周期関数の和と基本周期(sums of periodic functions)とは、周期関数を足したものが周期関数になるかと、基本周期があるかを、周期全体の集合から調べる話題である。周期の集合は足し算・引き算で閉じ、$0$ 以外の要素をもつそのような実数の集合は、ある正の数 $s$ の整数倍全体か、どの区間にも要素をもつ集合かのどちらかである。これから、実数全体で連続で定数でない周期関数には基本周期があり、周期はその整数倍に限られる。連続で定数でない周期関数 $f$、$g$ の基本周期を $T_1$、$T_2$ とすると、$f+g$ が周期関数であるのは $\frac{T_1}{T_2}$ が有理数のときに限る。連続でない関数では成り立たないことがある。
前提知識: 三角関数のグラフと周期, 実数とは何か:無理数の証明, 極限とε-δ
三角関数のグラフと周期 では、$\sin ax+\sin bx$($a,b$ は相異なる正の実数)が周期関数になるのは $\dfrac ab$ が有理数のときに限ることを示した。証明では、和を 2 回微分して $\sin ax$ と $\sin bx$ を 1 つずつ取り出した。この方法は、微分できない周期関数には使えない。この記事では、三角関数に限らない一般の周期関数について、同じ問いを考える。
例として、微分できない点をもつ周期関数を 1 つ用意する。
実数 $x$ に対し、$x$ から最も近い整数までの距離を $t(x)$ と書く。たとえば $t(0)=0$、$t(0.25)=0.25$、$t(0.5)=0.5$、$t(0.75)=0.25$、$t(1.3)=0.3$、$t(-0.2)=0.2$ である。
$t(x)$ のグラフは、整数の点で $0$、整数と整数のちょうど中間で $0.5$ となる、傾き $\pm1$ の折れ線(三角の波)である。$t$ は連続で、$t(x+1)=t(x)$ を満たす($x$ に最も近い整数が $n$ なら、$x+1$ に最も近い整数は $n+1$ で、距離は同じだから)。$t(x)=0$ となるのは $x$ が整数のときだけである。整数の点ではグラフが折れていて、微分できない。
$h(x)=t(x)+t\left(\dfrac x2\right)$ とする。
$g(x)=t(x)+t(\sqrt2\,x)$ とする。例 1 と同じく、$g(x)=0$ となるのは $x$ と $\sqrt2\,x$ がどちらも整数のときだけである。$x=m$、$\sqrt2\,x=n$($m,n$ は整数)で $m\ne0$ なら $\sqrt2=\dfrac nm$ が有理数になり、$\sqrt2$ が無理数であること(実数とは何か:無理数の証明)に反する。よって $g(x)=0$ となるのは $x=0$ だけである。
$T>0$ が $g$ の周期だとすると $g(T)=g(0)=0$ なので $T=0$ となり、$T>0$ に反する。したがって $g$ は周期関数でない。ただし $g$ は $0$ に近い値を何度もとる。たとえば $g(12)=0.0294\ldots$、$g(17)=0.0416\ldots$、$g(29)=0.0121\ldots$、$g(70)=0.0050\ldots$ である(図 2 の橙の点)。
幅 2 ごとに同じ形がくり返し、値 0 は偶数の点でだけとることを見る図。
値 0 は x=0 でだけとり、0 に近い値は何度もとるが同じ形はくり返さないことを見る図。
例 2 では、「和が $0$ になる点」がうまく絞れたので、周期関数でないことが示せた。しかし、たとえば $t(x)+t\left(\sqrt2\,x+\frac13\right)$ では、値 $0$ をとる点がないので、この方法は使えない。次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 周期 $T_1$、$T_2$ があれば $T_1-T_2$ も周期 | 周期の集合は足し算・引き算で閉じる | prop-spf-group |
| 周期は基本周期の整数倍 | 足し算・引き算で閉じた集合は、ある数の整数倍全体か、どこにでもある | lem-spf-dichotomy |
| $\sin ax+\sin bx$ は $\frac ab$ が無理数なら周期関数でない | 連続で定数でない周期関数の和でも同じ | thm-spf-sum |
| $n\sqrt2$ の小数部分 | どんな区間にも入る(Kronecker の稠密性) | cor-spf-kronecker |
この記事では、関数はすべて実数全体で定義され、実数の値をとるものとする。周期を 1 つずつ見るのではなく、周期をすべて集めた集合を考える。このとき、$0$ と負の数も仲間に入れておくと、足し算・引き算が自由にできて扱いやすい。
