Szemerédiの定理(Szemerédi's theorem)とは、$k\ge3$ を固定すると、$\{1,\dots,N\}$ の部分集合で $k$ 項の等差数列を含まないものの最大の要素数 $r_k(N)$ が $r_k(N)/N\to0$ を満たす、という定理である。同値な形として、正の上密度をもつ正の整数の集合は任意の長さの等差数列を含み、E. Szemerédi が 1975 年に証明した。$k=3$ の場合は Roth の定理とよばれ、Fourier 係数による密度の増加の議論から $N\ge16$ で $r_3(N)< 361N/\log\log N$ が示せる。逆に Behrend の構成により $r_3(N)\ge N\exp(-5\sqrt{\log N})$ であり、$r_3(N)/N$ は $N$ の負の冪の速さでは $0$ に近づかない。
前提知識: van der Waerdenの定理, 離散Fourier変換と反転公式, Cauchy–Schwarzの不等式, 鳩の巣原理
Szemerédi の定理(Szemerédi's theorem)は、正の整数の集合が「正の割合」を占めていれば、任意の長さの等差数列を含む、という定理である。有限の形では、$k\ge3$ を固定すると、$\{1,\dots,N\}$ の部分集合で $k$ 項の等差数列を含まないものの最大の要素数 $r_k(N)$ について $r_k(N)/N\to0$($N\to\infty$)が成り立つ。Erdős と Turán が予想し、E. Szemerédi が 1975 年に証明した(Sze75)。van der Waerdenの定理 は、有限個の色で塗り分けたとき、ある色が任意の長さの等差数列を含むことを述べるが、Szemerédi の定理はその色が「多くの数をもつ」ことだけから等差数列が現れることを述べており、van der Waerden の定理を含む。
一般の $k$ についての証明は長く、この記事では証明しない。この記事で証明するのは次の 3 つである。
以下、$[N]:=\{1,2,\dots,N\}$ とし、$\log$ は自然対数とする。$k$ 項の等差数列と公差は van der Waerdenの定理 の定義「等差数列と塗り分け」の意味とする(公差は $1$ 以上)。
$k\ge3$、$N\ge1$ とする。$[N]$ の部分集合で $k$ 項の等差数列を含まないものの要素数の最大値を $r_k(N)$ と書く。$A\subset\mathbb{Z}_{>0}$ の 上密度 を
$$
\overline{d}(A):=\limsup_{N\to\infty}\frac{\lvert A\cap[N]\rvert}N
$$
で定める。
3 項の等差数列 $a,a+d,a+2d$ は、$a< c$ と $a+c=2b$ を満たす 3 数 $a,b,c$ と同じことである。したがって $A$ が 3 項の等差数列を含まないことは、「$a,b,c\in A$、$a+c=2b$ ならば $a=b=c$」と同値である。
$k\ge3$ とする。
この記事では一般の $k$ についての証明はしない。2 の形は van der Waerdenの定理 の定理「正の上密度をもつ集合の等差数列」であり、そこで van der Waerden の定理との関係が説明されている。Szemerédi の論文は、Erdős と Turán が定義した $r_k(n)$ について $\lim r_k(n)/n=0$ をすべての $k$ で証明すると述べ(Sze75 p. 200)、証明の途中で van der Waerden の定理を使う(同 p. 201)。2 の形の述べ方は Zha23 Theorem 0.2.4(p. 6)、1 の形は同 Theorem 9.1.1(p. 284)にある。
$k\ge3$ を固定すると、thm-szt-main の 1 と 2 は同値である。
要点:1 から 2 は密度の定義から直ちに従う。2 から 1 は、1 が破れているときに等差数列を含まない有限集合を大きく離して並べ、正の上密度をもち $k$ 項の等差数列を含まない無限集合を作る。
1 ⇒ 2:$\overline d(A)>\delta>0$ とする。上極限の定義から $\lvert A\cap[N]\rvert\ge\delta N$ となる $N$ は無限に多いので、$N\ge N_0$ となるものをとると、1 により $A\cap[N]$ は $k$ 項の等差数列を含む。
