対数の底の変換

同義語:底の変換公式change of base of logarithms

概要

対数の底の変換(change of base of logarithms)とは、底の違う対数を 1 つの底の対数の割り算で書き直すことである。$a,c$ が $1$ でない正の実数、$b>0$ のとき $\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}$ が成り立つ($a\ne1$ なので分母は $0$ でない)。$a^x=b$ の両辺の $\log_c$ をとれば示せる。系として、$a,b\ne1$ のとき $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$、$\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ が成り立つ。底の違う対数関数は定数倍 $\log_ax=\dfrac1{\log_ca}\log_cx$ で移り合い、グラフは縦方向の拡大・縮小(底が $1$ をまたぐときは $x$ 軸に関する折り返しを含む)で重なる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 指数関数と対数関数はどう定義するか, 指数関数・対数関数のグラフと逆関数, 常用対数と桁数

高校での出発点:常用対数しかないときに $\log_2$ を求める

対数の表や電卓で値が分かるのは、たいてい底が $10$ の対数(常用対数、常用対数と桁数)だけである。では、底が $2$ の対数 $\log_28$ や $\log_210$ は、常用対数の値からどう求めればよいだろうか。

$\log_28$ を常用対数から求める

$\log_28=3$ である($2^3=8$)。この値を常用対数から作ってみる。常用対数の表の値は $\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}8=0.9031$ である(小数第 5 位を四捨五入した値)。$8=2^3$ なので、$\log_{10}8=\log_{10}2^3=3\log_{10}2$ である。したがって
$$ \frac{\log_{10}8}{\log_{10}2}=\frac{3\log_{10}2}{\log_{10}2}=3=\log_28 $$
となる。表の値で割ると $\dfrac{0.9031}{0.3010}=3.0003\ldots$ で、四捨五入の誤差を除いて $3$ になる。

ex-cob-start-8 では $8$ が $2$ の累乗だったので、割り算の答えが $\log_28$ になることを確かめられた。$8$ が $2$ の累乗でなくても同じことが言えるかを見る。

$\log_210$ を常用対数から求める

$x=\log_210$ とおくと、対数の定義から $2^x=10$ である。この両辺の常用対数をとる。左辺は $\log_{10}2^x=x\log_{10}2$、右辺は $\log_{10}10=1$ なので、
$$ x\log_{10}2=1,\qquad x=\frac1{\log_{10}2}=\frac1{0.3010}=3.322\ldots $$
となる。本当の値は $\log_210=3.3219\ldots$ で、$2^{3}=8<10<16=2^4$ から $3<\log_210<4$ であることとも合う。

2 つの例で使ったのは、「$\log_ab=x$ を $a^x=b$ に書き直し、両辺の常用対数をとる」という同じ手順である。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. どの底の対数も、1 つの底の対数の割り算で書けるか。→ thm-cob-main
  2. 底の変換から、どんな計算の公式が出てくるか。→ cor-cob-rules
  3. 底の違う対数関数のグラフは、どういう関係にあるか。→ thm-cob-graph
  4. 底の変換は、大小の比較や桁数の計算にどう使えるか。→ ex-cob-compare、prop-cob-digits
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $\log_ab$ を常用対数の割り算で求める底の変換公式どの対数も自然対数の定数倍
    $\log_23\cdot\log_34=\log_24$底の変換の系定数倍の比の約分
    $y=\log_4x$ は $y=\log_2x$ の半分グラフの縦の拡大・縮小掛け算から足し算への連続な準同型は定数倍を除いて 1 つ

対数の定義と基本性質

以下の記事全体で、底 $a$ は $a>0$、$a\ne1$ を満たす実数とする。
対数の定義は 指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の定義「対数と対数関数」で与えた。そこでは、指数関数 $y=a^x$ が狭義単調($a>1$ なら増加、$0< a<1$ なら減少)で、値域が正の実数全体であること(同記事の命題「指数関数の増減と値域」)を使って、次のように定めた。

対数

$a>0$、$a\ne1$ とする。正の実数 $b$ に対し、$a^x=b$ を満たす実数 $x$ はただ 1 つある。この $x$ を、$a$ を 底 とする $b$ の 対数 といい、$\log_ab$ と書く。$b$ を 真数 という。つまり
$$ x=\log_ab\iff a^x=b\qquad(b>0) $$
である。

