交点数(平面曲線)(intersection number of plane curves)とは、代数閉体 $k$ 上の平面の 2 つの曲線 $F,G$ と点 $P$ に対し、$P$ での局所環 $\mathcal{O}_P$ を用いて $I(P,F\cap G)=\dim_k\mathcal{O}_P/(F,G)$ で定める交わりの重複度である。$P$ を通る共通成分がなければ有限で、$P$ が交点でなければ $0$ になり、重複度の積 $m_P(F)m_P(G)$ 以上で、等号は接線を共有しないときに限る。Fulton は、座標変換での不変性・対称性・この不等式・成分についての加法性・$G$ を $G+AF$ に替えても変わらないことなどの 7 つの性質で交点数が一意に決まり、多項式の割り算で計算できることを示した。射影平面では交点数の総和が次数の積に等しい(Bézout の定理)。
前提知識: 多項式環, 局所環, 局所化, Hilbertの零点定理
平面曲線の交点数(intersection number of plane curves)とは、代数閉体 $k$ 上の平面の 2 つの曲線 $F=0$、$G=0$ と点 $P$ に対し、$P$ での交わりの「重なり具合」を測る量(非負整数、または共通成分が $P$ を通るときは $\infty$)
$$
I(P,F\cap G)=\dim_k\mathcal{O}_P/(F,G)
$$
である。ここで $\mathcal{O}_P$ は平面の $P$ での局所環($P$ で $0$ にならない多項式を分母に許した有理式の環)である。局所交点数、交点重複度(intersection multiplicity)ともいう。
放物線 $y=x^2$ と直線 $y=0$ は原点だけで交わるが、原点で接しているので、この交点は「2 点が重なったもの」と数えたい。実際、$y=c$($c>0$)と動かすと交点は $(\pm\sqrt c,c)$ の 2 点になり、$c\to0$ で 1 点に合わさる。上の定義ではちょうど $I=2$ になる。一般に、交わりが接していたり、交点が曲線の特異点だったりすると交点数は大きくなる。
この記事の中心は、交点数が 7 つの自然な性質で一意に決まり、その性質だけで有限回の多項式の計算で求まることである(Fulton の定理)。性質とは、非負整数であること、交点でなければ $0$、座標変換で不変、対称、重複度との不等式、成分についての加法性、$F$ の倍数を $G$ に足しても変わらないこと、である。射影平面では交点数の和が次数の積になる(Bézoutの定理)。以下、$k$ はいつも代数閉体とする(代数閉でない場合に崩れることは節「反例」で見る)。
アフィン平面曲線とは、定数でない多項式 $F\in k[x,y]$ を $0$ でない定数倍の違いを除いて考えたものである。$F=\prod_iF_i^{e_i}$ を既約分解したとき、$F_i$ を $F$ の成分、$e_i$ をその重複度という。点 $P$ が曲線 $F$ の上にある($F(P)=0$)ことを $P\in F$ と書く。
$F$ をアフィン平面曲線、$P=(a,b)$ とする。$F(x+a,y+b)$ を斉次成分に分けて
$$
F(x+a,y+b)=F_m+F_{m+1}+\cdots+F_d\qquad(F_i\text{ は }i\text{ 次の斉次式、}F_m\ne0)
$$
と書くとき、$m$ を $F$ の $P$ での重複度と呼び、$m_P(F)$ と書く。$m_P(F)\ge1$ と $P\in F$ は同値である。$m_P(F)=1$ のとき $P$ を $F$ の単純点、$m_P(F)\ge2$ のとき多重点(特異点)という。
$k$ は代数閉なので、2 変数の斉次式 $F_m$ は 1 次式の積 $F_m=\prod_j L_j^{r_j}$($L_j$ は互いに比例しない)に分解する。直線 $L_j(x-a,y-b)=0$ を $F$ の $P$ での接線、$r_j$ を接線の重複度という。
