数列の極限

同義語:limit of a sequence

概要

数列の極限(limit of a sequence)とは、数列 $(a_n)$ の項が番号 $n$ を大きくしたときに近づいていく値のことで、任意の $\varepsilon>0$ に対してある番号 $N$ があり、$n\geq N$ ならば $|a_n-a|<\varepsilon$ となるとき、$a$ を極限といい $\lim_{n\to\infty}a_n=a$ と書く。たとえば $(n+1)/n$ は $1$ に、$|r|<1$ のとき $r^n$ は $0$ に収束する。極限はあればただ 1 つで、収束する数列は有界であり、極限は和・差・積・商と両立し、$\leq$ の大小関係を保ち、はさみうちの原理が成り立つ。逆に $(-1)^n$ のように有界でも収束しない数列がある。級数や連続性、微分積分の議論はこの概念の上に立つ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 数列, 絶対値と三角不等式, 上限と下限

定義

数列 $a_n=\dfrac{n+1}{n}$ を並べると
$$ 2,\quad 1.5,\quad 1.333\ldots,\quad 1.25,\quad \ldots,\quad a_{100}=1.01,\quad \ldots,\quad a_{1000}=1.001,\quad\ldots $$
となり、$1$ に近づいていく。「近づく」を数で言い表すと、$a_n$ と $1$ の差は $|a_n-1|=1/n$ なので、差を $0.01$ より小さくしたければ $n>100$ とすればよく、差を $0.000001$ より小さくしたければ $n>1000000$ とすればよい。どれほど小さい許容誤差を指定されても、十分先の番号から後ろのすべての項がその誤差の範囲に入る。これが「数列 $a_n$ の極限が $1$ である」ということの意味である。
別の例として $b_n=\left(1+\frac1n\right)^n$ を計算すると、$b_{10}=2.5937\ldots$、$b_{100}=2.7048\ldots$、$b_{1000}=2.7169\ldots$ と増えていくが、$3$ を超えることはない。この数列もある実数に近づく(ex-limseq-napier)。一方、$(-1)^n$ のように $-1$ と $1$ を行き来する数列は、どの数にも近づかない(ex-limseq-alternating)。
以下、数列(実数列)$(a_n)_{n\geq1}$ は、正の整数 $n$ に実数 $a_n$ を対応させる規則である。添字を $0$ から始める数列 $(a_n)_{n\geq0}$ や、ある番号 $n_0$ から始める数列についても、以下の定義と結果はそのまま成り立つ。

数列の収束と極限

実数列 $(a_n)$ と実数 $a$ について、次の条件が成り立つとき、$(a_n)$ は $a$ に収束する(converge)といい、$a$ を $(a_n)$ の極限(limit)または極限値という。
任意の $\varepsilon>0$ に対して、ある番号 $N$ が存在し、$n\geq N$ を満たすすべての $n$ について $|a_n-a|<\varepsilon$ となる。
このとき
$$ \lim_{n\to\infty}a_n=a,\qquad a_n\to a\quad(n\to\infty) $$
と書く。ある実数に収束する数列を収束列といい、どの実数にも収束しない数列は発散する(diverge)という。

$|a_n-a|<\varepsilon$ は $a-\varepsilon< a_n< a+\varepsilon$ と同じである。したがって定義は、「$a$ を中心とする幅 $2\varepsilon$ の開区間をどれほど狭くとっても、有限個の例外を除くすべての項がその中に入る」と言い換えられる。$N$ は $\varepsilon$ に応じて選んでよく、一般に $\varepsilon$ を小さくすると $N$ は大きくなる。極限がただ 1 つに決まること(prop-limseq-unique)により、記号 $\lim a_n$ に意味がある。

無限大への発散

実数列 $(a_n)$ について、任意の実数 $K$ に対してある番号 $N$ が存在し、$n\geq N$ ならば $a_n>K$ となるとき、$(a_n)$ は $+\infty$ に発散するといい、$\lim_{n\to\infty}a_n=+\infty$ または $a_n\to+\infty$ と書く。$a_n< K$ で置き換えたものを $-\infty$ への発散といい、$a_n\to-\infty$ と書く。

$+\infty$ は実数ではないので、$+\infty$ に発散する数列は def-limseq-limit の意味では収束しない(発散する数列の一種である)。発散する数列には、$+\infty$ や $-\infty$ に発散するもののほかに、$(-1)^n$ のように振動するものがある。
複素数の数列も、絶対値を使って同じように定義する。

