χy種数

同義語:χ_y種数chi_y genusχ_y-genus

概要

χy種数(chi-y genus)とは、複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体 $X$ に対し、正則 $p$ 形式の層の Euler 標数 $\chi^p(X)=\sum_q(-1)^qh^{p,q}(X)$ を係数とする多項式 $\chi_y(X)=\sum_p\chi^p(X)y^p$ である。Serre 双対性により $\chi^p=(-1)^n\chi^{n-p}$ をみたし、$y=0$ で構造層の Euler 標数、$y=-1$ で位相的な Euler 標数、$y=1$ で($n$ が偶数のコンパクト Kähler 多様体なら)符号数になる。射影的な $X$ では、Riemann–Roch の定理により、$\mathbb{CP}^n$ での値で特徴づけられる乗法的列の種数 $T_y[X]$ に等しい。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Hirzebruchの符号数定理, Chern類, Chern指標, Hodge数

$\chi_y$ 種数($\chi_y$-genus)とは、複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体 $X$ に対し、正則 $p$ 形式の層 $\Omega^p_X$ の Euler 標数
$$ \chi^p(X):=\sum_{q=0}^n(-1)^q\dim_{\mathbb C}H^q(X,\Omega^p_X) $$
を係数とする多項式 $\chi_y(X):=\sum_{p=0}^n\chi^p(X)\,y^p\in\mathbb Z[y]$ である(Hirzebruch)。$y=0$ では構造層の Euler 標数 $\chi(X,\mathcal O_X)$、$y=-1$ では位相的な Euler 標数、$y=1$ では、$n$ が偶数のコンパクト Kähler 多様体なら符号数になる。3 つの古典的な不変量が 1 つの多項式にまとまっている。
これと対になる位相的な量が $T_y$ 種数である。冪級数 $Q_y(x)=Q((1+y)x)-yx$($Q(x)=x/(1-e^{-x})$)に属する乗法的列を、多様体の Chern 類に代入して基本類で評価したものを $T_y[X]$ と書く。$T_y$ 種数は「すべての $n$ で $T_y[\mathbb{CP}^n]=1-y+y^2-\cdots+(-y)^n$」という条件でただ 1 つに決まる。$y=0$ では Todd 種数、$y=-1$ では最高次の Chern 数、$y=1$ では $L$ 種数になる。射影的なコンパクト複素多様体では、Hirzebruch–Riemann–Roch の定理により $\chi_y(X)=T_y[X]$ が成り立つ。
この記事では、乗法的列が $\mathbb{CP}^n$ での値の列で決まること、Todd 種数と $T_y$ 種数の上の特徴づけ(形式的な留数による計算)、係数の対称性と 3 つの特殊化、Serre 双対性による $\chi_y$ の対称性を証明し、Riemann–Roch の定理(引用)から $\chi_y=T_y$ を導く。

準備:乗法的列と複素射影空間

この記事では、$\Lambda$ を $\mathbb Q$ を含む可換環とする(使うのは $\mathbb Q$ と多項式環 $\mathbb Q[y]$)。乗法的列と、冪級数 $f(x)=1+\lambda_1x+\lambda_2x^2+\cdots\in\Lambda[\![x]\!]$ に 属する 乗法的列 $\{K_j\}$ は、Hirzebruchの符号数定理 の定義「乗法的列」と定理「Hirzebruch の補題」のとおりとする。$f=K(1+x)$ を $\{K_j\}$ の 特性冪級数 という。変数は $c_1,c_2,\dots$($c_i$ の次数は $i$)と書く。
根の式.$N\ge n$ とし、$\Lambda[\gamma_1,\dots,\gamma_N]$($\gamma_i$ の次数は $1$)で $c_i:=e_i(\gamma)$(基本対称式)とおく。$1+c_1+\cdots+c_N=\prod_i(1+\gamma_i)$ なので、乗法性と $K(1+\gamma_i)=f(\gamma_i)$ から
$$ K_n\bigl(e_1(\gamma),\dots,e_n(\gamma)\bigr)=\Bigl[\prod_{i=1}^Nf(\gamma_i)\Bigr]_n $$
である。ここで $[\ \cdot\ ]_n$ は $n$ 次の斉次成分を表す。$e_1,\dots,e_n$ は代数的に独立なので(対称多項式)、この式が $K_n$ を決める。とくに、環準同型 $\phi\colon\Lambda\to\Lambda'$ で $f$ の係数を写した級数に属する乗法的列は、$K_j$ の係数を $\phi$ で写したものである。

特性冪級数が定める種数

$M$ を実 $2n$ 次元の閉多様体、$J$ を $M$ の概複素構造(概複素構造)とし、$M$ に $J$ から定まる向きを入れる。$c_i(M)\in H^{2i}(M;\mathbb Q)$ を複素ベクトル束 $(TM,J)$ の Chern 類の有理係数での像とする。$\Lambda$ 係数の乗法的列 $\{K_j\}$ について
$$ K[M]:=\bigl\langle K_n\bigl(c_1(M),\dots,c_n(M)\bigr),[M]\bigr\rangle\in\Lambda $$
を $M$ の $K$ 種数 という(係数を $\Lambda$ に広げて評価する)。複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体は、正則接束の複素構造により、この形の $M$ になる。

