Urquhartの定理

同義語:アーカートの定理Urquhart's theorem

概要

Urquhartの定理(Urquhart's theorem)とは、点 $A$ を通る 2 直線の一方に $A,B,B'$ がこの順に、他方に $A,C',C$ がこの順に並び、直線 $BC$ と $B'C'$ の交点を $D$ とするとき、$AB+BD=AC'+C'D$ ならば $AB'+B'D=AC+CD$ が成り立つという定理である。2 つの等式はどちらも、4 本の直線に接し、角 $A$ の内側で直線 $BC$、$B'C'$ について $A$ と反対側にある円があることと同値である。$A$、$D$ からこの円に引いた接線の長さを $t_A$、$t_D$ とすると、凸四角形 $ABDC'$ では辺が接線の長さの差になって 2 本の道はどちらも $t_A-t_D$、へこんだ四角形 $AB'DC$ では $t_A+t_D$ になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 傍接円をもつ四角形, 三角形の内心と傍心

高校での出発点:同じ 4 本の直線でできる 2 つの四角形

点 $A$ から 2 本の半直線を引き、一方の上に $A$ に近い方から $B$、$B'$、他方の上に $A$ に近い方から $C'$、$C$ をとる。線分 $BC$ と線分 $B'C'$ は交わるので、その交点を $D$ とする。すると 4 本の直線(2 本の半直線を含む直線と、直線 $BC$、$B'C'$)で、2 つの四角形ができる。へこみのない四角形 $ABDC'$ と、$D$ でへこんだ四角形 $AB'DC$ である(図 1)。
同じ 4 本の直線から、青い四角形 ABDC′ と、赤い破線のへこんだ四角形 AB′DC ができる 同じ 4 本の直線から、青い四角形 ABDC′ と、赤い破線のへこんだ四角形 AB′DC ができる
それぞれの四角形で、$A$ から出て 2 通りの道で $D$ まで行く長さを比べる。

有理数の座標で比べる

$A(0,0)$、$B(3,0)$、$B'\left(\dfrac{24}5,0\right)$、$C'(0,2)$、$C(0,4)$ とする。
(1) 交点 $D$。直線 $BC$ は $4x+3y=12$、直線 $B'C'$ は $5x+12y=24$ である。1 本目を 4 倍して 2 本目を引くと $11x=24$ で、
$$ D=\left(\frac{24}{11},\frac{12}{11}\right) $$
である。
(2) 四角形 $ABDC'$ の 2 本の道。$\overrightarrow{BD}=\left(-\dfrac9{11},\dfrac{12}{11}\right)$ から $BD=\dfrac{15}{11}$、$\overrightarrow{C'D}=\left(\dfrac{24}{11},-\dfrac{10}{11}\right)$ から $C'D=\dfrac{26}{11}$ で、
$$ AB+BD=3+\frac{15}{11}=\frac{48}{11},\qquad AC'+C'D=2+\frac{26}{11}=\frac{48}{11} $$
と等しい。
(3) 四角形 $AB'DC$ の 2 本の道。$\overrightarrow{B'D}=\left(-\dfrac{144}{55},\dfrac{60}{55}\right)=\dfrac{12}{55}(-12,5)$ から $B'D=\dfrac{12\cdot13}{55}=\dfrac{156}{55}$、$\overrightarrow{CD}=\left(\dfrac{24}{11},-\dfrac{32}{11}\right)=\dfrac8{11}(3,-4)$ から $CD=\dfrac{40}{11}$ で、
$$ AB'+B'D=\frac{264}{55}+\frac{156}{55}=\frac{420}{55}=\frac{84}{11},\qquad AC+CD=4+\frac{40}{11}=\frac{84}{11} $$
と、こちらも等しい。

