中点連結定理(midpoint theorem)とは、三角形 $ABC$ の辺 $AB$ の中点 $M$ と辺 $AC$ の中点 $N$ を結ぶ線分が、辺 $BC$ に平行で長さが $BC$ の半分になるという定理である。逆に、$AB$ の中点を通り $BC$ に平行な直線は $AC$ の中点を通る。平行線と線分の比の比 $1:1$ の場合であり、比を使わず合同と平行四辺形だけでも証明でき、平面でなく球面の上では成り立たない。応用として、中点三角形は三角形を合同な 4 つの三角形に分け、$AD\parallel BC$ の台形の脚の中点を結ぶ線分は長さ $(AD+BC)/2$ で底辺に平行になり、四角形の 4 辺の中点は平行四辺形をつくる。大学数学では、中点・平行・平行な線分の長さの比だけで述べられる、アフィン変換で保たれる定理であり、1 つの三角形で確かめればすべての三角形で成り立つ。
前提知識: 平行線と線分の比, 三角形の相似条件, 三角形の合同条件, 位置ベクトルと内分点
三角形の 2 つの辺の中点を結ぶと、その線分は残りの辺に平行で、長さはちょうど半分になる。これが 中点連結定理 である。中学校で習う短い定理だが、重心・Euler 線・九点円・台形・四角形の中点など、多くの図形の性質の出発点になる。まず座標で確かめる。
$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(2,6)$ の三角形 $ABC$ で、辺 $AB$ の中点を $M$、辺 $AC$ の中点を $N$ とする。
(1) 中点は座標の平均なので、$M\left(\dfrac{0+8}2,\dfrac{0+0}2\right)=(4,0)$、$N\left(\dfrac{0+2}2,\dfrac{0+6}2\right)=(1,3)$ である。
(2) $\overrightarrow{MN}=(1-4,\ 3-0)=(-3,3)$、$\overrightarrow{BC}=(2-8,\ 6-0)=(-6,6)$ で、$\overrightarrow{MN}=\dfrac12\overrightarrow{BC}$ である。
(3) したがって $MN\parallel BC$ で、長さは $MN=\sqrt{9+9}=3\sqrt2$、$BC=\sqrt{36+36}=6\sqrt2$ と、ちょうど半分である。
$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(7,4)$、$D(1,5)$ の四角形 $ABCD$ で、4 つの辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点を $E$、$F$、$G$、$H$ とする。
(1) $E(3,0)$、$F\left(\dfrac{13}2,2\right)$、$G\left(4,\dfrac92\right)$、$H\left(\dfrac12,\dfrac52\right)$ である。
(2) $\overrightarrow{EF}=\left(\dfrac72,2\right)$、$\overrightarrow{HG}=\left(\dfrac72,2\right)$ で等しい。$\overrightarrow{EH}=\left(-\dfrac52,\dfrac52\right)$、$\overrightarrow{FG}=\left(-\dfrac52,\dfrac52\right)$ も等しい。四角形 $EFGH$ は、向かい合う辺が平行で長さが等しい平行四辺形である(後の図 3)。
(3) さらに $\overrightarrow{EF}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$($\overrightarrow{AC}=(7,4)$)、$\overrightarrow{EH}=\dfrac12\overrightarrow{BD}$($\overrightarrow{BD}=(-5,5)$)である。どんな四角形でも、中点を結ぶと平行四辺形になる。その理由は中点連結定理である(ex-mpt-varignon)。
2 つの例で、中点を結ぶ線分が「平行で半分」になった。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の言葉 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 中点を結ぶと平行で半分 | 中点連結定理(thm-mpt-main) | $\overrightarrow{MN}=\frac12\overrightarrow{BC}$ という 1 次の関係 |
| 平行線と線分の比の比 $1:1$ の場合 | 相似比 $\frac12$ の相似(prf-mpt-similar) | 相似拡大 |
| 延ばして平行四辺形を作る | 合同と平行だけの証明(prf-mpt-congruence) | 平行線公準を使う場所 |