複素射影空間での値

$\{K_j\}$ を特性冪級数 $f$ の乗法的列とする。$n\ge1$ について
$$ K_n\Bigl(\tbinom{n+1}{1},\tbinom{n+1}{2},\dots,\tbinom{n+1}{n}\Bigr)=[x^n]\,f(x)^{n+1} $$
であり($[x^n]$ は $x^n$ の係数)、これは複素構造の向きを入れた $\mathbb{CP}^n$ の $K$ 種数 $K[\mathbb{CP}^n]$ に等しい。

要点:$\Lambda[x]/(x^{n+1})$ で $K\bigl((1+x)^{n+1}\bigr)=f(x)^{n+1}$ の $n$ 次の成分をとる。

詳しい証明を開く

次数付き代数 $A^\bullet=\Lambda[x]/(x^{n+1})$($x$ の次数は $1$)で $a=(1+x)^{n+1}$ とおくと、$a_i=\binom{n+1}{i}x^i$ である。乗法性と Hirzebruchの符号数定理 の定理「Hirzebruch の補題」の最後の主張から $K(a)=K(1+x)^{n+1}=f(x)^{n+1}$ である。$K_n$ は重み $n$ の斉次式なので、$n$ 次の成分は $K_n(a_1,\dots,a_n)=K_n\bigl(\binom{n+1}1,\dots,\binom{n+1}n\bigr)x^n$ となり、最初の等式を得る。$\mathbb{CP}^n$ では $c_i(T\mathbb{CP}^n)=\binom{n+1}{i}h^i$(複素射影空間の接束 の定理「全 Chern 類」)、$\langle h^n,[\mathbb{CP}^n]\rangle=1$ なので、同じ斉次性から $K[\mathbb{CP}^n]$ も同じ値である。$\square$

冪の係数による級数の決定

$(v_n)_{n\ge1}$ を $\Lambda$ の元の任意の列とする。定数項が $1$ の $f\in\Lambda[\![x]\!]$ で、すべての $n\ge1$ について $[x^n]f(x)^{n+1}=v_n$ となるものが、ただ 1 つ存在する。

$f=1+b_1x+b_2x^2+\cdots$ とすると
$$ [x^n]f^{n+1}=(n+1)\,b_n+P_n(b_1,\dots,b_{n-1}) $$
($P_n$ は $n$ だけで決まる整数係数の多項式)である。$n+1$ は $\Lambda$ で可逆なので、条件は $b_n=\bigl(v_n-P_n(b_1,\dots,b_{n-1})\bigr)/(n+1)$ と同値であり、$b_1,b_2,\dots$ が順にただ 1 通りに決まる。

係数の式の確かめを開く

$b_0=1$ とおく。$f^{n+1}$ の $x^n$ の係数は、$n+1$ 個の因子から次数 $j_1,\dots,j_{n+1}$(和が $n$)の項を選んだ積 $b_{j_1}\cdots b_{j_{n+1}}$ の和である。ある $j_i$ が $n$ なら他はすべて $0$ で、そのような選び方は $n+1$ 通りあり、どれも $b_n$ を与える。それ以外の選び方では、すべての $j_i$ が $n-1$ 以下である。$\square$

複素射影空間での値による決定

$(v_n)_{n\ge1}$ を $\Lambda$ の元の任意の列とする。$\Lambda$ 係数の乗法的列 $\{K_j\}$ で、すべての $n\ge1$ について $K[\mathbb{CP}^n]=v_n$ となるものが、ただ 1 つ存在する。その特性冪級数は lem-chiy-recursion の $f$ である。

Hirzebruchの符号数定理 の定理「Hirzebruch の補題」により、乗法的列 $\{K_j\}$ と定数項 $1$ の冪級数 $f$ は、$f=K(1+x)$ によって 1 対 1 に対応する。$\{K_j\}$ は $K(1+x)$ に属するただ 1 つの乗法的列だからである。lem-chiy-cpn により、条件は「すべての $n\ge1$ で $[x^n]f^{n+1}=v_n$」と同値である。よって lem-chiy-recursion から従う。$\square$

形式的な留数

$k$ を体とし、形式的 Laurent 級数 $g=\sum_ng_nx^n\in k(\!(x)\!)$ の $x^{-1}$ の係数 $g_{-1}$ を $\operatorname{res}_xg$ と書く(形式的Laurent級数)。冪級数の $x^n$ の係数は $\operatorname{res}_x\bigl(g\,x^{-n-1}\bigr)$ である。

形式的な変数変換と留数

$k$ を標数 $0$ の体とし、$t(x)=ax+(\text{2 次以上の項})\in k[\![x]\!]$、$a\ne0$ とする。$F(t)=\sum_{j\ge-m}f_jt^j\in k(\!(t)\!)$ について、$F(t(x))\,t'(x)$ は $k(\!(x)\!)$ の元として定まり、
$$ \operatorname{res}_x\bigl(F(t(x))\,t'(x)\bigr)=\operatorname{res}_tF(t)=f_{-1} $$
である。