関数 $f$ に対し、すべての実数 $x$ で $f(x+T)=f(x)$ となる実数 $T$ の集合を $P(f)$ と書き、$f$ の 周期の集合 という。$P(f)$ の正の要素が $f$ の周期である。$f$ が周期をもつ($P(f)$ に正の数がある)とき、$f$ を 周期関数 という。$P(f)$ の正の要素のうち最小のものがあれば、それを $f$ の 基本周期 という。
$0$ はいつも $P(f)$ に入る。周期と基本周期の定義は 三角関数のグラフと周期 と同じである(そこでは正の数だけを周期と呼んでいる)。
定数関数 $c(x)=5$ では、どんな実数 $T$ でも $c(x+T)=5=c(x)$ なので、$P(c)$ は実数全体である。
$x$ が有理数なら $1$、無理数なら $0$ となる関数 $D(x)$(Dirichlet 関数)では、$P(D)$ は有理数全体である(三角関数のグラフと周期 の反例「基本周期のない周期関数」と同じ理由)。
関数 $f$ の周期の集合 $P(f)$ について、次が成り立つ。
要点:周期の定義の等式 $f(x+T)=f(x)$ で $x$ を $x-T$ や $x+T_1$ に取り替えて使う。
1 は $f(x+0)=f(x)$ による。
2 の証明。$T\in P(f)$ とし、$x$ を実数とする。$y=x-T$ とおくと、$T$ が周期なので $f(y+T)=f(y)$、つまり $f(x)=f(x-T)$ である。これがすべての $x$ で成り立つので $-T\in P(f)$ である。
3 の証明。$f(x+T_1+T_2)=f\bigl((x+T_1)+T_2\bigr)=f(x+T_1)=f(x)$ なので $T_1+T_2\in P(f)$ である。2 により $-T_2\in P(f)$ なので、$T_1-T_2=T_1+(-T_2)\in P(f)$ である。
4 の証明。$n\ge1$ については、3 を $n-1$ 回使って $T+T+\cdots+T=nT\in P(f)$ である(数学的帰納法)。$n=0$ は 1、$n\le-1$ は $-n\ge1$ についての結果と 2 による。$\square$
1〜3 を満たす実数の集合($0$ を含み、足し算・引き算で閉じた集合)を、この記事では 加法で閉じた集合 と呼ぶ。大学の言葉では、$\mathbb{R}$ の 部分群(加法についての部分群)である。整数全体、$2\pi$ の整数倍全体、有理数全体、実数全体は、どれも加法で閉じた集合である。
加法で閉じた集合 $G$ の形は、次の 2 つのどちらかに限られる。証明の鍵は、「$G$ の 2 つの要素の差も $G$ に入る」ことである。
$G$ を加法で閉じた実数の集合とし、$G$ には $0$ 以外の要素があるとする。このとき、次の (A)・(B) のちょうど一方が成り立つ。
(A) ある正の数 $s$ があって、$G=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ である。$s$ は $G$ の最小の正の要素である。
(B) どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても、$0< g<\varepsilon$ となる $g\in G$ がある。このとき、どんな区間 $(a,b)$($a< b$)にも $G$ の要素がある。
(B) の後半のように、どんな区間にも要素がある集合を、実数の中で 稠密 であるという。
方針:(B) の前半が成り立たないとき、正の要素どうしの間隔には下限の目安 $\delta$ がある。すると、ある範囲の正の要素は有限個しかなく、その最小のものを $s$ とすればよい。(B) の前半が成り立つときは、小さい正の要素 $g$ の整数倍を並べて、区間に入るものを見つける。
段 1(正の要素がある)。$0$ 以外の要素 $g_0\in G$ をとる。$g_0<0$ なら $-g_0\in G$ なので、$g_0>0$ としてよい。
段 2((B) の前半が成り立たないときの間隔)。(B) の前半が成り立たないとすると、ある正の数 $\delta$ について、$0< g<\delta$ となる $g\in G$ はない。このとき、$G$ の異なる 2 つの要素 $g< g'$ の差 $g'-g$ は $G$ の正の要素なので、$g'-g\ge\delta$ である。つまり、$G$ の要素どうしは $\delta$ 以上離れている。
