三角形の形状決定

同義語:三角形の形状の決定determining the shape of a triangle

概要

三角形の形状決定(determining the shape of a triangle)とは、辺 $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ と角 $A,B,C$ の間の関係式を満たす三角形の全体を、辺の相等や角の大きさで言い表すことである。条件と答えの形が同値であること、つまり必要性と十分性の両方を示す。たとえば $a\cos A=b\cos B$ は、余弦定理で辺にそろえると $(a^2-b^2)(c^2-a^2-b^2)=0$、正弦定理で角にそろえると $\cos(A+B)\sin(A-B)=0$ となり、答えは「$a=b$ の二等辺三角形 または $C=90^\circ$ の直角三角形」である。積が $0$ の条件は和集合に分かれ、「または」は両方の場合を含む。$0$ になりうる式で割ったり、$\sin2A=\sin2B$ から $A=B$ だけを出したりすると解を落とす。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 正弦定理(高校数学), 余弦定理(高校数学), 三角形の射影定理, 集合と論理:必要条件・十分条件

高校での出発点:条件を満たす三角形を探す

三角形 $ABC$ で、頂点 $A,B,C$ の角の大きさを $A,B,C$、向かいの辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ と書く。この記事では、この書き方を断りなく使う。
「三角形 $ABC$ が $a\cos A=b\cos B$ を満たすとき、どんな形の三角形か」という問いを考える。辺と角が混じった 1 つの等式から、三角形の形(二等辺三角形か、直角三角形か、など)を言い当てる問題を、三角形の形状決定 という。まず、いくつかの三角形で条件を確かめてみる。

条件 $a\cos A=b\cos B$ を確かめる

余弦は 余弦定理(高校数学) の $\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$、$\cos B=\dfrac{c^2+a^2-b^2}{2ca}$ で計算する。
(1) $a=b=5$、$c=6$($BC=CA$ の二等辺三角形):$\cos A=\cos B=\dfrac{25+36-25}{60}=\dfrac35$ で、$a\cos A=b\cos B=3$。満たす。
(2) $a=3$、$b=4$、$c=5$($C=90^\circ$ の直角三角形):$\cos A=\dfrac{16+25-9}{40}=\dfrac45$、$\cos B=\dfrac{25+9-16}{30}=\dfrac35$ で、$a\cos A=\dfrac{12}5$、$b\cos B=\dfrac{12}5$。満たす。
(3) $a=4$、$b=5$、$c=6$:$\cos A=\dfrac{25+36-16}{60}=\dfrac34$、$\cos B=\dfrac{36+16-25}{48}=\dfrac9{16}$ で、$a\cos A=3$、$b\cos B=\dfrac{45}{16}$。満たさない。
(4) $a=2$、$b=c=3$($CA=AB$ の二等辺三角形):$\cos A=\dfrac{9+9-4}{18}=\dfrac79$、$\cos B=\dfrac{9+4-9}{12}=\dfrac13$ で、$a\cos A=\dfrac{14}9$、$b\cos B=1$。満たさない。

  1. と (2) は形のまったく違う三角形なのに、どちらも条件を満たす。(4) は二等辺三角形なのに満たさない。答えは「二等辺三角形」だけでも「直角三角形」だけでもなく、しかもどの 2 辺が等しいかまで言う必要がある。この記事で答える問いは次の 4 つである。
  1. 「形を決める」とは、論理的には何を示すことか。→ def-sht-shape、lem-sht-product
  2. $a\cos A=b\cos B$ を満たす三角形はどんな三角形か。→ thm-sht-main(辺にそろえる方法)、prf-sht-angles(角にそろえる方法)
  3. 答えの「または」はどう読むか。→ rem-sht-or
  4. 計算でよく起こる誤りは何か。→ 「例と反例」の節
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    辺だけ・角だけの式にそろえる同値変形条件の書き換え
    因数分解して「積 $=0$」条件を満たす集合を和集合に分ける零点集合の分解
    「二等辺三角形または直角三角形」2 つの集合の和集合既約成分への分解
    各場合が条件を満たすか確かめる十分性の確認集合の等しさ(両方向の包含)

