角付き多様体(manifold with corners)とは、各点の近くが、すべての座標が $0$ 以上の集合 $\mathbb{R}^n_{\ge0}=\{x\mid x^1,\dots,x^n\ge0\}$ の開集合と同相で、座標変換が $C^\infty$ 級であるものである。正方形・立方体・単体や、境界付き多様体どうしの積が例になる。点の像の $0$ である座標の個数(深さ)は座標の選び方によらず、深さ $1$ 以上の点が境界、$2$ 以上の点が角の点をなす。位相的には境界付き多様体と区別がつかないが、深さは滑らかな構造の不変量であり、角の点をもたない角付き多様体が境界付き多様体である。
正方形 $[0,1]^2$、立方体 $[0,1]^3$、三角形や四面体は、縁の近くで座標を使って微分や積分をしたい図形の代表だが、$\mathbb{R}^n$ の中の滑らかな境界付き多様体(周りの局所座標で半空間と表せる閉集合)ではない。頂点の近くが半平面 $\{x^2\ge0\}$ ではなく、四分円 $\{x^1\ge0,\ x^2\ge0\}$ の形をしているからである(境界付き多様体 の例「正方形の角」)。局所的なモデルを、すべての座標が $0$ 以上の集合
$$
\mathbb{R}^n_{\ge0}:=\{x\in\mathbb{R}^n\mid x^1\ge0,\ \dots,\ x^n\ge0\}
$$
の開集合に広げたものが角付き多様体(manifold with corners)である。2 つの境界付き多様体の積 $[0,1]\times[0,1]$ も、積の座標で自然に角付き多様体になる。
位相だけを見ると、$\mathbb{R}^n_{\ge0}$ は半空間 $\mathbb{H}^n$ と同相なので、角付き多様体は位相的な境界付き多様体と区別がつかない。違いは滑らかな構造にあり、各点が「何枚の面の交わりにあるか」を表す深さが、滑らかな座標変換で保たれる。この記事ではこの深さの不変性を中心に、角付き多様体の定義、境界付き多様体との関係、積、層への分解を扱う。
以下、$\mathbb{R}^n_{\ge0}$ に $\mathbb{R}^n$ からの相対位相を入れ、「$\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の開集合」は $\mathbb{R}^n$ の開集合 $O$ によって $O\cap\mathbb{R}^n_{\ge0}$ と書ける集合を指す。$\mathbb{R}^n$ の部分集合の上の写像が $C^\infty$ 級であるとは、各点で $\mathbb{R}^n$ の開集合の上の $C^\infty$ 級写像に延長できることをいう(境界付き多様体 の定義「滑らかな境界付き多様体」と同じ意味)。$\mathbb{R}^1_{\ge0}=[0,\infty)=\mathbb{H}^1$ である。
$a\in\mathbb{R}^n_{\ge0}$ について、$a^i=0$ となる添字 $i$ の集合を $Z(a)$ とし、その個数を $a$ の深さといって $\operatorname{depth}(a)$ と書く。
たとえば $\mathbb{R}^3_{\ge0}$ では、内側の点の深さは $0$、座標面 $\{x^i=0\}$ の上の点(座標軸を除く)の深さは $1$、正の座標軸の点の深さは $2$、原点の深さは $3$ である。
Hausdorff かつ第 2 可算な位相空間 $M$ について、$M$ の開集合 $U$ から $\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の開集合 $\varphi(U)$ への同相写像 $\varphi$ の組 $(U,\varphi)$ を角付きの座標近傍という。$M$ を覆う角付きの座標近傍の族で、座標変換 $\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\colon\varphi_\alpha(U_\alpha\cap U_\beta)\to\varphi_\beta(U_\alpha\cap U_\beta)$ がすべて $C^\infty$ 級であるものを $C^\infty$ 級アトラスという。極大な $C^\infty$ 級アトラスを 1 つ定めた $M$ を $n$ 次元の角付き多様体という。
点 $p\in M$ の深さを、$p$ を含む角付きの座標近傍 $(U,\varphi)$ について $\operatorname{depth}(p):=\operatorname{depth}(\varphi(p))$ と定める(座標近傍によらないことは thm-mwc-depth で示す)。深さ $k$ の点の全体を $\partial_kM$ と書く。深さ $0$ の点の全体を内部 $\operatorname{Int}M$、深さ $1$ 以上の点の全体を境界 $\partial M$、深さ $2$ 以上の点を角の点(corner point)という。
内部の点のまわりでは、座標近傍を小さな開球に縮めて平行移動すれば $(0,\infty)^n$ に入れられるので、$\mathbb{R}^n$ の開集合への座標近傍と同じものを使ってよい。角付き多様体の間の写像が滑らかであること、微分同相写像であることは、境界付き多様体の場合と同じく角付きの座標近傍で書いて定める。
$y=\varphi_j(x)$ とすると、$x^0+\dots+x^n=1$ から $x^j=1-\sum_ky^k$ である。$\Delta^n$ の条件は $x^0,\dots,x^n\ge0$ と同値なので、$y\ge0$ かつ $1-\sum_ky^k\ge0$、すなわち $y\in\Delta^n$ と同値である。$x^j>0$ は $\sum_ky^k<1$ と同値である。
境界付き多様体では、内部の点と境界の点の区別が座標によらないことを、座標変換の Jacobi 行列を使って示した(境界付き多様体 の補題「微分同相写像は縁を縁に写す」)。角付き多様体ではそれを深さに広げる。道具は、点から集合の中へ出ていける方向の全体である。
$A\subset\mathbb{R}^n$、$a\in A$ とする。$C^1$ 級の曲線 $\gamma\colon[0,\varepsilon)\to\mathbb{R}^n$($t=0$ では片側微分)で $\gamma([0,\varepsilon))\subset A$、$\gamma(0)=a$ となるものの速度 $\gamma'(0)$ の全体を、$A$ の $a$ における接錐といい $C_a(A)$ と書く。
