p進整数(p-adic integers)とは、すべての $p^n$ を法とする両立した剰余類の列からなる環であり、p進数体の閉単位球に一致する。逆極限と桁表示から有限商・完備性を説明し、単元判定と全イデアルの分類により完備離散付値環であることを示す。合同フィルトレーションと Hensel の補題による根の持ち上げにもつなぐ。
一つの素数 $p$ を固定する。通常の整数を $p$、$p^2$、$p^3$、さらに高い冪で割った余りを、互いに矛盾しないように全段階で指定したものが p進整数(p-adic integer)である。p進数体 $\mathbb Q_p$ の中では、p進絶対値が $1$ 以下の元として同じ集合が得られる。この集合は足し算と掛け算で閉じた環 $\mathbb Z_p$ となる(Ser79 Chapter I, §§1–2)。
p進数の記事は $\mathbb Q_p$ を有理数の完備化として構成し、その部分環 $\mathbb Z_p$ と逆極限・桁表示も導いている。ここでは 整数環として何が起こるか に焦点を移す。どの元が可逆か、どんなイデアルがあるか、有限環への射がどう働くかを証明し、最後にHenselの補題を使う場所を具体的に示す。体の完備化の一般論や根の持ち上げ定理の広い形は、それぞれの既存記事に委ねる。
$R_n=\mathbb Z/p^n\mathbb Z$ とする。$m\ge n$ なら剰余を取る環準同型 $R_m\to R_n$ がある。両立する列とは $a_n\in R_n$ を各 $n\ge1$ について選び、$a_{n+1}\equiv a_n\pmod{p^n}$ を満たす列 $(a_n)$ である。和と積は各 $R_n$ で計算し、その結果も両立する。これを逆極限と書く。
$$
\mathbb Z_p:=\varprojlim_{n\ge1}\mathbb Z/p^n\mathbb Z
$$
を p進整数環 という。元は両立する剰余類の列で、自然な環準同型 $\rho_n:\mathbb Z_p\to\mathbb Z/p^n\mathbb Z$ は第 $n$ 成分を取り出す。通常の整数 $a$ は列 $(a\bmod p^n)_n$ に写る。
同じ環は $\{x\in\mathbb Q_p:|x|_p\le1\}$ と同一視できる。前者は有限個の余りを並べる構成、後者はp進距離での閉単位球という構成である。既存のp進数の記事で両者の位相環同型が証明されている。ここでは逆極限表示から、整数環の算術に必要な性質を直接取り出す(Ser79 Chapter I, §2、Sta0323 Definition 10.160.1)。
各 $x\in\mathbb Z_p$ には唯一の桁列 $d_0,d_1,\ldots\in\{0,1,\ldots,p-1\}$ があり、全ての $n\ge1$ について
$$
\rho_n(x)=\sum_{i=0}^{n-1}d_ip^i\pmod{p^n}
$$
となる。記号 $x=\sum_{i=0}^{\infty}d_ip^i$ は、この全ての合同式を同時に表す。
$\rho_1(x)$ の代表から $d_0$ が一意に決まる。$d_0,\ldots,d_{n-1}$ が決まり、その部分和が $\rho_n(x)$ に等しいとする。$\rho_{n+1}(x)$ は同じ剰余類を法 $p^n$ に落とすから、代表の差は $p^n$ の倍数である。この倍数を法 $p$ で読めば唯一の $d_n\in\{0,\ldots,p-1\}$ が定まり、次の段階の式が成り立つ。帰納法で全桁を得る。逆に任意の桁列の有限部分和は両立する剰余類を作るので一つの $x$ を定める。二つの桁列が同じ $x$ を与えれば、最初に異なる桁がある段階の剰余類が異なるはずで矛盾する。$\square$
これは通常の十進展開と向きが異なる。高い冪ほどp進距離では小さくなるため、右へ無限に桁を足せる。例えば $\sum_{i=0}^{n-1}(p-1)p^i=p^n-1$ だから、全ての $n$ で $-1\equiv\sum_{i=0}^{n-1}(p-1)p^i\pmod{p^n}$ となり、$-1=\sum_{i\ge0}(p-1)p^i$ と表される。桁が無限に続いても、有限段階ごとの余りは完全に決まっている。
