Menger普遍曲線(Menger universal curve)とは、立方体を 27 等分して中心と 6 つの面の中央の小立方体を除く操作を、残った 20 個の小立方体にくり返して得られる $\mathbb{R}^3$ のコンパクト部分集合 $M$ である。体積は $0$ だが連結かつ局所連結で、被覆次元はちょうど $1$ であり、単連結でない。被覆次元が $1$ 以下の可分な距離化可能空間はどれも $M$ の部分空間と同相であり、この普遍性が名前の由来である。各面は Sierpiński のカーペットで、Cantor 集合の 3 次元での類似物にあたる。
立方体を 27 個の小立方体に 3 等分し、中心の 1 個と各面の中央の 6 個を取り除く。残った 20 個の小立方体のそれぞれに同じ操作をくり返し、最後に残る集合が Menger 普遍曲線である。区間から中央の 3 分の 1 をくり返し取り除く Cantor集合 の、3 次元での類似物にあたる。
この集合は、穴だらけで体積は $0$ だが、連結で局所連結であり、被覆次元はちょうど $1$ である。しかも被覆次元が $1$ 以下の可分距離空間は、どれもこの集合の中に同相な写しをもつ。この意味で、1 次元の空間(曲線)をすべて含む「普遍的な曲線」である。この記事では、Menger 普遍曲線を 3 進表示の言葉で定義し、自己相似性、連結性と局所連結性、被覆次元が $1$ であること、単連結でないことを証明する。普遍性は引用にとどめる。
以下 $I:=[0,1]$ とする。$n\ge1$ について、$I$ の開集合
$$
D_n:=\bigcup_{i=0}^{3^{n-1}-1}\Bigl(\frac{3i+1}{3^n},\,\frac{3i+2}{3^n}\Bigr)
$$
を考える。$D_n$ は、$I$ を長さ $3^{1-n}$ の区間に分けたとき、各区間の中央の 3 分の 1(端点を除く)を集めたものである。$t\in D_n$ であることは、$t$ の 3 進表示の第 $n$ 桁が $1$ で、しかも $t$ がその長さ $3^{-n}$ の区間の端点でないことと同じである。$D_n\subset(0,1)$ なので、$0$ と $1$ はどの $D_n$ にも属さない。
$$
M:=\bigl\{x=(x_1,x_2,x_3)\in I^3\bigm|\text{すべての }n\ge1\text{ について、}x_1,x_2,x_3\text{ のうち }D_n\text{ に属するものは高々 1 個}\bigr\}
$$
を Menger 普遍曲線(Menger universal curve)という。Menger のスポンジ(Menger sponge)ともいう。
条件「$D_n$ に属する座標が 2 個以上」は開条件なので、その否定をすべての $n$ で課した $M$ は $I^3$ の閉集合であり、コンパクトである。立方体を取り除く構成との一致は prop-muc-cubes で確かめる。
$\{0,1,2\}^3$ の元で、成分に $1$ が高々 1 個しかないものの全体を $A$ とする。$A$ は成分に $1$ を含まない 8 個(隅)と、ちょうど 1 個含む 12 個(辺の中央)からなり、$|A|=20$ である。$a\in A$ について相似写像
$$
\varphi_a\colon I^3\to I^3,\qquad \varphi_a(y):=\tfrac13(y+a)
$$
を定め、語 $w=(a^{(1)},\dots,a^{(n)})\in A^n$ について $\varphi_w:=\varphi_{a^{(1)}}\circ\dots\circ\varphi_{a^{(n)}}$ とおく($n=0$ では恒等写像)。$\varphi_w(I^3)$ は一辺 $3^{-n}$ の立方体である。
1 変数の補題から始める。
$t\in I$、$c\in\{0,1,2\}$、$s:=(t+c)/3$ とする。
1:$D_1=(1/3,2/3)$ であり、$s\in[c/3,(c+1)/3]$ である。$c\ne1$ なら $s\notin D_1$、$c=1$ なら $s\in D_1\Leftrightarrow t\in(0,1)$ である。
