イデールとイデール類群(ideles and idele class group)とは、代数体 $K$ のすべての素点での完備化の乗法群 $K_v^\times$ の元の組で、ほとんどすべての有限素点で単数になるもの(イデール)のなす群 $J_K$ と、それを主イデール $K^\times$ で割った群 $C_K=J_K/K^\times$ である。$J_K$ はアデール環の可逆元の群だが、位相は制限直積位相で、局所コンパクトな可換位相群になり、$K^\times$ は離散部分群になる。イデールのノルム $\lvert a\rvert=\prod_v\lvert a_v\rvert_v$ が $1$ の部分の類の群 $C_K^1$ はコンパクトで、イデアル類群を商にもつ。大域類体論では $C_K$ が局所体の乗法群の役割を担う。
前提知識: アデール, イデアル類群, Dirichletの単数定理, 位相群
代数体 $K$ の $0$ でない分数イデアルは、各素イデアル $\mathfrak{p}$ での指数 $v_{\mathfrak{p}}$ の組として書ける。これを「各有限素点での成分が $K_{\mathfrak{p}}^\times$ の元で、ほとんどすべての成分が単数」という組に精密化し、さらに無限素点の成分も加えたものが イデール である。イデールの全体 $J_K$ は乗法について局所コンパクトな可換位相群になり、$K^\times$ はその中に離散的に入る。商 $C_K=J_K/K^\times$ が イデール類群 で、大域類体論では局所類体論の $K_v^\times$ の役割を $C_K$ が担う(大域類体論)。
イデール類群は、代数的整数論の 2 つの有限性を 1 つにまとめる。ノルムが $1$ のイデールの類の群 $C_K^1$ は、イデアル類群 $\operatorname{Cl}_K$ を商にもち、その核は単数群 $\mathcal{O}_K^\times$ による商でできている。この記事では、イデール群の位相を定め、$K^\times$ が離散であることと、類数の有限性と Dirichletの単数定理 から $C_K^1$ がコンパクトであることを証明する。加法的な対応物は アデール の記事で扱う。
以下 $K$ を次数 $n$ の 代数体、$\mathcal{O}_K$ を整数環、$(r_1,r_2)$ を符号数とする。素点 $v$、完備化 $K_v$、正規化された絶対値 $\lvert\cdot\rvert_v$、有限素点での付値環 $\mathcal{O}_v$、アデール環 $\mathbb{A}_K$ は アデール の記事の定義「素点と正規化された絶対値」「アデール環」のとおりとする。有限素点 $v$ で $\mathcal{O}_v^\times=\{x\in K_v\mid\lvert x\rvert_v=1\}$ は $K_v^\times$ のコンパクトな開部分群である($\mathcal{O}_v$ の閉集合で、$\lvert\cdot\rvert_v$ の値は離散的なので開集合でもある)。
$K$ の イデール群(idele group)とは、制限直積
$$
J_K:=\prod_v{}'(K_v^\times;\mathcal{O}_v^\times)
$$
(有限個を除くすべての有限素点 $v$ で $a_v\in\mathcal{O}_v^\times$ となる組 $a=(a_v)_v$ の全体)に、成分ごとの積と、アデール の記事の定義「制限直積」の位相を入れたものである。その元を イデール(idele)という。$\alpha\in K^\times$ を組 $(\alpha)_v$ に写す写像の像を 主イデール といい、$K^\times$ と同一視する。
$(\alpha)_v$ がイデールであることと、写像が単射な準同型であることは 類体論 の記事の命題「主イデール」で示されている。集合としては、$J_K$ はアデール環の可逆元の群 $\mathbb{A}_K^\times$ に等しい。実際 $x\in\mathbb{A}_K$ が可逆であることは、すべての $v$ で $x_v\ne0$ かつ $(x_v^{-1})_v$ がアデールであること、すなわち有限個を除いて $x_v,x_v^{-1}\in\mathcal{O}_v$($x_v\in\mathcal{O}_v^\times$)であることと同値である。ただし位相は $\mathbb{A}_K$ からの相対位相ではない(ex-idele-subspace)。
$S_\infty$ を含む有限集合 $S$ について $J_{K,S}:=\prod_{v\in S}K_v^\times\times\prod_{v\notin S}\mathcal{O}_v^\times$ とおき、とくに
$$
U_K:=J_{K,S_\infty}=K_\infty^\times\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v^\times,\qquad K_\infty^\times:=\prod_{v\mid\infty}K_v^\times
$$
とおく。
商位相群 $C_K:=J_K/K^\times$ を $K$ の イデール類群(idele class group)という。