要点:項ごとに見ると、$j\neq-1$ の $t^jt'$ は微分なので留数 $0$、$t'/t$ の留数は $t$ の位数 $1$ である。

詳しい証明を開く

$t=xu$、$u\in k[\![x]\!]$、$u(0)=a\neq0$ と書くと、$u$ は可逆である。よって $t^j=x^ju^j\in k(\!(x)\!)$ がすべての整数 $j$ で定まり、$t^j$ は $x^j$ より低い冪をもたない。したがって $\sum_{j\ge0}f_jt^j$ の各係数は有限和で、$F(t(x))$ が定まる。$\sum_{j\ge0}f_jt^jt'$ は冪級数なので、留数は $0$ である。残りは有限個の $-m\le j\le-1$ の項である。形式的Laurent級数 の命題「微分と留数」の 1(Leibniz 則)から、$\ell\ge0$ では帰納法で、$\ell< 0$ では $t^\ell t^{-\ell}=1$ を微分して、$(t^\ell)'=\ell t^{\ell-1}t'$ である。とくに $(t^{j+1})'=(j+1)t^jt'$ である。$j\neq-1$ なら $t^jt'=(t^{j+1})'/(j+1)$ なので、同命題の 2 により留数は $0$ である。$j=-1$ なら、同命題の 3 により $\operatorname{res}_x(t'/t)$ は $t$ の位数 $1$ に等しい。以上で $\operatorname{res}_x\bigl(F(t(x))t'(x)\bigr)=f_{-1}$ である。$\square$

Todd 種数

Todd 多項式

$\Lambda=\mathbb Q$ とし、
$$ Q(x):=\frac{x}{1-e^{-x}}=1+\frac x2+\frac{x^2}{12}-\frac{x^4}{720}+\cdots\in\mathbb Q[\![x]\!] $$
とおく($(1-e^{-x})/x$ は定数項 $1$ の冪級数なので、逆元をもつ)。$Q$ に属する乗法的列 $\{T_n\}$ を Todd 多項式 という。$T[M]$ を $M$ の Todd 種数 といい、$\operatorname{Td}[M]$ とも書く。

根の式により、$T_n$ は Chern指標 の定義「Todd類」の多項式と同じものであり、$\operatorname{Td}[M]=\langle\operatorname{td}(TM),[M]\rangle$ である。

Todd 種数の特徴づけ

すべての $n\ge0$ について $[x^n]\,Q(x)^{n+1}=1$ である。したがって、$\mathbb Q$ 係数の乗法的列のうち、すべての $n\ge1$ で $K[\mathbb{CP}^n]=1$ となるものは Todd 多項式だけである。

留数で係数を取り出す

$t:=1-e^{-x}=x-\frac{x^2}2+\cdots$ とおくと、$Q(x)=x/t$、$t'=e^{-x}=1-t$ である。よって
$$ [x^n]Q^{n+1}=\operatorname{res}_x\frac{Q(x)^{n+1}}{x^{n+1}}=\operatorname{res}_x\frac1{t^{n+1}}=\operatorname{res}_x\Bigl(\frac{1}{t^{n+1}(1-t)}\,t'\Bigr) $$
である。lem-chiy-residue($a=1$)により、これは $t^{-n-1}(1-t)^{-1}=\sum_{j\ge0}t^{j-n-1}$ の $t^{-1}$ の係数、すなわち $j=n$ の項の係数 $1$ に等しい。後半は thm-chiy-determined による。$\square$

Todd 多項式の低い次数
  1. 次数 4 までの Todd 多項式は
    $$ T_1=\tfrac12c_1,\quad T_2=\tfrac1{12}(c_1^2+c_2),\quad T_3=\tfrac1{24}c_1c_2,\quad T_4=\tfrac1{720}\bigl(-c_4+c_3c_1+3c_2^2+4c_2c_1^2-c_1^4\bigr) $$
    である。
  2. $n$ が奇数なら、$T_n$ は $\mathbb Q[c_1,\dots,c_n]$ の中で $c_1$ で割り切れる。

要点:$Q(x)=e^{x/2}B(x)$($B$ は偶関数)と分けて根の式に入れる。1 の $T_4$ は対数をとって計算する。

2 の証明を開く

$e^{x/2}-e^{-x/2}=e^{x/2}(1-e^{-x})$ なので $Q(x)=e^{x/2}B(x)$、$B(x):=\dfrac{x}{e^{x/2}-e^{-x/2}}$ と書ける。$B(-x)=B(x)$ なので、$B$ は $x^2$ の冪級数である。根の式で $\prod_iQ(\gamma_i)=\exp(c_1/2)\prod_iB(\gamma_i)$ である($\prod_ie^{\gamma_i/2}=e^{c_1/2}$)。$\prod_iB(\gamma_i)$ は各 $\gamma_i$ の偶関数なので奇数次の成分をもたず、その $2s$ 次の成分は対称式なので $c$ の多項式 $B_s$ で書ける。$n$ 次の成分をとると $T_n=\sum_{r+2s=n}\frac1{r!}\bigl(\frac{c_1}2\bigr)^rB_s$ である。$n$ が奇数なら各項の $r$ は奇数で $1$ 以上なので、$T_n$ は $c_1$ で割り切れる。$\square$