「ただ 1 つある」ことの理由を確かめておく。値域が正の実数全体なので、$b>0$ なら $a^x=b$ となる $x$ が少なくとも 1 つある。狭義単調なので、$x_1\ne x_2$ なら $a^{x_1}\ne a^{x_2}$ であり、$a^x=b$ となる $x$ は 2 つ以上はない。

対数の値
  1. $2^5=32$ なので $\log_232=5$ である。
  2. $9^{\frac12}=\sqrt9=3$ なので $\log_93=\dfrac12$ である。
  3. $\left(\dfrac12\right)^{-3}=2^3=8$ なので $\log_{\frac12}8=-3$ である。
  4. $a^0=1$、$a^1=a$ なので、どの底でも $\log_a1=0$、$\log_aa=1$ である。

底の変換の証明では、次の性質を使う。

対数の基本性質

$a>0$、$a\ne1$、$b>0$、$c>0$ と実数 $r$ について、次が成り立つ。
(R1) $a^{\log_ab}=b$、$\log_a\left(a^r\right)=r$
(R2) $\log_a(bc)=\log_ab+\log_ac$
(R3) $\log_a\left(b^r\right)=r\log_ab$
(R4) $\log_ab=0\iff b=1$

指数法則に書き直す

(i) $x=\log_ab$ は $a^x=b$ を満たす数なので、$a^{\log_ab}=a^x=b$ である。また $a^r$ は正の数で、$a^x=a^r$ を満たす $x$ は $x=r$ だけなので、$\log_a\left(a^r\right)=r$ である。
(ii) $p=\log_ab$、$q=\log_ac$ とおくと $a^p=b$、$a^q=c$ である。指数法則により $a^{p+q}=a^pa^q=bc$ なので、対数の定義から $\log_a(bc)=p+q$ である。
(iii) $p=\log_ab$ とおくと $a^p=b$ である。指数法則により $a^{rp}=\left(a^p\right)^r=b^r$ なので、$\log_a\left(b^r\right)=rp$ である。
(iv) $\log_ab=0$ は定義により $a^0=b$ と同じで、$a^0=1$ なので $b=1$ と同じである。$\square$

性質 (iv) は、底の変換公式の分母が $0$ にならないことを確かめるときに使う。

主定理 1:底の変換公式

ex-cob-start-10 の手順を、一般の底でそのまま行う。

底の変換公式

$a,c$ を $1$ でない正の実数、$b$ を正の実数とする。このとき $\log_ca\ne0$ であり、
$$ \log_ab=\frac{\log_cb}{\log_ca} $$
が成り立つ。

$a^x=b$ の両辺の $\log_c$ をとる

段 1(分母が $0$ でない)。$a\ne1$ なので、prop-cob-basic の (iv) を底 $c$ で使うと $\log_ca\ne0$ である。
段 2(両辺の対数をとる)。$x=\log_ab$ とおく。対数の定義 def-cob-log により $a^x=b$ である。両辺は正の数なので、底 $c$ の対数をとれて、
$$ \log_c\left(a^x\right)=\log_cb $$
である。左辺は prop-cob-basic の (iii) により $x\log_ca$ に等しい。よって $x\log_ca=\log_cb$ である。
段 3(割る)。段 1 により $\log_ca\ne0$ なので、両辺を $\log_ca$ で割れて、
$$ x=\frac{\log_cb}{\log_ca} $$
となる。$x=\log_ab$ だったので、公式が示された。$\square$

公式は「底 $a$ の対数」を「底 $c$ の対数」の割り算に替える。$c$ は $1$ でない正の数なら何でもよく、計算しやすい底を選べばよい。

共通の底を選んで計算する
  1. $\log_927$。$9=3^2$、$27=3^3$ なので底 $3$ を選ぶ。
    $$ \log_927=\frac{\log_327}{\log_39}=\frac32 $$
    確かめると、$9^{\frac32}=\left(\sqrt9\right)^3=3^3=27$ である。
  2. $\log_832$。$8=2^3$、$32=2^5$ なので底 $2$ を選ぶと $\log_832=\dfrac{\log_232}{\log_28}=\dfrac53$ である。確かめると $8^{\frac53}=\left(2^3\right)^{\frac53}=2^5=32$ である。
  3. $\log_310$ を常用対数で求める。$\log_{10}3=0.4771$ なので $\log_310=\dfrac{\log_{10}10}{\log_{10}3}=\dfrac1{0.4771}=2.096\ldots$ である。$3^2=9<10<27=3^3$ から $2<\log_310<3$ であることとも合う。

