Sorgenfrey直線

概要

Sorgenfrey直線(Sorgenfrey line)とは、実数直線 $\mathbb{R}$ に半開区間 $[a,b)$ を開基として入れた位相空間 $\mathbb{R}_L$ のことである。その位相は下限位相(下極限位相)とも呼ばれ、通常の位相より真に細かい。$\mathbb{R}_L$ は第1可算・可分・完全正規($T_6$)で、任意の部分空間がLindelöfかつ強パラコンパクトだが、第2可算公理は満たさず距離化可能でもない。コンパクト部分集合は高々可算に限られ、局所コンパクトでも $\sigma$ コンパクトでもない。完全不連結でもある。以上は $\mathbb{R}_L$ 自身の性質で、直積 $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$(Sorgenfrey平面)はLindelöfでも正規でもない。名称は R. H. Sorgenfrey にちなむ。

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前提知識: 位相空間, 開基, 開集合, 実数

定義

実数全体の集合 $\mathbb{R}$ に入る位相は、通常のEuclid位相だけではない。左端を含み右端を含まない区間 $[a,b)$ の全体を開基にとると、通常の位相より真に細かい位相が定まる。この位相を入れた空間がSorgenfrey直線である。

半開区間を開基とする位相

$$\mathcal{B}=\{[a,b)\mid a,b\in\mathbb{R},\ a< b\}$$
とおく。$\mathcal{B}$ は $\mathbb{R}$ を覆い、その二元の交わりは空集合であるか再び $\mathcal{B}$ に属するので(prop-sorgenfrey-line-base)、$\mathcal{B}$ を開基とする $\mathbb{R}$ 上の位相 $\mathcal{O}_L$ がただ一つ定まる。この位相空間 $(\mathbb{R},\mathcal{O}_L)$ を Sorgenfrey直線(Sorgenfrey line)といい、$\mathbb{R}_L$ と書く。位相 $\mathcal{O}_L$ そのものは 下限位相(lower limit topology)、下極限位相 とも呼ばれる。文献によっては空間を $\mathbb{R}_\ell$ と書く。

名称は R. H. Sorgenfrey にちなむ(Sorg47)。

開基の条件と開集合の判定
  1. $\mathcal{B}$ は $\mathbb{R}$ を覆い、$\mathcal{B}$ の二元の交わりは空集合であるか、ふたたび $\mathcal{B}$ に属する。したがって $\mathcal{B}$ を開基とする位相 $\mathcal{O}_L$ がただ一つ定まり、その開集合は $\mathcal{B}$ の元の合併の全体である。
  2. $U\subseteq\mathbb{R}$ が $\mathcal{O}_L$ の開集合であることと、任意の $x\in U$ に対しある $\varepsilon>0$ が存在して $[x,x+\varepsilon)\subseteq U$ となることは同値である。
  1. 各 $x\in\mathbb{R}$ は $[x,x+1)\in\mathcal{B}$ に属するので $\mathcal{B}$ は $\mathbb{R}$ を覆う。また
    $$[a,b)\cap[c,d)=[\max\{a,c\},\min\{b,d\})$$
    であり、右辺は $\max\{a,c\}<\min\{b,d\}$ のとき $\mathcal{B}$ の元、そうでないときは空集合である。よって $\mathcal{B}$ は開基の条件を満たし、$\mathcal{B}$ の元の合併の全体が位相をなす。
  2. $U$ が $\mathcal{B}$ の元の合併であることは、各 $x\in U$ について $x\in[a,b)\subseteq U$ となる $[a,b)\in\mathcal{B}$ が存在することと同値である。$x\in[a,b)$ ならば $[x,b)\subseteq[a,b)$ なので、これは「ある $\varepsilon>0$ について $[x,x+\varepsilon)\subseteq U$」と同値である。$\square$
開基の元は開かつ閉

$a< b$ のとき $[a,b)$ は $\mathbb{R}_L$ の開かつ閉集合である。また $(-\infty,a)$ と $[a,\infty)$ も開かつ閉である。

