周期関数の和と基本周期

同義語:sums of periodic functions

概要

周期関数の和と基本周期(sums of periodic functions)とは、周期関数を足したものが周期関数になるかと、基本周期があるかを、周期全体の集合から調べる話題である。周期の集合は足し算・引き算で閉じ、$0$ 以外の要素をもつそのような実数の集合は、ある正の数 $s$ の整数倍全体か、どの区間にも要素をもつ集合かのどちらかである。これから、実数全体で連続で定数でない周期関数には基本周期があり、周期はその整数倍に限られる。連続で定数でない周期関数 $f$、$g$ の基本周期を $T_1$、$T_2$ とすると、$f+g$ が周期関数であるのは $\frac{T_1}{T_2}$ が有理数のときに限る。連続でない関数では成り立たないことがある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角関数のグラフと周期, 実数とは何か:無理数の証明, 極限とε-δ

高校での出発点:周期の比が無理数だと、足しても周期関数にならない

三角関数のグラフと周期 では、$\sin ax+\sin bx$($a,b$ は相異なる正の実数)が周期関数になるのは $\dfrac ab$ が有理数のときに限ることを示した。証明では、和を 2 回微分して $\sin ax$ と $\sin bx$ を 1 つずつ取り出した。この方法は、微分できない周期関数には使えない。この記事では、三角関数に限らない一般の周期関数について、同じ問いを考える。
例として、微分できない点をもつ周期関数を 1 つ用意する。

最も近い整数までの距離

実数 $x$ に対し、$x$ から最も近い整数までの距離を $t(x)$ と書く。たとえば $t(0)=0$、$t(0.25)=0.25$、$t(0.5)=0.5$、$t(0.75)=0.25$、$t(1.3)=0.3$、$t(-0.2)=0.2$ である。

$t(x)$ のグラフは、整数の点で $0$、整数と整数のちょうど中間で $0.5$ となる、傾き $\pm1$ の折れ線(三角の波)である。$t$ は連続で、$t(x+1)=t(x)$ を満たす($x$ に最も近い整数が $n$ なら、$x+1$ に最も近い整数は $n+1$ で、距離は同じだから)。$t(x)=0$ となるのは $x$ が整数のときだけである。整数の点ではグラフが折れていて、微分できない。

例 1:$t(x)+t\left(\frac{x}{2}\right)$ は周期 2 をもつ

$h(x)=t(x)+t\left(\dfrac x2\right)$ とする。

  1. $2$ は周期である。$t(x+2)=t\bigl((x+1)+1\bigr)=t(x+1)=t(x)$、$t\left(\dfrac{x+2}2\right)=t\left(\dfrac x2+1\right)=t\left(\dfrac x2\right)$ なので、$h(x+2)=h(x)$ である。
  2. $2$ より短い周期はない。$h(x)=0$ となるのは、$t(x)=0$ かつ $t\left(\frac x2\right)=0$、つまり $x$ も $\frac x2$ も整数のとき、すなわち $x$ が偶数のときだけである($t\ge0$ なので、和が $0$ なら両方 $0$)。$T>0$ が $h$ の周期なら $h(T)=h(0)=0$ なので、$T$ は正の偶数で、$T\ge2$ である。
    よって $h$ の基本周期は $2$ である(図 1)。
例 2:$t(x)+t(\sqrt{2}\,x)$ は周期関数でない

$g(x)=t(x)+t(\sqrt2\,x)$ とする。例 1 と同じく、$g(x)=0$ となるのは $x$ と $\sqrt2\,x$ がどちらも整数のときだけである。$x=m$、$\sqrt2\,x=n$($m,n$ は整数)で $m\ne0$ なら $\sqrt2=\dfrac nm$ が有理数になり、$\sqrt2$ が無理数であること(実数とは何か:無理数の証明)に反する。よって $g(x)=0$ となるのは $x=0$ だけである。
$T>0$ が $g$ の周期だとすると $g(T)=g(0)=0$ なので $T=0$ となり、$T>0$ に反する。したがって $g$ は周期関数でない。ただし $g$ は $0$ に近い値を何度もとる。たとえば $g(12)=0.0294\ldots$、$g(17)=0.0416\ldots$、$g(29)=0.0121\ldots$、$g(70)=0.0050\ldots$ である(図 2 の橙の点)。

幅 2 ごとに同じ形がくり返し、値 0 は偶数の点でだけとることを見る図。 幅 2 ごとに同じ形がくり返し、値 0 は偶数の点でだけとることを見る図。
値 0 は x=0 でだけとり、0 に近い値は何度もとるが同じ形はくり返さないことを見る図。 値 0 は x=0 でだけとり、0 に近い値は何度もとるが同じ形はくり返さないことを見る図。

例 2 では、「和が $0$ になる点」がうまく絞れたので、周期関数でないことが示せた。しかし、たとえば $t(x)+t\left(\sqrt2\,x+\frac13\right)$ では、値 $0$ をとる点がないので、この方法は使えない。次の問いが出てくる。

