ホモトピー固定点(homotopy fixed points)とは、群 $G$ が作用する空間 $X$ に対し、固定点の集合 $X^G$ の代わりに、$G$ が自由に作用する可縮な空間 $EG$ からの同変写像の空間 $X^{hG}=\operatorname{Map}_G(EG,X)$ を考えるものである。固定点の集合は同変な弱同値で保たれないが、単体的集合として Kan 複体である $G$ 単体的集合の間の同変な弱同値は $X^{hG}$ の弱同値を誘導し、$EG$ を自由で弱可縮な別のものに替えても弱同値を除いて変わらない。自明な作用では $\operatorname{Map}(BG,X)$ になり、$X$ が Kan 複体なら $X$ を一対象の圏 $G$ 上の図式とみたときのホモトピー極限、∞ 圏では $BG$ 上の極限にあたる。
ホモトピー固定点(homotopy fixed points)は、群 $G$ が作用する空間 $X$ について、固定点の集合 $X^G$ の代わりに考える「ホモトピー不変な固定点の空間」$X^{hG}$ である。固定点の集合は同変な弱同値で保たれない。たとえば $G$ が自由に作用する可縮な空間 $EG$ には固定点がないのに、一点への写像 $EG\to*$ は同変な弱同値である。そこで、点 $x$ と等式 $gx=x$ の代わりに、可縮な $EG$ からの同変写像、すなわち「$x$ と、$gx$ と $x$ を結ぶ道と、その道の間の整合性の全体」を集めたものを $X^{hG}$ とする。$X$ が単体的集合として Kan 複体なら、これは $X$ を一対象の圏 $G$ 上の図式とみたときのホモトピー極限と弱同値で結ばれ、∞ 圏では $BG$ 上の極限にあたる。
この記事では、離散群 $G$ が作用する単体的集合について $X^{hG}:=\operatorname{Map}_G(EG,X)$ を定義し、主定理として、Kan 複体の間の同変な弱同値が $X^{hG}$ の弱同値を誘導することと、$EG$ を自由で弱可縮な別の $G$ 単体的集合に取り替えても結果が弱同値を除いて変わらないことを証明する。例として、自明な作用では写像空間 $\operatorname{Map}(BG,X)$ になること、整数の群 $\mathbb Z$ の作用では $x$ から $tx$ への道の空間になることを確かめる。
以下、$G$ を群とする。
$G$ 単体的集合の余極限は、下の単体的集合の余極限に $G$ の作用を入れたものである。$(\operatorname{colim}_\alpha E_\alpha)\times\Delta^n\cong\operatorname{colim}_\alpha(E_\alpha\times\Delta^n)$ なので(余極限は次数ごとに計算される:単体的集合 の定理「極限と余極限の次数ごとの計算」)、$\operatorname{Map}_G(-,X)$ は $G$ 単体的集合の余極限を単体的集合の極限に送る。
$EG$ を、$n$ 単体の集合が $G^{n+1}$、面写像 $d_i$ が $i$ 番目の成分を除く写像、退化写像 $s_i$ が $i$ 番目の成分を繰り返す写像である単体的集合とし、$G$ を左からの掛け算 $g(g_0,\dots,g_n)=(gg_0,\dots,gg_n)$ で作用させる。$G$ 単体的集合 $X$ に対し
$$
X^{hG}:=\operatorname{Map}_G(EG,X)
$$
を $X$ のホモトピー固定点の空間という。$EG\to\Delta^0$ が誘導する $X^G\cong\operatorname{Map}_G(\Delta^0,X)\to X^{hG}$ を比較写像という。
$EG$ は、対象を $G$ の元とし、どの二つの対象の間にもただ一つの射がある亜群の脈体である。
1:$g(g_0,\dots,g_n)=(g_0,\dots,g_n)$ なら $gg_0=g_0$ なので $g=e$ である。2:単体的集合 $K$ から $EG$ への写像は、頂点の写像 $K_0\to G$ と一対一に対応する。実際、写像 $f$ と $x\in K_m$ について、$f(x)\in G^{m+1}$ の $i$ 番目の成分は $x$ の $i$ 番目の頂点の像であり、逆に任意の $K_0\to G$ はこの式で写像を定める。$n\ge1$ なら $\partial\Delta^n$ と $\Delta^n$ は同じ頂点をもつので、$\partial\Delta^n\to EG$ は $\Delta^n$ にただ一通りに延びる。$n=0$ なら $\emptyset\to\Delta^0$ に沿う延長は $EG$ の頂点を 1 つ選べばよい($G\ne\emptyset$)。よって $EG\to\Delta^0$ は境界の包含 $\partial\Delta^n\subset\Delta^n$ すべてに対して右持ち上げ性質をもち、自明 Kan ファイブレーションである(Kan–Quillenモデル構造 の定理「Kan–Quillen モデル構造」の 1)。自明 Kan ファイブレーションは Kan ファイブレーションかつ弱同値である。