$(-\infty,a)=\bigcup_{n\ge1}[a-n,a)$ と $[b,\infty)=\bigcup_{n\ge1}[b,b+n)$ はいずれも $\mathcal{B}$ の元の合併なので開集合である。$[a,b)$ は $\mathcal{B}$ の元だから開であり、その補集合 $(-\infty,a)\cup[b,\infty)$ も開なので $[a,b)$ は閉でもある。同様に $(-\infty,a)$ の補集合は $[a,\infty)$、$[a,\infty)$ の補集合は $(-\infty,a)$ であり、どちらも開だから、この二つも開かつ閉である。$\square$

直感

$x$ の近傍が $[x,x+\varepsilon)$ の形で与えられるということは、$x$ の「右側だけ」を見て近さを測るということである。左側の点は基本近傍 $[x,x+\varepsilon)$ には入らない。この非対称性が $\mathbb{R}_L$ の振る舞いをすべて決めている。

  • 左からの接近が効かないので、点列の収束は「通常の収束かつ右側からの接近」に限られる(prop-sorgenfrey-line-convergence)。
  • 各点が開かつ閉な近傍 $[x,x+\varepsilon)$ をもつので、空間は完全不連結(完全不連結空間)になり、同時に正則になる(prop-sorgenfrey-line-regular)。
  • 開基の元 $[a,b)$ は左端 $a$ を「最小元」として持つ。開基を与えると各点にその点を最小元とする元が要るので、開基は非可算にならざるを得ない(prop-sorgenfrey-line-not-second-countable)。
  • 逆に、開被覆から可算部分被覆を取るときは証明中に残る点に対応する通常の開区間が互いに素となり、有理数を使って残る点を可算個に限れることが効く。これが可算性の条件をLindelöf性の側だけ残す仕組みである(prop-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelof)。
    つまり $\mathbb{R}_L$ は、可算性の条件のうち第1可算・可分・Lindelöfは満たすが第2可算は満たさない、という位置にある空間である。可分な距離空間は第2可算であるので、可分だが第2可算でないSorgenfrey直線は距離化可能でない。

例と反例

開集合と開でない集合

$[0,1)$ は $\mathbb{R}_L$ の開集合であり、prop-sorgenfrey-line-clopenにより閉集合でもある。通常の位相の開区間 $(0,1)$ も $\mathbb{R}_L$ の開集合である(prop-sorgenfrey-line-finer)。一方 $(0,1]$ は $\mathbb{R}_L$ の開集合ではない。点 $1$ について $[1,1+\varepsilon)\subseteq(0,1]$ となる $\varepsilon>0$ が存在しないからである。

右からの収束と左からの収束

$x_n=1/n$ は $\mathbb{R}_L$ で $0$ に収束する。実際、$0$ の任意の開近傍は $[0,\varepsilon)$ を含み、$n>1/\varepsilon$ ならば $x_n\in[0,\varepsilon)$ である。
これに対し $y_n=-1/n$ は $\mathbb{R}_L$ のどの点にも収束しない。仮に $y_n\to y$ とすると、$\mathcal{O}_L$ は通常の位相より細かいので通常の位相でも $y_n\to y$ となり $y=0$ である。しかし $[0,1)$ は $0$ の開近傍なのに $y_n$ をひとつも含まない。

コンパクトな部分集合とそうでない部分集合

$K=\{0\}\cup\{1/n\mid n\ge1\}$ は $\mathbb{R}_L$ のコンパクト部分集合である。開被覆 $\mathcal{U}$ から $0$ を含む元 $U_0$ をとると $[0,\varepsilon)\subseteq U_0$ となる $\varepsilon>0$ があり、$U_0$ は $n>1/\varepsilon$ のすべての $1/n$ を含む。残る有限個の点を覆う元を有限個追加すればよい。
一方 $K'=\{0\}\cup\{-1/n\mid n\ge1\}$ はコンパクトではない。$n\ge1$ について $[-1/n,-1/(n+1))$ とおくと、これは $K'$ の点のうち $-1/n$ だけを含む。$\{[0,1)\}\cup\{[-1/n,-1/(n+1))\mid n\ge1\}$ は $K'$ の開被覆であり、各元は $K'$ の点をちょうど一つしか含まないので、有限部分族は $K'$ の有限個の点しか覆えない。

