三角形の重心(centroid of a triangle)とは、三角形の 3 本の中線(頂点と対辺の中点を結ぶ線分)が交わる 1 点 $G$ である。$G$ は各中線を頂点の側から $2:1$ に内分し、位置ベクトルは $\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$(座標は 3 頂点の平均)である。$G$ と 2 頂点でできる 3 つの三角形の面積は等しい。どの点 $P$ についても $PA^2+PB^2+PC^2=GA^2+GB^2+GC^2+3PG^2$ が成り立つので、重心は 3 頂点までの距離の 2 乗の和を最小にする点で、平均値と二乗誤差の関係と同じ式である。一様な三角形の板を積分で定めた重心も $G$ に一致し、回転体の体積は Pappus–Guldinus の定理で求まる。四角形では、頂点の平均と板の重心は一般に一致しない。
前提知識: 位置ベクトルと内分点, ベクトルの内積(高校数学), 中点連結定理
三角形の頂点と、向かい合う辺(対辺)の中点を結ぶ線分を 中線 という。教科書では「三角形の 3 本の中線は 1 点で交わり、その点は各中線を $2:1$ に分ける。この点を 重心 という」と習う。まず座標で、本当にそうなるかを確かめてみる。
この記事では、点 $A,B,C,\dots$ の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c,\dots$ と書く。平面の点を座標 $(x,y)$ で表すときは、位置ベクトルも同じ成分で書く。辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点をそれぞれ $M_A$、$M_B$、$M_C$ と書く(添字は向かい合う頂点の名前)。
$A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$ とする。
ex-cen-first の $G(4,4)$ で、各中線の 2 つの部分の長さを比べる。
三角形 $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$ の 3 本の中線(破線)と重心 $G(4,4)$。中線で分けた 6 つの小さな三角形(色を交互に塗った)の面積がどれも $6$ で等しいことを見る図。
この例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 内分点の公式で $2:1$ の点を求める | 3 本の中線の $2:1$ の点は同じ点 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ | thm-cen-main |
| 高さの比で面積を比べる | 重心は三角形を面積の等しい 3 つに分ける | prop-cen-area |
| 平方完成で最小値を求める | $\sum PA^2=\sum GA^2+3PG^2$(平均と二乗誤差と同じ式) | thm-cen-leibniz |
| 回転体の体積を積分で求める | 面積 × 重心の動く距離(Pappus–Guldinus の定理) | ex-cen-pappus |
一直線上にない 3 点 $A,B,C$ を頂点とする三角形 $ABC$ で、頂点 $A$ と辺 $BC$ の中点 $M_A$ を結ぶ線分 $AM_A$ を、頂点 $A$ からの 中線 という。$B$ からの中線 $BM_B$、$C$ からの中線 $CM_C$ も同じように定める。位置ベクトルでは
$$
\vec m_A=\frac{\vec b+\vec c}2,\qquad \vec m_B=\frac{\vec c+\vec a}2,\qquad \vec m_C=\frac{\vec a+\vec b}2
$$
である。
線分 $PQ$ を $m:n$ に内分する点の位置ベクトルは $\frac{n\vec p+m\vec q}{m+n}$ である(位置ベクトルと内分点)。これを中線に使う。
ex-cen-first の三角形で、3 本の中線をそれぞれ頂点の側から $2:1$ に内分する点を求める。
三角形 $ABC$ について、次が成り立つ。
方針:$\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ で点 $G$ を定め、$G$ が 3 本の中線それぞれの $2:1$ の内分点であることを示す。最後に、2 本の中線の交点がただ 1 つであることを確かめる。
段 1(中線 $AM_A$ の $2:1$ の点)。線分 $AM_A$ を $2:1$ に内分する点の位置ベクトルは、内分点の公式から
$$
\frac{1\cdot\vec a+2\,\vec m_A}{2+1}=\frac{\vec a+2\cdot\frac{\vec b+\vec c}2}3=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\vec g
