重み付き射影空間

同義語:weighted projective space

概要

重み付き射影空間(weighted projective space)とは、正の整数の重み $q_0,\dots,q_n$ を変数の次数として与えた多項式環 $k[x_0,\dots,x_n]$ の Proj として定まる射影的なスキーム $\mathbb{P}(q_0,\dots,q_n)$ のことである。座標近傍 $x_i\ne0$ は、$k$ が 1 の原始 $q_i$ 乗根を含むとき、アフィン空間の位数 $q_i$ の巡回群による商で、全体は $n$ 次元の正規な射影多様体だが、一般には特異点をもつ。Veronese 部分環を使うと重みを簡約でき、どの重み付き射影空間も整った重みのものと同型になり、重みが 2 つのものはすべて射影直線になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Proj(次数付き環の射影スキーム), 射影空間, 次数付き環, 射影射

射影空間 $\mathbb{P}^n_k$ は、すべての変数に次数 $1$ を与えた多項式環 $k[x_0,\dots,x_n]$ の Proj である。変数に $1$ 以外の正の次数を与えても Proj は定義でき、得られるスキームを重み付き射影空間という。重み付き射影空間は射影的な正規多様体だが、一般には特異点をもち、その特異点は有限巡回群によるアフィン空間の商の形をしている。
この記事では、重み付き射影空間を定義し、アフィン座標近傍を有限巡回群の不変式環として記述する。次に Veronese 部分環を使って重みを簡約する定理を証明し、たとえば重みが 2 つの重み付き射影直線はすべて $\mathbb{P}^1$ と同型であることを導く。例として $\mathbb{P}(1,1,2)$(2 次錐面)、$\mathbb{P}(1,2,3)$ の特異点、$\mathbb{P}(2,3,1)$ の中の Weierstrass 曲線を計算する。

定義

以下 $k$ を体とし、$n\ge1$ とする。

重み付き射影空間

正の整数の組 $q=(q_0,\dots,q_n)$ を重みという。多項式環 $S(q):=k[x_0,\dots,x_n]$ に $\deg x_i:=q_i$ で次数を入れた次数付き環を考え、
$$ \mathbb{P}(q)=\mathbb{P}(q_0,\dots,q_n):=\operatorname{Proj}S(q) $$
を重み $q$ の重み付き射影空間(weighted projective space)という。$S(q)$ の次数 $m$ の部分は、$\sum_iq_ie_i=m$ となる単項式 $x_0^{e_0}\cdots x_n^{e_n}$ が張る $k$ 上のベクトル空間である。

すべての $q_i$ が $1$ なら $\mathbb{P}(1,\dots,1)=\mathbb{P}^n_k$ である(Proj(次数付き環の射影スキーム) の例「多項式環の Proj」)。体の代わりに環 $A$ をとっても同じ定義ができ、重み付き射影空間は $\mathbb{Z}$ 上の $\mathbb{P}(q)_{\mathbb{Z}}$ の底変換として得られるが、この記事では体の上だけを扱う。
$\mathbb{P}(q)$ は $\operatorname{Proj}$ なので、閉部分スキームは斉次イデアルで与えられる。たとえば次数 $m$ の斉次多項式 $F$ に対して $V_+(F)=\operatorname{Proj}S(q)/(F)$ を、$\mathbb{P}(q)$ の次数 $m$ の超曲面という。

アフィン座標近傍

座標近傍は巡回群による商

$q$ を重みとし、$i\in\{0,\dots,n\}$ を固定する。$k[x_j\mid j\ne i]$ の単項式 $\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ のうち $\sum_{j\ne i}q_je_j\equiv0\pmod{q_i}$ となるものが張る部分環を $R_i$ とする。

  1. $D_+(x_i)\cong\operatorname{Spec}R_i$ であり、$\mathbb{P}(q)=D_+(x_0)\cup\cdots\cup D_+(x_n)$ である。
  2. $k$ が 1 の原始 $q_i$ 乗根 $\zeta$ を含むとする。$\zeta$ が生成する位数 $q_i$ の巡回群 $\mu_{q_i}$ を $\zeta\cdot x_j:=\zeta^{q_j}x_j$($j\ne i$)で $k[x_j\mid j\ne i]$ に作用させると、$R_i$ は不変式環 $k[x_j\mid j\ne i]^{\mu_{q_i}}$ に等しい。したがって $D_+(x_i)$ は $\mathbb{A}^n_k$ の $\mu_{q_i}$ による商 $\mathbb{A}^n_k/\mu_{q_i}:=\operatorname{Spec}k[x_j\mid j\ne i]^{\mu_{q_i}}$ と同型である。
分母を払う