公式の中の 3 つの操作の関係は、次の図式で見られる。$\mathbb{R}_{>0}$ は正の実数全体、$\mathbb{R}$ は実数全体を表す。
$$ \xymatrix{ & \mathbb{R}_{>0} \ar[dl]_{\log_c} \ar[dr]^{\log_a} & \\ \mathbb{R} \ar[rr]_{t\,\mapsto\,t/\log_ca} & & \mathbb{R} } $$
左の矢印で $b$ を $\log_cb$ に送り、下の矢印で $\log_ca$ で割ると、右の矢印で直接 $\log_ab$ に送ったものと同じになる。等式で書けば、すべての $b>0$ について $\dfrac{\log_cb}{\log_ca}=\log_ab$ ということで、これが thm-cob-main である。下の矢印は「定数 $\dfrac1{\log_ca}$ を掛ける」という、$b$ によらない操作である。この見方は後の thm-cob-graph で使う。

底の変換から出る公式

thm-cob-main から、計算でよく使う 4 つの公式が出る。

底の変換の系

$a,b$ を $1$ でない正の実数とする。
(R1) $c>0$ なら $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$
(R2) $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$
(R3) $c$ が $1$ でない正の実数なら $a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$
(R4) $m\ne0$ と実数 $n$ について $\log_{a^m}\left(b^n\right)=\dfrac nm\log_ab$

どれも共通の底にそろえる

(i) thm-cob-main を、底 $b$ の対数を底 $a$ の対数で書くのに使うと $\log_bc=\dfrac{\log_ac}{\log_ab}$ である($b\ne1$ なので $\log_ab\ne0$)。両辺に $\log_ab$ を掛けると $\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$ である。
(ii) (i) で $c=a$ とすると $\log_ab\cdot\log_ba=\log_aa=1$ である。$\log_ab\ne0$ なので、両辺を $\log_ab$ で割って $\log_ba=\dfrac1{\log_ab}$、つまり $\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$ である($\log_ba\ne0$ も同じ式から分かる)。
(iii) 両辺は正の数なので、底 $c$ の対数をとって比べる。prop-cob-basic の (iii) により
$$ \log_c\left(a^{\log_cb}\right)=\log_cb\cdot\log_ca,\qquad\log_c\left(b^{\log_ca}\right)=\log_ca\cdot\log_cb $$
で、2 つは等しい。正の数 $u,v$ について $\log_cu=\log_cv$ なら、prop-cob-basic の (i) により $u=c^{\log_cu}=c^{\log_cv}=v$ である。よって $a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$ である。
(iv) $m\ne0$、$a\ne1$ なので $a^m\ne1$ であり($a^m=1=a^0$ なら $a^x$ の狭義単調性から $m=0$ となる)、$a^m$ を底にできる。thm-cob-main で共通の底を $a$ にとると、prop-cob-basic の (i) と (iii) により
$$ \log_{a^m}\left(b^n\right)=\frac{\log_a\left(b^n\right)}{\log_a\left(a^m\right)}=\frac{n\log_ab}{m} $$
である。$\square$