$$
である。よって $G$ は中線 $AM_A$ の上にあり、$AG:GM_A=2:1$ である。
段 2(残りの 2 本)。同じ計算で、$BM_B$ を $2:1$ に内分する点は $\frac{\vec b+2\vec m_B}3=\frac{\vec b+\vec c+\vec a}3=\vec g$、$CM_C$ を $2:1$ に内分する点は $\frac{\vec c+2\vec m_C}3=\frac{\vec c+\vec a+\vec b}3=\vec g$ である。よって $G$ は 3 本の中線の上にあり、どれも $2:1$ に内分する。これで 2 と 3 が示せた。
段 3(交点はただ 1 つ)。中線 $AM_A$ と $BM_B$ を含む 2 直線が平行だとすると、$\overrightarrow{AM_A}=\frac{\vec b+\vec c}2-\vec a$ と $\overrightarrow{BM_B}=\frac{\vec c+\vec a}2-\vec b$ が平行になる。この 2 つの差は
$$
\overrightarrow{AM_A}-\overrightarrow{BM_B}=\frac{\vec b+\vec c-2\vec a-\vec c-\vec a+2\vec b}2=\frac32(\vec b-\vec a)
$$
なので、$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$ も同じ向きに平行になる。すると $\overrightarrow{AM_A}$ と $\overrightarrow{AB}$ が平行で、$M_A$ は直線 $AB$ の上にある。$M_A$ は辺 $BC$ の中点なので、直線 $AB$ の上に $B$ と $M_A$ があり、$C$ も直線 $BM_A$、つまり直線 $AB$ の上にある。これは $A,B,C$ が一直線上にないことに反する。よって 2 本は平行でなく、交点はただ 1 つで、それが $G$ である。3 本目も $G$ を通るので、1 が示せた。$\square$
段 3 で「平行な 2 つのベクトルの差もそれらと平行」を使った。$\vec u=k\vec v$ なら $\vec u-\vec v=(k-1)\vec v$ だからである。
同じ定理は、ベクトルを使わずに、中点連結定理と相似でも示せる。
方針:まず 2 本の中線(線分)が三角形の内側の 1 点で交わることを確かめ、その交点がそれぞれを $2:1$ に分けることを相似で示す。どの 2 本の組でも同じことが言えるので、3 本は同じ点で交わる。
段 1(中点連結定理)。三角形 $ABC$ で、辺 $CA$ の中点 $M_B$ と辺 $AB$ の中点 $M_C$ を結ぶ。中点連結定理 により、$M_CM_B\parallel BC$ かつ $M_CM_B=\frac12BC$ である。
段 2(2 本の中線は交わる)。次の事実を使う(平面図形の出発点として認め、この記事では証明しない):直線 $\ell$ は、$\ell$ の上にない点全体を 2 つの側に分ける。$\ell$ の上にない 2 点は、2 点を結ぶ線分が $\ell$ と交わるときちょうど反対側にあり、交わらないときちょうど同じ側にある。また、$P$ と $Q$ が同じ側、$Q$ と $R$ が反対側にあれば、$P$ と $R$ は反対側にある。
2 つの証明は同じことを別の言葉で言っている。1 つ目の証明の段 1 の計算「$\vec a+2\vec m_A=\vec a+\vec b+\vec c$」は、3 つの文字について対称な式が出てくることで 3 本の中線を一度に扱っている。2 つ目の証明は、相似という図形の言葉で $2:1$ を導いている。
紙で三角形を切り抜き、重心の位置に指を当てると、板は釣り合う。この節では、まず重心が三角形の面積をどう分けるかを見る。
三角形 $ABC$ の重心を $G$ とすると、三角形 $GBC$、$GCA$、$GAB$ の面積はどれも三角形 $ABC$ の面積の $\frac13$ である。さらに、3 本の中線で分けた 6 つの三角形 $GBM_A$、$GM_AC$、$GCM_B$、$GM_BA$、$GAM_C$、$GM_CB$ の面積はどれも $\frac16$ である。
方針:底辺が同じ三角形の面積の比は高さの比であり、高さが同じ三角形の面積の比は底辺の比である。これを重心の $2:1$ に使う。
段 1($GBC$)。三角形 $ABC$ と三角形 $GBC$ は底辺 $BC$ が共通である。$A$ から直線 $BC$ までの距離を $h$ とする。$G$ は中線 $AM_A$ を $2:1$ に内分するので、$G$ は直線 $BC$ の上の点 $M_A$ から $A$ に向かって $AM_A$ の $\frac13$ だけ進んだ点である。$A$ と $G$ から直線 $BC$ に垂線を下ろすと、2 本の垂線は平行なので、平行線と線分の比により、$G$ から直線 $BC$ までの距離は $\frac13h$ である。よって三角形 $GBC$ の面積は $\frac12BC\cdot\frac13h=\frac13\cdot\frac12BC\cdot h$ で、三角形 $ABC$ の面積の $\frac13$ である。