1:Proj(次数付き環の射影スキーム) の定理「Proj はスキームである」の 2 により $D_+(x_i)\cong\operatorname{Spec}S(q)_{(x_i)}$ であり、$S(q)_{(x_i)}$ は $f/x_i^m$($f$ は次数 $mq_i$ の斉次多項式)の全体である。$x_i=1$ を代入する写像
$$ \varepsilon\colon S(q)_{(x_i)}\to k[x_j\mid j\ne i],\qquad f/x_i^m\longmapsto f(x_0,\dots,x_{i-1},1,x_{i+1},\dots,x_n) $$
は表し方によらず定まる環準同型である($f/x_i^m=fx_i^l/x_i^{m+l}$ で値が変わらない)。
単射:次数 $mq_i$ の単項式 $x^e$ は、指数 $e_j$($j\ne i$)から $e_i=(mq_i-\sum_{j\ne i}q_je_j)/q_i$ が決まるので、$x_i=1$ を代入しても異なる単項式は異なる単項式に写る。よって $\varepsilon(f/x_i^m)=0$ なら $f=0$ である。
像が $R_i$ であること:$\varepsilon(x^e/x_i^m)=\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ の次数和 $\sum_{j\ne i}q_je_j=(m-e_i)q_i$ は $q_i$ の倍数なので、像は $R_i$ に入る。逆に $\sum_{j\ne i}q_je_j=rq_i$($r\ge0$)なら、$\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ は次数 $rq_i$ の斉次元なので $\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}/x_i^r$ の像である。
被覆:$\mathbb{P}(q)$ の点は $S(q)_+$ を含まない斉次素イデアル $\mathfrak{p}$ である。$S(q)_+$ は $x_0,\dots,x_n$ で生成されるので、ある $x_i$ は $\mathfrak{p}$ に属さず、$\mathfrak{p}\in D_+(x_i)$ である。
2:$\zeta$ は単項式 $\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ を $\zeta^{\sum_{j\ne i}q_je_j}$ 倍する。異なる単項式は 1 次独立なので、多項式が不変であることは、現れる単項式がすべて不変であることと同値である。$\zeta$ の位数は $q_i$ なので、単項式が不変であることは $\sum_{j\ne i}q_je_j\equiv0\pmod{q_i}$ と同値である。$\square$

2 の仮定は、$k$ の標数が $q_i$ を割らず、$k$ が十分大きいとき(たとえば代数閉体のとき)に満たされる。$q_i=1$ の近傍では $R_i$ は多項式環全体なので、$D_+(x_i)\cong\mathbb{A}^n_k$ である。

