Kolmogorovの発散するFourier級数(Kolmogorov's divergent Fourier series)とは、Lebesgue 積分可能な周期関数で、Fourier 級数の部分和がすべての点で有界でないもののことであり、Kolmogorov による。2 乗可積分な関数の Fourier 級数はほとんどすべての点で収束し(Carleson の定理)、積分可能な関数でも Fejér 平均はほとんどすべての点で収束するので、部分和と $L^1$ の組合せに特有の現象である。構成では、平行移動した Fejér 核の平均で作る $0$ 以上の三角多項式を、平行移動と位相変調で周波数の重ならない帯に並べ、重みを付けて足す。
前提知識: Fourier級数の収束, Fejérの定理, Lebesgue積分, Lp空間
Kolmogorovの発散するFourier級数(Kolmogorov's divergent Fourier series)とは、Lebesgue 積分可能な周期関数 $f$ で、Fourier 級数の部分和 $s_N(f;x)$ がすべての点 $x$ で有界でない(したがって収束しない)もののことである。積分可能な関数に対して、Fourier 級数の各点収束を一般に期待できないことを示す例であり、Kolmogorov による。
これと対照的に、2 乗可積分な関数の Fourier 級数はほとんどすべての点で収束し(Carlesonの定理)、積分可能な関数でも部分和の平均である Fejér 平均はほとんどすべての点で収束する(Fejérの定理)。したがって発散の原因は、$L^1$ という広い関数のクラスと、部分和という平均をとらない総和法の組合せにある。
この記事では、この関数を完全に構成する。部品は 0 以上の三角多項式で、Fejér 核を平行移動して平均したものである。Fejér 核の部分和は、次数の低いところでは Dirichlet 核に近く、Dirichlet 核を平行移動して平均すると、余接関数の和を通じて大きな値が生じる。この部品を、平行移動と高い周波数への移し替えで重ならないように並べ、ノルムが小さくなる重みを付けて足し合わせる。
$\mathbb T:=\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ とし、$L^1(\mathbb T)$、$\|f\|_1:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|f|$、Fourier 係数 $\hat f(n)$、部分和 $s_N(f;x)$ を Fejérの定理 の「定義」の節と同じく定める。
実数値の $f\in L^1(\mathbb T)$ で $\|f\|_1\le1$ を満たし、すべての $x\in\mathbb R$ で
$$
\sup_{N\ge0}|s_N(f;x)|=\infty
$$
となるものがある。とくに $f$ の Fourier 級数はどの点でも収束しない。
証明は 3 段からなり、「段 3:組み立て」の節で完了する。段 1 で、平均が $1$ の $0$ 以上の三角多項式で、円周の一部の集合の上で部分和が大きいものを作る。段 2 で、その 4 つの平行移動で円周全体を覆う。段 3 で、段ごとに大きさを増した部品を互いに重ならない周波数の帯に移し、$L^1$ ノルムの和が有限になる重みを付けて足す。
$f$ の値をほとんど至るところ変えても係数と部分和は変わらないので、この主張は「ほとんどすべての点で」でなく文字どおり「すべての点で」成り立つ。
$M\ge0$ について、Fejér 核 $F_M(t)=\sum_{|n|\le M}\bigl(1-\frac{|n|}{M+1}\bigr)e^{int}$ は実数値の三角多項式で、$F_M\ge0$、$\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}F_M=1$、$0<|t|\le\pi$ で $F_M(t)\le\frac{\pi^2}{(M+1)t^2}$ を満たす(Fejérの定理 の補題「Fejér 核の性質」)。Dirichlet 核は $D_N(t)=\sum_{|n|\le N}e^{int}$ である。$\operatorname{dist}(y,2\pi\mathbb Z)$ を $y$ から $2\pi\mathbb Z$ までの距離とする。
