対数の底の変換(change of base of logarithms)とは、底の違う対数を 1 つの底の対数の割り算で書き直すことである。$a,c$ が $1$ でない正の実数、$b>0$ のとき $\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}$ が成り立つ($a\ne1$ なので分母は $0$ でない)。$a^x=b$ の両辺の $\log_c$ をとれば示せる。系として、$a,b\ne1$ のとき $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$、$\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ が成り立つ。底の違う対数関数は定数倍 $\log_ax=\dfrac1{\log_ca}\log_cx$ で移り合い、グラフは縦方向の拡大・縮小(底が $1$ をまたぐときは $x$ 軸に関する折り返しを含む)で重なる。
対数の表や電卓で値が分かるのは、たいてい底が $10$ の対数(常用対数、常用対数と桁数)だけである。では、底が $2$ の対数 $\log_28$ や $\log_210$ は、常用対数の値からどう求めればよいだろうか。
$\log_28=3$ である($2^3=8$)。この値を常用対数から作ってみる。常用対数の表の値は $\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}8=0.9031$ である(小数第 5 位を四捨五入した値)。$8=2^3$ なので、$\log_{10}8=\log_{10}2^3=3\log_{10}2$ である。したがって
$$
\frac{\log_{10}8}{\log_{10}2}=\frac{3\log_{10}2}{\log_{10}2}=3=\log_28
$$
となる。表の値で割ると $\dfrac{0.9031}{0.3010}=3.0003\ldots$ で、四捨五入の誤差を除いて $3$ になる。
ex-cob-start-8 では $8$ が $2$ の累乗だったので、割り算の答えが $\log_28$ になることを確かめられた。$8$ が $2$ の累乗でなくても同じことが言えるかを見る。
$x=\log_210$ とおくと、対数の定義から $2^x=10$ である。この両辺の常用対数をとる。左辺は $\log_{10}2^x=x\log_{10}2$、右辺は $\log_{10}10=1$ なので、
$$
x\log_{10}2=1,\qquad x=\frac1{\log_{10}2}=\frac1{0.3010}=3.322\ldots
$$
となる。本当の値は $\log_210=3.3219\ldots$ で、$2^{3}=8<10<16=2^4$ から $3<\log_210<4$ であることとも合う。
2 つの例で使ったのは、「$\log_ab=x$ を $a^x=b$ に書き直し、両辺の常用対数をとる」という同じ手順である。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $\log_ab$ を常用対数の割り算で求める | 底の変換公式 | どの対数も自然対数の定数倍 |
| $\log_23\cdot\log_34=\log_24$ | 底の変換の系 | 定数倍の比の約分 |
| $y=\log_4x$ は $y=\log_2x$ の半分 | グラフの縦の拡大・縮小 | 掛け算から足し算への連続な準同型は定数倍を除いて 1 つ |
以下の記事全体で、底 $a$ は $a>0$、$a\ne1$ を満たす実数とする。
対数の定義は 指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の定義「対数と対数関数」で与えた。そこでは、指数関数 $y=a^x$ が狭義単調($a>1$ なら増加、$0< a<1$ なら減少)で、値域が正の実数全体であること(同記事の命題「指数関数の増減と値域」)を使って、次のように定めた。
$a>0$、$a\ne1$ とする。正の実数 $b$ に対し、$a^x=b$ を満たす実数 $x$ はただ 1 つある。この $x$ を、$a$ を 底 とする $b$ の 対数 といい、$\log_ab$ と書く。$b$ を 真数 という。つまり
$$
x=\log_ab\iff a^x=b\qquad(b>0)
$$
である。
「ただ 1 つある」ことの理由を確かめておく。値域が正の実数全体なので、$b>0$ なら $a^x=b$ となる $x$ が少なくとも 1 つある。狭義単調なので、$x_1\ne x_2$ なら $a^{x_1}\ne a^{x_2}$ であり、$a^x=b$ となる $x$ は 2 つ以上はない。
底の変換の証明では、次の性質を使う。
$a>0$、$a\ne1$、$b>0$、$c>0$ と実数 $r$ について、次が成り立つ。
