有限群

同義語:finite group

概要

有限群(finite group)とは、元の個数が有限である群のことで、その元の個数を群の位数という。部分群の位数と元の位数は群の位数を割り(Lagrange の定理)、群の位数を割る素数 $p$ があれば位数 $p$ の元が存在する(Cauchy の定理)など、位数という 1 つの整数が群の構造を強く制約する。対称群 $S_n$、交代群 $A_n$、二面体群、有限体上の一般線形群 $GL_n(\mathbb{F}_q)$ が代表例で、Cayley の定理により位数 $n$ の有限群はすべて $S_n$ の部分群と同型である。一方 Lagrange の定理の逆は成り立たず、位数 $12$ の交代群 $A_4$ は位数 $6$ の部分群をもたない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 群, 部分群, 剰余類, Lagrangeの定理

正三角形を自分自身に重ねる動き(回転と裏返し)は 6 通り、立方体を自分自身に重ねる回転は 24 通りである(Jud25 Proposition 5.2.8)。このように、ものの対称性や入れ替えの操作は有限個の元からなる群をなすことが多い。元が有限個しかない群では、「元の個数」という 1 つの整数が群の構造を強く縛る。部分群の元の個数は全体の元の個数を割り(Lagrangeの定理)、逆に全体の元の個数を割る素数 $p$ があれば位数 $p$ の元が必ず現れる(Cauchy の定理)。有限群の理論は、このような「個数の算術」と群の作用を組み合わせて、群の構造を位数から読み取ろうとする理論である。

定義

有限群と位数

群 $G$ の元の個数が有限であるとき、$G$ を 有限群(finite group)といい、その元の個数 $\lvert G\rvert$ を $G$ の 位数(order)という。有限群でない群を無限群という。

群の位数は 群の位数 の記事でも扱われる。群 $G$ の元 $g$ について、$g^k=e$($e$ は単位元)となる最小の正の整数 $k$ を $g$ の 元の位数 といい $\operatorname{ord}(g)$ と書く(そのような $k$ がなければ位数は無限大という)。$\operatorname{ord}(g)$ は $g$ が生成する巡回群 $\langle g\rangle=\{g^k\mid k\in\mathbb{Z}\}$ の位数に等しい。
有限群では、どの元の位数も有限である。実際、$g,g^2,g^3,\dots$ は有限集合 $G$ の元なので、ある $i< j$ で $g^i=g^j$ となり、両辺に $g^{-i}$ を掛けて $g^{j-i}=e$ を得る。以下、$n$ 次の対称群を $S_n$、交代群を $A_n$、位数 $n$ の巡回群を $C_n$($\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ と同型)と書く。

例

位数の小さい有限群は、同型を除いて次の表のとおりである(位数 $8$ までの分類は 有限群の分類(位数1から100) の記事の表と例「位数8と位数12の群」による)。

位数同型類の個数アーベル群アーベル群でない群
$1$$1$$\{e\}$なし
素数 $p=2,3,5,7$$1$$C_p$なし
$4$$2$$C_4$、$C_2\times C_2$なし
$6$$2$$C_6$$S_3$
$8$$5$$C_8$、$C_4\times C_2$、$C_2\times C_2\times C_2$$\operatorname{Dih}_4$、$Q_8$

ここで $C_2\times C_2$ は Kleinの四元群、$\operatorname{Dih}_4$ は位数 $8$ の二面体群、$Q_8$ は四元数群である。素数位数の群がすべて巡回群であることは Lagrangeの定理 の記事の系「素数位数の群」で示されている。位数 $6$ 以下で可換でない群は $S_3$ だけで、これが最小の非可換群である。