たとえば原点で、$y^2-x^2(x+1)$ は重複度 $2$ で接線は $y=x$ と $y=-x$ の 2 本(結節点)、$y^2-x^3$ は重複度 $2$ で接線は $y=0$ だけ(重複度 $2$、尖点)、$y-x^2$ は単純点で接線は $y=0$ である。重複度が積について $m_P(FG)=m_P(F)+m_P(G)$ をみたすことは、最低次の斉次成分どうしの積が最低次の斉次成分になることからわかる。
点 $P$ に対応する $k[x,y]$ の極大イデアルを $\mathfrak{m}_P=(x-a,y-b)$ とし、
$$
\mathcal{O}_P:=k[x,y]_{\mathfrak{m}_P}=\Bigl\{\frac{A}{S}\Bigm|A,S\in k[x,y],\ S(P)\ne0\Bigr\}
$$
を平面の $P$ での局所環とする(局所化)。$P$ で $0$ にならない多項式は $\mathcal{O}_P$ の単元である。$(F,G)$ で $F,G$ が $\mathcal{O}_P$ で生成するイデアルを表す。
2 つの曲線 $F,G$ が $P$ で固有に交わるとは、$P$ を通る共通成分をもたないことをいう。
アフィン平面曲線 $F,G$ と点 $P\in\mathbb{A}^2$ に対し、
$$
I(P,F\cap G):=\dim_k\mathcal{O}_P/(F,G)\ \in\mathbb{Z}_{\ge0}\cup\{\infty\}
$$
を $F$ と $G$ の $P$ での交点数という。
$I(P,F\cap G)$ はイデアル $(F,G)\subset\mathcal{O}_P$ だけで決まる。有限であることは次の 2 つの補題から従う。
$f,g\in k[x,y]$ が共通因子をもたない(どちらも $0$ でない)とき、$0$ でない $r\in k[x]$ と $s\in k[y]$ で $r,s\in(f,g)$ となるものがある。とくに $k[x,y]/(f,g)$ は $k$ 上有限次元で、$V(f,g)=\{P\mid f(P)=g(P)=0\}$ は有限集合である。
要点:$k(x)[y]$ で $f,g$ が互いに素なことから、分母を払って $r(x)\in(f,g)$ を作る。
$f$ か $g$ が $k[x]$ に属すればそれを $r$ とすればよい。そうでないとき、$f,g$ は $K:=k(x)$ 上の $y$ の多項式として正の次数をもつ。$K[y]$ で $f,g$ が正の次数の共通因子をもつとすると、Gauss の補題(一意分解整域 の定理「Gaussの補題と多項式環の一意分解性」)により $k[x][y]$ でも $y$ について正の次数の共通因子をもち、仮定に反する。$K[y]$ は単項イデアル整域なので $af+bg=1$ となる $a,b\in K[y]$ がある。$a,b$ の係数の分母の積 $r\in k[x]\setminus\{0\}$ を掛けると $(ra)f+(rb)g=r$ で $ra,rb\in k[x,y]$ だから、$r\in(f,g)$ である。$x,y$ の役割を替えれば $s$ も得られる。
$r$ の次数を $p$、$s$ の次数を $q$ とすると、$k[x,y]/(f,g)$ では $x^p$ は $x$ の $p-1$ 次以下の式で、$y^q$ は $y$ の $q-1$ 次以下の式で書き直せるので、$x^iy^j$($0\le i< p$、$0\le j< q$)の像が全体を張る。$V(f,g)$ の点の $x$ 座標は $r$ の根、$y$ 座標は $s$ の根なので、$V(f,g)$ は有限である。$\square$
$f,g\in k[x,y]$ が共通因子をもたないとき、$V(f,g)=\{P_1,\dots,P_N\}$ とすると、自然な写像は環の同型
$$
k[x,y]/(f,g)\ \xrightarrow{\ \sim\ }\ \prod_{i=1}^N\mathcal{O}_{P_i}/(f,g)
$$
を与える。とくに
$$
\dim_kk[x,y]/(f,g)=\sum_{P}I(P,f\cap g)
$$
であり(和は平面のすべての点にわたる。交点でない点の項は $0$)、各 $I(P,f\cap g)$ は有限である。
要点:$k[x,y]/(f,g)$ は有限次元なので Artin 環であり、局所 Artin 環の直積に分かれる。各因子は交点での局所化である。