  1. の等式が成り立つように点を選ぶと、(3) の等式も成り立った。これは偶然ではない。
角 $60^\circ$ と角 $100^\circ$ で比べる

2 本の半直線のなす角を $60^\circ$ とし、$AB=2$、$AB'=5$、$AC'=3$ とする。$AC$ を動かして、ex-urq-start の (2) と同じ型の等式 $AB+BD=AC'+C'D$ が成り立つ所を計算機で数値的に探すと、$AC\fallingdotseq5.5192$、$D\fallingdotseq(2.3166,\,1.9919)$ で
$$ AB+BD\fallingdotseq4.01694,\ \ AC'+C'D\fallingdotseq4.01694,\qquad AB'+B'D\fallingdotseq8.34196,\ \ AC+CD\fallingdotseq8.34196 $$
となる。角を $100^\circ$(鈍角)にして同じことをすると、$AC\fallingdotseq5.8034$、$D\fallingdotseq(0.8239,\,2.2347)$ で、$AB+BD\fallingdotseq AC'+C'D\fallingdotseq4.52532$、$AB'+B'D\fallingdotseq AC+CD\fallingdotseq9.73642$ となる($x$ 軸を 1 本目の半直線にとった座標。値は小数第 5 位まで。図 2・図 3)。

2 本の半直線のなす角が 60 度の場合。緑の円は 4 本の直線すべてに接する 2 本の半直線のなす角が 60 度の場合。緑の円は 4 本の直線すべてに接する
2 本の半直線のなす角が 100 度の場合も、4 本の直線すべてに接する緑の円がある 2 本の半直線のなす角が 100 度の場合も、4 本の直線すべてに接する緑の円がある

この記事で答える問いは次の 2 つである。

  1. 四角形 $ABDC'$ の 2 本の道の長さが等しければ、四角形 $AB'DC$ の 2 本の道の長さもいつも等しいか。逆はどうか。→ thm-urq-main
  2. なぜそうなるのか。→ 2 つの四角形に共通の傍接円がある(thm-urq-main (3))。
    四角形 $ABDC'$(へこみなし)四角形 $AB'DC$($D$ でへこむ)
    $A$ から $D$ への 2 本の道$AB+BD$ と $AC'+C'D$$AB'+B'D$ と $AC+CD$
    共通の円から見た辺各辺が接線の長さの差$B'D$、$CD$ が接線の長さの和
    道の長さどちらも $t_A-t_D$どちらも $t_A+t_D$
    円を得る道具傍接円をもつ四角形 の主定理辺を延ばした二等辺三角形

言葉の準備:Urquhart の配置

Urquhart の配置

点 $A$ を通る異なる 2 本の直線 $\ell$、$m$ をとる。$\ell$ の上に 3 点 $A,B,B'$ がこの順に並び、$m$ の上に 3 点 $A,C',C$ がこの順に並ぶとする。直線 $BC$ と直線 $B'C'$ の交点を $D$ とする。この 6 点の配置を Urquhart の配置 という。

直線 $BC$ と $B'C'$ が交わることと、2 つの四角形の形は、次の補題で確かめる。

交点 $D$ の位置と四角形の形

Urquhart の配置で、次が成り立つ。
(1) 直線 $BC$ と $B'C'$ はただ 1 点 $D$ で交わり、$D$ は線分 $BC$ の上にも線分 $B'C'$ の上にもある(端点ではない)。
(2) 四角形 $ABDC'$ は凸である。
(3) $D$ は、直線 $m$ について $B'$ と同じ側、直線 $\ell$ について $C$ と同じ側にある。

直線のどちら側にあるかを調べる

要点:直線 $B'C'$ は直線 $m$ と $C'$($A$ と $C$ の間)で交わるので $A$ と $C$ を分け、$B$ は $A$ と同じ側にあるから、線分 $BC$ は直線 $B'C'$ と交わる。同じく線分 $B'C'$ は直線 $BC$ と交わる。2 直線の交点は 1 つなので、それが $D$ である。凸であることは、4 本の辺の直線のそれぞれについて残りの 2 頂点が同じ側にあることを確かめる。

詳しい証明を開く

段 1(線分 $BC$ と直線 $B'C'$)。直線 $B'C'$ は直線 $m$ と点 $C'$ だけで交わり、$C'$ は $A$ と $C$ の間にあるので、$A$ と $C$ は直線 $B'C'$ について反対側にある。直線 $B'C'$ は直線 $\ell$ と点 $B'$ だけで交わり、$B$ は $A$ と $B'$ の間にあるので、$A$ と $B$ は同じ側にある。よって $B$ と $C$ は反対側にあり、線分 $BC$ は直線 $B'C'$ と、$B$、$C$ 以外の 1 点で交わる。