1 の $T_1,T_2,T_3$ は Chern指標 の定義「Todd類」の後で計算されている。
$T_4$ の計算を開く

$\log B(x)=-\log\frac{\sinh(x/2)}{x/2}$ と $\frac{\sinh z}z=1+\frac{z^2}6+\frac{z^4}{120}+\cdots$ から、$\log\frac{\sinh z}{z}=\frac{z^2}6-\frac{z^4}{180}+\cdots$ である。よって $\log Q(x)=\frac x2-\frac{x^2}{24}+\frac{x^4}{2880}+\cdots$ である。冪和を $s_j:=\sum_i\gamma_i^j$ とすると、$\prod_iQ(\gamma_i)=\exp\bigl(\frac{s_1}2-\frac{s_2}{24}+\frac{s_4}{2880}+\cdots\bigr)$ の 4 次の成分は $\frac{s_1^4}{384}-\frac{s_1^2s_2}{192}+\frac{s_2^2}{1152}+\frac{s_4}{2880}$ である。Newton の公式 $s_1=c_1$、$s_2=c_1^2-2c_2$、$s_4=c_1^4-4c_1^2c_2+2c_2^2+4c_1c_3-4c_4$ を代入して係数を集めると、$c_1^4$ は $\frac{30-60+10+4}{11520}=-\frac1{720}$、$c_1^2c_2$ は $\frac1{96}-\frac1{288}-\frac1{720}=\frac4{720}$、$c_2^2$ は $\frac4{1152}+\frac2{2880}=\frac3{720}$、$c_1c_3$ は $\frac4{2880}=\frac1{720}$、$c_4$ は $-\frac4{2880}=-\frac1{720}$ である。$\square$

$T_y$ 種数

$T_y$ 多項式

$\Lambda=\mathbb Q[y]$、$a:=1+y$ とし、
$$ Q_y(x):=Q(ax)-yx\in\mathbb Q[y][\![x]\!] $$
とおく($Q(ax)$ は冪級数 $Q$ に $ax$ を代入したもの)。$Q_y$ に属する乗法的列を $\{T_n(y;c)\}$ と書く。$Q(ax)$ の $x^j$ の係数は $y$ について $j$ 次以下なので、根の式から、$T_n(y;c)$ は $y$ について $n$ 次以下である。そこで $T_n(y;c)=\sum_{p=0}^nT^p_n(c)\,y^p$ と書く。def-chiy-genus の種数 $T_y[M]\in\mathbb Q[y]$ を $M$ の $T_y$ 種数 という。

$\mathbb Q(y)[\![x]\!]$ の中では $Q_y(x)=\dfrac{x\bigl(1+ye^{-ax}\bigr)}{1-e^{-ax}}$ と書ける。上の定義は $a=0$($y=-1$)を代入しても意味をもつ。低い次数では、$Q_y=1+\frac{1-y}2x+\frac{(1+y)^2}{12}x^2+\cdots$ と Hirzebruchの符号数定理 の例「次数 2 までの公式」から
$$ T_1(y;c)=\frac{1-y}2\,c_1,\qquad T_2(y;c)=\frac{(1+y)^2c_1^2+(1-10y+y^2)\,c_2}{12} $$
である。

$T_y$ 種数の特徴づけ

すべての $n\ge0$ について
$$ [x^n]\,Q_y(x)^{n+1}=\sum_{j=0}^n(-y)^j $$
である。したがって $T_y[\mathbb{CP}^n]=1-y+y^2-\cdots+(-y)^n$ であり、$\mathbb Q[y]$ 係数の乗法的列で、すべての $n\ge1$ についてこの値をとるものは $\{T_n(y;c)\}$ だけである。

両辺は $\mathbb Q[y]$ の元なので、体 $k=\mathbb Q(y)$ の中で計算してよい。$k$ の中で $a=1+y\ne0$ である。$t:=1-e^{-ax}=ax+\cdots$ とおくと、$Q(ax)=ax/t$ と $e^{-ax}=1-t$ から
$$ Q_y(x)=\frac{ax}{t}-yx=\frac{x\,(a-yt)}{t},\qquad t'=a\,e^{-ax}=a(1-t) $$
である。よって
$$ [x^n]Q_y^{n+1}=\operatorname{res}_x\frac{(a-yt)^{n+1}}{t^{n+1}}=\operatorname{res}_x\Bigl(\frac{(a-yt)^{n+1}}{a\,t^{n+1}(1-t)}\,t'\Bigr) $$
である。lem-chiy-residue により、これは $\frac{(a-yt)^{n+1}}{a(1-t)}$ の $t^n$ の係数に等しい。$\frac1{1-t}=\sum_it^i$ を掛けているので、$(a-yt)^{n+1}$ の $t^0,\dots,t^n$ の係数の和を $a$ で割ったものである。その和は、全係数の和 $(a-y)^{n+1}$ から $t^{n+1}$ の係数 $(-y)^{n+1}$ を引いたものである。$a-y=1$ なので
$$ [x^n]Q_y^{n+1}=\frac{1-(-y)^{n+1}}{1+y}=\sum_{j=0}^n(-y)^j $$
である。残りは lem-chiy-cpn と thm-chiy-determined による。$\square$