整・正規・射影的

$\mathbb{P}(q)$ は $k$ 上 $n$ 次元の整スキームで、正規であり、$k$ 上射影的である。

整で $n$ 次元であること. $R_i$ は多項式環の部分環なので整域である。$R_i$ は $T:=k[x_j^{q_i}\mid j\ne i]$($n$ 変数の多項式環)を含み、$R_i$ の各単項式 $u$ は $u^{q_i}\in T$ をみたすので $R_i$ は $T$ 上整である。$R_i$ の単項式 $\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ で $e_j=q_ia_j+r_j$($0\le r_j< q_i$)と書くと、$\prod_jx_j^{r_j}$ の次数和も $q_i$ の倍数なので $R_i$ に属し、もとの単項式はそれと $T$ の単項式 $\prod_jx_j^{q_ia_j}$ の積である。よって $R_i$ は指数がすべて $q_i$ 未満の有限個の単項式で $T$ 上生成される有限 $T$ 加群であり、$\dim R_i=\dim T=n$ である。$D_+(x_i)\cap D_+(x_j)=D_+(x_ix_j)$ は零でない環 $S(q)_{(x_ix_j)}$ のスペクトルなので空でない。既約な開集合が互いに交わる有限個で覆われるので $\mathbb{P}(q)$ は既約であり、各近傍が整なので整スキームである。
正規であること. $R:=k[x_j\mid j\ne i]$ に、$\prod_{j\ne i}x_j^{e_j}$ の次数を $\sum_{j\ne i}q_je_j\bmod q_i\in\mathbb{Z}/q_i$ として $\mathbb{Z}/q_i$ 次数を入れると、$R_i$ は次数 $0$ の部分 $R^{0}$ である。$z\in\operatorname{Frac}(R_i)$ が $R_i$ 上整とする。$z$ は $R$ 上整で、$R$ は一意分解整域なので正規であり、$z\in R$ である。$z=a/b$($a,b\in R_i$、$b\ne0$)と書き、$z=\sum_gz_g$ を次数ごとの成分に分けると、$bz=a$ の次数 $g\ne0$ の成分は $bz_g=0$ を与え($b$ は次数 $0$)、$z_g=0$ となる。よって $z\in R_i$ であり、$R_i$ は正規である。
射影的であること. $S(q)$ は $k$ 上有限生成な次数付き環なので、射影射 の例「次数付き環のProj」により $\operatorname{Proj}S(q)$ は $k$ 上射影的である。$\square$

Veronese 部分環と重みの簡約

次数付き環 $S$ と正の整数 $d$ に対し、$S^{(d)}:=\bigoplus_{m\ge0}S_{md}$ に $(S^{(d)})_m:=S_{md}$ で次数を入れたものを $S$ の Veronese 部分環という。

Veronese部分環のProj

$S$ を次数付き環、$d\ge1$ とすると、$\mathfrak{p}\mapsto\mathfrak{p}\cap S^{(d)}$ は $S_0$ 上のスキームの同型 $\operatorname{Proj}S\cong\operatorname{Proj}S^{(d)}$ を与える。

冪で次数をそろえる

要点:正の次数の斉次元 $f$ について $D_+(f)=D_+(f^d)$ であり、$S_{(f)}$ と $(S^{(d)})_{(f^d)}$ は $S_f$ の同じ部分環である。

証明を開く

$f\in S_e$($e>0$)とする。$\mathfrak{p}$ は素なので $f\notin\mathfrak{p}\iff f^d\notin\mathfrak{p}$ である。$S_{(f)}$ の元 $a/f^m$($a\in S_{me}$)は $af^{m(d-1)}/f^{md}$ と書け、分子は $S_{mde}\subset S^{(d)}$ に属するので $(S^{(d)})_{(f^d)}$ の元である。逆の包含は定義から明らかである。よって $S_{(f)}=(S^{(d)})_{(f^d)}$ であり、$D_+(f)\cong\operatorname{Spec}S_{(f)}=\operatorname{Spec}(S^{(d)})_{(f^d)}\cong D^{(d)}_+(f^d)$ である($D^{(d)}_+$ は $\operatorname{Proj}S^{(d)}$ の中の基本開集合)。この同型は点 $\mathfrak{p}$ を、$\mathfrak{p}S_f\cap S_{(f)}$ に対応する $\operatorname{Proj}S^{(d)}$ の点、すなわち $\mathfrak{p}\cap S^{(d)}$ に写す(Proj(次数付き環の射影スキーム) の補題「斉次素イデアルと次数 0 の局所化」の 1 を両側で使う)。

$f$ が正の次数の斉次元を動くと、$D_+(f)$ は $\operatorname{Proj}S$ を覆う。$\operatorname{Proj}S^{(d)}$ の点 $\mathfrak{q}$ は $S^{(d)}_+$ を含まないので、$\mathfrak{q}$ に属さない $g\in S_{md}$($m>0$)がある。$g$ は $S$ の正の次数の斉次元で、$\mathfrak{q}\in D^{(d)}_+(g)\subset D^{(d)}_+(g^d)$ だから、$D^{(d)}_+(f^d)$ も $\operatorname{Proj}S^{(d)}$ を覆う。重なり $D_+(f)\cap D_+(g)=D_+(fg)$ と $D^{(d)}_+(f^d)\cap D^{(d)}_+(g^d)=D^{(d)}_+((fg)^d)$ の上で、2 つの同型はどちらも $S_{(fg)}=(S^{(d)})_{((fg)^d)}$ の恒等写像から来るので一致する。よって局所的な同型が貼り合わさり、$\operatorname{Proj}S\cong\operatorname{Proj}S^{(d)}$ を得る。どの環準同型も $S_0$ 上なので、$S_0$ 上の同型である。$\square$