2:$D_m$ の区間を $(D_m+c')/3$ で写すと、番号 $i$ の区間は番号 $i+c'3^{m-1}$ の区間 $\bigl(\frac{3(i+c'3^{m-1})+1}{3^{m+1}},\frac{3(i+c'3^{m-1})+2}{3^{m+1}}\bigr)$ に移る。$c'=0,1,2$ にわたらせると $D_{m+1}$ のすべての区間がちょうど 1 回ずつ現れるので、$D_{m+1}=\bigcup_{c'=0}^2(D_m+c')/3$ である。$(D_m+c')/3$ は開区間 $(c'/3,(c'+1)/3)$ に含まれ、$c'\ne c$ ならこれは閉区間 $[c/3,(c+1)/3]$ と交わらない。よって $s\in D_{m+1}\Leftrightarrow s\in(D_m+c)/3\Leftrightarrow t\in D_m$ である。$\square$
$M=\bigcup_{a\in A}\varphi_a(M)$ である。したがって、各 $n\ge0$ について $M=\bigcup_{w\in A^n}\varphi_w(M)$ である。
$\supset$:$y\in M$、$a\in A$、$x:=\varphi_a(y)$ とする。lem-muc-digit の 1 により、$x_j\in D_1$ となるのは $a_j=1$ の $j$ に限られ、$a\in A$ なのでそれは高々 1 個である。同じく 2 により、$m\ge1$ について $x_j\in D_{m+1}\Leftrightarrow y_j\in D_m$ であり、$y\in M$ なので $D_{m+1}$ に属する $x$ の座標は高々 1 個である。よって $x\in M$ である。
$\subset$:$x\in M$ とする。各 $j$ について、$x_j\in D_1$ なら $a_j:=1$、$x_j\le1/3$ なら $a_j:=0$、$x_j\ge2/3$ なら $a_j:=2$ とおく。$x\in M$ なので $a_j=1$ となる $j$ は高々 1 個であり、$a\in A$ である。$x_j\in[a_j/3,(a_j+1)/3]$ なので $y:=3x-a\in I^3$ で $x=\varphi_a(y)$ である。lem-muc-digit の 2 により、$y_j\in D_m\Leftrightarrow x_j\in D_{m+1}$ なので $y\in M$ である。
後半は前半を $\varphi_w(M)=\bigcup_{a\in A}\varphi_{wa}(M)$ の形で $n$ 回使えばよい。$\square$
$F_n:=\bigcup_{w\in A^n}\varphi_w(I^3)$ とおくと、$F_0\supset F_1\supset\cdots$ であり、$M=\bigcap_{n\ge0}F_n$ である。さらに $F_n$ の体積は $(20/27)^n$ で、$M$ の Lebesgue測度 は $0$ である。とくに $M$ は $\mathbb{R}^3$ の内点をもたない。
$\varphi_a(I^3)\subset I^3$ から $F_{n+1}\subset F_n$ が従う。prop-muc-self-similar により $M=\bigcup_{w\in A^n}\varphi_w(M)\subset F_n$ である。
逆に $x\in\bigcap_nF_n$ とし、$m\ge1$ を固定する。$x\in\varphi_w(I^3)$ となる $w=(a^{(1)},\dots,a^{(m)})\in A^m$ をとる。$\varphi_w(I^3)$ の第 $j$ 座標の範囲は、長さ $3^{1-m}$ の区間 $J$ を 3 等分した閉区間のうち、左から $a^{(m)}_j$ 番目($0,1,2$ で数える)のものである。$D_m\cap J$ は $J$ の中央の開区間なので、$a^{(m)}_j\ne1$ ならこの閉区間は $D_m$ と交わらない。よって $x_j\in D_m$ となる $j$ では $a^{(m)}_j=1$ であり、$a^{(m)}\in A$ なのでそのような $j$ は高々 1 個である。$m$ は任意なので $x\in M$ である。