$A:=k[x,y]/(f,g)$ は lem-inp-finite により $k$ 上有限次元なので、イデアルの降鎖は止まり、$A$ は Artin環 である。$A$ の極大イデアルは $(f,g)$ を含む $k[x,y]$ の極大イデアルに対応し、Hilbertの零点定理 によりそれは $\mathfrak{m}_{P_i}$($i=1,\dots,N$)である。$\mathfrak{n}_i:=\mathfrak{m}_{P_i}A$ とおく。Artin環 の定理「Artin環の構造定理」により、十分大きい $e$ で $A\cong\prod_{i=1}^NB_i$、$B_i:=A/\mathfrak{n}_i^{e}$ であり、各 $B_i$ は極大イデアルがただ 1 つの局所環である。
直積 $\prod_jB_j$ を、第 $i$ 成分だけを $B_i$ の極大イデアルにした極大イデアル $\mathfrak{n}$($\mathfrak{n}_i$ に対応する)で局所化する。第 $i$ 成分だけが $1$ の冪等元 $\varepsilon_i$ は $\mathfrak{n}$ に属さないので局所化で単元になり、$j\ne i$ の冪等元 $\varepsilon_j$ は $\varepsilon_i\varepsilon_j=0$ から局所化で $0$ になる。よって局所化は $B_i$ をその極大イデアルで局所化したものに等しく、$B_i$ は局所環なので(極大イデアルの外の元はすでに単元)$B_i$ そのものである。一方、局所化は商と交換するので、$A$ を $\mathfrak{n}_i$ で局所化したものは $k[x,y]_{\mathfrak{m}_{P_i}}/(f,g)=\mathcal{O}_{P_i}/(f,g)$ である。以上で $B_i\cong\mathcal{O}_{P_i}/(f,g)$ となり、同型が得られる。$P\notin V(f,g)$ なら $f$ か $g$ が $\mathcal{O}_P$ の単元なので $I(P,f\cap g)=0$ である。$\square$
lem-inp-local-global により、交点数は「商環 $k[x,y]/(f,g)$ の次元を、交点ごとに分けたもの」と見ることができる。
定義の式は直観的ではない。そこで、交点数に期待する性質を先に並べ、それをみたすものが上の定義しかないことを示す。$F,G$ はアフィン平面曲線(または $0$ でない定数)、$P$ は点を表す。
(i) $F$ と $G$ が $P$ で固有に交わるなら $I(P,F\cap G)$ は非負整数であり、そうでないなら $I(P,F\cap G)=\infty$ である。
(ii) $I(P,F\cap G)=0$ であることと $P\notin F\cap G$ は同値である。$I(P,F\cap G)$ は $F$ と $G$ の成分のうち $P$ を通るものだけで決まる。$F$ か $G$ が $0$ でない定数なら $I(P,F\cap G)=0$ である。
(iii) $T$ が平面のアフィン座標変換で $T(Q)=P$ なら、$I(P,F\cap G)=I(Q,F^T\cap G^T)$ である。ここで $F^T:=F\circ T$ である。
(iv) $I(P,F\cap G)=I(P,G\cap F)$ である。
(v) $I(P,F\cap G)\ge m_P(F)\,m_P(G)$ であり、等号が成り立つのは $F$ と $G$ が $P$ で共通の接線をもたないとき、そのときに限る。
(vi) $F=\prod_iF_i^{r_i}$、$G=\prod_jG_j^{s_j}$ なら $I(P,F\cap G)=\sum_{i,j}r_is_j\,I(P,F_i\cap G_j)$ である。
(vii) 任意の $A\in k[x,y]$ について $I(P,F\cap G)=I(P,F\cap(G+AF))$ である。
(v) の特別な場合として、$P$ が両方の単純点で接線が異なる(横断的に交わる)とき、そのときに限り交点数は $1$ である。(vii) は、$F$ が既約なら「交点数は $G$ を $F$ の上の関数として見たものだけで決まる」ということである。