  1. 一般の周期関数で、周期はどんな集まりをつくるのか。→ prop-spf-group、lem-spf-dichotomy
  2. 最小の周期(基本周期)は、いつあるのか。→ thm-spf-fundamental
  3. 周期の比が無理数の 2 つの周期関数を足すと、いつも周期関数でなくなるのか。→ thm-spf-sum、ex-spf-indicator
  4. 例 2 の $g$ が $0$ に近い値を何度もとるのはなぜか。→ cor-spf-kronecker
    高校の計算この記事での見方ボックス
    周期 $T_1$、$T_2$ があれば $T_1-T_2$ も周期周期の集合は足し算・引き算で閉じるprop-spf-group
    周期は基本周期の整数倍足し算・引き算で閉じた集合は、ある数の整数倍全体か、どこにでもあるlem-spf-dichotomy
    $\sin ax+\sin bx$ は $\frac ab$ が無理数なら周期関数でない連続で定数でない周期関数の和でも同じthm-spf-sum
    $n\sqrt2$ の小数部分どんな区間にも入る(Kronecker の稠密性)cor-spf-kronecker

周期の集合

定義

この記事では、関数はすべて実数全体で定義され、実数の値をとるものとする。周期を 1 つずつ見るのではなく、周期をすべて集めた集合を考える。このとき、$0$ と負の数も仲間に入れておくと、足し算・引き算が自由にできて扱いやすい。

周期の集合

関数 $f$ に対し、すべての実数 $x$ で $f(x+T)=f(x)$ となる実数 $T$ の集合を $P(f)$ と書き、$f$ の 周期の集合 という。$P(f)$ の正の要素が $f$ の周期である。$f$ が周期をもつ($P(f)$ に正の数がある)とき、$f$ を 周期関数 という。$P(f)$ の正の要素のうち最小のものがあれば、それを $f$ の 基本周期 という。

$0$ はいつも $P(f)$ に入る。周期と基本周期の定義は 三角関数のグラフと周期 と同じである(そこでは正の数だけを周期と呼んでいる)。

周期の集合の例
  1. $P(t)=\{\dots,-2,-1,0,1,2,\dots\}$(整数全体)である。整数 $n$ について $t(x+n)=t(x)$ なので、整数は $P(t)$ に入る。逆に $T\in P(t)$ なら $t(T)=t(0+T)=t(0)=0$ なので、$T$ は整数である。
  2. $\sin x$ の周期の集合は $2\pi$ の整数倍全体である(三角関数のグラフと周期 で、$\sin x$ の基本周期は $2\pi$ で、周期は $2\pi$ の正の整数倍に限ることを示した。負の要素は下の prop-spf-group の 2 による)。
    ほかの例(定数関数、Dirichlet 関数)を開く

    定数関数 $c(x)=5$ では、どんな実数 $T$ でも $c(x+T)=5=c(x)$ なので、$P(c)$ は実数全体である。

    $x$ が有理数なら $1$、無理数なら $0$ となる関数 $D(x)$(Dirichlet 関数)では、$P(D)$ は有理数全体である(三角関数のグラフと周期 の反例「基本周期のない周期関数」と同じ理由)。

周期の集合は足し算・引き算で閉じる

周期の集合の性質

関数 $f$ の周期の集合 $P(f)$ について、次が成り立つ。

  1. $0\in P(f)$。
  2. $T\in P(f)$ なら $-T\in P(f)$。
  3. $T_1,T_2\in P(f)$ なら $T_1+T_2\in P(f)$、$T_1-T_2\in P(f)$。
  4. $T\in P(f)$ なら、すべての整数 $n$ について $nT\in P(f)$。
周期の定義の等式をくり返し使う

要点:周期の定義の等式 $f(x+T)=f(x)$ で $x$ を $x-T$ や $x+T_1$ に取り替えて使う。

詳しい証明を開く

1 は $f(x+0)=f(x)$ による。

2 の証明。$T\in P(f)$ とし、$x$ を実数とする。$y=x-T$ とおくと、$T$ が周期なので $f(y+T)=f(y)$、つまり $f(x)=f(x-T)$ である。これがすべての $x$ で成り立つので $-T\in P(f)$ である。

3 の証明。$f(x+T_1+T_2)=f\bigl((x+T_1)+T_2\bigr)=f(x+T_1)=f(x)$ なので $T_1+T_2\in P(f)$ である。2 により $-T_2\in P(f)$ なので、$T_1-T_2=T_1+(-T_2)\in P(f)$ である。

4 の証明。$n\ge1$ については、3 を $n-1$ 回使って $T+T+\cdots+T=nT\in P(f)$ である(数学的帰納法)。$n=0$ は 1、$n\le-1$ は $-n\ge1$ についての結果と 2 による。$\square$

1〜3 を満たす実数の集合($0$ を含み、足し算・引き算で閉じた集合)を、この記事では 加法で閉じた集合 と呼ぶ。大学の言葉では、$\mathbb{R}$ の 部分群(加法についての部分群)である。整数全体、$2\pi$ の整数倍全体、有理数全体、実数全体は、どれも加法で閉じた集合である。

