二項分布(binomial distribution)とは、成功の確率が $p$ の試行を互いに独立に $n$ 回繰り返したときの成功の回数が従う分布で、ちょうど $k$ 回成功する確率は $\binom nkp^k(1-p)^{n-k}$ である。期待値は $np$、分散は $np(1-p)$ で、$0<p<1$ なら確率は $k=\lfloor(n+1)p\rfloor$ で最大になる($(n+1)p$ が整数ならその 1 つ手前でも同じ最大値)。成功確率が共通な独立な二項分布の和は二項分布であり、$np=\lambda$ を一定にして $n\to\infty$ とすると Poisson 分布 $e^{-\lambda}\lambda^k/k!$ に近づく。各回の成功確率が等しくても、玉を戻さずに取り出す場合のように試行が独立でなければ二項分布にならない。
公平な硬貨を 10 回投げて、表がちょうど 5 回出る確率はいくらか。表と裏の出方は $2^{10}=1024$ 通りあって、どれも同じ確率で起こる。そのうち表がちょうど 5 回のものは、10 回のうちどの 5 回が表かを選ぶ方法の数 $\binom{10}5=252$ 通りなので、確率は $\frac{252}{1024}=0.2461\ldots$ である。最も起こりやすい「5 回」でさえ 4 回に 1 回も起こらない。別の例として、当たる確率が $2\%$ のくじを、毎回ほかの回とは無関係に 100 回引くとき、1 回も当たらない確率は $0.98^{100}=0.1326\ldots$ である。この値は $e^{-2}=0.1353\ldots$ に近い。これは、平均の当たり回数 $100\times0.02=2$ を使った Poisson 近似(thm-bindist-poisson)で説明される。
このように、成功の確率が同じ試行を互いに独立に $n$ 回繰り返したときの成功の回数が従う分布を二項分布(binomial distribution)という。
成功か失敗かの 2 通りの結果をもち、成功の確率が $p$($0\leq p\leq1$)である試行を、互いに独立に $n$ 回繰り返すことを Bernoulli 試行という(GrS06 Definition 3.5、p. 96)。これは次の離散確率空間で表される。$\Omega:=\{0,1\}^n$($\omega_i=1$ が $i$ 回目の成功)とし、$\omega=(\omega_1,\dots,\omega_n)$ のうち $1$ の個数が $k$ のものに確率
$$
p(\omega):=p^k(1-p)^{n-k}
$$
を割り当てる。これは $\{0,1\}$ 上の確率 $p(1)=p$、$p(0)=1-p$ の $n$ 個の積であり、独立性(確率論) の記事の定理「積の確率空間の座標は互いに独立」により、$i$ 回目の結果を表す確率変数 $X_i(\omega):=\omega_i$ は互いに独立で、$P(X_i=1)=p$ である。以下、$0^0=1$ と約束する($p=0$ や $p=1$ の場合のため)。
$n\geq1$ を整数、$0\leq p\leq1$ とする。$k=0,1,\dots,n$ について
$$
b(n,p,k):=\binom nkp^k(1-p)^{n-k}
$$
と定める。確率変数 $X$ が、すべての $k=0,1,\dots,n$ について $P(X=k)=b(n,p,k)$ を満たすとき、$X$ は二項分布 $B(n,p)$ に従うという。$n$ を試行回数、$p$ を成功確率という。$B(1,p)$ を Bernoulli 分布という。
$b(n,p,k)$ という記号は GrS06(Definition 3.6、p. 99)による。本記事では、確率変数は離散確率空間の上で考える。$\sum_kb(n,p,k)=1$(prop-bindist-count)なので、$B(n,p)$ に従う確率変数は確率 $1$ で $\{0,1,\dots,n\}$ の値をとる。
離散確率空間の上の確率変数 $X_1,\dots,X_n$ が $0$ と $1$ だけを値にとり、互いに独立で、どれも $P(X_i=1)=p$ を満たすとする。このとき成功の回数 $X:=X_1+\cdots+X_n$ は二項分布 $B(n,p)$ に従う。また
$$
\sum_{k=0}^nb(n,p,k)=1
$$
である。
$P(X_i=0)=1-p$ である。値の列 $\varepsilon=(\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_n)\in\{0,1\}^n$ について、互いに独立であることから、独立性(確率論) の記事の命題「同時分布による判定」により
$$