$F_n$ は内部が交わらない一辺 $3^{-n}$ の立方体 $20^n$ 個の和なので、体積は $20^n\cdot27^{-n}$ であり、$M\subset F_n$ の測度は $0$ である。正の半径の球は正の測度をもつので、$M$ は内点をもたない。$\square$
$\varphi_a(I^3)$($a\in A$)は、$I^3$ を 27 等分した小立方体のうち中心と 6 つの面の中央を除いた 20 個である。こうして $M$ は冒頭の「取り除く」構成と一致する。$a\in A$ であることは、小立方体 $\varphi_a(I^3)$ が $I^3$ のどれかの辺と交わることと同値である(座標のうち 2 つが $0$ か $2$ なら、その 2 座標が $0$ または $1$ である辺と交わる)。したがって $M$ は、各段で「前の段の立方体の辺と交わる小立方体だけを残す」構成で得られる Eng78 の空間 $M^3_1$(pp. 121–122)と同じものである。
$M$ と底面 $I^2\times\{0\}$ の交わりは
$$
M\cap(I^2\times\{0\})=\Sigma\times\{0\},\qquad \Sigma:=\bigl\{(x_1,x_2)\in I^2\bigm|\text{すべての }n\text{ で }x_1\in D_n\text{ と }x_2\in D_n\text{ が同時には成り立たない}\bigr\}
$$
である($0$ はどの $D_n$ にも属さない)。$\Sigma$ は正方形を 9 等分して中央の 1 個を除くことをくり返して得られる集合で、Sierpiński のカーペットと呼ばれる(Eng78 の $M^2_1$、p. 122)。$M$ の 6 つの面はどれもこの形である。
$I^3$ の 12 本の辺の和を $\Gamma:=\{x\in I^3\mid x_1,x_2,x_3\text{ のうち 2 つ以上が }\{0,1\}\text{ に属する}\}$ と書く。$\Gamma$ の点は $D_n$ に属する座標を高々 1 個しかもたないので $\Gamma\subset M$ であり、prop-muc-self-similar により $\varphi_w(\Gamma)\subset\varphi_w(M)\subset M$ である。
$M$ は連結かつ局所連結なコンパクト空間である。
段 1(辺の網の連結性):$\Gamma_n:=\bigcup_{w\in A^n}\varphi_w(\Gamma)$ とおく。まず $\Gamma\subset\Gamma_1$ である。$I^3$ の辺は 3 本の線分に分かれ、各線分は、動く座標が $0,1,2$ のどれかで、残りの 2 座標が $0$ か $2$ の $a$ についての立方体 $\varphi_a(I^3)$ の辺であり、この $a$ は $A$ に属する。$\varphi_w$ で写して $\Gamma_n\subset\Gamma_{n+1}$ を得る。
次に、帰納法で $\Gamma_n$ が弧状連結であることを示す。$\Gamma_0=\Gamma$ は立方体の辺の和なので弧状連結である。$\Gamma_n$ が弧状連結とすると、$\Gamma_{n+1}=\bigcup_{a\in A}\varphi_a(\Gamma_n)$ の各項は弧状連結で、$\varphi_a(\Gamma_n)\supset\varphi_a(\Gamma)$ である。$a,b\in A$ が 1 つの座標だけで $1$ 違うとき、立方体 $\varphi_a(I^3)$ と $\varphi_b(I^3)$ は面を共有し、その面の頂点は両方の辺の上にあるので $\varphi_a(\Gamma)\cap\varphi_b(\Gamma)\ne\emptyset$ である。このように隣り合う $a,b$ を結んだグラフは連結である(各隅 $a$ は、$a$ と 1 つの座標だけ違う辺の中央の元を介して、その座標を $0$ と $2$ で入れ替えた隅とつながり、隅どうしは立方体の頂点のグラフとして連結である)。よって $\Gamma_{n+1}$ は弧状連結である。
