立方数の和と三角数(sum of cubes and triangular numbers)とは、正の整数 $n$ について $1^3+2^3+\cdots+n^3=T_n^2=\left(\frac{n(n+1)}2\right)^2$、すなわち最初の $n$ 個の立方数の和が三角数 $T_n=1+2+\cdots+n$ の2乗に等しいという等式である。$k^3$ は $k^2-k+1$ から始まる $k$ 個の連続する奇数の和で、それらを並べると最初の $T_n$ 個の奇数になること、$T_k^2-T_{k-1}^2=k^3$ を足して打ち消し合わせること、$k^3=6\binom{k+1}3+k$ と四面体数を使うことの3通りで示せる。和を $1$ 以外から始めると、$2^3+3^3=35\ne(2+3)^2$ のように成り立たない。
前提知識: 角錐数, 多角数, 数学的帰納法と整列性
立方数 $1,8,27,64,125$ を順に足してみる。
$$
1=1^2,\quad 1+8=9=3^2,\quad 1+8+27=36=6^2,\quad 1+8+27+64=100=10^2.
$$
和はいつも平方数で、しかも2乗される数 $1,3,6,10$ は三角数である。数学 B では公式 $\sum_{k=1}^nk^3=\left(\frac{n(n+1)}2\right)^2$ として習う。この記事では、この等式が「なぜ三角数の2乗になるのか」を、3つの異なる見方で示す。
$n=4$ なら左辺は $1+8+27+64=100$ で、右辺は $T_4^2=10^2=100$ である。$n=5$ なら左辺は $100+125=225$、右辺は $T_5^2=15^2=225$ である。$n=10$ なら右辺は $T_{10}^2=55^2=3025$ で、左辺 $1^3+\cdots+10^3$ を順に足しても $3025$ になる。
奇数を $1$ 個、$2$ 個、$3$ 個、…と順に区切って並べる。
$$
1\ \big|\ 3+5\ \big|\ 7+9+11\ \big|\ 13+15+17+19\ \big|\ \cdots
$$
各まとまりの和は $1$、$8$、$27$、$64$ で、ちょうど立方数になる(図1)。4つのまとまりで使った奇数は最初の $1+2+3+4=10$ 個で、最初の10個の奇数の和は $10^2=100$ である。
奇数を1個、2個、3個、4個、5個ずつの行に並べると、各行の和が1の3乗から5の3乗になる図
この記事の主定理は1つだけである。それを3通りに証明する。それぞれの証明は、前の記事の道具をそれぞれ違う形で使う。
| 証明 | 使う道具 | 見る図・式 |
|---|---|---|
| 証明1 | 連続する奇数の和、三角数 | 奇数を区切った三角形(図1) |
| 証明2 | 三角数の差と和(多角数) | 正方形を鉤の形に分ける(図2) |
| 証明3 | 四面体数とパスカルの三角形(角錐数) | $k^3=6\binom{k+1}3+k$ |
三角数を $T_n=1+2+\cdots+n=\frac{n(n+1)}2$($T_0=0$)と書く。
$n\ge1$ のとき
$$
1^3+2^3+\cdots+n^3=T_n^2=\left(\frac{n(n+1)}2\right)^2
$$
である。すなわち、最初の $n$ 個の立方数の和は、最初の $n$ 個の整数の和の2乗に等しい。
この定理の証明は3つある。奇数のまとまりによる prf-scn-odd、三角数の2乗の差による prf-scn-telescope、四面体数による prf-scn-binom である。どれか1つを読めば定理は証明される。数学的帰納法で示すこともできるが、それでは「なぜ三角数の2乗なのか」が見えにくいので、ここでは扱わない。
証明1で使う事実を準備しておく。
$m\ge1$ のとき $1+3+5+\cdots+(2m-1)=m^2$ である。
$$ \sum_{j=1}^m(2j-1)=2\sum_{j=1}^mj-m=2\cdot\frac{m(m+1)}2-m=m^2+m-m=m^2.\qquad\square $$
多角数 の言葉では、四角数の鉤の形の点の数が $1,3,5,7,\ldots$ という奇数で、それを足すと四角数 $m^2$ になる、ということである。
方針:$k^3$ が $k$ 個の連続する奇数の和であることを示し、それらのまとまりが最初の $T_n$ 個の奇数を隙間なく並べたものであることを確かめる。
段1($k$ 番目のまとまり)。$k\ge1$ について、$k^2-k+1$ から始まる $k$ 個の連続する奇数
$$
k^2-k+1,\ k^2-k+3,\ \ldots,\ k^2-k+1+2(k-1)=k^2+k-1
$$
を考える。$k^2-k=k(k-1)$ は偶数なので、$k^2-k+1$ は奇数である。和は
$$
k(k^2-k+1)+2\{0+1+\cdots+(k-1)\}=k^3-k^2+k+k(k-1)=k^3.
