円に内接する四角形(cyclic quadrilateral)とは、4 つの頂点が 1 つの円の上に、円周上の順に並ぶ四角形である。円周角の定理から、向かい合う角の和は $180^\circ$ になる。逆に、四角形 $ABCD$ で $A$ と $C$ が直線 $BD$ の反対側にあって $\angle BAD+\angle BCD=180^\circ$ なら 4 点は同一円周上にあり、外角が内対角に等しいこと、同じ側から 1 辺を見込む角が等しいことも判定法になる。反対側の条件を外すと、へこんだ四角形のように角の条件を満たしても共円でない例がある。座標では、一直線上にない 3 点と 4 点目の $(x^2+y^2,x,y,1)$ を並べた $4\times4$ の行列式が 0 になることが判定法で、その値は 4 点目の方べきの定数倍である。
前提知識: 円周角の定理(高校数学), 三角形の外心, 円の方程式
一直線上にない 3 点には、それらを通る円がちょうど 1 つある(中心は 三角形の外心)。だから三角形はどれも円に内接する。ところが 4 点になると、そうはいかない。4 点目がたまたま 3 点を通る円の上に乗るときだけ、四角形は円に内接する。この記事では、四角形が円に内接するかどうかを、角だけで判定する方法を調べる。
まず、円に内接する四角形の角を計算してみる。
円 $x^2+y^2=25$ の上に $A(5,0)$、$B(3,4)$、$C(-4,3)$、$D(0,-5)$ をとる(どれも $x^2+y^2=25$ を満たす)。四角形 $ABCD$ の角を、ベクトルの 内積 $\cos\angle XVY=\dfrac{\overrightarrow{VX}\cdot\overrightarrow{VY}}{|\overrightarrow{VX}|\,|\overrightarrow{VY}|}$ で求める(ベクトルの内積(高校数学))。
(1) $\angle A=\angle DAB$。$\overrightarrow{AB}=(-2,4)$、$\overrightarrow{AD}=(-5,-5)$ で、内積は $10-20=-10$、長さは $\sqrt{20}=2\sqrt5$ と $\sqrt{50}=5\sqrt2$ である。よって
$$
\cos\angle A=\frac{-10}{2\sqrt5\cdot5\sqrt2}=\frac{-10}{10\sqrt{10}}=-\frac1{\sqrt{10}}
$$
である。
(2) $\angle C=\angle BCD$。$\overrightarrow{CB}=(7,1)$、$\overrightarrow{CD}=(4,-8)$ で、内積は $28-8=20$、長さは $\sqrt{50}=5\sqrt2$ と $\sqrt{80}=4\sqrt5$ である。よって
$$
\cos\angle C=\frac{20}{5\sqrt2\cdot4\sqrt5}=\frac{20}{20\sqrt{10}}=\frac1{\sqrt{10}}
$$
である。
$\cos\angle C=-\cos\angle A=\cos(180^\circ-\angle A)$ で、角は $0^\circ$ から $180^\circ$ の間にあるので $\angle C=180^\circ-\angle A$、つまり $\angle A+\angle C=180^\circ$ である(およそ $108.4^\circ+71.6^\circ$)。同じ計算で $\cos\angle B=-\dfrac1{\sqrt{10}}$、$\cos\angle D=\dfrac1{\sqrt{10}}$ となり、$\angle B+\angle D=180^\circ$ である。
円 x² + y² = 25 に内接する四角形 ABCD。向かい合う角 A と C の和は 180°
平行四辺形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(5,2)$、$D(1,2)$ を考える。$\overrightarrow{AB}=(4,0)$、$\overrightarrow{AD}=(1,2)$ なので $\cos\angle A=\dfrac{4}{4\sqrt5}=\dfrac1{\sqrt5}$ で、$\angle A$ はおよそ $63.4^\circ$ である。平行四辺形では向かい合う角が等しいので $\angle C=\angle A$ で、$\angle A+\angle C$ はおよそ $126.9^\circ$ であり、$180^\circ$ にならない。
実際、この平行四辺形は円に内接しない。$A$、$B$、$D$ を通る円を $x^2+y^2+lx+my+n=0$ とおくと、$A$ から $n=0$、$B$ から $16+4l=0$ で $l=-4$、$D$ から $1+4-4+2m=0$ で $m=-\dfrac12$ である。この円の式の左辺に $C(5,2)$ を入れると $25+4-20-1=8\ne0$ なので、$C$ はこの円の上にない。
2 つの例から、「向かい合う角の和が $180^\circ$」が円に内接するための目印になりそうだと分かる。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算・定理 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 対角の和が $180^\circ$ | 対角の定理とその逆 | 有向角で $\angle A$ と $\angle C$ が等しい |
| 外角がその内対角に等しい | 外角による判定 | 同じ |