置換の群と行列の群

代表的な有限群の族とその位数は次のとおりである。

  • 対称群 $S_n$($\{1,\dots,n\}$ の置換全体)の位数は $n!$、交代群 $A_n$(偶置換全体)の位数は $n\ge2$ で $n!/2$ である。
  • 正 $n$ 角形の対称性の群である二面体群 $\operatorname{Dih}_n$ の位数は $2n$ である。
  • $q$ 元からなる有限体 $\mathbb{F}_q$ の上の一般線形群 $GL_n(\mathbb{F}_q)$(可逆な $n$ 次正方行列の全体)の位数は
    $$ \lvert GL_n(\mathbb{F}_q)\rvert=(q^n-1)(q^n-q)(q^n-q^2)\cdots(q^n-q^{n-1}) $$
    である(prop-finite-group-gln)。たとえば $\lvert GL_2(\mathbb{F}_2)\rvert=(4-1)(4-2)=6$、$\lvert GL_2(\mathbb{F}_3)\rvert=8\cdot6=48$、$\lvert GL_3(\mathbb{F}_2)\rvert=7\cdot6\cdot4=168$ である。
  • 正の整数 $n$ について、$n$ と互いに素な剰余類のなす乗法群 $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ の位数は Eulerのφ関数 の値 $\varphi(n)$ である。これに Lagrangeの定理 の記事の系「元の位数」を当てはめたものが Eulerの定理(整数論) $a^{\varphi(n)}\equiv1\pmod n$ である。
有限体上の一般線形群の位数

$\mathbb{F}_q$ を $q$ 元からなる体とすると、$\lvert GL_n(\mathbb{F}_q)\rvert=\prod_{k=0}^{n-1}(q^n-q^k)$ である。

正方行列が可逆であることは、列ベクトル $v_1,\dots,v_n\in\mathbb{F}_q^n$ が 1 次独立であることと同値である(行列式が $0$ でないことと同値)。そこで 1 次独立な列を左から順に選ぶ方法を数える。$v_1$ は $0$ でない任意のベクトルで、$q^n-1$ 通りある。$v_1,\dots,v_k$ が 1 次独立に選ばれたとき、$v_{k+1}$ はそれらが張る $k$ 次元部分空間の外から選べばよく、その部分空間は $q^k$ 個の元をもつので $q^n-q^k$ 通りある。$v_1,\dots,v_{k+1}$ が 1 次独立であることは、$v_1,\dots,v_k$ が 1 次独立で $v_{k+1}$ がそれらの張る空間に属さないことと同値なので、この数え方で 1 次独立な列の並びがちょうど 1 回ずつ数えられる。よって可逆行列の個数は $\prod_{k=0}^{n-1}(q^n-q^k)$ である。$\square$

$S_3$ と $GL_2(\mathbb{F}_2)$ は同型である

$V=\mathbb{F}_2^2$ の $0$ でないベクトルは $u_1=(1,0)^\top$、$u_2=(0,1)^\top$、$u_3=(1,1)^\top$ の 3 つである。$A\in GL_2(\mathbb{F}_2)$ は $0$ でないベクトルを $0$ でないベクトルに移す全単射なので、$\{u_1,u_2,u_3\}$ の置換 $\pi_A$ を引き起こし、$A\mapsto\pi_A$ は群準同型 $GL_2(\mathbb{F}_2)\to S_3$ である。$\pi_A=\mathrm{id}$ なら $Au_1=u_1$、$Au_2=u_2$ なので $A$ は単位行列であり、この準同型は単射である。両辺の位数はどちらも $6$ なので、これは同型 $GL_2(\mathbb{F}_2)\cong S_3$ である。

基本的な性質

位数の算術

有限群 $G$ とその部分群 $H$ について、$G$ は $H$ の左剰余類に分割され、各剰余類の元の個数は $\lvert H\rvert$ なので
$$ \lvert G\rvert=[G:H]\,\lvert H\rvert $$
が成り立つ(剰余類 の記事の定理「有限群における位数と指数」、Jud25 Theorem 6.2.2)。とくに部分群の位数と元の位数は $\lvert G\rvert$ を割り、すべての $g\in G$ について $g^{\lvert G\rvert}=e$ である(Lagrangeの定理 の記事の系「元の位数」)。

有限な部分集合の部分群判定

$G$ を群、$H$ を $G$ の空でない有限部分集合とする。$H$ が積で閉じている($a,b\in H$ なら $ab\in H$)ならば、$H$ は $G$ の部分群である。とくに有限群では、空でない部分集合が部分群であるためには積で閉じていれば十分である。

$h\in H$ をとる。$H$ は積で閉じているので $h,h^2,h^3,\dots$ はすべて $H$ に属し、$H$ は有限なので、ある $1\le i< j$ で $h^i=h^j$ となる。$h^{-i}$ を掛けて $h^{j-i}=e$ である。よって $e=h^{j-i}\in H$ であり、$h^{-1}=h^{j-i-1}$ となる。$j-i\ge2$ なら $h^{j-i-1}$ は $h$ の正の冪なので $H$ に属し、$j-i=1$ なら $h=e$ で $h^{-1}=e\in H$ である。したがって $H$ は単位元を含み、積と逆元をとる操作で閉じているので部分群である。$\square$