段 3(最小の正の要素)。区間 $0< x\le g_0$ に入る $G$ の要素は有限個しかない。実際、そのような要素が $k$ 個あれば、小さい順に並べたとき隣どうしは $\delta$ 以上離れているので、最大のものと最小のものの差は $(k-1)\delta$ 以上であり、この差は $g_0$ より小さいから、$k<\dfrac{g_0}\delta+1$ である。$g_0$ 自身がその 1 つなので、この有限個の中に最小のものがある。それを $s$ とする。$0< g< s$ となる $g\in G$ はない(あれば $0< g< s\le g_0$ で、$s$ の選び方に反する)ので、$s$ は $G$ の最小の正の要素である。
段 4((A) が成り立つ)。prop-spf-group の 4 と同じ理由で、$s$ の整数倍はすべて $G$ に入る。逆に $g\in G$ とし、$q=\left\lfloor\dfrac gs\right\rfloor$($\dfrac gs$ 以下の最大の整数)とおくと、$r=g-qs$ は $0\le r< s$ を満たす。$r$ は $G$ の要素の差なので $G$ に入り、$s$ より小さい正の要素はないので $r=0$、つまり $g=qs$ である。よって $G=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ で、(A) が成り立つ。
段 5((B) の前半が成り立つときは (B) の後半も成り立つ)。区間 $(a,b)$ をとる。(B) の前半で $\varepsilon=b-a$ として、$0< g< b-a$ となる $g\in G$ をとる。$k=\left\lfloor\dfrac ag\right\rfloor+1$ とおくと、$k-1\le\dfrac ag< k$ なので $(k-1)g\le a< kg$ である。すると $kg=(k-1)g+g\le a+g< a+(b-a)=b$ である。よって $a< kg< b$ で、$kg\in G$ は区間 $(a,b)$ に入る。
段 6(ちょうど一方)。(A) の $G$ では、$0< g< s$ となる要素がないので、(B) の前半は $\varepsilon=s$ で成り立たない。よって (A) と (B) が同時に成り立つことはない。段 2〜段 5 から、どちらか一方は必ず成り立つ。$\square$
lem-spf-dichotomy を周期の集合 $P(f)$ に使う。(B) の型になるのは、周期がいくらでも小さくとれるときである。そのとき $f$ が連続なら、$f$ は定数しかありえない。
関数 $f$ が連続で、周期の集合 $P(f)$ が稠密(どんな区間 $(a,b)$ にも $P(f)$ の要素がある)なら、$f$ は定数関数である。
要点:$f(x)\ne f(0)$ となる $x$ があるとして、$x$ のすぐ近くの周期 $T$ での値 $f(T)=f(0)$ と、連続性から出る「$f(T)$ は $f(x)$ に近い」ことを比べて矛盾させる。
段 1。$f(x)\ne f(0)$ となる実数 $x$ があるとし、$\varepsilon=\lvert f(x)-f(0)\rvert$ とおく。$\varepsilon>0$ である。
段 2(連続性)。$f$ は $x$ で連続なので、ある正の数 $\delta$ があって、$\lvert y-x\rvert<\delta$ となるすべての $y$ で $\lvert f(y)-f(x)\rvert<\varepsilon$ である(連続の意味。極限とε-δ)。
段 3(近くの周期)。$P(f)$ は稠密なので、区間 $(x-\delta,x+\delta)$ に $P(f)$ の要素 $T$ がある。$T$ は周期なので $f(T)=f(0+T)=f(0)$ である。
段 4(矛盾)。$\lvert T-x\rvert<\delta$ なので、段 2 から $\lvert f(T)-f(x)\rvert<\varepsilon$、つまり $\lvert f(0)-f(x)\rvert<\varepsilon=\lvert f(x)-f(0)\rvert$ となり、矛盾する。よって、すべての $x$ で $f(x)=f(0)$ である。$\square$
$f$ を連続で定数でない周期関数とする。このとき $f$ は基本周期 $s$ をもち、$f$ の周期の集合は $s$ の整数倍全体
$$
P(f)=\{ns\mid n\text{ は整数}\}
$$
である。特に、$f$ の周期は基本周期の正の整数倍に限られる。
方針:$P(f)$ に lem-spf-dichotomy を使い、(B) の型なら lem-spf-dense-constant により定数になってしまうことを示す。