(R1) $a^{\log_ab}=b$、$\log_a\left(a^r\right)=r$
(R2) $\log_a(bc)=\log_ab+\log_ac$
(R3) $\log_a\left(b^r\right)=r\log_ab$
(R4) $\log_ab=0\iff b=1$
(i) $x=\log_ab$ は $a^x=b$ を満たす数なので、$a^{\log_ab}=a^x=b$ である。また $a^r$ は正の数で、$a^x=a^r$ を満たす $x$ は $x=r$ だけなので、$\log_a\left(a^r\right)=r$ である。
(ii) $p=\log_ab$、$q=\log_ac$ とおくと $a^p=b$、$a^q=c$ である。指数法則により $a^{p+q}=a^pa^q=bc$ なので、対数の定義から $\log_a(bc)=p+q$ である。
(iii) $p=\log_ab$ とおくと $a^p=b$ である。指数法則により $a^{rp}=\left(a^p\right)^r=b^r$ なので、$\log_a\left(b^r\right)=rp$ である。
(iv) $\log_ab=0$ は定義により $a^0=b$ と同じで、$a^0=1$ なので $b=1$ と同じである。$\square$
性質 (iv) は、底の変換公式の分母が $0$ にならないことを確かめるときに使う。
ex-cob-start-10 の手順を、一般の底でそのまま行う。
$a,c$ を $1$ でない正の実数、$b$ を正の実数とする。このとき $\log_ca\ne0$ であり、
$$
\log_ab=\frac{\log_cb}{\log_ca}
$$
が成り立つ。
段 1(分母が $0$ でない)。$a\ne1$ なので、prop-cob-basic の (iv) を底 $c$ で使うと $\log_ca\ne0$ である。
段 2(両辺の対数をとる)。$x=\log_ab$ とおく。対数の定義 def-cob-log により $a^x=b$ である。両辺は正の数なので、底 $c$ の対数をとれて、
$$
\log_c\left(a^x\right)=\log_cb
$$
である。左辺は prop-cob-basic の (iii) により $x\log_ca$ に等しい。よって $x\log_ca=\log_cb$ である。
段 3(割る)。段 1 により $\log_ca\ne0$ なので、両辺を $\log_ca$ で割れて、
$$
x=\frac{\log_cb}{\log_ca}
$$
となる。$x=\log_ab$ だったので、公式が示された。$\square$
公式は「底 $a$ の対数」を「底 $c$ の対数」の割り算に替える。$c$ は $1$ でない正の数なら何でもよく、計算しやすい底を選べばよい。
公式の中の 3 つの操作の関係は、次の図式で見られる。$\mathbb{R}_{>0}$ は正の実数全体、$\mathbb{R}$ は実数全体を表す。
$$
\xymatrix{
& \mathbb{R}_{>0} \ar[dl]_{\log_c} \ar[dr]^{\log_a} & \\
\mathbb{R} \ar[rr]_{t\,\mapsto\,t/\log_ca} & & \mathbb{R}
}
$$
左の矢印で $b$ を $\log_cb$ に送り、下の矢印で $\log_ca$ で割ると、右の矢印で直接 $\log_ab$ に送ったものと同じになる。等式で書けば、すべての $b>0$ について $\dfrac{\log_cb}{\log_ca}=\log_ab$ ということで、これが thm-cob-main である。下の矢印は「定数 $\dfrac1{\log_ca}$ を掛ける」という、$b$ によらない操作である。この見方は後の thm-cob-graph で使う。
thm-cob-main から、計算でよく使う 4 つの公式が出る。
$a,b$ を $1$ でない正の実数とする。
(R1) $c>0$ なら $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$
(R2) $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$
(R3) $c$ が $1$ でない正の実数なら $a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$
(R4) $m\ne0$ と実数 $n$ について $\log_{a^m}\left(b^n\right)=\dfrac nm\log_ab$
(i) thm-cob-main を、底 $b$ の対数を底 $a$ の対数で書くのに使うと $\log_bc=\dfrac{\log_ac}{\log_ab}$ である($b\ne1$ なので $\log_ab\ne0$)。両辺に $\log_ab$ を掛けると $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$ である。