重みの簡約

$q=(q_0,\dots,q_n)$ を重みとする。

  1. 正の整数 $c$ がすべての $q_j$ を割るなら、$\mathbb{P}(q_0,\dots,q_n)\cong\mathbb{P}(q_0/c,\dots,q_n/c)$ である。
  2. ある $i$ と正の整数 $d$ について、$d$ が $j\ne i$ のすべての $q_j$ を割り、$\gcd(d,q_i)=1$ なら、
    $$ \mathbb{P}(q_0,\dots,q_n)\cong\mathbb{P}(q_0/d,\dots,q_{i-1}/d,\ q_i,\ q_{i+1}/d,\dots,q_n/d) $$
    である($q_i$ だけ割らない)。

1:$S(q)$ の斉次元の次数はすべて $c$ の倍数なので、$S(q)^{(c)}$ は環としては $S(q)$ そのもので、次数を $c$ で割ったもの、すなわち $S(q/c)$ である。lem-wps-veronese により $\mathbb{P}(q)\cong\operatorname{Proj}S(q)^{(c)}=\mathbb{P}(q/c)$ である。
2:単項式 $x^e$ の次数 $\sum_jq_je_j$ は $d$ を法として $q_ie_i$ に合同である。$\gcd(d,q_i)=1$ なので、次数が $d$ の倍数であることは $d\mid e_i$ と同値である。したがって $S(q)^{(d)}$ は、$x_i^d$ と $x_j$($j\ne i$)が生成する部分環 $k[x_i^d,\ x_j\ (j\ne i)]$ に等しく、これらは代数的に独立なので $n+1$ 変数の多項式環である。$S(q)^{(d)}$ の次数では $\deg x_i^d=q_id/d=q_i$、$\deg x_j=q_j/d$ である。lem-wps-veronese により主張を得る。$\square$

重みの組 $q$ が整っている(well-formed)とは、$n+1$ 個の重みのうちどの $n$ 個の最大公約数も $1$ であることをいう。

整った重みへの帰着

任意の重み付き射影空間は、整った重みの重み付き射影空間と同型である。とくに $\mathbb{P}(a,b)\cong\mathbb{P}^1_k$($a,b\ge1$)であり、重み付き射影直線はすべて射影直線である。

thm-wps-reduction の 1 で全体の最大公約数を $1$ にする。整っていなければ、ある $i$ について $j\ne i$ の重みの最大公約数 $d$ が $1$ より大きい。全体の最大公約数は $1$ なので $\gcd(d,q_i)=1$ であり、thm-wps-reduction の 2 が使えて重みの和は真に減る。当てたあとの重みの全体の最大公約数も $1$ である(素数 $p$ が $q_i$ とすべての $q_j/d$ を割れば、$p$ はすべての $q_j$ を割る)。重みの和は正の整数なので、これを繰り返すと有限回で整った重みに達する。$n=1$ では「どの 1 個の重みも最大公約数が $1$」なので、整った重みは $(1,1)$ だけであり、$\mathbb{P}(a,b)\cong\mathbb{P}(1,1)=\mathbb{P}^1_k$ である。$\square$

$\mathbb{P}(1,2)\cong\mathbb{P}^1$ の直接の計算は Proj(次数付き環の射影スキーム) の例「重み付きの次数でも射影直線になる例」にある。同じ手順で $\mathbb{P}(1,2,2)\cong\mathbb{P}(1,1,1)=\mathbb{P}^2$($i=0$、$d=2$)、$\mathbb{P}(2,3,6)\cong\mathbb{P}(2,1,2)\cong\mathbb{P}(1,1,1)$($d=3$ で $q_0=2$ を残し、次に $d=2$ で $q_1=1$ を残す)となる。重みの組が違っても重み付き射影空間が同型になりうるので、重みは整ったものに直してから比べる。