| 1 辺を見込む角が等しい | 見込む角による判定 | 円周角の定理の逆 |
| 3 点を通る円の式に 4 点目を代入 | 行列式による判定 | $4\times4$ の行列式が $0$、値は方べきの定数倍 |
1 つの円の上に 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ があり、円周上にこの順に並んでいるとする。つまり、$A$ と $C$ は、$B$ と $D$ で円を分けた 2 つの弧のうち別々の弧の上にある。このとき四角形 $ABCD$ を 円に内接する四角形(内接四角形)といい、その円を四角形の 外接円 という。4 点が同じ円の上にあることを、4 点が 同一円周上にある(共円)という。
円周上に並ぶ順に頂点を結ぶので、円に内接する四角形はへこみのない四角形(凸四角形)になる。この記事では、次の 3 つの事実を使う。どれも 円周角の定理(高校数学) と大学向けの 円周角の定理 で証明されている。
四角形 $ABCD$ が円に内接するならば
$$
\angle A+\angle C=180^\circ,\qquad \angle B+\angle D=180^\circ
$$
である。ここで $\angle A=\angle DAB$、$\angle C=\angle BCD$ などは四角形の内角である。
方針:$\angle A$ と $\angle C$ は、同じ弦 $BD$ を、円周の反対側の弧から見込む角である。円周角の定理(高校数学)(事実 1)で、それぞれを 2 つの弧の中心角の半分として表す。
段 1(弧を名づける)。外接円の中心を $O$ とする。$B$ と $D$ で円を 2 つの弧に分け、$C$ を含む方を弧 $\gamma$、$A$ を含む方を弧 $\alpha$ とする(def-cyc-cyclic により $A$ と $C$ は別々の弧の上にある)。弧 $\gamma$ の中心角を $\theta$ とすると、2 つの弧を合わせると円全体なので、弧 $\alpha$ の中心角は $360^\circ-\theta$ である。
段 2($\angle A$)。$\angle A=\angle DAB$ は、円周上の点 $A$ から弦 $BD$ を見込む角である。$A$ を含まない方の弧は $\gamma$ なので、事実 1 により $\angle A=\dfrac\theta2$ である。
段 3($\angle C$)。$\angle C=\angle BCD$ は、円周上の点 $C$ から同じ弦 $BD$ を見込む角である。$C$ を含まない方の弧は $\alpha$ なので、事実 1 により $\angle C=\dfrac{360^\circ-\theta}2=180^\circ-\dfrac\theta2$ である。
段 4(足す)。段 2 と段 3 を足すと $\angle A+\angle C=\dfrac\theta2+180^\circ-\dfrac\theta2=180^\circ$ である。$\angle B+\angle D$ も、弦 $AC$ と、$B$、$D$ を含む 2 つの弧について同じ議論をすると $180^\circ$ になる。$\square$
ex-cyc-start の $B(3,4)$、$D(0,-5)$ について、中心 $O(0,0)$ から見た角を計算する。$\overrightarrow{OB}=(3,4)$、$\overrightarrow{OD}=(0,-5)$ の内積は $-20$、長さはどちらも $5$ なので、$\cos\angle BOD=-\dfrac{20}{25}=-\dfrac45$ で、$\angle BOD$ はおよそ $143.1^\circ$ である。$\angle BOD$ は $180^\circ$ より小さいので、これは $B$ から $D$ への短い方の弧の中心角で、その弧は $A(5,0)$ を含む。したがって $A$ を含まない弧の中心角は $360^\circ-143.1^\circ=216.9^\circ$ である。prf-cyc-opposite の段 2 により $\angle A$ はおよそ $\dfrac{216.9^\circ}2=108.4^\circ$、段 3 により $\angle C$ はおよそ $\dfrac{143.1^\circ}2=71.6^\circ$ で、ex-cyc-start の値と一致する。
逆も成り立つ。ただし、$A$ と $C$ が対角線 $BD$ の反対側にあること(四角形がへこんでいないこと)を仮定する。この仮定がないと崩れる例は ex-cyc-dart にある。
一直線上にない 3 点 $A$、$B$、$D$ と点 $C$ があり、$A$ と $C$ は直線 $BD$ の反対側にあるとする。
$$
\angle BAD+\angle BCD=180^\circ
$$
ならば、4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ は同一円周上にあり、四角形 $ABCD$ は円に内接する。
方針:$A$、$B$、$D$ を通る円 $\Gamma$ の上に、$C$ と同じ側の点 $C'$ をとる。thm-cyc-opposite から $\angle BC'D=\angle BCD$ となり、円周角の定理の逆(事実 2)で $C$ も $\Gamma$ の上にあることが分かる。
