点 $P$ を動かして $PA^2+PB^2+PC^2$ を考えると、これは $P=G$ のときにいちばん小さくなる。

距離の 2 乗の和を 3 つの点で計算する

ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$、$G(4,4)$ で、$f(P)=PA^2+PB^2+PC^2$ を計算する。

  1. $P=G(4,4)$:$GA^2=16+16=32$、$GB^2=16+4=20$、$GC^2=0+36=36$ で、$f(G)=88$。
  2. $P=A(0,0)$:$AB^2=64+4=68$、$AC^2=16+100=116$ で、$f(A)=0+68+116=184$。
  3. $P=(4,0)$:$PA^2=16$、$PB^2=16+4=20$、$PC^2=0+100=100$ で、$f(P)=136$。
    どれも $f(G)=88$ より大きい。しかも $184-88=96=3\cdot32=3\,AG^2$、$136-88=48=3\cdot16=3\,PG^2$($P=(4,0)$ と $G$ の距離は $4$)で、差は「$G$ までの距離の 2 乗の $3$ 倍」になっている。
距離の 2 乗の和の分解

三角形 $ABC$ の重心を $G$ とする。平面(空間でもよい)のどんな点 $P$ についても
$$ PA^2+PB^2+PC^2=GA^2+GB^2+GC^2+3PG^2 $$
が成り立つ。

$P-A$ を $G$ で分けて展開する

方針:$\vec p-\vec a=(\vec p-\vec g)+(\vec g-\vec a)$ と分けて 2 乗を展開し、交差項の和が $0$ になることを使う。
段 1(1 つの項)。内積の分配法則により
$$ PA^2=|\vec p-\vec a|^2=|(\vec p-\vec g)+(\vec g-\vec a)|^2=|\vec p-\vec g|^2+2(\vec p-\vec g)\cdot(\vec g-\vec a)+|\vec g-\vec a|^2 $$
である。つまり $PA^2=PG^2+2(\vec p-\vec g)\cdot(\vec g-\vec a)+GA^2$ である。
段 2(3 つを足す)。$PB^2$、$PC^2$ も同じ形なので、3 つを足すと
$$ PA^2+PB^2+PC^2=3PG^2+2(\vec p-\vec g)\cdot\bigl((\vec g-\vec a)+(\vec g-\vec b)+(\vec g-\vec c)\bigr)+GA^2+GB^2+GC^2 $$
である。
段 3(交差項)。thm-cen-main の $\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ から
$$ (\vec g-\vec a)+(\vec g-\vec b)+(\vec g-\vec c)=3\vec g-(\vec a+\vec b+\vec c)=\vec0 $$
なので、段 2 の真ん中の項は $0$ である。これで等式が示せた。$\square$

段 3 の $\overrightarrow{AG}+\overrightarrow{BG}+\overrightarrow{CG}=\vec0$、言いかえると $\overrightarrow{GA}+\overrightarrow{GB}+\overrightarrow{GC}=\vec0$ は、重心の性質の中でいちばん使いやすい形である。

重心は距離の 2 乗の和を最小にする

三角形 $ABC$ の重心を $G$ とする。

  1. $PA^2+PB^2+PC^2$ は $P=G$ のときに限り最小になる。
  2. 最小値は $GA^2+GB^2+GC^2=\dfrac{AB^2+BC^2+CA^2}3$ である。
分解の式から読み取る

方針:1 は thm-cen-leibniz の $3PG^2\ge0$ から出る。2 は thm-cen-leibniz に $P=A,B,C$ を入れて足す。
段 1(最小)。thm-cen-leibniz の右辺で、$GA^2+GB^2+GC^2$ は $P$ によらない。$3PG^2\ge0$ で、等号は $PG=0$、つまり $P=G$ のときに限る。よって左辺は $P=G$ のときに限り最小で、最小値は $GA^2+GB^2+GC^2$ である。
段 2(最小値を辺で書く)。$S=GA^2+GB^2+GC^2$ とおく。thm-cen-leibniz で $P=A$ とすると $0+AB^2+AC^2=S+3GA^2$ である。$P=B$、$P=C$ でも同じく $BA^2+BC^2=S+3GB^2$、$CA^2+CB^2=S+3GC^2$ である。3 つを足すと、左辺は $2(AB^2+BC^2+CA^2)$、右辺は $3S+3(GA^2+GB^2+GC^2)=6S$ である。よって $S=\frac{AB^2+BC^2+CA^2}3$ である。$\square$