反例:第1可算・可分・Lindelöfを満たすが第2可算でない

$\mathbb{R}_L$ が満たす性質は「第1可算公理・可分性(可分空間)・Lindelöf性(Lindelöf空間)、およびHausdorff性」であり(prop-sorgenfrey-line-countability、prop-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelof、prop-sorgenfrey-line-perfectly-normal)、満たさない性質は「第2可算公理」である(prop-sorgenfrey-line-not-second-countable)。破れる含意は「第1可算かつ可分ならば第2可算」「Lindelöfならば第2可算」の二つである。

反例:可分かつ完全正規だが距離化可能でない

$\mathbb{R}_L$ が満たす性質は「可分性・完全正規性($T_6$)・Lindelöf性・強パラコンパクト性」であり、満たさない性質は「距離化可能性」である。破れる含意は「可分かつ正規ならば距離化可能」「Lindelöfかつ正則ならば距離化可能」である。
証明は次のとおり。距離空間においては可分性と第2可算性(第2可算公理)が同値であり、この同値定理は 第2可算公理 が定理「距離空間における同値性」として所有する。$\mathbb{R}_L$ は可分だが第2可算でないので、$\mathbb{R}_L$ の位相を与える距離は存在しない。

性質

通常の位相との比較

通常の位相より真に細かい

$\mathcal{O}_E$ を $\mathbb{R}$ の通常の位相とすると $\mathcal{O}_E\subsetneq\mathcal{O}_L$ である。とくに、通常の位相の閉集合は $\mathbb{R}_L$ の閉集合であり、恒等写像 $(\mathbb{R},\mathcal{O}_L)\to(\mathbb{R},\mathcal{O}_E)$ は連続である。

包含 $\mathcal{O}_E\subseteq\mathcal{O}_L$:$\mathcal{O}_E$ の開集合 $W$ と $x\in W$ に対し $(x-\delta,x+\delta)\subseteq W$ となる $\delta>0$ をとれば $[x,x+\delta)\subseteq W$ である。prop-sorgenfrey-line-baseの 2 より $W\in\mathcal{O}_L$。
真の包含であること:$[0,1)\in\mathcal{O}_L$ である。しかし $0$ を含む通常の位相の開集合は必ず負の数を含むので $[0,1)\notin\mathcal{O}_E$ である。
補集合をとれば $\mathcal{O}_E$ の閉集合が $\mathcal{O}_L$ の閉集合であることが従い、恒等写像の連続性は $\mathcal{O}_E\subseteq\mathcal{O}_L$ の言い換えである。$\square$

点列の収束

$\mathbb{R}$ の点列 $(x_n)$ と $x\in\mathbb{R}$ について、次は同値である。

  1. $\mathbb{R}_L$ で $x_n\to x$。
  2. 通常の位相で $x_n\to x$ であり、かつある $N$ が存在して $n\ge N$ ならば $x_n\ge x$。

1 から 2:$\mathcal{O}_E\subseteq\mathcal{O}_L$(prop-sorgenfrey-line-finer)より通常の位相でも $x_n\to x$ である。また $[x,x+1)$ は $\mathbb{R}_L$ における $x$ の開近傍だから、ある $N$ について $n\ge N$ ならば $x_n\in[x,x+1)$、とくに $x_n\ge x$。
2 から 1:$x$ の $\mathbb{R}_L$ における任意の開近傍 $U$ に対し $[x,x+\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ をとる。通常の収束から、ある $N'$ について $n\ge N'$ ならば $|x_n-x|<\varepsilon$ である。$n\ge\max\{N,N'\}$ ならば $x\le x_n< x+\varepsilon$、すなわち $x_n\in[x,x+\varepsilon)\subseteq U$。$\square$