すべての曲線 $F,G$ と点 $P\in\mathbb{A}^2$ について定義され、性質 (i)〜(vii) をみたす $I(P,F\cap G)$ はただ 1 つ存在し、
$$
I(P,F\cap G)=\dim_k\mathcal{O}_P/(F,G)
$$
で与えられる。
(Ful08 §3.3 Theorem 3、p. 37。)一意性の証明は、性質 (i)〜(vii) だけを使って交点数を計算する手続きを与える。
(i)〜(vii) をみたす $I$ が与えられたとする。(iii) により平行移動して $P=(0,0)$ としてよい。(i) により $F,G$ が $P$ で固有に交わらなければ $I=\infty$ と決まるので、固有に交わるとし、$I(P,F\cap G)=n$ とおく。$n$ についての帰納法で、$I(P,F\cap G)$ が (i)〜(vii) だけで決まることを示す。$n=0$ は (ii) で決まる($P\notin F\cap G$ かどうかは見ればわかる)。$n>0$ とし、$I(P,A\cap B)< n$ となる組では値が決まっているとする。$n>0$ なので $P\in F\cap G$ である。
$F(x,0)$、$G(x,0)\in k[x]$ の次数を $r,s$ とする(多項式が $0$ のときは次数を $0$ とする)。(iv) により $r\le s$ としてよい。
場合 1:$r=0$。 $F(0,0)=0$ なので $F(x,0)$ は $0$ でない定数ではなく、$F(x,0)=0$、すなわち $F=yH$ と書ける。$G(x,0)=0$ でもあれば $y$ が $P$ を通る共通成分になり固有に交わることに反するので、$G(x,0)\ne0$ であり、$G(0,0)=0$ から $G(x,0)=x^{\mu}(a_0+a_1x+\cdots)$、$a_0\ne0$、$\mu\ge1$ と書ける。(vi) により
$$
I(P,F\cap G)=I(P,y\cap G)+I(P,H\cap G)
$$
である。$G-G(x,0)$ は $y$ で割り切れるので、(vii) により $I(P,y\cap G)=I(P,y\cap G(x,0))$ であり、(vi) と、$a_0+a_1x+\cdots$ が $P$ を通らないことと (ii) により、これは $\mu\,I(P,y\cap x)$ に等しい。直線 $y$ と $x$ は原点で単純点どうしで接線が異なるので、(v) により $I(P,y\cap x)=1$ である。よって $I(P,y\cap G)=\mu\ge1$ であり、$I(P,H\cap G)=n-\mu< n$ は帰納法の仮定で決まる。
場合 2:$r>0$。 $F,G$ を定数倍して $F(x,0)$、$G(x,0)$ を最高次の係数 $1$ にする(定数倍は交点数を変えない。(vi) と (ii))。$G_1:=G-x^{s-r}F$ とおくと、(vii) により $I(P,F\cap G)=I(P,F\cap G_1)$ であり、$G_1(x,0)$ の次数は $s$ より小さい。組 $(F,G_1)$ に同じ操作を繰り返す(次数の大小が入れ替われば (iv) で順序を替える)。$F(x,0)$ と $G(x,0)$ の次数の和は操作のたびに減るので、有限回で一方の次数が $0$ になり、交点数が同じ $n$ の、場合 1 に当てはまる組 $(A,B)$ に達する。
以上により、$I(P,F\cap G)$ は (i)〜(vii) から決まる。この手続きは多項式の割り算と定数倍だけでできる。$\square$
この証明から、性質 (v) のうち実際に使ったのは $I((0,0),x\cap y)=1$ だけであることもわかる(Ful08 p. 39–40 の注意)。
以下、$I(P,F\cap G):=\dim_k\mathcal{O}_P/(F,G)$ とし、$\mathcal{O}:=\mathcal{O}_P$ と略す。
定義の式は性質 (i)、(ii)、(iii)、(iv)、(vii) をみたす。