段 1。prop-spf-group により $P(f)$ は加法で閉じた集合で、$f$ は周期関数なので $0$ 以外の要素(正の周期)をもつ。よって lem-spf-dichotomy の (A)・(B) のちょうど一方が成り立つ。
段 2。(B) が成り立つとすると、$P(f)$ は稠密である。$f$ は連続なので、lem-spf-dense-constant により $f$ は定数関数になり、仮定に反する。
段 3。よって (A) が成り立ち、ある正の数 $s$ について $P(f)=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ である。$s$ は $P(f)$ の最小の正の要素、つまり $f$ の基本周期である。$\square$
| 関数 | 連続 | 周期の集合 $P(f)$ | lem-spf-dichotomy の型 | 基本周期 |
|---|---|---|---|---|
| $t(x)$ | ○ | 整数全体 | (A) | $1$ |
| $\sin x$ | ○ | $2\pi$ の整数倍全体 | (A) | $2\pi$ |
| $t(x)+t\left(\frac x2\right)$(例 1) | ○ | $2$ の整数倍全体 | (A) | $2$ |
| 定数関数 | ○ | 実数全体 | (B) | なし |
| Dirichlet 関数 $D(x)$ | × | 有理数全体 | (B) | なし |
表の 4 行目・5 行目は (B) の型で、基本周期がない。定数関数は「定数でない」という仮定を、Dirichlet 関数は「連続」という仮定を外した例である。Dirichlet 関数の周期の集合は稠密だが、実数全体ではない。連続でない関数では、lem-spf-dense-constant の結論が成り立たない。
$f$、$g$ を連続で定数でない周期関数とし、それぞれの基本周期を $T_1$、$T_2$ とする(thm-spf-fundamental により基本周期はある)。このとき、
$$
f+g\text{ が周期関数である}\iff\frac{T_1}{T_2}\text{ が有理数である}
$$
が成り立つ。特に、$\dfrac{T_1}{T_2}$ が無理数なら、$f+g$ は周期関数でない(定数関数にもならない)。
「$\Leftarrow$」は 三角関数のグラフと周期 で示した「周期の比が有理数なら共通の周期がある」と同じである。「$\Rightarrow$」が新しい部分で、微分を使わずに示す。
方針:「$\Rightarrow$」を背理法で示す。$f+g$ の周期 $T$ について、$f$ を $T$ だけずらした差 $u(x)=f(x+T)-f(x)$ を考えると、$u$ は $T_1$ と $T_2$ の両方を周期にもつ。比が無理数なら $u$ の周期の集合は稠密になり、$u$ は定数になる。さらに $f$ が有界であることから、その定数は $0$ で、$T$ は $f$ の周期になる。
段 1($\Leftarrow$)。$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac pq$($p,q$ は正の整数)とすると、$T=qT_1=pT_2$ である。prop-spf-group の 4 により $T\in P(f)$、$T\in P(g)$ なので、$f(x+T)+g(x+T)=f(x)+g(x)$ で、$T>0$ は $f+g$ の周期である。
段 2($\Rightarrow$ の準備)。$f+g$ が正の周期 $T$ をもつとし、$\dfrac{T_1}{T_2}$ が無理数だと仮定して矛盾を導く。$u(x)=f(x+T)-f(x)$ とおく。$f(x+T)+g(x+T)=f(x)+g(x)$ なので
$$
u(x)=f(x+T)-f(x)=g(x)-g(x+T)
$$
でもある。$f$ は連続なので $u$ も連続である。
段 3($u$ の周期)。$T_1$ は $f$ の周期なので、$u(x+T_1)=f\bigl((x+T)+T_1\bigr)-f(x+T_1)=f(x+T)-f(x)=u(x)$ である。同じように、段 2 の 2 つ目の形と $T_2$ が $g$ の周期であることから $u(x+T_2)=g(x+T_2)-g(x+T_2+T)=g(x)-g(x+T)=u(x)$ である。よって $T_1,T_2\in P(u)$ である。