段 2(線分 $B'C'$ と直線 $BC$)。段 1 で $(B,C)$ と $(B',C')$ の役割を入れかえる。直線 $BC$ は $\ell$ と $B$ で交わり $B$ は $A$ と $B'$ の間にあるので、$A$ と $B'$ は直線 $BC$ について反対側にある。直線 $BC$ は $m$ と $C$ で交わり $C'$ は $A$ と $C$ の間にあるので、$A$ と $C'$ は同じ側にある。よって線分 $B'C'$ は直線 $BC$ と交わる。

段 3(交点)。直線 $BC$ と $B'C'$ は異なる直線($B$ は直線 $B'C'$ の上にない)なので、交点はただ 1 つである。段 1・段 2 の交点はどちらもこの点 $D$ で、$D$ は 2 本の線分の上にある。

段 4(凸)。直線 $AB$($=\ell$)について:$C'$ は $m$ の上で $A$ と異なり、$C$ と同じ側にある。$D$ は線分 $BC$ の $B$ 以外の点なので $C$ と同じ側にある。直線 $BD$($=BC$)について:段 2 より $A$ と $C'$ は同じ側にある。直線 $DC'$($=B'C'$)について:段 1 より $A$ と $B$ は同じ側にある。直線 $C'A$($=m$)について:$B$ は $B'$ と同じ側、$D$ は線分 $B'C'$ の $C'$ 以外の点なので $B'$ と同じ側にある。4 本とも残りの 2 頂点が同じ側にあるので、四角形 $ABDC'$ は凸である。この段で (3) も示された。$\square$

ex-urq-start では $D=\left(\dfrac{24}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ は $x>0$、$y>0$ にあり、$4\cdot\dfrac{24}{11}+3\cdot\dfrac{12}{11}=12$、$5\cdot\dfrac{24}{11}+12\cdot\dfrac{12}{11}=24$ で 2 本の直線の上にある。$0<\dfrac{24}{11}<3$ なので線分 $BC$ の上、$0<\dfrac{24}{11}<\dfrac{24}5$ なので線分 $B'C'$ の上にある。
四角形 $AB'DC$ は、頂点 $D$ が三角形 $AB'C$ の内部に入り込んだ、へこんだ四角形である((3) と (1) から、$D$ は三角形 $AB'C$ の 3 辺の直線のどれについても内側にある)。前の記事 傍接円をもつ四角形 の主定理は凸四角形についての定理なので、四角形 $AB'DC$ には直接使えない。この記事では、四角形 $AB'DC$ については接線の長さの計算と二等辺三角形の作図を直接行う。

主定理:Urquhart の定理

Urquhart の定理

Urquhart の配置(def-urq-setting)で、次の 3 つは同値である。
(1) $AB+BD=AC'+C'D$
(2) $AB'+B'D=AC+CD$
(3) 4 本の直線 $\ell$、$m$、$BC$、$B'C'$ に接する円 $\omega$ で、角 $\angle B'AC$ の内側(2 本の半直線を含む)にあり、直線 $BC$ についても直線 $B'C'$ についても $A$ と反対の側(直線を含む)にあるものがある。
とくに、(1) が成り立てば (2) が成り立つ。

  1. の円は、凸四角形 $ABDC'$ の「頂点 $D$ の先の傍接円」(傍接円をもつ四角形 の定義「頂点の先の傍接円」で、頂点の名前を $A,B,C,D$ から $A,B,D,C'$ に読みかえたもの)そのものである。証明の筋は、(1) $\Leftrightarrow$ (3) を前の記事の主定理で、(3) $\Rightarrow$ (2) を接線の長さの足し算で、(2) $\Rightarrow$ (3) を二等辺三角形の作図で示す、というものである。
共通の円を経由する