位数が 2 以下の元だけからなる群

すべての元の位数が 2 以下の群

群 $G$ のすべての元 $x$ が $x^2=e$ を満たすならば、$G$ はアーベル群である。さらに $G$ が有限なら、ある $k\ge0$ について $\lvert G\rvert=2^k$ であり、$G\cong C_2\times\cdots\times C_2$($k$ 個)である。

$x^2=e$ は $x=x^{-1}$ を意味する。$a,b\in G$ について、$ab$ も $G$ の元なので
$$ ab=(ab)^{-1}=b^{-1}a^{-1}=ba $$
である。よって $G$ はアーベル群である。
$G$ が有限のとき、演算を加法 $+$ で書くと $x+x=0$ がすべての $x$ で成り立つ。2 元体 $\mathbb{F}_2=\{0,1\}$ の元によるスカラー倍を $0\cdot x=0$、$1\cdot x=x$ と定めると、$(1+1)x=x+x=0=0\cdot x$ などベクトル空間の公理がすべて成り立ち、$G$ は $\mathbb{F}_2$ 上のベクトル空間になる。$G$ は有限なので有限次元であり、次元を $k$ として基底をとれば、$G\cong\mathbb{F}_2^k$ である。$\mathbb{F}_2^k$ は加法群として $C_2$ の $k$ 個の直積であり、位数は $2^k$ である。$\square$

前半は有限性を使っていない。$C_2\times C_2$(Kleinの四元群)はこの命題の例であり、位数 $6$ の群 $S_3$ は位数 $3$ の元 $(1\ 2\ 3)$ をもつので、この命題の仮定を満たさない。

Cayley の定理

Cayleyの定理(有限群の場合)

位数 $n$ の有限群 $G$ は、$n$ 次の対称群 $S_n$ のある部分群と同型である。すなわち単射な群準同型 $G\to S_n$ が存在する。

$g\in G$ に対し、左からの積 $\lambda_g\colon G\to G$、$\lambda_g(x)=gx$ を考える。$\lambda_{g^{-1}}$ が逆写像なので $\lambda_g$ は $G$ の置換であり、$\lambda_g\lambda_h(x)=g(hx)=(gh)x=\lambda_{gh}(x)$ なので $g\mapsto\lambda_g$ は $G$ から $G$ の置換全体のなす群 $\operatorname{Sym}(G)$ への準同型である。$\lambda_g=\lambda_h$ なら単位元で値を比べて $g=\lambda_g(e)=\lambda_h(e)=h$ となるので、この準同型は単射である。$G$ の元に番号を付けて $G=\{x_1,\dots,x_n\}$ とすれば、$\operatorname{Sym}(G)$ は $S_n$ と同型である。$\square$

この準同型は $G$ の左正則表現と呼ばれる(Jud25 Theorem 9.1.12)。一般の群についての同じ主張は 対称群 の記事の定理「Cayleyの定理」にある。置換を置換行列(各行・各列に $1$ がちょうど 1 つある $0,1$ 行列)で表せば、どの体 $F$ についても $G$ は一般線形群 $GL_n(F)$ の部分群と同型になる。したがって有限群の研究は、原理的には対称群や行列群の部分群の研究である。

Cauchy の定理

Lagrangeの定理 の逆「$d$ が $\lvert G\rvert$ を割れば位数 $d$ の部分群がある」は一般には成り立たない(ex-finite-group-counterexamples)。しかし $d$ が素数なら成り立つ。

Cauchyの定理

$G$ を有限群、$p$ を $\lvert G\rvert$ を割る素数とする。このとき $G$ は位数 $p$ の元をもつ。したがって位数 $p$ の部分群(その元が生成する巡回群)をもつ。