| どんな三角形でも同じ | 1 つの三角形で確かめれば足りる(thm-mpt-affine) | アフィン変換で保たれる性質だけの定理 |
三角形 $ABC$ の辺 $AB$ の中点を $M$、辺 $AC$ の中点を $N$ とする。このとき
$$
MN\parallel BC,\qquad MN=\frac12BC
$$
である。
三角形 ABC の辺 AB, AC の中点 M, N を結ぶ線分(赤)を N の先へ同じ長さだけ延ばして D をとると、三角形 AMN と CDN(青)が合同になり、四角形 MBCD(太い破線)が平行四辺形になることを見る図
証明を 3 つ書く。1 つ目は相似(または平行線と線分の比)を使う。2 つ目は合同と平行線だけを使い、比を使わない。3 つ目は位置ベクトルの計算である。
方針:三角形 $AMN$ と三角形 $ABC$ が相似比 $\dfrac12$ で相似であることを、三角形の相似条件 の「2 辺の比と間の角」で示す。
段 1(相似)。$M$ は $AB$ の中点なので $AM=\dfrac12AB$、$N$ は $AC$ の中点なので $AN=\dfrac12AC$ である。よって $\dfrac{AM}{AB}=\dfrac{AN}{AC}=\dfrac12$ で、間の角 $\angle MAN=\angle BAC$ は共通である。相似条件により $\triangle AMN\sim\triangle ABC$(相似比 $\dfrac12$)である。
段 2(長さ)。相似な三角形の対応する辺の比は相似比に等しいので、$\dfrac{MN}{BC}=\dfrac12$、つまり $MN=\dfrac12BC$ である。
段 3(平行)。対応する角が等しいので $\angle AMN=\angle ABC$ である。$M$ は線分 $AB$ の上にあるので、直線 $AB$ に対して、この 2 つの角は直線 $MN$ と直線 $BC$ の同位角である。同位角が等しいので $MN\parallel BC$ である(平行線公準(高校数学) の定理「錯角が等しい 2 直線は交わらない」。同位角が等しければ錯角も等しい)。$\square$
段 1〜3 は、平行線と線分の比 の逆(比 $AM:MB=AN:NC=1:1$ なら $MN\parallel BC$)と、平行線と線分の比($\dfrac{MN}{BC}=\dfrac{AM}{AB}=\dfrac12$)を使っても同じように示せる。中点連結定理は、平行線と線分の比の、比が $1:1$ の場合である。
2 つ目の証明は、比を一切使わない。『原論』の順序では、比の理論(第 5 巻)より前の第 1 巻の道具だけで示せる形である。
方針:線分 $MN$ を $N$ の先へ同じ長さだけ延ばした点 $D$ をとる(図 1)。三角形 $AMN$ と三角形 $CDN$ の合同から $CD$ と $MB$ が平行で等しいことを出し、四角形 $MBCD$ が平行四辺形であることを示す。図の位置関係($D$ と $B$ が直線 $MC$ について反対の側にあること)は図のとおりとして使う。
段 1(点 $D$)。直線 $MN$ の上に、$N$ について $M$ と反対の側に $ND=MN$ となる点 $D$ をとる。
段 2(合同)。三角形 $AMN$ と三角形 $CDN$ で、$AN=CN$($N$ は $AC$ の中点)、$MN=DN$(段 1)、$\angle ANM=\angle CND$(対頂角)である。2 辺とその間の角が等しいので合同である(三角形の合同条件)。よって $CD=AM$、$\angle NAM=\angle NCD$ である。
段 3($CD$ と $MB$)。$AM=MB$($M$ は $AB$ の中点)なので、段 2 から $CD=MB$ である。また段 2 の $\angle NAM=\angle NCD$ は、直線 $AC$ に対して直線 $AB$ と直線 $CD$ がつくる錯角なので、錯角が等しい 2 直線は交わらず、$AB\parallel CD$ である(平行線公準(高校数学) の定理「錯角が等しい 2 直線は交わらない」。この段は平行線公準を使わない)。
段 4(平行四辺形)。対角線 $MC$ を引き、三角形 $MBC$ と三角形 $CDM$ を比べる。$MB=CD$(段 3)、$MC$ は共通である。$MB\parallel CD$ なので、直線 $MC$ に対する錯角が等しく $\angle BMC=\angle DCM$ である(平行線の錯角は等しい。ここで平行線公準を使う)。2 辺とその間の角が等しいので、三角形 $MBC$ と三角形 $CDM$ は合同で、$BC=DM$、$\angle BCM=\angle DMC$ である。後者は直線 $MC$ に対する直線 $BC$ と直線 $MD$ の錯角なので、$MD\parallel BC$ である。