証明の道具は二つの補題である。一つ目は、自由な $G$ 単体的集合が「$G\times\Delta^n$ の形の胞体」を貼って作れることである。$G$ は離散な単体的集合(各次数が $G$、面・退化写像が恒等写像)とみなし、$G\times K$ に $G$ を左の成分の掛け算で作用させる。
要点:1 は「$G$ 写像は $e$ での値で決まる」ことであり、2 は非退化単体の軌道がどれも $G$ と同じ形になることによる。
1:$G$ 写像 $\varphi\colon G\times K\times\Delta^m\to X$ は $\varphi(g,k,\sigma)=g\varphi(e,k,\sigma)$ をみたすので $\{e\}\times K\times\Delta^m$ への制限で決まり、逆に任意の $\psi\colon K\times\Delta^m\to X$ から $(g,k,\sigma)\mapsto g\psi(k,\sigma)$ は $G$ 写像を定める。これは $m$ と面・退化写像について自然である。
2:$gx=s_iy$ なら $x=s_i(g^{-1}y)$ なので、$G$ は退化単体を退化単体に、したがって非退化単体を非退化単体に写す。とくに $\operatorname{sk}_nE$ は $G$ で保たれる。単体的集合としては、$E_n$ の非退化単体の集合 $NE_n$ を添字とする押し出しの正方形 $\coprod_{NE_n}\partial\Delta^n\to\operatorname{sk}_{n-1}E$、$\coprod_{NE_n}\Delta^n\to\operatorname{sk}_nE$ がある(GJ09 Proposition I.2.3 の証明、p. 8)。作用は自由なので $(g,r)\mapsto gr$ は全単射 $G\times R_n\to NE_n$ であり、$gr$ の定める写像は $g\circ\bar r$ である。これで上の正方形の各頂点は単体的集合として同型になり、写像は $G$ 写像である。$G$ 単体的集合の余極限は下の単体的集合の余極限なので、これは $G$ 単体的集合の押し出しである。$E$ の単体はどれも有限の次数をもつので $E=\bigcup_n\operatorname{sk}_nE$ である。
二つ目の道具は、Kan ファイブレーションの塔の極限がホモトピー不変であることである。塔 $\cdots\to P_1\to P_0$ の圏には、弱同値を各段の弱同値とし、$P_0$ が Kan 複体ですべての $P_n\to P_{n-1}$ が Kan ファイブレーションである塔をファイブラント対象とするモデル構造があり、極限をとる関手は右 Quillen 関手である(Hov99 Theorem 5.1.3・Corollary 5.1.6。添字の圏を逆圏とみる)。右 Quillen 関手はファイブラント対象をファイブラント対象に送り、Ken Brownの補題 によりファイブラント対象の間の弱同値を弱同値に送る。添字の集合が離散な場合(極限が積の場合)も同じで、Kan 複体の族の積は Kan 複体であり、Kan 複体の間の弱同値の積は弱同値である(Hov99 Example 1.1.6 の積のモデル構造で、積は対角関手の右随伴として右 Quillen 関手になる)。
$E$ を自由な $G$ 単体的集合とし、$f\colon X\to Y$ を $G$ 写像とする。$X,Y$ は単体的集合として Kan 複体であり、$f$ は単体的集合の弱同値であるとする。このとき
$P_n(X):=\operatorname{Map}_G(\operatorname{sk}_nE,X)$ とおく($P_{-1}(X)=\operatorname{Map}_G(\emptyset,X)=\Delta^0$)。$\operatorname{Map}_G(-,X)$ は余極限を極限に送るので、lem-hfp-free-cells の 2 の押し出しは、1 の同型と合わせて引き戻しの正方形