可算性の条件

第1可算性と可分性
  1. $\mathbb{R}_L$ は第1可算公理を満たす。各点 $x$ において $\{[x,x+1/n)\mid n\ge1\}$ が基本近傍系をなす。
  2. $\mathbb{R}_L$ は可分空間である。有理数全体 $\mathbb{Q}$ が $\mathbb{R}_L$ で稠密である。
  1. 各 $[x,x+1/n)$ は $x$ の開近傍である。$U$ を $x$ の任意の開近傍とするとprop-sorgenfrey-line-baseの 2 より $[x,x+\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ があり、$1/n<\varepsilon$ となる $n$ をとれば $[x,x+1/n)\subseteq U$ である。族は可算だから基本近傍系の条件を満たす。
  2. $U$ を空でない開集合とし $x\in U$ をとる。$[x,x+\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ があり、開区間 $(x,x+\varepsilon)$ は空でないので有理数を含む。よって $U\cap\mathbb{Q}\ne\emptyset$ であり、$\mathbb{Q}$ は稠密である。$\mathbb{Q}$ は可算だから $\mathbb{R}_L$ は可分である。$\square$
第2可算公理を満たさないこと

$\mathbb{R}_L$ の開基はどれも非可算である。とくに $\mathbb{R}_L$ は第2可算公理を満たさない。

$\mathcal{C}$ を $\mathbb{R}_L$ の高々可算な開基とし、枚挙 $\mathcal{C}=\{C_1,C_2,\dots\}$ をひとつ固定する。各 $x\in\mathbb{R}$ について $[x,x+1)$ は開集合だから、$x\in C_k\subseteq[x,x+1)$ となる番号 $k$ が存在する。そのような $k$ のうち最小のものを $k(x)$ とおく。
$C_{k(x)}\subseteq[x,x+1)$ より $C_{k(x)}$ の元はすべて $x$ 以上であり、$x\in C_{k(x)}$ だから $x=\min C_{k(x)}$ である。したがって $x\ne y$ ならば $C_{k(x)}\ne C_{k(y)}$、すなわち $k$ は $\mathbb{R}$ から自然数全体への単射になる。$\mathbb{R}$ は非可算なのでこれは矛盾である。
枚挙を先に固定して最小番号をとっているので、この論証は選択公理を使わない。$\square$

被覆の条件

任意の部分空間のLindelöf性

$A\subseteq\mathbb{R}$ に $\mathbb{R}_L$ からの相対位相を入れると、$A$ はLindelöf空間である。すなわち $\mathbb{R}_L$ は遺伝的Lindelöfである。とくに $A=\mathbb{R}$ として、$\mathbb{R}_L$ 自身がLindelöf空間である。

$\mathcal{U}$ を $A$ の(相対位相についての)開被覆とする。
各 $x\in A$ に対し、$x$ を含む $U\in\mathcal{U}$ があり、$U$ は相対開だから $[x,x+\varepsilon)\cap A\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ が存在する。そこで
$$n(x)=\min\{n\ge1\mid [x,x+1/n)\cap A\subseteq U\ \text{となる}\ U\in\mathcal{U}\ \text{が存在する}\}$$
とおき、$\varepsilon_x=1/n(x)$ とする。これは選択を伴わない定め方である。
$V=\bigcup_{x\in A}(x,x+\varepsilon_x)$ とおく。$V$ は通常の位相の開集合であり、$\{(x,x+\varepsilon_x)\mid x\in A\}$ はその開被覆である。$\mathbb{R}$ の部分空間がLindelöfであることは Lindelöf空間 が系「実数空間の部分空間」として所有するので、可算な $A_0\subseteq A$ で
$$\bigcup_{x\in A_0}(x,x+\varepsilon_x)=V$$
となるものがとれる。
$$R=A\setminus\bigcup_{x\in A_0}[x,x+\varepsilon_x)$$
とおく。$R$ が高々可算であることを示す。$y\in R$ ならば、とくに $y\notin\bigcup_{x\in A_0}(x,x+\varepsilon_x)=V$ であり、$V$ は $A$ 全体にわたる合併だから、すべての $x\in A$ について $y\notin(x,x+\varepsilon_x)$ である。
そこで $y,y'\in R$、$y< y'$ とする。$y\in A$ に上の事実を適用すると $y'\notin(y,y+\varepsilon_y)$ であり、$y'>y$ だから $y'\ge y+\varepsilon_y$ となる。したがって $(y,y+\varepsilon_y)$ と $(y',y'+\varepsilon_{y'})$ は交わらない。$\{(y,y+\varepsilon_y)\mid y\in R\}$ は互いに素な空でない開区間の族であり、$\mathbb{Q}$ の枚挙をひとつ固定して各区間に含まれる最小番号の有理数を対応させれば単射 $R\to\mathbb{Q}$ が得られる。よって $R$ は高々可算である。
$A_0\cup R$ は高々可算である。その各点 $z$ について $[z,z+\varepsilon_z)\cap A\subseteq U_z$ となる $U_z\in\mathcal{U}$ をひとつ選ぶ(高々可算個の選択なので可算選択公理を用いる)。$R$ の定義より
$$A=\Bigl(\bigcup_{x\in A_0}\bigl([x,x+\varepsilon_x)\cap A\bigr)\Bigr)\cup R$$
であり、右辺の第一項は $\{U_x\mid x\in A_0\}$ に覆われ、$R$ の各点 $y$ は $y\in[y,y+\varepsilon_y)\cap A\subseteq U_y$ に覆われる。よって $\{U_z\mid z\in A_0\cup R\}$ は $\mathcal{U}$ の高々可算な部分被覆である。$\square$