段 1((1) $\Leftrightarrow$ (3))。lem-urq-config (2) により、四角形 $ABDC'$ は凸である。傍接円をもつ四角形 の主定理を、頂点の名前を $A\to A$、$B\to B$、$C\to D$、$D\to C'$ と読みかえて使う。主定理の等式は $AB+BD=AC'+C'D$、つまり (1) になり、「頂点 $D$ の先の傍接円」は (3) の円になる。主定理の角の条件は $\angle BAC'+\angle ABD<180^\circ$ である。$D$ は線分 $BC$ の上にあるので $\angle ABD=\angle ABC$ で、三角形 $ABC$ の内角の和から $\angle BAC+\angle ABC<180^\circ$ なので、角の条件はいつも成り立つ。よって (1) と (3) は同値である。
段 2((3) $\Rightarrow$ (2):接点の位置)。(3) の円 $\omega$ の中心を $I$ とし、$\omega$ と直線 $\ell$、$m$、$BC$、$B'C'$ の接点を $P$、$S$、$Q$、$R$ とする。傍接円をもつ四角形 の補題「傍接円の接点の位置」を四角形 $ABDC'$ に使うと、6 点 $A,B,B',C',C,D$ はどれも $\omega$ の外にあり、$P$ は半直線 $AB$ の上、$S$ は半直線 $AC'$ の上にある。さらに次が成り立つ。

  • $B'$ は線分 $AP$ の上にあり、$C$ は線分 $AS$ の上にある。
  • $Q$ は線分 $DC$ の上にあり、$R$ は線分 $DB'$ の上にある(どちらも端点ではない)。
    詳細

    $P$ は $\omega$ の上の点なので、(3) により直線 $B'C'$ について $A$ と反対の側(直線を含む)にある。$P$ が直線 $B'C'$ の上にあれば $P$ は直線 $\ell$ と $B'C'$ の交点 $B'$ になり、$B'$ が $\omega$ の上にあることになるが、$B'$ は 2 本の接線 $\ell$、$B'C'$ の交点なので円の上にない。よって $P$ は直線 $B'C'$ について $A$ と真に反対側にある。半直線 $AB$ は $B'$ で直線 $B'C'$ を横切るので、$P$ は $B'$ を越えた所にある。$S$ も同じで、直線 $BC$ を使うと $C$ を越えた所にある。

    前の記事の補題から、$Q$ は直線 $BC$ の上で $D$ を越えた所($B$ から見て $D$ の先)にある。一方 $Q$ は $\omega$ の上なので角 $\angle B'AC$ の内側(半直線を含む)にある。直線 $BC$ の点で、$C$ を越えた所($B$ から見て $C$ の先)にあるものは、直線 $m$ について $B$ と反対側にあり、角の外にある。$Q=C$ なら $C$ が円の上にあることになり、上と同じ理由で起こらない。よって $Q$ は $D$ と $C$ の間にある。$R$ も同じで、$D$ と $B'$ の間にある。