$$
\begin{array}{ccc}
P_n(X)&\longrightarrow&\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\Delta^n,X)\\
\downarrow{\scriptstyle p_n}&&\downarrow{\scriptstyle\rho}\\
P_{n-1}(X)&\longrightarrow&\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\partial\Delta^n,X)
\end{array}
$$
を与え、$\operatorname{Map}_G(E,X)\cong\lim_nP_n(X)$ である。$\rho$ は制限の写像の積である。$X$ が Kan 複体なので、各制限 $\operatorname{Map}(\Delta^n,X)\to\operatorname{Map}(\partial\Delta^n,X)$ は Kan ファイブレーションであり(Kan–Quillenモデル構造 の系「単体的モデル構造」の 2)、Kan ファイブレーションは積と引き戻しで閉じる(Kanファイブレーション の定理「閉包性」)。よって $\rho$ と $p_n$ は Kan ファイブレーションであり、塔 $(P_n(X))_{n\ge0}$ はファイブラントである($P_0(X)\to P_{-1}(X)=\Delta^0$ も Kan ファイブレーション)。極限は右 Quillen 関手なので、$\operatorname{Map}_G(E,X)$ は Kan 複体である。これが 1 である。
2:$f$ は塔の間の写像 $P_n(X)\to P_n(Y)$ を誘導する。これがすべての $n$ で弱同値であることを $n$ の帰納法で示す。$n=-1$ では恒等写像である。$n\ge0$ のとき、上の正方形の右の二つの頂点の間の写像
$$
\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\Delta^n,X)\to\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\Delta^n,Y),\qquad
\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\partial\Delta^n,X)\to\prod_{R_n}\operatorname{Map}(\partial\Delta^n,Y)
$$
は、単体的モデル圏 の系「写像空間の弱同値不変性」の 1($\mathbf{sSet}$ で、すべての単体的集合はコファイブラント)により各成分が Kan 複体の間の弱同値なので、積も弱同値である。帰納法の仮定により $P_{n-1}(X)\to P_{n-1}(Y)$ も弱同値である。$\mathbf{sSet}$ は右固有であり(HTT09 §A.2.7、p. 828)、二つのコスパンの右の脚 $\rho$ は Kan ファイブレーションなので、ホモトピー極限 の定理「引き戻しの貼り合わせ補題」により、引き戻しの間の写像 $P_n(X)\to P_n(Y)$ は弱同値である。こうして $f$ はファイブラントな塔の間の各段の弱同値を誘導するので、極限の間の写像 $\operatorname{Map}_G(E,X)\to\operatorname{Map}_G(E,Y)$ は弱同値である。最後の主張は lem-hfp-eg の 1 による。
固定点の集合 $X^G=\operatorname{Map}_G(\Delta^0,X)$ がこの性質をもたないのは、$\Delta^0$ が自由でないからである(下の ex-hfp-eg-fixed)。次の定理は、$EG$ の役割が「自由で弱可縮であること」だけで決まることを示す。
$E,E'$ を自由な $G$ 単体的集合で、単体的集合として弱可縮なものとし、$X$ を単体的集合として Kan 複体である $G$ 単体的集合とする。$E\times E'$ に $G$ を対角に作用させると、二つの射影が誘導する写像
$$
\operatorname{Map}_G(E,X)\longrightarrow\operatorname{Map}_G(E\times E',X)\longleftarrow\operatorname{Map}_G(E',X)