(i) は、底と真数が鎖のようにつながると、真ん中の $b$ が約分のように消えることを言っている。

鎖のようにつながる積
  1. $\log_23\cdot\log_38$。cor-cob-rules の (i) により $\log_28=3$ である。
  2. $\log_23\cdot\log_34\cdot\log_45\cdots\log_{15}16$(底が $2$ から $15$ までの $14$ 個の積)。(i) を $1$ 回使うと、はじめの $2$ つは $\log_23\cdot\log_34=\log_24$ になる。これに $\log_45$ を掛けると $\log_25$ になる。これを続けると、$k$ 個まで掛けたものは $\log_2(k+2)$ になり($k$ についての帰納法)、$14$ 個の積は
    $$ \underbrace{\log_23\cdot\log_34\cdots\log_{15}16}_{14\text{ 個}}=\log_216=4 $$
    である。
  3. $2^{\log_35}$ と $5^{\log_32}$。(iii) により等しい。数値では、$\log_35=1.4649\ldots$、$\log_32=0.6309\ldots$ で、どちらも $2.7605\ldots$ になる。
底と真数を同じ数の累乗で書く
  1. $\log_48=\log_{2^2}\left(2^3\right)=\dfrac32\log_22=\dfrac32$ である(cor-cob-rules の (iv))。
  2. $\log_{\frac19}27=\log_{3^{-2}}\left(3^3\right)=\dfrac3{-2}=-\dfrac32$ である。確かめると $\left(\dfrac19\right)^{-\frac32}=9^{\frac32}=27$ である。
  3. $\log_{\sqrt2}8=\log_{2^{\frac12}}\left(2^3\right)=\dfrac3{\frac12}=6$ である。確かめると $\left(\sqrt2\right)^6=2^3=8$ である。

底の変換公式と、その系の 4 つの公式を、使う場面で整理しておく。

公式使う場面例
$\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}$底をそろえる・電卓の底で計算する$\log_210=\dfrac1{\log_{10}2}$
$\log_ab\cdot\log_bc=\log_ac$底と真数が鎖になった積$\log_23\cdot\log_38=3$
$\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$底と真数を入れ替える$\log_{8}2=\dfrac13$
$a^{\log_cb}=b^{\log_ca}$指数に対数がある式$2^{\log_35}=5^{\log_32}$
$\log_{a^m}b^n=\dfrac nm\log_ab$底も真数も同じ数の累乗$\log_48=\dfrac32$

主定理 2:底の違う対数関数のグラフ

thm-cob-main で $b$ を変数 $x$ に替えると、対数関数どうしの関係になる。

底の違う対数関数は定数倍で移り合う

$a,c$ を $1$ でない正の実数とし、$k=\dfrac1{\log_ca}$ とおく。このとき、すべての $x>0$ について
$$ \log_ax=k\log_cx $$
である。したがって、$y=\log_ax$ のグラフは、$y=\log_cx$ のグラフの各点 $(x,y)$ を $(x,ky)$ に移したものである。$k>0$ なら $y$ 軸方向に $k$ 倍する拡大・縮小であり、$k<0$ なら $y$ 軸方向に $\lvert k\rvert$ 倍してから $x$ 軸に関して折り返す移動である。$k<0$ となるのは、$a$ と $c$ の一方が $1$ より大きく、他方が $1$ より小さいときである。

公式の $b$ を $x$ に替える

段 1(式)。$x>0$ を 1 つとる。thm-cob-main を $b=x$ として使うと $\log_ax=\dfrac{\log_cx}{\log_ca}=k\log_cx$ である。$k$ は $x$ によらない定数である。
段 2(グラフ)。点 $(x,y)$ が $y=\log_cx$ のグラフの上にあるとは $y=\log_cx$ ということである。段 1 により、このとき $ky=k\log_cx=\log_ax$ なので、点 $(x,ky)$ は $y=\log_ax$ のグラフの上にある。逆に、$y=\log_ax$ のグラフの上の点 $(x,y')$ は、$y'=k\log_cx$ なので、$y=\log_cx$ のグラフの上の点 $(x,\log_cx)$ を移したものである。よって、グラフの点はもれなく、重なりなく対応する。
段 3($k$ の符号)。$c>1$ のとき、$\log_cx$ は増加関数で $\log_c1=0$ なので、$\log_ca>0\iff a>1$ である。$0< c<1$ のとき、$\log_cx$ は減少関数なので、$\log_ca>0\iff a<1$ である(増減は 指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「対数関数の増減」)。どちらの場合も、$\log_ca>0$、つまり $k>0$ となるのは、$a$ と $c$ が $1$ に対して同じ側にあるときである。$k<0$ となるのは、$1$ に対して反対の側にあるときである。$\square$