段 1(円 $\Gamma$ と点 $C'$)。$A$、$B$、$D$ は一直線上にないので、この 3 点を通る円 $\Gamma$ がただ 1 つある(中心は三角形 $ABD$ の外心)。$B$ と $D$ で $\Gamma$ を 2 つの弧に分け、$A$ を含まない方の弧の上に、$B$、$D$ と異なる点 $C'$ を 1 つとる。事実 3 により、$C'$ は直線 $BD$ について $A$ の反対側にある。仮定より $C$ も $A$ の反対側にあるので、$C$ と $C'$ は直線 $BD$ の同じ側にある。
段 2($\angle BC'D$ を求める)。$C'$ は $A$ を含まない方の弧の上にあるので、$A$ と $C'$ は $B$、$D$ で分けた別々の弧の上にあり、四角形 $ABC'D$ は円 $\Gamma$ に内接する。thm-cyc-opposite により $\angle BAD+\angle BC'D=180^\circ$ である。仮定の式と比べて $\angle BC'D=\angle BCD$ である。
段 3(事実 2 を使う)。$B$、$D$、$C'$ は円 $\Gamma$ の上の異なる 3 点なので一直線上にない。$C$ と $C'$ は直線 $BD$ の同じ側にあり、段 2 より $\angle BCD=\angle BC'D$ である。事実 2 により、$C$ は $B$、$D$、$C'$ を通る円、つまり $\Gamma$ の上にある。
段 4(並ぶ順)。$A$、$B$、$C$、$D$ はすべて $\Gamma$ の上にあり、$C$ は直線 $BD$ について $A$ の反対側にある。事実 3 により、$C$ は $A$ を含まない方の弧の上にあるので、4 点は円周上に $A$、$B$、$C$、$D$ の順に並び、四角形 $ABCD$ は円に内接する。$\square$
$A(-5,0)$、$B(3,4)$、$C(5,0)$、$D(0,-5)$ とする。$\overrightarrow{BA}=(-8,-4)$、$\overrightarrow{BC}=(2,-4)$ の内積は $-16+16=0$ なので $\angle ABC=90^\circ$ である。$\overrightarrow{DA}=(-5,5)$、$\overrightarrow{DC}=(5,5)$ の内積は $-25+25=0$ なので $\angle ADC=90^\circ$ である。$B$ と $D$ は直線 $AC$($x$ 軸)の反対側にあり、$\angle B+\angle D=180^\circ$ なので、thm-cyc-converse($A$、$C$ の役を $B$、$D$ にして使う)により 4 点は同一円周上にある。実際 4 点はどれも $x^2+y^2=25$ を満たし、外接円は $AC$ を直径とする円である。
四角形 $ABCD$ の頂点 $C$ で、辺 $BC$ を $C$ の先へ延ばした半直線と辺 $CD$ がつくる角を、頂点 $C$ の 外角 という。外角は $180^\circ-\angle BCD$ に等しい。
$A$ と $C$ が直線 $BD$ の反対側にあるとき、四角形 $ABCD$ が円に内接することは、頂点 $C$ の外角が、向かい合う頂点の内角 $\angle BAD$(内対角)に等しいことと同値である。
方針:外角 $=180^\circ-\angle BCD$ を使って、thm-cyc-opposite と thm-cyc-converse の式に言い換える。
「頂点 $C$ の外角 $=\angle BAD$」は、「$180^\circ-\angle BCD=\angle BAD$」、つまり「$\angle BAD+\angle BCD=180^\circ$」と同じである。四角形が円に内接すればこの式が成り立つ(thm-cyc-opposite)。逆にこの式が成り立てば、$A$ と $C$ が直線 $BD$ の反対側にあるという仮定のもとで、四角形は円に内接する(thm-cyc-converse)。$\square$
三角形 $ABC$ で、$B$、$C$ から向かい合う辺に下ろした垂線の足を $E$、$F$ とし、$E$ は辺 $CA$ の内部、$F$ は辺 $AB$ の内部にあるとする。$\angle BEC=\angle BFC=90^\circ$ で、$E$ と $F$ は直線 $BC$ について $A$ と同じ側にあるので、後の ex-cyc-feet と同じ理由(thm-cyc-same-side)で $B$、$C$、$E$、$F$ は同一円周上にある。並ぶ順も確かめる。$F$ は辺 $AB$ の内部の点なので、$A$ と $B$ は直線 $CF$ の反対側にある。$E$ は辺 $CA$ の内部の点で、直線 $CA$ と直線 $CF$ の共有点は $C$ だけなので、線分 $AE$ は直線 $CF$ と交わらず、$E$ は $A$ と同じ側にある。よって $B$ と $E$ は直線 $CF$ の反対側にあり、事実 3 により、$B$ と $E$ は $C$ と $F$ で分けた別々の弧の上にある。つまり 4 点は円周上に $B$、$C$、$E$、$F$ の順に並び、四角形 $BCEF$ は円に内接する。四角形 $BCEF$ の頂点 $E$ の外角は、辺 $CE$ を $E$ の先へ延ばした半直線(その上に $A$ がある)と辺 $EF$ のつくる角 $\angle AEF$ である。cor-cyc-exterior により、これは内対角 $\angle FBC=\angle ABC$ に等しい。