段 5(結論)。直線 $MD$ は直線 $MN$ そのものなので $MN\parallel BC$ である。また $MD=MN+ND=2MN$(段 1)と $BC=DM$(段 4)から $MN=\dfrac12BC$ である。$\square$
この証明で平行線公準を使ったのは段 4 の「平行線の錯角は等しい」の 1 か所だけである。平行線公準だけを外した幾何(双曲幾何)では、段 1〜3 はそのまま成り立つが、段 4 が使えず、長さの主張 $MN=\dfrac12BC$ が崩れる(この記事では証明しない。双曲幾何の三角形)。平面であることを外して球面の上で考えると、中点連結定理はやはり成り立たない(ex-mpt-cx-sphere)。ただし球面では段 4 より前の段 3 から崩れるので、球面は「平行線公準だけを外した」例ではない。
3 つ目の証明は、位置ベクトルで中点を表す(位置ベクトルと内分点)。短いが、ベクトルの計算の中に平行線公準や長さを実数で測ることが入っている。
方針:点 $X$ の位置ベクトルを $\vec x$ と書き、中点の位置ベクトルが両端の平均であることを使う。
段 1(中点)。$\vec m=\dfrac{\vec a+\vec b}2$、$\vec n=\dfrac{\vec a+\vec c}2$ である。
段 2(差)。$\overrightarrow{MN}=\vec n-\vec m=\dfrac{\vec a+\vec c}2-\dfrac{\vec a+\vec b}2=\dfrac{\vec c-\vec b}2=\dfrac12\overrightarrow{BC}$ である。
段 3(結論)。$\overrightarrow{MN}$ は $\overrightarrow{BC}$ の $\dfrac12$ 倍なので $MN\parallel BC$($M$ は直線 $BC$ の上にないので 2 直線は一致しない)で、長さは $MN=\dfrac12BC$ である。$\square$
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(-3,2)$ の三角形(角 $A$ は鈍角)で、$M(2,0)$、$N\left(-\dfrac32,1\right)$ である。$\overrightarrow{MN}=\left(-\dfrac72,1\right)$、$\overrightarrow{BC}=(-7,2)$ で、$\overrightarrow{MN}=\dfrac12\overrightarrow{BC}$ である。$MN=\dfrac12\sqrt{49+4}=\dfrac{\sqrt{53}}2$、$BC=\sqrt{53}$ で、どんな形の三角形でも「平行で半分」になる。
三角形 $ABC$ の辺 $AB$ の中点 $M$ を通り、辺 $BC$ に平行な直線は、辺 $AC$ とその中点 $N$ で交わる。
方針:$AC$ の中点 $N$ をとると、thm-mpt-main により $MN\parallel BC$ である。$M$ を通り $BC$ に平行な直線はただ 1 本なので、それは直線 $MN$ である。
段 1(中点を結ぶ)。辺 $AC$ の中点を $N$ とすると、thm-mpt-main により $MN\parallel BC$ である。
段 2(ただ 1 本)。$M$ を通り $BC$ に平行な直線はただ 1 本である(Playfair の公理。平行線公準(高校数学))。段 1 から、その直線は直線 $MN$ である。
段 3(交点)。直線 $MN$ と直線 $AC$ は $N$ で交わり、2 直線は異なる($M$ は直線 $AC$ の上にない)ので交点は $N$ だけである。よって、$M$ を通り $BC$ に平行な直線は、辺 $AC$ と中点 $N$ で交わる。$\square$
ex-mpt-start の三角形で、$M(4,0)$ を通り $\overrightarrow{BC}=(-6,6)$ に平行な直線の点は $(4-6s,\ 6s)$ である。辺 $AC$ の点 $(2t,\ 6t)$ と等しいとおくと $6s=6t$ から $s=t$、$4-6t=2t$ から $t=\dfrac12$ で、交点は $(1,3)=N$、つまり辺 $AC$ の中点である。
三角形の 3 辺の中点を結んでできる三角形を 中点三角形 という。
左は、3 辺の中点 L, M, N を結ぶと三角形 ABC(面積 24)が面積 6 の合同な 4 つの三角形に分かれることを見る図。右は、台形 ABCD(AD = 3, BC = 7)で、脚の中点を結ぶ線分 MN の長さが 5 = (3 + 7)/2 になることを見る図
三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点を $L$、$N$、$M$ とする(図 2 の左)。