底 $2$ のグラフから移す
  1. $a=4$、$c=2$。$k=\dfrac1{\log_24}=\dfrac12$ なので $\log_4x=\dfrac12\log_2x$ である。$y=\log_2x$ のグラフの点 $(16,4)$ は $(16,2)$ に移り、確かに $\log_416=2$ である。点 $(1,0)$ は動かない。
  2. $a=\dfrac12$、$c=2$。$k=\dfrac1{\log_2\frac12}=\dfrac1{-1}=-1$ なので $\log_{\frac12}x=-\log_2x$ である。$y=\log_2x$ のグラフの点 $(8,3)$ は $(8,-3)$ に移り、確かに $\left(\dfrac12\right)^{-3}=8$ である。これは $x$ 軸に関する折り返しだけで、拡大・縮小はない。
  3. $a=10$、$c=2$。$k=\dfrac1{\log_210}=\log_{10}2=0.3010\ldots$(cor-cob-rules の (ii))なので、$y=\log_{10}x$ のグラフは $y=\log_2x$ のグラフを縦に約 $0.3$ 倍に縮めたものである。

図 1 は、$y=\log_2x$、$y=\log_3x$、$y=\log_{10}x$、$y=\log_{\frac12}x$ のグラフを重ねたものである。どのグラフも点 $(1,0)$ を通る。これは thm-cob-graph の移動で $y=0$ の点が動かないことと合っている。また縦の直線 $x=4$ の上で読むと、高さは $\log_24=2$、$\log_34=1.26\ldots$、$\log_{10}4=0.60\ldots$、$\log_{\frac12}4=-2$ で、どれも $\log_24=2$ の定数倍($1$ 倍、$\log_32=0.63\ldots$ 倍、$\log_{10}2=0.30\ldots$ 倍、$-1$ 倍)である。
底が 2、3、10、1/2 の対数関数のグラフを重ねたもので、どれも点 (1, 0) を通り、縦の直線 x = 4 の上の高さの比は底 2 のグラフに対する定数倍になっている 底が 2、3、10、1/2 の対数関数のグラフを重ねたもので、どれも点 (1, 0) を通り、縦の直線 x = 4 の上の高さの比は底 2 のグラフに対する定数倍になっている
図 2 は、ex-cob-graph の (1) の移動を、いくつかの点で矢印にしたものである。$x$ 座標を変えずに高さだけを半分にしている。
y = log2 x のグラフの点 (2, 1)、(4, 2)、(8, 3)、(16, 4) を、高さが半分の点に矢印で移すと、y = log4 x のグラフの上に乗る y = log2 x のグラフの点 (2, 1)、(4, 2)、(8, 3)、(16, 4) を、高さが半分の点に矢印で移すと、y = log4 x のグラフの上に乗る
thm-cob-graph から、2 つの真数の対数の比は底によらないことも分かる。$x,y>0$、$y\ne1$ なら $\dfrac{\log_ax}{\log_ay}=\dfrac{k\log_cx}{k\log_cy}=\dfrac{\log_cx}{\log_cy}$ である。対数の目盛で目盛の間隔の比が底によらないのはこのためである(対数目盛と片対数グラフ)。
指数関数についても同じことが言える。prop-cob-basic の (i) により $a=c^{\log_ca}$ なので、$a^x=c^{x\log_ca}$ である。$y=a^x$ のグラフは $y=c^x$ のグラフを $x$ 軸方向に拡大・縮小したものになる(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の「さらに先へ」)。対数関数では縦、指数関数では横の拡大・縮小になるのは、2 つが互いの逆関数で、グラフが直線 $y=x$ に関して対称だからである。$x$ 軸に関する折り返しの式の扱い($y$ を $-y$ に替える)は グラフの平行移動と対称移動 で扱った。