$$
はどちらも弱同値である。
右の写像を考える(左は $E$ と $E'$ を入れ替えれば同じである)。$\operatorname{Map}(E,X)$ に、$m$ 単体 $u\colon E\times\Delta^m\to X$ を $g\circ u\circ(g^{-1}\times\mathrm{id})$ に送る作用を入れる。指数法則 $\operatorname{Hom}(E\times W,X)\cong\operatorname{Hom}(W,\operatorname{Map}(E,X))$(Kan–Quillenモデル構造 の補題「写像の単体的集合と積の随伴」)を $W=E'\times\Delta^n$ に当てる。$\varphi\colon E\times E'\times\Delta^n\to X$ に対応する $\psi\colon E'\times\Delta^n\to\operatorname{Map}(E,X)$ について、$g^{-1}\circ\varphi\circ(g\times g\times\mathrm{id})$ に対応するのは $(g^{-1}\cdot{-})\circ\psi\circ(g\times\mathrm{id})$ である(指数法則は三つの変数について自然である)。よって $\varphi$ が $G$ 写像であることと $\psi$ が $G$ 写像であることは同値で、同型
$$
\operatorname{Map}_G(E\times E',X)\cong\operatorname{Map}_G\bigl(E',\operatorname{Map}(E,X)\bigr)
$$
を得る。$\varphi=x'\circ\mathrm{pr}_{E'\times\Delta^n}$ のとき $\psi=c\circ x'$ である。ここで $c\colon X\to\operatorname{Map}(E,X)$ は $E\to\Delta^0$ が誘導する定値写像の埋め込みで、$g\circ c(x)\circ(g^{-1}\times\mathrm{id})=c(gx)$ なので $G$ 写像である。したがって右の写像は $c_*\colon\operatorname{Map}_G(E',X)\to\operatorname{Map}_G(E',\operatorname{Map}(E,X))$ と同一視される。$\operatorname{Map}(E,X)$ は Kan 複体であり(Kan–Quillenモデル構造 の系「単体的モデル構造」の 2)、$E\to\Delta^0$ はコファイブラント対象の間の弱同値なので、単体的モデル圏 の系「写像空間の弱同値不変性」の 2 により $c\colon X=\operatorname{Map}(\Delta^0,X)\to\operatorname{Map}(E,X)$ は弱同値である。$E'$ は自由なので、thm-hfp-invariance により $c_*$ は弱同値である。
$G$ が $X$ に自明に作用するとき、自由な $G$ 単体的集合 $E$ の軌道の単体的集合 $E/G$($n$ 単体の集合が $E_n/G$)について $\operatorname{Map}_G(E,X)\cong\operatorname{Map}(E/G,X)$ である。$EG/G$ は群 $G$ の脈体 $BG$ と同型であり、したがって $X^{hG}\cong\operatorname{Map}(BG,X)$ である。
作用が自明なので、$G$ 写像 $E\times\Delta^n\to X$ は軌道の上で一定な写像、すなわち $(E\times\Delta^n)/G\to X$ と同じである。$G$ は $\Delta^n$ に自明に作用するので、次数ごとに $(E_m\times\Delta^n_m)/G=(E_m/G)\times\Delta^n_m$ であり、$(E\times\Delta^n)/G\cong(E/G)\times\Delta^n$ となる。$EG/G$ については、$[g_0,\dots,g_n]\mapsto(g_0^{-1}g_1,g_1^{-1}g_2,\dots,g_{n-1}^{-1}g_n)$ が全単射 $G^{n+1}/G\to G^n$ であり、この対応で $d_0$ は最初の成分を、$d_n$ は最後の成分を除き、$0< i< n$ の $d_i$ は隣り合う成分 $(h_i,h_{i+1})$ を積 $h_ih_{i+1}$ に替える。これは反対群 $G^{\mathrm{op}}$(積 $h\cdot_{\mathrm{op}}h'=h'h$)を対象 1 つの圏とみたときの脈体であり、群の同型 $G^{\mathrm{op}}\cong G$、$h\mapsto h^{-1}$ を通して $G$ の脈体 $BG$ と同型である。