(iv) と (vii) は、$(F,G)=(G,F)=(F,G+AF)$ がイデアルとして等しいことから従う。(iii):$H\mapsto H\circ T$ は $\mathcal{O}_P$ から $\mathcal{O}_Q$ への環の同型で、$(F,G)$ を $(F^T,G^T)$ に移す。
(ii):$P\notin F\cap G$ なら $F$ か $G$ が $\mathcal{O}$ の単元で、商は $0$ である。$P\in F\cap G$ なら $(F,G)$ は極大イデアル $\mathfrak{m}_P\mathcal{O}$ に含まれ、商は $0$ でない。$P$ を通らない成分や $0$ でない定数は $\mathcal{O}$ の単元なので、イデアル $(F,G)$ を変えずに取り除ける。
(i):$P$ を通らない共通成分を取り除くと、$P$ で固有に交わる $F,G$ は共通因子をもたないので、lem-inp-local-global により交点数は有限である。$P$ を通る共通成分 $H$(既約)があるとする。$(F,G)\subset(H)$ なので $\dim_k\mathcal{O}/(F,G)\ge\dim_k\mathcal{O}/(H)$ であり、$\mathcal{O}/(H)$ が無限次元であることを示せばよい。有限次元 $N$ だとすると、部分空間の列 $(\mathfrak{m}^j+(H))/(H)$($\mathfrak{m}:=\mathfrak{m}_P\mathcal{O}$)は途中で止まり、ある $j$ で $\mathfrak{m}^j\subset\mathfrak{m}^{j+1}+(H)$ となる。有限生成 $\mathcal{O}$ 加群 $M:=(\mathfrak{m}^j+(H))/(H)$ は $M=\mathfrak{m}M$ をみたすので、中山の補題 により $M=0$、すなわち $\mathfrak{m}^j\subset(H)$ である。$P=(a,b)$ として $(x-a)^j=H\cdot(C/S)$($S(P)\ne0$)と書くと、$S(x-a)^j=HC$ で、既約な $H$ は $P$ で $0$ になり $S$ はならないので $H\mid x-a$ である。同様に $H\mid y-b$ となり、矛盾する。$\square$
任意の曲線 $F,G,H$ について $I(P,F\cap GH)=I(P,F\cap G)+I(P,F\cap H)$ である。したがって定義の式は性質 (vi) をみたす。
$F$ と $GH$ が $P$ を通る共通成分をもつなら、それは $F$ と $G$ または $F$ と $H$ の共通成分なので、(i) により両辺とも $\infty$ である。以下、$F$ と $GH$ は $P$ で固有に交わるとし、(ii) で $P$ を通らない成分を取り除いて、$F$ と $GH$ は共通因子をもたないとする。写像
$$
0\longrightarrow\mathcal{O}/(F,H)\xrightarrow{\ \psi\ }\mathcal{O}/(F,GH)\xrightarrow{\ \varphi\ }\mathcal{O}/(F,G)\longrightarrow0
$$
を、$\psi$ は $G$ 倍、$\varphi$ は自然な全射とする($G\cdot(F,H)\subset(F,GH)$ なので $\psi$ は定まる)。これが完全列であることを示せば、次元の和の式が得られる。
$\varphi$ は全射である。$\varphi$ の核は $(F,G)/(F,GH)$ で、$\psi$ の像は $G\mathcal{O}$ の像 $((F,GH)+(G))/(F,GH)=(F,G)/(F,GH)$ に等しい。
$\psi$ が単射であること:$z\in\mathcal{O}$ で $Gz=uF+vGH$($u,v\in\mathcal{O}$)とする。$S(P)\ne0$ の多項式 $S$ を、$Su=A$、$Sv=B$、$Sz=C$ がすべて多項式になるようにとる。$G(C-BH)=AF$ が $k[x,y]$ で成り立ち、$F$ と $G$ は共通因子をもたないので $F\mid C-BH$、$C-BH=DF$ と書ける。すると $z=(B/S)H+(D/S)F\in(F,H)$ となり、$z$ の像は $0$ である。