加法で閉じた集合は 2 種類しかない

加法で閉じた集合 $G$ の形は、次の 2 つのどちらかに限られる。証明の鍵は、「$G$ の 2 つの要素の差も $G$ に入る」ことである。

加法で閉じた集合の 2 つの型

$G$ を加法で閉じた実数の集合とし、$G$ には $0$ 以外の要素があるとする。このとき、次の (A)・(B) のちょうど一方が成り立つ。
(A) ある正の数 $s$ があって、$G=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ である。$s$ は $G$ の最小の正の要素である。
(B) どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても、$0< g<\varepsilon$ となる $g\in G$ がある。このとき、どんな区間 $(a,b)$($a< b$)にも $G$ の要素がある。

(B) の後半のように、どんな区間にも要素がある集合を、実数の中で 稠密 であるという。

小さい正の要素があるかどうかで分ける

方針:(B) の前半が成り立たないとき、正の要素どうしの間隔には下限の目安 $\delta$ がある。すると、ある範囲の正の要素は有限個しかなく、その最小のものを $s$ とすればよい。(B) の前半が成り立つときは、小さい正の要素 $g$ の整数倍を並べて、区間に入るものを見つける。
段 1(正の要素がある)。$0$ 以外の要素 $g_0\in G$ をとる。$g_0<0$ なら $-g_0\in G$ なので、$g_0>0$ としてよい。
段 2((B) の前半が成り立たないときの間隔)。(B) の前半が成り立たないとすると、ある正の数 $\delta$ について、$0< g<\delta$ となる $g\in G$ はない。このとき、$G$ の異なる 2 つの要素 $g< g'$ の差 $g'-g$ は $G$ の正の要素なので、$g'-g\ge\delta$ である。つまり、$G$ の要素どうしは $\delta$ 以上離れている。
段 3(最小の正の要素)。区間 $0< x\le g_0$ に入る $G$ の要素は有限個しかない。実際、そのような要素が $k$ 個あれば、小さい順に並べたとき隣どうしは $\delta$ 以上離れているので、最大のものと最小のものの差は $(k-1)\delta$ 以上であり、この差は $g_0$ より小さいから、$k<\dfrac{g_0}\delta+1$ である。$g_0$ 自身がその 1 つなので、この有限個の中に最小のものがある。それを $s$ とする。$0< g< s$ となる $g\in G$ はない(あれば $0< g< s\le g_0$ で、$s$ の選び方に反する)ので、$s$ は $G$ の最小の正の要素である。
段 4((A) が成り立つ)。prop-spf-group の 4 と同じ理由で、$s$ の整数倍はすべて $G$ に入る。逆に $g\in G$ とし、$q=\left\lfloor\dfrac gs\right\rfloor$($\dfrac gs$ 以下の最大の整数)とおくと、$r=g-qs$ は $0\le r< s$ を満たす。$r$ は $G$ の要素の差なので $G$ に入り、$s$ より小さい正の要素はないので $r=0$、つまり $g=qs$ である。よって $G=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ で、(A) が成り立つ。
段 5((B) の前半が成り立つときは (B) の後半も成り立つ)。区間 $(a,b)$ をとる。(B) の前半で $\varepsilon=b-a$ として、$0< g< b-a$ となる $g\in G$ をとる。$k=\left\lfloor\dfrac ag\right\rfloor+1$ とおくと、$k-1\le\dfrac ag< k$ なので $(k-1)g\le a< kg$ である。すると $kg=(k-1)g+g\le a+g< a+(b-a)=b$ である。よって $a< kg< b$ で、$kg\in G$ は区間 $(a,b)$ に入る。
段 6(ちょうど一方)。(A) の $G$ では、$0< g< s$ となる要素がないので、(B) の前半は $\varepsilon=s$ で成り立たない。よって (A) と (B) が同時に成り立つことはない。段 2〜段 5 から、どちらか一方は必ず成り立つ。$\square$

2 つの型の例
  1. 整数全体は (A) の型で、$s=1$ である。$\frac12$ の整数倍全体も (A) の型で、$s=\frac12$ である。
  2. 有理数全体は (B) の型である。どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても、$\frac1n<\varepsilon$ となる正の整数 $n$ をとれば、$\frac1n$ が $0$ と $\varepsilon$ の間の有理数である。
  3. $G=\{m+n\sqrt2\mid m,n\text{ は整数}\}$ は加法で閉じた集合で、(B) の型である(次の cor-spf-kronecker の証明で示す)。実際、$G$ には次のように小さい正の要素がある。
    $$ 3\sqrt2-4=0.2426\ldots,\qquad 17\sqrt2-24=0.0416\ldots,\qquad 99\sqrt2-140=0.00714\ldots $$

主定理 1:連続で定数でない周期関数には基本周期がある

lem-spf-dichotomy を周期の集合 $P(f)$ に使う。(B) の型になるのは、周期がいくらでも小さくとれるときである。そのとき $f$ が連続なら、$f$ は定数しかありえない。