最小値と中線の長さを確かめる

ex-cen-first の三角形で、$AB^2=68$、$BC^2=16+64=80$、$CA^2=116$ である。

  1. $\frac{68+80+116}3=\frac{264}3=88$ で、ex-cen-sum-squares の $f(G)=88$ と一致する。
  2. 中線の長さの 2 乗は $AM_A^2=36+36=72$、$BM_B^2=36+9=45$、$CM_C^2=0+81=81$ で、和は $198$ である。$GA=\frac23AM_A$ などから $GA^2+GB^2+GC^2=\frac49(AM_A^2+BM_B^2+CM_C^2)$ なので、$\frac49\cdot198=88$ となり、これも一致する。
  3. 2 から、中線の長さの 2 乗の和は辺の長さの 2 乗の和の $\frac94\cdot\frac13=\frac34$ 倍である。実際 $\frac34\cdot264=198$ である。

本文の例の三角形で、!FORMULA[437][678036384][0] の値が等しい点を結んだ線(等高線)。どれも重心 !FORMULA[438][36833][0] を中心とする円で、!FORMULA[439][36833][0] から距離 !FORMULA[440][38166][0] の円の上では !FORMULA[441][834517633][0] になることを見る図。 本文の例の三角形で、$f(P)=PA^2+PB^2+PC^2$ の値が等しい点を結んだ線(等高線)。どれも重心 $G$ を中心とする円で、$G$ から距離 $r$ の円の上では $f=88+3r^2$ になることを見る図。
thm-cen-leibniz から、$f(P)$ の値が一定の点の集まりは $G$ を中心とする円である(図2)。この形の式は、数学のいろいろなところに現れる。

平均値と二乗誤差、中線定理とのつながり

thm-cen-leibniz を座標で書くと、$A,B,C$ の $x$ 座標を $x_1,x_2,x_3$、その平均を $\bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3$ として、$x$ 座標の部分は
$$ (x-x_1)^2+(x-x_2)^2+(x-x_3)^2=\sum_{i=1}^3(x_i-\bar x)^2+3(x-\bar x)^2 $$
である($y$ 座標の部分も同じ)。これは「データの平均値は、二乗誤差の和をいちばん小さくする値である」という統計の定理の、データが 3 個の場合そのものである(平均値と二乗誤差)。重心は、3 頂点の座標というデータの平均値であり、thm-cen-leibniz は平面の点についての「平均値と二乗誤差」である。ex-cen-sum-squares では、$x$ 座標 $0,8,4$ の平均 $4$ のまわりの二乗誤差の和が $16+16+0=32$、$y$ 座標 $0,2,10$ の平均 $4$ のまわりが $16+4+36=56$ で、合わせて $88$ である。
点が 2 個のときの同じ式は、線分 $AB$ の中点 $M$ について $PA^2+PB^2=MA^2+MB^2+2PM^2$ となる。$P=C$ とおくと $CA^2+CB^2=2\bigl(\frac{AB}2\bigr)^2+2CM^2$ で、これは 中線定理 である(中線定理(高校数学))。

大学数学で見る:質量中心と積分で定める重心

重み付きの平均としての重心

重心の式 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ は、3 つの位置ベクトルの平均である。物理では、点に「重さ(質量)」をのせて、その釣り合いの点を考える。

質点の集まりの質量中心

点 $P_1,\dots,P_n$ にそれぞれ正の数 $m_1,\dots,m_n$(質量)が与えられているとき、
$$ \vec p=\frac{m_1\vec p_1+m_2\vec p_2+\cdots+m_n\vec p_n}{m_1+m_2+\cdots+m_n} $$
で定まる点 $P$ を、この質点の集まりの 質量中心 という。