2 ⇒ 1:1 が成り立たないとすると、ある $\delta>0$ について、$k$ 項の等差数列を含まず $\lvert B\rvert\ge\delta N$ となる $B\subset[N]$ をもつ $N$ が無限に多くある。そのような $N$ の集合を $\mathcal T$ とする。$s_0:=0$ とし、$J=1,2,\dots$ について、$N_J\in\mathcal T$ を $N_J\ge s_{J-1}$ ととり、対応する $B_J\subset[N_J]$ をとって、$t_J:=s_{J-1}+N_J$、$s_J:=t_J+N_J$ とおく。$A:=\bigcup_J(t_J+B_J)$ とすると、$t_J+B_J\subset(t_J,s_J]$ であり、$t_J\ge2s_{J-1}$、$t_J-s_{J-1}=N_J$ である。
$A$ が $k$ 項の等差数列 $a_0< a_1<\dots< a_{k-1}$(公差 $d$)を含むとして矛盾を導く。$a_{k-1}$ が属する区間を $(t_J,s_J]$ とする。すべての項がこの区間にあれば $t_J+B_J$ の中の等差数列になり、$B_J$ の仮定に反する。そうでなければ、この区間にない項のうち番号が最大のものを $a_i$($i\le k-2$)とすると、$A$ は $(s_{J-1},t_J]$ と交わらないので $a_i\le s_{J-1}$、$a_{i+1}>t_J$ なので $d>t_J-s_{J-1}=N_J$ である。$i+1< k-1$ なら $a_{i+1},a_{i+2}$ はどちらも $(t_J,s_J]$ にあり $d\le N_J-1$ となって矛盾する。$i=k-2$ なら $a_{k-3}=a_{k-2}-d< s_{J-1}-(t_J-s_{J-1})\le0$ となり($k\ge3$)、$a_{k-3}\ge1$ に反する。よって $A$ は $k$ 項の等差数列を含まない。一方 $\lvert A\cap[s_J]\rvert\ge\lvert B_J\rvert\ge\delta N_J$ で $s_J=s_{J-1}+2N_J\le3N_J$ なので、$\overline d(A)\ge\delta/3>0$ であり、2 に反する。$\square$
$N\ge16$ とする。$A\subset[N]$ が 3 項の等差数列を含まなければ
$$
\lvert A\rvert<\frac{361\,N}{\log\log N}
$$
である。とくに $r_3(N)/N\to0$ であり、thm-szt-main は $k=3$ で成り立つ。
証明(prf-szt-roth)の方針は 密度の増加 である。$A$ の $[N]$ での密度を $\alpha:=\lvert A\rvert/N$ とする。3 項の等差数列を含まない $A$ は「ランダムな集合」と違う偏りをもち、その偏りは Fourier 係数の大きさとして現れる。偏りを使うと、長い等差数列 $P\subset[N]$ で $A$ の密度が $\alpha+\alpha^2/256$ 以上になるものが見つかる(lem-szt-increment)。$P$ を $[\lvert P\rvert]$ と同一視して繰り返すと密度は増え続けるが、密度は $1$ を超えられないので、繰り返しは長く続かない。これが $N$ の大きさに制限を与える。
$M$ を正の整数、$\zeta:=e^{2\pi i/M}$ とし、$\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}$ 上の複素数値関数 $f$ の Fourier 係数を 離散Fourier変換と反転公式 の定義「離散Fourier変換」と同じく $\widehat f(t):=\sum_{x}f(x)\zeta^{-tx}$ で定める(和は $\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}$ 全体)。$\sigma(f):=\bigl(\sum_x\lvert f(x)\rvert^2\bigr)^{1/2}$ とおく。同記事の定理「反転公式とParsevalの等式」により $\sum_t\lvert\widehat f(t)\rvert^2=M\,\sigma(f)^2$ である。3 つの関数 $f,g,h$ について
$$
\Lambda(f,g,h):=\sum_{\substack{x,y,z\in\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}\\ x+z=2y}}f(x)\,g(y)\,h(z)
$$
とおく。
1:右辺に定義を代入すると $\frac1M\sum_{x,y,z}f(x)g(y)h(z)\sum_t\zeta^{-t(x-2y+z)}$ であり、離散Fourier変換と反転公式 の補題「1 の $n$ 乗根の冪の和(復習)」により内側の和は $x-2y+z\equiv0$ のとき $M$、そうでなければ $0$ である。