形状決定とは:条件を満たす三角形の集合

三角形の形状決定

三角形についての条件 $P$ が与えられたとき、$P$ を満たす三角形の全体を、辺の相等($a=b$ など)や角の大きさ($C=90^\circ$ など)の条件 $Q$ で言い表すことを、三角形の 形状決定 という。すなわち、すべての三角形について
$$ P\iff Q $$
を示すことである。$P\Rightarrow Q$($P$ を満たせば $Q$ の形である)を 必要性、$Q\Rightarrow P$($Q$ の形なら $P$ を満たす)を 十分性 とよぶ。
ここで、$a=b$ を満たす三角形を「$BC=CA$ の二等辺三角形」(頂点 $C$ の角をはさむ 2 辺が等しい)、$C=90^\circ$ の三角形を「$C=90^\circ$ の直角三角形」とよぶ。

必要条件・十分条件の言葉は 集合と論理:必要条件・十分条件 で扱っている。集合で言えば、条件 $P$ を満たす三角形の集合と、条件 $Q$ を満たす三角形の集合が等しいことを示すのが形状決定である。$P\Rightarrow Q$ だけを示すと「$P$ を満たす三角形は $Q$ の形の中にある」ことしか分からず、$Q$ の形の三角形がすべて $P$ を満たすとは限らない。

必要性だけでは足りない例

条件 $P$ を「$a=b$ かつ $C=60^\circ$」とする。$P$ を満たす三角形は $a=b$ なので、「$P\Rightarrow$ $BC=CA$ の二等辺三角形」は正しい。しかし $a=b=5$、$c=6$ の二等辺三角形は、$\cos C=\dfrac{25+25-36}{50}=\dfrac7{25}\ne\dfrac12$ なので $C\ne60^\circ$ で、$P$ を満たさない。$P$ の形状決定の答えは「正三角形」である($a=b$ で $C=60^\circ$ なら $A=B=60^\circ$ となり 3 つの角が等しいから)。答えを「二等辺三角形」とすると、十分性が崩れる。

形状決定の計算の中心は、因数分解である。次の事実を使う。

積が $0$ になる条件

実数 $X,Y$ について、$XY=0\iff\bigl(X=0\text{ または }Y=0\bigr)$ である。ここで「または」は、両方が成り立つ場合も含む。

($\Leftarrow$) $X=0$ なら $XY=0\cdot Y=0$、$Y=0$ でも同じである。($\Rightarrow$) $XY=0$ とする。$X\ne0$ なら、両辺を $X$ で割って $Y=0$ である。したがって $X=0$ か $Y=0$ の少なくとも一方が成り立つ。$\square$

数学の「$P$ または $Q$」は、$P$ と $Q$ の少なくとも一方が成り立つことを意味し、両方が成り立つ場合を含む(Ham18)。lem-sht-product により、「$XY=0$ を満たす三角形の集合」は「$X=0$ を満たす三角形の集合」と「$Y=0$ を満たす三角形の集合」の和集合になる。形状決定の手順は次のとおりである。
(R1) 条件を、辺だけの式、または角だけの式にそろえる(正弦定理・余弦定理・射影定理を使う)。各段が同値変形(逆向きにもたどれる変形)であることを確かめる。
(R2) 移項して因数分解し、「積 $=0$」の形にする。
(R3) lem-sht-product で場合に分け、各因数 $=0$ を三角形の形の言葉に直す。角の範囲($0^\circ< A<180^\circ$、$A+B<180^\circ$ など)で、ありえない場合を除く。
(R4) 答えの各場合が本当に元の条件を満たすか(十分性)を確かめる。(R1)〜(R3) がすべて同値変形なら自動的に成り立つが、数値で 1 つ確かめると誤りに気づきやすい。

方法 1:辺にそろえる

$a\cos A=b\cos B$ を満たす三角形

三角形 $ABC$ について
$$ a\cos A=b\cos B\iff\bigl(a=b\ \text{または}\ C=90^\circ\bigr) $$
が成り立つ。つまり、条件を満たす三角形は、$BC=CA$ の二等辺三角形と $C=90^\circ$ の直角三角形であり、それ以外にはない。