数値で確かめる。$A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ では $E\left(\dfrac52,\dfrac52\right)$、$F\left(\dfrac5{17},\dfrac{20}{17}\right)$ である。$\cos\angle ABC=\dfrac{\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}}{|\overrightarrow{BA}|\,|\overrightarrow{BC}|}=\dfrac{5}{\sqrt{17}\cdot5}=\dfrac1{\sqrt{17}}$ である。一方 $\overrightarrow{EA}=\left(-\dfrac32,\dfrac32\right)$、$\overrightarrow{EF}=\left(-\dfrac{75}{34},-\dfrac{45}{34}\right)$ で、内積は $\dfrac{225}{68}-\dfrac{135}{68}=\dfrac{90}{68}$、長さは $\dfrac{3}{\sqrt2}$ と $\dfrac{15\sqrt{34}}{34}$ なので
$$
\cos\angle AEF=\frac{90/68}{\frac{3}{\sqrt2}\cdot\frac{15\sqrt{34}}{34}}=\frac{90}{68}\cdot\frac{34\sqrt2}{45\sqrt{34}}=\frac{\sqrt2}{\sqrt{34}}=\frac1{\sqrt{17}}
$$
であり、確かに $\angle AEF=\angle ABC$ である。
cor-cyc-exterior で、円に内接する四角形 $ABCD$ の頂点 $D$ を円周上で $C$ に近づけていくと、直線 $CD$ は $C$ における円の接線に近づき、内対角 $\angle BAD$ は $\angle BAC$ に近づく。行き着く先は、「$C$ における接線のうち直線 $BC$ について $A$ と反対側にある半直線と、弦 $CB$ のつくる角は、円周角 $\angle BAC$ に等しい」という関係である。これが 接弦定理 で、そこでは極限を使わずに円周角の定理から直接示す。
向かい合う角の代わりに、同じ辺を 2 つの頂点から見込む角を比べる判定法もある。これは円周角の定理とその逆を、四角形の言葉で言い直したものである。
4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ のうちどの 3 点も一直線上になく、$C$ と $D$ は直線 $AB$ の同じ側にあるとする。このとき、4 点が同一円周上にあることと
$$
\angle ACB=\angle ADB
$$
は同値である。
方針:「同一円周上 ⇒ 角が等しい」は事実 1、「角が等しい ⇒ 同一円周上」は事実 2 である。
段 1(同一円周上なら角が等しい)。4 点が 1 つの円の上にあるとする。$C$ と $D$ は直線 $AB$ の同じ側にあるので、事実 3 により、$A$ と $B$ で分けた 2 つの弧のうち同じ弧の上にある(別々の弧なら反対側にあるはずだから)。すると $C$ を含まない弧と $D$ を含まない弧は同じ弧で、事実 1 により $\angle ACB$ と $\angle ADB$ はどちらもその中心角の半分であり、等しい。
段 2(角が等しければ同一円周上)。$A$、$B$、$C$ は一直線上になく、$D$ と $C$ は直線 $AB$ の同じ側にあり、$\angle ADB=\angle ACB$ である。事実 2 により、$D$ は $A$、$B$、$C$ を通る円の上にある。$\square$
ex-cyc-exterior の三角形 $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ で、$E$、$F$ は垂線の足なので $\angle BEC=\angle BFC=90^\circ$ である。$E$ と $F$ は直線 $BC$($x$ 軸)の同じ側(上側)にあるので、thm-cyc-same-side により $B$、$C$、$E$、$F$ は同一円周上にある。見込む角が $90^\circ$ なので、この円は $BC$ を直径とする円である(直径に対する円周角)。実際、中心 $\left(\dfrac52,0\right)$ からの距離の 2 乗は、$E$ では $0^2+\left(\dfrac52\right)^2=\dfrac{25}4$、$F$ では $\left(\dfrac5{17}-\dfrac52\right)^2+\left(\dfrac{20}{17}\right)^2=\dfrac{5625}{1156}+\dfrac{1600}{1156}=\dfrac{7225}{1156}=\dfrac{25}4$ で、どちらも半径 $\dfrac52$ の 2 乗に等しい。
三角形 ABC の垂線の足 E、F は、BC を直径とする円の上にある。H は垂心
同じ考え方で、三角形の 3 本の垂線と円に内接する四角形の関係が次々に見つかる。たとえば $A$ から下ろした垂線の足を $D$、垂心を $H$ とすると、$\angle BDH=\angle BFH=90^\circ$ なので、$D$ と $F$ は $BH$ を直径とする円の上にあり、$B$、$D$、$H$、$F$ は同一円周上にある(三角形の垂心)。
平行四辺形 $ABCD$ が円に内接するとする。平行四辺形では向かい合う角が等しいので $\angle A=\angle C$ である。thm-cyc-opposite により $\angle A+\angle C=180^\circ$ なので、$2\angle A=180^\circ$、$\angle A=90^\circ$ である。同じように $\angle B=\angle D=90^\circ$ で、$ABCD$ は長方形である。ex-cyc-start-parallelogram の平行四辺形は $\angle A$ がおよそ $63.4^\circ$ で直角でないので、この結果からも円に内接しないことが分かる。
