位相群(topological group)とは、群に位相が与えられ、積 $(x,y)\mapsto xy$ と逆元をとる写像 $x\mapsto x^{-1}$ がともに連続であるもののことである。$(\mathbb{R},+)$、円周群 $S^1$、一般線形群 $\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})$ が代表例で、任意の群は離散位相でも密着位相でも位相群になる。平行移動が同相写像なので位相は単位元の近傍で決まり、$T_0$・$T_1$・Hausdorff の 3 条件は同値で、どれも $\{e\}$ が閉集合であることと同値になる。開部分群は閉集合であり、閉部分群による剰余空間は Hausdorff である。局所コンパクト Hausdorff な位相群には Haar 測度があり、位相群は Lie 群・コンパクト群・$p$ 進数の理論の共通の基礎になる。
群の演算と位相空間の位相が両立しているものを位相群という。群 $G$ の積を $\mu\colon G\times G\to G$、$\mu(x,y)=xy$、逆元をとる写像を $\iota\colon G\to G$、$\iota(x)=x^{-1}$ と書き、単位元を $e$ と書く。$G\times G$ には直積位相を入れる。
本記事では位相に分離公理を課さない。位相群の定義に Hausdorff 性を含める流儀もあるが、後の thm-topological-group-separation により、それは「単位元だけからなる集合 $\{e\}$ が閉集合である」という 1 つの条件を加えることと同じである(Bou98 Chapter III §1、Mun00 §22 の補充演習「位相群」)。
群 $G$ に位相が与えられているとき、$G$ が位相群であることと、写像
$$
\delta\colon G\times G\to G,\qquad \delta(x,y)=xy^{-1}
$$
が連続であることは同値である。
$G$ が位相群なら、$\delta=\mu\circ(\mathrm{id}_G\times\iota)$ であり、$\mathrm{id}_G\times\iota\colon G\times G\to G\times G$ は各成分が連続なので連続(直積位相の普遍性)、したがって $\delta$ は連続写像の合成として連続である。
逆に $\delta$ が連続とする。写像 $j\colon G\to G\times G$、$j(y)=(e,y)$ は成分が定値写像と恒等写像なので連続であり、$\iota(y)=ey^{-1}=\delta(j(y))$ だから $\iota$ は連続である。さらに $\mu(x,y)=x(y^{-1})^{-1}=\delta(x,\iota(y))$、すなわち $\mu=\delta\circ(\mathrm{id}_G\times\iota)$ なので $\mu$ も連続である。$\square$
位相群は「連続的に動かせる対称性」の集まりである。たとえば平面の回転全体は角度 $\theta$ でパラメータ付けられ、回転を合成すること、逆回転をとることは $\theta$ について連続に変化する。位相群の定義は、この「合成と逆をとる操作が連続である」ことを公理にしたものである。
位相群では、1 点 $g$ のまわりの様子は、平行移動 $x\mapsto gx$ によって単位元 $e$ のまわりの様子と同じになる(prop-topological-group-translations)。したがって位相群の位相は単位元の近傍だけで決まり、分離性・局所連結性・局所コンパクト性などの、点の近傍だけで定まる局所的な性質は、単位元の近くで調べれば全体で分かる(これに対し連結性は全体で決まる性質であり、単位元の近傍だけからは分からない。実際 $\mathbb{R}^\times$ と $\mathbb{R}_{>0}$ は $1$ の近傍が同じであるが、前者は連結でなく後者は連結である)。この「どの点も同じに見える」一様さのために、一般の位相空間では独立な分離公理 $T_0$・$T_1$・Hausdorff が位相群では同値になる。
実数全体 $\mathbb{R}$ は加法と通常の位相について位相群である。加法 $(x,y)\mapsto x+y$ は $|(x+y)-(a+b)|\le|x-a|+|y-b|$ により連続であり、$x\mapsto-x$ は距離を保つので連続である。同様に Euclid 空間 $(\mathbb{R}^n,+)$、複素数の加法群 $(\mathbb{C},+)$ は位相群である。0 でない複素数の乗法群 $\mathbb{C}^\times=\mathbb{C}\setminus\{0\}$ と正の実数の乗法群 $\mathbb{R}_{>0}$ も、積と $z\mapsto z^{-1}$ が $\mathbb{C}^\times$ 上連続なので位相群である。
絶対値 $1$ の複素数全体
$$