$T_1$ 性と正則性

$\mathbb{R}_L$ とその任意の部分空間 $A$ は $T_1$ かつ正則である。ここで正則とは、点とそれを含まない閉集合が互いに素な開集合で分けられることをいう。

$T_1$ 性:$\mathbb{R}\setminus\{x\}=(-\infty,x)\cup(x,\infty)$ であり、$(-\infty,x)$ はprop-sorgenfrey-line-clopenにより開、$(x,\infty)$ は通常の位相の開集合なのでprop-sorgenfrey-line-finerにより開である。よって一点集合は閉であり、$T_1$ 性は部分空間に受け継がれる。
正則性:$x\in A$ と $A$ の開集合 $G\ni x$ をとる。$G=U\cap A$($U$ は $\mathbb{R}_L$ の開集合)と書けるので $[x,x+\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ がある。$V=[x,x+\varepsilon)\cap A$ とおくと、$[x,x+\varepsilon)$ は $\mathbb{R}_L$ で開かつ閉だから(prop-sorgenfrey-line-clopen)、$V$ は $A$ で開かつ閉であり、$A$ における閉包は $V$ 自身である。すなわち $x\in V\subseteq\overline{V}=V\subseteq G$。
いま $x\in A$ と $x$ を含まない $A$ の閉集合 $F$ が与えられたとすると、$G=A\setminus F$ に上の議論を適用して $x\in V\subseteq\overline{V}\subseteq G$ となる開集合 $V$ がとれる。$V$ と $A\setminus\overline{V}$ は互いに素な開集合で、それぞれ $x$ と $F$ を含む。$\square$

任意の部分空間の強パラコンパクト性

$A\subseteq\mathbb{R}$ に $\mathbb{R}_L$ からの相対位相を入れると、$A$ は強パラコンパクト、とくにパラコンパクト(パラコンパクト空間)である。

$A$ は正則(prop-sorgenfrey-line-regular)かつLindelöf(prop-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelof)である。「正則なLindelöf空間は強パラコンパクトである」は Lindelöf空間 の命題「正則性を加えたときの被覆の取り替え」に記されている。同記事も証明を文献に委ねており、本記事でもこの一般定理を無証明で用いて $A$ に適用する。$\square$

可算鎖条件を満たすこと

$\mathbb{R}_L$ において、互いに素な空でない開集合からなる族は必ず高々可算である。

「可分空間では互いに素な空でない開集合の族は高々可算である」ことは 可分空間 が注意「可算鎖条件についての証明の方針と出典」として所有する。$\mathbb{R}_L$ は可分だから(prop-sorgenfrey-line-countability)、これを適用すればよい。$\square$

分離公理

完全正規性

$\mathbb{R}_L$ は正規空間であり、しかも $\mathbb{R}_L$ の任意の閉集合は $G_\delta$ 集合、すなわち可算個の開集合の共通部分である。したがって $\mathbb{R}_L$ は完全正規空間($T_6$)である。$T_1$ 性と合わせて $\mathbb{R}_L$ はHausdorffでもある。