$y=0$ では thm-chiy-todd に戻る。

係数の対称性

$y^nT_n(1/y;c)=(-1)^nT_n(y;c)$ である。すなわち、$0\le p\le n$ について $T^p_n=(-1)^nT^{n-p}_n$ である。

要点:冪級数の等式 $Q_{1/y}(yx)=Q_y(-x)$ を根の式に入れる。

詳しい証明を開く

$\mathbb Q[\![u]\!]$ で分母を払って確かめると、$Q(-u)=\dfrac{u\,e^{-u}}{1-e^{-u}}=Q(u)-u$ である。$\mathbb Q[y,y^{-1}][\![x]\!]$ の中で計算すると、$(1+y^{-1})\,y=a$ なので $Q_{1/y}(yx)=Q(ax)-x$、$Q_y(-x)=Q(-ax)+yx=Q(ax)-ax+yx=Q(ax)-x$ であり、両者は等しい。ここで $Q_{1/y}$ は $Q_y$ の係数に $y\mapsto y^{-1}$ を施したもので、根の式の後の注意により、それに属する乗法的列は $T_n(1/y;c)$ である。根の式で $\prod_iQ_{1/y}(y\gamma_i)=\prod_iQ_y(-\gamma_i)$ の $n$ 次の成分を比べる。左辺は $\gamma_i$ を $y\gamma_i$ に替えたものなので $y^nT_n(1/y;c)$、右辺は $(-1)^nT_n(y;c)$ である。$T_n(1/y;c)$ は $y^{-1}$ について $n$ 次以下なので、両辺は $\mathbb Q[y][c]$ の元であり、$y^p$ の係数を比べれば後半を得る。$\square$

三つの特殊化
  1. $y=0$:$Q_0=Q$ であり、$T_n(0;c)=T_n(c)$(Todd 多項式)である。
  2. $y=-1$:$Q_{-1}(x)=1+x$ であり、$T_n(-1;c)=c_n$ である。
  3. $y=1$:$Q_1(x)=x/\tanh x$ である。$n$ が奇数なら $T_n(1;c)=0$ であり、$n=2k$ なら $T_{2k}(1;c)=L_k(p_1,\dots,p_k)$ である。ここで $L_k$ は Hirzebruchの符号数定理 の定義「$L$ 多項式」の多項式、$p_j$ は
    $$ \sum_j(-1)^jp_j=\Bigl(\sum_i(-1)^ic_i\Bigr)\Bigl(\sum_ic_i\Bigr) $$
    で定まる $c$ の多項式である(根で書くと $p_j=e_j(\gamma_1^2,\dots,\gamma_N^2)$)。

根の式の後の注意により、$Q_y$ の係数に $y$ の値を代入した級数に属する乗法的列は、$T_n(y;c)$ に同じ値を代入したものである。1 は定義から明らかである。2:$a=0$ では $Q(0\cdot x)=1$ なので $Q_{-1}(x)=1+x$ であり、根の式で $\bigl[\prod_i(1+\gamma_i)\bigr]_n=e_n(\gamma)=c_n$ である。3:$Q_1(x)=Q(2x)-x=\dfrac{x(1+e^{-2x})}{1-e^{-2x}}=\dfrac{x}{\tanh x}$ は偶関数なので、根の式の奇数次の成分は $0$ である。

3 の残りを開く

$Q_1(x)$ は $x^2$ の冪級数 $g(x^2)$、$g(t)=\sqrt t/\tanh\sqrt t$ である。よって $\prod_iQ_1(\gamma_i)=\prod_ig(\gamma_i^2)$ は奇数次の成分をもたない。その $2k$ 次の成分は、$L$ 多項式の根の式(変数を $\gamma_i^2$ とする)により $L_k\bigl(e_1(\gamma^2),\dots,e_k(\gamma^2)\bigr)$ である。最後に、$\prod_i(1-\gamma_i^2)=\prod_i(1-\gamma_i)\prod_i(1+\gamma_i)$ の各次数の成分を比べると、$p_j=e_j(\gamma^2)$ が上の式をみたす。$\square$

閉概複素多様体での値

$M$ を def-chiy-genus のとおりの実 $2n$ 次元の閉概複素多様体とし、$\chi_{\mathrm{top}}(M)$ を $M$ の Euler 標数(Euler標数)とする。

  1. $T_{-1}[M]=\chi_{\mathrm{top}}(M)$ である。
  2. $T_0[M]=\operatorname{Td}[M]$ である。
  3. $n$ が奇数なら $T_1[M]=0$ である。$n=2k$ なら、$J$ の向きについての符号数(符号数(多様体))$\sigma(M)$ に対して $T_1[M]=\sigma(M)$ である。

要点:thm-chiy-special を $M$ の Chern 類に代入し、1 は Euler 類、3 は符号数定理に結ぶ。

詳しい証明を開く

1:thm-chiy-special の 2 により $T_{-1}[M]=\langle c_n(M),[M]\rangle$ である。$c_n(TM,J)$ は $J$ の向きを入れた実ベクトル束 $TM$ の Euler 類であり(Chern類 の注意「他の特性類との関係と参考書」)、その値は Euler類 の定理「接束の Euler 数と Euler 標数」により $\chi_{\mathrm{top}}(M)$ である。2 は thm-chiy-special の 1 による。3:Pontryagin類 の補題「実化の複素化」により、$M$ の Pontryagin 類の有理係数での像は、thm-chiy-special の 3 の $p_j$ に $c_i(M)$ を代入したものである。よって $n$ が奇数なら $T_1[M]=0$、$n=2k$ なら $T_1[M]=L[M]$ である。後者は Hirzebruchの符号数定理 の主定理「Hirzebruch の符号数定理」により $\sigma(M)$ に等しい。$\square$