1:$N\le M$ なら $s_N(F_M;t)-D_N(t)=-\sum_{|n|\le N}\frac{|n|}{M+1}e^{int}$ であり、絶対値は $\frac2{M+1}\sum_{n=1}^{N}n=\frac{N(N+1)}{M+1}$ 以下である。2:$t$ を $2\pi$ の整数倍ずらして $|t|\le\pi$ とすると $|t|\ge\delta$ なので、上の評価から従う。3:$D_N(t)=\frac{\sin(N+\frac12)t}{\sin\frac t2}$(Fourier級数 の命題「Dirichlet 核」)の分子を加法定理で $\sin Nt\cos\frac t2+\cos Nt\sin\frac t2$ と分ければよい。$\square$
$P$ を次数 $D$ 以下の三角多項式、$a>2D$ を整数、$0\le N\le D$ とする。このとき $\cos(ax)P(x)$ の周波数の絶対値は $[a-D,a+D]$ に入り、
$$
s_{a+N}\bigl(\cos(a\,\cdot)P;x\bigr)-s_{a-N-1}\bigl(\cos(a\,\cdot)P;x\bigr)=\cos(ax)\,s_N(P;x)
$$
である。さらに、すべての実数 $\theta$ で $\max\{|\cos\theta|,|\cos2\theta|\}\ge\frac12$ である。
$P(x)=\sum_{|n|\le D}p_ne^{inx}$ と書くと $\cos(ax)P(x)=\frac12\sum_{|n|\le D}p_n\bigl(e^{i(a+n)x}+e^{-i(a-n)x}\bigr)$ であり、$a>2D$ から $a\pm n>0$ なので、周波数 $a+n$ と $-(a-n)$ の絶対値はそれぞれ $a+n$、$a-n$ で $[a-D,a+D]$ に入る。左辺は絶対値が $a-N$ 以上 $a+N$ 以下の周波数の項だけを残したもので、それは $|n|\le N$ の項にちょうど当たる($a-N-1\ge0$ にも注意)。よって左辺は $\frac12\sum_{|n|\le N}p_n(e^{iax}+e^{-iax})e^{inx}=\cos(ax)s_N(P;x)$ である。後半は、$|\cos\theta|<\frac12$ なら $\cos2\theta=2\cos^2\theta-1<-\frac12$ となることによる。$\square$
この等式の要点は、2 つの切り口 $a-N-1$ と $a+N$ のあいだにほかの多項式の周波数がなければ、その多項式は差の中で完全に消えることである。後で多くの部品を足し合わせるとき、周波数の帯を重ならないように並べれば、各部品の部分和の大きさを単独で取り出せる。
$H_R:=\sum_{r=1}^{R}\frac1r$ とする。$H_R\to\infty$ なので、どんな正の数 $K$ についても $H_R\ge K$ となる $R$ がある。この節を通して、$m\ge32$ を $16$ の倍数とし、$R:=m/16$ が $H_R\ge32\pi$ を満たすとする。さらに
$$
a_k:=\frac{2\pi k}m\ (k=0,\dots,m-1),\qquad\delta:=\frac\pi{100m^2},\qquad E:=\Bigl\{x\in\bigl[\tfrac\pi4,\tfrac{7\pi}4\bigr]\ \Bigm|\ \operatorname{dist}\bigl(x,\tfrac\pi m\mathbb Z\bigr)\ge\delta\Bigr\}
$$
とおく。点 $a_k$ は半分の間隔の格子 $\frac\pi m\mathbb Z$ に含まれるので、$x\in E$ はどの $a_k$ からも($2\pi$ の整数倍の違いを除いて)$\delta$ 以上離れている。
まず、2 つの初等的な評価を用意する。1 つ目は、$x$ の右にある点 $a_k$ での余接関数の値の平均が大きな負の数になることである。
$x\in E$ とし、$j:=\lfloor\frac{mx}{2\pi}\rfloor$ とおく。このとき $\frac m8\le j\le m-4$、$a_j\le x< a_{j+1}$ であり、