四角形 $ABCD$ が円に内接し、$AD$ と $BC$ が平行であるとする。平行線の同側内角の和は $180^\circ$ なので $\angle A+\angle B=180^\circ$ である。thm-cyc-opposite により $\angle A+\angle C=180^\circ$ である。2 つの式から $\angle B=\angle C$ で、底辺 $BC$ の両端の角が等しいので、$ABCD$ は等脚台形($AB=DC$)である。ex-cyc-examples (2) の台形はその例で、$AB=DC=\sqrt{50}$ だった。
角による判定は、どの 2 つの頂点を向かい合う頂点とみるか、どの点がどちら側にあるかを気にする必要があった。座標を使うと、4 点を平等に扱う判定式が作れる。
ex-cyc-start-parallelogram で行ったように、3 点を通る円の方程式 $x^2+y^2+lx+my+n=0$ を求め、4 点目を代入すればよい。代入した値は、4 点目のその円に関する方べき(中心までの距離の 2 乗から半径の 2 乗を引いた値)に等しい(方べきの定理(高校数学))。値が $0$ なら円の上、正なら外、負なら内にある。
3 点を通る円を先に求める代わりに、4 点の座標を並べた行列式を 1 つ計算すればよい。以下、点 $P$ の座標を $(x_P,y_P)$ と書く。
一直線上にない 3 点 $A$、$B$、$C$ と点 $P(x,y)$ に対して
$$
\Delta(P):=\det\begin{pmatrix}x_A^2+y_A^2&x_A&y_A&1\\ x_B^2+y_B^2&x_B&y_B&1\\ x_C^2+y_C^2&x_C&y_C&1\\ x^2+y^2&x&y&1\end{pmatrix},\qquad
\delta:=\det\begin{pmatrix}x_A&y_A&1\\ x_B&y_B&1\\ x_C&y_C&1\end{pmatrix}
$$
とおく。$A$、$B$、$C$ を通る円を $x^2+y^2+lx+my+n=0$ とすると
$$
\Delta(P)=-\delta\,(x^2+y^2+lx+my+n)
$$
であり、$\delta\ne0$ である。特に、$P$ が $A$、$B$、$C$ を通る円の上にあることは $\Delta(P)=0$ と同値で、$\Delta(P)$ は $P$ の方べきの $-\delta$ 倍である。
方針:行列式を最後の行で展開すると、$\Delta(P)$ は $x^2+y^2$ の係数が $-\delta$ の「円の方程式の形の式」になる。この式は $A$、$B$、$C$ で $0$ になるので、$A$、$B$、$C$ を通る円の方程式の $-\delta$ 倍である。行列式について使う 2 つの性質(行による展開、同じ行が 2 つあると $0$)は 行列式 の記事にあり、ここでは証明しない。
段 1($\delta\ne0$)。$\delta$ は $(x_B-x_A)(y_C-y_A)-(y_B-y_A)(x_C-x_A)$ に等しく(第 1 行を第 2 行・第 3 行から引いてから第 3 列で展開する)、これは三角形 $ABC$ の 符号付き面積 の $2$ 倍である。$A$、$B$、$C$ は一直線上にないので $\delta\ne0$ である。
段 2(展開)。$\Delta(P)$ を第 4 行で展開すると、各成分 $x^2+y^2$、$x$、$y$、$1$ に、$A$、$B$、$C$ の座標だけで決まる定数を掛けて足した形になる。$x^2+y^2$ に掛かる定数は、第 4 行第 1 列を除いた小行列式に符号 $(-1)^{4+1}=-1$ を掛けたもので、その小行列式は $\delta$ である。よって、ある定数 $l'$、$m'$、$n'$ により
$$
\Delta(P)=-\delta\,(x^2+y^2)+l'x+m'y+n'
$$
と書ける。$\delta\ne0$ なので $\Delta(P)=-\delta\,g(x,y)$、$g(x,y)=x^2+y^2+\dfrac{l'}{-\delta}x+\dfrac{m'}{-\delta}y+\dfrac{n'}{-\delta}$ とおける。
段 3($A$、$B$、$C$ で $0$)。$P=A$ とすると、第 4 行が第 1 行と同じになるので $\Delta(A)=0$ である。同じように $\Delta(B)=\Delta(C)=0$ である。よって $g$ は $A$、$B$、$C$ で $0$ になる。
段 4(円の方程式は 1 つ)。$h(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n$ も $A$、$B$、$C$ で $0$ になる。差 $g-h$ は $x^2+y^2$ が消えて $px+qy+r$ の形の式になり、$A$、$B$、$C$ で $0$ になる。もし $(p,q)\ne(0,0)$ なら、$px+qy+r=0$ は直線で、$A$、$B$、$C$ がその上に並ぶことになり、仮定に反する。よって $p=q=0$ で、$A$ を入れると $r=0$ である。したがって $g=h$ であり、$\Delta(P)=-\delta\,h(x,y)$ である。$h(x,y)$ は $P$ の方べきなので、残りの主張も成り立つ。$\square$