底の変換を使う計算

大小の比較

底の違う対数を比べるときは、底をそろえるか、間に分かりやすい数をはさむ。

底の違う対数の大小
  1. $\log_23$ と $\log_35$。どちらも $\dfrac32$ に近いので、$\dfrac32$ と比べる。$2^{\frac32}=2\sqrt2=\sqrt8<\sqrt9=3$ で、底 $2>1$ の対数は増加なので $\dfrac32=\log_2 2^{\frac32}<\log_23$ である。一方 $3^{\frac32}=3\sqrt3=\sqrt{27}>\sqrt{25}=5$ なので $\log_35<\log_3 3^{\frac32}=\dfrac32$ である。よって $\log_35<\dfrac32<\log_23$ である。数値では $\log_23=1.584\ldots$、$\log_35=1.464\ldots$ である。
  2. $\log_25$ と $\log_424$。thm-cob-graph により $\log_424=\dfrac12\log_224=\log_2\sqrt{24}$ である(最後は prop-cob-basic の (iii))。$\sqrt{24}<\sqrt{25}=5$ なので $\log_424<\log_25$ である。数値では $\log_25=2.321\ldots$、$\log_424=2.292\ldots$ である。
  3. $\log_{\frac12}3$ と $\log_{\frac15}3$。ex-cob-graph の (2) と同じく $\log_{\frac12}3=-\log_23$、$\log_{\frac15}3=-\log_53$ である。$\log_23=\dfrac1{\log_32}$、$\log_53=\dfrac1{\log_35}$ で(cor-cob-rules の (ii))、$0<\log_32<\log_35$ なので $\log_23>\log_53>0$ である。符号を替えると $\log_{\frac12}3<\log_{\frac15}3$ である。数値では $-1.584\ldots<-0.682\ldots$ である。底が $1$ より小さい対数では、底が $0$ に近いほど値の絶対値が小さい。
  1. のように、底が $1$ より小さい対数は、cor-cob-rules の (iv) で $\log_{\frac1a}b=\log_{a^{-1}}b=-\log_ab$ と書き直すと、底が $1$ より大きい場合の比較に移せる。

$b$ 進法の桁数

常用対数と桁数 では、正の整数 $N$ の 10 進法での桁数が $\lfloor\log_{10}N\rfloor+1$ であることを示した($\lfloor t\rfloor$ は $t$ 以下の最大の整数)。底の変換を使うと、ほかの進法の桁数も常用対数の値から求められる。

$b$ 進法での桁数

$b$ を $2$ 以上の整数、$N$ を正の整数とする。$N$ の $b$ 進法の表し方の桁数は
$$ \lfloor\log_bN\rfloor+1=\left\lfloor\frac{\log_{10}N}{\log_{10}b}\right\rfloor+1 $$
である。

桁数の不等式の両辺の $\log_b$ をとる

段 1(桁数と不等式)。$m$ を $0$ 以上の整数とする。n進法と記数法 の命題「$n$ 進法での桁数」により、$N$ の $b$ 進法の表し方が $m+1$ 桁であることと、$b^m\le N< b^{m+1}$ であることは同値である。
段 2(対数をとる)。$b>1$ なので $\log_bx$ は増加関数であり、大小を保つ(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「対数関数の増減」)。$b^m\le N< b^{m+1}$ の各辺の $\log_b$ をとると、prop-cob-basic の (i) により $m\le\log_bN< m+1$ である。逆に $m\le\log_bN< m+1$ なら、$b^x$ も増加関数なので $b^m\le b^{\log_bN}=N< b^{m+1}$ である。よって $N$ が $m+1$ 桁であることと $m=\lfloor\log_bN\rfloor$ であることは同値で、桁数は $\lfloor\log_bN\rfloor+1$ である。
段 3(常用対数で書く)。thm-cob-main で $c=10$ とすると $\log_bN=\dfrac{\log_{10}N}{\log_{10}b}$ である。$\square$

2 進法・3 進法での桁数

常用対数の値 $\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}3=0.4771$ を使う。
(1) $3^{20}$ の 2 進法での桁数。$\log_23^{20}=\dfrac{20\log_{10}3}{\log_{10}2}=\dfrac{9.542}{0.3010}=31.70\ldots$ なので、prop-cob-digits により $31+1=32$ 桁である。実際 $3^{20}=3486784401$ で、$2^{31}=2147483648\le3^{20}<4294967296=2^{32}$ である。
(2) $2^{100}$ の 3 進法での桁数。$\log_32^{100}=\dfrac{100\log_{10}2}{\log_{10}3}=\dfrac{30.10}{0.4771}=63.08\ldots$ なので $64$ 桁である。

表の値は四捨五入した値なので、割り算の結果にも誤差がある。(1)・(2) では商の小数部分($0.70$ と $0.08$)が $0$ からも $1$ からも十分に離れているので、整数部分は誤差で変わらない(誤差の見積もりは下に畳む)。小数部分が $0$ や $1$ にごく近いときは、表の値だけでは桁数が決まらないことがある(常用対数と桁数 の反例「表の値では決まらない桁数」)。