この場合、$X$ が Kan 複体なら、$X^{hG}$ の連結成分は写像のホモトピー類 $[BG,X]$ であり(単体的モデル圏 の命題「写像空間の連結成分とホモトピー類」を $\mathbf{sSet}$ で使う)、固定点 $X^G=X$ とは一般に異なる。たとえば $G=\mathbb Z/2$、$X=B(\mathbb Z/2)$ では、$X$ は連結だが $\operatorname{Map}(BG,X)$ は二つ以上の連結成分をもつ(エンド(∞圏) の注意「反例:厳密な定値図式の固定点とは異なる」)。
$X$ を、$G$ が作用する集合を定値単体的集合とみたもの(各次数が同じ集合で、面・退化写像が恒等写像)とする。このとき比較写像 $X^G\to X^{hG}$ は同型である。
定値単体的集合への写像は、辺の両端で同じ値をとる(辺 $z$ について $f(d_0z)=d_0f(z)=f(z)=d_1f(z)=f(d_1z)$)ので、連結成分の上で一定である。$EG\times\Delta^n$ は連結である($EG$ の二頂点 $g,g'$ は辺 $(g,g')$ で結ばれ、$\Delta^n$ も連結)。よって $G$ 写像 $EG\times\Delta^n\to X$ は一点 $x$ への定値写像で、$G$ 写像であることは $gx=x$(すべての $g$)と同値である。こうして $X^{hG}$ の $n$ 単体は $X^G$ の点と一対一に対応し、この対応は比較写像の逆である。
$G=\mathbb Z$ とし、$X$ を単体的集合として Kan 複体である $\mathbb Z$ 単体的集合として、生成元 $1$ の作用を $t\colon X\to X$ と書く。頂点の集合を $\mathbb Z$、非退化な辺を $k$ から $k+1$ への辺 $e_k$($k\in\mathbb Z$)とする $1$ 次元の単体的集合 $L$ に、$\mathbb Z$ を平行移動で作用させる。$L$ は自由で、その実現は実数直線 $\mathbb R$ と同相なので弱可縮である(実現は非退化単体を胞体とする CW 複体で、ここでは整数点を 0 胞体、区間 $[k,k+1]$ を 1 胞体とする $\mathbb R$ の CW 構造になる:幾何学的実現 の定理「幾何学的実現の CW 構造」)。thm-hfp-independence により $X^{h\mathbb Z}$ は $\operatorname{Map}_{\mathbb Z}(L,X)$ と弱同値で結ばれる。lem-hfp-free-cells を代表系 $R_0=\{0\}$、$R_1=\{e_0\}$ で使うと、$e_0$ の両端は $0$ と $t\cdot0=1$ なので、
$$
\operatorname{Map}_{\mathbb Z}(L,X)\cong\operatorname{Map}(\Delta^1,X)\times_{X\times X}X
$$
(右辺の $X\to X\times X$ は $x\mapsto(x,tx)$)である。すなわち、$X^{h\mathbb Z}$ は「点 $x$ と、$x$ から $tx$ への道の組」の空間である。比較写像は固定点 $tx=x$ を定値の道とともに送る。$t=\mathrm{id}$ なら右辺は $\operatorname{Map}(\Delta^1/\partial\Delta^1,X)$ で、prop-hfp-trivial の $L/\mathbb Z=\Delta^1/\partial\Delta^1$ の場合と一致する。