段 2(連結性):$G:=\bigcup_n\Gamma_n$ は弧状連結な集合の増加列の和なので弧状連結であり、$G\subset M$ である。$x\in M$ と $n$ について、prop-muc-self-similar により $x\in\varphi_w(M)$ となる $w\in A^n$ があり、$\varphi_w(M)$ は $\varphi_w(\Gamma)\subset G$ の点を含み、直径は $\sqrt3\cdot3^{-n}$ 以下である。よって $G$ は $M$ で稠密である。$M$ は閉なので $M=\overline G$ であり、連結空間 の命題「連結な集合の閉包も連結」により $M$ は連結である。
段 3(局所連結性):$x\in M$ と $n\ge0$ について
$$
N_n(x):=\bigcup\bigl\{\varphi_w(M)\bigm| w\in A^n,\ x\in\varphi_w(M)\bigr\}
$$
とおく。各 $\varphi_w(M)$ は $M$ と同相なので連結であり、すべて $x$ を含むので $N_n(x)$ は連結である。$x$ を含まない $\varphi_w(M)$ の有限個の和 $E$ は閉で $x\notin E$ であり、$M=\bigcup_w\varphi_w(M)$ から $M\setminus E\subset N_n(x)$ となるので、$N_n(x)$ は $x$ の近傍である。直径は $2\sqrt3\cdot3^{-n}$ 以下なので、$x$ の任意の近傍は $N_n(x)$ の形の連結な近傍を含む。よってすべての点で連結 im kleinen であり、局所連結空間 の定理「開集合の連結成分による特徴づけ」の (2)$\Rightarrow$(1) により $M$ は局所連結である。$\square$
$M$ はコンパクト・連結・局所連結な距離空間なので、Hahn–Mazurkiewicz の定理(局所連結空間 の注意「Peano空間」)により $[0,1]$ の連続像であり、とくに弧状連結である。
$\dim M=1$ である。
証明の方針:各座標を 3 進の格子へ少しだけ寄せる写像で $M$ を細かい格子の辺の網へ写し、網の位数 2 の細かい開被覆を引き戻す。
下からの評価:辺 $[0,1]\times\{0\}\times\{0\}\subset\Gamma\subset M$ は $M$ の閉集合で、$[0,1]$ と同相である。被覆次元 の命題「閉部分空間の被覆次元」と系「Euclid 空間・球面・Hilbert 立方体」の 1($\dim\Delta^1=1$)により $\dim M\ge1$ である。
上からの評価:$n\ge0$ を固定し、$h:=3^{-n}$ とおく。連続関数 $\rho\colon I\to I$ を、$[0,1/3]$ で $0$、$[1/3,2/3]$ で $3u-1$、$[2/3,1]$ で $1$ と定め、$\rho_n\colon I\to I$ を各区間 $[ih,(i+1)h]$($0\le i<3^n$)の上で $\rho_n(ih+hu):=ih+h\rho(u)$($u\in I$)と定める。$\rho(0)=0$、$\rho(1)=1$ なので $\rho_n$ は連続で、$|\rho(u)-u|\le1/3$ から $|\rho_n(t)-t|\le h/3$ である。$\rho_n(t)\notin h\mathbb{Z}$ となるのは $u\in(1/3,2/3)$ のとき、すなわち $t\in D_{n+1}$ のときに限る。
$R_n(x):=(\rho_n(x_1),\rho_n(x_2),\rho_n(x_3))$ とおく。$x\in M$ なら $D_{n+1}$ に属する座標は高々 1 個なので、$R_n(x)$ の座標の 2 つ以上が $h\mathbb{Z}$ に属する。すなわち $R_n(M)$ は、格子の辺の網
$$
\Lambda_n:=\{y\in I^3\mid y\text{ の座標の 2 つ以上が }h\mathbb{Z}\text{ に属する}\}
$$