3 頂点に等しい質量をのせたときの質量中心が重心 $G$ である。質量中心は、いくつかの点をまとめてから計算してもよい。

質量中心はまとめて計算できる

点 $P_1,\dots,P_n$(質量 $m_1,\dots,m_n$)を 2 つの組 $\{P_1,\dots,P_k\}$ と $\{P_{k+1},\dots,P_n\}$ に分け、それぞれの組の質量中心を $Q_1$、$Q_2$、質量の合計を $M_1=m_1+\cdots+m_k$、$M_2=m_{k+1}+\cdots+m_n$ とする。全体の質量中心は、$Q_1$ に質量 $M_1$、$Q_2$ に質量 $M_2$ をのせた 2 点の質量中心に等しい。

分子を 2 つに分ける

方針:def-cen-mass の分子を 2 つの組に分けて書き直す。
段 1。$Q_1$ の定義から $m_1\vec p_1+\cdots+m_k\vec p_k=M_1\vec q_1$、$Q_2$ の定義から $m_{k+1}\vec p_{k+1}+\cdots+m_n\vec p_n=M_2\vec q_2$ である。
段 2。全体の質量中心の分子は $M_1\vec q_1+M_2\vec q_2$、分母は $M_1+M_2$ である。これは $Q_1$(質量 $M_1$)と $Q_2$(質量 $M_2$)の質量中心の式そのものである。$\square$

まとめて計算すると 2:1 が出る
  1. 3 頂点に質量 $1$ ずつのせる。$B$ と $C$ をまとめると、質量中心は中点 $M_A$、質量は $2$ である。prop-cen-group により、全体の質量中心は $A$(質量 $1$)と $M_A$(質量 $2$)の質量中心 $\frac{1\cdot\vec a+2\,\vec m_A}{3}$ で、これは線分 $AM_A$ を $2:1$ に内分する点である。どの頂点を残してまとめても同じ点になるので、3 本の中線はこの点を通る。これは thm-cen-main の 3 つ目の証明になっている。
  2. 質量を $A$ に $1$、$B$ に $2$、$C$ に $3$ とすると、ex-cen-first の三角形では $\frac{1\cdot(0,0)+2\cdot(8,2)+3\cdot(4,10)}6=\frac{(28,34)}6=\bigl(\frac{14}3,\frac{17}3\bigr)$ である。質量を変えると、質量中心は三角形の中を動く。辺の長さ $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ を質量にすると内心になる(三角形の内心と傍心)。

3 頂点の質量の比 $(m_1:m_2:m_3)$ で三角形の中の点を表す方法を 重心座標 という(重心座標)。重心は $(1:1:1)$ である。

板の重心を積分で定める

rem-cen-plate の「板の釣り合いの点」を数学として定めるには、積分を使う。体積と回転体 では、2 つのグラフ $y=g(x)$、$y=f(x)$($g\le f$)と直線 $x=\alpha$、$x=\beta$ で囲まれた図形 $D$ について、面積 $S=\int_\alpha^\beta(f-g)\,dx$ と
$$ \bar x=\frac1S\int_\alpha^\beta x\,\bigl(f(x)-g(x)\bigr)\,dx,\qquad \bar y=\frac1S\int_\alpha^\beta\frac{f(x)+g(x)}2\bigl(f(x)-g(x)\bigr)\,dx $$
で 重心 $(\bar x,\bar y)$ を定めた。これは $D$ を縦の細い帯に切り、位置 $x$ の帯(長さ $f-g$、中点の高さ $\frac{f+g}2$)の質量中心をとったものである。三角形の板については、この重心が頂点の平均 $G$ と一致する。

三角形の板の重心

三角形の頂点の $x$ 座標を $x_1\le x_2\le x_3$($x_1< x_3$)とする。三角形を縦線図形として見たとき、体積と回転体 の定義による重心の $x$ 座標は
$$ \bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3 $$
である。