段 2(残りの 2 つ)。同じく、中線 $BM_B$、$CM_C$ を使うと、三角形 $GCA$、$GAB$ の面積も $\frac13$ である。
段 3(6 つの三角形)。三角形 $GBM_A$ と $GM_AC$ は、$G$ から直線 $BC$ までの高さが共通で、底辺 $BM_A=M_AC$ が等しいので面積が等しい。2 つを合わせると三角形 $GBC$ なので、それぞれ $\frac13\cdot\frac12=\frac16$ である。ほかの 4 つも同じである。$\square$
ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$、$G(4,4)$ で確かめる。3 点 $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$、$(x_3,y_3)$ の三角形の面積は $\frac12\bigl|(x_2-x_1)(y_3-y_1)-(y_2-y_1)(x_3-x_1)\bigr|$ である(靴ひも公式)。
面積が 3 等分されることは、重心が三角形の「真ん中」であることの 1 つの表れである。板の釣り合いそのものは、次のように考えると中線と結びつく。
厚さが一様な三角形の板を、辺 $BC$ に平行な細い帯に切る。$A$ からの距離の割合が $t$($0< t\le1$)のところの帯は、辺 $AB$ 上の点 $\vec a+t(\vec b-\vec a)$ と辺 $AC$ 上の点 $\vec a+t(\vec c-\vec a)$ を結ぶ線分である。その中点は
$$
\frac{\bigl(\vec a+t(\vec b-\vec a)\bigr)+\bigl(\vec a+t(\vec c-\vec a)\bigr)}2=\vec a+t\Bigl(\frac{\vec b+\vec c}2-\vec a\Bigr)=\vec a+t(\vec m_A-\vec a)
$$
で、中線 $AM_A$ の上にある。細い帯はその中点で釣り合うので、どの帯も中線 $AM_A$ の上で釣り合い、板全体も直線 $AM_A$ の上で釣り合う。同じく板は直線 $BM_B$ の上でも釣り合う。2 本の中線の上で釣り合うので、釣り合いの点は 2 本の交点、つまり重心 $G$ である。
「細い帯はその中点で釣り合う」「帯ごとに釣り合えば全体も釣り合う」は物理の考え方で、ここでは証明ではない。数学としては、板の釣り合いの点(面積の重心)を積分で定め、それが $G$ と一致することを prop-cen-integral で示す。
重心には、長さの言葉でのもう 1 つの特徴がある。点 $P$ を動かして $PA^2+PB^2+PC^2$ を考えると、これは $P=G$ のときにいちばん小さくなる。
ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$、$G(4,4)$ で、$f(P)=PA^2+PB^2+PC^2$ を計算する。
三角形 $ABC$ の重心を $G$ とする。平面(空間でもよい)のどんな点 $P$ についても
$$
PA^2+PB^2+PC^2=GA^2+GB^2+GC^2+3PG^2
$$
が成り立つ。
方針:$\vec p-\vec a=(\vec p-\vec g)+(\vec g-\vec a)$ と分けて 2 乗を展開し、交差項の和が $0$ になることを使う。
段 1(1 つの項)。内積の分配法則により
$$
PA^2=|\vec p-\vec a|^2=|(\vec p-\vec g)+(\vec g-\vec a)|^2=|\vec p-\vec g|^2+2(\vec p-\vec g)\cdot(\vec g-\vec a)+|\vec g-\vec a|^2
$$
である。つまり $PA^2=PG^2+2(\vec p-\vec g)\cdot(\vec g-\vec a)+GA^2$ である。
段 2(3 つを足す)。$PB^2$、$PC^2$ も同じ形なので、3 つを足すと
$$
PA^2+PB^2+PC^2=3PG^2+2(\vec p-\vec g)\cdot\bigl((\vec g-\vec a)+(\vec g-\vec b)+(\vec g-\vec c)\bigr)+GA^2+GB^2+GC^2
$$
である。
段 3(交差項)。thm-cen-main の $\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ から
$$