$$
B(x):=\frac1m\sum_{k=j+1}^{m-1}\cot\frac{x-a_k}2\le-\frac{H_R}{4\pi}
$$
である。
$\frac{mx}{2\pi}\in[\frac m8,\frac{7m}8]$ なので $\frac m8\le j\le\frac{7m}8\le m-4$ であり、$\theta:=\frac{mx}{2\pi}-j\in[0,1)$ とおくと $m-1-j\ge\frac m8-1\ge R$ である。$k=j+r$($1\le r\le R$)では $\frac{x-a_k}2=-t_r$、$t_r:=\frac{\pi(r-\theta)}m\in(0,\frac\pi{16}]$ である。$\cos t_r\ge\frac12$、$\sin t_r\le t_r$ から $\cot t_r\ge\frac1{2t_r}\ge\frac m{2\pi r}$ なので、$\cot\frac{x-a_k}2\le-\frac m{2\pi r}$ である。
$k>j$ のほかの項では $a_k\in(x,2\pi)$ なので $\frac{x-a_k}2\in(-\frac{7\pi}8,0)$ である。余接が正になるのは $\frac{x-a_k}2\in(-\frac{7\pi}8,-\frac\pi2]$ のときだけで、その値は $\cot(\frac{x-a_k}2+\pi)\le\cot\frac\pi8=1+\sqrt2<3$ である。$r\le R$ 以外の負の項は捨て、正の項は個数 $m$ 以下で抑えると
$$
B(x)\le-\frac1m\sum_{r=1}^{R}\frac m{2\pi r}+3=-\frac{H_R}{2\pi}+3\le-\frac{H_R}{4\pi}
$$
である(最後は $H_R\ge12\pi$ による)。$\square$
2 つ目は、$m$ の倍数の切り口 $N=m\ell$ を、$|\sin Nx|$ が大きくなるように選べることである。$x$ が格子 $\frac\pi m\mathbb Z$ から離れていることがここで効く。
$Q:=200m$ とする。$\operatorname{dist}(x,\frac\pi m\mathbb Z)\ge\delta$ なら、どの整数 $q$ についても、$\ell\in\{q,q+1,\dots,q+Q-1\}$ で $|\sin(m\ell x)|>\frac12$ となるものがある。
$y:=mx$ とおくと $\operatorname{dist}(y,\pi\mathbb Z)\ge m\delta=\frac\pi{100m}$ であり、$|\sin y|\ge\frac2\pi\operatorname{dist}(y,\pi\mathbb Z)\ge\frac1{50m}$ である。等比数列の和から $\bigl|\sum_{\ell=q}^{q+Q-1}e^{2i\ell y}\bigr|\le\frac2{|e^{2iy}-1|}=\frac1{|\sin y|}\le50m$ なので
$$
\frac1Q\sum_{\ell=q}^{q+Q-1}\sin^2(\ell y)=\frac12-\frac1{2Q}\operatorname{Re}\sum_{\ell=q}^{q+Q-1}e^{2i\ell y}\ge\frac12-\frac{50m}{2\cdot200m}=\frac38
$$
である。よって $\sin^2(\ell y)\ge\frac38>\frac14$ となる $\ell$ がある。$\square$
$0$ 以上の実数値の三角多項式 $P$ で $\|P\|_1=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}P=1$ を満たすものと、その次数 $D$ があって、各 $x\in E$ について、ある $N\le D$($x$ による)で
$$
|s_N(P;x)|\ge\frac{H_R}{16\pi}
$$
が成り立つ。