縦の帯の長さを 1 次式で書いて積分する

方針:直線 $x=t$ で三角形を切った線分の長さ $\ell(t)$ は、$x_2$ の左右でそれぞれ 1 次式になる。それを積分する。
段 1(帯の長さ)。頂点を $x$ 座標の小さい順に $P_1,P_2,P_3$ とする。直線 $x=x_2$ で三角形を切った線分の長さを $L$ とする($P_2$ と、辺 $P_1P_3$ 上の点を結ぶ線分)。$x_1< x_2$ のとき、$x_1\le t\le x_2$ の範囲では、三角形の上の縁と下の縁はどちらも $P_1$ を通る線分なので、$\ell(t)$ は $t$ の 1 次式で、$\ell(x_1)=0$、$\ell(x_2)=L$ である。よって $h=x_2-x_1$ として $\ell(t)=\frac{L}{h}(t-x_1)$ である。同じく $x_2< x_3$ のとき、$x_2\le t\le x_3$ では $k=x_3-x_2$ として $\ell(t)=\frac{L}{k}(x_3-t)$ である。
段 2(面積)。$\int_{x_1}^{x_2}\frac Lh(t-x_1)\,dt=\frac Lh\cdot\frac{h^2}2=\frac{Lh}2$、同じく右側は $\frac{Lk}2$ なので、$S=\frac{L(h+k)}2=\frac{L(x_3-x_1)}2$ である。
段 3(左側のモーメント)。$t=x_1+hs$($0\le s\le1$)と置換すると、$dt=h\,ds$、$t-x_1=hs$ なので
$$ \int_{x_1}^{x_2}t\cdot\frac Lh(t-x_1)\,dt=\int_0^1(x_1+hs)\cdot\frac Lh\cdot hs\cdot h\,ds=Lh\int_0^1(x_1s+hs^2)\,ds=Lh\Bigl(\frac{x_1}2+\frac h3\Bigr)=\frac{Lh(x_1+2x_2)}6 $$
である。最後の等号は $3x_1+2h=3x_1+2(x_2-x_1)=x_1+2x_2$ による。
段 4(右側のモーメント)。$t=x_3-ks$ と置換すると、同じ計算で
$$ \int_{x_2}^{x_3}t\cdot\frac Lk(x_3-t)\,dt=Lk\int_0^1(x_3s-ks^2)\,ds=Lk\Bigl(\frac{x_3}2-\frac k3\Bigr)=\frac{Lk(2x_2+x_3)}6 $$
である。最後の等号は $3x_3-2k=3x_3-2(x_3-x_2)=2x_2+x_3$ による。
段 5(まとめる)。$h(x_1+2x_2)+k(2x_2+x_3)$ と $(h+k)(x_1+x_2+x_3)$ の差は
$$ h\bigl(x_1+2x_2-x_1-x_2-x_3\bigr)+k\bigl(2x_2+x_3-x_1-x_2-x_3\bigr)=h(x_2-x_3)+k(x_2-x_1)=-hk+kh=0 $$
なので、段 3 と段 4 の和は $\frac{L(h+k)(x_1+x_2+x_3)}6$ である。これを段 2 の $S=\frac{L(h+k)}2$ で割って $\bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3$ を得る。
段 6(辺が縦のとき)。$x_1=x_2$($h=0$)のときは段 3 の積分がなく、$x_2=x_3$($k=0$)のときは段 4 の積分がないが、段 5 の式は $h=0$ や $k=0$ を入れてもそのまま成り立つ。$\square$

$y$ 座標についても、同じ計算を横の帯で行うと $\bar y=\frac{y_1+y_2+y_3}3$ が得られる。縦の帯で定めた $\bar y$ と横の帯で計算した値が一致することは 2 重積分の性質で、体積と回転体 で述べられている(本記事では証明しない)。