S^1:=\{z\in\mathbb{C}\mid|z|=1\}
$$
は $\mathbb{C}^\times$ の部分群であり、$\mathbb{C}$ からの相対位相で位相群になる(後の prop-topological-group-subgroups の 1)。これを円周群という。写像 $\mathbb{R}\to S^1$、$t\mapsto e^{2\pi it}$ は連続な全射準同型で核は $\mathbb{Z}$ であり、剰余群 $\mathbb{R}/\mathbb{Z}$ に商位相を入れた位相群と $S^1$ は位相群として同型である(商写像 の記事の例「実数直線の整数による商」と、後の prop-topological-group-quotient)。
実数を成分とする $n$ 次正方行列の全体 $M_n(\mathbb{R})$ を $\mathbb{R}^{n^2}$ と同一視して位相を入れると、一般線形群 $\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})$ はその開集合であり、相対位相で位相群になる。積は成分の多項式、逆行列は成分の有理式(分母は行列式で、$\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})$ 上で $0$ にならない)で与えられるので、どちらも連続である(一般線形群 の記事の注意「位相群・群スキームとしての一般線形群」)。$\mathrm{GL}_n(\mathbb{C})$ も同様である。その部分群である特殊線形群 $\mathrm{SL}_n(\mathbb{R})$、直交群 $\mathrm{O}(n)$、ユニタリ群 $\mathrm{U}(n)$ も相対位相で位相群であり、$\mathrm{U}(1)=S^1$ である。これらは Lie群 の基本例である。
素数 $p$ を固定し、整数の加法群 $\mathbb{Z}$ に、剰余類 $a+p^k\mathbb{Z}$($a\in\mathbb{Z}$、$k\ge0$)の全体を開基とする位相を入れる。$a+p^k\mathbb{Z}$ と $b+p^l\mathbb{Z}$($k\le l$)は交わるなら後者が前者に含まれるので、これは確かに開基である。点 $c$ を含む開基の元 $a+p^k\mathbb{Z}$ は $c+p^k\mathbb{Z}$ に等しいので、$c$ の開近傍はすべてある $c+p^k\mathbb{Z}$ を含む。$(x,y)\mapsto x-y$ は連続である。実際、点 $(x,y)$ と $x-y$ の近傍 $(x-y)+p^k\mathbb{Z}$ に対し、$(x,y)$ の近傍 $(x+p^k\mathbb{Z})\times(y+p^k\mathbb{Z})$ の像は $(x-y)+p^k\mathbb{Z}$ に含まれる。よって prop-topological-group-one-map により $\mathbb{Z}$ はこの位相で位相群である。$x\neq y$ なら $p^k\nmid x-y$ となる $k$ があり、$x+p^k\mathbb{Z}$ と $y+p^k\mathbb{Z}$ は交わらないので Hausdorff である。1 点集合は開でないので離散群ではない。この位相群を完備化したものが p進整数の加法群 $\mathbb{Z}_p$ である(p進数 の記事を参照)。
$\mathbb{R}$ に、半開区間 $[a,b)$ を開基とする位相を入れた空間を Sorgenfrey直線という。この位相について加法 $\mu(x,y)=x+y$ は連続である。点 $(a,b)$ の像 $a+b$ の基本近傍 $[a+b,a+b+\varepsilon)$ に対し、$(a,b)$ の近傍 $[a,a+\varepsilon/2)\times[b,b+\varepsilon/2)$ の像はそこに含まれるからである。
しかし $\iota(x)=-x$ は連続でない。開集合 $[0,1)$ の逆像は $(-1,0]$ であるが、これは点 $0$ を含み、$0$ の基本近傍 $[0,\varepsilon)$ をどれも含まないので開集合でない。よって $(\mathbb{R},+)$ はこの位相について位相群でない。この例は「積が連続」を満たすが「逆元をとる写像が連続」を満たさず、定義の 2 つの条件のうち逆元の連続性が積の連続性から従わないことを示す。
$G$ を無限群とし、余有限位相(空集合と補集合が有限な部分集合を開集合とする位相)を入れる。この空間の間の全単射はすべて同相写像である(余有限位相 の記事の命題「余有限空間に入る写像と余有限空間の間の写像」)ので、$\iota$ と各平行移動 $x\mapsto gx$、$x\mapsto xg$ は連続である。しかし積 $\mu\colon G\times G\to G$ は連続でない。連続なら $G$ は位相群であり、余有限位相は T1空間 の位相なので、後の thm-topological-group-separation により $G$ は Hausdorff 空間になるが、無限集合上の余有限位相は Hausdorff でない(余有限位相 の記事の例「反例:T1 だが Hausdorff でない空間」)。