段 4($u$ は定数)。$P(u)$ は加法で閉じた集合で(prop-spf-group)、$0$ 以外の要素 $T_1$ をもつ。(A) の型なら、ある $s>0$ と整数 $a,b$ で $T_1=as$、$T_2=bs$ と書けて、$b\ne0$($T_2>0$ だから)なので $\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac ab$ は有理数になり、仮定に反する。よって lem-spf-dichotomy により (B) の型で、$P(u)$ は稠密である。$u$ は連続なので、lem-spf-dense-constant により $u$ は定数である。その値を $c$ とする。
段 5($c=0$)。すべての $x$ で $f(x+T)=f(x)+c$ である。これをくり返すと、正の整数 $n$ について $f(nT)=f(0)+nc$ である(数学的帰納法)。一方、$f$ は有界である:ある数 $M$ があって、すべての $x$ で $\lvert f(x)\rvert\le M$ となる。
$f$ は閉区間 $[0,T_1]$ で連続なので、そこで最大値と最小値をとる(最大値・最小値の定理(高校数学)。この記事では証明しない。Leb26a Theorem 3.3.2)。$M$ を最大値の絶対値と最小値の絶対値の大きいほうとすると、$[0,T_1]$ で $\lvert f\rvert\le M$ である。任意の $x$ について $k=\left\lfloor\frac x{T_1}\right\rfloor$ とおくと $x-kT_1\in[0,T_1)$ で、$-kT_1\in P(f)$(prop-spf-group の 4)なので $f(x)=f(x-kT_1)$ である。よって $\lvert f(x)\rvert\le M$ である。
lem-spf-dichotomy は、周期関数を離れても使える。例 2 の $g(x)=t(x)+t(\sqrt2\,x)$ が $0$ に近い値を何度もとる理由を、これで説明する。以下、実数 $y$ の小数部分 $y-\lfloor y\rfloor$ を $\{y\}$ と書く($0\le\{y\}<1$)。
$\alpha$ を無理数とする。
方針:$G$ が (A) の型なら $\alpha$ が有理数になってしまうので、$G$ は (B) の型である。2 は、$G$ の小さい正の要素 $g=m+n\alpha$ の整数倍を並べて区間に入れる(prf-lem-spf-dichotomy の段 5 と同じ)。
段 1(1 の証明)。$G$ は $0$ を含み、$(m+n\alpha)\pm(m'+n'\alpha)=(m\pm m')+(n\pm n')\alpha$ なので加法で閉じている。$1\in G$ なので $0$ 以外の要素もある。(A) の型なら $1=as$、$\alpha=bs$($a,b$ は整数、$a\ne0$)と書けて $\alpha=\dfrac ba$ が有理数になり、仮定に反する。よって lem-spf-dichotomy により (B) の型で、$G$ は稠密である。
段 2(小さい要素)。(B) の前半で $\varepsilon=b-a$ とし、$0< g< b-a$ となる $g=m+n\alpha\in G$ をとる。$b-a\le1$ なので $0< g<1$ である。$n=0$ なら $g=m$ は $0$ と $1$ の間の整数になってしまうので、$n\ne0$ である。
段 3($n>0$ の場合)。$n\alpha=g-m$ で、$0< g<1$、$-m$ は整数なので $\{n\alpha\}=g$ である。正の整数 $k$ で $kg<1$ なら、同じく $\{kn\alpha\}=\{kg-km\}=kg$ である。$k=\left\lfloor\dfrac ag\right\rfloor+1$ とおくと、prf-lem-spf-dichotomy の段 5 と同じ計算で $a< kg< b\le1$ となる($a\ge0$ なので $k\ge1$)。よって正の整数 $kn$ について $a<\{kn\alpha\}< b$ である。
段 4($n<0$ の場合)。$n'=-n$ とおくと、$kg<1$ となる正の整数 $k$ について $\{kn'\alpha\}=1-kg$ となる。これらの値は $1-g,\ 1-2g,\ \dots$ と間隔 $g$ で並ぶので、段 3 と同じように区間 $(a,b)$ に入るものがある。$\square$