複素数列の収束

複素数の列 $(z_n)$ と複素数 $z$ について、任意の $\varepsilon>0$ に対してある番号 $N$ が存在し、$n\geq N$ ならば $|z_n-z|<\varepsilon$ となるとき、$(z_n)$ は $z$ に収束するといい、$\lim_{n\to\infty}z_n=z$ と書く。ここで $|w|$ は複素数 $w$ の絶対値である。

実数列・複素数列の収束は、距離空間 $\mathbb{R}$ や $\mathbb{C}$ の点列の収束の特別な場合であり、さらに一般の位相空間での点列の収束は 収束 の記事で扱う。本記事は実数列(と複素数列)の $\varepsilon$–$N$ による極限と、その計算の規則を扱う。

直感

数列の極限は「$n$ を大きくしたときの $a_n$ の行き先」である。ただし「限りなく近づく」という言葉には、「どれくらい近づくのか」「いつまで近いままなのか」が含まれていない。def-limseq-limit はこれを、「誤差 $\varepsilon$ を相手が指定し、こちらは番号 $N$ を答える。$N$ から先の項はすべて誤差 $\varepsilon$ 以内」という対話の形で定める。この定義の利点は、有限の手順(不等式の確認)だけで極限についての主張を証明できることである。
極限は数列の最初の有限個の項には影響されない。有限個の項を変えても、取り除いても、付け加えても、$N$ をそれより大きくとり直せば定義の条件は変わらないからである。また、数列が極限の値に一度も等しくならなくても($1/n\ne0$)、極限は存在しうる。

例と反例

逆数の列

$\lim_{n\to\infty}\dfrac1n=0$ である。$\varepsilon>0$ に対し、実数 の記事の定理「Archimedes性」により $N>1/\varepsilon$ となる正の整数 $N$ がとれる。$n\geq N$ なら $|1/n-0|=1/n\leq1/N<\varepsilon$ である。冒頭の $a_n=(n+1)/n$ については、$|a_n-1|=1/n$ なので同じ $N$ で $|a_n-1|<\varepsilon$ となり、$\lim a_n=1$ である。

この例は、定義を直接確かめる典型である。証明には実数の Archimedes 性(どんな実数よりも大きい整数がある)が使われている。Archimedes 性をもたない順序体(実数 の記事の例「非Archimedes順序体」)では、$1/n$ は $0$ に収束しない。

Bernoulliの不等式

実数 $h\geq-1$ と整数 $n\geq1$ について $(1+h)^n\geq1+nh$ である。

帰納法

$n$ についての数学的帰納法による。$n=1$ では等号が成り立つ。$(1+h)^n\geq1+nh$ を仮定すると、$1+h\geq0$ なので両辺に $1+h$ を掛けて
$$ (1+h)^{n+1}\geq(1+nh)(1+h)=1+(n+1)h+nh^2\geq1+(n+1)h $$
を得る。

等比数列

実数 $r$ について、$(r^n)$ は次のようにふるまう。

  1. $|r|<1$ なら $r^n\to0$ である。$r=0$ なら明らかなので $0<|r|<1$ とし、$1/|r|=1+h$($h>0$)とおく。lem-limseq-bernoulli により $(1+h)^n\geq1+nh>nh$ なので、$|r^n-0|=1/(1+h)^n<1/(nh)$ である。$\varepsilon>0$ に対して $N>1/(h\varepsilon)$ ととれば、$n\geq N$ で $|r^n|<\varepsilon$ となる。
  2. $r=1$ なら $r^n=1\to1$ である。
  3. $r=-1$ なら $(-1)^n$ は発散する(ex-limseq-alternating)。
  4. $|r|>1$ なら、$|r|=1+h$($h>0$)とおくと $|r|^n\geq1+nh$ なので $(r^n)$ は有界でなく、prop-limseq-bounded により発散する。特に $r>1$ なら $r^n\to+\infty$ である。
    たとえば $0.9^{n}$ は $0$ に収束するが、$0.9^{10}=0.3486\ldots$、$0.9^{100}=0.0000265\ldots$ のように、$r$ が $1$ に近いほど収束は遅い。
$n$ 乗根の列