    段 3((3) $\Rightarrow$ (2):足し算)。頂点はどれも $\omega$ の外にあるので、接線の長さが等しいこと(傍接円をもつ四角形 の補題「接線の長さ」)から
    $$ AP=AS=t_A,\quad B'P=B'R=t_{B'},\quad CS=CQ=t_C,\quad DQ=DR=t_D $$
    とおける。段 2 から、$AB'=AP-B'P=t_A-t_{B'}$、$B'D=B'R+RD=t_{B'}+t_D$、$AC=AS-CS=t_A-t_C$、$CD=CQ+QD=t_C+t_D$ である。よって
    $$ AB'+B'D=(t_A-t_{B'})+(t_{B'}+t_D)=t_A+t_D,\qquad AC+CD=(t_A-t_C)+(t_C+t_D)=t_A+t_D $$
    で、(2) が成り立つ。
    段 4((2) $\Rightarrow$ (3):二等辺三角形を 3 つ作る)。(2) を仮定する。半直線 $AB'$ の上で $B'$ の先に $B'E'=B'D$ となる点 $E'$ を、半直線 $AC$ の上で $C$ の先に $CF'=CD$ となる点 $F'$ をとる。(2) から
    $$ AE'=AB'+B'D=AC+CD=AF' $$
    である。
  • 三角形 $B'DE'$ は $B'D=B'E'$ の二等辺三角形なので、頂角 $\angle DB'E'$ の二等分線 $n_{B'}$ は線分 $DE'$ の垂直二等分線である。
  • 三角形 $CDF'$ は $CD=CF'$ の二等辺三角形なので、頂角 $\angle DCF'$ の二等分線 $n_C$ は線分 $DF'$ の垂直二等分線である。
  • 三角形 $AE'F'$ は $AE'=AF'$ の二等辺三角形なので、角 $\angle B'AC$ の二等分線は線分 $E'F'$ の垂直二等分線である。
    段 5(中心 $I$)。$A$ から角 $\angle B'AC$ の二等分線を半直線として角の内側へ引き、$B'$ から $n_{B'}$ を角 $\angle DB'E'$ の内側へ半直線として引く。2 本が直線 $\ell$ となす角は $\dfrac{\angle B'AC}2$ と $180^\circ-\dfrac{\angle DB'E'}2=180^\circ-\dfrac{180^\circ-\angle AB'D}2=90^\circ+\dfrac{\angle AB'D}2$ である。$D$ は線分 $B'C'$ の上にあるので $\angle AB'D=\angle AB'C'$ で、三角形 $AB'C'$ の内角の和から $\angle B'AC'+\angle AB'C'<180^\circ$ である。よって 2 本の角の和は $180^\circ$ より小さく、2 本の半直線は直線 $\ell$ の $C$ の側で 1 点で交わる。この点を $I$ とする。$I$ は線分 $E'F'$ の垂直二等分線の上にあるので $IE'=IF'$、線分 $DE'$ の垂直二等分線の上にあるので $ID=IE'$ である。よって $ID=IF'$ で、$I$ は線分 $DF'$ の垂直二等分線 $n_C$ の上にもある。
    段 6(4 本の直線から等距離)。$I$ は角 $\angle B'AC$ の二等分線の上にあるので $\ell$、$m$ から、$n_{B'}$ の上にあるので $\ell$ と直線 $B'D$($=B'C'$)から、$n_C$ の上にあるので $m$ と直線 $CD$($=BC$)から、それぞれ等しい距離にある。この距離を $r$ とすると $r>0$($I$ は $\ell$ の上にない)で、$I$ を中心とする半径 $r$ の円 $\omega$ は 4 本の直線に接する。
    段 7(円の位置)。中心から直線までの距離が半径に等しいので、中心のある側の閉じた半平面に円全体が入る。$I$ は角 $\angle B'AC$ の二等分線の半直線の上にあるので、円は角の内側に入る。$I$ は角 $\angle DB'E'$ の内側にあり、$E'$ は直線 $B'C'$ について $A$ と反対側にある(直線 $\ell$ の上で $B'$ をはさむ)ので、$I$ は直線 $B'C'$ について $A$ と反対側にある。$n_C$ のうち角 $\angle DCF'$ の内側へ向かう半直線の点は直線 $m$ について $D$ と同じ側に、反対向きの半直線の点は反対側にある。$I$ は直線 $m$ について $B'$ と同じ側にあり、lem-urq-config (3) より $D$ も $B'$ と同じ側にあるので、$I$ は角 $\angle DCF'$ の内側にある。$F'$ は直線 $BC$ について $A$ と反対側にあるので、$I$ は直線 $BC$ について $A$ と反対側にある。よって $\omega$ は (3) の円である。$\square$

共通の円(緑)と接線の長さ。同じ頂点から出る 2 本の接線の長さを同じ色で描いた。へこんだ四角形 AB′DC では、辺 B′D と辺 CD がそれぞれ接線の長さの和になる 共通の円(緑)と接線の長さ。同じ頂点から出る 2 本の接線の長さを同じ色で描いた。へこんだ四角形 AB′DC では、辺 B′D と辺 CD がそれぞれ接線の長さの和になる