P(X_1=\varepsilon_1,\dots,X_n=\varepsilon_n)=\prod_{i=1}^nP(X_i=\varepsilon_i)=p^k(1-p)^{n-k}
$$
である。ここで $k$ は $\varepsilon$ の中の $1$ の個数である(ある $\varepsilon_i$ が $X_i$ の値の集合に属さない場合は、左辺の事象は空で、右辺も因子 $P(X_i=\varepsilon_i)=0$ を含むので、等式は両辺 $0$ として成り立つ)。事象 $\{X=k\}$ は、$1$ をちょうど $k$ 個含む列 $\varepsilon$ についての事象の互いに交わらない和集合であり、そのような列は、$1$ を置く $k$ 個の位置を $n$ 個から選ぶ方法の数、すなわち $\binom nk$ 個ある(二項係数 の記事の命題「部分集合による特徴づけ」)。よって $P(X=k)=\binom nkp^k(1-p)^{n-k}$ である。和については、二項定理により
$$
\sum_{k=0}^n\binom nkp^k(1-p)^{n-k}=\bigl(p+(1-p)\bigr)^n=1
$$
である。
Bernoulli 試行の確率空間 $\{0,1\}^n$ の上の成功の回数 $X=X_1+\cdots+X_n$ は、この命題により $B(n,p)$ に従う。この計算は GrS06 Theorem 3.6(p. 98)、Sho08 Example 8.18(pp. 222–223)にある。
二項分布は「独立に繰り返したときの成功の回数」の分布である。$b(n,p,k)$ の式は 2 つの因子からなる。$p^k(1-p)^{n-k}$ は、成功と失敗の特定の並び(たとえば「成功・失敗・成功…」)が起こる確率で、独立性のおかげで各回の確率の積になる。$\binom nk$ は、成功がちょうど $k$ 回になる並びの個数である。
平均の成功回数は $np$ で、確率は $np$ のあたりで最大になり(prop-bindist-mode)、そこから離れると急速に小さくなる。散らばりの幅を表す標準偏差は $\sqrt{np(1-p)}$ で、$n$ に比べてゆっくりしか増えない。このため成功の割合 $X/n$ は $p$ の近くに集中し(大数の法則)、$n$ が大きいと分布の形は釣鐘形の正規分布に近づく(中心極限定理)。一方、$n$ が大きく $p$ が小さく、平均 $np$ がほどほどの大きさのときは、Poisson 分布で近似できる(thm-bindist-poisson)。
$B(10,\frac12)$ では $b(10,\frac12,k)=\binom{10}k/1024$ で、$k=0,1,\dots,10$ に対する分子は
$$
1,\ 10,\ 45,\ 120,\ 210,\ 252,\ 210,\ 120,\ 45,\ 10,\ 1
$$
である。表が 4〜6 回になる確率は $\frac{210+252+210}{1024}=\frac{21}{32}=0.65625$ で、それ以外(3 回以下か 7 回以上)になることも $3$ 回に $1$ 回ほど起こる。分布は $k=5$ について左右対称である。一般に $b(n,p,k)=b(n,1-p,n-k)$ であり(成功と失敗を入れ替える)、$p=\frac12$ なら $k$ と $n-k$ で確率が等しい。
さいころを 4 回振り、6 の目が出ることを成功とすると、成功の回数は $B(4,\frac16)$ に従う。6 の目がちょうど 1 回出る確率は
$$
b\Bigl(4,\frac16,1\Bigr)=4\cdot\frac16\cdot\Bigl(\frac56\Bigr)^3=\frac{125}{324}=0.3858\ldots
$$
である(GrS06 Example 3.9、p. 98)。少なくとも 1 回出る確率は $1-b(4,\frac16,0)=1-(\frac56)^4=\frac{671}{1296}=0.5177\ldots$ で、$\frac12$ を少し超える。
赤玉 4 個と白玉 6 個が入った袋から、玉を戻さずに 3 個取り出し、赤玉の個数を $X$ とする。3 個の選び方 $\binom{10}3=120$ 通りが同じ確率で起こるとすると、
$$
P(X=x)=\frac{\binom4x\binom6{3-x}}{120}\qquad(x=0,1,2,3)
$$