要点:点 $a_k$ に Fejér 核を置き、次数 $M_k$ を $k$ とともに急に増やして平均したものを $P$ とする。$x\in E$ について $j$ を lem-kd-cot のとおりとし、$M_j< N\ll M_{j+1}$ となる $m$ の倍数 $N$ を lem-kd-sine で選ぶ。$k\le j$ の核は $s_N$ でそのまま残り、$x$ では小さい。$k>j$ の核の部分和はほぼ Dirichlet 核 $D_N(x-a_k)$ であり、$Na_k\in2\pi\mathbb Z$ なのでその平均は $\sin(Nx)B(x)+O(1)$ にまとまって大きい。
$M_0:=\lceil4\pi^2/\delta^2\rceil$ とし、$j=0,\dots,m-2$ について順に
$$q_j:=\Bigl\lfloor\frac{M_j}m\Bigr\rfloor+1,\qquad N_j^{\max}:=m(q_j+Q-1),\qquad M_{j+1}:=8N_j^{\max}(N_j^{\max}+1)$$
と定める。$mq_j>M_j$ であり、$\ell=q_j,\dots,q_j+Q-1$ について $N=m\ell$ は $M_j< N\le N_j^{\max}< M_{j+1}$ を満たす。さらに $k\ge j+1$ なら $M_k\ge M_{j+1}$ なので
$$\frac{N(N+1)}{M_k+1}\le\frac{N_j^{\max}(N_j^{\max}+1)}{8N_j^{\max}(N_j^{\max}+1)}=\frac18\qquad(\dagger)$$
である。$P(x):=\frac1m\sum_{k=0}^{m-1}F_{M_k}(x-a_k)$、$D:=M_{m-1}$ とおく。$P$ は $0$ 以上の実数値の三角多項式で、次数は $D$ 以下、$\frac1{2\pi}\int P=1$ である。部分和は平行移動と交換するので $s_N(P;x)=\frac1m\sum_ks_N(F_{M_k};x-a_k)$ である。
$x\in E$ を固定し、$j$ を lem-kd-cot のとおりとする($j\le m-2$)。lem-kd-sine を $q=q_j$ に使って $\ell$ をとり、$N:=m\ell$ とおくと、$|\sin Nx|>\frac12$、$M_j< N\le N_j^{\max}< M_{j+1}\le D$ である。
$k\le j$ の核.$N>M_j\ge M_k$ なので lem-kd-fejer-partial の 1 から $s_N(F_{M_k};\cdot)=F_{M_k}$ である。$\operatorname{dist}(x-a_k,2\pi\mathbb Z)\ge\delta$ なので、同じ補題の 2 と $M_k+1\ge4\pi^2/\delta^2$ から $0\le F_{M_k}(x-a_k)\le\frac14$ であり、これらの $\frac1m$ 倍の和は $\frac14$ 以下である。
$k>j$ の核.lem-kd-fejer-partial の 1 と $(\dagger)$ から、$s_N(F_{M_k};x-a_k)$ と $D_N(x-a_k)$ の差は $\frac18$ 以下であり、$\frac1m$ 倍の和の誤差も $\frac18$ 以下である。$Na_k=2\pi\ell k\in2\pi\mathbb Z$ なので、同じ補題の 3 から
$$\frac1m\sum_{k=j+1}^{m-1}D_N(x-a_k)=\sin(Nx)\,B(x)+\frac{m-1-j}m\cos(Nx)$$
である。lem-kd-cot と $|\sin Nx|>\frac12$ から、右辺の絶対値は $\frac{H_R}{8\pi}-1$ 以上である。
まとめ.$|s_N(P;x)|\ge\frac{H_R}{8\pi}-1-\frac18-\frac14\ge\frac{H_R}{16\pi}$ である($\frac{H_R}{16\pi}\ge2$ による)。$\square$
$P$ は $0$ 以上で平均が $1$ なので、そのノルム $\|P\|_1=1$ は次数の選び方によらない。一方で部分和は $H_R$ に比例して大きくなりうる。これが「ノルムは $1$ のままで部分和はいくらでも大きい」部品である。ただし大きくなるのは集合 $E$ の上だけで、$E$ は円周の一部しか覆わない。