に含まれる。$\Lambda_n$ は、頂点 $I^3\cap(h\mathbb{Z})^3$ と、隣り合う頂点を結ぶ長さ $h$ の辺からなる。$\|\cdot\|_\infty$ を各座標の差の最大値とし、頂点 $v$ と辺 $e$(中点 $m_e$)について
$$
S_v:=\{y\in\Lambda_n\mid\|y-v\|_\infty<0.4h\},\qquad T_e:=\{y\in\Lambda_n\mid\|y-m_e\|_\infty<0.2h\}
$$
とおく。これらは $\Lambda_n$ の開集合の有限族で、$\Lambda_n$ を覆い、位数 2 以下であり、どの元でも 2 点の距離は $0.8h$ 未満である(下の折りたたみで確かめる)。
覆うこと:$y\in\Lambda_n$ は、ある辺 $e=[v,v']$ の上にある($h\mathbb{Z}$ に属さない座標があればそれを動く座標とし、なければ $y$ は頂点)。$e$ の上では 1 つの座標だけが動くので、$t:=\|y-v\|_\infty$ は $v$ からの距離である。$t<0.4h$ なら $y\in S_v$、$t>0.6h$ なら $y\in S_{v'}$、$0.3h< t<0.7h$ なら $y\in T_e$ である。
$T_e\subset e$:$m_e$ の座標は 2 つが $h\mathbb{Z}$ に属し、残り 1 つは $h\mathbb{Z}$ から $h/2$ 離れている。$y\in T_e$ の座標は $m_e$ の座標から $0.2h$ 未満しか離れないので、$h\mathbb{Z}$ に属しうるのは前の 2 つの位置の座標だけで、それらは $m_e$ のものと等しい。よって $y$ は $e$ を含む直線の上にあり、$\|y-m_e\|_\infty<0.2h$ から $e$ の端点を除いた部分に入る。
位数:異なる頂点 $v,v'$ は $\|v-v'\|_\infty\ge h$ なので $S_v\cap S_{v'}=\emptyset$ である。異なる辺は頂点でしか交わらず、$T_e$ は $e$ の端点を含まないので $T_e\cap T_{e'}=\emptyset$ である。よって各点は高々 1 つの $S_v$ と高々 1 つの $T_e$ に属する。
直径:$y\in S_v$ の $h\mathbb{Z}$ に属する 2 つの座標は、$v$ の同じ位置の座標から $0.4h$ 未満しか離れないのでそれと等しい。よって $y$ は $v$ を端点とする辺の上で $v$ から距離 $0.4h$ 未満にあるので、$S_v$ のどの 2 点の距離も $0.8h$ 未満である。$T_e$ は長さ $0.4h$ の開いた線分で、どの 2 点の距離も $0.4h$ 未満である。
底面の正方形の周 $Q:=\{(x_1,x_2,0)\mid(x_1,x_2)\in\partial I^2\}\subset\Gamma\subset M$ は円周と同相であり、包含写像 $\iota\colon Q\to M$ が誘導する $\iota_*\colon\pi_1(Q)\to\pi_1(M)$ は単射である。とくに $M$ は単連結空間でない。
prf-muc-dim の $R_0$($n=0$、各座標に $\rho$ を当てる写像)をとる。$x\in M$ なら $R_0(x)\in\Lambda_0=\Gamma$ である。$P(y_1,y_2,y_3):=(y_1,y_2,0)$ は $\Gamma$ を $Q$ に写す。実際、$y\in\Gamma$ の $\{0,1\}$ に属する 2 座標のうち少なくとも 1 つは $y_1$ か $y_2$ なので、$P(y)$ は $\partial I^2\times\{0\}$ に入る。よって $r:=P\circ R_0|_M\colon M\to Q$ は連続である。