で、値は $\frac16,\frac12,\frac3{10},\frac1{30}$ である。玉を 1 個ずつ順に取り出すと考え、順序をつけた取り出し方 $10\cdot9\cdot8=720$ 通りが同じ確率で起こるとしても、各組は $3!=6$ 通りの順序に対応するので $X$ の分布は変わらない。このとき $i$ 回目($i=1,2,3$)に取り出す玉は 10 個のどれも同じ確率 $\frac1{10}$ なので、$i$ 回目が赤である確率はどの回でも $\frac4{10}$ である。しかし $X$ は $B(3,\frac25)$ に従わない。たとえば $b(3,\frac25,3)=0.064$ だが $P(X=3)=\frac1{30}=0.0333\ldots$ である。1 回目と 2 回目がともに赤である確率は $\frac4{10}\cdot\frac39=\frac2{15}$ で $\bigl(\frac25\bigr)^2=\frac4{25}$ と異なり、各回の結果が独立でないからである。この $X$ は「各回の成功確率がどれも $\frac25$」という性質を満たすが、「各回が互いに独立」という性質を満たさず、二項分布にならない。$X$ の分布を超幾何分布という(GrS06 §5.1、p. 193)。期待値は線形性により $3\cdot\frac25=\frac65$ で二項分布と同じだが、分散は $E[X^2]-E[X]^2=2-\frac{36}{25}=0.56$ で、$B(3,\frac25)$ の分散 $3\cdot\frac25\cdot\frac35=0.72$ より小さい。
互いに独立な $X_1,X_2$ で、$X_1$ は $0,1$ を確率 $\frac12$ ずつとり、$X_2$ はつねに $1$ をとる($P(X_2=1)=1$)とする。$X_1+X_2$ は $1,2$ を確率 $\frac12$ ずつとる。もしこれが $B(2,q)$ に従うなら、$b(2,q,0)=(1-q)^2=0$ から $q=1$ となり、$b(2,1,2)=1\ne\frac12$ となって矛盾する。したがって $X_1+X_2$ はどんな $q$ についても二項分布に従わない。この 2 つの確率変数は「互いに独立」という性質を満たすが、「成功確率が共通」という性質を満たさない。独立性がない場合も同様で、$X_1$ を公平な硬貨の表の指示確率変数とし $X_2:=X_1$ とすると、$X_1+X_2=2X_1$ は $0,2$ を確率 $\frac12$ ずつとり、$P(X_1+X_2=1)=0$ なので $2q(1-q)=0$、すなわち $q\in\{0,1\}$ となるが、そのとき $P(X_1+X_2=0)$ は $1$ か $0$ で $\frac12$ にならない。prop-bindist-count の 2 つの仮定(独立性と共通の成功確率)はどちらも外せない。
条件を 1 つ外した反例を表にまとめる。各行の確認は上の反例の箱にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 各回が互いに独立(prop-bindist-count) | 赤玉 4・白玉 6 から戻さずに 3 個取り出したときの赤玉の個数 | 成功の回数が $B(n,p)$ に従う |
| 成功確率が共通(prop-bindist-count) | 独立な $X_1$($0,1$ を確率 $\frac12$ ずつ)と $X_2\equiv1$ | 和が二項分布に従う |
| 互いに独立(prop-bindist-sum の型の和) | $X_2:=X_1$(公平な硬貨の表の指示確率変数) | 和が二項分布に従う |
以下、$n\geq1$、$0\leq p\leq1$ とし、$b(k):=b(n,p,k)$ と略記することがある。
確率変数 $X$ が $B(n,p)$ に従うならば
$$
E[X]=np,\qquad V[X]=np(1-p)
$$
である。
$1\leq k\leq n$ で $k\binom nk=n\binom{n-1}{k-1}$、$2\leq k\leq n$ で $k(k-1)\binom nk=n(n-1)\binom{n-2}{k-2}$ である(階乗で書けば両辺とも $\frac{n!}{(k-1)!(n-k)!}$、$\frac{n!}{(k-2)!(n-k)!}$)。$X$ は確率 $1$ で有限集合 $\{0,\dots,n\}$ の値をとるので、期待値は分布から計算できる(確率変数 の記事の命題「確率変数の関数の分布と期待値」)。$k=0$ の項は $0$ なので、$j=k-1$ とおいて
$$
E[X]=\sum_{k=1}^nk\binom nkp^k(1-p)^{n-k}=np\sum_{j=0}^{n-1}\binom{n-1}jp^j(1-p)^{n-1-j}=np
$$
である。最後の等号は 二項定理 による($n=1$ のときも和は $1$)。同様に、$n\geq2$ なら
$$
E[X(X-1)]=\sum_{k=2}^nk(k-1)\binom nkp^k(1-p)^{n-k}=n(n-1)p^2\sum_{j=0}^{n-2}\binom{n-2}jp^j(1-p)^{n-2-j}=n(n-1)p^2