(1) thm-mpt-main を 3 回使うと、$MN=\dfrac12BC$、$NL=\dfrac12AB$、$LM=\dfrac12CA$ である。一方、$AM=MB=\dfrac12AB$、$BL=LC=\dfrac12BC$、$CN=NA=\dfrac12CA$ である。よって 4 つの三角形 $AMN$、$MBL$、$NLC$、$LNM$ は、どれも 3 辺が $\dfrac12BC$、$\dfrac12CA$、$\dfrac12AB$ で、互いに合同である(3 辺の合同条件)。4 つの三角形は重ならずに三角形 $ABC$ をちょうど埋める(図 2 の左のとおりとして認める)ので、面積はどれも三角形 $ABC$ の $\dfrac14$ である。
(2) ex-mpt-start の三角形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(2,6)$ では、$L(5,3)$、$M(4,0)$、$N(1,3)$ である。三角形 $ABC$ の面積は $\dfrac12\cdot8\cdot6=24$ である。三角形 $AMN$ は底辺 $AM=4$、高さ $3$($N$ の $y$ 座標)で、面積は $\dfrac12\cdot4\cdot3=6$ である。同じように $MBL$ は底辺 $4$、高さ $3$ で $6$、$NLC$ は底辺 $NL=4$($y=3$ の上)、高さ $3$ で $6$、残りの $LNM$ も $24-18=6$ で、4 つとも $6=\dfrac{24}4$ である。
中点三角形は、重心を中心とする比 $-\dfrac12$ の相似拡大で三角形 $ABC$ を移したものである。この見方と、そこから出る Euler 線は Euler線 で扱う。3 本の中線が 1 点(重心)で交わることを中点連結定理と相似で示す証明は、三角形の重心(高校数学) にある。
$AD\parallel BC$ の台形 $ABCD$(頂点はこの順に並び、$\overrightarrow{AD}$ と $\overrightarrow{BC}$ は同じ向き)で、辺 $AB$ の中点を $M$、辺 $DC$ の中点を $N$ とする。このとき
$$
MN\parallel BC,\qquad MN=\frac{AD+BC}2
$$
である。
方針:prf-mpt-vector と同じく、中点の位置ベクトルを両端の平均で表し、$\overrightarrow{MN}$ を $\overrightarrow{AD}$ と $\overrightarrow{BC}$ で書く。
段 1(差を計算する)。$\vec m=\dfrac{\vec a+\vec b}2$、$\vec n=\dfrac{\vec d+\vec c}2$ なので
$$
\overrightarrow{MN}=\frac{\vec d+\vec c-\vec a-\vec b}2=\frac{(\vec d-\vec a)+(\vec c-\vec b)}2=\frac{\overrightarrow{AD}+\overrightarrow{BC}}2
$$
である。
段 2(同じ向き)。$AD\parallel BC$ で向きが同じなので、$\overrightarrow{AD}=\lambda\,\overrightarrow{BC}$ となる正の数 $\lambda$ がある。$AD=\lambda\,BC$ である。
段 3(結論)。段 1・段 2 から $\overrightarrow{MN}=\dfrac{1+\lambda}2\,\overrightarrow{BC}$ で、$\dfrac{1+\lambda}2>0$ なので $MN\parallel BC$($M$ は直線 $BC$ の上にない)であり、
$$
MN=\frac{1+\lambda}2\,BC=\frac{BC+\lambda\,BC}2=\frac{BC+AD}2
$$
である。$\square$
$AD=0$($A=D$)とみると、台形は三角形 $ABC$ になり、prop-mpt-trapezoid は thm-mpt-main そのものになる。台形の場合も、対角線 $AC$ の中点 $P$ をとって三角形 $ABC$ と三角形 $CDA$ に中点連結定理を 1 回ずつ使い、$MP=\dfrac12BC$、$PN=\dfrac12AD$ を足しても示せる。
$A(1,3)$、$D(4,3)$、$B(0,0)$、$C(7,0)$ の台形(図 2 の右)で、$AD=3$、$BC=7$ である。$M\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$、$N\left(\dfrac{11}2,\dfrac32\right)$ で、$MN=5=\dfrac{3+7}2$ であり、$MN$ は $x$ 軸($BC$)に平行である。
四角形 ABCD の 4 辺の中点 E, F, G, H を結ぶと平行四辺形になり、その辺は対角線 AC, BD(破線)に平行で長さが半分であることを見る図