正規性:$\mathbb{R}_L$ は正則(prop-sorgenfrey-line-regular)かつLindelöf(prop-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelof)である。「正則なLindelöf空間は正規である」は Lindelöf空間 が命題「正則なLindelöf空間の分離」として所有するので、$\mathbb{R}_L$ は正規である。$T_1$ かつ正規なら Hausdorff である。
閉集合が $G_\delta$ であること:閉集合 $F$ に対し $U=\mathbb{R}\setminus F$ とおき、$U$ が可算個の閉集合の合併($F_\sigma$)であることを示せばよい。$U^{\circ}$ を $U$ の通常の位相における内部とし、$D=U\setminus U^{\circ}$ とおく。
まず $D$ が高々可算であることを見る。$x\in D$ に対し $[x,x+1/n)\subseteq U$ となる最小の正整数を $n(x)$ とし $\varepsilon_x=1/n(x)$ とおく(選択は用いない)。$(x,x+\varepsilon_x)$ は通常の位相の開集合で $U$ に含まれるから $(x,x+\varepsilon_x)\subseteq U^{\circ}$ である。$x< y$ がともに $D$ に属するとすると $y\notin U^{\circ}$ なので $y\notin(x,x+\varepsilon_x)$、すなわち $y\ge x+\varepsilon_x$ となる。よって $\{(x,x+\varepsilon_x)\mid x\in D\}$ は互いに素な空でない開区間の族であり、$\mathbb{Q}$ の枚挙を固定して各区間の最小番号の有理数を対応させれば単射 $D\to\mathbb{Q}$ が得られる。$D$ は高々可算である。
次に $U^{\circ}$ が $\mathbb{R}_L$ で $F_\sigma$ であることを見る。$U^{\circ}=\mathbb{R}$ のときは $\mathbb{R}$ 自身が閉集合である。$U^{\circ}\ne\mathbb{R}$ のときは
$$C_n=\{x\in\mathbb{R}\mid \operatorname{dist}(x,\mathbb{R}\setminus U^{\circ})\ge1/n\}$$
とおくと、各 $C_n$ は通常の位相の閉集合で $U^{\circ}=\bigcup_{n\ge1}C_n$ である。通常の位相の閉集合は $\mathbb{R}_L$ の閉集合でもある(prop-sorgenfrey-line-finer)。
最後に $D$ の各点は $T_1$ 性から閉集合である。したがって
$$U=U^{\circ}\cup D$$
は $\mathbb{R}_L$ の高々可算個の閉集合の合併であり、$F=\mathbb{R}\setminus U$ は $G_\delta$ 集合である。$\square$