2:$M$ が奇数なので $t\mapsto-2t$ は $\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}$ の全単射であり、$\sum_t\lvert\widehat g(-2t)\rvert^2=\sum_t\lvert\widehat g(t)\rvert^2$ である。1 と Cauchy–Schwarzの不等式 から
$$
\lvert\Lambda\rvert\le\frac{\max\lvert\widehat h\rvert}M\Bigl(\sum_t\lvert\widehat f(t)\rvert^2\Bigr)^{1/2}\Bigl(\sum_t\lvert\widehat g(t)\rvert^2\Bigr)^{1/2}=\frac{\max\lvert\widehat h\rvert}M\cdot M\,\sigma(f)\,\sigma(g)
$$
である。もう一方も同じである。$\square$
実数 $u$ について、$u$ と最も近い整数との距離を $\langle u\rangle$ と書く。$\lvert e^{2\pi iu}-1\rvert=2\lvert\sin\pi u\rvert\le2\pi\langle u\rangle$ である。
実数 $\theta$ と正の整数 $Q$ について、$1\le q\le Q$ を満たす整数 $q$ で $\langle q\theta\rangle<1/Q$ となるものがある。
$j=0,1,\dots,Q$ について $j\theta$ の小数部分 $\{j\theta\}\in[0,1)$ を考える。$Q+1$ 個の数を $Q$ 個の区間 $[\frac iQ,\frac{i+1}Q)$($i=0,\dots,Q-1$)に入れると、鳩の巣原理 により同じ区間に入る $j< j'$ がある。$q:=j'-j$ とすると $1\le q\le Q$ で、$q\theta$ と整数 $\lfloor j'\theta\rfloor-\lfloor j\theta\rfloor$ の差は $\{j'\theta\}-\{j\theta\}$ なので、絶対値は $1/Q$ 未満である。$\square$
$A\subset[N]$ は 3 項の等差数列を含まず、$\alpha:=\lvert A\rvert/N>0$、$N\ge2^{22}\alpha^{-4}$ を満たすとする。このとき、$[N]$ に含まれる等差数列 $P$ で
$$
\lvert P\rvert\ge\frac{\alpha^2\sqrt N}{2^{11}},\qquad\lvert A\cap P\rvert\ge\Bigl(\alpha+\frac{\alpha^2}{256}\Bigr)\lvert P\rvert
$$
を満たすものがある。
仮定から $N\ge2^{22}$、$\alpha^2N\ge4$、$\sqrt N\ge2^{11}\alpha^{-2}$ である。
段 1(区間を 3 つに分ける)。 $I_1:=[1,\lfloor N/3\rfloor]$、$I_2:=(\lfloor N/3\rfloor,\lfloor 2N/3\rfloor]$、$I_3:=(\lfloor2N/3\rfloor,N]$(整数の区間)とおくと、$\lvert I_2\rvert\ge\frac{N-2}3$、$\lvert I_1\rvert+\lvert I_3\rvert\le\frac{2N+2}3$ である。$\lvert A\cap I_2\rvert<\frac\alpha2\lvert I_2\rvert$ なら、$\lvert A\cap(I_1\cup I_3)\rvert>\alpha(\lvert I_1\rvert+\lvert I_3\rvert)+\frac\alpha2\lvert I_2\rvert$ なので、$I_1\cup I_3$ での $A$ の密度は $\alpha\bigl(1+\frac{N-2}{4N+4}\bigr)\ge\frac{6\alpha}5$ より大きい($N\ge14$)。よって $I_1$ か $I_3$ の一方で密度が $\frac65\alpha\ge\alpha+\frac{\alpha^2}5$ を超え、その長さは $\lfloor N/3\rfloor\ge N/4\ge\alpha^2\sqrt N/2^{11}$ 以上なので、それを $P$ とすればよい。以下、$B:=A\cap I_2$ が $\lvert B\rvert\ge\frac\alpha2\lvert I_2\rvert\ge\frac{\alpha N}7$ を満たすとする。
段 2(数え上げ)。 $M:=2N+1$ とし、$[N]$ を $\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}$ の部分集合とみる。$x,y,z\in[N]$ について $\lvert x+z-2y\rvert\le2N-2< M$ なので、$x+z\equiv2y\pmod M$ と $x+z=2y$ は同値である。$\mathbf 1_A$ を $A$ の指示関数とし、$f:=\mathbf 1_A-\alpha\mathbf 1_{[N]}$ とおく。