主定理を最初の例で確かめる

ex-urq-start の配置で、中心 $I(6,6)$、半径 $6$ の円は、直線 $\ell$($y=0$)、$m$($x=0$)、$BC$($4x+3y=12$)、$B'C'$($5x+12y=24$)のどれからも距離 $6$ にある($\dfrac{\lvert24+18-12\rvert}5=6$、$\dfrac{\lvert30+72-24\rvert}{13}=6$)。
(1) 接点は $P(6,0)$、$S(0,6)$、$Q\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$、$R\left(\dfrac{48}{13},\dfrac6{13}\right)$ で、接線の長さは $t_A=6$、$t_{B'}=6-\dfrac{24}5=\dfrac65$、$t_C=6-4=2$、$t_D=DQ=DR=\dfrac{18}{11}$ である。
(2) $t_A-t_D=6-\dfrac{18}{11}=\dfrac{48}{11}$ は ex-urq-start の (2) の値、$t_A+t_D=6+\dfrac{18}{11}=\dfrac{84}{11}$ は (3) の値である。
(3) 段 4 の点は $E'\left(\dfrac{84}{11},0\right)$、$F'\left(0,\dfrac{84}{11}\right)$ で、$ID^2=IE'^2=IF'^2=\dfrac{4680}{121}$ である(図 5 の橙の 3 本の線分)。

(2) から円を作る作図。B′ の先に B′E′=B′D、C の先に CF′=CD となる点をとると、3 本の二等分線(点線)は I で交わり、I は D、E′、F′ から等しい距離にある (2) から円を作る作図。B′ の先に B′E′=B′D、C の先に CF′=CD となる点をとると、3 本の二等分線(点線)は I で交わり、I は D、E′、F′ から等しい距離にある
段 3 の 2 つの式を見ると、2 本の道の長さは共通の円の接線の長さ $t_A$、$t_D$ だけで書けている。逆に、2 つの等式の値から $t_A$ と $t_D$ が読みとれる。

道の長さから接線の長さを読む

(1)(2) が成り立つとき、$s_1=AB+BD$、$s_2=AB'+B'D$ とおくと、$s_1=t_A-t_D$、$s_2=t_A+t_D$ なので
$$ t_A=\frac{s_1+s_2}2,\qquad t_D=\frac{s_2-s_1}2 $$
である。ex-urq-start では $s_1=\dfrac{48}{11}$、$s_2=\dfrac{84}{11}$ から $t_A=\dfrac{132}{22}=6$、$t_D=\dfrac{36}{22}=\dfrac{18}{11}$ となり、ex-urq-check の値と一致する。とくに $s_2>s_1$ で、へこんだ四角形の道の方がいつも長い。行列で書くと
$$ \begin{pmatrix}s_1\\ s_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&-1\\ 1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}t_A\\ t_D\end{pmatrix} $$
で、行列式が $2\ne0$ なので、$(s_1,s_2)$ と $(t_A,t_D)$ は互いに 1 次式で求まる(線形写像)。

例と反例

thm-urq-main の仮定や円の位置を変えると何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
(1) の等式ex-urq-start で $C$ だけを $(0,5)$ に動かす(2) の等式
円が角 $A$ の内側で $D$ の先にある四角形 $ABDC'$ に内接円がある配置(1)・(2) の等式
反例:仮定の等式がないと結論も成り立たない

ex-urq-start の $A,B,B',C'$ はそのままで、$C$ だけを $(0,5)$ に動かす。直線 $BC$ は $5x+3y=15$、直線 $B'C'$ は $5x+12y=24$ で、引くと $9y=9$ から $D=\left(\dfrac{12}5,1\right)$ である。$BD=\sqrt{\left(\dfrac35\right)^2+1^2}=\dfrac{\sqrt{34}}5$、$C'D=\sqrt{\left(\dfrac{12}5\right)^2+1^2}=\dfrac{13}5$、$B'D=\sqrt{\left(\dfrac{12}5\right)^2+1^2}=\dfrac{13}5$、$CD=\sqrt{\left(\dfrac{12}5\right)^2+4^2}=\dfrac{4\sqrt{34}}5$ なので
$$ (AB+BD)-(AC'+C'D)=3+\frac{\sqrt{34}}5-2-\frac{13}5=\frac{\sqrt{34}-8}5\fallingdotseq-0.434 $$
$$ (AB'+B'D)-(AC+CD)=\frac{24}5+\frac{13}5-5-\frac{4\sqrt{34}}5=\frac{12-4\sqrt{34}}5\fallingdotseq-2.265 $$
である。どちらの等式も成り立たない。Urquhart の定理は、どんな配置でも成り立つ恒等式ではなく、「(1) が成り立つ配置では (2) も成り立つ」という主張である。