積分で三角形の重心を求める

頂点 $(1,0)$、$(3,0)$、$(1,2)$ の三角形は、$1\le x\le3$ で $g(x)=0$、$f(x)=3-x$ の間の図形である。

  1. 面積:$S=\int_1^3(3-x)\,dx=\Bigl[3x-\frac{x^2}2\Bigr]_1^3=\frac92-\frac52=2$。
  2. $\bar x=\frac12\int_1^3x(3-x)\,dx=\frac12\Bigl[\frac{3x^2}2-\frac{x^3}3\Bigr]_1^3=\frac12\Bigl(\frac92-\frac76\Bigr)=\frac12\cdot\frac{10}3=\frac53$。
  3. $\bar y=\frac12\int_1^3\frac{(3-x)^2}2\,dx=\frac14\Bigl[-\frac{(3-x)^3}3\Bigr]_1^3=\frac14\cdot\frac83=\frac23$。
    頂点の平均は $\bigl(\frac{1+3+1}3,\frac{0+0+2}3\bigr)=\bigl(\frac53,\frac23\bigr)$ で、一致する。

重心が分かると、回転体の体積が積分なしで求まる。Pappus–Guldinus の定理:$a\le x\le b$ で $g(x)\le y\le f(x)$ を満たす点の集まり(2 つのグラフの間の図形)を考える。$g\ge0$ ならこの図形を $x$ 軸の周りに、$a\ge0$ なら $y$ 軸の周りに 1 回転させた立体の体積は、「図形の面積 × 重心が 1 回転で動く距離」に等しい(証明は 体積と回転体。そこで証明されているのはこの形の図形の場合で、本記事でもこの形でだけ使う)。

回転体の体積を重心で求める

ex-cen-integral の三角形(面積 $2$、重心 $\bigl(\frac53,\frac23\bigr)$)を回転させる。この三角形は $1\le x\le3$ で $g(x)=0$、$f(x)=3-x$ の間の図形で、$g\ge0$、$a=1\ge0$ なので、上の定理がどちらの軸にも使える。

  1. $y$ 軸の周り:重心は半径 $\frac53$ の円を描くので、体積は $2\cdot2\pi\cdot\frac53=\frac{20\pi}3$。積分で確かめる。高さ $y$($0\le y\le2$)で切った断面は、内側の半径 $1$、外側の半径 $3-y$ の円環なので、体積は $\int_0^2\pi\bigl((3-y)^2-1\bigr)dy=\pi\int_0^2(8-6y+y^2)\,dy=\pi\Bigl(16-12+\frac83\Bigr)=\frac{20\pi}3$。
  2. $x$ 軸の周り:重心は半径 $\frac23$ の円を描くので、体積は $2\cdot2\pi\cdot\frac23=\frac{8\pi}3$。積分では $\int_1^3\pi(3-x)^2\,dx=\pi\Bigl[-\frac{(3-x)^3}3\Bigr]_1^3=\frac{8\pi}3$ で、一致する。

頂点 !FORMULA[622][-1217829044][0]、!FORMULA[623][-1215982002][0]、!FORMULA[624][-1217827122][0] の三角形を !FORMULA[625][38383][0] 軸の周りに回転させる図。重心 !FORMULA[626][-1969821626][0] が 1 回転で描く円(破線)の長さ !FORMULA[627][-1883147657][0] に面積 !FORMULA[628][36182][0] を掛けると、回転体の体積 !FORMULA[629][1011812716][0] になることを見る図。 頂点 $(1,0)$、$(3,0)$、$(1,2)$ の三角形を $y$ 軸の周りに回転させる図。重心 $\bigl(\frac53,\frac23\bigr)$ が 1 回転で描く円(破線)の長さ $2\pi\cdot\frac53$ に面積 $2$ を掛けると、回転体の体積 $\frac{20\pi}3$ になることを見る図。