4 点 $P_1$、$P_2$、$P_3$、$P_4$ の座標を prop-cyc-det の形に並べた行列式 $\Delta(P_1,P_2,P_3,P_4)$ は、2 つの点を入れ替えると符号が変わるだけである(行の入れ替え)。したがって「$\Delta=0$」は 4 点について対称な条件で、どの 3 点を先に選んでも同じ判定になる。3 点が一直線上にあるときも、4 点が 1 本の直線 $px+qy+r=0$ の上にあれば $\Delta=0$ になる(第 2・3・4 列をそれぞれ $p$、$q$、$r$ 倍して足すと、どの行も $0$ になる。列の間にこのような関係があると行列式は $0$ である。行列式)。異なる 4 点について、$\Delta=0$ は「4 点が 1 つの円か 1 本の直線の上にある」ことと同値である(どれか 3 点が一直線上にないなら、その 3 点を先に並べて prop-cyc-det を使えばよい。どの 3 点も一直線上にあるなら、4 点は 1 本の直線の上にあり、上で見たとおり $\Delta=0$ である)。
複素数平面では、同じ条件が「4 点の 複比 が実数」と表される。この見方と、円と直線を入れ替える変換(Möbius変換)は 円周角の定理(高校数学) で扱う。また、円に内接する四角形の 4 辺と対角線の長さには $AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC$ という関係があり(Ptolemyの定理)、この等号が成り立つことも共円の判定法になる。
どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $A$ と $C$ が直線 $BD$ の反対側 | 対角の和が $180^\circ$ なら共円 | ex-cyc-dart |
| $C$ と $D$ が直線 $AB$ の同じ側 | 見込む角が等しければ共円 | ex-cyc-opposite-side |
| 4 点が同一円周上 | 対角の和が $180^\circ$ | ex-cyc-start-parallelogram |
| 円(楕円では成り立たない) | 対角の和が $180^\circ$ | ex-cyc-ellipse |
$B(-1,0)$、$D(1,0)$、$A(0,\sqrt3)$、$C\left(0,\dfrac1{\sqrt3}\right)$ とする。三角形 $ABD$ は 1 辺 $2$ の正三角形なので $\angle BAD=60^\circ$ である。$\overrightarrow{CB}=\left(-1,-\dfrac1{\sqrt3}\right)$、$\overrightarrow{CD}=\left(1,-\dfrac1{\sqrt3}\right)$ の内積は $-1+\dfrac13=-\dfrac23$、長さはどちらも $\dfrac2{\sqrt3}$ なので、$\cos\angle BCD=\dfrac{-2/3}{4/3}=-\dfrac12$、$\angle BCD=120^\circ$ である。$\angle BAD+\angle BCD=180^\circ$ であるが、$A$、$B$、$D$ を通る円は中心 $\left(0,\dfrac1{\sqrt3}\right)$、半径 $\dfrac2{\sqrt3}$ の円で、$C$ はその中心であって円の上にない。
崩れたのは、$A$ と $C$ が直線 $BD$ の同じ側(上側)にあり、thm-cyc-converse の仮定を満たさないからである。四角形 $ABCD$ は $C$ のところでへこんでいる。
$A(-1,0)$、$B(1,0)$、$C(0,\sqrt3)$、$D(0,-\sqrt3)$ とする。三角形 $ABC$ と $ABD$ はどちらも 1 辺 $2$ の正三角形なので、$\angle ACB=\angle ADB=60^\circ$ である。しかし $A$、$B$、$C$ を通る円 $x^2+y^2-\dfrac2{\sqrt3}y-1=0$ に $D$ を入れると $3+2-1=4\ne0$ で、$D$ はこの円の上にない。$C$ と $D$ が直線 $AB$ の反対側にあり、thm-cyc-same-side の仮定を満たさない。反対側から見込む場合は、角の和が $180^\circ$ になるときに共円になる(thm-cyc-converse)。
左はへこんだ四角形で、∠A + ∠C = 180° でも共円でない。右は直線 AB の反対側から同じ 60° で見込む例で、やはり共円でない
楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ の上に $A(2,0)$、$B(0,1)$、$C(-2,0)$、$D\left(\sqrt2,-\dfrac1{\sqrt2}\right)$ をとる($D$ は $\dfrac24+\dfrac12=1$ を満たす)。$\overrightarrow{BA}=(2,-1)$、$\overrightarrow{BC}=(-2,-1)$ の内積は $-4+1=-3$、長さはどちらも $\sqrt5$ なので $\cos\angle B=-\dfrac35$ である。$\overrightarrow{DA}=\left(2-\sqrt2,\dfrac1{\sqrt2}\right)$、$\overrightarrow{DC}=\left(-2-\sqrt2,\dfrac1{\sqrt2}\right)$ の内積は $(2-\sqrt2)(-2-\sqrt2)+\dfrac12=-(4-2)+\dfrac12=-\dfrac32$ である。$\angle B$ は鈍角、$\angle D$ も内積が負なので鈍角で、$\angle B+\angle D>180^\circ$ である。4 点は同じ楕円の上にあるが、向かい合う角の和は $180^\circ$ にならない。thm-cyc-opposite は円周角の定理を使っており、円でなければ成り立たない。