周期が稠密な連続関数は定数

関数 $f$ が連続で、周期の集合 $P(f)$ が稠密(どんな区間 $(a,b)$ にも $P(f)$ の要素がある)なら、$f$ は定数関数である。

どの点の値も $f(0)$ に等しいことを背理法で示す

要点:$f(x)\ne f(0)$ となる $x$ があるとして、$x$ のすぐ近くの周期 $T$ での値 $f(T)=f(0)$ と、連続性から出る「$f(T)$ は $f(x)$ に近い」ことを比べて矛盾させる。

詳しい証明を開く

段 1。$f(x)\ne f(0)$ となる実数 $x$ があるとし、$\varepsilon=\lvert f(x)-f(0)\rvert$ とおく。$\varepsilon>0$ である。

段 2(連続性)。$f$ は $x$ で連続なので、ある正の数 $\delta$ があって、$\lvert y-x\rvert<\delta$ となるすべての $y$ で $\lvert f(y)-f(x)\rvert<\varepsilon$ である(連続の意味。極限とε-δ)。

段 3(近くの周期)。$P(f)$ は稠密なので、区間 $(x-\delta,x+\delta)$ に $P(f)$ の要素 $T$ がある。$T$ は周期なので $f(T)=f(0+T)=f(0)$ である。

段 4(矛盾)。$\lvert T-x\rvert<\delta$ なので、段 2 から $\lvert f(T)-f(x)\rvert<\varepsilon$、つまり $\lvert f(0)-f(x)\rvert<\varepsilon=\lvert f(x)-f(0)\rvert$ となり、矛盾する。よって、すべての $x$ で $f(x)=f(0)$ である。$\square$

連続な周期関数の周期の集合

$f$ を連続で定数でない周期関数とする。このとき $f$ は基本周期 $s$ をもち、$f$ の周期の集合は $s$ の整数倍全体
$$ P(f)=\{ns\mid n\text{ は整数}\} $$
である。特に、$f$ の周期は基本周期の正の整数倍に限られる。

2 つの型のうち (B) を除く

方針:$P(f)$ に lem-spf-dichotomy を使い、(B) の型なら lem-spf-dense-constant により定数になってしまうことを示す。
段 1。prop-spf-group により $P(f)$ は加法で閉じた集合で、$f$ は周期関数なので $0$ 以外の要素(正の周期)をもつ。よって lem-spf-dichotomy の (A)・(B) のちょうど一方が成り立つ。
段 2。(B) が成り立つとすると、$P(f)$ は稠密である。$f$ は連続なので、lem-spf-dense-constant により $f$ は定数関数になり、仮定に反する。
段 3。よって (A) が成り立ち、ある正の数 $s$ について $P(f)=\{ns\mid n\text{ は整数}\}$ である。$s$ は $P(f)$ の最小の正の要素、つまり $f$ の基本周期である。$\square$

関数連続周期の集合 $P(f)$lem-spf-dichotomy の型基本周期
$t(x)$○整数全体(A)$1$
$\sin x$○$2\pi$ の整数倍全体(A)$2\pi$
$t(x)+t\left(\frac x2\right)$(例 1)○$2$ の整数倍全体(A)$2$
定数関数○実数全体(B)なし
Dirichlet 関数 $D(x)$×有理数全体(B)なし

表の 4 行目・5 行目は (B) の型で、基本周期がない。定数関数は「定数でない」という仮定を、Dirichlet 関数は「連続」という仮定を外した例である。Dirichlet 関数の周期の集合は稠密だが、実数全体ではない。連続でない関数では、lem-spf-dense-constant の結論が成り立たない。

主定理 2:連続な周期関数の和

連続な周期関数の和が周期関数になる条件

$f$、$g$ を連続で定数でない周期関数とし、それぞれの基本周期を $T_1$、$T_2$ とする(thm-spf-fundamental により基本周期はある)。このとき、
$$ f+g\text{ が周期関数である}\iff\frac{T_1}{T_2}\text{ が有理数である} $$
が成り立つ。特に、$\dfrac{T_1}{T_2}$ が無理数なら、$f+g$ は周期関数でない(定数関数にもならない)。

「$\Leftarrow$」は 三角関数のグラフと周期 で示した「周期の比が有理数なら共通の周期がある」と同じである。「$\Rightarrow$」が新しい部分で、微分を使わずに示す。