コンパクト性

コンパクト部分集合の可算性

$\mathbb{R}_L$ のコンパクト部分集合は高々可算である。

$K\subseteq\mathbb{R}$ を $\mathbb{R}_L$ でコンパクトな部分集合とする。恒等写像 $(\mathbb{R},\mathcal{O}_L)\to(\mathbb{R},\mathcal{O}_E)$ は連続だから(prop-sorgenfrey-line-finer)、$K$ は通常の位相でもコンパクトであり、とくに通常の位相で閉かつ有界である(コンパクト集合の連続像がコンパクトであることと Heine–Borel の定理は コンパクト空間 が所有する)。
第一段:$K$ の点は $K$ の左からの集積点にならない。すなわち各 $x\in K$ について、ある $\delta>0$ が存在して $(x-\delta,x)\cap K=\emptyset$ である。
これを背理法で示す。ある $x\in K$ について、すべての $\delta>0$ で $(x-\delta,x)\cap K\ne\emptyset$ だとする。$t_n=\inf\bigl((x-1/n,x)\cap K\bigr)$ とおくと、$(x-1/n,x)\cap K$ は空でなく $[x-1/n,x)$ に含まれるので $t_n\in[x-1/n,x)$ であり、$K$ は通常の位相で閉だから $t_n\in K$ である。また $(x-1/(n+1),x)\subseteq(x-1/n,x)$ より $t_n\le t_{n+1}$ であり、$t_n\ge x-1/n$ より $t_n\to x$ である。ここから $n_1=1$、$n_{k+1}=\min\{n\mid t_n>t_{n_k}\}$ と再帰的に定めれば($t_n\to x>t_{n_k}$ なので定義できる)、$y_k=t_{n_k}$ は $K$ の狭義単調増加列で $y_k\to x$、$y_k< x$ を満たす。この構成に選択は要らない。
族
$$\mathcal{V}=\{(-\infty,y_1)\}\cup\{[y_k,y_{k+1})\mid k\ge1\}\cup\{[x,\infty)\}$$
を考える。$y_k$ は $x$ に狭義単調増加で収束するので $(-\infty,y_1)\cup\bigcup_{k\ge1}[y_k,y_{k+1})=(-\infty,x)$ であり、$\mathcal{V}$ は $\mathbb{R}$ の開被覆、とくに $K$ の開被覆である。ところが $y_k$ を含む $\mathcal{V}$ の元は $[y_k,y_{k+1})$ ただひとつなので、$\mathcal{V}$ の有限部分族は有限個の $y_k$ しか覆えない。これは $K$ のコンパクト性に反する。
第二段:各 $x\in K$ について $(x-1/n,x)\cap K=\emptyset$ となる最小の正整数を $m(x)$ とし $\delta_x=1/m(x)$ とおく(第一段よりこれは定まる。選択は用いない)。$x< y$ がともに $K$ に属するとすると、$(y-\delta_y,y)\cap K=\emptyset$ かつ $x\in K$、$x< y$ だから $x\le y-\delta_y$ である。よって $(x-\delta_x,x)\subseteq(-\infty,x]$ は $(y-\delta_y,y)$ と交わらない。すなわち $\{(x-\delta_x,x)\mid x\in K\}$ は互いに素な空でない開区間の族であり、$\mathbb{Q}$ の枚挙を固定して各区間の最小番号の有理数を対応させれば単射 $K\to\mathbb{Q}$ が得られる。$K$ は高々可算である。$\square$

コンパクト性の各種条件の不成立

$\mathbb{R}_L$ はコンパクト空間ではなく、局所コンパクトでもなく、$\sigma$ コンパクトでもない。ここで局所コンパクトとは各点がコンパクトな近傍をもつことをいい、$\sigma$ コンパクトとは高々可算個のコンパクト部分集合の合併に書けることをいう。

$\mathbb{R}$ は非可算だから、prop-sorgenfrey-line-compact-countableより $\mathbb{R}$ 自身はコンパクトでない。
局所コンパクトでないこと:ある $x$ がコンパクトな近傍 $N$ をもつとすると、$N$ は $x$ を含む開集合を含むので $[x,x+\varepsilon)\subseteq N$ となる $\varepsilon>0$ がある。$[x,x+\varepsilon)$ は非可算だから $N$ も非可算であり、prop-sorgenfrey-line-compact-countableに反する。
$\sigma$ コンパクトでないこと:$\mathbb{R}=\bigcup_{n\ge1}K_n$(各 $K_n$ はコンパクト)と書けたとすると、各 $K_n$ は高々可算だから $\mathbb{R}$ も高々可算になり矛盾する。$\square$

連結性

完全不連結性

$\mathbb{R}_L$ は完全不連結空間である。すなわち空でない連結部分集合は一点集合に限る。

相異なる $x,y\in\mathbb{R}$ をとる。$x< y$ のときは $(-\infty,y)$ が、$y< x$ のときは $[x,\infty)$ が、prop-sorgenfrey-line-clopenにより開かつ閉であって $x$ を含み $y$ を含まない。「相異なる任意の二点が開かつ閉な集合で分けられれば完全不連結である」ことは 完全不連結空間 が命題「開閉集合で二点を分ける十分条件」として所有するので、それを適用すればよい。$\square$