(vi) の一般の形は、この式と (iv) を繰り返し使えば得られる。$\square$
性質 (v) には、接線についての次の補題を使う。$P=(0,0)$ とし、$\mathfrak{a}:=(x,y)\subset k[x,y]$ とおく。$\mathfrak{a}^t$ は $t$ 次未満の項をもたない多項式全体で、$\dim_kk[x,y]/\mathfrak{a}^t=1+2+\cdots+t=t(t+1)/2$ である。
$P=(0,0)$、$m:=m_P(F)$、$n:=m_P(G)$ とし、$F_m$、$G_n$ をそれぞれ $F,G$ の最低次の斉次成分とする。
1 の準備:$L_1,L_2,\dots$ と $M_1,M_2,\dots$ を 1 次の斉次式の列で、どの $L_i$ もどの $M_j$ にも比例しないものとし、$A_{ij}:=L_1\cdots L_iM_1\cdots M_j$($A_{00}=1$)とおく。このとき $\{A_{ij}\mid i+j=t\}$ は $t$ 次の斉次式全体($t+1$ 次元)の基底である。
個数が $t+1$ なので、線形独立性を $t$ についての帰納法で示せばよい。$\sum_{i=0}^tc_iA_{i,t-i}=0$ とする。$i\ge1$ の項は $L_1$ で割り切れ、$A_{0t}=M_1\cdots M_t$ は割り切れない($k[x,y]$ は一意分解整域)ので $c_0=0$ である。残りを $L_1$ で割ると、列 $L_2,L_3,\dots$ と $M_1,M_2,\dots$ についての $t-1$ 次の関係式になり、帰納法の仮定から $c_1=\cdots=c_t=0$ である。
$I(P,F\cap G)\ge m_P(F)\,m_P(G)$ であり、等号は $F$ と $G$ が $P$ で共通の接線をもたないとき、そのときに限り成り立つ。
(iii) により $P=(0,0)$ とする。$m:=m_P(F)$、$n:=m_P(G)$、$J:=(F,G)+\mathfrak{a}^{m+n}\subset k[x,y]$ とおく。$k[x,y]/J$ は有限次元で、$J$ を含む極大イデアルは $\mathfrak{m}_P$ だけ(Hilbertの零点定理)なので局所環であり、極大イデアルの外の元はすでに単元だから $k[x,y]/J\cong\mathcal{O}/J\mathcal{O}$ である。列
$$
k[x,y]/\mathfrak{a}^n\times k[x,y]/\mathfrak{a}^m\xrightarrow{\ \psi\ }k[x,y]/\mathfrak{a}^{m+n}\longrightarrow k[x,y]/J\longrightarrow0
$$
は完全である($\psi$ は lem-inp-tangent の写像で、その像は $J/\mathfrak{a}^{m+n}$)。よって
$$
\begin{aligned}
I(P,F\cap G)&=\dim\mathcal{O}/(F,G)\ \ge\ \dim\mathcal{O}/J\mathcal{O}=\dim k[x,y]/J\\
&\ge\frac{(m+n)(m+n+1)}2-\frac{n(n+1)}2-\frac{m(m+1)}2=mn
\end{aligned}
$$
である。最初の不等号は $\mathfrak{a}^{m+n}\mathcal{O}\subset(F,G)$ のとき等号になり、2 番目の不等号は $\psi$ が単射のとき、そのときに限り等号になる。共通の接線がなければ、lem-inp-tangent の 1 と 2 により両方が等号で、$I=mn$ である。共通の接線があれば、lem-inp-tangent の 2 により 2 番目が真の不等号になり、$I>mn$ である。$\square$
prop-inp-easy、prop-inp-additivity、prop-inp-multiplicity により、定義の式は (i)〜(vii) をみたす。これと prf-inp-uniqueness で thm-inp-main の証明が終わる。