段 3(短い等差数列に分ける)。 $Q:=\lfloor\sqrt N\rfloor$、$L:=\lfloor\eta Q/(4\pi)\rfloor$ とおく。$Q\ge\sqrt N/2\ge2^{10}\alpha^{-2}$ なので $\eta Q/(4\pi)\ge8/\pi>2$ であり、$L\ge\eta Q/(8\pi)\ge\alpha^2\sqrt N/2^{11}$ である。lem-szt-dirichlet の $q$($1\le q\le Q$、$\langle q\theta\rangle<1/Q$)をとる。各 $r=1,\dots,q$ について、$[N]$ の中の $q$ で割った余りが $r$ と合同な数を小さい順に並べた公差 $q$ の等差数列を、先頭から $L$ 項ずつに区切る(最後の 1 つは $L$ 項より短くてもよい)。こうして $[N]$ を、公差 $q$ の等差数列 $P_1,\dots,P_m$ に分ける。
$P=\{a,a+q,\dots,a+(\ell-1)q\}$($\ell\le L$)の上では、$x=a+jq$ について $\lvert e^{-2\pi ix\theta}-e^{-2\pi ia\theta}\rvert\le2\pi j\langle q\theta\rangle\le2\pi L/Q\le\eta/2$ である。$\lvert f\rvert\le1$ なので、$f(P):=\sum_{x\in P}f(x)=\lvert A\cap P\rvert-\alpha\lvert P\rvert$ とおくと
$$
\eta N\le\Bigl\lvert\sum_{x=1}^Nf(x)e^{-2\pi ix\theta}\Bigr\rvert\le\sum_{j=1}^m\bigl(\lvert f(P_j)\rvert+\tfrac\eta2\lvert P_j\rvert\bigr)=\sum_j\lvert f(P_j)\rvert+\tfrac\eta2N
$$
である。$\sum_jf(P_j)=\lvert A\rvert-\alpha N=0$ なので、正の部分 $f(P_j)_+:=\max(f(P_j),0)$ について $\sum_jf(P_j)_+=\frac12\sum_j(\lvert f(P_j)\rvert+f(P_j))\ge\frac{\eta N}4$ である。
段 4(長い等差数列を選ぶ)。 $L$ 項より短い $P_j$ は $q\le Q$ 個以下なので、それらの要素数の合計は $QL$ 未満で、$QL\le\eta Q^2/(4\pi)\le\eta N/(4\pi)<\eta N/8$ である。また $f(P_j)_+\le\lvert P_j\rvert$ である。よって長さがちょうど $L$ の $P_j$ について $\sum f(P_j)_+>\frac{\eta N}8$ である。そのような $P_j$ は $N/L$ 個以下なので、ある $P_j$ で $f(P_j)>\frac{\eta L}8$、すなわち $\lvert A\cap P_j\rvert>(\alpha+\frac{\alpha^2}{256})L$ となる。この $P_j$ を $P$ とすればよい。$\square$
$\alpha:=\lvert A\rvert/N$ とする。$\alpha=0$ なら明らかなので $\alpha>0$ とする。
段 1(繰り返し)。 $A_0:=A$、$N_0:=N$ とする。$A_i\subset[N_i]$ が 3 項の等差数列を含まず、密度 $\alpha_i:=\lvert A_i\rvert/N_i\ge\alpha$ をもち、$N_i\ge2^{22}\alpha^{-4}$($\ge2^{22}\alpha_i^{-4}$)を満たす間は、lem-szt-increment の等差数列 $P=\{a+jq\mid0\le j< N_{i+1}\}$ をとり、$A_{i+1}:=\{j+1\mid a+jq\in A_i\}\subset[N_{i+1}]$ とおく。写像 $j\mapsto a+(j-1)q$ は単射で、$x+z=2y$ の形の関係を保ち、また反映するので、$A_{i+1}$ も 3 項の等差数列を含まない。こうして
$$
\alpha_{i+1}\ge\alpha_i+\frac{\alpha_i^2}{256},\qquad N_{i+1}\ge \gamma\sqrt{N_i},\qquad \gamma:=\frac{\alpha^2}{2^{11}}
$$