補足・応用

直積との対比

$\mathbb{R}_L$ の自分自身との直積 $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ をSorgenfrey平面という。$\mathbb{R}_L$ について本記事が示した性質を、そのまま $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ に持ち越してはならない。二つは別の空間であり、Lindelöf性・正規性・パラコンパクト性は $\mathbb{R}_L$ では成り立つが平面では成り立たない。

  • 平面がLindelöf空間でないことの主張と証明は Lindelöf空間 が注意「反例:Lindelöf性は直積で保たれない」として所有する。
  • 平面が正規空間でないことの主張と証明は Sorgenfrey平面 が所有する。距離空間は正規である( 教科書の命題「距離空間の正規性」 )。したがって、この非正規な平面は距離化可能ではない。また、パラコンパクトHausdorff空間は正規であるという一般定理をここでは無証明で用いる。平面はHausdorffなので、非正規性からパラコンパクトでもない。
  • 平面の可分性に必要なのは二つの可分空間の直積についての事実だけであり、ここでは直接確かめられる。各基本開矩形 $[a,b)\times[c,d)$($a< b$、$c< d$)には有理点の対があるので、可算集合 $\mathbb{Q}\times\mathbb{Q}$ は平面で稠密である。
    したがって $\mathbb{R}_L$ は「良い性質をもつ空間どうしの直積が同じ性質をもつとは限らない」ことを示す標準的な材料であり、Lindelöf性・正規性・パラコンパクト性のいずれもが有限直積で保たれないことが、この一つの空間から同時に読み取れる。

$\mathbb{R}_L$ と $\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$ の対比を、参照先とともに並べると次のようになる。

性質$\mathbb{R}_L$(本記事が所有)$\mathbb{R}_L\times\mathbb{R}_L$(本文で参照・確認)
可分はいはい(上の有理点対による確認)
Lindelöfはい(遺伝的)いいえ(Lindelöf空間)
正規はい(完全正規)いいえ(Sorgenfrey平面)
パラコンパクトはい(遺伝的・強パラコンパクト)いいえ(上の非正規性と一般定理)
距離化可能いいえいいえ(上の非正規性と距離空間の正規性)
第2可算いいえ本記事は扱わない
局所コンパクトいいえ本記事は扱わない
遺伝的性質としての強さ

prop-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelofとcor-sorgenfrey-line-hereditarily-paracompactが示すのは、「$\mathbb{R}_L$ 自身がLindelöfかつ強パラコンパクトである」よりも強い事実である。任意の部分空間がこれらを満たす。Lindelöf性は一般には部分空間に遺伝しないので(この反例は Lindelöf空間 が所有する)、遺伝的Lindelöfであることは自明ではない。
一方、遺伝的Lindelöf性の十分条件として最もよく使われるのは第2可算性だが、$\mathbb{R}_L$ は第2可算ではない。すなわち $\mathbb{R}_L$ は「第2可算でない遺伝的Lindelöf空間」の標準例でもある。

選択公理の使いどころ

本記事の証明のうち選択公理を使うのはprf-sorgenfrey-line-hereditarily-lindelofの最後の段だけであり、そこでも可算選択公理で足りる。高々可算な $A_0\cup R$ の各点に対して被覆の元をひとつ選ぶ箇所である。
本記事が書き下した他の証明は選択公理を使わない。開基や有理数の枚挙を先に固定して最小番号をとる、条件を満たす最小の正整数 $n$ をとる、といった定め方に統一しているためである。prf-sorgenfrey-line-compact-countableの狭義単調増加列も、下限による再帰的な定義で構成しており、従属選択を用いていない。引用先の証明で使われる選択公理については、それぞれの記事の記録による。とくにcor-sorgenfrey-line-hereditarily-paracompactが使う「正則なLindelöf空間は強パラコンパクト」は Lindelöf空間 も証明を文献に委ねているので、そこでの選択公理の使用は本記事では追跡していない。

本記事の記述はおおむね Mun00・SS78 に従う。$\mathbb{R}_L$ は、可算性の条件・分離公理・被覆の条件・コンパクト性のそれぞれについて「どこまでが成り立ち、どこから成り立たないか」を一つの空間で示せるため、位相空間論の反例として最初に挙げられることが多い。

関連項目

参考文献

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