複素多様体の $\chi_y$ 種数

$\chi_y$ 種数

$X$ を複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体とし、$h^{p,q}(X)=\dim_{\mathbb C}H^q(X,\Omega^p_X)$ をその Hodge 数(Hodge数。有限である)とする。
$$ \chi^p(X):=\sum_{q=0}^n(-1)^qh^{p,q}(X),\qquad\chi_y(X):=\sum_{p=0}^n\chi^p(X)\,y^p\in\mathbb Z[y] $$
とおき、$\chi_y(X)$ を $X$ の $\chi_y$ 種数 という。

$\chi^p(X)$ は層 $\Omega^p_X$ の Euler 標数 $\chi(X,\Omega^p_X)$ である(Hodge数 の記事の $\chi_p(X)$。この記事の $\chi_0(X)$、$\chi_1(X)$ などは $\chi_y(X)$ の $y=0,1$ での値)。$\chi_0(X)=\chi^0(X)=\chi(X,\mathcal O_X)$ は構造層の Euler 標数で、Hirzebruch はこれを $X$ の算術種数と呼ぶ。射影的な $X$ では、算術種数 $p_a(X)$ とは $p_a(X)=(-1)^n\bigl(\chi(X,\mathcal O_X)-1\bigr)$ の関係にある。

Serre 双対による対称性

$X$ を複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体とする。$\chi^p(X)=(-1)^n\chi^{n-p}(X)$ であり、同じことだが $y^n\chi_{1/y}(X)=(-1)^n\chi_y(X)$ である。とくに $n$ が奇数なら $\chi_1(X)=0$ であり、$\chi_y(X)$ は $1-y$ で割り切れる。

Serre双対性 の系「Hodge 数と Euler 標数の対称性」の 2 を自明な直線束に当てると、$\chi(X,\Omega^p_X)=(-1)^n\chi(X,\Omega^{n-p}_X)$ である。

残りの計算を開く

$$y^n\chi_{1/y}(X)=\sum_p\chi^p(X)\,y^{n-p}=\sum_p\chi^{n-p}(X)\,y^p=(-1)^n\sum_p\chi^p(X)\,y^p$$ である。$n$ が奇数なら、$y=1$ を代入して $\chi_1(X)=-\chi_1(X)$、すなわち $\chi_1(X)=0$ である。したがって多項式 $\chi_y(X)$ は $y=1$ で $0$ になり、$1-y$ で割り切れる。$\square$

位相的な側の prop-chiy-reciprocity は、この対称性と同じ形をしている。両者は次の定理で結ばれる。

$\chi_y$ 種数と $T_y$ 種数の一致

$X$ を射影的なコンパクト複素多様体(ある $\mathbb{CP}^N$ の閉複素部分多様体。Chow の定理により非特異射影多様体である)とし、その複素次元を $n$ とする。このとき $\chi_y(X)=T_y[X]$ である。すなわち、各 $p$ について $\chi^p(X)=\bigl\langle T^p_n\bigl(c_1(X),\dots,c_n(X)\bigr),[X]\bigr\rangle$ である。