余弦定理で辺だけの式にする

方針:余弦定理(高校数学) で $\cos A$、$\cos B$ を辺で書き、分母を払って因数分解する。すべての段が同値変形であることを確かめながら進む。
段 1(辺で書く)。$\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$、$\cos B=\dfrac{c^2+a^2-b^2}{2ca}$ なので、条件は
$$ a\cdot\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}=b\cdot\frac{c^2+a^2-b^2}{2ca} $$
と同値である。
段 2(分母を払う)。両辺に $2abc$ を掛ける。$2abc>0$ なので、掛ける前と後の等式は同値である(逆に $2abc$ で割れば戻る)。
$$ a^2(b^2+c^2-a^2)=b^2(c^2+a^2-b^2) $$
段 3(展開して移項する)。展開すると
$$ a^2b^2+a^2c^2-a^4=b^2c^2+a^2b^2-b^4 $$
で、両辺から $a^2b^2$ を引き、右辺を左辺に移すと
$$ a^2c^2-b^2c^2-a^4+b^4=0 $$
である。
段 4(因数分解する)。前の 2 項は $c^2(a^2-b^2)$、後の 2 項は $-(a^4-b^4)=-(a^2-b^2)(a^2+b^2)$ なので、共通因数 $a^2-b^2$ でくくって
$$ \underbrace{(a^2-b^2)}_{=0\ \text{なら}\ a=b}\ \underbrace{(c^2-a^2-b^2)}_{=0\ \text{なら}\ C=90^\circ}=0 $$
である。
段 5(場合に分ける)。lem-sht-product により、段 4 は「$a^2=b^2$ または $c^2=a^2+b^2$」と同値である。$a,b>0$ なので $a^2=b^2\iff a=b$ である。また、三平方の定理(高校数学) とその逆により $c^2=a^2+b^2\iff C=90^\circ$ である。
段 1〜段 5 はすべて同値変形なので、$a\cos A=b\cos B\iff(a=b$ または $C=90^\circ)$ である。$\square$

同値変形でつないだので、十分性($a=b$ の三角形や $C=90^\circ$ の三角形が条件を満たすこと)も同時に示されている。ex-sht-try の (1)・(2) は、その数値での確認になっている。

因数分解した形で確かめる

段 4 の左辺 $(a^2-b^2)(c^2-a^2-b^2)$ に数値を入れる。
(1) 辺 $5,5,6$:$(25-25)(36-50)=0\cdot(-14)=0$。1 つ目の因数が $0$ である。
(2) 辺 $a=3$、$b=4$、$c=5$:$(9-16)(25-9-16)=(-7)\cdot0=0$。2 つ目の因数が $0$ である。
(3) 辺 $4,5,6$:$(16-25)(36-16-25)=(-9)(-5)=45\ne0$。条件を満たさない(ex-sht-try の (3))。
(4) 辺 $a=2$、$b=c=3$:$(4-9)(9-4-9)=(-5)(-4)=20\ne0$。二等辺三角形だが、等しいのが $b$ と $c$ なので条件を満たさない(ex-sht-try の (4))。
(5) 辺 $a=b=1$、$c=\sqrt2$(直角二等辺三角形):$(1-1)(2-1-1)=0\cdot0=0$。2 つの因数がともに $0$ である。

方法 2:角にそろえる

同じ条件を、今度は 正弦定理(高校数学) を使って角だけの式にする。外接円の半径を $R$ とすると $a=2R\sin A$、$b=2R\sin B$ である。途中で次の公式を使う。

正弦の差を積に直す

実数 $X,Y$ について
$$ \sin X-\sin Y=2\cos\frac{X+Y}2\sin\frac{X-Y}2 $$
が成り立つ。

$p=\dfrac{X+Y}2$、$q=\dfrac{X-Y}2$ とおくと $X=p+q$、$Y=p-q$ である。加法定理から
$$ \sin(p+q)-\sin(p-q)=(\sin p\cos q+\cos p\sin q)-(\sin p\cos q-\cos p\sin q)=2\cos p\sin q $$
である。$\square$ ほかの和と積の公式は 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く で扱う。