通常の整数からの写像 $\mathbb Z\to\mathbb Z_p$ は単射である。整数 $a$ が全ての $p^n$ で零になるなら、$a$ は全ての $p^n$ で割り切れ、$a=0$ だからである。各 $x$ の先頭 $n$ 桁を通常の非負整数と見れば、$x$ と法 $p^n$ で一致する。したがって通常の整数は $\mathbb Z_p$ に稠密だが、全体ではない。桁列は無限個の独立な選択を持ち、$\mathbb Z_p$ は非可算である一方、$\mathbb Z$ は可算だからである。
$x\equiv y\pmod{p^n}$ を $\rho_n(x)=\rho_n(y)$ と定める。この合同関係を使い、$p^n\mathbb Z_p$ を零と法 $p^n$ で一致する元の集合と見る。次節でこれが通常の主イデアル $p^n\mathbb Z_p$ に等しいことを証明する。$n$ を大きくするほど合同は強くなり、「十分多くの初めの桁が同じ」元ほど近い。
全ての $n\ge1$ について $\rho_n$ は全射で、$\ker\rho_n=p^n\mathbb Z_p$ である。従って $\mathbb Z_p/p^n\mathbb Z_p\cong\mathbb Z/p^n\mathbb Z$ であり、自然な写像
$$
\mathbb Z_p\longrightarrow\varprojlim_n\mathbb Z_p/p^n\mathbb Z_p
$$
は同型である。特に $\bigcap_np^n\mathbb Z_p=0$ で、$\mathbb Z_p$ は $(p)$ 進位相について分離かつ完備である。
$\rho_n$ の任意の元は整数代表を持ち、その整数が $\mathbb Z_p$ に入るので全射である。$x\in\ker\rho_n$ なら、桁表示の先頭 $n$ 桁は零である。残りを $n$ 桁ずらした桁列 $y=\sum_{i\ge0}d_{n+i}p^i$ が $\mathbb Z_p$ の元を定め、$x=p^ny$ となる。逆に $p^ny$ は法 $p^n$ で零だから、核は $p^n\mathbb Z_p$。第一同型定理で有限商の式が出る。商を全ての $n$ について並べると、最初の定義と同じ両立列を得るため自然な写像は同型である。全ての $p^n\mathbb Z_p$ に入る元は全桁が零なので零元だけである。$\square$
Stacks は一般の局所環 $(R,\mathfrak m)$ について、$R\to\varprojlim_nR/\mathfrak m^n$ が同型であることを完備局所環の定義に採用する(Sta0323 Definition 10.160.1)。この例では $\mathfrak m=(p)$ となることを次節で示す。従って上の同型は単なる記号の言い換えではなく、環を有限商から完全に復元できるという性質である。有限段階の計算を全て両立させたとき初めて、無限桁の一つの元が得られる。
$x\ne0$ の桁列で初めて零でない桁が現れる位置を $v_p(x)$ とし、$v_p(0)=\infty$ とする。例えば $p^r$ では $v_p(p^r)=r$、$-1$ では最初の桁が $p-1$ なので $v_p(-1)=0$ である。$x=p^ru$ と書くと、$u$ の最初の桁は零でない。$u$ が可逆であることを示せば、全ての非零元がこの形に一意に分解される(Ser79 Chapter I, §1)。
$u\in\mathbb Z_p$ について、次は同値である。
$u$ が可逆なら $\rho_1(u)$ も $\mathbb F_p$ で可逆なので零でない。逆に $\rho_1(u)\ne0$ とする。整数 $a$ を $a\rho_1(u)=1$ となるように選ぶ。前節の核の計算から $au=1+pz$ となる $z\in\mathbb Z_p$ がある。有限和 $S_N=\sum_{j=0}^{N-1}(-pz)^j$ は $(1+pz)S_N=1-(-pz)^N$ を満たす。$(-pz)^N\in p^N\mathbb Z_p$ なので零に収束し、完備性により $S_N$ は $S\in\mathbb Z_p$ に収束する。従って $(1+pz)S=1$、ひいては $u(aS)=1$ である。最初の桁が零であることは $u\in p\mathbb Z_p$ と同値であり、そこに属する元は法 $p$ で零となるため単元ではない。従って単元でない元の集合がちょうどイデアル $p\mathbb Z_p$ となり、これは唯一の極大イデアルである。$\square$