例

$\mathbb{P}(1,1,2)$ と 2 次錐面

$q=(1,1,2)$ とする。prop-wps-chart により $D_+(x_0)$ と $D_+(x_1)$ は $\mathbb{A}^2_k$ であり、$D_+(x_2)\cong\operatorname{Spec}R_2$ で、$R_2$ は $x_0^ax_1^b$($a+b$ が偶数)の張る環
$$ R_2=k[x_0^2,\ x_0x_1,\ x_1^2]\cong k[u,v,w]/(uw-v^2) $$
である。生成:$a+b$ が偶数なら $a,b$ はともに偶数かともに奇数で、$x_0^ax_1^b$ は $x_0^2,x_1^2$ と $x_0x_1$ の積に書ける。同型:$u,v,w\mapsto x_0^2,x_0x_1,x_1^2$ は $uw-v^2$ を $0$ に写し、$k[u,v,w]/(uw-v^2)$ は単項式 $u^\alpha v^\varepsilon w^\gamma$($\varepsilon\in\{0,1\}$)で張られ、それらの像 $x_0^{2\alpha+\varepsilon}x_1^{\varepsilon+2\gamma}$ は互いに異なるので 1 次独立である。よって $\mathbb{P}(1,1,2)$ の特異点は $D_+(x_2)$ の原点 $[0:0:1]$ ただ 1 つで、そこでは $uw=v^2$ の原点、すなわち $A_1$ 型の Du Val特異点(Du Val特異点 の命題「An型の特異点の解消」の $n=1$)である。$\mathbb{P}(1,1,2)$ 全体は $\mathbb{P}^3_k$ の 2 次錐面と同型である(射影射 の例「次数付き環のProj」)。

$\mathbb{P}(1,2,3)$ の 2 つの特異点

$q=(1,2,3)$ とする。$D_+(x_0)\cong\mathbb{A}^2_k$ である。$D_+(x_1)$ の環は $x_0^ax_2^c$($a+3c$ が偶数、すなわち $a\equiv c\pmod 2$)の張る環で、ex-wps-112 と同じ計算により $k[x_0^2,x_0x_2,x_2^2]\cong k[u,v,w]/(uw-v^2)$、原点は $A_1$ 型である。$D_+(x_2)$ の環は $x_0^ax_1^b$($a+2b\equiv0\pmod3$、すなわち $a\equiv b\pmod 3$)の張る環である。$m:=\min(a,b)$ とすると $a-m,b-m$ の一方は $0$、他方は $3$ の倍数なので、$x_0^ax_1^b=(x_0x_1)^m x_0^{a-m}x_1^{b-m}$ は $u=x_0^3$、$v=x_0x_1$、$w=x_1^3$ の単項式である。$u^\alpha v^\beta w^\gamma$($0\le\beta\le2$)の像 $x_0^{3\alpha+\beta}x_1^{\beta+3\gamma}$ は互いに異なる(指数の組から $\beta\bmod3$、したがって $\beta,\alpha,\gamma$ が決まる)ので、
$$ R_2\cong k[u,v,w]/(uw-v^3) $$
であり、原点 $[0:0:1]$ は $A_2$ 型である。こうして $\mathbb{P}(1,2,3)$ は $[0:1:0]$ に $A_1$ 型、$[0:0:1]$ に $A_2$ 型の特異点をもち、ほかでは非特異である(2 つの特異点の近傍以外は $D_+(x_0)$ に含まれる)。