この例は「逆元をとる写像と各平行移動が連続」を満たすが「積が連続」を満たさず、含意「各変数ごとに連続な積は、2 変数の写像として連続である」を破る。
以下、$G$ を位相群とする。部分集合 $A,B\subset G$ と $g\in G$ について $AB:=\{ab\mid a\in A,\ b\in B\}$、$gA:=\{g\}A$、$Ag:=A\{g\}$、$A^{-1}:=\{a^{-1}\mid a\in A\}$ と書く。
1:$L_g$ は連続写像 $x\mapsto(g,x)$ と $\mu$ の合成なので連続であり、逆写像 $L_{g^{-1}}$ も同じ理由で連続である。よって $L_g$ は同相写像である。$R_g$ も同様である。$\iota$ は連続で $\iota\circ\iota=\mathrm{id}_G$ なので、自分自身が連続な逆写像であり、同相写像である。
2:$gU=L_g(U)$、$Ug=R_g(U)$、$U^{-1}=\iota(U)$ は同相写像による開集合の像なので開集合である。$AU=\bigcup_{a\in A}aU$、$UA=\bigcup_{a\in A}Ua$ は開集合の和集合なので開集合である。閉集合についても、同相写像による像なので閉集合である。
3:同相写像 $L_g$ は $e$ を $g$ に写すので、$e$ の近傍を $g$ の近傍に、$g$ の近傍を $L_{g^{-1}}$ で $e$ の近傍に写す。よって $g$ の近傍は $gN$($N\in\mathcal N_e$)の形のものに限り、これらはすべて $g$ の近傍である。$R_g$ についても同様である。$\square$
したがって $G$ は等質空間である。すなわち任意の $2$ 点 $g,h$ に対し、$g$ を $h$ に写す同相写像 $L_{hg^{-1}}$ がある。このことから、群準同型の連続性は単位元で調べれば足りる。
位相群の間の群準同型 $f\colon G\to H$ について、$f$ が連続であることと、$f$ が $G$ の単位元 $e$ で連続であることは同値である。
連続なら $e$ で連続である。逆に $f$ が $e$ で連続とし、$x\in G$、$W$ を $f(x)$ の近傍とする。prop-topological-group-translations の 3 により $f(x)^{-1}W$ は $H$ の単位元 $f(e)$ の近傍なので、$e$ の近傍 $N$ で $f(N)\subset f(x)^{-1}W$ となるものがある。すると $xN$ は $x$ の近傍で、$f(xN)=f(x)f(N)\subset W$ である。よって $f$ は $x$ で連続である。$\square$
$U$ を $e$ の近傍とする。$V=V^{-1}$ かつ $VV\subset U$ を満たす $e$ の開近傍 $V$ が存在する。さらに $\overline V\subset VV\subset U$ である。
$\mu(e,e)=e$ で $\mu$ は連続なので、$e$ の開近傍 $W_1,W_2$ で $\mu(W_1\times W_2)=W_1W_2\subset U$ となるものがある。$W:=W_1\cap W_2$ は $e$ の開近傍で $WW\subset U$ を満たす。$V:=W\cap W^{-1}$ とおくと、$W^{-1}$ は prop-topological-group-translations の 2 により開集合で $e$ を含むので、$V$ は $e$ の開近傍であり、$V^{-1}=W^{-1}\cap W=V$、$VV\subset WW\subset U$ である。
$x\in\overline V$ とする。$xV$ は $x$ の近傍なので $V$ と交わり、$xv=w$ となる $v,w\in V$ がある。すると $x=wv^{-1}\in VV^{-1}=VV$ である。よって $\overline V\subset VV\subset U$ である。$\square$
位相群 $G$ について、次は同値である。
3 ⇒ 2 ⇒ 1 は分離公理の一般的な含意である。
1 ⇒ 4:$x\neq e$ とし、$x$ の開近傍で $e$ を含まないものを見つければよい。$T_0$ により、$x$ と $e$ の一方だけを含む開集合 $U$ がある。$x\in U$、$e\notin U$ なら $U$ がそれである。$e\in U$、$x\notin U$ なら、$xU^{-1}$ は prop-topological-group-translations の 2 により開集合で、$e\in U^{-1}$ より $x\in xU^{-1}$ である。$e\in xU^{-1}$ とすると $e=xu^{-1}$ となる $u\in U$ があり $x=u\in U$ となって矛盾するので、$e\notin xU^{-1}$ である。よって $G\setminus\{e\}$ は開集合であり、$\{e\}$ は閉集合である。