$r\circ\iota\colon Q\to Q$ は $(x_1,x_2,0)\mapsto(\rho(x_1),\rho(x_2),0)$ である。$H_s(x_1,x_2,0):=\bigl((1-s)x_1+s\rho(x_1),(1-s)x_2+s\rho(x_2),0\bigr)$($s\in I$)は、$\rho(0)=0$、$\rho(1)=1$ なので $\{0,1\}$ に属する座標を動かさず、$Q$ の中のホモトピーで、頂点 $q_0:=(0,0,0)$ を止める。よって $r\circ\iota$ は基点を止めて恒等写像とホモトピックであり、基本群 の命題「ホモトピー不変性」の 2 により $r_*\circ\iota_*=\mathrm{id}$ である。したがって $\iota_*$ は単射である。$Q$ は円周と同相なので $\pi_1(Q,q_0)\cong\mathbb{Z}$(基本群 の定理「円周の基本群」)であり、$\pi_1(M,q_0)$ は自明でない。$\square$
次の定理が名前の由来である。証明は長いのでこの記事では述べない。
Eng78 は、より一般に $0\le n\le m$ について立方体 $I^m$ から同じ仕方で $M^m_n$ を作り(各段で、前の段の立方体の $n$ 次元以下の面と交わる小立方体だけを残す)、$M^{2n+1}_n$ が被覆次元 $n$ 以下の可分距離化可能空間をすべて含むことを示している。$M^1_0$ は Cantor 集合、$M^2_1$ は Sierpiński のカーペット、$M^3_1$ が $M$ である(pp. 121–122・126)。歴史的には、Menger が 1926 年に $M^3_1$ が被覆次元 $1$ 以下のコンパクト距離空間をすべて含むことを示し、Anderson が 1958 年に $M^3_1$ の位相的な特徴づけを与えた(Eng78 §1.11 の歴史的注意、p. 129)。
$M$ は平面 $\mathbb{R}^2$ に埋め込めない。
完全 2 部グラフ $K_{3,3}$ を $\mathbb{R}^3$ の中の線分で実現した有限グラフ $|K_{3,3}|$ は、被覆次元 $1$ 以下のコンパクト距離空間である(被覆次元 の命題「多面体の被覆次元の上からの評価」)。thm-muc-universal により $|K_{3,3}|$ は $M$ に埋め込める。$M$ が平面に埋め込めるなら $|K_{3,3}|$ も平面に埋め込めるが、これは $K_{3,3}$ が平面グラフでないこと(平面グラフ の命題「$K_{3,3}$ は平面グラフでない」。辺を一般の弧で描いてよいとしても平面グラフの範囲が変わらないことは Kuratowskiの定理 の定義「平面への描画」の後の注意)に反する。$\square$
| 空間 | 被覆次元 | 連結 | 局所連結 | 平面に埋め込める |
|---|---|---|---|---|
| Cantor集合($M^1_0$) | $0$ | いいえ | いいえ | はい |
| Sierpiński のカーペット $\Sigma$($M^2_1$) | $1$ | はい | はい | はい |
| Menger 普遍曲線 $M$($M^3_1$) | $1$ | はい | はい | いいえ |
$\Sigma$ の連結性・局所連結性・$\dim\Sigma=1$ は、この記事の証明を 2 次元で(正方形の辺の網と 8 個の写像で)くり返せば得られる。
thm-muc-universal の仮定を 1 つずつ外すと、次のようになる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 被覆次元が $1$ 以下 | 正方形 $I^2$($\dim I^2=2$) | $M$ に埋め込める(閉部分空間の次元は $\dim M=1$ を超えない) |
| 可分 | 非可算な離散空間(被覆次元 $0$) | $M$ に埋め込める($M$ の部分空間は可分) |
1 行目は、$I^2$ が $M$ の部分空間 $Y$ と同相なら、$Y$ はコンパクトなので $M$ の閉集合で、被覆次元 の命題「閉部分空間の被覆次元」から $2=\dim I^2\le\dim M=1$ となって矛盾する、という理由による。2 行目は、可分距離空間の部分空間が可分であること(可分距離空間は第 2 可算で、第 2 可算性は部分空間に遺伝する)による。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する