四角形 $ABCD$ の辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点を $E$、$F$、$G$、$H$ とする。
(1) 三角形 $ABC$ に thm-mpt-main を使うと、$EF\parallel AC$、$EF=\dfrac12AC$ である。三角形 $ADC$ に使うと、$HG\parallel AC$、$HG=\dfrac12AC$ である。位置ベクトルで書くと、どちらも $\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$ である。向かい合う辺 $EF$ と $HG$ が平行で長さが等しいので、四角形 $EFGH$ は平行四辺形である。
(2) ex-mpt-start-quad の四角形では、$\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}=\left(\dfrac72,2\right)=\dfrac12(7,4)=\dfrac12\overrightarrow{AC}$ で、(1) のとおりである。この例では、四角形 $ABCD$ の面積は $\dfrac{55}2$、平行四辺形 $EFGH$ の面積は $\left\lvert\dfrac72\cdot\dfrac52-2\cdot\left(-\dfrac52\right)\right\rvert=\dfrac{55}4$ で、ちょうど半分になっている。
この平行四辺形を Varignon の平行四辺形という。面積がいつも半分になること、4 点が同じ平面の上にない(ねじれた)四角形でも平行四辺形になることは、Varignonの定理 で扱う。
中点連結定理の主張「$\overrightarrow{MN}=\dfrac12\overrightarrow{BC}$」には、角度も、向きの違う 2 本の線分の長さの比も出てこない。出てくるのは「中点」「平行」「平行な 2 本の線分の長さの比」だけである。このような性質だけで述べられる定理は、1 つの三角形で確かめれば、すべての三角形で成り立つ。
$2\times2$ 行列 $P$(行列式が $0$ でない)とベクトル $\vec v$ を決め、位置ベクトル $\vec x$ の点を位置ベクトル $P\vec x+\vec v$ の点に移す変換を、平面の アフィン変換 という(1 次変換の後に平行移動をするもの。1次変換と行列式:面積の拡大率)。
$f$ をアフィン変換 $\vec x\mapsto P\vec x+\vec v$ とし、点 $X$ の像を $f(X)$ と書く。
方針:3 つとも、行列の積の性質 $P(\vec x-\vec y)=P\vec x-P\vec y$、$P(\lambda\vec x)=\lambda P\vec x$ から出る。
段 1(性質 1)。$\overrightarrow{f(X)f(Y)}=(P\vec y+\vec v)-(P\vec x+\vec v)=P\vec y-P\vec x=P(\vec y-\vec x)=P\,\overrightarrow{XY}$ である。
段 2(性質 2)。中点の位置ベクトル $\dfrac{\vec x+\vec y}2$ の像は $P\dfrac{\vec x+\vec y}2+\vec v=\dfrac{(P\vec x+\vec v)+(P\vec y+\vec v)}2$ で、これは $f(X)$ と $f(Y)$ の中点の位置ベクトルである。
段 3(性質 3)。性質 1 から $\overrightarrow{f(Z)f(W)}=P\,\overrightarrow{ZW}=P(\lambda\overrightarrow{XY})=\lambda P\,\overrightarrow{XY}=\lambda\,\overrightarrow{f(X)f(Y)}$ である。$\square$
方針:行列 $P$ の 2 つの列を $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ にとる。標準の三角形での計算を、lem-mpt-affine で移す。
段 1(変換を作る)。$\overrightarrow{AB}=(p,q)$、$\overrightarrow{AC}=(r,s)$ とし、$P=\begin{pmatrix}p&r\\q&s\end{pmatrix}$、$\vec v=\vec a$ とおく。$A,B,C$ は一直線上にないので $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ は平行でなく、$\det P=ps-qr\ne0$ である。$f(O)=\vec a$、$f(E_1)=P\begin{pmatrix}1\\ 0\end{pmatrix}+\vec a=\vec a+\overrightarrow{AB}=\vec b$、$f(E_2)=\vec a+\overrightarrow{AC}=\vec c$ である。これで 1 が示せた。