4 ⇒ 3:$x\neq y$ とすると $x^{-1}y\neq e$ である。4 と prop-topological-group-translations の 2 により $\{x^{-1}y\}$ は閉集合なので、$U:=G\setminus\{x^{-1}y\}$ は $e$ の開近傍である。prop-topological-group-symmetric-nbhd により $V=V^{-1}$、$VV\subset U$ となる $e$ の開近傍 $V$ をとる。$xV$ と $yV$ はそれぞれ $x,y$ の開近傍である。$xv=yw$($v,w\in V$)とすると $x^{-1}y=vw^{-1}\in VV^{-1}=VV\subset U$ となり矛盾する。よって $xV\cap yV=\emptyset$ であり、$G$ は Hausdorff である。
正則性条件:prop-topological-group-symmetric-nbhd により、$e$ の任意の近傍 $U$ は閉包が $U$ に含まれる $e$ の開近傍 $V$ を含む。prop-topological-group-translations により、同じことが任意の点 $g$ とその近傍 $gU$ について $g\overline V=\overline{gV}\subset gU$ として成り立つ。これは 分離公理 の記事の命題「正則性と閉近傍」の条件なので、$G$ は正則性条件を満たす。Hausdorff なら $T_1$ でもあるので $T_3$ である。$\square$
一般の位相空間では $T_0$ から $T_1$ も、$T_1$ から Hausdorff 性も従わない(T1空間 の記事の例「反例:Sierpinski 空間」「反例:無限集合上の余有限位相」)。この定理は、群構造による等質性がその差を消すことを示している。
1:$H\times H$ の直積位相は $G\times G$ からの相対位相に一致する。$\mu$ と $\iota$ の $H\times H$、$H$ への制限は連続で、値は $H$ に入るので、$H$ に値をとる写像として連続である。
2:$\delta(x,y)=xy^{-1}$ は連続なので、$\delta(\overline H\times\overline H)=\delta(\overline{H\times H})\subset\overline{\delta(H\times H)}=\overline H$ である(直積の閉包は閉包の直積であり、連続写像は閉包を像の閉包の中に写す)。$e\in\overline H$ と合わせて $\overline H$ は部分群である。$H$ が正規なら、$g\in G$ について $g\overline Hg^{-1}$ は同相写像 $x\mapsto gxg^{-1}$ による $\overline H$ の像なので $\overline{gHg^{-1}}=\overline H$ に等しい。
3:$N\subset H$ を $e$ の近傍とする。$h\in H$ について $hN$ は $h$ の近傍で $hN\subset HH=H$ なので、$H$ は各点の近傍であり、開集合である。
4:$H$ を開部分群とする。$G\setminus H$ は $H$ と異なる左剰余類 $gH$ の和集合であり、各 $gH$ は開集合なので、$G\setminus H$ は開集合である。よって $H$ は閉集合である。
5:$H$ を指数有限の閉部分群とすると、$G\setminus H$ は有限個の左剰余類 $g_1H,\dots,g_rH$ の和集合であり、各 $g_iH$ は閉集合なので、$G\setminus H$ は閉集合である。よって $H$ は開集合である。$\square$
4 により、連結空間である位相群の開部分群は $G$ 自身だけである(開かつ閉で空でないため)。3 と合わせると、連結な位相群は単位元の任意の近傍で生成される。実際、近傍 $U$ の生成する部分群は $U$ を含むので開部分群になり、$G$ に一致する。
$G$ の単位元を含む連結成分 $G_0$ は $G$ の閉正規部分群である。
連結成分は閉集合である。$G_0\times G_0$ は連結空間の直積なので連結であり(連結空間 の記事の定理「直積の連結性」)、その連続写像 $\delta$ による像 $G_0G_0^{-1}$ は連結で $e=ee^{-1}$ を含むので、$e$ の連結成分 $G_0$ に含まれる。よって $G_0$ は部分群である。$g\in G$ について $gG_0g^{-1}$ は同相写像 $x\mapsto gxg^{-1}$ による $G_0$ の像なので連結で $e$ を含み、$G_0$ に含まれる。よって $G_0$ は正規部分群である。$\square$