$\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{n}=1$ である。$n\geq1$ なら $\sqrt[n]{n}\geq1$ なので $h_n:=\sqrt[n]{n}-1\geq0$ とおく。$n\geq2$ のとき、二項定理で展開した項はすべて $0$ 以上なので
$$ n=(1+h_n)^n\geq1+\binom n2h_n^2=1+\frac{n(n-1)}2h_n^2 $$
であり、$n-1\geq\frac{n(n-1)}2h_n^2$、すなわち $0\leq h_n\leq\sqrt{2/n}$ を得る。$\varepsilon>0$ に対して $N>2/\varepsilon^2$ ととれば、$n\geq N$ で $h_n<\varepsilon$ となる。よって $h_n\to0$、$\sqrt[n]{n}\to1$ である。

$n$ は限りなく大きくなるが、$n$ 乗根をとる操作がそれに勝る。$\sqrt[10]{10}=1.2589\ldots$、$\sqrt[100]{100}=1.0471\ldots$、$\sqrt[1000]{1000}=1.0069\ldots$ である。

$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$ の収束

$b_n:=\left(1+\frac1n\right)^n$ は単調増加で、すべての $n$ で $b_n<3$ である。二項定理により
$$ b_n=\sum_{k=0}^{n}\binom nk\frac1{n^k}=\sum_{k=0}^{n}\frac1{k!}\prod_{j=0}^{k-1}\Bigl(1-\frac jn\Bigr) $$
である($k=0$ の項は $1$、空の積は $1$ とする)。$n< m$ のとき、各 $k\leq n$ について $1-j/n\leq1-j/m$ なので $b_n$ の第 $k$ 項は $b_m$ の第 $k$ 項以下であり、$b_m$ には $k=n+1,\dots,m$ の $0$ 以上の項が加わるので $b_n\leq b_m$ である。また各積は $1$ 以下で、$k\geq1$ で $k!\geq2^{k-1}$ なので
$$ b_n\leq\sum_{k=0}^{n}\frac1{k!}\leq1+\sum_{k=1}^{n}\frac1{2^{k-1}}<1+2=3 $$
である。上に有界な単調増加列は収束する(点列 の記事の定理「単調有界列の収束」)ので、$(b_n)$ は収束する。この極限を $e$ と書き、ネイピア数という。$e=2.71828\ldots$ であり、冒頭の $b_{1000}=2.7169\ldots$ でも小数第 2 位までしか合わない。

この例では極限の値をあらかじめ知らなくても、収束することが示せている。「単調で有界」という性質が、値を指定せずに極限の存在を保証するのは、実数の上限の存在(実数の連続性)による。

反例:有界だが収束しない数列

$a_n=(-1)^n$ は $|a_n|\leq1$ を満たす有界な数列であるが、収束しない。実際、ある実数 $a$ に収束するとして $\varepsilon=1$ に対する $N$ をとると、$n\geq N$ となる偶数 $n$ と奇数 $n+1$ について $|1-a|<1$、$|-1-a|<1$ なので
$$ 2=|1-(-1)|\leq|1-a|+|a-(-1)|<1+1=2 $$
となり矛盾する。したがって「有界 $\Rightarrow$ 収束」という含意は成り立たない(逆向きの「収束 $\Rightarrow$ 有界」は prop-limseq-bounded で成り立つ)。この数列は $1$ に収束する部分列と $-1$ に収束する部分列をもつ。有界な数列が必ず収束する部分列をもつことは、点列 の記事の系「有界列は収束する部分列をもつ」(Bolzano–Weierstrassの定理)が示している。

反例:隣の項との差が0に近づいても収束しない数列

$a_n=\sqrt n$ とすると
$$ a_{n+1}-a_n=\sqrt{n+1}-\sqrt n=\frac1{\sqrt{n+1}+\sqrt n}<\frac1{2\sqrt n} $$
は $0$ に収束する。しかし任意の $K>0$ に対して $n>K^2$ なら $\sqrt n>K$ なので、$a_n\to+\infty$ であり収束しない。「隣り合う項の差 $a_{n+1}-a_n$ が $0$ に近づく」という性質は満たすが、「収束する」は破れている。収束の判定には、隣り合う 2 項ではなく、番号 $N$ 以降の任意の 2 項の差を小さくする条件(Cauchy列 の条件)が必要である。