和の周期 $T$ で $f$ をずらした差を調べる

方針:「$\Rightarrow$」を背理法で示す。$f+g$ の周期 $T$ について、$f$ を $T$ だけずらした差 $u(x)=f(x+T)-f(x)$ を考えると、$u$ は $T_1$ と $T_2$ の両方を周期にもつ。比が無理数なら $u$ の周期の集合は稠密になり、$u$ は定数になる。さらに $f$ が有界であることから、その定数は $0$ で、$T$ は $f$ の周期になる。
段 1($\Leftarrow$)。$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac pq$($p,q$ は正の整数)とすると、$T=qT_1=pT_2$ である。prop-spf-group の 4 により $T\in P(f)$、$T\in P(g)$ なので、$f(x+T)+g(x+T)=f(x)+g(x)$ で、$T>0$ は $f+g$ の周期である。
段 2($\Rightarrow$ の準備)。$f+g$ が正の周期 $T$ をもつとし、$\dfrac{T_1}{T_2}$ が無理数だと仮定して矛盾を導く。$u(x)=f(x+T)-f(x)$ とおく。$f(x+T)+g(x+T)=f(x)+g(x)$ なので
$$ u(x)=f(x+T)-f(x)=g(x)-g(x+T) $$
でもある。$f$ は連続なので $u$ も連続である。
段 3($u$ の周期)。$T_1$ は $f$ の周期なので、$u(x+T_1)=f\bigl((x+T)+T_1\bigr)-f(x+T_1)=f(x+T)-f(x)=u(x)$ である。同じように、段 2 の 2 つ目の形と $T_2$ が $g$ の周期であることから $u(x+T_2)=g(x+T_2)-g(x+T_2+T)=g(x)-g(x+T)=u(x)$ である。よって $T_1,T_2\in P(u)$ である。
段 4($u$ は定数)。$P(u)$ は加法で閉じた集合で(prop-spf-group)、$0$ 以外の要素 $T_1$ をもつ。(A) の型なら、ある $s>0$ と整数 $a,b$ で $T_1=as$、$T_2=bs$ と書けて、$b\ne0$($T_2>0$ だから)なので $\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac ab$ は有理数になり、仮定に反する。よって lem-spf-dichotomy により (B) の型で、$P(u)$ は稠密である。$u$ は連続なので、lem-spf-dense-constant により $u$ は定数である。その値を $c$ とする。
段 5($c=0$)。すべての $x$ で $f(x+T)=f(x)+c$ である。これをくり返すと、正の整数 $n$ について $f(nT)=f(0)+nc$ である(数学的帰納法)。一方、$f$ は有界である:ある数 $M$ があって、すべての $x$ で $\lvert f(x)\rvert\le M$ となる。

詳細

$f$ は閉区間 $[0,T_1]$ で連続なので、そこで最大値と最小値をとる(最大値・最小値の定理(高校数学)。この記事では証明しない。Leb26a Theorem 3.3.2)。$M$ を最大値の絶対値と最小値の絶対値の大きいほうとすると、$[0,T_1]$ で $\lvert f\rvert\le M$ である。任意の $x$ について $k=\left\lfloor\frac x{T_1}\right\rfloor$ とおくと $x-kT_1\in[0,T_1)$ で、$-kT_1\in P(f)$(prop-spf-group の 4)なので $f(x)=f(x-kT_1)$ である。よって $\lvert f(x)\rvert\le M$ である。


すると $\lvert nc\rvert=\lvert f(nT)-f(0)\rvert\le\lvert f(nT)\rvert+\lvert f(0)\rvert\le2M$ がすべての正の整数 $n$ で成り立つ。$c\ne0$ なら、$n>\dfrac{2M}{\lvert c\rvert}$ となる $n$ でこれが成り立たないので、$c=0$ である。
段 6(矛盾)。$c=0$ なので $f(x+T)=f(x)$、また段 2 から $g(x+T)=g(x)-u(x)=g(x)$ である。よって $T$ は $f$ と $g$ の両方の周期である。thm-spf-fundamental により、正の整数 $p,q$ があって $T=qT_1=pT_2$ となり、$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac pq$ は有理数である。これは仮定に反する。したがって、$f+g$ が周期関数なら $\dfrac{T_1}{T_2}$ は有理数である。
最後に、$\frac{T_1}{T_2}$ が無理数のとき $f+g$ は定数関数にもならない。定数関数はすべての正の数を周期にもつ周期関数だからである。$\square$

主定理 2 を使う
  1. $t(x)+t\left(\sqrt2\,x+\frac13\right)$ は周期関数でない。$t_2(x)=t\left(\sqrt2\,x+\frac13\right)$ とおくと、$T\in P(t_2)$ は「すべての $x$ で $t\bigl(\sqrt2\,x+\frac13+\sqrt2\,T\bigr)=t\bigl(\sqrt2\,x+\frac13\bigr)$」ということで、$y=\sqrt2\,x+\frac13$ はすべての実数を動くので、これは $\sqrt2\,T\in P(t)$、つまり $\sqrt2\,T$ が整数であることと同じである。よって $t_2$ の基本周期は $\dfrac1{\sqrt2}$ である。$t$ の基本周期は $1$ で、比 $1\mathbin{÷}\dfrac1{\sqrt2}=\sqrt2$ は無理数なので、主定理 2 により和は周期関数でない。例 2 の方法(値 $0$ をとる点を調べる)はこの和には使えなかった。
  2. $t(x)+t\left(\frac{2x}3\right)$ は周期関数である。同じ計算で $t\left(\frac{2x}3\right)$ の基本周期は $\frac32$ で、比 $1\mathbin{÷}\frac32=\frac23$ は有理数である。prf-thm-spf-sum の段 1 で $p=2$、$q=3$ とすると、$3\cdot1=2\cdot\frac32=3$ が周期である。
  3. $\sin x+t(x)$ は周期関数でない。基本周期は $2\pi$ と $1$ で、比 $2\pi$ は無理数である。ただし、$\pi$ が無理数であることはこの記事では証明しない(円周率の無理性)。