例と反例

重心のよい性質は、「三角形」「中点」「距離の 2 乗」のどれかを変えると崩れる。

変えたこと崩れる主張ボックス
三角形を四角形にする頂点の平均が板の重心になるex-cen-quad
中線を、重心を通るほかの直線にする面積を 2 等分するex-cen-line
辺の中点を 3 等分点にする3 本が 1 点で交わるex-cen-trisect
距離の 2 乗の和を、距離の和にする最小にする点が重心ex-cen-distance-sum
反例:四角形では頂点の平均と板の重心が違う

頂点 $(0,0)$、$(6,0)$、$(3,3)$、$(0,3)$ の四角形(台形)を考える。

  1. 4 頂点の平均:$\bigl(\frac{0+6+3+0}4,\frac{0+0+3+3}4\bigr)=\bigl(\frac94,\frac32\bigr)$。
  2. 板の重心:対角線で 2 つの三角形に分ける。三角形 $(0,0),(6,0),(3,3)$ は面積 $\frac12\cdot6\cdot3=9$、重心 $G_1(3,1)$。三角形 $(0,0),(3,3),(0,3)$ は面積 $\frac12\cdot3\cdot3=\frac92$、重心 $G_2(1,2)$。prop-cen-group と同じく、面積を質量とみて $G_1$、$G_2$ の質量中心をとると
    $$ \frac{9\cdot(3,1)+\frac92\cdot(1,2)}{9+\frac92}=\frac{\bigl(\frac{63}2,18\bigr)}{\frac{27}2}=\Bigl(\frac73,\frac43\Bigr) $$
    である。
  3. 積分でも確かめる。この四角形は $0\le x\le3$ で上の縁が $y=3$、$3\le x\le6$ で上の縁が $y=6-x$ の縦線図形で、面積は $9+\frac92=\frac{27}2$、$\int_0^3 3x\,dx+\int_3^6x(6-x)\,dx=\frac{27}2+18=\frac{63}2$ なので $\bar x=\frac{63/2}{27/2}=\frac73$ である。
    $\bigl(\frac94,\frac32\bigr)\ne\bigl(\frac73,\frac43\bigr)$ である(図4)。変えたこと:三角形を四角形にした。崩れる主張:頂点の平均が板の重心になること。三角形でこれが成り立つのは prop-cen-integral の計算のおかげで、頂点が 4 つ以上になると一般には成り立たない(平行四辺形のような対称な図形では一致する)。

台形を対角線で 2 つの三角形に分け、それぞれの重心 !FORMULA[652][35454767][0]、!FORMULA[653][35454798][0] を面積で重み付けして板の重心 !FORMULA[654][1416856138][0] を求めた図。4 頂点の平均 !FORMULA[655][-617381813][0](×印)とずれていることを見る図。 台形を対角線で 2 つの三角形に分け、それぞれの重心 $G_1$、$G_2$ を面積で重み付けして板の重心 $\bigl(\frac73,\frac43\bigr)$ を求めた図。4 頂点の平均 $\bigl(\frac94,\frac32\bigr)$(×印)とずれていることを見る図。

反例:重心を通る直線は面積を 2 等分するとは限らない

ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$(面積 $36$)で、重心 $G(4,4)$ を通り辺 $BC$ に平行な直線を引く。$\overrightarrow{BC}=(-4,8)$ なので傾きは $-2$ で、直線は $y=-2x+12$ である。

  1. 辺 $AB$($y=\frac14x$)との交点:$\frac14x=-2x+12$ より $x=\frac{16}3$、交点 $\bigl(\frac{16}3,\frac43\bigr)$。
  2. 辺 $AC$($y=\frac52x$)との交点:$\frac52x=-2x+12$ より $x=\frac83$、交点 $\bigl(\frac83,\frac{20}3\bigr)$。
  3. $A$ の側の三角形の面積:$\frac12\bigl|\frac{16}3\cdot\frac{20}3-\frac43\cdot\frac83\bigr|=\frac12\cdot\frac{320-32}9=16$。
    直線の両側の面積は $16$ と $36-16=20$ で、等しくない。$A$ の側の三角形は $ABC$ と相似で、相似比は $AG:AM_A=2:3$ なので、面積の比は $4:9$ であり、$\frac49\cdot36=16$ と合っている。
    中線は面積を 2 等分する(prop-cen-area の段 3)が、重心を通るほかの直線はそうとは限らない。それでも板はこの直線の上で釣り合う(本記事では証明しない。重心を通る直線について「面積 × 符号つき距離」を積分すると $0$ になることから従う)。釣り合いを決めるのは面積ではなく、「面積 × 直線からの距離」の和(モーメント)だからである。$A$ の側は面積が小さいが、直線から遠くまで広がっている。
反例:3 等分点と結ぶと 1 点で交わらない