性質

一意性と有界性

極限の一意性

実数列 $(a_n)$ が $a$ と $b$ の両方に収束するならば $a=b$ である。

誤差を差の半分にとる

$a\ne b$ と仮定し、$\varepsilon:=|a-b|/2>0$ とおく。$n\geq N_1$ なら $|a_n-a|<\varepsilon$、$n\geq N_2$ なら $|a_n-b|<\varepsilon$ となる $N_1,N_2$ をとり、$n:=\max\{N_1,N_2\}$ とすると、三角不等式により
$$ |a-b|\leq|a-a_n|+|a_n-b|<2\varepsilon=|a-b| $$
となって矛盾する。よって $a=b$ である。

収束列の有界性

収束する実数列 $(a_n)$ は有界である。すなわち、ある $M$ が存在してすべての $n$ で $|a_n|\leq M$ となる。

有限個の項と尾部に分ける

$a_n\to a$ とし、$\varepsilon=1$ に対する $N$ をとる。$n\geq N$ なら $|a_n|\leq|a_n-a|+|a|<|a|+1$ である。$n< N$ の項は有限個なので
$$ M:=\max\{|a_1|,|a_2|,\dots,|a_{N-1}|,\ |a|+1\} $$
とおけば、すべての $n$ で $|a_n|\leq M$ となる。

逆は成り立たない(ex-limseq-alternating)。この命題の対偶「有界でない数列は収束しない」は、発散を示すのによく使われる(ex-limseq-geometric の 4)。一般の距離空間での同じ主張は 収束 の記事の命題「収束列は有界」にある。

四則演算と極限

極限の四則演算

$a_n\to a$、$b_n\to b$ とする。このとき次が成り立つ。

  1. $a_n+b_n\to a+b$、$a_n-b_n\to a-b$。
  2. 実数 $c$ について $ca_n\to ca$。
  3. $a_nb_n\to ab$。
  4. $b\ne0$ ならば、ある番号から先で $b_n\ne0$ であり、その番号から先で定まる数列 $a_n/b_n$ は $a/b$ に収束する。
誤差を分けて評価する

$\varepsilon>0$ を任意にとる。

  1. $n\geq N_1$ なら $|a_n-a|<\varepsilon/2$、$n\geq N_2$ なら $|b_n-b|<\varepsilon/2$ となる $N_1,N_2$ をとると、$n\geq\max\{N_1,N_2\}$ で
    $$ |(a_n\pm b_n)-(a\pm b)|\leq|a_n-a|+|b_n-b|<\varepsilon $$
    である。
  2. は 3. で $b_n=c$(定数列)とした場合である。
  3. prop-limseq-bounded により、すべての $n$ で $|a_n|\leq M$ となる $M>0$ がある。
    $$ |a_nb_n-ab|=|a_n(b_n-b)+b(a_n-a)|\leq M|b_n-b|+|b|\,|a_n-a| $$
    である。$n\geq N_1$ なら $|b_n-b|<\varepsilon/(2M)$、$n\geq N_2$ なら $|a_n-a|<\varepsilon/(2|b|+1)$ となるようにとれば、$n\geq\max\{N_1,N_2\}$ で右辺は $\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon$ 未満である。
  4. $b\ne0$ なので、$n\geq N_0$ なら $|b_n-b|<|b|/2$ となる $N_0$ がある。このとき $|b_n|\geq|b|-|b_n-b|>|b|/2>0$ なので $b_n\ne0$ であり、
    $$ \left|\frac1{b_n}-\frac1b\right|=\frac{|b-b_n|}{|b_n|\,|b|}\leq\frac2{|b|^2}|b_n-b| $$
    である。$n\geq N_3$ なら $|b_n-b|<|b|^2\varepsilon/2$ となるようにとれば、$n\geq\max\{N_0,N_3\}$ で右辺は $\varepsilon$ 未満になる。よって $1/b_n\to1/b$ であり、3. により $a_n/b_n=a_n\cdot(1/b_n)\to a/b$ である。

たとえば
$$ \lim_{n\to\infty}\frac{3n^2+n}{n^2-5}=\lim_{n\to\infty}\frac{3+1/n}{1-5/n^2}=\frac{3+0}{1-0}=3 $$
は、分子と分母を $n^2$ で割ってから ex-limseq-reciprocal と prop-limseq-arithmetic を使う計算である(分母は $n\geq3$ で $0$ でない)。極限の存在を仮定せずに右辺から左辺へ等式を読むことができるのは、この命題が「右辺の各極限が存在すれば左辺の極限も存在する」ことを主張しているからである。逆に、$a_n+b_n$ が収束しても $a_n$、$b_n$ が収束するとは限らない($a_n=(-1)^n$、$b_n=-(-1)^n$)。