集合
$$ X:=\{(x_1,x_2,\dots,x_p)\in G^p\mid x_1x_2\cdots x_p=e\} $$
を考える。$x_1,\dots,x_{p-1}$ を任意に選ぶと $x_p=(x_1\cdots x_{p-1})^{-1}$ がただ 1 つに決まるので、$\lvert X\rvert=\lvert G\rvert^{p-1}$ である。$p\mid\lvert G\rvert$ かつ $p-1\ge1$ なので、$p\mid\lvert X\rvert$ である。
$(x_1,\dots,x_p)\in X$ なら、巡回的にずらした $(x_2,\dots,x_p,x_1)$ も $X$ に属する。実際
$$ x_2\cdots x_px_1=x_1^{-1}(x_1x_2\cdots x_p)x_1=x_1^{-1}ex_1=e $$
である。このずらしを $\tau$ とすると $\tau^p=\mathrm{id}$ なので、巡回群 $C_p=\langle\tau\rangle$ が $X$ に作用する(群の作用)。
作用の各軌道の元の個数は $\lvert C_p\rvert=p$ の約数(群の作用 の記事の定理「軌道・安定化群定理」)、すなわち $1$ か $p$ である。軌道が 1 点になるのは $(x_1,\dots,x_p)$ がずらしで動かないとき、すなわち $x_1=x_2=\cdots=x_p=x$ で $x^p=e$ のときである。そのような $x$ の個数を $m$ とすると、$X$ は軌道に分割されるので
$$ \lvert X\rvert=m+p\cdot(\text{元が } p \text{ 個の軌道の個数}) $$
であり、$p\mid\lvert X\rvert$ から $p\mid m$ である。$x=e$ は条件を満たすので $m\ge1$、したがって $m\ge p\ge2$ であり、$e$ でない $x$ で $x^p=e$ となるものがある。$p$ は素数なので $\operatorname{ord}(x)$ は $p$ の約数で $1$ でない、すなわち $\operatorname{ord}(x)=p$ である。$\square$

Jud25 Theorem 15.1.1 は類等式と帰納法による別の証明を与え、Sylowの定理 の記事の系「素数位数の元の存在」は Sylow の定理から導いている。上の証明では、$m$ が $p$ の倍数であることから、位数 $p$ の元の個数は $m-1\equiv-1\pmod p$ であることも分かる。

位数が素数冪であることの判定

$p$ を素数とする。有限群 $G$ について、すべての元の位数が $p$ の冪であることと、$\lvert G\rvert$ が $p$ の冪であることは同値である。

$\lvert G\rvert=p^k$ なら、各元の位数は $\lvert G\rvert$ の約数なので $p$ の冪である(Lagrangeの定理 の記事の系「元の位数」)。逆に $\lvert G\rvert$ が $p$ と異なる素数 $q$ で割り切れれば、thm-finite-group-cauchy により位数 $q$ の元があり、その位数は $p$ の冪でない。$\square$

このような群を有限 $p$ 群という(Jud25 Corollary 15.1.2)。有限 $p$ 群の中心は自明でない(群の中心 の記事の定理「有限 $p$-群の中心は自明でない」)。

有限群の構造の全体像

有限群の理論の主な結果と、Mathpedia でそれを扱う記事は次のとおりである。

結果内容扱う記事
Lagrange の定理部分群の位数は群の位数を割るLagrangeの定理、剰余類
軌道・安定化群定理軌道の大きさは安定化群の指数群の作用
類等式$\lvert G\rvert=\lvert Z(G)\rvert+\sum[G:C_G(x_i)]$群の中心
Sylow の定理位数 $p^r$(最大)の部分群の存在・共役・個数Sylowの定理
有限アーベル群の基本定理有限アーベル群は巡回群の直積有限アーベル群の基本定理
小さい位数の分類位数 $100$ までの同型類の個数有限群の分類(位数1から100)
$A_n$ の単純性$n\ge5$ で $A_n$ は単純群交代群