$n'=-n>0$ とおくと $n'\alpha=m-g=(m-1)+(1-g)$ で、$\{n'\alpha\}=1-g$ である。正の整数 $k$ で $kg<1$ なら $\{kn'\alpha\}=1-kg$ である。$1-kg$ が $a$ と $b$ の間にあることは、$kg$ が $1-b$ と $1-a$ の間にあることと同じで、区間 $(1-b,1-a)$ の幅は $b-a>g$ なので、段 3 と同じく $k=\left\lfloor\dfrac{1-b}g\right\rfloor+1$ とおけば $1-b< kg<1-a\le1$ となる。よって正の整数 $kn'$ について $a<\{kn'\alpha\}< b$ である。
区間 $(0.5,\ 0.55)$ に $\{n\sqrt2\}$ を入れる。$g=17\sqrt2-24=0.04163\ldots$ は $0$ と $0.05$ の間にあり、$n=17>0$ である。段 3 のとおり $k=\left\lfloor\dfrac{0.5}{0.04163\ldots}\right\rfloor+1=12+1=13$ とおくと、$13g=0.54119\ldots$ で、
$$
\{221\sqrt2\}=\{13\cdot17\sqrt2\}=0.54119\ldots
$$
は区間 $(0.5,\ 0.55)$ に入る($221\sqrt2=312.54119\ldots$)。図 4 のように、$g$ の倍数 $0,g,2g,\dots$ は間隔 $g<0.05$ で並ぶので、幅 $0.05$ の区間を飛び越せない。
n√2 の小数部分を n=1 から N まで数直線に打った図。N を大きくすると点の間のすきまが小さくなり、どこにでも点が来ることを見る。
小さい正の数 g=17√2−24 の倍数を並べると、幅 0.05 の区間を飛び越せずに、13 倍が区間に入ることを見る図。
図 3 は $\{n\sqrt2\}$($n=1,\dots,N$)を打った図で、点の間のすきまの最大は $N=10$ で $0.171\ldots$、$N=30$ で $0.0416\ldots$、$N=100$ で $0.0121\ldots$ と小さくなっていく。
例 2 に戻る。整数 $n$ では $t(n)=0$ なので $g(n)=t(n\sqrt2)$ で、これは $\{n\sqrt2\}$ と、それを $1$ から引いた数の小さいほうである。系の 2 を区間 $(0,\varepsilon)$ に使うと($\varepsilon\le1$ としてよい。$\varepsilon>1$ なら $\varepsilon\le1$ の場合から従う)、どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても $g(n)<\varepsilon$ となる正の整数 $n$ がある。こうして $g$ は $0$ にいくらでも近い値をとるが、ex-spf-first-irrational で見たように $x>0$ で $0$ にはならない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ が連続 | Dirichlet 関数 $D(x)$ | 定数でない周期関数には基本周期がある(主定理 1) |
| $f$、$g$ が連続 | $f=g=\chi_K$(下の $K$) | 周期の比が無理数なら $f+g$ は周期関数でない(主定理 2) |
| $f$ が定数でない | $f(x)=5$(周期 $1$ をもつ)、$g(x)=t(\sqrt2\,x)$ | 周期の比が無理数なら $f+g$ は周期関数でない |
| (誤った推測)和の基本周期は $T_1$、$T_2$ の「最小公倍数」 | $\sin2x+\sin x$ と $-\sin x$ | 和の基本周期(三角関数のグラフと周期 の反例) |
$K=\{p+q\sqrt2\mid p,q\text{ は有理数}\}$ とし、$x\in K$ なら $1$、$x\notin K$ なら $0$ となる関数を $\chi_K(x)$ とする。
$\chi_K$ の周期の集合は $K$ そのものである。
$K$ は加法で閉じている($(p+q\sqrt2)\pm(p'+q'\sqrt2)=(p\pm p')+(q\pm q')\sqrt2$)。$T\in K$ なら、$x\in K\iff x+T\in K$ なので($x=(x+T)-T$)、$T$ は $\chi_K$ の周期である。$T\notin K$ なら $\chi_K(0)=1$、$\chi_K(T)=0$ なので周期でない。よって $P(\chi_K)=K$ である。