順序と極限

極限は大小関係を保つ

$a_n\to a$、$b_n\to b$ とし、ある番号 $n_0$ から先のすべての $n$ で $a_n\leq b_n$ とする。このとき $a\leq b$ である。

逆の大小を仮定する

$a>b$ と仮定し、$\varepsilon:=(a-b)/2>0$ とおく。十分大きい $n$($n\geq n_0$ も満たすもの)について $|a_n-a|<\varepsilon$ かつ $|b_n-b|<\varepsilon$ であり、
$$ a_n>a-\varepsilon=\frac{a+b}2=b+\varepsilon>b_n $$
となって $a_n\leq b_n$ に反する。よって $a\leq b$ である。

狭い意味の不等号は極限で保たれない。すべての $n$ で $1/n>0$ であるが、$\lim 1/n=0$ である。したがって「$a_n< b_n$ なら $\lim a_n<\lim b_n$」は成り立たず、結論は $\leq$ にしかならない。

はさみうちの原理

3 つの実数列が、ある番号から先で $a_n\leq x_n\leq b_n$ を満たし、$(a_n)$ と $(b_n)$ が同じ実数 $c$ に収束するならば、$(x_n)$ も $c$ に収束する。

両側から挟む

$\varepsilon>0$ に対し、十分大きい $N$ をとると、$n\geq N$ で $a_n\leq x_n\leq b_n$、$|a_n-c|<\varepsilon$、$|b_n-c|<\varepsilon$ がすべて成り立つ。このとき
$$ c-\varepsilon< a_n\leq x_n\leq b_n< c+\varepsilon $$
なので $|x_n-c|<\varepsilon$ である。

prop-limseq-order と違い、はさみうちの原理は $(x_n)$ が収束することを仮定せずに結論する。たとえば $|\sin n|\leq1$ から $-1/n\leq\sin n/n\leq1/n$ であり、両側が $0$ に収束するので $\sin n/n\to0$ である。ex-limseq-geometric の 1 や ex-limseq-nth-root も、実質的には $0\leq|a_n-a|\leq c_n$、$c_n\to0$ という形のはさみうちである。

絶対値と極限

$a_n\to a$ ならば $|a_n|\to|a|$ である。また、$a_n\to0$ であることと $|a_n|\to0$ であることは同値である。

逆向きの三角不等式

三角不等式から $\bigl||a_n|-|a|\bigr|\leq|a_n-a|$ なので、前半が従う。後半は $\bigl||a_n|-0\bigr|=|a_n-0|$ による。

$|a_n|$ が収束しても $a_n$ は収束するとは限らない。$a_n=(-1)^n$ では $|a_n|=1\to1$ であるが、$(a_n)$ は発散する(ex-limseq-alternating)。後半の同値は極限が $0$ の場合に限る。

無限大への発散と逆数

無限大と逆数

すべての $n$ で $a_n>0$ とする。このとき、$a_n\to+\infty$ であることと $1/a_n\to0$ であることは同値である。

閾値と誤差を入れ替える

$a_n\to+\infty$ とし、$\varepsilon>0$ をとる。$K=1/\varepsilon$ に対する $N$ をとると、$n\geq N$ で $a_n>1/\varepsilon$、すなわち $0<1/a_n<\varepsilon$ である。逆に $1/a_n\to0$ とし、$K$ を任意の実数とする。$K\leq0$ ならすべての $n$ で $a_n>0\geq K$ である。$K>0$ なら $\varepsilon=1/K$ に対する $N$ をとると、$n\geq N$ で $0<1/a_n<1/K$、すなわち $a_n>K$ である。

たとえば $a_n=2^n$ は $2^n\to+\infty$(ex-limseq-geometric の 4)なので $2^{-n}\to0$ である。$a_n>0$ の仮定を外すと、$1/a_n\to0$ から $|a_n|\to+\infty$ しか言えない($a_n=(-1)^nn$ は $1/a_n\to0$ だが $+\infty$ にも $-\infty$ にも発散しない)。

複素数列

実部と虚部による判定

複素数列 $z_n=x_n+iy_n$($x_n,y_n\in\mathbb{R}$)と $z=x+iy$ について、$z_n\to z$ であることと、$x_n\to x$ かつ $y_n\to y$ であることは同値である。