正弦定理で角だけの式にする

方針:条件を $\sin2A=\sin2B$ に直し、fml-sht-sum-to-product で積の形にする。最後に角の範囲で場合を絞る。
段 1(角で書く)。$a=2R\sin A$、$b=2R\sin B$ を代入すると、条件は $2R\sin A\cos A=2R\sin B\cos B$ である。$2R>0$ で割り、2 倍角の公式 $\sin2\theta=2\sin\theta\cos\theta$ を使うと、$\sin2A=\sin2B$ と同値である(両辺を 2 倍した)。
段 2(積にする)。fml-sht-sum-to-product で $X=2A$、$Y=2B$ とすると
$$ \sin2A-\sin2B=2\cos(A+B)\sin(A-B) $$
なので、条件は $\cos(A+B)\sin(A-B)=0$ と同値である。
段 3(角の範囲で絞る)。lem-sht-product により、$\cos(A+B)=0$ または $\sin(A-B)=0$ である。$0^\circ< A+B<180^\circ$ の範囲で $\cos(A+B)=0$ となるのは $A+B=90^\circ$、つまり $C=90^\circ$ のときだけである。$-180^\circ< A-B<180^\circ$ の範囲で $\sin(A-B)=0$ となるのは $A-B=0^\circ$、つまり $A=B$ のときだけである。$A=B$ は、二等辺三角形の性質とその逆により $a=b$ と同値である。
よって $a\cos A=b\cos B\iff(a=b$ または $C=90^\circ)$ で、thm-sht-main と同じ答えが出る。$\square$

段 3 で角の範囲を使うのが要点である。$\sin2A=\sin2B$ を見て「$2A=2B$」とだけ考えると、$2A=180^\circ-2B$(つまり $A+B=90^\circ$)の場合を落とす(ex-sht-sin2a)。積の形にすると、2 つの場合が式の上で自然に現れる。
2 つの方法を比べる。

方法 1(辺にそろえる)方法 2(角にそろえる)
使う定理余弦定理(角を辺に)正弦定理(辺を角に)、加法定理
計算分母を払って展開・因数分解2 倍角・和積の公式
場合分けが出る所多項式の因数三角関数の値が $0$ になる角
気をつける所$0$ になりうる式で割らない角の範囲で解を絞る。解を落とさない
向いている条件余弦が入った式正弦が入った式、角の和・差が入った式

答えの読み方:「または」は和集合

三角形の形は、2 つの角 $(A,B)$ で決まる($C=180^\circ-A-B$)。形の相似を除いて、三角形は $A>0$、$B>0$、$A+B<180^\circ$ を満たす点 $(A,B)$ と 1 対 1 に対応する。この平面の上に thm-sht-main の答えを描くと図 1 になる。
角 A を横軸、角 B を縦軸にとった三角形の領域。条件 a cos A = b cos B を満たすのは、線分 A = B と線分 A + B = 90° の上の点で、2 本は (45°, 45°) で交わる 角 A を横軸、角 B を縦軸にとった三角形の領域。条件 a cos A = b cos B を満たすのは、線分 A = B と線分 A + B = 90° の上の点で、2 本は (45°, 45°) で交わる

「または」と「かつ」

条件を満たす点は、線分 $A=B$($0^\circ< A<90^\circ$)と線分 $A+B=90^\circ$ の 2 本の和集合である。2 本は 1 点 $(45^\circ,45^\circ)$ で交わり、これは直角二等辺三角形である。

  • 答えを「直角二等辺三角形」とすると、交点の 1 点(相似な三角形の 1 種類)しか表さず、2 本の線分のほかの点、たとえば辺 $5,5,6$ や辺 $3,4,5$ の三角形を落とす。「かつ」(共通部分)と「または」(和集合)の取り違えである。
  • 答えを「$BC=CA$ の二等辺三角形 または $C=90^\circ$ の直角三角形」とすれば、直角二等辺三角形は両方に入り、「または」の意味(両方が成り立つ場合も含む)とも合う。
  • 図 1 で、辺 $4,5,6$ の三角形の点(約 $(41.41^\circ,55.77^\circ)$)はどちらの線分の上にもない。

条件 $a\cos A=b\cos B$ には、外接円を使った図形の意味もある。$A$ が鋭角なら、外心 $O$ から辺 $BC$ までの距離は $R\cos A$ である(中心角 $\angle BOC=2A$ で、$O$ から $BC$ に下ろした垂線は二等辺三角形 $OBC$ の頂角を 2 等分するので、垂線の長さは $R\cos\dfrac{2A}2=R\cos A$)。したがって三角形 $OBC$ の面積は $\dfrac12aR\cos A$ で、同じく三角形 $OCA$ の面積は $\dfrac12bR\cos B$ である。つまり、$A$、$B$ がどちらも鋭角の三角形では、$a\cos A=b\cos B$ は「三角形 $OBC$ と三角形 $OCA$ の面積が等しい」ことと同じである。条件を満たす三角形では $A$、$B$ はどちらも鋭角なので(二等辺三角形の底角と、直角三角形の直角でない角)、条件を満たす三角形はどれも、外心で分けた三角形 $OBC$ と $OCA$ の面積が等しい。ただし $A$ か $B$ が鈍角だと $O$ は三角形の外に出るので、面積が等しくても条件を満たすとは限らない(たとえば $A=120^\circ$、$B=C=30^\circ$)。