$$
であり、$n=1$ なら $X(X-1)$ はつねに $0$ なので、この式は $n=1$ でも成り立つ。よって
$$
V[X]=E[X^2]-E[X]^2=E[X(X-1)]+E[X]-E[X]^2=n(n-1)p^2+np-n^2p^2=np(1-p)
$$
である(分散 の記事の命題「分散の基本公式」の 1 と、期待値 の記事の定理「期待値の線形性」)。
同じ結果は、$X$ を独立な指示確率変数の和とみて、期待値の線形性(期待値 の記事の例「表の回数」)と独立な確率変数の分散の加法性(分散 の記事の例「二項分布の分散」)からも得られる。上の証明は、分布 $b(n,p,k)$ だけを使っており、$X$ がどの確率空間の上にあるかによらない。公平な硬貨 100 回の表の回数では $E[X]=50$、$V[X]=25$、標準偏差は $5$ である。
$0< p<1$ とし、$m:=\lfloor(n+1)p\rfloor$($(n+1)p$ 以下の最大の整数)とする。
1:$0< p<1$ なので $b(k)>0$ である。$\binom nk\Big/\binom n{k-1}=\frac{n-k+1}k$ なので、比は主張の式になる。分母を払うと、$b(k)>b(k-1)$ は $(n-k+1)p>k(1-p)$、すなわち $(n+1)p>k$ と同値である。等号・逆向きの不等号も同様である。
2:$0<(n+1)p< n+1$ なので $0\leq m\leq n$ である。$(n+1)p$ が整数でないとき、$1\leq k\leq m$ なら $k\leq m<(n+1)p$ なので $b(k)>b(k-1)$、$m+1\leq k\leq n$ なら $k>(n+1)p$ なので $b(k)< b(k-1)$ である。よって $b(0)< b(1)<\cdots< b(m)>b(m+1)>\cdots>b(n)$ であり、最大値をとるのは $k=m$ だけである。$(n+1)p$ が整数のとき、$m=(n+1)p$ は $1\leq m\leq n$ を満たし、$1\leq k\leq m-1$ で $b(k)>b(k-1)$、$k=m$ で $b(m)=b(m-1)$、$m+1\leq k\leq n$ で $b(k)< b(k-1)$ である。よって最大値をとるのは $k=m-1,m$ だけである。
3:$m$ の定義から $(n+1)p-1< m\leq(n+1)p$ であり、$(n+1)p-1=np-(1-p)$、$(n+1)p=np+p$ である。$0< p<1$ なので両端は $np$ から $1$ 未満しか離れていない。
$B(10,\frac12)$ では $(n+1)p=5.5$ で最大は $k=5$ だけである。$B(9,\frac12)$ では $(n+1)p=5$ が整数で、$b(9,\frac12,4)=b(9,\frac12,5)=\frac{126}{512}$ の 2 か所が最大である。冒頭のくじ($B(100,0.02)$)では $(n+1)p=2.02$ で、当たりが 2 回の確率 $0.2734\ldots$ が最大であり、1 回の確率 $0.2706\ldots$ をわずかに上回る。GrS06 p. 99 は、グラフから最大の確率が $np$ のあたりで起こることを観察している。
同じ離散確率空間の上の確率変数 $X,Y$ が互いに独立で、$X$ が $B(m,p)$、$Y$ が $B(n,p)$ に従う(成功確率 $p$ が共通)ならば、$X+Y$ は $B(m+n,p)$ に従う。
$X,Y$ は確率 $1$ でそれぞれ $\{0,\dots,m\}$、$\{0,\dots,n\}$ の値をとる。$0\leq s\leq m+n$ について、独立な確率変数の和の分布の式(確率変数 の記事の命題「周辺分布と和の分布」の 3)により、範囲外の二項係数を $0$ として
$$
P(X+Y=s)=\sum_{k=0}^{s}\binom mkp^k(1-p)^{m-k}\binom n{s-k}p^{s-k}(1-p)^{n-s+k}=p^s(1-p)^{m+n-s}\sum_{k=0}^s\binom mk\binom n{s-k}
$$
である(確率 $0$ の値は和に寄与しない)。二項係数 の記事の系「二変数の Vandermonde の公式」により右辺の和は $\binom{m+n}s$ なので、$P(X+Y=s)=b(m+n,p,s)$ である。
これは「$m$ 回の Bernoulli 試行のあとに、独立に $n$ 回続ける」と成功の回数が足し合わされることを表す。成功確率が共通でない場合や独立でない場合には、和は二項分布にならない(ex-bindist-unequal)。