(\vec g-\vec a)+(\vec g-\vec b)+(\vec g-\vec c)=3\vec g-(\vec a+\vec b+\vec c)=\vec0
$$
なので、段 2 の真ん中の項は $0$ である。これで等式が示せた。$\square$
段 3 の $\overrightarrow{AG}+\overrightarrow{BG}+\overrightarrow{CG}=\vec0$、言いかえると $\overrightarrow{GA}+\overrightarrow{GB}+\overrightarrow{GC}=\vec0$ は、重心の性質の中でいちばん使いやすい形である。
三角形 $ABC$ の重心を $G$ とする。
方針:1 は thm-cen-leibniz の $3PG^2\ge0$ から出る。2 は thm-cen-leibniz に $P=A,B,C$ を入れて足す。
段 1(最小)。thm-cen-leibniz の右辺で、$GA^2+GB^2+GC^2$ は $P$ によらない。$3PG^2\ge0$ で、等号は $PG=0$、つまり $P=G$ のときに限る。よって左辺は $P=G$ のときに限り最小で、最小値は $GA^2+GB^2+GC^2$ である。
段 2(最小値を辺で書く)。$S=GA^2+GB^2+GC^2$ とおく。thm-cen-leibniz で $P=A$ とすると $0+AB^2+AC^2=S+3GA^2$ である。$P=B$、$P=C$ でも同じく $BA^2+BC^2=S+3GB^2$、$CA^2+CB^2=S+3GC^2$ である。3 つを足すと、左辺は $2(AB^2+BC^2+CA^2)$、右辺は $3S+3(GA^2+GB^2+GC^2)=6S$ である。よって $S=\frac{AB^2+BC^2+CA^2}3$ である。$\square$
ex-cen-first の三角形で、$AB^2=68$、$BC^2=16+64=80$、$CA^2=116$ である。
本文の例の三角形で、$f(P)=PA^2+PB^2+PC^2$ の値が等しい点を結んだ線(等高線)。どれも重心 $G$ を中心とする円で、$G$ から距離 $r$ の円の上では $f=88+3r^2$ になることを見る図。
thm-cen-leibniz から、$f(P)$ の値が一定の点の集まりは $G$ を中心とする円である(図2)。この形の式は、数学のいろいろなところに現れる。
thm-cen-leibniz を座標で書くと、$A,B,C$ の $x$ 座標を $x_1,x_2,x_3$、その平均を $\bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3$ として、$x$ 座標の部分は
$$
(x-x_1)^2+(x-x_2)^2+(x-x_3)^2=\sum_{i=1}^3(x_i-\bar x)^2+3(x-\bar x)^2
$$
である($y$ 座標の部分も同じ)。これは「データの平均値は、二乗誤差の和をいちばん小さくする値である」という統計の定理の、データが 3 個の場合そのものである(平均値と二乗誤差)。重心は、3 頂点の座標というデータの平均値であり、thm-cen-leibniz は平面の点についての「平均値と二乗誤差」である。ex-cen-sum-squares では、$x$ 座標 $0,8,4$ の平均 $4$ のまわりの二乗誤差の和が $16+16+0=32$、$y$ 座標 $0,2,10$ の平均 $4$ のまわりが $16+4+36=56$ で、合わせて $88$ である。
点が 2 個のときの同じ式は、線分 $AB$ の中点 $M$ について $PA^2+PB^2=MA^2+MB^2+2PM^2$ となる。$P=C$ とおくと $CA^2+CB^2=2\bigl(\frac{AB}2\bigr)^2+2CM^2$ で、これは 中線定理 である(中線定理(高校数学))。
重心の式 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ は、3 つの位置ベクトルの平均である。物理では、点に「重さ(質量)」をのせて、その釣り合いの点を考える。
点 $P_1,\dots,P_n$ にそれぞれ正の数 $m_1,\dots,m_n$(質量)が与えられているとき、
$$
\vec p=\frac{m_1\vec p_1+m_2\vec p_2+\cdots+m_n\vec p_n}{m_1+m_2+\cdots+m_n}
$$
で定まる点 $P$ を、この質点の集まりの 質量中心 という。
3 頂点に等しい質量をのせたときの質量中心が重心 $G$ である。質量中心は、いくつかの点をまとめてから計算してもよい。