CA = CB = 5、AB = 6 の二等辺三角形と外心 O。三角形 OBC と OCA は対称で、面積はどちらも 75/16 CA = CB = 5、AB = 6 の二等辺三角形と外心 O。三角形 OBC と OCA は対称で、面積はどちらも 75/16
C = 90° の直角三角形と外心 O(斜辺の中点)。三角形 OBC と OCA の面積はどちらも 3 C = 90° の直角三角形と外心 O(斜辺の中点)。三角形 OBC と OCA の面積はどちらも 3

外心で分けた面積
  1. 図 2:$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(3,4)$ の二等辺三角形($a=b=5$)。外心は $O\left(3,\dfrac78\right)$、外接円の半径は $R=\dfrac{25}8$ である。三角形 $OBC$ と $OCA$ は直線 $x=3$ について対称なので面積が等しく、どちらも $\dfrac12\cdot5\cdot\dfrac{25}8\cdot\dfrac35=\dfrac{75}{16}$ である。
  2. 図 3:$C=90^\circ$、$CB=3$、$CA=4$ の直角三角形。外心 $O$ は斜辺 $AB$ の中点(直径に対する円周角)で、$R=\dfrac52$ である。$OC$ は三角形 $ABC$ の中線なので、三角形 $OBC$ と $OCA$ は底辺 $OB=OA$ と高さが共通で、面積はどちらも三角形 $ABC$ の半分 $3$ である。式でも $\dfrac12\cdot3\cdot\dfrac52\cdot\dfrac45=3$、$\dfrac12\cdot4\cdot\dfrac52\cdot\dfrac35=3$ である。

ほかの条件で練習する

$a\cos B=b\cos A$:二等辺三角形だけ

見た目は thm-sht-main に似ているが、答えは違う。三角形の射影定理 の $c=a\cos B+b\cos A$ を使う。条件 $a\cos B=b\cos A$ のもとでは $a\cos B=b\cos A=\dfrac c2$ である。
辺にそろえて確かめる。余弦定理を代入すると
$$ a\cdot\frac{c^2+a^2-b^2}{2ca}=b\cdot\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} $$
で、両辺に $2c$ を掛けると $c^2+a^2-b^2=b^2+c^2-a^2$、つまり $2a^2=2b^2$、$a=b$ である。各段は同値変形なので、$a\cos B=b\cos A\iff a=b$ である。今度は因数が 1 つしか出ないので、直角三角形の場合は現れない。実際、辺 $a=3$、$b=4$、$c=5$ の直角三角形では $a\cos B=3\cdot\dfrac35=\dfrac95$、$b\cos A=4\cdot\dfrac45=\dfrac{16}5$ で等しくない。
図形で言えば、$a\cos B$ と $b\cos A$ は $C$ から $AB$ に下ろした垂線の足で辺 $AB$ を分けた長さ(向き付き)で、それが等しいことは足が $AB$ の中点にあること、つまり $C$ が $AB$ の垂直二等分線の上にあることである。

$\sin A=2\sin B\cos C$:角にそろえる

$A=180^\circ-(B+C)$ なので $\sin A=\sin(B+C)=\sin B\cos C+\cos B\sin C$ である。条件は
$$ \sin B\cos C+\cos B\sin C=2\sin B\cos C\iff\sin B\cos C-\cos B\sin C=0\iff\sin(B-C)=0 $$
と同値である。$-180^\circ< B-C<180^\circ$ なので $B=C$、つまり $b=c$($CA=AB$ の二等辺三角形)である。
辺にそろえても同じ答えになる。正弦定理で $\sin A=\dfrac a{2R}$、$\sin B=\dfrac b{2R}$、余弦定理で $\cos C=\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$ を代入すると $\dfrac a{2R}=2\cdot\dfrac b{2R}\cdot\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}$ で、両辺に $2Ra$ を掛けて $a^2=a^2+b^2-c^2$、つまり $b^2=c^2$、$b=c$ である。数値では、$a=6$、$b=c=5$ で $\sin A=\dfrac{24}{25}$($\cos A=\dfrac7{25}$ から)、$2\sin B\cos C=2\cdot\dfrac45\cdot\dfrac35=\dfrac{24}{25}$ と一致する。