円に内接する四角形の判定を 2 回使う問題である。
$AB\ne AC$ である鋭角三角形 $ABC$ がある。辺 $BC$ を直径とする円が、辺 $AB$、$AC$ とそれぞれ点 $M$、$N$ で交わる。辺 $BC$ の中点を $O$ とする。$\angle BAC$ の二等分線と $\angle MON$ の二等分線の交点を $R$ とする。三角形 $BMR$ の外接円と三角形 $CNR$ の外接円が、辺 $BC$ の上に共有点をもつことを示せ。
(出典:国際数学オリンピック(2004 年)第 1 問 Oly04。問題文は英文からの和訳。)
B(0,0)、C(6,0)、A(2,4) の場合。円 BMR と円 CNR は、∠A の二等分線と辺 BC の交点 L で交わる。R は円 AMN の上にある
方針:$\angle A$ の二等分線と辺 $BC$ の交点を $L$ とし、$B$、$M$、$R$、$L$ と $C$、$N$、$R$、$L$ がそれぞれ同一円周上にあることを thm-cyc-converse で示す。そのために、$R$ が三角形 $AMN$ の外接円の上にあることを先に示す。角の大きさを $\angle A=\angle BAC$、$\angle B=\angle ABC$、$\angle C=\angle ACB$ と書く。
段 1($M$、$N$ は垂線の足)。直線 $AB$ の上の点 $W$ が $BC$ を直径とする円の上にあるのは、$W=B$ のときか、$\angle BWC=90^\circ$ のとき、つまり $W$ が $C$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足のときである(直径に対する円周角。$C$ は直線 $AB$ の上にない)。鋭角三角形では $\angle B\ne90^\circ$ なのでこの足は $B$ と異なり、$\angle A$、$\angle B$ が鋭角なので辺 $AB$ の内部にある。このように鋭角三角形なので、辺 $AB$ と円の共有点には $B$ と異なる点がちょうど 1 つあり、問題の $M$ はその点である。つまり $M\ne B$ であり、$M$ は $C$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足で、$\angle BMC=90^\circ$ である。同じように $N\ne C$ であり、$N$ は $B$ から直線 $AC$ に下ろした垂線の足である。
段 2(相似)。直角三角形 $AMC$ で $AM=AC\cos A$、直角三角形 $ANB$ で $AN=AB\cos A$ である。よって $\dfrac{AN}{AB}=\dfrac{AM}{AC}=\cos A$ で、三角形 $ANM$ と三角形 $ABC$ は $\angle A$ を共有するので相似である($N$ が $B$ に、$M$ が $C$ に対応する)。したがって $\angle ANM=\angle B$、$\angle AMN=\angle C$ である。また $AB\ne AC$ なので $AM\ne AN$ である。
段 3($R$ は円 $AMN$ の上)。三角形 $AMN$ の外接円を $\Gamma$ とする。$\angle A$ の二等分線は角の内部を通るので、線分 $MN$ とその内部の点 $K$ で交わる。$K$ は弦 $MN$ の内部の点なので $\Gamma$ の内部にあり、直線 $AK$ は $\Gamma$ と $A$ のほかにもう 1 点 $R'$ で交わる。$R'$ は $A$ から見て $K$ の先にある。$\angle MAR'=\angle R'AN$ なので、正弦定理(高校数学) により $\Gamma$ の半径を $\rho$ として $MR'=2\rho\sin\angle MAR'=2\rho\sin\angle R'AN=NR'$ である。よって $R'$ は線分 $MN$ の垂直二等分線の上にある。一方 $OM=ON$($BC$ を直径とする円の半径)なので、三角形 $OMN$ は二等辺三角形で、$\angle MON$ の二等分線は線分 $MN$ の垂直二等分線と一致する。$\angle A$ の二等分線と $MN$ の垂直二等分線は異なる直線である(一致すれば $A$ が垂直二等分線の上にあり $AM=AN$ となって段 2 に反する)。どちらも $R'$ を通るので、2 直線の交点は $R'$ だけであり、$R=R'$ である。
段 4($R$ は $A$ と $L$ の間)。$\angle A$ の二等分線と辺 $BC$ の交点を $L$ とする。$A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$、垂心を $H$ とする。鋭角三角形なので $H$ は線分 $AD$ の内部にある(三角形の垂心)。$H$ は直線 $CM$ と $BN$ の上にあるので $\angle AMH=\angle ANH=90^\circ$ で、$M$、$N$ は $AH$ を直径とする円の上にある。3 点 $A$、$M$、$N$ を通る円はただ 1 つなので、$\Gamma$ は $AH$ を直径とする円である。$\Gamma$ の点 $X$ を直線 $AD$ に正射影すると、中心からのずれが半径以下なので、射影は線分 $AH$ の上に来る。直線 $AD$ は $BC$ に垂直なので、$X$ から直線 $BC$ までの距離は $HD>0$ 以上で、$X$ は直線 $BC$ について $A$ と同じ側にある。特に $R$ は $A$ と同じ側にある。$R$ は $A$ から $K$ を通って $L$ へ向かう半直線の上にあり、この半直線の点のうち直線 $BC$ について $A$ と同じ側にあるのは $L$ より手前の点だけなので、$R$ は線分 $AL$ の内部にある。$L$ は辺 $BC$ の内部にあるので、$R$ は三角形 $ABC$ の内部にある。