たとえば $\mathbb{R}^\times=\mathrm{GL}_1(\mathbb{R})$ の単位元の連結成分は正の実数全体 $\mathbb{R}_{>0}$ である。$\mathbb{R}_{>0}$ は区間なので連結で、$\mathbb{R}^\times=\mathbb{R}_{>0}\cup\mathbb{R}_{<0}$ は交わらない 2 つの開集合への分割だからである(連結空間 の記事の定理「実数直線の連結部分集合」)。$\mathbb{R}_{>0}$ は指数 $2$ の開部分群である。$\mathbb{Q}$ を有理数の加法群として $\mathbb{R}$ からの相対位相を入れると、連結成分はすべて 1 点で、$G_0=\{0\}$ であるが、$\{0\}$ は開集合でないので $\mathbb{Q}$ は離散群でない。
$H$ を $G$ の部分群とし、左剰余類の集合 $G/H=\{gH\mid g\in G\}$ に、射影 $\pi\colon G\to G/H$、$\pi(g)=gH$ による商位相(商写像 の記事の定義「全射が定める商位相」)を入れる。
1:$U\subset G$ を開集合とすると、$\pi^{-1}(\pi(U))=UH=\bigcup_{h\in H}Uh$ は prop-topological-group-translations の 2 により開集合である。商位相の定義により $\pi(U)$ は開集合である。
2:$G/H$ が Hausdorff なら 1 点集合 $\{eH\}$ は閉集合であり、$H=\pi^{-1}(\{eH\})$ は閉集合である。逆に $H$ を閉集合とし、$xH\neq yH$ とする。$x^{-1}y\notin H$ であり、$G\setminus H$ は開集合で $\delta'(a,b):=a^{-1}b$ は連続なので、$x,y$ の開近傍 $U,V$ で $U^{-1}V\cap H=\emptyset$ となるものがある。1 により $\pi(U)$、$\pi(V)$ は $xH$、$yH$ の開近傍である。$uH=vH$($u\in U$、$v\in V$)とすると $u^{-1}v\in H$ となって矛盾するので、$\pi(U)\cap\pi(V)=\emptyset$ である。
3:$G/H$ の積を $\bar\mu$、逆元をとる写像を $\bar\iota$ とすると、$\bar\mu\circ(\pi\times\pi)=\pi\circ\mu$、$\bar\iota\circ\pi=\pi\circ\iota$ である。$W\subset G/H$ を開集合とする。$\pi\times\pi\colon G\times G\to G/H\times G/H$ は全射であり、開写像の直積なので開写像である(開集合 $U_1\times U_2$ の像は $\pi(U_1)\times\pi(U_2)$ で、直積位相の開集合はこの形の和集合である)。$(\pi\times\pi)^{-1}(\bar\mu^{-1}(W))=\mu^{-1}(\pi^{-1}(W))$ は開集合なので、全射性からその像 $\bar\mu^{-1}(W)$ は開集合である。よって $\bar\mu$ は連続である。同様に $\pi^{-1}(\bar\iota^{-1}(W))=\iota^{-1}(\pi^{-1}(W))$ は開集合なので、商位相の定義により $\bar\iota^{-1}(W)$ は開集合である。$\pi$ は商写像として連続で、準同型である。$\square$
2 と thm-topological-group-separation により、閉正規部分群による剰余群は Hausdorff な位相群である。とくに $\overline{\{e\}}$ は閉正規部分群であり(prop-topological-group-subgroups の 2)、$G/\overline{\{e\}}$ は Hausdorff な位相群になる。これにより、多くの議論では位相群を Hausdorff と仮定してよい。一方、$H$ が閉でなければ $G/H$ は Hausdorff でない。たとえば $\mathbb{R}/\mathbb{Q}$ の空でない開集合 $W$ をとると、$U:=\pi^{-1}(W)$ は $\mathbb{R}$ の空でない開集合で $U+\mathbb{Q}=U$ を満たす。任意の $x\in\mathbb{R}$ について開集合 $x-U$ は有理数 $q$ を含む($\mathbb{Q}$ は $\mathbb{R}$ で稠密)ので $x\in U+q=U$ であり、$U=\mathbb{R}$、$W=\mathbb{R}/\mathbb{Q}$ となる。よって $\mathbb{R}/\mathbb{Q}$ の商位相は密着位相である(密着位相 の記事の例「有理数による実数の商」)。
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