有限環 $\mathbb Z/p^n\mathbb Z$ には $n>1$ のとき零因子がある。しかし逆極限の $\mathbb Z_p$ は整域である。$x=p^ru$ と $y=p^sv$ が非零なら、$u,v$ は単元なので $xy=p^{r+s}uv\ne0$ である。ここで $p^{r+s}$ が零でないことは、整数 $\mathbb Z\to\mathbb Z_p$ の単射性による。有限商の性質をそのまま極限の環へ移してはいけない。
$\mathbb Z_p$ のイデアルは、零イデアルと $p^r\mathbb Z_p$($r=0,1,2,\ldots$)に限る。各非零元は一意に $p^ru$($r\ge0$、$u$ は単元)と書ける。従って $\mathbb Z_p$ は一つの素元 $p$ を持つ完備な離散付値環である(Sta0323 Definition 10.160.5 と Lemma 10.160.6)。
桁列の初めの非零位置を $r$ とする元 $x$ は、最初の $r$ 桁が零なので $x=p^ru$ と書ける。次の桁は零でないから $u$ は単元である。もし $p^ru=p^sv$ で $r< s$ なら、前者は法 $p^{r+1}$ で零でなく、後者は零となって矛盾するので $r$ は一意である。零でないイデアル $I$ に属する非零元の付値の集合は非負整数の空でない部分集合だから、最小値 $r$ を持つ。$x=p^ru\in I$ を選べば $u^{-1}x=p^r\in I$ なので $p^r\mathbb Z_p\subset I$。一方、$I$ の全ての元の付値は $r$ 以上で、全て $p^r\mathbb Z_p$ に属する。ゆえに等号。全イデアルが主イデアルで、極大イデアルは $(p)$、非零元の付値は非負整数に値をとるため、離散付値環の条件を満たす。完備性は前節の有限商の同型から従う。$\square$
この分類は、素イデアルが $(0)$ と $(p)$ だけで、Krull 次元が1であることも示す。$\mathbb Z_p$ の分数体は $\mathbb Q_p$ であり、任意の非零 $x\in\mathbb Q_p$ は付値に応じて $p$ の整数冪を掛ければ $\mathbb Z_p$ の単元になる。従って $\mathbb Q_p=\mathbb Z_p[1/p]$ と書ける。p進数の記事が体の性質を扱うのに対し、整数環では「非零元のうちどこまで逆元を許すか」を $v_p(x)\ge0$ という条件で決める。
Stacks は標数 $p$ の剰余体を持ち、素数 $p$ 自身を一様化元とする完備離散付値環を Cohen 環 と呼び、$\mathbb Z_p$ を $\mathbb F_p$ に対する基本例として挙げる(Sta0323 Definitions 10.160.4–5, Lemma 10.160.6)。$\mathbb Z_p$ 自身の標数は零で、$\mathbb Z_p/(p)$ の標数は $p$ である。この二つの標数が異なることを混標数という。見た目が似た形式的冪級数環 $\mathbb F_p\lbrack\lbrack t\rbrack\rbrack$ も完備離散付値環だが、環全体の標数が $p$ なので $\mathbb Z_p$ と同型ではない。
単元判定は「法 $p$ で零でない」だけだが、法 $p^n$ を見ると単元群の中の細かい層が現れる。$n\ge1$ に対し $U_n:=1+p^n\mathbb Z_p$ と置く。これは $\mathbb Z_p^\times$ の部分群であり、$U_{n+1}\subset U_n$。$U_n$ の元は法 $p^n$ で $1$ に等しい単元である。
各 $n\ge1$ について自然な群同型
$$
\mathbb Z_p^\times/U_n\cong(\mathbb Z/p^n\mathbb Z)^\times,
\qquad U_n/U_{n+1}\cong(\mathbb F_p,+)
$$
がある。右側の二つ目は加法群としての同型である。