性質 (i)〜(vii) のほかに、次の 2 つがよく使われる(Ful08 §3.3、p. 40)。
性質を使うと、商環の次元を直接数えずに交点数が求まる。$P=(0,0)$ とする。
$F=y-x^2$、$G=y$ とする。(iv) で順序を替えてから (vii) を使うと、$F$ を $F-G=-x^2$ に替えられる:
$$
I(P,(y-x^2)\cap y)=I(P,x^2\cap y)=2\,I(P,x\cap y)=2
$$
((vii)、(vi)、(v))。$F$ と $G$ はどちらも単純点で、接線 $y=0$ を共有するので、(v) の不等号 $I>1\cdot1$ は真である。同じく尖点 $y^2-x^3$ と接線 $y$ では、$I(P,(y^2-x^3)\cap y)=I(P,x^3\cap y)=3$ である。
尖点 $F=y^2-x^3$($m_P=2$、接線 $y=0$)と結節点 $G=y^2-x^2(x+1)$($m_P=2$、接線 $y=\pm x$)は接線を共有しないので、(v) により $I(P,F\cap G)=2\cdot2=4$ である。
$F=y^2-x^3$、$G=y-x^2$ とする。$F(x,0)=-x^3$、$G(x,0)=-x^2$ で次数は $3,2$ なので、定数倍して $F_1:=x^3-y^2$、$G_1:=x^2-y$ とし、$H:=F_1-x\,G_1=xy-y^2=y(x-y)$ に替える。$H(x,0)=0$ なので場合 1 で、
$$
I(P,F\cap G)=I(P,G_1\cap y)+I(P,G_1\cap(x-y))
$$
である。第 1 項は $G_1(x,0)=x^2$ から $2$ である。第 2 項は $G_1-x(x-y)=y(x-1)$ に替えて $I(P,y\cap(x-y))+I(P,(x-1)\cap(x-y))=1+0$ である。よって $I(P,F\cap G)=3$ である。
$E=(x^2+y^2)^2+3x^2y-y^3$(原点が 3 重点)と $F=(x^2+y^2)^3-4x^2y^2$(原点が 4 重点)では $I(P,E\cap F)=14$ である(Ful08 p. 40 の例)。
(vii) で $F$ を $F-(x^2+y^2)E=y\,G$、$G:=y^4-3x^4-2x^2y^2-4x^2y$ に替える。さらに $G$ を $G+3E=y\,H$、$H:=5x^2-3y^2+4y^3+4x^2y$ に替えると、(vi) により $I(P,E\cap F)=I(P,E\cap y)+I(P,E\cap G)=2\,I(P,E\cap y)+I(P,E\cap H)$ である。$E(x,0)=x^4$ なので (vii) で $I(P,E\cap y)=I(P,x^4\cap y)=4$ である。$H$ の最低次の成分 $5x^2-3y^2$ の 2 本の接線と、$E$ の最低次の成分 $y(3x^2-y^2)$ の 3 本の接線($y=0$、$y=\pm\sqrt3x$)は共通でないので、(v) により $I(P,E\cap H)=3\cdot2=6$ である。合わせて $2\cdot4+6=14$ である。多項式の等式と値 $14$ は計算機で確かめた。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 固有に交わる | $F=y$、$G=y(x-1)$、$P=(0,0)$ | 交点数が有限 |
| 共通の接線がない | $F=y-x^2$、$G=y$ | $I=m_P(F)m_P(G)$(実際は $2>1$) |
| 局所環で割る | $F=y$、$G=y-x^2+x$ | $I(P,F\cap G)=\dim k[x,y]/(F,G)$(実際は $1\ne2$) |
| $k$ が代数閉 | $k=\mathbb{R}$、$F=y$、$G=x^2+1$ | (ix):交点数の和が商の次元 |
| 重複を数える | $F=y^2$、$G=x$ | 交点数が交わりの点の個数(実際は $2$ と $1$ 点) |
各行の反例が、どの条件を破り、何が崩れるかを確かめる。