誤差の見積もりを開く

表の値の誤差は $0.00005$ 以下である。(1) の分子 $20\log_{10}3$ の誤差は $20\times0.00005=0.001$ 以下、分母の誤差は $0.00005$ 以下なので、商は $\dfrac{9.542-0.001}{0.3010+0.00005}=31.69\ldots$ 以上 $\dfrac{9.542+0.001}{0.3010-0.00005}=31.71\ldots$ 以下にある。(2) では商は $\dfrac{30.10-0.005}{0.4771+0.00005}=63.07\ldots$ 以上 $\dfrac{30.10+0.005}{0.4771-0.00005}=63.10\ldots$ 以下にある。どちらも整数部分が決まる。本当の値は $31.699\ldots$ と $63.092\ldots$ である。

例と反例

thm-cob-main の仮定を 1 つずつ外すと、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
底 $a\ne1$$a=1$、$b=2$$\log_12$ が定まらず、公式の分母 $\log_c1$ が $0$ になる
変換先の底 $c\ne1$$c=1$右辺の $\log_1b$、$\log_1a$ が定まらない
真数 $b>0$$a=2$、$b=-8$$\log_2(-8)$ が定まらない
底 $a>0$$a=-2$、$b=-8$$(-2)^3=-8$ でも $\log_{-2}(-8)$ を定められない
反例の確認
  1. $a=1$。どの $x$ でも $1^x=1$ なので、$1^x=2$ となる $x$ はなく、$\log_12$ は定まらない。公式の右辺でも、$c=10$ なら分母は $\log_{10}1=0$ で、$\dfrac{\log_{10}2}{0}$ は意味をもたない。
    残りの 3 行の確認を開く

    (2) $c=1$。(1) と同じ理由で $\log_1b$ は $b=1$ 以外では値がなく、$b=1$ ではどの実数も $1^x=1$ を満たすので $1$ つに決まらない。

    (3) $b=-8$、$a=2$。$2^x$ はどの実数 $x$ でも正なので、$2^x=-8$ となる $x$ はない。真数が負の数や $0$ の対数は定義しない。

    (4) $a=-2$。$(-2)^x$ は $x=\dfrac12$ で実数にならず、実数全体で定義された関数にならない(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の反例「底が負」)。$(-2)^3=-8$ から「$\log_{-2}(-8)=3$」としたくなるが、$(-2)^x=-8$ の解が 1 つに決まる仕組み(狭義単調性)がないので、対数を定めない。

公式の形を別の公式と取り違える誤りも多い。数値の反例とともに並べる。

取り違え数値の反例正しい式
$\dfrac{\log_cb}{\log_ca}=\log_c\dfrac ba$$\dfrac{\log_28}{\log_24}=\dfrac32$、$\log_2\dfrac84=1$$\log_c\dfrac ba=\log_cb-\log_ca$
$\log_c(x+y)=\log_cx+\log_cy$$\log_2(4+4)=3$、$\log_24+\log_24=4$$\log_c(xy)=\log_cx+\log_cy$
$\log_ab=\log_ba$$\log_28=3$、$\log_82=\dfrac13$$\log_ab=\dfrac1{\log_ba}$
$\log_{a^m}b=m\log_ab$$\log_{4}16=2$、$2\log_216=8$$\log_{a^m}b=\dfrac1m\log_ab$

2 行目で $x=y=2$ を選ぶと $\log_2(2+2)=2=\log_22+\log_22$ となって、たまたま等しくなる。反例を作るときは、1 組で等しくなっても式が正しいとは言えないことに注意する。

大学数学で見る:底を選ぶことは単位を選ぶこと

prop-cob-basic の (ii) は、対数が掛け算を足し算に変えることを言っている。逆に、掛け算を足し算に変える連続な関数は、どれも対数の定数倍であることが示せる。底の変換はその定数を決める操作である。

掛け算を足し算に変える連続な関数

$L$ を正の実数全体で定義された連続な関数で、すべての $x,y>0$ について $L(xy)=L(x)+L(y)$ を満たすものとする。このとき、すべての $x>0$ について
$$ L(x)=L(2)\log_2x $$
である。さらに $L(2)\ne0$ なら、$a=2^{\frac1{L(2)}}$ とおくと $L(x)=\log_ax$ である。