段 2(標準の三角形)。$OE_1$ の中点は $M_0\left(\dfrac12,0\right)$、$OE_2$ の中点は $N_0\left(0,\dfrac12\right)$ で、$\overrightarrow{M_0N_0}=\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)=\dfrac12(-1,1)=\dfrac12\overrightarrow{E_1E_2}$ である。
段 3(移す)。lem-mpt-affine の 2 により、$f(M_0)$ は $AB$ の中点 $M$、$f(N_0)$ は $AC$ の中点 $N$ である。lem-mpt-affine の 3 を段 2 の等式に使うと $\overrightarrow{MN}=\dfrac12\overrightarrow{BC}$ である。これは中点連結定理である(prf-mpt-vector の段 3)。$\square$
ex-mpt-start の三角形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(2,6)$ では、$P=\begin{pmatrix}8&2\\ 0&6\end{pmatrix}$、$\vec v=\vec 0$ である。$M_0\left(\dfrac12,0\right)$ は $P\begin{pmatrix}1/2\\ 0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4\\ 0\end{pmatrix}$ に、$N_0\left(0,\dfrac12\right)$ は $\begin{pmatrix}1\\ 3\end{pmatrix}$ に移り、確かに $M(4,0)$、$N(1,3)$ である。$\overrightarrow{M_0N_0}=\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)$ は $P\begin{pmatrix}-1/2\\ 1/2\end{pmatrix}=(-3,3)=\overrightarrow{MN}$ に移る。
アフィン変換は、角と、向きの違う線分の長さの比を保たない。たとえば $(x,y)\mapsto(x,2y)$ は、1 辺が $x$ 軸に平行な正三角形 $(0,0)$、$(2,0)$、$(1,\sqrt3)$ を、正三角形でない二等辺三角形 $(0,0)$、$(2,0)$、$(1,2\sqrt3)$ に移す。したがって「垂直」「角の二等分線」「外心」「内心」などを含む定理は、thm-mpt-affine のように 1 つの三角形の計算からすべての三角形に移すことはできない(三角形の面積比 の注意「アフィン変換で変わるもの」)。中点連結定理・重心・平行四辺形の性質・Varignon の平行四辺形は、アフィン変換で保たれる性質だけで述べられる定理である。どの変換で何が保たれるかによって幾何を分ける考え方は、Klein の Erlangenプログラム と呼ばれる。
空間でも、prf-mpt-vector の計算はそのまま通る。三角形はいつも平面の上にあるが、四角形の場合は 4 点が同じ平面の上になくてもよい。
空間の 4 点 $A(0,0,0)$、$B(2,0,0)$、$C(2,2,0)$、$D(0,0,2)$ は同じ平面の上にない($D$ だけが $z\ne0$ で、$A,B,C$ の平面 $z=0$ の上にない)。辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点は $E(1,0,0)$、$F(2,1,0)$、$G(1,1,1)$、$H(0,0,1)$ で、$\overrightarrow{EF}=(1,1,0)=\overrightarrow{HG}$ である。$\overrightarrow{EF}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$ で、4 つの中点は平行四辺形の頂点になる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $N$ が $AC$ の中点であること($1:2$ に分ける点にする) | $MN\parallel BC$ | ex-mpt-cx-notmid |
| 逆の仮定の「$M$ を通り $BC$ に平行な直線」(平行でない直線にする) | 直線は $AC$ の中点を通る | ex-mpt-cx-notmid |
| 台形の $AD\parallel BC$(一般の四角形にする) | $MN=\dfrac{AD+BC}2$ | ex-mpt-cx-trapezoid |
| 平面であること(球面の上の三角形にする) | $MN=\dfrac12BC$ | ex-mpt-cx-sphere |