(ii) (i) で $c=a$ とすると $\log_ab\cdot\log_ba=\log_aa=1$ である。$\log_ab\ne0$ なので、両辺を $\log_ab$ で割って $\log_ba=\dfrac1{\log_ab}$、つまり $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ である($\log_ba\ne0$ も同じ式から分かる)。
(iii) 両辺は正の数なので、底 $c$ の対数をとって比べる。prop-cob-basic の (iii) により
$$
\log_c\left(a^{\log_cb}\right)=\log_cb\cdot\log_ca,\qquad\log_c\left(b^{\log_ca}\right)=\log_ca\cdot\log_cb
$$
で、2 つは等しい。正の数 $u,v$ について $\log_cu=\log_cv$ なら、prop-cob-basic の (i) により $u=c^{\log_cu}=c^{\log_cv}=v$ である。よって $a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$ である。
(iv) $m\ne0$、$a\ne1$ なので $a^m\ne1$ であり($a^m=1=a^0$ なら $a^x$ の狭義単調性から $m=0$ となる)、$a^m$ を底にできる。thm-cob-main で共通の底を $a$ にとると、prop-cob-basic の (i) と (iii) により
$$
\log_{a^m}\left(b^n\right)=\frac{\log_a\left(b^n\right)}{\log_a\left(a^m\right)}=\frac{n\log_ab}{m}
$$
である。$\square$
(i) は、底と真数が鎖のようにつながると、真ん中の $b$ が約分のように消えることを言っている。
底の変換公式と、その系の 4 つの公式を、使う場面で整理しておく。
| 公式 | 使う場面 | 例 |
|---|---|---|
| $\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}$ | 底をそろえる・電卓の底で計算する | $\log_210=\dfrac1{\log_{10}2}$ |
| $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$ | 底と真数が鎖になった積 | $\log_23\cdot\log_38=3$ |
| $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ | 底と真数を入れ替える | $\log_{8}2=\dfrac13$ |
| $a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$ | 指数に対数がある式 | $2^{\log_35}=5^{\log_32}$ |
| $\log_{a^m}b^n=\dfrac nm\log_ab$ | 底も真数も同じ数の累乗 | $\log_48=\dfrac32$ |
thm-cob-main で $b$ を変数 $x$ に替えると、対数関数どうしの関係になる。
$a,c$ を $1$ でない正の実数とし、$k=\dfrac1{\log_ca}$ とおく。このとき、すべての $x>0$ について
$$
\log_ax=k\log_cx
$$
である。したがって、$y=\log_ax$ のグラフは、$y=\log_cx$ のグラフの各点 $(x,y)$ を $(x,ky)$ に移したものである。$k>0$ なら $y$ 軸方向に $k$ 倍する拡大・縮小であり、$k<0$ なら $y$ 軸方向に $\lvert k\rvert$ 倍してから $x$ 軸に関して折り返す移動である。$k<0$ となるのは、$a$ と $c$ の一方が $1$ より大きく、他方が $1$ より小さいときである。
段 1(式)。$x>0$ を 1 つとる。thm-cob-main を $b=x$ として使うと $\log_ax=\dfrac{\log_cx}{\log_ca}=k\log_cx$ である。$k$ は $x$ によらない定数である。
段 2(グラフ)。点 $(x,y)$ が $y=\log_cx$ のグラフの上にあるとは $y=\log_cx$ ということである。段 1 により、このとき $ky=k\log_cx=\log_ax$ なので、点 $(x,ky)$ は $y=\log_ax$ のグラフの上にある。逆に、$y=\log_ax$ のグラフの上の点 $(x,y')$ は、$y'=k\log_cx$ なので、$y=\log_cx$ のグラフの上の点 $(x,\log_cx)$ を移したものである。よって、グラフの点はもれなく、重なりなく対応する。