有限群をより小さな群に分解する基本の道具は組成列である。正規部分群 $N$ による剰余群 $G/N$ と $N$ から $G$ を組み立てると考えると、それ以上分解できない群、すなわち自分自身と $\{e\}$ 以外に正規部分群をもたない単純群が「素材」にあたる。有限群 $G$ の部分群の列
$$ G=H_0\supset H_1\supset\cdots\supset H_r=\{e\} $$
で、各 $H_{i+1}$ が $H_i$ の正規部分群であり、各商 $H_i/H_{i+1}$ が単純群であるものを 組成列という。有限群は組成列をもち($G\ne\{e\}$ なら、真の正規部分群のうち位数最大のもの $N$ をとると $G/N$ は単純である。これを $N$ について繰り返す)、2 つの組成列の商の組は並べ方を除いて同型である(Jordan–Hölder の定理、Jud25 Theorem 13.2.8)。たとえば $n\ge5$ の $S_n$ の組成列 $S_n\supset A_n\supset\{e\}$ の商は $C_2$ と $A_n$ である。
有限単純群はすべて分類されている。素数位数の巡回群、$n\ge5$ の交代群 $A_n$、有限体上の行列群から作られるいくつかの無限族、どの族にも属さない 26 個の散在型単純群がそれである(歴史的な経緯は Jud25 の第 10 章の Historical Note と第 15 章の 15.2.1 節の Theorem 15.2.12 とその後の段落、pdf p.201・p.278)。1963 年の Feit–Thompson の定理(素数位数でない有限単純群の位数は偶数である)は、この分類の計画を進める契機になった(同 pdf p.201・p.278)。

反例

有限群についてよく使われる主張の仮定を外すと、次のように崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
$d$ が素数(部分群の存在)$A_4$ と $d=6$$d\mid\lvert G\rvert$ なら位数 $d$ の部分群がある
$d$ が素数(元の存在)$C_2\times C_2$ と $d=4$$d\mid\lvert G\rvert$ なら位数 $d$ の元がある
部分集合が有限(prop-finite-group-subgroup-criterion)$\mathbb{N}\subset(\mathbb{Z},+)$積(和)で閉じた空でない部分集合は部分群
群が有限Prüfer群 $\mathbb{Z}(p^\infty)$「すべての元の位数が有限」から「群が有限」は出ない
反例の確認
  1. 交代群 $A_4$ は位数 $12$ で $6\mid12$ だが、位数 $6$ の部分群をもたない(Lagrangeの定理 の記事の例「$A_4$ には位数6の部分群がない」、交代群 の記事の命題「4 次の交代群における位数 6 の部分群の非存在」、Jud25 Proposition 6.2.7)。したがって Lagrange の定理の逆は偽であり、thm-finite-group-cauchy は素数でない約数には一般化できない。
  2. $C_2\times C_2$ は位数 $4$ だが、単位元以外の元はすべて位数 $2$ なので、位数 $4$ の元をもたない(prop-finite-group-exponent-two)。$4$ は素数でないので Cauchy の定理とは矛盾しない。位数 $4$ の部分群は全体としてあるので、「位数 $d$ の部分群」と「位数 $d$ の元」は別の問いである。
  3. 加法群 $\mathbb{Z}$ の部分集合 $\mathbb{N}=\{0,1,2,\dots\}$ は空でなく和で閉じているが、$1$ の逆元 $-1$ を含まないので部分群でない。$\mathbb{N}$ は無限集合なので、prop-finite-group-subgroup-criterion の証明で使った「$h,h^2,\dots$ のどこかで同じ元が繰り返す」ことが起きない。
  4. 素数 $p$ について $\mathbb{Z}(p^\infty)=\{a/p^k+\mathbb{Z}\mid a\in\mathbb{Z},\ k\ge0\}\subset\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ の元 $a/p^k+\mathbb{Z}$ は $p^k$ 倍すると $0$ になるので位数が有限であるが、$1/p^k+\mathbb{Z}$($k\ge0$)が相異なるので群は無限である(Prüfer群 の記事の定義「Prüfer群」)。有限群の元の位数は有限だが、その逆は成り立たない。

注意

有限群と有限生成群

有限群は有限個の元で生成される(全体の元を生成元にとればよい)が、有限個の元で生成される群が有限とは限らない。加法群 $\mathbb{Z}$ は $1$ だけで生成されるが無限群である(Jud25 Example 13.1.1 は、有限群が有限生成であることを述べている)。有限生成アーベル群の分類では、有限部分(捩れ部分)と $\mathbb{Z}^r$ の部分が分かれて現れる。

有限群の射影極限

有限群の射影系は、推移写像の像の列が有限群の部分群の減少列として必ず止まるので、Mittag-Leffler条件 を満たす(射影極限 の記事の系「有限群・Artin加群の射影系の完全性」)。有限群を離散位相群とみて射影極限をとったものは副有限群と呼ばれ、$p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p=\varprojlim\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}$ や、無限次の Galois 拡大の Galois群 がその例である(Galois群 の記事の定理「副有限群としてのGalois群」)。

関連項目

参考文献

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