ex-mpt-start の三角形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(2,6)$ で、$M(4,0)$ は $AB$ の中点とする。
(1) $AC$ を $1:2$ に分ける点 $N'\left(\dfrac23,2\right)$ をとると、$\overrightarrow{MN'}=\left(-\dfrac{10}3,2\right)$ である。これが $\lambda(-6,6)=\lambda\overrightarrow{BC}$ に等しいとすると、$x$ 成分から $\lambda=\dfrac59$、$y$ 成分から $\lambda=\dfrac13$ で両立しないので、$MN'$ は $BC$ と平行でない。比が $1:1$ と $1:2$ で違うからである(平行線と線分の比 の逆の形)。
(2) $M$ を通り向き $(-1,2)$ の直線($BC$ と平行でない)の点 $(4-s,\ 2s)$ が辺 $AC$ の点 $(2t,6t)$ と等しくなるのは、$2s=6t$ から $s=3t$、$4-3t=2t$ から $t=\dfrac45$ のときで、交点 $\left(\dfrac85,\dfrac{24}5\right)$ は $AC$ を $4:1$ に分ける点であり、中点ではない。
$A(0,3)$、$D(4,5)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ の四角形 $ABCD$ では、$AD$(向き $(4,2)$)と $BC$(向き $(6,0)$)は平行でない。$AB$ の中点 $M\left(0,\dfrac32\right)$、$DC$ の中点 $N\left(5,\dfrac52\right)$ で、$MN=\sqrt{25+1}=\sqrt{26}=5.099\ldots$ である。一方 $\dfrac{AD+BC}2=\dfrac{2\sqrt5+6}2=\sqrt5+3=5.236\ldots$ で、等しくない。
prf-mpt-trapezoid の段 1 の式 $\overrightarrow{MN}=\dfrac{\overrightarrow{AD}+\overrightarrow{BC}}2=\dfrac{(4,2)+(6,0)}2=(5,1)$ は台形でなくても成り立つ。ベクトルの長さの三角不等式(Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学))により $MN\le\dfrac{AD+BC}2$ である。$\overrightarrow{AD}$ と $\overrightarrow{BC}$ が同じ向き、つまり台形のときは等号が成り立つ(prf-mpt-trapezoid)。等号が成り立つのがそのときに限ることは、ここでは証明しない。
半径 $1$ の球面の上で、$A(0,0,1)$(北極)、$B(1,0,0)$、$C(0,1,0)$ を大円の弧で結んだ球面三角形を考える。球面の上の 2 点の距離は、2 点を結ぶ大円の短い方の弧の長さで、それは 2 点の位置ベクトルのなす角(ラジアン)に等しい。
(1) $B$ と $C$ の位置ベクトルは垂直なので $BC=\dfrac\pi2$ である。
(2) 弧 $AB$ の中点は、$A$ と $B$ の位置ベクトルの和の向きの点 $M\left(\dfrac1{\sqrt2},0,\dfrac1{\sqrt2}\right)$、弧 $AC$ の中点は $N\left(0,\dfrac1{\sqrt2},\dfrac1{\sqrt2}\right)$ である。内積は $\overrightarrow{OM}\cdot\overrightarrow{ON}=0+0+\dfrac12=\dfrac12$ なので、なす角は $\dfrac\pi3$ で、$MN=\dfrac\pi3$ である。
(3) $\dfrac12BC=\dfrac\pi4$ で、$MN=\dfrac\pi3>\dfrac\pi4$ である。長さが半分にならない。さらに、球面の上の 2 本の大円は必ず交わるので、大円 $MN$ と大円 $BC$(赤道)も交わり、「平行」も成り立たない。
球面では 2 本の大円が必ず交わるので、prf-mpt-congruence の段 4 の「平行線の錯角は等しい」だけでなく、段 3 の「錯角が等しい 2 直線は交わらない」もすでに成り立たない。球面は、直線がどこまでも延びることなど、平行線公準以外の性質も平面と違う。平行線公準だけを外した双曲幾何では、直線 $MN$ と直線 $BC$ は交わらないが $MN<\dfrac12BC$ となり、崩れるのは長さの主張である(この記事では証明しない。双曲幾何の三角形)。球面の幾何は 球面三角形の面積 で扱う。
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