絶対値の比較

複素数 $w=u+iv$ について $|u|\leq|w|$、$|v|\leq|w|$、$|w|\leq|u|+|v|$ である。$z_n\to z$ なら $|x_n-x|\leq|z_n-z|$、$|y_n-y|\leq|z_n-z|$ なので $x_n\to x$、$y_n\to y$ である。逆に $x_n\to x$、$y_n\to y$ なら、$\varepsilon>0$ に対して十分大きい $n$ で $|x_n-x|<\varepsilon/2$、$|y_n-y|<\varepsilon/2$ となり、$|z_n-z|\leq|x_n-x|+|y_n-y|<\varepsilon$ である。

prop-limseq-unique・prop-limseq-bounded・prop-limseq-arithmetic・prop-limseq-abs の証明は、絶対値の三角不等式と $|zw|=|z||w|$ しか使っていないので、複素数列でもそのまま成り立つ。一方、prop-limseq-order と thm-limseq-squeeze は実数の大小を使うので、実数列についての主張である。ex-limseq-geometric の 1 と 4 の議論は $|r^n|=|r|^n$ を通して複素数 $r$ にも通用し、$|r|<1$ なら $r^n\to0$、$|r|>1$ なら $(r^n)$ は発散する。

極限の存在を保証する定理

極限の値を知らなくても、数列が収束することを示せる定理がいくつかある。いずれも実数の上限の存在(実数の連続性)に基づく。

  • 上に有界な単調増加列は収束し、極限は項の上限である(点列 の記事の定理「単調有界列の収束」。上限と下限 の記事の定理「単調有界数列の収束」も同じ主張)。ex-limseq-napier はこの定理の使用例である。
  • 有界な実数列は収束する部分列をもつ(点列 の記事の系「有界列は収束する部分列をもつ」)。収束列の部分列は同じ極限に収束する(同じ記事の命題「収束列の部分列」)。
  • 実数列が収束することと Cauchy列 であることは同値である(Cauchy列 の記事の定理「実数列の Cauchy判定法」)。この判定法は、極限の候補を持ち出さずに項どうしの差だけで収束を判定できるので、級数の収束の議論の基礎になる。
  • 有界な実数列が収束することと、上極限と下極限が一致することは同値である(上極限と下極限 の記事の定理「上極限・下極限による収束判定」)。

補足

位相空間の収束との関係

def-limseq-limit は、$\mathbb{R}$ の通常の距離 $d(x,y)=|x-y|$ についての距離空間の点列の収束そのものである。収束 の記事は、これを位相空間の点列の収束(どの近傍にも十分先の項がすべて入る)として一般化し、極限の一意性がHausdorff空間で成り立つこと、連続写像が収束を保つことを示している。特に、連続関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ と $a_n\to a$ について $f(a_n)\to f(a)$ である。

定義の書き方の違い

文献によって、def-limseq-limit の「$n\geq N$」を「$n>N$」と書くもの、$N$ を自然数ではなく実数としてとるもの、$|a_n-a|<\varepsilon$ を $|a_n-a|\leq\varepsilon$ と書くものがある。これらはすべて同じ収束の概念を定める($N$ を $1$ ずらす、実数 $N$ をそれ以上の整数に取り替える、$\varepsilon$ を $\varepsilon/2$ に取り替える)。Leb §2.1 の Definition 2.1.2(p. 52)は「$n\geq M$ ならば $|x_n-x|<\epsilon$」の形、Ham §13.7 の Definition 13.5(p. 262)は「$n>N$ ならば $|a_n-L|<\varepsilon$」の形で定義している。

出典

本記事の基本的な結果は Leb 第 2 章にそろっている。極限の一意性は Proposition 2.1.6(p. 53)、収束列の有界性は Proposition 2.1.7(p. 54)、はさみうちの原理は Lemma 2.2.1(p. 61)、大小関係の保存は Lemma 2.2.3 と Corollary 2.2.4(p. 62)、四則演算は Proposition 2.2.5(p. 63)、$0< c<1$ での $c^n\to0$ は Proposition 2.2.11(p. 68)、$\sqrt[n]{n}\to1$ は Example 2.2.14(p. 70、比の判定による別証明)、無限大への発散は Definition 2.3.9(p. 79)である。$(-1)^n$ が発散する証明は Leb Example 2.1.5(p. 53)と、符号が交互に変わる数列 $(-1)^{n+1}(n+1)/n$ を扱う Ham Example 13.9(p. 263)にある。

関連項目

参考文献

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