イデール $a$ について、$\lvert a\rvert:=\prod_v\lvert a_v\rvert_v$ を $a$ の ノルム(内容、content)という。有限個を除いて $\lvert a_v\rvert_v=1$ なので有限積である。$\lvert a\rvert=1$ となるイデールの全体を $J_K^1$ と書き、$C_K^1:=J_K^1/K^\times$ とおく。
$J_K^1$ が $K^\times$ を含むことは積公式(アデール の記事の定理「積公式」)である。
有限素点の成分だけを見て、各 $a_{\mathfrak{p}}$ をその付値 $v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})$ に置き換えると、イデールは分数イデアル $\prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})}$ になる。イデールはこれに、各素点での「単数の部分」と無限素点での成分という情報を加えたものである。$C_K$ で $K^\times$ を割ることはイデアル類群で単項イデアルを割ることにあたり、失われた単数の部分は「$K_\infty^\times$ を単数群で割ったもの」と「$\prod\mathcal{O}_v^\times$」として残る。単数定理は前者がノルム $1$ の部分でコンパクトになることを、類数の有限性は類群が有限であることを保証するので、全体としてノルム $1$ の部分 $C_K^1$ がコンパクトになる。ノルムの大きさ $\lvert a\rvert\in\mathbb{R}_{>0}$ だけはどうしても残り、$C_K$ 自身はコンパクトでない。
要点:1 は アデール の記事の命題「制限直積の位相」を $X_v=K_v^\times$、$U_v=\mathcal{O}_v^\times$ に当てはめ、アデール環の場合と同じく、積と逆元が開部分群 $J_{K,S}$ の上で成分ごとに連続であることから従う。2 は、$\{x\mid x\in\mathcal{O}_v,\ x^{-1}\in\mathcal{O}_v\}=\mathcal{O}_v^\times$ により、2 つの位相の開基が互いに相手の開集合になることを確かめる。
$\tau$ を $J_K$ の制限直積位相、$\tau'$ を $a\mapsto(a,a^{-1})$ による相対位相とする。$\tau'$ の開基の元は、アデール環の開基の元 $\prod_vA_v$、$\prod_vB_v$(有限個を除いて $A_v=B_v=\mathcal{O}_v$)による $\{a\in J_K\mid a\in\prod_vA_v,\ a^{-1}\in\prod_vB_v\}=\prod_v\{x\in K_v^\times\mid x\in A_v,\ x^{-1}\in B_v\}$ である。各因子は、$K_v^\times$ 上で $x\mapsto x^{-1}$ が連続なので $K_v^\times$ の開集合であり、有限個を除いて $\mathcal{O}_v^\times$ に等しい。よってこれは $\tau$ の開基の元で、$\tau'\subset\tau$ である。
逆に $\tau$ の開基の元 $\prod_vW_v$($W_v\subset K_v^\times$ は開集合で、$v\notin T$ なら $W_v=\mathcal{O}_v^\times$、$T$ は有限集合)について、$v\in T$ で $A_v:=W_v$、$B_v:=K_v$、$v\notin T$ で $A_v=B_v:=\mathcal{O}_v$ とおくと、$K_v^\times$ は $K_v$ の開集合なので $\prod_vA_v$、$\prod_vB_v$ はアデール環の開基の元であり、$\prod_vW_v=\{a\mid a\in\prod_vA_v,\ a^{-1}\in\prod_vB_v\}$ である。よって $\tau\subset\tau'$ である。包含 $J_K\to\mathbb{A}_K$ は $a\mapsto(a,a^{-1})$ と第 1 射影の合成なので連続である。$\square$
$K=\mathbb{Q}$ とし、素数 $q$ について、$q$ 成分が $q$ で他の成分がすべて $1$ のイデールを $a^{(q)}$ とする。$1$ の $\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ での開近傍は、有限集合 $S$ と開集合 $W_v\ni1$ による $\prod_{v\in S}W_v\times\prod_{p\notin S}\mathbb{Z}_p$ を含み、$q\notin S$ なら $a^{(q)}$ を含む。よって $\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ の位相では $a^{(q)}\to1$($q\to\infty$)である。ところが逆元 $(a^{(q)})^{-1}$ は $q$ 成分が $\frac1q\notin\mathbb{Z}_q$ なので、$1$ の近傍 $(0,2)\times\prod_p\mathbb{Z}_p$ に属さず、$1$ に収束しない。したがって $\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ からの相対位相では $x\mapsto x^{-1}$ は連続でなく、$J_{\mathbb{Q}}$ は位相群にならない。$J_{\mathbb{Q}}$ の位相では、$1$ の近傍 $(0,2)\times\prod_p\mathbb{Z}_p^\times$ がどの $a^{(q)}$ も含まないので、そもそも $a^{(q)}\to1$ とならない。