$$
段2(まとまりが続いている)。$k$ 番目のまとまりの最後の奇数は $k^2+k-1$ で、$k+1$ 番目のまとまりの最初の奇数は $(k+1)^2-(k+1)+1=k^2+k+1$ である。差は $2$ なので、2つのまとまりの間に奇数の抜けも重なりもない。1番目のまとまりは $1$ から始まる。
段3(全体を足す)。段2により、1番目から $n$ 番目までのまとまりを並べると、$1$ から始まる連続する奇数がちょうど $1+2+\cdots+n=T_n$ 個並ぶ。段1により各まとまりの和は $k^3$ なので、lem-scn-odd-sum を $m=T_n$ として使うと
$$
1^3+2^3+\cdots+n^3=1+3+\cdots+(2T_n-1)=T_n^2.\qquad\square
$$
$k=4$ なら最初の奇数は $16-4+1=13$、最後は $16+4-1=19$ で、$13+15+17+19=64=4^3$ である。$k=5$ なら $21$ から $29$ までの5個で、和は $\frac{(21+29)\cdot5}2=125=5^3$ である。$n=5$ までに使う奇数は最初の $T_5=15$ 個で、最後の奇数は $2\cdot15-1=29$ と一致する。
Wei26 は、奇数を $1,2,3,\ldots$ 個ずつのまとまりに分けると $n$ 番目のまとまりの和が $n^3$ になることを Nicomachus が観察したと述べ、この等式を Nicomachus の定理と呼んでいる。
1辺10の正方形を、1辺0、1、3、6、10の正方形の差になる鉤の形に分けた図。各鉤の面積は1の3乗から4の3乗である
方針:$T_k^2-T_{k-1}^2=k^3$ を示し、$k=1$ から $n$ まで足して打ち消し合わせる。
段1(差と和)。三角数の定義から $T_k-T_{k-1}=k$ である。また 多角数 の系により $T_k+T_{k-1}=k^2$ である($k=1$ でも $T_1+T_0=1$)。
段2(2乗の差)。因数分解すると
$$
T_k^2-T_{k-1}^2=(T_k-T_{k-1})(T_k+T_{k-1})=k\cdot k^2=k^3.
$$
段3(足す)。この式を $k=1,2,\ldots,n$ について足すと、左辺は $T_1^2-T_0^2+T_2^2-T_1^2+\cdots+T_n^2-T_{n-1}^2$ で、途中の項が打ち消し合って $T_n^2-T_0^2=T_n^2$ が残る(数列の和と差分)。右辺は $1^3+\cdots+n^3$ である。$\square$
段2を図で読むと、1辺 $T_k$ の正方形から1辺 $T_{k-1}$ の正方形を除いた鉤の形の面積が $k^3$ である(図2)。鉤の形は、幅 $k$、長さ $T_k$ の帯2本から、重なる $k\times k$ の正方形を1つ引いたものなので、面積は
$$
2kT_k-k^2=k\{k(k+1)-k\}=k\cdot k^2=k^3
$$
とも計算できる。図2で鉤の形を下から順に積むと、1辺 $T_4=10$ の正方形がちょうど埋まる。
$k=3$ の鉤の形は、1辺 $6$ の正方形から1辺 $3$ の正方形を除いたもので、面積は $36-9=27=3^3$ である。帯で数えると $2\cdot3\cdot6-3^2=36-9=27$ で一致する。$k=4$ なら $100-36=64=4^3$ である。
角錐数 では、四面体数が $\binom{n+2}3$ であることを、パスカルの三角形の斜めの和(ホッケースティック恒等式)で示した。同じ恒等式を1つ上の列に使う。
方針:$k^3$ を $\binom{k+1}3$ と $k$ で書き、斜めの和で足してから、$T_n^2$ と一致することを計算する。
段1($k^3$ を書き直す)。$6\binom{k+1}3=(k+1)k(k-1)=k^3-k$ なので
$$
k^3=6\binom{k+1}3+k.