$\sqrt3=p+q\sqrt2$($p,q$ は有理数)とすると、両辺を 2 乗して $3=p^2+2q^2+2pq\sqrt2$ である。$pq\ne0$ なら $\sqrt2=\dfrac{3-p^2-2q^2}{2pq}$ が有理数になり矛盾する。$q=0$ なら $\sqrt3=p$ は正の有理数で、$p=\frac ab$($a,b$ は正の整数)とおくと $3b^2=a^2$ である。素因数 $3$ の個数は、左辺では奇数、右辺では偶数となり、素因数分解の一意性(素因数分解の一意性)に反する。$p=0$ なら $3=2q^2$ で、$q=\frac ab$($a,b$ は整数、$b\ne0$)とおくと $3b^2=2a^2$ となり、同じく素因数 $3$ の個数が左辺は奇数、右辺は偶数で矛盾する。よって $\sqrt3\notin K$ である。
定数関数 $f(x)=5$ は、すべての正の数を周期にもつので、「周期 $1$ をもつ関数」でもある。$g(x)=t(\sqrt2\,x)$ は周期 $\frac1{\sqrt2}$ をもち、周期の比 $1\mathbin{÷}\frac1{\sqrt2}=\sqrt2$ は無理数である。しかし $f+g=5+t(\sqrt2\,x)$ は周期 $\frac1{\sqrt2}$ をもつ周期関数である。定数関数には基本周期がないので、主定理 2 の「基本周期どうしの比」がそもそも決まらない。
(1) $\sqrt8=2\sqrt2$ なので、ex-spf-sum-use の 1 と同じ計算で基本周期は $\frac1{\sqrt2}$ と $\frac1{2\sqrt2}$ である。比は $2$ で有理数なので周期関数であり、$\frac1{\sqrt2}$ が周期である。和が $0$ になるのは $\sqrt2\,x$ と $2\sqrt2\,x$ がどちらも整数、つまり $\sqrt2\,x$ が整数のときだけなので、例 1 と同じ理由で、周期 $T>0$ は $\sqrt2\,T$ が正の整数となる数に限られる。よって基本周期は $\frac1{\sqrt2}$ である。
(2) 基本周期は $1$ と $\frac1{\sqrt3}$ で、比 $\sqrt3$ は無理数である($\sqrt3$ が無理数であることは、ex-spf-indicator の 2 つ目の詳細の $q=0$ の場合で、素因数分解の一意性から示した)。主定理 2 により周期関数でない。例 2 と同じく、和が $0$ になる点が $x=0$ だけであることからも分かる。
lem-spf-dichotomy は、大学では「実数の加法群 $\mathbb{R}$ の部分群は、$s\mathbb{Z}$ の形か、稠密か」と言い表される。周期の集合については、さらに次のことが言える。
$f$ が連続なら、周期の集合 $P(f)$ は「閉じている」:周期の列 $T_1,T_2,\dots$ が実数 $T$ に近づくなら、$T$ も周期である(各 $x$ で $f(x+T_k)=f(x)$ の両辺で $k\to\infty$ とし、$f$ の連続性を使う)。稠密で閉じた部分群は $\mathbb{R}$ 全体なので、$\mathbb{R}$ の閉じた部分群は $\{0\}$、$s\mathbb{Z}$($s>0$)、$\mathbb{R}$ の 3 種類しかない。thm-spf-fundamental は、この分類の言いかえである。
$f$、$g$ の基本周期を $T_1$、$T_2$ とし、$F(u,v)=f(u)+g(v)$ とおくと、$f(x)+g(x)=F(x,x)$ である。$F$ は $u$ について周期 $T_1$、$v$ について周期 $T_2$ をもつので、$(u,v)$ を「$u$ は $T_1$ ずれ、$v$ は $T_2$ ずれを同じとみなした」ドーナツ面(トーラス)の点と見ることができる。$x\mapsto(x,x)$ はトーラスの上を一定の傾きで巻く直線で、$\frac{T_1}{T_2}$ が有理数なら閉じた曲線になり、無理数ならトーラス全体に稠密に巻きつく($u$ が $T_1$ の整数倍の点で $v$ を見ると、cor-spf-kronecker の稠密性から導ける。この記事では詳しくは証明しない)。$f+g$ が周期関数にならないのは、この直線が閉じないからである。
このように周期の比が無理数の周期関数の和は、ぴったりはくり返さないが「ほぼ」くり返す。これを 概周期関数 という(定義と性質は 概周期関数 で扱う。この記事では証明しない)。$\{n\alpha\}$ の稠密性(cor-spf-kronecker)は、大学の教科書では単位円上の点列 $e^{in}$ が単位円の中で稠密であるという形でも述べられる(Leb26b Exercise 11.6.10 のヒント)。
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