が得られる。$N_i<2^{22}\alpha^{-4}$ となった最初の $i$ を $i^*$ とする。
段 2(繰り返しの回数)。 密度は増え続け、$1$ を超えない。$0\le j\le\log_2(1/\alpha)$ について、$\alpha_i\in[2^j\alpha,2^{j+1}\alpha)$ となる $i< i^*$ では 1 回ごとに密度が $(2^j\alpha)^2/256$ 以上増えるので、そのような $i$ は $256/(2^j\alpha)+1$ 個以下である。よって
$$
i^*\le\sum_{j\ge0}\frac{256}{2^j\alpha}+\log_2\frac1\alpha+1\le\frac{512}\alpha+\frac2\alpha=\frac{514}\alpha
$$
である($u\ge1$ について $\log_2u+1\le2u$)。$i^*$ が有限であることもこれから分かる。
段 3($N$ の評価)。 $v_i:=\log N_i-2\log \gamma$ とおくと $v_{i+1}\ge v_i/2$ であり、$\gamma\le1$ なので $v_0\ge0$ である。よって $\log N_{i^*}\ge2\log \gamma+2^{-i^*}\log N$、すなわち $N_{i^*}\ge \gamma^2N^{2^{-i^*}}$ である。$N_{i^*}<2^{22}\alpha^{-4}$ と合わせると $N^{2^{-i^*}}<2^{44}\alpha^{-8}$ なので
$$
\log N<2^{i^*}\log\bigl(2^{44}\alpha^{-8}\bigr)\le2^{514/\alpha}\cdot2^{6/\alpha}=2^{520/\alpha}
$$
である。ここで $u:=1/\alpha\ge1$ について $\log(2^{44}u^8)\le31+8(u-1)\le31u\le2^{6u}$ を使った。両辺の対数をとると $\log\log N<\frac{520\log2}\alpha<\frac{361}\alpha$、すなわち $\lvert A\rvert=\alpha N<361N/\log\log N$ である。$\square$
定数 $361$ に意味はなく、評価の形 $N/\log\log N$ が Zha23 Theorem 6.4.1(p. 216)の Roth の定理の形と同じである。同書はこの形を Roth の元の証明(1953 年)によるものとして Fourier 解析で証明している。上の証明はその考え方を、$\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}$ で $M=2N+1$ とする埋め込みと明示的な定数で書いたものである。1 回の増加で等差数列の長さがおよそ平方根に縮むことが、評価が $\log\log N$ になる理由である。
$N\ge e^9$ とすると、3 項の等差数列を含まない $A\subset[N]$ で
$$
\lvert A\rvert\ge N\exp\bigl(-5\sqrt{\log N}\bigr)
$$
を満たすものがある。
要点:$\{0,\dots,D-1\}^n$ の点のうち原点からの距離が等しいものを集めると、球面は真に凸なので $x+z=2y$ を満たす 3 点は $x=y=z$ しかない。これを $2D$ 進法の数字の並びとして整数に写すと、繰り上がりが起きないので関係 $x+z=2y$ が保たれる。
$s:=\sqrt{\log N}\ge3$、$n:=\lceil s\rceil$、$D:=\lfloor N^{1/n}/2\rfloor$ とおく。$\log N/n\ge s^2/(s+1)\ge9/4>\log4$ なので $N^{1/n}\ge4$ であり、$D\ge N^{1/n}/2-1\ge N^{1/n}/4\ge1$、$(2D)^n\le N$ である。$x=(x_1,\dots,x_n)\in\{0,\dots,D-1\}^n$ に $\varphi(x):=1+\sum_{i=1}^nx_i(2D)^{i-1}$ を対応させると、$2D$ 進法の表示の一意性から $\varphi$ は単射で、値は $[(2D)^n]\subset[N]$ に入る。$\lvert x\rvert^2:=\sum x_i^2$ は $0$ 以上 $n(D-1)^2$ 以下の整数で、その個数 $n(D-1)^2+1$ は $nD^2$ 以下なので、鳩の巣原理 により $\lvert x\rvert^2=\kappa$ となる $x$ が $D^n/(nD^2)$ 個以上ある $\kappa$ がある。$A:=\{\varphi(x)\mid\lvert x\rvert^2=\kappa\}$ とおく。