$$
$k=1$ では $\binom23=0$ で、$1=0+1$ と正しい。
段2(足す)。$k=1$ から $n$ まで足すと
$$
\sum_{k=1}^nk^3=6\sum_{k=1}^n\binom{k+1}3+\sum_{k=1}^nk=6\sum_{j=2}^{n+1}\binom j3+T_n.
$$
$\binom23=0$ なので和は $j=3$ から始めてよく、ホッケースティック恒等式(二項定理と組合せの恒等式)を $r=3$ として使うと $\sum_{j=3}^{n+1}\binom j3=\binom{n+2}4$ である。よって
$$
\sum_{k=1}^nk^3=6\binom{n+2}4+T_n.
$$
段3($T_n^2$ と比べる)。
$$
6\binom{n+2}4=\frac{(n+2)(n+1)n(n-1)}4=\frac{n(n+1)}2\cdot\frac{(n+2)(n-1)}2=T_n\cdot\frac{n^2+n-2}2
$$
なので、
$$
6\binom{n+2}4+T_n=T_n\left(\frac{n^2+n-2}2+1\right)=T_n\cdot\frac{n^2+n}2=T_n\cdot T_n=T_n^2.\qquad\square
$$
$n=4$ なら $6\binom64=6\cdot15=90$、$T_4=10$ で、和は $100=10^2$ である。段1は $k=4$ で $6\binom53+4=60+4=64$ となる。
3つの証明を比べると、証明1は「奇数の和は平方数」、証明2は「平方数は隣り合う三角数の和」、証明3は「四面体数は三角数の和」を使っている。どれも 多角数 と 角錐数 で見た図形数の関係である。
$1\le a\le b$ のとき
$$
a^3+(a+1)^3+\cdots+b^3=T_b^2-T_{a-1}^2
$$
である。
主定理を $n=b$ と $n=a-1$ で使って引けばよい($a=1$ なら $T_0=0$ で主定理そのもの)。
$2^3+3^3+4^3=8+27+64=99$ である。系によれば $T_4^2-T_1^2=100-1=99$ で一致する。$(2+3+4)^2=81$ とは一致しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 和を $1$ から始める | $2^3+3^3=35$ | $(2+3)^2=25$ にならない(正しくは $T_3^2-T_1^2=35$) |
| 連続する整数の立方を足す | $1^3+3^3=28$ | $(1+3)^2=16$ にならない |
| 指数を $3$ にする | 指数 $2$:$1^2+2^2=5$ | $5$ は $T_2=3$ の冪でない |
| 指数を $3$ にする | 指数 $4$:$1^4+2^4=17$ | 平方数にならない |
1つ目と2つ目は主定理の「最初の $n$ 個の連続する立方数」という形を崩した例で、3つ目と4つ目は指数を変えた例である。平方の和 $1^2+\cdots+n^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ は 角錐数 の四角錐数で、角錐数 で紹介したとおり、平方数になるのは $n=1$ と $n=24$ のときだけである。立方の和がいつも平方数になるのとは対照的である。
$1^2+2^2=5$ で、$T_2=3$ の冪は $1,3,9,\ldots$ なので $5$ は現れない。$1^4+2^4=1+16=17$ は $4^2=16$ と $5^2=25$ の間にあり、平方数でない。
$\sum_{k=1}^nk^3=\frac{n^4}4+\frac{n^3}2+\frac{n^2}4$ で、最高次の項 $\frac{n^4}4$ は積分 $\int_0^nx^3\,dx=\frac{n^4}4$ と同じである。単調な関数の和を積分ではさむと、$\sum_{k=1}^nk^3$ と $\frac{n^4}4$ の比が $1$ に近づくことが分かる。和と積分を対応させる見方は 積分と和の類似 で扱っている。また、立方の和が三角数の2乗で書けることは、奇数乗のべき和が $T_n$ の多項式で書けるという現象の最初の例で、$k^5$、$k^7$ の和の例は 数列の和と差分 にある。
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