$a\mapsto\lvert a\rvert$ は連続な全射準同型 $J_K\to\mathbb{R}_{>0}$ である。その核 $J_K^1$ は $K^\times$ を含む閉部分群である。
各 $\lvert\cdot\rvert_v$ が乗法的なので準同型である。開部分群 $U_K$ の上では有限成分の絶対値がすべて $1$ なので $\lvert a\rvert=\prod_{v\mid\infty}\lvert a_v\rvert_v$ で、これは有限個の連続関数の積であり連続である。よって単位元で連続であり、位相群 の記事の系「準同型の連続性の判定」により $J_K$ 全体で連続である。全射性:無限素点 $v_0$ を 1 つ固定し、$t>0$ について、$v_0$ 成分が $t$($v_0$ が実素点のとき)または $\sqrt t$(複素素点のとき)で他の成分が $1$ のイデールをとれば、ノルムは $t$ である。$J_K^1=\lvert\cdot\rvert^{-1}(1)$ は閉集合で、$K^\times\subset J_K^1$ は積公式である。$\square$
$K^\times$ は $J_K$ の離散部分群であり、閉集合である。したがって $C_K$ と $C_K^1$ は Hausdorff な位相群である。
アデール の記事の定理「アデール環の中の代数体」の 2 の証明により、$\mathbb{A}_K$ の $0$ の開近傍 $U$ で $K\cap U=\{0\}$ となるものがある。包含 $J_K\to\mathbb{A}_K$ は連続なので(prop-idele-topology の 2)、$N:=\{a\in J_K\mid a-1\in U\}$ は $J_K$ の $1$ の開近傍である。$\alpha\in K^\times\cap N$ なら $\alpha-1\in K\cap U=\{0\}$ なので $\alpha=1$ である。$\beta\in K^\times$ について $\beta N$ は $\beta$ の開近傍で、$K^\times\cap\beta N=\beta(K^\times\cap N)=\{\beta\}$ である。よって $K^\times$ は離散である。閉集合であることは、$1$ の近傍 $N'$ で $N'^{-1}N'\subset N$ となるものをとり、アデール の記事の同じ定理の 2 の証明の後半($z+V$ の議論)を乗法で繰り返せばよい。閉部分群による剰余群は Hausdorff な位相群である(位相群 の記事の命題「剰余空間の位相」)。$\square$
イデールとイデアルの関係は 大域類体論 の記事の定義「イデアル写像」と命題「イデール類群とイデアル類群」にある。イデアル写像 $\iota\colon J_K\to\mathcal{I}_K$、$\iota(a)=\prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})}$ は全射準同型で、核は $U_K$、$\iota(K^\times)$ は単項分数イデアルの群 $\mathcal{P}_K$ であり、$J_K/K^\times U_K\cong\operatorname{Cl}_K$ である。
無限素点を $v_1,\dots,v_s$($s=r_1+r_2$)と番号付け、対数写像
$$
L\colon K_\infty^\times\to\mathbb{R}^s,\qquad L(y):=\bigl(\log\lvert y_{v_1}\rvert_{v_1},\dots,\log\lvert y_{v_s}\rvert_{v_s}\bigr)
$$
を考える。$\lvert\cdot\rvert_v$ は複素素点で 2 乗をとるので、単数 $u$ の対角成分について $L(u)$ は Dirichletの単数定理 の記事の対数写像 $\ell(u)$ に一致する。$K_\infty^1:=\{y\in K_\infty^\times\mid\prod_v\lvert y_v\rvert_v=1\}$ とおくと、$L(K_\infty^1)$ は超平面 $H=\{x_1+\cdots+x_s=0\}$ に含まれ、$U_K^1:=U_K\cap J_K^1=K_\infty^1\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v^\times$ である。
$K^\times\cap U_K=\mathcal{O}_K^\times$ であり、$U_K^1$ の $C_K$ での像 $U_K^1K^\times/K^\times$ はコンパクトである。
$\alpha\in K^\times$ が $U_K$ に属することは、すべての $\mathfrak{p}$ で $v_{\mathfrak{p}}(\alpha)=0$、すなわち $\alpha\mathcal{O}_K=\mathcal{O}_K$ と同値であり、これは $\alpha$ が単数であることと同値である。