Riemann–Roch の定理から導く

$\Omega^p_X=\Lambda^pT^*X$ は正則ベクトル束である。Chern指標 の定理「Hirzebruch–Riemann–Rochの定理」(Hir66 Theorem 21.1.1、p. 155。この記事では証明しない)により
$$ \chi^p(X)=\bigl\langle\operatorname{ch}(\Omega^p_X)\operatorname{td}(TX),[X]\bigr\rangle $$
である。
Chern 根で書く.分裂原理(分裂原理 の定理「分裂原理」の 1 と注意「複素ベクトル束の場合」)により、有理係数での $\pi^*$ が単射で、$\pi^*TX$ が直線束 $L_1,\dots,L_n$ の直和になる写像 $\pi$ がある。$\gamma_i:=c_1(L_i)$ とおく。$\pi^*T^*X\cong\bigoplus_iL_i^*$、$\pi^*\Omega^p_X\cong\bigoplus_{|I|=p}\bigotimes_{i\in I}L_i^*$ である($I$ は $\{1,\dots,n\}$ の $p$ 元部分集合)。$c_1(L^*)=-c_1(L)$、$c_1(L\otimes L')=c_1(L)+c_1(L')$(Chern類 の系「直線束の全Chern類と双対」と命題「直線束のテンソル積」)と、Chern指標 の命題「直線束のChern指標」と定理「Chern指標の加法性と乗法性」から
$$ \pi^*\sum_{p=0}^n\operatorname{ch}(\Omega^p_X)\,y^p=\sum_p\sum_{|I|=p}e^{-\sum_{i\in I}\gamma_i}\,y^p=\prod_{i=1}^n\bigl(1+y\,e^{-\gamma_i}\bigr) $$
である。また Chern指標 の命題「Todd類の乗法性」から $\pi^*\operatorname{td}(TX)=\prod_{i=1}^nQ(\gamma_i)$ である。よって $H(x):=(1+ye^{-x})\,Q(x)$ とおくと
$$ \pi^*\sum_p\operatorname{ch}(\Omega^p_X)\operatorname{td}(TX)\,y^p=\prod_{i=1}^nH(\gamma_i) $$
である。
$T_y$ と比べる.$e^{-x}Q(x)=Q(-x)=Q(x)-x$ なので $H(x)=Q(x)+y\bigl(Q(x)-x\bigr)$ であり、$a=1+y$ について
$$ H(ax)=a\,Q(ax)-yax=a\,Q_y(x) $$
が $\mathbb Q[y][\![x]\!]$ で成り立つ。独立な変数 $\gamma_1,\dots,\gamma_n$ の多項式環 $\mathbb Q[y][\gamma]$ で、$\prod_{i=1}^nH(a\gamma_i)=a^n\prod_{i=1}^nQ_y(\gamma_i)$ の $n$ 次の成分を比べる。左辺の $n$ 次の成分は $a^n\bigl[\prod_iH(\gamma_i)\bigr]_n$、右辺は根の式により $a^nT_n(y;e(\gamma))$ である。$\mathbb Q[y][\gamma]$ は整域で $a^n\neq0$ なので、
$$ \Bigl[\prod_{i=1}^nH(\gamma_i)\Bigr]_n=T_n\bigl(y;e_1(\gamma),\dots,e_n(\gamma)\bigr) $$
である。ここで因子の個数がちょうど $n$ であることを使った($H(0)=1+y$ なので、因子を増やすと値が変わる)。この多項式の等式に Chern 根を代入すると、$e_i(\gamma)$ は $\pi^*c_i(X)$ になる。$\pi^*$ の単射性から、$\sum_p\operatorname{ch}(\Omega^p_X)\operatorname{td}(TX)y^p$ の $2n$ 次の成分は $T_n(y;c(X))$ である。基本類で評価すると $\chi_y(X)=T_y[X]$ を得る。$\square$

一般のコンパクト複素多様体

thm-chiy-hrr は Hir66 §21.3(p. 157)にある。Riemann–Roch の定理はコンパクト複素多様体一般でも成り立ち(Atiyah–Singerの指数定理 による)、同じ議論により $\chi_y(X)=T_y[X]$ もコンパクト複素多様体一般で成り立つ(Hir66 p. 158 の文献注。この記事では証明しない)。

三つの値の意味

$X$ を複素次元 $n$ のコンパクト複素多様体とする。

  1. $\chi_{-1}(X)=\sum_{p,q}(-1)^{p+q}h^{p,q}(X)=\chi_{\mathrm{top}}(X)=T_{-1}[X]$ である。
  2. $X$ が射影的なら、$\chi(X,\mathcal O_X)=\operatorname{Td}[X]$ である。
  3. $n$ が奇数なら $\chi_1(X)=T_1[X]=0$ である。$n$ が偶数で $X$ がコンパクト Kähler 多様体なら、$\chi_1(X)=\sum_{p,q}(-1)^qh^{p,q}(X)=\sigma(X)=T_1[X]$ である($\sigma$ は複素構造の向きについての符号数)。

要点:1 は Hodge 数による Euler 標数の表示、3 は Serre 双対性($n$ 奇数)と Hodge 指数定理($n$ 偶数)による。

詳しい証明を開く

1:最初の等号は定義、2 番目の等号は Hodge数 の定理「Euler 標数と Hodge 数」、3 番目の等号は cor-chiy-values の 1 による。2:thm-chiy-hrr に $y=0$ を代入し、thm-chiy-special の 1 を使う。3:$n$ が奇数なら、prop-chiy-serre と cor-chiy-values の 3 による。$n$ が偶数で $X$ が Kähler なら、Hodge数 の定理「Hodge 数の対称性」の 2 により $h^{p,q}=h^{q,p}$ なので、$\sum_{p,q}(-1)^qh^{p,q}=\sum_{p,q}(-1)^ph^{p,q}$ である。右辺は Hodge指数定理 の定理「Hodge 指数定理」により $\sigma(X)$ に等しい。$\sigma(X)=T_1[X]$ は cor-chiy-values の 3 である。$\square$

1 と 3 は Riemann–Roch の定理を使わずに、$y=\pm1$ での一致を示している。thm-chiy-hrr の中身は、$y=0$ の等式(2)と途中の係数 $\chi^p$ の等式にある。