系:$n\alpha$ の小数部分はどこにでも来る

lem-spf-dichotomy は、周期関数を離れても使える。例 2 の $g(x)=t(x)+t(\sqrt2\,x)$ が $0$ に近い値を何度もとる理由を、これで説明する。以下、実数 $y$ の小数部分 $y-\lfloor y\rfloor$ を $\{y\}$ と書く($0\le\{y\}<1$)。

Kronecker の稠密性(1 次元)

$\alpha$ を無理数とする。

  1. $G=\{m+n\alpha\mid m,n\text{ は整数}\}$ は実数の中で稠密である。
  2. $0\le a< b\le1$ となるどんな $a,b$ に対しても、$\{n\alpha\}$ が $a$ と $b$ の間($a<\{n\alpha\}< b$)に入る正の整数 $n$ がある。
加法で閉じた集合 $G$ に補題を使う

方針:$G$ が (A) の型なら $\alpha$ が有理数になってしまうので、$G$ は (B) の型である。2 は、$G$ の小さい正の要素 $g=m+n\alpha$ の整数倍を並べて区間に入れる(prf-lem-spf-dichotomy の段 5 と同じ)。
段 1(1 の証明)。$G$ は $0$ を含み、$(m+n\alpha)\pm(m'+n'\alpha)=(m\pm m')+(n\pm n')\alpha$ なので加法で閉じている。$1\in G$ なので $0$ 以外の要素もある。(A) の型なら $1=as$、$\alpha=bs$($a,b$ は整数、$a\ne0$)と書けて $\alpha=\dfrac ba$ が有理数になり、仮定に反する。よって lem-spf-dichotomy により (B) の型で、$G$ は稠密である。
段 2(小さい要素)。(B) の前半で $\varepsilon=b-a$ とし、$0< g< b-a$ となる $g=m+n\alpha\in G$ をとる。$b-a\le1$ なので $0< g<1$ である。$n=0$ なら $g=m$ は $0$ と $1$ の間の整数になってしまうので、$n\ne0$ である。
段 3($n>0$ の場合)。$n\alpha=g-m$ で、$0< g<1$、$-m$ は整数なので $\{n\alpha\}=g$ である。正の整数 $k$ で $kg<1$ なら、同じく $\{kn\alpha\}=\{kg-km\}=kg$ である。$k=\left\lfloor\dfrac ag\right\rfloor+1$ とおくと、prf-lem-spf-dichotomy の段 5 と同じ計算で $a< kg< b\le1$ となる($a\ge0$ なので $k\ge1$)。よって正の整数 $kn$ について $a<\{kn\alpha\}< b$ である。
段 4($n<0$ の場合)。$n'=-n$ とおくと、$kg<1$ となる正の整数 $k$ について $\{kn'\alpha\}=1-kg$ となる。これらの値は $1-g,\ 1-2g,\ \dots$ と間隔 $g$ で並ぶので、段 3 と同じように区間 $(a,b)$ に入るものがある。$\square$

詳細

$n'=-n>0$ とおくと $n'\alpha=m-g=(m-1)+(1-g)$ で、$\{n'\alpha\}=1-g$ である。正の整数 $k$ で $kg<1$ なら $\{kn'\alpha\}=1-kg$ である。$1-kg$ が $a$ と $b$ の間にあることは、$kg$ が $1-b$ と $1-a$ の間にあることと同じで、区間 $(1-b,1-a)$ の幅は $b-a>g$ なので、段 3 と同じく $k=\left\lfloor\dfrac{1-b}g\right\rfloor+1$ とおけば $1-b< kg<1-a\le1$ となる。よって正の整数 $kn'$ について $a<\{kn'\alpha\}< b$ である。

$\alpha=\sqrt{2}$ で確かめる

区間 $(0.5,\ 0.55)$ に $\{n\sqrt2\}$ を入れる。$g=17\sqrt2-24=0.04163\ldots$ は $0$ と $0.05$ の間にあり、$n=17>0$ である。段 3 のとおり $k=\left\lfloor\dfrac{0.5}{0.04163\ldots}\right\rfloor+1=12+1=13$ とおくと、$13g=0.54119\ldots$ で、
$$ \{221\sqrt2\}=\{13\cdot17\sqrt2\}=0.54119\ldots $$
は区間 $(0.5,\ 0.55)$ に入る($221\sqrt2=312.54119\ldots$)。図 4 のように、$g$ の倍数 $0,g,2g,\dots$ は間隔 $g<0.05$ で並ぶので、幅 $0.05$ の区間を飛び越せない。