$r:=s-1$ とし、Dirichletの単数定理 の記事の定理「Dirichletの単数定理」により、基本単数系 $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_r$ をとる。$L(\varepsilon_1),\dots,L(\varepsilon_r)$ は $H$ の基底である。平行体 $P:=\{\sum_jc_jL(\varepsilon_j)\mid0\le c_j\le1\}$ はコンパクトで、
$$
B:=\{y\in K_\infty^1\mid L(y)\in P\}
$$
とおく。$L(y)\in P$ なら各 $\lvert y_v\rvert_v$ は正の定数で上下から押さえられるので、$B$ は $K_\infty=\mathbb{R}^{r_1}\times\mathbb{C}^{r_2}$ の有界閉集合で、$0$ を成分にもたない。よって $B$ は $K_\infty^\times$ のコンパクト集合であり、Tychonoffの定理 により $B\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v^\times$ は $U_K$ のコンパクト集合である。
$u=(y,w)\in U_K^1$($y\in K_\infty^1$、$w\in\prod\mathcal{O}_v^\times$)とする。$L(y)\in H$ を $L(y)=\sum_jt_jL(\varepsilon_j)$ と書き、$\varepsilon:=\prod_j\varepsilon_j^{\lfloor t_j\rfloor}$ とおくと、$L(\varepsilon^{-1}y)=\sum_j(t_j-\lfloor t_j\rfloor)L(\varepsilon_j)\in P$ である。主イデール $\varepsilon$ の有限成分は単数なので、$\varepsilon^{-1}u\in B\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v^\times$ である。よって $U_K^1$ の $C_K$ での像は、コンパクト集合 $B\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v^\times$ の連続写像による像に等しく、コンパクトである。$\square$
$C_K^1=J_K^1/K^\times$ はコンパクトな Hausdorff 位相群である。さらに、完全列
$$
1\longrightarrow U_K^1K^\times/K^\times\longrightarrow C_K^1\longrightarrow\operatorname{Cl}_K\longrightarrow1
$$
があり、左端は $U_K^1/\mathcal{O}_K^\times$ と群として同型である。
段 1($J_K^1\to\operatorname{Cl}_K$ は全射)。$\mathfrak{a}\in\mathcal{I}_K$ について、$\iota(a)=\mathfrak{a}$ となるイデール $a$ をとる。無限素点 $v_0$ の成分だけを正の実数倍して $\lvert a\rvert=1$ に直しても $\iota(a)$ は変わらない($\iota$ は有限成分だけで決まる)。よって $\iota(J_K^1)=\mathcal{I}_K$ で、合成 $J_K^1\to\mathcal{I}_K\to\operatorname{Cl}_K$ は全射である。
段 2(核)。$a\in J_K^1$ の像が $\operatorname{Cl}_K$ で自明なら $\iota(a)=\alpha\mathcal{O}_K$($\alpha\in K^\times$)と書け、$u:=\alpha^{-1}a$ は $\iota(u)=\mathcal{O}_K$ を満たすので $u\in U_K$ である。積公式から $\lvert u\rvert=\lvert a\rvert/\lvert\alpha\rvert=1$ なので $u\in U_K^1$ で、$a\in K^\times U_K^1$ である。逆に $K^\times U_K^1$ の元の像は自明である。よって核は $K^\times U_K^1$ であり、$K^\times$ を割って完全列を得る。左端の同型は、準同型 $U_K^1\to U_K^1K^\times/K^\times$ が全射で、その核が $U_K^1\cap K^\times=\mathcal{O}_K^\times$(lem-idele-units)であることから従う。
段 3(コンパクト性)。類数の有限性(イデアル類群 の記事の定理「類数の有限性」)により $h:=\lvert\operatorname{Cl}_K\rvert$ は有限である。段 1 により、各類の代表となる $a_1,\dots,a_h\in J_K^1$ がとれ、段 2 により
$$
C_K^1=\bigcup_{i=1}^h[a_i]\cdot\bigl(U_K^1K^\times/K^\times\bigr)
$$