3 つの辺と余弦の条件

三角形 $ABC$ が $a\cos A+b\cos B=c\cos C$ を満たすとき、どんな三角形か。

解答を開く

余弦定理を代入して両辺に $2abc$ を掛けると $a^2(b^2+c^2-a^2)+b^2(c^2+a^2-b^2)=c^2(a^2+b^2-c^2)$ である。展開して整理すると $c^4-a^4-b^4+2a^2b^2=0$、つまり $c^4-(a^2-b^2)^2=0$ である。和と差の積で因数分解すると$$(c^2-a^2+b^2)(c^2+a^2-b^2)=0$$で、$a^2=b^2+c^2$ または $b^2=c^2+a^2$ である。三平方の定理とその逆により、答えは「$A=90^\circ$ の直角三角形 または $B=90^\circ$ の直角三角形」である。

確かめ:$a=5$、$b=3$、$c=4$($A=90^\circ$)では $\cos A=0$、$\cos B=\dfrac45$、$\cos C=\dfrac35$ で、$a\cos A+b\cos B=0+\dfrac{12}5$、$c\cos C=\dfrac{12}5$ と一致する。$C=90^\circ$ の直角三角形($a=3$、$b=4$、$c=5$)では左辺 $3\cdot\dfrac45+4\cdot\dfrac35=\dfrac{24}5$、右辺 $0$ で満たさない。直角の位置まで答える必要がある。

例と反例

形状決定でよく起こる誤りを、「守らなかった手順」ごとに並べる。

外す条件(手順)反例成り立たなくなること
$0$ になりうる式で割らない$\sin2A=2\sin B\cos A$ を $\cos A$ で割る答えが解の全体になること($A=90^\circ$ を落とす)
$\sin2A=\sin2B$ の解を両方とる$2A=2B$ だけを解とする答えが解の全体になること(辺 $3,4,5$ を落とす)
どの 2 辺が等しいかまで答える辺 $a=2$、$b=c=3$十分性(答えの形なら条件を満たす)
「または」を「かつ」と読まない答えを「直角二等辺三角形」とする答えが解の全体になること(辺 $5,5,6$ を落とす)
反例:$\cos A$ で割って解を落とす

条件 $\sin2A=2\sin B\cos A$ を考える。左辺は $2\sin A\cos A$ なので、「両辺を $2\cos A$ で割って $\sin A=\sin B$、よって $A=B$」とすると誤りである。
正しくは、移項して $2\cos A(\sin A-\sin B)=0$ とし、lem-sht-product を使う。$\cos A=0$ なら $A=90^\circ$ である。$\sin A=\sin B$ なら、$0^\circ< A,B<180^\circ$ で正弦が等しいのは $A=B$ か $A+B=180^\circ$ のときで、後者は三角形では起こらないので $A=B$ である。答えは「$A=90^\circ$ の直角三角形 または $BC=CA$ の二等辺三角形」である。
$A=90^\circ$、$B=30^\circ$、$C=60^\circ$ の三角形では、$\sin2A=\sin180^\circ=0$、$2\sin B\cos A=2\cdot\dfrac12\cdot0=0$ で条件を満たすが、$A\ne B$ である。$\cos A$ で割った段で、$\cos A=0$ の場合を捨ててしまったのである。