prop-kd-posmax の $m$、$\delta$、$E$ について $\eta:=\frac\pi{2m}$ とおくと、円周の上で
$$
E\cup(E+\eta)\cup(E+\pi)\cup(E+\pi+\eta)=\mathbb T
$$
である。
$S:=\frac\pi m\mathbb Z$ とすると、$S$ と $S+\eta$ の点どうしの距離は $\eta$ 以上で、$2\delta<\eta$ である。$x\in J:=[\frac\pi4+\eta,\frac{7\pi}4]$ をとる。$\operatorname{dist}(x,S)\ge\delta$ なら $x\in E$ である。そうでなければ $\operatorname{dist}(x-\eta,S)=\operatorname{dist}(x,S+\eta)\ge\eta-\delta>\delta$ であり、$x-\eta\in[\frac\pi4,\frac{7\pi}4]$ なので $x-\eta\in E$、すなわち $x\in E+\eta$ である。よって $J\subset E\cup(E+\eta)$ である。$J$ と $J+\pi=[\frac{5\pi}4+\eta,\frac{11\pi}4]$ を円周に写すと、$\frac\pi4+\eta<\frac{3\pi}4$ なので円周全体を覆う。$\square$
したがって、$P$ の 4 つの平行移動 $P(\cdot-r)$($r\in\{0,\eta,\pi,\pi+\eta\}$)を考えると、各点 $x$ で少なくとも 1 つについて、ある $N\le D$ で $|s_N(P(\cdot-r);x)|=|s_N(P;x-r)|\ge\frac{H_R}{16\pi}$ となる。
要点:段ごとに $H_R$ を大きくした部品を作り、その 4 つの平行移動それぞれに 2 つの位相変調 $\cos(Lx)$、$\cos(2Lx)$ を掛けて、互いに重ならない周波数の帯に置く。重み $\varepsilon_s$ を掛けて足すと $L^1$ で収束する。各点で、その点を覆う平行移動と、余弦が $\frac12$ 以上になる位相を選ぶと、lem-kd-phase により部分和の差が段の番号 $s$ 以上になる。
$s=1,2,\dots$ について $\varepsilon_s:=2^{-s}/8$ とし、$16$ の倍数 $m_s\ge32$ を $H_{m_s/16}\ge\max\bigl(32\pi,\frac{32\pi s}{\varepsilon_s}\bigr)$ となるようにとる。prop-kd-posmax を $m=m_s$ に使って得る多項式と次数を $P_s$、$D_s$ とし、$\eta_s:=\frac\pi{2m_s}$、$P_{s,r}:=P_s(\cdot-r)$($r\in\{0,\eta_s,\pi,\pi+\eta_s\}$)とおく。
組 $(s,r)$ を $s$ の順に、各 $s$ の中では $r$ の 4 つを順に並べ、整数 $\beta$(はじめ $0$)を更新しながら $L_{s,r}:=\max(2D_s+1,\beta+D_s+1)$ を決め、そのあと $\beta:=2L_{s,r}+D_s$ とする。$L:=L_{s,r}>2D_s$ なので、$\cos(Lx)P_{s,r}$ と $\cos(2Lx)P_{s,r}$ の周波数の絶対値はそれぞれ $[L-D_s,L+D_s]$ と $[2L-D_s,2L+D_s]$ に入り(lem-kd-phase)、$L-D_s>\beta$(更新前)、$2L-D_s>L+D_s$ である。よって、すべての $(s,r)$ のすべての帯(各 2 つ)は互いに交わらない。
$$Q_s(x):=\varepsilon_s\sum_{r}\bigl(\cos(L_{s,r}x)+\cos(2L_{s,r}x)\bigr)P_{s,r}(x)$$
とおく。$|\cos|\le1$ と $\|P_{s,r}\|_1=1$ から $\|Q_s\|_1\le8\varepsilon_s=2^{-s}$ である。