単元 $u$ を法 $p^n$ に写せば有限環の単元になる。逆に有限環の単元は $p$ と互いに素な整数代表を持ち、この整数は $\mathbb Z_p$ の単元だから、写像は全射である。核は $u\equiv1\pmod{p^n}$、すなわち $U_n$ であり、第一の同型が従う。第二には $1+p^na\mapsto a\bmod p$ を用いる。$1+p^na=1+p^nb$ なら $a=b$ なので表示は一意である。積は
$$
(1+p^na)(1+p^nb)=1+p^n(a+b)+p^{2n}ab
$$
であり、$2n\ge n+1$ だから $p^{2n}ab$ は法 $p^{n+1}$ で消える。従ってこの写像は商 $U_n/U_{n+1}$ から $\mathbb F_p$ の加法群への全射準同型で、核は $U_{n+1}$ である。$\square$
例えば $p=5$ なら $1+5a$ の法 $25$ における違いは $a\bmod5$ で決まる。二つの単元 $(1+5a)(1+5b)$ を法 $25$ で掛けると $1+5(a+b)$ となり、乗法の一段の差が加法に見える。この仕組みは、有限商の単元群を計算するときや、合同条件を一桁ずつ強めるときに使う。$U_n$ を一つの巨大な群として捉えるだけでは、段階ごとの情報を見失う。
桁から $v_p(x-y)$ を読み、$d_p(x,y)=p^{-v_p(x-y)}$($x=y$ では零)と定める。$x\equiv y\pmod{p^n}$ は $d_p(x,y)\le p^{-n}$ と同値である。この距離では三角不等式より強い $d_p(x,z)\le\max\{d_p(x,y),d_p(y,z)\}$ が成り立つ。差がともに $p^n$ の倍数なら和も $p^n$ の倍数という、合同式の事実を全 $n$ に当てはめればよい。
$\mathbb Z_p$ の列 $(x_m)$ がp進距離で Cauchy 列であることは、各 $n$ について剰余類 $\rho_n(x_m)$ が十分後で一定になることと同値である。その安定値を $a_n$ とすれば $(a_n)$ は両立列で、$x_m$ はそれが定める $x\in\mathbb Z_p$ に収束する。
Cauchy 条件で距離が $p^{-n}$ 以下になることは、十分後の全ての $m,l$ で $x_m\equiv x_l\pmod{p^n}$ となることそのものである。従って各 $n$ で剰余類が安定する。$n+1$ 段階の安定値を $n$ 段階へ落とすと後者の安定値になるので、$(a_n)$ は両立する。定義によりこの列は $x\in\mathbb Z_p$ を与える。固定した $n$ では十分後に $x_m\equiv x\pmod{p^n}$ となるから $d_p(x_m,x)\le p^{-n}$。$n$ を任意に大きくできるので収束する。逆向きは、収束列が Cauchy 列であることから従う。$\square$
各 $n$ について $\mathbb Z_p$ は $p^n$ 個の剰余類で覆われ、各類の直径は高々 $p^{-n}$ である。従って全有界で、上の完備性と合わせてコンパクトになる。また各剰余類は開かつ閉である。実数の整数全体 $\mathbb Z$ は通常の距離では離散で非コンパクトだが、p進距離の整数環 $\mathbb Z_p$ はコンパクトな位相環となる。ここでのコンパクト性は通常の大小順序による有界性ではなく、有限段階の余りが各段階で有限個しかないことに由来する。
単純根の持ち上げは、$\mathbb Z_p$ の二つの性質を同時に使う。$p\mathbb Z_p$ が唯一の極大イデアルなので「導関数が法 $p$ で非零」は導関数が単元であることを意味する。また $(p)$ 進完備性が、全ての有限段階で得た解を一つの元にまとめる。Stacks は一般の完備局所環が Hensel 的であることを示している(Sta04GE Definition 10.153.1, Lemma 10.153.9)。根の持ち上げの証明と Newton 反復の精度評価はHenselの補題に譲り、ここでは有限商と整数環のつながりを計算する。
$f(T)=T^2+1$ とする。法 $5$ では $f(2)=5\equiv0$、$f'(2)=4\not\equiv0$ なので、$2$ を法 $5$ とする唯一の根 $\alpha\in\mathbb Z_5$ がある。法 $25$ で $x=2+5t$ と置くと
$$
f(2+5t)=5+20t+25t^2\equiv5(1+4t)\pmod{25}.