$\lambda>0$ とする。確率変数 $X$ が、すべての整数 $k\geq0$ について
$$
P(X=k)=e^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}
$$
を満たすとき、$X$ はパラメータ $\lambda$ の Poisson 分布に従うという。
指数関数 の記事の定義「指数関数」により $\sum_{k\geq0}\lambda^k/k!=e^\lambda$ なので、右辺の $k$ についての和は $1$ であり、この右辺は $\{0,1,2,\dots\}$ の上の離散確率空間を定める。
$\lambda>0$ を固定し、$n>\lambda$ について $p_n:=\lambda/n$ とする。このとき、すべての整数 $k\geq0$ について
$$
\lim_{n\to\infty}b(n,p_n,k)=e^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}
$$
である。
$k$ を固定し、$n>\max(k,\lambda)$ とする。$\binom nk=\frac{n(n-1)\cdots(n-k+1)}{k!}$ と $p_n=\lambda/n$ を代入して並べ替えると
$$
b(n,p_n,k)=\frac{\lambda^k}{k!}\cdot\prod_{j=0}^{k-1}\Bigl(1-\frac jn\Bigr)\cdot\Bigl(1-\frac\lambda n\Bigr)^n\cdot\Bigl(1-\frac\lambda n\Bigr)^{-k}
$$
である($k=0$ のとき積は $1$)。$n\to\infty$ で、有限個($k$ 個)の因子の積 $\prod_j(1-\frac jn)$ は $1$ に、$(1-\frac\lambda n)^{-k}$ も $1$ に収束する。指数関数 の記事の命題「複利の極限」を $x=-\lambda$ に使うと $(1-\frac\lambda n)^n\to e^{-\lambda}$ である。極限の積は積の極限なので主張を得る。
GrS06 §5.1(pp. 188–189)は、一定の時間に稀な出来事が起こる回数を、時間を $n$ 等分した Bernoulli 試行で表し、隣り合う確率の比 $\frac{b(n,p,k)}{b(n,p,k-1)}=\frac{\lambda-(k-1)p}{kq}$($q=1-p$、$np=\lambda$)が $\lambda/k$ に近いことから同じ近似を導いている。同書 Table 5.1(p. 190)には数値の比較があり、たとえば $n=100$、$p=0.01$ で $b(100,0.01,0)=0.3660$、$e^{-1}=0.3679$ である。冒頭のくじでは $\lambda=np=2$ で、当たりの回数 $k=0,1,2,3$ の確率は二項分布で $0.1326$、$0.2707$、$0.2734$、$0.1823$、Poisson 分布で $0.1353$、$0.2707$、$0.2707$、$0.1804$ である(小数第 5 位を四捨五入)。成功が稀で試行の回数が多いときは、$n$ と $p$ を別々に知らなくても平均 $\lambda=np$ だけで分布が近似できる。
$p$ を固定して $n$ を大きくすると、$B(n,p)$ に従う $X$ を標準化した $\frac{X-np}{\sqrt{np(1-p)}}$ の分布は標準正規分布に近づく。これが de Moivre–Laplace の定理で、中心極限定理 の記事で Stirlingの公式 から証明する。公平な硬貨 100 回で表が 40〜60 回になる確率は正確に $0.9648\ldots$ で、正規分布による近似でもほぼ同じ値が得られる(中心極限定理 の記事の例「硬貨 100 回で表が 40 回以上 60 回以下」)。Poisson 近似は $np$ が一定のまま $n\to\infty$ とする場合、正規近似は $p$ が一定のまま $n\to\infty$ とする場合の近似であり、状況が異なる。
$B(n,p)$ に従う $X$ について $E[t^X]=\sum_kb(n,p,k)t^k=(1-p+pt)^n$ である(二項定理)。$(1-p+pt)^n$ は $B(1,p)$ の $1-p+pt$ の $n$ 乗であり、prop-bindist-sum は $(1-p+pt)^m(1-p+pt)^n=(1-p+pt)^{m+n}$ に対応する。このような多項式・冪級数を使う方法は 母関数 の記事の「確率母関数」の節で扱う。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する