段 3($k$ の符号)。$c>1$ のとき、$\log_cx$ は増加関数で $\log_c1=0$ なので、$\log_ca>0\iff a>1$ である。$0< c<1$ のとき、$\log_cx$ は減少関数なので、$\log_ca>0\iff a<1$ である(増減は 指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「対数関数の増減」)。どちらの場合も、$\log_ca>0$、つまり $k>0$ となるのは、$a$ と $c$ が $1$ に対して同じ側にあるときである。$k<0$ となるのは、$1$ に対して反対の側にあるときである。$\square$
図 1 は、$y=\log_2x$、$y=\log_3x$、$y=\log_{10}x$、$y=\log_{\frac12}x$ のグラフを重ねたものである。どのグラフも点 $(1,0)$ を通る。これは thm-cob-graph の移動で $y=0$ の点が動かないことと合っている。また縦の直線 $x=4$ の上で読むと、高さは $\log_24=2$、$\log_34=1.26\ldots$、$\log_{10}4=0.60\ldots$、$\log_{\frac12}4=-2$ で、どれも $\log_24=2$ の定数倍($1$ 倍、$\log_32=0.63\ldots$ 倍、$\log_{10}2=0.30\ldots$ 倍、$-1$ 倍)である。
底が 2、3、10、1/2 の対数関数のグラフを重ねたもので、どれも点 (1, 0) を通り、縦の直線 x = 4 の上の高さの比は底 2 のグラフに対する定数倍になっている
図 2 は、ex-cob-graph の (1) の移動を、いくつかの点で矢印にしたものである。$x$ 座標を変えずに高さだけを半分にしている。
y = log2 x のグラフの点 (2, 1)、(4, 2)、(8, 3)、(16, 4) を、高さが半分の点に矢印で移すと、y = log4 x のグラフの上に乗る
thm-cob-graph から、2 つの真数の対数の比は底によらないことも分かる。$x,y>0$、$y\ne1$ なら $\dfrac{\log_ax}{\log_ay}=\dfrac{k\log_cx}{k\log_cy}=\dfrac{\log_cx}{\log_cy}$ である。対数の目盛で目盛の間隔の比が底によらないのはこのためである(対数目盛と片対数グラフ)。
指数関数についても同じことが言える。prop-cob-basic の (i) により $a=c^{\log_ca}$ なので、$a^x=c^{x\log_ca}$ である。$y=a^x$ のグラフは $y=c^x$ のグラフを $x$ 軸方向に拡大・縮小したものになる(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の「さらに先へ」)。対数関数では縦、指数関数では横の拡大・縮小になるのは、2 つが互いの逆関数で、グラフが直線 $y=x$ に関して対称だからである。$x$ 軸に関する折り返しの式の扱い($y$ を $-y$ に替える)は グラフの平行移動と対称移動 で扱った。
底の違う対数を比べるときは、底をそろえるか、間に分かりやすい数をはさむ。
常用対数と桁数 では、正の整数 $N$ の 10 進法での桁数が $\lfloor\log_{10}N\rfloor+1$ であることを示した($\lfloor t\rfloor$ は $t$ 以下の最大の整数)。底の変換を使うと、ほかの進法の桁数も常用対数の値から求められる。
$b$ を $2$ 以上の整数、$N$ を正の整数とする。$N$ の $b$ 進法の表し方の桁数は
$$
\lfloor\log_bN\rfloor+1=\left\lfloor\frac{\log_{10}N}{\log_{10}b}\right\rfloor+1
$$
である。
段 1(桁数と不等式)。$m$ を $0$ 以上の整数とする。n進法と記数法 の命題「$n$ 進法での桁数」により、$N$ の $b$ 進法の表し方が $m+1$ 桁であることと、$b^m\le N< b^{m+1}$ であることは同値である。
段 2(対数をとる)。$b>1$ なので $\log_bx$ は増加関数であり、大小を保つ(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「対数関数の増減」)。$b^m\le N< b^{m+1}$ の各辺の $\log_b$ をとると、prop-cob-basic の (i) により $m\le\log_bN< m+1$ である。逆に $m\le\log_bN< m+1$ なら、$b^x$ も増加関数なので $b^m\le b^{\log_bN}=N< b^{m+1}$ である。よって $N$ が $m+1$ 桁であることと $m=\lfloor\log_bN\rfloor$ であることは同値で、桁数は $\lfloor\log_bN\rfloor+1$ である。