である。lem-idele-units により右辺の各項は、コンパクト集合の、同相写像 $x\mapsto[a_i]x$ による像なのでコンパクトであり、有限個の和集合 $C_K^1$ もコンパクトである。Hausdorff であることは prop-idele-discrete である。$\square$
証明の 2 つの入力の役割ははっきり分かれている。単数定理は $K_\infty^1$ を単数群で割った部分をコンパクトにし(lem-idele-units)、類数の有限性はそのコンパクト集合の平行移動が有限個で足りることを保証する。
無限素点 $v_0$ を 1 つ固定し、$t>0$ について $s(t)$ を、$v_0$ 成分が $t$(実素点)または $\sqrt t$(複素素点)で他の成分が $1$ のイデールとする。写像
$$
C_K^1\times\mathbb{R}_{>0}\to C_K,\qquad([b],t)\mapsto[b\,s(t)]
$$
は位相群の同型である。とくに $C_K$ はコンパクトでない。
$s\colon\mathbb{R}_{>0}\to J_K$ は連続な準同型で $\lvert s(t)\rvert=t$ である。逆写像は $[a]\mapsto([a\,s(\lvert a\rvert)^{-1}],\lvert a\rvert)$ で与えられる。$\lvert\cdot\rvert$ は $K^\times$ 上で $1$ なので $C_K$ 上の連続な準同型を引き起こし、両方の写像は連続な準同型で互いに逆である。$\mathbb{R}_{>0}$ はコンパクトでないので、それを連続な全射 $C_K\to\mathbb{R}_{>0}$ の像にもつ $C_K$ もコンパクトでない。$\square$
$S_\infty$ を含む有限集合 $S$ が、イデアル類群の各類の代表となる整イデアル $\mathfrak{a}_1,\dots,\mathfrak{a}_h$ の素因子をすべて含むとする。このとき $J_K=J_{K,S}K^\times$ であり、$C_K$ は開部分群 $J_{K,S}$ の像に等しい。
$a\in J_K$ について、$\iota(a)$ の類は、ある $i$ と $\alpha\in K^\times$ によって $\iota(a)=\mathfrak{a}_i\,\alpha\mathcal{O}_K$ と書ける。$a':=\alpha^{-1}a$ とすると $\iota(a')=\mathfrak{a}_i$ で、$\mathfrak{a}_i$ の素因子は $S$ に含まれるので、$v\notin S$ の有限素点で $v_{\mathfrak{p}}(a'_v)=0$、すなわち $a'_v\in\mathcal{O}_v^\times$ である。よって $a'\in J_{K,S}$、$a=\alpha a'\in K^\times J_{K,S}$ である。$\square$
$h=1$ なら $S=S_\infty$ でよく、$J_K=U_KK^\times$ である。$h>1$ なら $S=S_\infty$ では足りない(ex-idele-counterexamples の 3 行目)。
大域類体論 の記事の命題「有理数体のイデール類群」により、$J_{\mathbb{Q}}=\mathbb{Q}^\times\times W$($W:=\mathbb{R}_{>0}\times\prod_p\mathbb{Z}_p^\times$、内部直積)であり、$C_{\mathbb{Q}}\cong W\cong\mathbb{R}_{>0}\times\widehat{\mathbb{Z}}^\times$ である。$w\in W$ のノルムは $\lvert w\rvert=w_\infty$(有限成分は単数)なので、$W\cap J_{\mathbb{Q}}^1=\{1\}\times\prod_p\mathbb{Z}_p^\times$ であり、
$$
C_{\mathbb{Q}}^1\cong\widehat{\mathbb{Z}}^\times=\prod_p\mathbb{Z}_p^\times
$$
となる。これはコンパクトであり、thm-idele-compact の完全列では $\operatorname{Cl}_{\mathbb{Q}}=1$、$U_{\mathbb{Q}}^1=\{\pm1\}\times\prod_p\mathbb{Z}_p^\times$、$\mathcal{O}^\times=\{\pm1\}$ で、$U_{\mathbb{Q}}^1/\{\pm1\}\cong\prod_p\mathbb{Z}_p^\times$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 制限直積位相を使うこと | $J_{\mathbb{Q}}$ に $\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ からの相対位相を入れる | 逆元をとる写像の連続性 |
| ノルム $1$ に制限すること | $C_{\mathbb{Q}}$ | コンパクト性 |
| $S$ が各類の代表の素因子を含むこと | $K=\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$、$S=S_\infty$ | $J_K=J_{K,S}K^\times$ |