理由を開く

$g(t)=L\left(2^t\right)$ とおくと、$g$ は実数全体で定義された連続な関数で、指数法則により $g(s+t)=L\left(2^s2^t\right)=L\left(2^s\right)+L\left(2^t\right)=g(s)+g(t)$ を満たす。指数関数と対数関数はどう定義するか の系「和の形の関数方程式の連続な解」により $g(t)=g(1)t=L(2)t$ である。$x>0$ に対し $t=\log_2x$ とおくと $2^t=x$ なので、$L(x)=g(\log_2x)=L(2)\log_2x$ である。$L(2)\ne0$ のとき、$a=2^{\frac1{L(2)}}$ は正で、指数 $\dfrac1{L(2)}\ne0$ なので $a\ne1$ であり、$\log_2a=\dfrac1{L(2)}$ である。thm-cob-graph により $\log_ax=\dfrac{\log_2x}{\log_2a}=L(2)\log_2x=L(x)$ である。

大学の言葉では、正の実数の掛け算の群 $(\mathbb{R}_{>0},\times)$ から実数の足し算の群 $(\mathbb{R},+)$ への連続な準同型(演算を保つ写像)は、どれも 1 つの対数の定数倍である。定数倍を除けばただ 1 つで、「底を選ぶ」ことは、$L(a)=1$ となる $a$、つまり「$1$ にあたる量」を選ぶことに当たる。長さをメートルで測るかセンチメートルで測るかで数値が定数倍になるのと同じで、底の変換公式は単位の換算である。大学では、微分が最も簡単になる底 $e$(自然対数)を標準の単位に選ぶ(eはなぜ特別か、対数関数)。

演習

積を計算する

$\log_32\cdot\log_427$ の値を求めよ。

解答を開く

底を $2$ にそろえる。thm-cob-main と prop-cob-basic の (iii) により $\log_32=\dfrac{1}{\log_23}$、$\log_427=\dfrac{\log_227}{\log_24}=\dfrac{3\log_23}{2}$ である。掛けると $\dfrac1{\log_23}\cdot\dfrac{3\log_23}2=\dfrac32$ である。

与えられた対数で表す

$\log_23=p$、$\log_35=q$ とするとき、$\log_615$ を $p$、$q$ で表せ。

解答を開く

底を $2$ にそろえる。$\log_25=\log_23\cdot\log_35=pq$(cor-cob-rules の (i))なので、$\log_215=\log_23+\log_25=p+pq$、$\log_26=\log_22+\log_23=1+p$ である。thm-cob-main により $\log_615=\dfrac{\log_215}{\log_26}=\dfrac{p+pq}{1+p}$ である。数値で確かめると、$p=1.5849\ldots$、$q=1.4649\ldots$ で右辺は $1.5113\ldots$、$\log_615=1.5113\ldots$ である。

2 進法での桁数

$\log_{10}2=0.3010$、$\log_{10}5=0.6990$ として、$5^{30}$ を 2 進法で書いたときの桁数を求めよ。

解答を開く

prop-cob-digits により、$\log_25^{30}=\dfrac{30\times0.6990}{0.3010}=\dfrac{20.97}{0.3010}=69.66\ldots$ の整数部分に $1$ を足して $70$ 桁である。表の値の誤差を入れても商は $69.65$ から $69.69$ の間にあり、整数部分は $69$ に決まる。実際 $2^{69}\le5^{30}<2^{70}$ である。

さらに先へ

  • 大学では、自然対数 $\log x$(底 $e$)を先に定め、$\log_ax=\dfrac{\log x}{\log a}$ を底 $a$ の対数の定義にすることが多い。これは thm-cob-main で $c=e$ としたものである(対数関数)。
  • 底 $a$ の対数関数の導関数は、底の変換で自然対数に直すと $\left(\log_ax\right)'=\dfrac1{x\log a}$ と求まる。底 $e$ では係数が $1$ になる(eはなぜ特別か)。
  • 底の変換は、方程式を解くときに底をそろえる道具にもなる。次の 指数方程式・対数方程式 で使う。

関連項目

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