$$
従って $1+4t\equiv0\pmod5$、すなわち $t\equiv1\pmod5$ で、$\alpha\equiv7\pmod{25}$ となる。さらに法 $5^3,5^4,\ldots$ へ一桁ずつ伸ばした解が両立し、その列が $\alpha$ を定める。もう一つの法 $5$ の根 $3$ からは、$-\alpha$ に当たる別の $5$ 進整数が得られる。
この例では「法 $5$ の根が二つある」ことと「各剰余類で持ち上げが一意」ということが両立する。単純根条件は根全体を一つにするのでなく、指定した法 $p$ の根を固定するとその上の持ち上げを一意にする条件である。導関数が法 $p$ で零になる場合は、根が全く持ち上がらないことも、複数通りに持ち上がることもある。例えば $T^2$ は法 $p$ で零を根に持つが、導関数も零であり、単純根版の定理からは結論を出せない。
ここで $\mathbb Z_p$ を先に局所環として理解しておく利点がある。$f'(a_0)\bmod p$ が非零なら、どの近似 $a_n$ でも $f'(a_n)$ の剰余は同じ非零元なので、$f'(a_n)$ は $\mathbb Z_p$ の単元である。Newton 型の更新で逆元が使える理由はこの単元判定に帰着する。そして更新を無限回続けた極限が環の中に残る理由は完備性である。有限商、単元、完備性は別々の事実に見えて、根を持ち上げる一つの手順でつながる。
| 環・体 | 元の見方 | 主な違い |
|---|---|---|
| $\mathbb Z/p^n\mathbb Z$ | 法 $p^n$ の有限個の余り | $n>1$ では零因子があり、標数は $p^n$ |
| $\mathbb Z_{(p)}$ | 分母が $p$ で割れない有理数 | 局所環だが $(p)$ 進完備でない |
| $\mathbb Z_p$ | 全段階で両立する余り | 完備な離散付値環、標数零 |
| $\mathbb Q_p$ | p進距離による有理数の完備化 | $p$ の逆元も含む体 |
| $\mathbb F_p\lbrack\lbrack t\rbrack\rbrack$ | 形式的冪級数 | 完備離散付値環だが標数 $p$ |
$\mathbb Z_{(p)}$ から $\mathbb Z_p$ への写像は稠密だが全射でない。前者は有理数の部分集合なので可算であり、後者には各桁に少なくとも二通りを選べる無限列が入るため非可算だからである。反対に、$\mathbb Z_p$ から有限商への射は全て全射で、各段階の情報は失われず保持される。$\mathbb Q_p$ との境界は $p$ の逆元の有無で、$\mathbb F_p\lbrack\lbrack t\rbrack\rbrack$ との境界は環全体の標数で決まる。名前や見た目が似た環を扱うときは、剰余体だけでなく環の標数と完備性も確認する。
上の表の環を使って、本文の命題の仮定を外すと結論が崩れることを確かめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 全段階をまとめること(逆極限) | $\mathbb Z/p^n\mathbb Z$($n\ge2$)の $p\cdot p^{n-1}=0$ | 整域であること |
| 完備性(prop-p-adic-integers-units の証明で使う) | $\mathbb Z$ の $u=2$、$p=3$ | 最初の桁が零でなければ単元 |
| 完備性(prop-p-adic-integers-metric-complete) | $\mathbb Z_{(5)}$ の中の、$a_n^2\equiv-1\pmod{5^n}$ を満たす整数列 | Cauchy 列が収束すること |