反例:4 本の直線に接する円の位置が違う

$A(0,0)$、$B(3,0)$、$B'(6,0)$、$C'\left(0,\dfrac52\right)$、$C(0,4)$ とする。直線 $BC$ は $4x+3y=12$、直線 $B'C'$ は $5x+12y=30$ で、$D=\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{20}{11}\right)$ である。
中心 $(1,1)$、半径 $1$ の円は 4 本の直線すべてに接する($\dfrac{\lvert4+3-12\rvert}5=1$、$\dfrac{\lvert5+12-30\rvert}{13}=1$)。しかしこの円は直線 $BC$ について $A$ と同じ側($4x+3y-12$ の値が中心で $-5$、$A$ で $-12$)にあり、(3) の円ではない。接点 $\left(\dfrac95,\dfrac85\right)$、$\left(\dfrac{18}{13},\dfrac{25}{13}\right)$ は辺 $BD$、$DC'$ の上にあり、この円は四角形 $ABDC'$ の内接円である。
辺の長さは $BD=\dfrac{25}{11}$、$C'D=\dfrac{39}{22}$、$B'D=\dfrac{52}{11}$、$CD=\dfrac{30}{11}$ で、
$$ (AB+BD)-(AC'+C'D)=3+\frac{25}{11}-\frac52-\frac{39}{22}=1,\qquad (AB'+B'D)-(AC+CD)=6+\frac{52}{11}-4-\frac{30}{11}=4 $$
となり、(1) も (2) も成り立たない。成り立つのは、内接円に対応する Pitotの定理 の等式 $AB+DC'=BD+C'A$($3+\dfrac{39}{22}=\dfrac{105}{22}=\dfrac{25}{11}+\dfrac52$)である。4 本の直線に接する円があっても、その位置によって、成り立つ等式の組み合わせが変わる。

四角形 ABDC′ の内接円(緑)は 4 本の直線すべてに接するが、Urquhart の定理の円ではなく、2 つの等式はどちらも成り立たない 四角形 ABDC′ の内接円(緑)は 4 本の直線すべてに接するが、Urquhart の定理の円ではなく、2 つの等式はどちらも成り立たない

大学数学で見る:4 本の直線と 1 つの円

thm-urq-main の 3 つの条件は、4 本の直線 $\ell$、$m$、$BC$、$B'C'$ だけで決まる。4 本の直線は 6 つの交点 $A,B,B',C,C',D$ をもち、4 本の直線と 6 つの交点からなる図形を 完全四辺形 という(完全四辺形)。完全四辺形から辺を 4 本とも使う四角形を作ると、へこみのない $ABDC'$、へこんだ $AB'DC$、辺が交差する $BB'C'C$ の 3 通りがある。Urquhart の定理は、そのうち 2 つの四角形の「道の長さ」の等式が、共通の 1 つの円を通して同値になることをいう。
Wei26 は、Pedoe(1976 年)がこの定理を L. M. Urquhart に帰したこと、ただし de Morgan が 1841 年にすでに証明を発表していたこと、この定理が 1860 年の Chasles の結果の極限の場合と見られることを述べている。

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  • 4 本の直線がつくる図形の性質は、完全四辺形(3 本の対角線を直径とする円が共通の根軸をもつこと)や Miquelの定理(4 つの三角形の外接円が 1 点を通ること)でも調べる。
  • 目玉の定理 も、「円の外の点から引いた接線」と長さの関係を読む定理である。
  • 凸四角形の 2 通りの等式 $AB+CD=BC+DA$(内接円)と $AB+BC=AD+DC$(傍接円)の違いは、Pitotの定理 と 傍接円をもつ四角形 で比べている。

関連項目

参考文献

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