| $K^\times$ 全体で割ること | $J_{\mathbb{Q}}^1/\{\pm1\}$(単数群だけで割る) | コンパクト性 |
各行は、表の条件以外を保ったまま結論が破れることを示す。
1 行目:ex-idele-subspace である。
2 行目:cor-idele-splitting により $C_{\mathbb{Q}}\cong C_{\mathbb{Q}}^1\times\mathbb{R}_{>0}$ で、連続な全射 $C_{\mathbb{Q}}\to\mathbb{R}_{>0}$ があるのでコンパクトでない。
3 行目:$J_{K,S_\infty}K^\times=U_KK^\times$ は、大域類体論 の記事の命題「イデール類群とイデアル類群」により全射 $J_K\to\operatorname{Cl}_K$ の核である。$\operatorname{Cl}_K$ の位数は $2$ なので、$U_KK^\times\ne J_K$ である。たとえば $(2,1+\sqrt{-5})$ の素点の成分だけが素元で他の成分が $1$ のイデールは $U_KK^\times$ に属さない。
4 行目:イデアル写像 $\iota\colon J_{\mathbb{Q}}^1\to\mathcal{I}_{\mathbb{Q}}$ は、thm-idele-compact の段 1 により全射で、核 $U_{\mathbb{Q}}^1$ は開集合なので、$\mathcal{I}_{\mathbb{Q}}$ に離散位相を入れると連続である。$\iota(\pm1)=\mathbb{Z}$ なので $\iota$ は $J_{\mathbb{Q}}^1/\{\pm1\}$ からの連続な全射を引き起こす。$J_{\mathbb{Q}}^1/\{\pm1\}$ がコンパクトなら、離散空間の中のコンパクトな像 $\mathcal{I}_{\mathbb{Q}}$ は有限集合になるが、$\mathcal{I}_{\mathbb{Q}}$ は素数ごとの $p\mathbb{Z}$ を含む無限集合なので矛盾する。$K^\times$ で割ると、単項イデアル全体(ここでは $\mathcal{I}_{\mathbb{Q}}$ 全体)がつぶれる。
本記事では類数の有限性と単数定理から $C_K^1$ のコンパクト性を導いた。逆に、アデール版の Minkowski の補題(ノルムが十分大きいイデール $x$ について、すべての $v$ で $\lvert\alpha\rvert_v\le\lvert x_v\rvert_v$ となる $0$ でない $\alpha\in K$ があること)から $C_K^1$ のコンパクト性を直接示し、それを使って類数の有限性と($S$ 単数版の)単数定理を導くこともできる(CF67 Chapter II, §16 の Theorem, p. 70、§17 の Theorem, p. 71、§18, pp. 71–73。Ste12 Theorem 19.1.12, p. 198、Theorem 19.2.2, pp. 199–200)。$C_K^1$ のコンパクト性は、2 つの有限性定理を 1 つにまとめた主張と見なせる(Neu99 Chapter VI, Theorem (1.6), p. 362 の直前の説明)。
局所類体論では局所体 $K_v$ の乗法群 $K_v^\times$ の開かつ指数有限な部分群が有限次アーベル拡大と対応する(局所類体論)。大域類体論ではこれを $C_K$ に置き換え、$C_K$ の開かつ指数有限な部分群が $K$ の有限次アーベル拡大と対応する(大域類体論 の記事の定理「大域相互法則」と「大域存在定理」)。$C_K$ はコンパクトでないが、$C_K^1$ はコンパクトなので、$C_K$ の任意の開部分群 $U$ について $C_K^1/(U\cap C_K^1)$ は有限である(開集合 $U\cap C_K^1$ の平行移動がコンパクトな $C_K^1$ を覆い、有限個で足りるため)。$K_v^\times\to J_K$($v$ 成分以外を $1$ とする埋め込み)を通じて局所と大域の相互写像がつながる。
イデール群の定義と位相、主イデールの離散性、ノルム(内容)は CF67 Chapter II, §16(pp. 68–69)、Ste12 §19.1(Definition 19.1.2, p. 195、Lemma 19.1.6 と Lemma 19.1.8, p. 196)、Neu99 Chapter VI, §1(pp. 357–361、Proposition (1.5), p. 361)にある。ex-idele-subspace は CF67 p. 68 の脚注と Ste12 Example 19.1.3(p. 196)による。$S$ イデールの命題は Neu99 Chapter VI, Proposition (1.4), p. 360 である。$C_K^1$ のコンパクト性の本記事の証明は、Neu99 Chapter VI, Theorem (1.6), p. 362 の証明と同じく、類群の有限性と単数の部分のコンパクト性に分けるものである。イデールの名は Chevalley による(同 p. 357)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する