段 3(常用対数で書く)。thm-cob-main で $c=10$ とすると $\log_bN=\dfrac{\log_{10}N}{\log_{10}b}$ である。$\square$
常用対数の値 $\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}3=0.4771$ を使う。
(1) $3^{20}$ の 2 進法での桁数。$\log_23^{20}=\dfrac{20\log_{10}3}{\log_{10}2}=\dfrac{9.542}{0.3010}=31.70\ldots$ なので、prop-cob-digits により $31+1=32$ 桁である。実際 $3^{20}=3486784401$ で、$2^{31}=2147483648\le3^{20}<4294967296=2^{32}$ である。
(2) $2^{100}$ の 3 進法での桁数。$\log_32^{100}=\dfrac{100\log_{10}2}{\log_{10}3}=\dfrac{30.10}{0.4771}=63.08\ldots$ なので $64$ 桁である。
表の値は四捨五入した値なので、割り算の結果にも誤差がある。(1)・(2) では商の小数部分($0.70$ と $0.08$)が $0$ からも $1$ からも十分に離れているので、整数部分は誤差で変わらない(誤差の見積もりは下に畳む)。小数部分が $0$ や $1$ にごく近いときは、表の値だけでは桁数が決まらないことがある(常用対数と桁数 の反例「表の値では決まらない桁数」)。
表の値の誤差は $0.00005$ 以下である。(1) の分子 $20\log_{10}3$ の誤差は $20\times0.00005=0.001$ 以下、分母の誤差は $0.00005$ 以下なので、商は $\dfrac{9.542-0.001}{0.3010+0.00005}=31.69\ldots$ 以上 $\dfrac{9.542+0.001}{0.3010-0.00005}=31.71\ldots$ 以下にある。(2) では商は $\dfrac{30.10-0.005}{0.4771+0.00005}=63.07\ldots$ 以上 $\dfrac{30.10+0.005}{0.4771-0.00005}=63.10\ldots$ 以下にある。どちらも整数部分が決まる。本当の値は $31.699\ldots$ と $63.092\ldots$ である。
thm-cob-main の仮定を 1 つずつ外すと、何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 底 $a\ne1$ | $a=1$、$b=2$ | $\log_12$ が定まらず、公式の分母 $\log_c1$ が $0$ になる |
| 変換先の底 $c\ne1$ | $c=1$ | 右辺の $\log_1b$、$\log_1a$ が定まらない |
| 真数 $b>0$ | $a=2$、$b=-8$ | $\log_2(-8)$ が定まらない |
| 底 $a>0$ | $a=-2$、$b=-8$ | $(-2)^3=-8$ でも $\log_{-2}(-8)$ を定められない |
(2) $c=1$。(1) と同じ理由で $\log_1b$ は $b=1$ 以外では値がなく、$b=1$ ではどの実数も $1^x=1$ を満たすので $1$ つに決まらない。
(3) $b=-8$、$a=2$。$2^x$ はどの実数 $x$ でも正なので、$2^x=-8$ となる $x$ はない。真数が負の数や $0$ の対数は定義しない。
(4) $a=-2$。$(-2)^x$ は $x=\dfrac12$ で実数にならず、実数全体で定義された関数にならない(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の反例「底が負」)。$(-2)^3=-8$ から「$\log_{-2}(-8)=3$」としたくなるが、$(-2)^x=-8$ の解が 1 つに決まる仕組み(狭義単調性)がないので、対数を定めない。
公式の形を別の公式と取り違える誤りも多い。数値の反例とともに並べる。
| 取り違え | 数値の反例 | 正しい式 |
|---|---|---|
| $\dfrac{\log_cb}{\log_ca}=\log_c\dfrac ba$ | $\dfrac{\log_28}{\log_24}=\dfrac32$、$\log_2\dfrac84=1$ | $\log_c\dfrac ba=\log_cb-\log_ca$ |
| $\log_c(x+y)=\log_cx+\log_cy$ | $\log_2(4+4)=3$、$\log_24+\log_24=4$ | $\log_c(xy)=\log_cx+\log_cy$ |
| $\log_ab=\log_ba$ | $\log_28=3$、$\log_82=\dfrac13$ | $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ |
| $\log_{a^m}b=m\log_ab$ | $\log_{4}16=2$、$2\log_216=8$ | $\log_{a^m}b=\dfrac1m\log_ab$ |
2 行目で $x=y=2$ を選ぶと $\log_2(2+2)=2=\log_22+\log_22$ となって、たまたま等しくなる。反例を作るときは、1 組で等しくなっても式が正しいとは言えないことに注意する。
prop-cob-basic の (ii) は、対数が掛け算を足し算に変えることを言っている。逆に、掛け算を足し算に変える連続な関数は、どれも対数の定数倍であることが示せる。底の変換はその定数を決める操作である。
$L$ を正の実数全体で定義された連続な関数で、すべての $x,y>0$ について $L(xy)=L(x)+L(y)$ を満たすものとする。このとき、すべての $x>0$ について
$$
L(x)=L(2)\log_2x
$$
である。さらに $L(2)\ne0$ なら、$a=2^{\frac1{L(2)}}$ とおくと $L(x)=\log_ax$ である。
$g(t)=L\left(2^t\right)$ とおくと、$g$ は実数全体で定義された連続な関数で、指数法則により $g(s+t)=L\left(2^s2^t\right)=L\left(2^s\right)+L\left(2^t\right)=g(s)+g(t)$ を満たす。指数関数と対数関数はどう定義するか の系「和の形の関数方程式の連続な解」により $g(t)=g(1)t=L(2)t$ である。$x>0$ に対し $t=\log_2x$ とおくと $2^t=x$ なので、$L(x)=g(\log_2x)=L(2)\log_2x$ である。$L(2)\ne0$ のとき、$a=2^{\frac1{L(2)}}$ は正で、指数 $\dfrac1{L(2)}\ne0$ なので $a\ne1$ であり、$\log_2a=\dfrac1{L(2)}$ である。thm-cob-graph により $\log_ax=\dfrac{\log_2x}{\log_2a}=L(2)\log_2x=L(x)$ である。
大学の言葉では、正の実数の掛け算の群 $(\mathbb{R}_{>0},\times)$ から実数の足し算の群 $(\mathbb{R},+)$ への連続な準同型(演算を保つ写像)は、どれも 1 つの対数の定数倍である。定数倍を除けばただ 1 つで、「底を選ぶ」ことは、$L(a)=1$ となる $a$、つまり「$1$ にあたる量」を選ぶことに当たる。長さをメートルで測るかセンチメートルで測るかで数値が定数倍になるのと同じで、底の変換公式は単位の換算である。大学では、微分が最も簡単になる底 $e$(自然対数)を標準の単位に選ぶ(eはなぜ特別か、対数関数)。
$\log_32\cdot\log_427$ の値を求めよ。
底を $2$ にそろえる。thm-cob-main と prop-cob-basic の (iii) により $\log_32=\dfrac{1}{\log_23}$、$\log_427=\dfrac{\log_227}{\log_24}=\dfrac{3\log_23}{2}$ である。掛けると $\dfrac1{\log_23}\cdot\dfrac{3\log_23}2=\dfrac32$ である。
$\log_23=p$、$\log_35=q$ とするとき、$\log_615$ を $p$、$q$ で表せ。
底を $2$ にそろえる。$\log_25=\log_23\cdot\log_35=pq$(cor-cob-rules の (i))なので、$\log_215=\log_23+\log_25=p+pq$、$\log_26=\log_22+\log_23=1+p$ である。thm-cob-main により $\log_615=\dfrac{\log_215}{\log_26}=\dfrac{p+pq}{1+p}$ である。数値で確かめると、$p=1.5849\ldots$、$q=1.4649\ldots$ で右辺は $1.5113\ldots$、$\log_615=1.5113\ldots$ である。
$\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}5=0.6990$ として、$5^{30}$ を 2 進法で書いたときの桁数を求めよ。
prop-cob-digits により、$\log_25^{30}=\dfrac{30\times0.6990}{0.3010}=\dfrac{20.97}{0.3010}=69.66\ldots$ の整数部分に $1$ を足して $70$ 桁である。表の値の誤差を入れても商は $69.65$ から $69.69$ の間にあり、整数部分は $69$ に決まる。実際 $2^{69}\le5^{30}<2^{70}$ である。
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