反例:$\sin2A=\sin2B$ から $A=B$ だけを出す

thm-sht-main の条件を角にそろえると $\sin2A=\sin2B$ になる(prf-sht-angles の段 1)。ここで「$2A=2B$、よって $A=B$」とだけ結論すると、辺 $a=3$、$b=4$、$c=5$ の直角三角形を落とす。この三角形では $\sin A=\dfrac35$、$\cos A=\dfrac45$、$\sin B=\dfrac45$、$\cos B=\dfrac35$ なので
$$ \sin2A=2\cdot\frac35\cdot\frac45=\frac{24}{25},\qquad \sin2B=2\cdot\frac45\cdot\frac35=\frac{24}{25} $$
で条件を満たすが、$A\ne B$ である($A\approx36.87^\circ$、$B\approx53.13^\circ$)。$0^\circ<2A,2B<360^\circ$ の範囲では、$\sin2A=\sin2B$ は $2A=2B$ のほかに $2A+2B=180^\circ$ でも成り立つ。

反例:どの 2 辺が等しいかを落とす

thm-sht-main の答えを「二等辺三角形 または 直角三角形」とだけ書くと、十分性が崩れる。辺 $a=2$、$b=c=3$ の二等辺三角形は $a\cos A=\dfrac{14}9\ne1=b\cos B$ で条件を満たさない(ex-sht-try の (4))。また、$A=90^\circ$ の直角三角形($a=5$、$b=3$、$c=4$)も、$a\cos A=0$、$b\cos B=3\cdot\dfrac45=\dfrac{12}5$ で満たさない。等しい 2 辺は $a$ と $b$、直角は $C$ と、位置まで答える必要がある。

反例:「または」を「かつ」と読む

答えを「直角二等辺三角形」とすると、それは $a=b$ かつ $C=90^\circ$ の三角形で、rem-sht-or の図 1 の交点 1 つにあたる。辺 $5,5,6$ の三角形($a=b$ だが $C\ne90^\circ$。$\cos C=\dfrac7{25}$)や辺 $3,4,5$ の三角形($C=90^\circ$ だが $a\ne b$)は条件を満たすのに、答えから落ちてしまう。この答えは、十分性は正しいが必要性が崩れている。

大学数学で見る:零点集合とその分解

因数分解は図形の分解

prf-sht-sides の段 4 では、条件が多項式 $F(a,b,c)=(a^2-b^2)(c^2-a^2-b^2)$ について $F=0$ となることに書き換わった。辺の組 $(a,b,c)$ を空間の点とみると、$F=0$ を満たす点の集合(零点集合)は、$a^2-b^2=0$ の零点集合と $c^2-a^2-b^2=0$ の零点集合の和集合である。前者は平面 $a=b$(辺が正の範囲で)、後者は円錐面 $c^2=a^2+b^2$ である。

既約成分への分解を開く

多項式をそれ以上分解できない因数(既約多項式)の積に書くと、零点集合はそれぞれの因数の零点集合の和集合に分かれる。$a^2-b^2=(a-b)(a+b)$ はさらに分解できるが、$a,b>0$ の範囲では $a+b=0$ の点はないので、残るのは平面 $a-b=0$ だけである。$c^2-a^2-b^2$ は実数係数の範囲でこれ以上分解できない。

このように、多項式の零点集合を「これ以上分けられない部分」の和集合に分けることを、零点集合の既約分解という。形状決定の「因数分解して場合を分ける」は、その最も簡単な例になっている。多項式の零点集合を図形として調べる分野は代数幾何学とよばれ、アフィン代数的集合 が入口になる。

角の組 $(A,B)$ の平面(図 1)で見ると、$\cos(A+B)\sin(A-B)=0$ の零点集合が 2 本の線分に分かれる。辺で見ても角で見ても、答えが 2 つの部分の和集合になることは変わらない。

さらに先へ

  • 形状決定は、条件を満たす三角形の「集合」を決める問題である。これに対し、2 辺と 1 つの角などを与えて三角形が何通りあるかを数える問題は 三角形の決定と解の個数 で扱う。
  • すべての三角形で成り立つ関係式(たとえば 三角形の射影定理 の $a(b\cos C-c\cos B)=b^2-c^2$)は、形を決めない。辺にそろえて整理したとき、両辺が同じ多項式になって $0=0$ に帰着するからである。式がすべての値で成り立つかどうかの見分け方は 恒等式と未定係数法 で扱う。
  • 必要条件・十分条件、「または」「かつ」と集合の和・共通部分の関係は 集合と論理:必要条件・十分条件 で扱う(Ham18)。場合に分けて証明する書き方の一般論も同じ本にある。
  • 正弦の差を積に直す公式のほか、和と積の公式の全体は 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く で扱う。

関連項目

参考文献

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