$G\ne\{e\}$ とする。$EG\to\Delta^0$ は Kan 複体の間の $G$ 写像で弱同値である(lem-hfp-eg)。$EG$ の作用は自由なので固定される単体はなく $(EG)^G=\emptyset$ だが、$(\Delta^0)^G=\Delta^0$ である。一方 thm-hfp-invariance により $(EG)^{hG}\to(\Delta^0)^{hG}=\Delta^0$ は弱同値であり、$(EG)^{hG}$ は恒等写像を頂点にもつ弱可縮な Kan 複体である。とくに $X=EG$ では比較写像 $\emptyset\to(EG)^{hG}$ は弱同値でない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $E$ が自由(thm-hfp-invariance) | $E=\Delta^0$、$G\ne\{e\}$、$f\colon EG\to\Delta^0$ | $\operatorname{Map}_G(E,f)$ が弱同値(実際は $\emptyset\to\Delta^0$) |
| $X$ が Kan 複体(thm-hfp-invariance) | $G=\mathbb Z/2$、$E=EG$、$f\colon N(P)\to\Delta^0$($P$ は下の順序集合) | $f_*$ が弱同値(実際は $\emptyset\to\Delta^0$) |
| $E$ が弱可縮(thm-hfp-independence) | $G=\mathbb Z/2$、$E=G$(離散)、$E'=EG$、$X=B(\mathbb Z/2)$(自明な作用) | $\operatorname{Map}_G(E,X)\simeq\operatorname{Map}_G(E',X)$(実際は連結な $X$ と、連結でない $\operatorname{Map}(BG,X)$) |
2 行目の $P$ は、元 $(n,\pm)$($n\ge0$)からなり、$(m,\varepsilon)<(n,\delta)$ を $m< n$ で定める順序集合で、$\mathbb Z/2$ は符号を入れ替えて自由に作用する。脈体 $N(P)$ の実現は球面の和 $S^0\subset S^1\subset\cdots$ で弱可縮である($n$ 以下の元の脈体の実現が $S^n$ で、それは $S^{n+1}$ の中で一点に縮む)。$P$ を圏とみたものは恒等射でない射をもつので亜群でなく、$N(P)$ は Kan 複体でない(Kan複体 の定理「脈体が Kan 複体であるための条件」)。$EG$ は亜群の脈体なので、$G$ 写像 $EG\to N(P)$ は亜群から $P$ への同変な関手に当たる(脈体 は充満忠実)。亜群の射は可逆で順序集合の可逆な射は恒等射だけなので、そのような関手は連結な $EG$ の上で一定で、値は $P$ の固定点になるが、固定点はない。よって $N(P)^{hG}=\emptyset$ である。3 行目は $\operatorname{Map}_G(G,X)\cong X$(lem-hfp-free-cells の 1)と prop-hfp-trivial による。
$X$ を一対象の圏 $G$ 上の図式とみると、通常の極限は固定点 $X^G$ である。$G$ の唯一の対象 $*$ へのスライス圏 $G/*$ は、対象が $G$ の元でどの二つの間にもただ一つの射がある亜群であり、その脈体は $G$ の作用つきで $EG$ である。したがって ホモトピー極限 の節「一般の図式のホモトピー極限」の Bousfield–Kan の式により、$X$ が Kan 複体なら $X^{hG}$ は $X$ のホモトピー極限と弱同値で結ばれる(この記事では証明しない)。位相空間についての同じ記述は Rie14 Example 6.5.8(p. 73)・Example 9.2.10(p. 115)にあり、比較写像 $X^G\to X^{hG}$ が一般には同値でないことも述べられている。
∞ 圏では、Kan 複体で豊穣された単体的圏のホモトピー極限が ∞ 圏の極限を与える(HTT09 Theorem 4.2.4.1(p. 257)の双対。ホモトピー極限 の節「$\infty$ 圏と豊穣圏での見方」)。この見方では $X^{hG}$ は関手 $BG\to\mathcal S$($\mathcal S$ は空間の∞圏)の極限であり、一点の関手 $*$ から $X$ への自然変換の空間でもある。後者は自然変換の空間をエンドで表す式(エンド(∞圏) の例「自然変換の空間」)により、エンドとして書ける。この段落の主張もこの記事では証明しない。双対に、$EG\times_GX:=(EG\times X)/G$ をホモトピー軌道といい、ホモトピー余極限を与える(位相空間の場合は Rie14 Example 9.2.10)。
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