| $n\ge1$(prop-p-adic-integers-unit-filtration) | $n=0$、$U_0=\mathbb Z_p^\times$ | $U_n/U_{n+1}\cong(\mathbb F_p,+)$ |
| $\lvert x\rvert_p\le1$(整数であること) | $\mathbb Q_p$ の列 $p^{-m}$ | コンパクト性 |
$p=3$ とし、整数環 $\mathbb Z$ の $u=2$ を考える。$2\bmod3\ne0$ だから最初の $3$ 進桁は零でない。しかし $2x=1$ を満たす整数 $x$ はないので、$2$ は $\mathbb Z$ の単元ではない。prop-p-adic-integers-units の証明では $a=2$ とすると $au=4=1+3\cdot1$($z=1$)であり、幾何級数 $S=\sum_{j\ge0}(-3)^j$ は $\mathbb Z_3$ で $1/(1+3)=1/4$ に収束し、$aS=2S$ が $2$ の逆元になる。部分和 $S_N$ はどれも整数だが、極限 $1/4$ は整数でないので、$\mathbb Z$ の中には極限がない。破るのは完備性(と局所性)であり、$\mathbb Z$ には $2\mathbb Z$ と $3\mathbb Z$ という二つの極大イデアルがあるので局所環でもない。
ex-p-adic-integers-hensel の手順で、整数 $a_1=2$、$a_2=7,\ldots$ を $a_n^2\equiv-1\pmod{5^n}$、$a_{n+1}\equiv a_n\pmod{5^n}$ を満たすように選ぶ。これは $\mathbb Z_{(5)}$(分母が $5$ で割れない有理数の環)の中の $5$ 進 Cauchy 列である。もし $\mathbb Z_{(5)}$ の元 $b$ に収束すれば、各 $n$ で $b^2\equiv a_n^2\equiv-1\pmod{5^n}$ となり、$b^2+1$ は全ての $5^n$ で割り切れるので $b^2=-1$ である。しかし有理数の平方は負にならない。したがって列は $\mathbb Z_{(5)}$ の中で収束しない。$\mathbb Z_{(5)}$ は局所環で単元判定も $\mathbb Z_5$ と同じだが、完備性だけが欠けている。
$U_0:=\mathbb Z_p^\times$ とおくと、第一の同型を $n=1$ で使って $U_0/U_1=\mathbb Z_p^\times/U_1\cong\mathbb F_p^\times$ である。これは位数 $p-1$ の群で、位数 $p$ の $(\mathbb F_p,+)$ と同型でない。prop-p-adic-integers-unit-filtration の証明で使った「$p^{2n}ab$ は法 $p^{n+1}$ で消える」は $2n\ge n+1$、すなわち $n\ge1$ を必要とし、$n=0$ では成り立たない。
最後の行について、$\mathbb Q_p$ の列 $x_m=p^{-m}$ は $\lvert x_m\rvert_p=p^m\to\infty$ なので、どの部分列も Cauchy 列にならず収束しない。したがって $\mathbb Q_p$ はコンパクトでない。$\mathbb Z_p$ のコンパクト性は、各段階の剰余類が有限個であることと、元の絶対値が $1$ 以下であることの両方に依存する。
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