例

複素射影空間と曲線と曲面
  1. 複素射影空間.thm-chiy-ty により $T_y[\mathbb{CP}^n]=\sum_{p=0}^n(-y)^p$ なので、thm-chiy-hrr から $\chi^p(\mathbb{CP}^n)=(-1)^p$ である。$y=-1$ では $\chi_{\mathrm{top}}(\mathbb{CP}^n)=n+1$、$n=2k$ で $y=1$ とすると $\sigma(\mathbb{CP}^{2k})=1$ であり、cor-chiy-meaning と合う。
  2. 曲線.$C$ を種数 $g$ の連結なコンパクト Riemann 面とすると($n=1$)、$\chi_y(C)=T_y[C]=(1-g)(1-y)$ である。この一致は Riemann–Roch の定理を使わずに確かめられる。
  3. 曲面.射影的な曲面 $S$($n=2$)では $\chi^0(S)=\chi^2(S)=\frac{c_1^2+c_2}{12}[S]$(Noetherの公式)、$\chi^1(S)=\frac{c_1^2-5c_2}{6}[S]$ である。$\mathbb{CP}^2$ では $\chi^0=1$、$\chi^1=-1$ である。
    2・3 の計算を開く

    2:$T_1(y;c)=\frac{1-y}2c_1$ と $\langle c_1(C),[C]\rangle=\chi_{\mathrm{top}}(C)=2-2g$ から $T_y[C]=(1-y)(1-g)$ である。一方、$h^{0,0}=h^{1,1}=1$、$h^{1,0}=h^{0,1}=g$(Serre双対性 の系「コンパクト Riemann 面」と Hodge数 の系「コンパクト Riemann 面の Hodge 数」)から $\chi^0=1-g$、$\chi^1=g-1$ で、$\chi_y(C)=(1-g)(1-y)$ である。3:$T_2(y;c)=\frac1{12}\bigl((1+y)^2c_1^2+(1-10y+y^2)c_2\bigr)$ の $y^0$・$y^1$ の係数を thm-chiy-hrr に入れる。$\mathbb{CP}^2$ では $c_1^2=9$、$c_2=3$ である。また $\chi_1(S)=2\chi^0+\chi^1=\frac{c_1^2-2c_2}3[S]=\frac13p_1[S]$ で、4 次元の符号数定理の形になる。

特殊化のまとめ

$y$特性冪級数 $Q_y(x)$$n$ 次の多項式閉概複素多様体 $M$ での $T_y[M]$コンパクト複素多様体 $X$ の $\chi_y(X)$
$0$$x/(1-e^{-x})$Todd 多項式 $T_n$Todd 種数 $\operatorname{Td}[M]$$\chi(X,\mathcal O_X)$(射影的なら $\operatorname{Td}[X]$)
$-1$$1+x$$c_n$$\chi_{\mathrm{top}}(M)$$\chi_{\mathrm{top}}(X)$
$1$$x/\tanh x$$n$ 奇数で $0$、$n=2k$ で $L_k(p)$$n$ 奇数で $0$、$n$ 偶数で $\sigma(M)$$n$ 奇数で $0$、$n$ 偶数の Kähler で $\sigma(X)$

各行の根拠は thm-chiy-special、cor-chiy-values、cor-chiy-meaning である。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
$\mathbb{CP}^n$ での値をすべての $n$ で指定すること$f=Q+x^{N+1}$($N\ge1$)に属する乗法的列$K[\mathbb{CP}^n]=1$($1\le n\le N$)から Todd 多項式と結論すること
係数環が $\mathbb Q$ を含むこと$\Lambda=\mathbb Z$、$v_1=1$lem-chiy-recursion の $f$ が存在すること
根の個数を次元 $n$ に合わせること1 点($n=0$)で根を 1 個とる$\bigl[\prod_iH(\gamma_i)\bigr]_n=T_n(y;c)$
$X$ がコンパクトであること$X=\mathbb C$$h^{p,q}(X)$ が有限で $\chi_y(X)$ が定まること
反例の確かめ

表の各行は次のとおり確かめられる。

確かめを開く

1. $f\equiv Q\pmod{x^{N+1}}$ なので、$n\le N$ では $f^{n+1}$ と $Q^{n+1}$ の $x^n$ の係数は等しく $1$ である。$n=N+1$ では $f^{N+2}=Q^{N+2}+(N+2)Q^{N+1}x^{N+1}+\cdots$ なので、$[x^{N+1}]f^{N+2}=1+(N+2)\neq1$ であり、$f$ に属する乗法的列は Todd 多項式ではない(thm-chiy-determined の一意性)。 2. $f=1+b_1x+\cdots\in\mathbb Z[\![x]\!]$ なら $[x^1]f^2=2b_1$ は偶数なので、$1$ にならない。 3. $n=0$ では $T_0(y;c)=1$ だが、根を 1 個とると $0$ 次の成分は $H(0)=1+y$ である。一般に根を $N>n$ 個とると、thm-chiy-hrr の証明の比較で余分な因子 $a^{N-n}$ が残る。 4. $H^0(\mathbb C,\mathcal O)$ は多項式関数をすべて含むので無限次元であり、$h^{0,0}$ が定まらない。

関連項目

参考文献

[1]
Friedrich Hirzebruch, Topological Methods in Algebraic Geometry, Springer, 1995, §1.7(pp. 13–14、Todd 多項式、Lemma 1.7.1)、§1.8(pp. 14–16、T_y 多項式、Lemma 1.8.1、(13)・(15)・(16))、Theorem 15.4.2・15.4.3(p. 122)、§15.5(pp. 122–123、χ_y の定義と (13))、Theorem 21.1.1(p. 155)、§21.3(p. 157)、§21 の文献注(p. 158)

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