$\sum_s\|Q_s\|_1\le1$ なので、優収束定理 の系「級数の項別積分」から、$\sum_sQ_s(x)$ はほとんどすべての $x$ で絶対収束し、その和 $f$(絶対収束しない点では $0$ とおく)は実数値で $L^1(\mathbb T)$ に属し、$\|f\|_1\le1$、$\|f-\sum_{s\le S}Q_s\|_1\le\sum_{s>S}2^{-s}\to0$ である。$|\hat h(n)|\le\|h\|_1$ なので $\hat f(n)=\sum_s\hat Q_s(n)$ である。帯が交わらないので、ある帯に絶対値が入る $n$ について $\hat f(n)$ は、その帯をもつ 1 つの多項式 $\varepsilon_s\cos(a\,\cdot)P_{s,r}$ の係数に等しい。
$x\in\mathbb R$ と $s$ を固定する。lem-kd-cover と prop-kd-posmax から、$r$ と $N\le D_s$ で $|s_N(P_{s,r};x)|\ge\frac{H_{m_s/16}}{16\pi}$ となるものがある。$L:=L_{s,r}$ とし、lem-kd-phase の後半から $a\in\{L,2L\}$ を $|\cos ax|\ge\frac12$ となるように選ぶ。$A:=a-N-1$、$B':=a+N$ とおくと、$s_{B'}(f;x)-s_A(f;x)=\sum_{A<|n|\le B'}\hat f(n)e^{inx}$ に現れる $|n|$ は $[a-N,a+N]\subset[a-D_s,a+D_s]$ に入るので、その係数はすべて $\varepsilon_s\cos(a\,\cdot)P_{s,r}$ の係数である。lem-kd-phase から
$$\bigl|s_{B'}(f;x)-s_A(f;x)\bigr|=\varepsilon_s|\cos ax|\,|s_N(P_{s,r};x)|\ge\varepsilon_s\cdot\frac12\cdot\frac{H_{m_s/16}}{16\pi}\ge s$$
である。よって $\max\{|s_A(f;x)|,|s_{B'}(f;x)|\}\ge\frac s2$ であり、$s$ は任意なので $\sup_N|s_N(f;x)|=\infty$ である。$\square$
構成の各段の役割をまとめる。
| 段 | 道具 | 得られること |
|---|---|---|
| 1 | Fejér 核の平行移動の平均、余接関数の和 | ノルム $1$ で、集合 $E$ の上で部分和が $H_R/(16\pi)$ 以上の多項式 |
| 2 | 半格子 $\frac\pi m\mathbb Z$ の近くを避ける集合の 4 つの平行移動 | 円周全体での大きな部分和 |
| 3 | 2 つの位相 $\cos Lx$、$\cos2Lx$、交わらない帯、$L^1$ で和が有限な重み | 1 つの関数ですべての点・すべての段の大きな部分和の差 |
この関数は、収束を保証する定理の仮定を外したときの反例になる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Carlesonの定理 の「$f\in L^2(\mathbb T)$」($L^1(\mathbb T)$ に弱める) | thm-kd-main の $f$ | ほとんどすべての点での収束 |
| Fejérの定理 の定理「Fejér の定理」の 4 の「Fejér 平均」(部分和に替える) | thm-kd-main の $f$ | ほとんどすべての点での収束 |
| Fourier級数の収束 の定理「Dini の判定法」・「Dirichlet–Jordan の判定法」の「点の近くでの条件」($f\in L^1(\mathbb T)$ だけにする) | thm-kd-main の $f$ | 各点での収束 |
どの行も thm-kd-main から直ちに従う。とくに 1 行目から、この $f$ は $L^2(\mathbb T)$ に属さない。2 行目の対比では、同じ $f$ の Fejér 平均 $\sigma_N(f;x)$ はほとんどすべての点で $f(x)$ に収束する。
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