段 5($\angle MRA=\angle B$)。$R$ と $N$ はどちらも三角形の内部か辺 $AC$ の内部にあるので、直線 $AB$ について $C$ と同じ側にある。4 点 $A$、$M$、$R$、$N$ は $\Gamma$ の上にあるので、thm-cyc-same-side により $\angle MRA=\angle MNA$ である。段 2 より $\angle MNA=\angle ANM=\angle B$ なので、$\angle MRA=\angle B$ である。
段 6($B$、$M$、$R$、$L$ は同一円周上)。$R$ は線分 $AL$ の内部にあるので $\angle MRL=180^\circ-\angle MRA=180^\circ-\angle B$ である。$M$ は半直線 $BA$ の上、$L$ は半直線 $BC$ の上にあるので $\angle MBL=\angle B$ であり、$\angle MBL+\angle MRL=180^\circ$ である。$B$ と $R$ は直線 $ML$ の反対側にある。実際、線分 $BA$ は直線 $ML$ と内部の点 $M$ で交わるので $B$ と $A$ は反対側にあり、線分 $AR$ は直線 $ML$ と交わらない(直線 $AL$ と直線 $ML$ の共有点は $L$ だけで、$L$ は線分 $AR$ の上にない)ので $R$ は $A$ と同じ側にある。thm-cyc-converse により、$B$、$M$、$R$、$L$ は同一円周上にある。つまり $L$ は三角形 $BMR$ の外接円の上にある。
段 7($C$、$N$、$R$、$L$ も同一円周上)。$B$ と $C$、$M$ と $N$ の役を入れ替えて段 5・段 6 と同じ議論をする。$R$ と $M$ は直線 $AC$ について $B$ と同じ側にあるので $\angle NRA=\angle NMA=\angle AMN=\angle C$ である。よって $\angle NRL=180^\circ-\angle C$、$\angle NCL=\angle C$ で、和は $180^\circ$ である。$C$ と $R$ は直線 $NL$ の反対側にあるので、$C$、$N$、$R$、$L$ は同一円周上にある。
段 8(結論)。$L$ は 2 つの外接円の両方の上にあり、辺 $BC$ の上の点である。$\square$
prf-cyc-oly04 の段 4〜7 の大部分は、「どの点がどちら側にあるか」を確かめる作業だった。角を「2 本の直線の向きの差を $180^\circ$ の違いを除いて測ったもの」(有向角)で表すと、円周角の定理とその逆は「$\measuredangle(XP,YP)=\measuredangle(XQ,YQ)$ ⇔ $X$、$Y$、$P$、$Q$ は同一円周上」という位置によらない 1 つの主張になる(円周角の定理(高校数学) の有向角の節)。この言葉では、段 5〜6 は
$$
\measuredangle(RM,RL)=\measuredangle(RM,RA)=\measuredangle(NM,NA)=\measuredangle(NM,NC)=\measuredangle(BM,BC)=\measuredangle(BM,BL)
$$
という等式の連鎖になる。1 つ目と 3 つ目・5 つ目の等号は、同じ直線を別の 2 点で呼び直しただけ($RL$ と $RA$、$NA$ と $NC$、$BC$ と $BL$ は同じ直線)である。2 つ目は $A$、$M$、$R$、$N$ が同一円周上にあること、4 つ目は $M$、$N$、$B$、$C$ が同一円周上にあること($BC$ を直径とする円)から出る。両端が等しいので $B$、$M$、$R$、$L$ は同一円周上にある。側を確かめる段 4 の後半や段 6 の議論は要らなくなる。
また、辺 $AB$、$BC$、$CA$ の上の点 $M$、$L$、$N$ について、3 つの円 $AMN$、$BML$、$CLN$ はいつも 1 点で交わる(Miquelの定理)。この問題は、その共有点がちょうど $R$ になるように $L$ を選んだ場合とみることができる。
数値で確かめる。$B(0,0)$、$C(6,0)$、$A(2,4)$ では $M\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$、$N(3,3)$、$O(3,0)$、$R\left(2+\dfrac{\sqrt{10}}{10},\,3-\dfrac{3\sqrt{10}}{10}\right)$(およそ $(2.316,2.051)$)、$L(4\sqrt{10}-10,\,0)$(およそ $(2.649,0)$)である。$\angle MRA$、$\angle MNA$、$\angle B$ はどれも $\tan\angle B=2$ の角(およそ $63.43^\circ$)で、4 点 $B$、$M$、$R$、$L$ と $C$、$N$、$R$、$L$ はそれぞれ prop-cyc-det の行列式が $0$ になる。
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