1 行目:直線 $y$ は原点を通る共通成分である。$\mathcal{O}/(y,y(x-1))=\mathcal{O}/(y)\cong k[x]_{(x)}$ は無限次元で、$I=\infty$ である。
2 行目:どちらも原点が単純点で、接線はともに $y=0$ である。ex-inp-tangent により $I=2$ で、$m_P(F)m_P(G)=1$ より大きい。
3 行目:$V(F,G)=\{(0,0),(1,0)\}$ で、各点で横断的に交わるので交点数はそれぞれ $1$ だが、$k[x,y]/(y,x^2-x)\cong k[x]/(x(x-1))$ は 2 次元である。大域の商は、すべての交点の分を合わせたものである(lem-inp-local-global)。
4 行目:$\mathbb{R}^2$ に共通点はないので、実数の点についての交点数はすべて $0$ だが、$\mathbb{R}[x,y]/(y,x^2+1)\cong\mathbb{C}$ は $\mathbb{R}$ 上 2 次元である。$\mathbb{C}$ の上では交点 $(\pm i,0)$ が現れ、それぞれ交点数 $1$ で、和は $2$ になる。証明では Hilbertの零点定理 で極大イデアルを点と対応させたが、代数閉でない体ではこの対応が崩れる。
5 行目:$y^2=0$ と $x=0$ の共通点は原点だけだが、(vi) により $I=2\,I(P,y\cap x)=2$ である。$F=y^2$ は成分 $y$ を重複度 $2$ でもつ。
射影平面曲線は、定数でない斉次多項式 $F\in k[X,Y,Z]$ を定数倍の違いを除いて考えたものである(射影平面)。点 $P\in\mathbb{P}^2$ を通らない直線 $L$ をとり、$F_*:=F/L^{\deg F}$ を $P$ での射影平面の局所環 $\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)$($P$ で $0$ にならない同じ次数の斉次式を分母とする $0$ 次の有理式の環)の元と見て、
$$
I(P,F\cap G):=\dim_k\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)/(F_*,G_*)
$$
と定める。$L$ を別の直線 $L'$ に替えると $F_*$ は単元 $(L/L')^{\deg F}$ 倍しか変わらないので、値は $L$ によらない。$L=Z$ で $P=[a:b:1]$ なら、これはアフィン曲線 $F(x,y,1)$ と $G(x,y,1)$ の $(a,b)$ での交点数に等しい。性質 (i)〜(viii) は、(iii) の $T$ を射影変換に、(vii) の $A$ を次数 $\deg G-\deg F$ の斉次式に替えてそのまま成り立つ(Ful08 §5.1、p. 54 は主張だけを述べる)。実際、射影変換 $T$($T(Q)=P$)は環の同型 $\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)\to\mathcal{O}_Q(\mathbb{P}^2)$、$\varphi\mapsto\varphi\circ T$ を引き起こす。この同型は $F/L^{\deg F}$ を $F^T/(L^T)^{\deg F}$ に移し、$L^T$ は $Q$ を通らない直線なので、(iii) が成り立つ。$(G+AF)_*=G_*+A_*F_*$($A_*:=A/L^{\deg A}$)から (vii) が従う。ほかの性質は、$P$ を通らない直線を射影変換で $Z$ に移して非斉次化すると、アフィンの場合に帰着する。
射影平面では交点数の総和が決まる:次数 $m,n$ の射影平面曲線が共通成分をもたなければ、$\sum_PI(P,F\cap G)=mn$ である。これが Bézoutの定理 である。さらに、交点数を並べた形式和(交点サイクル)を使うと、$H=AF+BG$ と書けるかどうかを交点ごとの条件で判定する Max Noetherの基本定理 が述べられる。高次元の多様体での交わりの重複度は 交叉理論 で扱う。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する