$A(0,0)$、$B(3,0)$、$C(0,3)$ とし、辺 $BC$、$CA$、$AB$ をそれぞれ $B$、$C$、$A$ の側から $1:2$ に分ける点を $D(2,1)$、$E(0,2)$、$F(1,0)$ とする。

  1. 直線 $AD$ は $y=\frac12x$、直線 $BE$ は $2x+3y=6$、直線 $CF$ は $3x+y=3$ である。
  2. $AD$ と $BE$ の交点:$2x+\frac32x=6$ より $x=\frac{12}7$、交点 $\bigl(\frac{12}7,\frac67\bigr)$。
  3. $AD$ と $CF$ の交点:$3x+\frac12x=3$ より $x=\frac67$、交点 $\bigl(\frac67,\frac37\bigr)$。
    2 つの交点が違うので、3 本は 1 点で交わらない。3 本の直線は小さな三角形を囲み、その面積は $\frac9{14}$ で、$ABC$ の面積 $\frac92$ のちょうど $\frac17$ である。変えたこと:中点を 3 等分点にした。崩れる主張:3 本が 1 点で交わること。どんな分け方なら 1 点で交わるかは Cevaの定理(高校数学) が答える(比の積 $\frac12\cdot\frac12\cdot\frac12=\frac18$ が $1$ でないので交わらない)。囲まれる三角形の面積の公式は Routhの定理 である。
反例:距離の和を最小にする点は重心ではない

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(3,1)$ とする。重心は $G\bigl(3,\frac13\bigr)$ である。

  1. $P=G$ のとき:$GA=GB=\sqrt{9+\frac19}=\frac{\sqrt{82}}3\approx3.018$、$GC=\frac23$ で、$GA+GB+GC\approx6.704$。
  2. $P=C$ のとき:$CA=CB=\sqrt{9+1}=\sqrt{10}\approx3.162$、$CC=0$ で、和は $2\sqrt{10}\approx6.325$。
    $C$ での和のほうが小さいので、$PA+PB+PC$ を最小にする点は重心ではない。変えたこと:距離の 2 乗の和を距離の和にした。崩れる主張:最小にする点が重心であること。thm-cen-leibniz の証明は、2 乗を展開して交差項が消えることに頼っていた。2 乗しない距離ではこの展開ができない。距離の和を最小にする点は Fermat 点 とよばれ、別の記事で扱う(Fermat点)。

さらに先へ

  • 外心 $O$・重心 $G$・垂心 $H$ は一直線上にあり、正三角形でないとき $OG:GH=1:2$ である(正三角形では $O=G=H$ となり、比は意味をなさない。Euler線)。外心を原点にとると、垂心は $\vec a+\vec b+\vec c=3\vec g$ である(三角形の垂心)。
  • 四面体 $ABCD$ の重心 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c+\vec d}4$ は、頂点と向かいの面の重心を結ぶ線分を $3:1$ に分ける。証明は thm-cen-main の段 1 と同じ計算である。
  • thm-cen-leibniz は、物理では慣性モーメントの 平行軸の定理(重心を通る軸のまわりの慣性モーメントが最小)にあたる。確率では、確率変数 $X$ について $E\bigl[(X-t)^2\bigr]=V(X)+\bigl(E[X]-t\bigr)^2$ という式になる(確率変数の期待値と分散)。重心は「一様な重さの平均」、期待値は「確率で重み付けした平均」である。

関連項目

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