$\varphi(x)+\varphi(z)=2\varphi(y)$($x,y,z$ はこの球面上)とすると、$\sum(x_i+z_i)(2D)^{i-1}=\sum2y_i(2D)^{i-1}$ で、各桁の $x_i+z_i$、$2y_i$ は $0$ 以上 $2D-2$ 以下なので、表示の一意性から $x+z=2y$ である。すると $\lvert x-z\rvert^2=2\lvert x\rvert^2+2\lvert z\rvert^2-\lvert x+z\rvert^2=4\kappa-4\lvert y\rvert^2=0$ なので $x=z$、したがって $y=x$ である。よって $A$ は 3 項の等差数列を含まない。
要素数は $\lvert A\rvert\ge D^{n-2}/n\ge(N^{1/n}/4)^{n-2}/n\ge N\cdot N^{-2/n}\cdot4^{-n}\cdot\frac1n$ である。$n\ge s$ から $N^{-2/n}=e^{-2s^2/n}\ge e^{-2s}$、$n\le s+1$ から $4^{-n}\ge e^{-(s+1)\log4}$、$\frac1n\ge\frac1{s+1}\ge e^{-s}$ なので、$\lvert A\rvert\ge N\exp\bigl(-(3+\log4)s-\log4\bigr)$ である。$s\ge3$ から $(3+\log4)s+\log4\le(3+\frac43\log4)s<5s$ である。$\square$
$\exp(-5\sqrt{\log N})$ は、どんな $c>0$ についても $N\to\infty$ で $N^{-c}=\exp(-c\log N)$ より大きい。したがって $r_3(N)\le N^{1-c}$ という形の評価は成り立たず、thm-szt-roth の $r_3(N)/N\to0$ はゆっくりとしか起こらない。同じ構成は Zha23 Theorem 2.5.1(p. 70)にあり、そこでは Behrend(1946 年)によるものとされている。
Zha23 §0.2(pp. 6–7)は、Szemerédi の定理に対して、エルゴード理論による Furstenberg の証明、高次の Fourier 解析による Gowers の証明、ハイパーグラフの正則化による証明など複数の証明があることを述べ、定量的な評価として、3 項では $N/(\log N)^{1+c}$(Bloom–Sisask)、$k\ge5$ では $N/(\log\log N)^{c_k}$(Gowers)の形の上界が知られていると紹介している(この記事では証明しない)。素数全体は上密度が $0$ なので thm-szt-main は使えないが、素数全体が任意の長さの等差数列を含むことを Green と Tao が証明した(Zha23 Theorem 9.0.1、p. 283。この記事では証明しない)。なお、点と直線の接続の個数についての Szemerédi–Trotter の定理(離散幾何学 の定理「Szemerédi–Trotter の定理」)は、名前が似ているが別の定理である。
次の表は、thm-szt-main と thm-szt-roth の仮定や結論を 1 つずつ変えた例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 上密度が正 | $A=\{1,2,4,8,\dots\}$($2$ の冪全体) | 無限集合だが、3 項の等差数列すら含まない |
| 結論を「任意の有限の長さ」に限ること | van der Waerdenの定理 の例「反例:単色の無限等差数列はなくてもよい」の赤の数の集合 | 上密度が $1/2$ だが、無限の等差数列は含まない |
| 有限の形で $\delta$ を $N$ によらず固定すること | $\delta_N:=\exp(-5\sqrt{\log N})$ と thm-szt-behrend の集合 | 各 $N\ge e^9$ で $\lvert A\rvert\ge\delta_NN$ なのに 3 項の等差数列を含まない |
確かめ:1 行目では、$2^a+2^c=2\cdot2^b$($a< b< c$)なら $2^a(1+2^{c-a})=2^{b+1}$ で、左辺の $1+2^{c-a}$ は $3$ 以上の奇数なので $2$ の冪でなく、矛盾する。$\lvert A\cap[N]\rvert\le\log_2N+1$ なので上密度は $0$ である。2 行目の集合は、長さ $1,2,3,\dots$ の連続した区間に交互に赤と青を塗ったときの赤の数で、$[N]$ の中の赤の数の割合は $1/2$ に近づき、どの公差の無限等差数列も十分先で青の区間に入る。
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