点 $P_1,\dots,P_n$(質量 $m_1,\dots,m_n$)を 2 つの組 $\{P_1,\dots,P_k\}$ と $\{P_{k+1},\dots,P_n\}$ に分け、それぞれの組の質量中心を $Q_1$、$Q_2$、質量の合計を $M_1=m_1+\cdots+m_k$、$M_2=m_{k+1}+\cdots+m_n$ とする。全体の質量中心は、$Q_1$ に質量 $M_1$、$Q_2$ に質量 $M_2$ をのせた 2 点の質量中心に等しい。
方針:def-cen-mass の分子を 2 つの組に分けて書き直す。
段 1。$Q_1$ の定義から $m_1\vec p_1+\cdots+m_k\vec p_k=M_1\vec q_1$、$Q_2$ の定義から $m_{k+1}\vec p_{k+1}+\cdots+m_n\vec p_n=M_2\vec q_2$ である。
段 2。全体の質量中心の分子は $M_1\vec q_1+M_2\vec q_2$、分母は $M_1+M_2$ である。これは $Q_1$(質量 $M_1$)と $Q_2$(質量 $M_2$)の質量中心の式そのものである。$\square$
3 頂点の質量の比 $(m_1:m_2:m_3)$ で三角形の中の点を表す方法を 重心座標 という(重心座標)。重心は $(1:1:1)$ である。
rem-cen-plate の「板の釣り合いの点」を数学として定めるには、積分を使う。体積と回転体 では、2 つのグラフ $y=g(x)$、$y=f(x)$($g\le f$)と直線 $x=\alpha$、$x=\beta$ で囲まれた図形 $D$ について、面積 $S=\int_\alpha^\beta(f-g)\,dx$ と
$$
\bar x=\frac1S\int_\alpha^\beta x\,\bigl(f(x)-g(x)\bigr)\,dx,\qquad \bar y=\frac1S\int_\alpha^\beta\frac{f(x)+g(x)}2\bigl(f(x)-g(x)\bigr)\,dx
$$
で 重心 $(\bar x,\bar y)$ を定めた。これは $D$ を縦の細い帯に切り、位置 $x$ の帯(長さ $f-g$、中点の高さ $\frac{f+g}2$)の質量中心をとったものである。三角形の板については、この重心が頂点の平均 $G$ と一致する。
三角形の頂点の $x$ 座標を $x_1\le x_2\le x_3$($x_1< x_3$)とする。三角形を縦線図形として見たとき、体積と回転体 の定義による重心の $x$ 座標は
$$
\bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3
$$
である。
方針:直線 $x=t$ で三角形を切った線分の長さ $\ell(t)$ は、$x_2$ の左右でそれぞれ 1 次式になる。それを積分する。
段 1(帯の長さ)。頂点を $x$ 座標の小さい順に $P_1,P_2,P_3$ とする。直線 $x=x_2$ で三角形を切った線分の長さを $L$ とする($P_2$ と、辺 $P_1P_3$ 上の点を結ぶ線分)。$x_1< x_2$ のとき、$x_1\le t\le x_2$ の範囲では、三角形の上の縁と下の縁はどちらも $P_1$ を通る線分なので、$\ell(t)$ は $t$ の 1 次式で、$\ell(x_1)=0$、$\ell(x_2)=L$ である。よって $h=x_2-x_1$ として $\ell(t)=\frac{L}{h}(t-x_1)$ である。同じく $x_2< x_3$ のとき、$x_2\le t\le x_3$ では $k=x_3-x_2$ として $\ell(t)=\frac{L}{k}(x_3-t)$ である。
段 2(面積)。$\int_{x_1}^{x_2}\frac Lh(t-x_1)\,dt=\frac Lh\cdot\frac{h^2}2=\frac{Lh}2$、同じく右側は $\frac{Lk}2$ なので、$S=\frac{L(h+k)}2=\frac{L(x_3-x_1)}2$ である。
段 3(左側のモーメント)。$t=x_1+hs$($0\le s\le1$)と置換すると、$dt=h\,ds$、$t-x_1=hs$ なので
$$
\int_{x_1}^{x_2}t\cdot\frac Lh(t-x_1)\,dt=\int_0^1(x_1+hs)\cdot\frac Lh\cdot hs\cdot h\,ds=Lh\int_0^1(x_1s+hs^2)\,ds=Lh\Bigl(\frac{x_1}2+\frac h3\Bigr)=\frac{Lh(x_1+2x_2)}6
$$
である。最後の等号は $3x_1+2h=3x_1+2(x_2-x_1)=x_1+2x_2$ による。
段 4(右側のモーメント)。$t=x_3-ks$ と置換すると、同じ計算で
$$
\int_{x_2}^{x_3}t\cdot\frac Lk(x_3-t)\,dt=Lk\int_0^1(x_3s-ks^2)\,ds=Lk\Bigl(\frac{x_3}2-\frac k3\Bigr)=\frac{Lk(2x_2+x_3)}6