n√2 の小数部分を n=1 から N まで数直線に打った図。N を大きくすると点の間のすきまが小さくなり、どこにでも点が来ることを見る。 n√2 の小数部分を n=1 から N まで数直線に打った図。N を大きくすると点の間のすきまが小さくなり、どこにでも点が来ることを見る。
小さい正の数 g=17√2−24 の倍数を並べると、幅 0.05 の区間を飛び越せずに、13 倍が区間に入ることを見る図。 小さい正の数 g=17√2−24 の倍数を並べると、幅 0.05 の区間を飛び越せずに、13 倍が区間に入ることを見る図。
図 3 は $\{n\sqrt2\}$($n=1,\dots,N$)を打った図で、点の間のすきまの最大は $N=10$ で $0.171\ldots$、$N=30$ で $0.0416\ldots$、$N=100$ で $0.0121\ldots$ と小さくなっていく。
例 2 に戻る。整数 $n$ では $t(n)=0$ なので $g(n)=t(n\sqrt2)$ で、これは $\{n\sqrt2\}$ と、それを $1$ から引いた数の小さいほうである。系の 2 を区間 $(0,\varepsilon)$ に使うと($\varepsilon\le1$ としてよい。$\varepsilon>1$ なら $\varepsilon\le1$ の場合から従う)、どんな正の数 $\varepsilon$ に対しても $g(n)<\varepsilon$ となる正の整数 $n$ がある。こうして $g$ は $0$ にいくらでも近い値をとるが、ex-spf-first-irrational で見たように $x>0$ で $0$ にはならない。

例と反例:どの仮定が効いているか

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ が連続Dirichlet 関数 $D(x)$定数でない周期関数には基本周期がある(主定理 1)
$f$、$g$ が連続$f=g=\chi_K$(下の $K$)周期の比が無理数なら $f+g$ は周期関数でない(主定理 2)
$f$ が定数でない$f(x)=5$(周期 $1$ をもつ)、$g(x)=t(\sqrt2\,x)$周期の比が無理数なら $f+g$ は周期関数でない
(誤った推測)和の基本周期は $T_1$、$T_2$ の「最小公倍数」$\sin2x+\sin x$ と $-\sin x$和の基本周期(三角関数のグラフと周期 の反例)
反例:連続でない周期関数の和

$K=\{p+q\sqrt2\mid p,q\text{ は有理数}\}$ とし、$x\in K$ なら $1$、$x\notin K$ なら $0$ となる関数を $\chi_K(x)$ とする。
$\chi_K$ の周期の集合は $K$ そのものである。

詳細

$K$ は加法で閉じている($(p+q\sqrt2)\pm(p'+q'\sqrt2)=(p\pm p')+(q\pm q')\sqrt2$)。$T\in K$ なら、$x\in K\iff x+T\in K$ なので($x=(x+T)-T$)、$T$ は $\chi_K$ の周期である。$T\notin K$ なら $\chi_K(0)=1$、$\chi_K(T)=0$ なので周期でない。よって $P(\chi_K)=K$ である。

  • $1\in K$、$\sqrt2\in K$ なので、$f=\chi_K$ は周期 $1$、$g=\chi_K$ は周期 $\sqrt2$ をもち、比 $\frac1{\sqrt2}$ は無理数である。どちらも定数でない($\chi_K(0)=1$、$\chi_K(\sqrt3)=0$。$\sqrt3\notin K$ であることの証明は下の折りたたみ)。
  • しかし $f+g=2\cdot\chi_K$ は周期 $1$ をもつ周期関数である。
    $\chi_K$ は連続でなく、$P(\chi_K)=K$ は稠密なので基本周期もない。prf-thm-spf-sum の段 4・段 5 で連続性を、段 6 で基本周期があることを使っていた。
    $\sqrt3\notin K$ の証明を開く

    $\sqrt3=p+q\sqrt2$($p,q$ は有理数)とすると、両辺を 2 乗して $3=p^2+2q^2+2pq\sqrt2$ である。$pq\ne0$ なら $\sqrt2=\dfrac{3-p^2-2q^2}{2pq}$ が有理数になり矛盾する。$q=0$ なら $\sqrt3=p$ は正の有理数で、$p=\frac ab$($a,b$ は正の整数)とおくと $3b^2=a^2$ である。素因数 $3$ の個数は、左辺では奇数、右辺では偶数となり、素因数分解の一意性(素因数分解の一意性)に反する。$p=0$ なら $3=2q^2$ で、$q=\frac ab$($a,b$ は整数、$b\ne0$)とおくと $3b^2=2a^2$ となり、同じく素因数 $3$ の個数が左辺は奇数、右辺は偶数で矛盾する。よって $\sqrt3\notin K$ である。

反例:片方が定数のとき

定数関数 $f(x)=5$ は、すべての正の数を周期にもつので、「周期 $1$ をもつ関数」でもある。$g(x)=t(\sqrt2\,x)$ は周期 $\frac1{\sqrt2}$ をもち、周期の比 $1\mathbin{÷}\frac1{\sqrt2}=\sqrt2$ は無理数である。しかし $f+g=5+t(\sqrt2\,x)$ は周期 $\frac1{\sqrt2}$ をもつ周期関数である。定数関数には基本周期がないので、主定理 2 の「基本周期どうしの比」がそもそも決まらない。