$\mathbb{P}(2,3,1)$ の中の Weierstrass 曲線

$x,y,z$ の次数を $2,3,1$ とし、$a,b\in k$ について次数 $6$ の斉次多項式
$$ F:=y^2-x^3-axz^4-bz^6 $$
の定める超曲面 $E:=V_+(F)\subset\mathbb{P}(2,3,1)$ を考える。$z$ の重みは $1$ なので $D_+(z)\cong\mathbb{A}^2_k$(座標 $X=x/z^2$、$Y=y/z^3$)であり、$E\cap D_+(z)$ はアフィン曲線 $Y^2=X^3+aX+b$ である。残りの $E\cap V_+(z)$ は $\operatorname{Proj}B$、$B:=k[x,y]/(y^2-x^3)$($\deg x=2$、$\deg y=3$)である。$x\mapsto t^2$、$y\mapsto t^3$ により $B\cong k[t^2,t^3]\subset k[t]$($\deg t=1$)であり($B$ は $x^\alpha,x^\alpha y$ で張られ、それらの像 $t^{2\alpha},t^{2\alpha+3}$ は互いに異なる)、$B$ で $y^2=x^3$ なので $y$ を含まない斉次素イデアルは $x$ も含まない。よって $\operatorname{Proj}B=D_+(x)$ であり、$B_{(x)}$ は $k[t,t^{-1}]$ の次数 $0$ の部分 $k$ に含まれるので $B_{(x)}=k$ である。したがって $E$ は、アフィンの Weierstrass 曲線に 1 点 $[1:1:0]$ を加えたものである。$\mathbb{P}^2$ の中の 3 次曲線 $Y^2Z=X^3+aXZ^2+bZ^3$ で無限遠点を加えるのと同じ役割を、重み付きの斉次化が果たしている。

直感

重みが $1$ のとき、$\mathbb{P}^n$ の点は $\mathbb{A}^{n+1}\setminus\{0\}$ の点を $(x_0,\dots,x_n)\sim(\lambda x_0,\dots,\lambda x_n)$ で割ったものだった。重み付き射影空間では、スカラー倍を $\lambda\cdot(x_0,\dots,x_n)=(\lambda^{q_0}x_0,\dots,\lambda^{q_n}x_n)$ に取り替える。$x_i\ne0$ の点では $\lambda^{q_i}x_i=1$ と正規化できるが、そのような $\lambda$ は $1$ の $q_i$ 乗根の分だけ自由が残る。この残った自由度が prop-wps-chart の $\mu_{q_i}$ の作用であり、作用が自明でない点に特異点が生じうる。$\operatorname{Proj}S$ を錐 $\operatorname{Spec}S$ から頂点を除いたものの乗法群による商とみなす見方は Vak25 §9.3(p. 264)にある。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
thm-wps-reduction の 2 の $\gcd(d,q_i)=1$$q=(2,2,4)$、$i=0$、$d=2$2 の右辺は $\mathbb{P}(2,1,2)\cong\mathbb{P}^2$ だが、実際は 1 により $\mathbb{P}(2,2,4)\cong\mathbb{P}(1,1,2)$ で特異点をもち、$\mathbb{P}^2$ と同型でない
prop-wps-chart の 2 の「$k$ が 1 の原始 $q_i$ 乗根を含む」$k=\mathbb{Q}$、$q=(1,1,3)$、$i=2$$\mathbb{Q}$ の 1 の 3 乗根は $1$ だけで、位数 $3$ の巡回群を $\mathbb{Q}$ 上の対角作用として実現できない。$\mu_3(\mathbb{Q})=\{1\}$ の作用の不変式環は $\mathbb{Q}[x_0,x_1]$ 全体で、$R_2$($a+b\equiv0\pmod3$ の単項式の環)と一致しない

1 行目の $\mathbb{P}(1,1,2)$ が特異であることは ex-wps-112 による($\mathbb{P}^2$ は非特異)。2 行目でも 1 の主張 $D_+(x_2)\cong\operatorname{Spec}R_2$ は成り立ち、商としての記述だけが崩れる。

文献

定義と、$\mathbb{P}(m,n)\cong\mathbb{P}^1$、$\mathbb{P}(1,1,2)\cong\operatorname{Proj}k[u,v,w,z]/(uw-v^2)$ は Vak25 Definition 9.3.13・Exercise 9.3.P(p. 264)にあり、$\mathbb{P}(1,1,n)$ が次数 $n$ の有理正規曲線の射影錐であることは Exercise 9.3.Q(p. 265)にある。Veronese 部分環の Proj の同型は EGA2 2.4.7 にもある。

関連項目

参考文献

[1]
Ravi Vakil, The Rising Sea: Foundations of Algebraic Geometry, Princeton University Press, 2025, §9.3(Proj を頂点を除いた錐の商とみる見方、p. 264)、Definition 9.3.13・Exercise 9.3.P(p. 264)、Exercise 9.3.Q(p. 265)
[2]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique II. Étude globale élémentaire de quelques classes de morphismes, Publications Mathématiques de l'IHÉS 8, 1961, 2.4.7(Veronese 部分環の Proj)

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