$$
である。最後の等号は $3x_3-2k=3x_3-2(x_3-x_2)=2x_2+x_3$ による。
段 5(まとめる)。$h(x_1+2x_2)+k(2x_2+x_3)$ と $(h+k)(x_1+x_2+x_3)$ の差は
$$
h\bigl(x_1+2x_2-x_1-x_2-x_3\bigr)+k\bigl(2x_2+x_3-x_1-x_2-x_3\bigr)=h(x_2-x_3)+k(x_2-x_1)=-hk+kh=0
$$
なので、段 3 と段 4 の和は $\frac{L(h+k)(x_1+x_2+x_3)}6$ である。これを段 2 の $S=\frac{L(h+k)}2$ で割って $\bar x=\frac{x_1+x_2+x_3}3$ を得る。
段 6(辺が縦のとき)。$x_1=x_2$($h=0$)のときは段 3 の積分がなく、$x_2=x_3$($k=0$)のときは段 4 の積分がないが、段 5 の式は $h=0$ や $k=0$ を入れてもそのまま成り立つ。$\square$
$y$ 座標についても、同じ計算を横の帯で行うと $\bar y=\frac{y_1+y_2+y_3}3$ が得られる。縦の帯で定めた $\bar y$ と横の帯で計算した値が一致することは 2 重積分の性質で、体積と回転体 で述べられている(本記事では証明しない)。
頂点 $(1,0)$、$(3,0)$、$(1,2)$ の三角形は、$1\le x\le3$ で $g(x)=0$、$f(x)=3-x$ の間の図形である。
重心が分かると、回転体の体積が積分なしで求まる。Pappus–Guldinus の定理:$a\le x\le b$ で $g(x)\le y\le f(x)$ を満たす点の集まり(2 つのグラフの間の図形)を考える。$g\ge0$ ならこの図形を $x$ 軸の周りに、$a\ge0$ なら $y$ 軸の周りに 1 回転させた立体の体積は、「図形の面積 × 重心が 1 回転で動く距離」に等しい(証明は 体積と回転体。そこで証明されているのはこの形の図形の場合で、本記事でもこの形でだけ使う)。
ex-cen-integral の三角形(面積 $2$、重心 $\bigl(\frac53,\frac23\bigr)$)を回転させる。この三角形は $1\le x\le3$ で $g(x)=0$、$f(x)=3-x$ の間の図形で、$g\ge0$、$a=1\ge0$ なので、上の定理がどちらの軸にも使える。
頂点 $(1,0)$、$(3,0)$、$(1,2)$ の三角形を $y$ 軸の周りに回転させる図。重心 $\bigl(\frac53,\frac23\bigr)$ が 1 回転で描く円(破線)の長さ $2\pi\cdot\frac53$ に面積 $2$ を掛けると、回転体の体積 $\frac{20\pi}3$ になることを見る図。
重心のよい性質は、「三角形」「中点」「距離の 2 乗」のどれかを変えると崩れる。
| 変えたこと | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 三角形を四角形にする | 頂点の平均が板の重心になる | ex-cen-quad |
| 中線を、重心を通るほかの直線にする | 面積を 2 等分する | ex-cen-line |
| 辺の中点を 3 等分点にする | 3 本が 1 点で交わる | ex-cen-trisect |
| 距離の 2 乗の和を、距離の和にする | 最小にする点が重心 | ex-cen-distance-sum |
頂点 $(0,0)$、$(6,0)$、$(3,3)$、$(0,3)$ の四角形(台形)を考える。
台形を対角線で 2 つの三角形に分け、それぞれの重心 $G_1$、$G_2$ を面積で重み付けして板の重心 $\bigl(\frac73,\frac43\bigr)$ を求めた図。4 頂点の平均 $\bigl(\frac94,\frac32\bigr)$(×印)とずれていることを見る図。
ex-cen-first の $A(0,0)$、$B(8,2)$、$C(4,10)$(面積 $36$)で、重心 $G(4,4)$ を通り辺 $BC$ に平行な直線を引く。$\overrightarrow{BC}=(-4,8)$ なので傾きは $-2$ で、直線は $y=-2x+12$ である。
$A(0,0)$、$B(3,0)$、$C(0,3)$ とし、辺 $BC$、$CA$、$AB$ をそれぞれ $B$、$C$、$A$ の側から $1:2$ に分ける点を $D(2,1)$、$E(0,2)$、$F(1,0)$ とする。
$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(3,1)$ とする。重心は $G\bigl(3,\frac13\bigr)$ である。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する