演習

周期関数になるか
  1. $t(\sqrt2\,x)+t(\sqrt8\,x)$ は周期関数か。周期関数なら基本周期を求めよ。
  2. $t(x)+t(\sqrt3\,x)$ は周期関数か。
解答を開く

(1) $\sqrt8=2\sqrt2$ なので、ex-spf-sum-use の 1 と同じ計算で基本周期は $\frac1{\sqrt2}$ と $\frac1{2\sqrt2}$ である。比は $2$ で有理数なので周期関数であり、$\frac1{\sqrt2}$ が周期である。和が $0$ になるのは $\sqrt2\,x$ と $2\sqrt2\,x$ がどちらも整数、つまり $\sqrt2\,x$ が整数のときだけなので、例 1 と同じ理由で、周期 $T>0$ は $\sqrt2\,T$ が正の整数となる数に限られる。よって基本周期は $\frac1{\sqrt2}$ である。

(2) 基本周期は $1$ と $\frac1{\sqrt3}$ で、比 $\sqrt3$ は無理数である($\sqrt3$ が無理数であることは、ex-spf-indicator の 2 つ目の詳細の $q=0$ の場合で、素因数分解の一意性から示した)。主定理 2 により周期関数でない。例 2 と同じく、和が $0$ になる点が $x=0$ だけであることからも分かる。

大学数学で見る:実数の閉じた部分群とトーラス

lem-spf-dichotomy は、大学では「実数の加法群 $\mathbb{R}$ の部分群は、$s\mathbb{Z}$ の形か、稠密か」と言い表される。周期の集合については、さらに次のことが言える。

閉じた部分群・トーラス・概周期関数について開く

$f$ が連続なら、周期の集合 $P(f)$ は「閉じている」:周期の列 $T_1,T_2,\dots$ が実数 $T$ に近づくなら、$T$ も周期である(各 $x$ で $f(x+T_k)=f(x)$ の両辺で $k\to\infty$ とし、$f$ の連続性を使う)。稠密で閉じた部分群は $\mathbb{R}$ 全体なので、$\mathbb{R}$ の閉じた部分群は $\{0\}$、$s\mathbb{Z}$($s>0$)、$\mathbb{R}$ の 3 種類しかない。thm-spf-fundamental は、この分類の言いかえである。

$f$、$g$ の基本周期を $T_1$、$T_2$ とし、$F(u,v)=f(u)+g(v)$ とおくと、$f(x)+g(x)=F(x,x)$ である。$F$ は $u$ について周期 $T_1$、$v$ について周期 $T_2$ をもつので、$(u,v)$ を「$u$ は $T_1$ ずれ、$v$ は $T_2$ ずれを同じとみなした」ドーナツ面(トーラス)の点と見ることができる。$x\mapsto(x,x)$ はトーラスの上を一定の傾きで巻く直線で、$\frac{T_1}{T_2}$ が有理数なら閉じた曲線になり、無理数ならトーラス全体に稠密に巻きつく($u$ が $T_1$ の整数倍の点で $v$ を見ると、cor-spf-kronecker の稠密性から導ける。この記事では詳しくは証明しない)。$f+g$ が周期関数にならないのは、この直線が閉じないからである。

このように周期の比が無理数の周期関数の和は、ぴったりはくり返さないが「ほぼ」くり返す。これを 概周期関数 という(定義と性質は 概周期関数 で扱う。この記事では証明しない)。$\{n\alpha\}$ の稠密性(cor-spf-kronecker)は、大学の教科書では単位円上の点列 $e^{in}$ が単位円の中で稠密であるという形でも述べられる(Leb26b Exercise 11.6.10 のヒント)。

さらに先へ

  • 周期関数の和の基本周期を具体的に求めること($\sin ax+\sin bx$ の場合)と、「和の基本周期は最小公倍数とは限らない」反例は、三角関数のグラフと周期 で扱う。
  • 周期 $2\pi$ の関数を $\cos kx$、$\sin kx$ の和で表す話は、和の公式 sin kxとcos kxの和 と 三角関数の直交性(高校数学) に続く。
  • 数列の周期($2^n$ を $7$ で割った余りの周期など)でも「周期は最小の周期の倍数」が成り立つ。冪の余りの周期と元の位数 で扱う。整数の中で「加法で閉じた集合は $d$ の倍数全体」になることは、最大公約数と互除法の考え方(整数の割り算と互除法)と同じ構造である。
  • cor-spf-kronecker の 2 は、鳩の巣原理 を使って示すこともできる($\{\alpha\},\{2\alpha\},\dots,\{(N+1)\alpha\}$ を長さ $\frac1N$ の $N$ 個の区間に入れると、同じ区間に入る 2 つがあり、その差は絶対値が $\frac1N$ より小さい $G$ の $0$ でない要素になる)。
  • $\{n\log_{10}2\}$ が稠密であること($\log_{10}2$ は無理数)から、$2^n$ の最高位の数字にはどの数字も現れる。常用対数と桁数 を参照。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する