$A$ を $\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の開集合、$a\in A$ とする。
$$
C_a(A)=\{v\in\mathbb{R}^n\mid v^i\ge0\ (i\in Z(a))\},\qquad C_a(A)\cap\bigl(-C_a(A)\bigr)=\{v\mid v^i=0\ (i\in Z(a))\}
$$
である。とくに $C_a(A)$ は $\mathbb{R}^n$ を張り、$C_a(A)\cap(-C_a(A))$ は $n-\operatorname{depth}(a)$ 次元の部分空間である。
$\gamma$ が $A$ の中の曲線で $i\in Z(a)$ なら、$\gamma^i(t)\ge0=\gamma^i(0)$ なので $\gamma^{i\prime}(0)=\lim_{t\to+0}\gamma^i(t)/t\ge0$ である。逆に $v^i\ge0$($i\in Z(a)$)なら、$\gamma(t):=a+tv$ は小さい $t\ge0$ で $A$ に入る:$i\in Z(a)$ の成分は $tv^i\ge0$、それ以外の成分は $a^i>0$ なので小さい $t$ で正、$A=O\cap\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の $O$ にも小さい $t$ で入る。よって最初の等式が成り立つ。$v$ と $-v$ がともに条件を満たすことは $v^i=0$($i\in Z(a)$)と同値である。$C_a(A)$ は正の象限 $(0,\infty)^n$ の点を含む開集合を含むので $\mathbb{R}^n$ を張る。$\square$
$A,B$ を $\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の開集合とし、$F\colon A\to B$ を全単射で、$F$ と $F^{-1}$ がともに $C^\infty$ 級であるものとする。すべての $a\in A$ について $\operatorname{depth}(F(a))=\operatorname{depth}(a)$ である。したがって、角付き多様体の点の深さは角付きの座標近傍の選び方によらず、角付き多様体の間の微分同相写像は各 $\partial_kM$ を $\partial_kN$ の上へ写す。
$b:=F(a)$ とし、$a$ の近くの $F$ の $C^\infty$ 級の延長 $\widetilde F$、$b$ の近くの $F^{-1}$ の延長 $\widetilde G$ をとる。
段 1(微分は接錐を接錐に写す).$v\in C_a(A)$ を $A$ の中の曲線 $\gamma$ の速度とすると、$F\circ\gamma=\widetilde F\circ\gamma$ は $B$ の中の $b$ から出る曲線で、連鎖律によりその速度は $D\widetilde F(a)v$ である。よって $D\widetilde F(a)\,C_a(A)\subset C_b(B)$、同様に $D\widetilde G(b)\,C_b(B)\subset C_a(A)$ である。
段 2(微分は可逆).$v\in C_a(A)$ について、曲線 $\gamma(t)=a+tv$(lem-mwc-cone の証明)に沿って $\widetilde G\circ\widetilde F\circ\gamma=\gamma$ なので、微分して $D\widetilde G(b)\,D\widetilde F(a)v=v$ である。$C_a(A)$ は $\mathbb{R}^n$ を張るので $D\widetilde G(b)\,D\widetilde F(a)$ は恒等写像であり、同様に逆の順の合成も恒等写像である。よって $L:=D\widetilde F(a)$ は線形同型で、段 1 と合わせて $L(C_a(A))=C_b(B)$ である。($L$ は $C_a(A)$ 上の値で決まり、延長の選び方によらない。)
段 3(深さの比較).線形同型 $L$ は $C_a(A)\cap(-C_a(A))$ を $C_b(B)\cap(-C_b(B))$ の上へ写すので、両者の次元は等しい。lem-mwc-cone によりこれは $n-\operatorname{depth}(a)=n-\operatorname{depth}(b)$ を意味する。
後半:$p$ を含む 2 つの角付きの座標近傍 $(U,\varphi)$、$(V,\psi)$ について、座標変換 $\psi\circ\varphi^{-1}$ は $\varphi(U\cap V)$ から $\psi(U\cap V)$ への全単射で、それ自身と逆写像が $C^\infty$ 級なので、前半により $\operatorname{depth}(\psi(p))=\operatorname{depth}(\varphi(p))$ である。微分同相写像 $h\colon M\to N$ についても、座標で書いた $h$ に前半を使えばよい。$\square$
証明の段 3 は、接錐の中に含まれる最大の部分空間(両方向に動ける方向の全体)の次元が、線形同型で保たれることを使っている。深さ $k$ の点では、$k$ 個の方向には片側にしか動けず、残りの $n-k$ 個の方向には両側に動ける。$n=2$ の四分円の頂点では両側に動ける方向がなく、半平面の縁の点では縁に沿う 1 方向がある。これが 境界付き多様体 の例「正方形の角」の現象の、座標によらない説明である。
$n\ge1$ について、同相写像 $h\colon\mathbb{R}^n_{\ge0}\to\mathbb{H}^n$ で、深さ $1$ 以上の点の全体を $\partial\mathbb{H}^n$ の上へ写すものがある。したがって $n$ 次元の角付き多様体 $M$ は、$h\circ\varphi$ を座標近傍として位相的な $n$ 次元の境界付き多様体であり、その境界は深さ $1$ 以上の点の全体 $\partial M$ に一致する。
$n=1$ では $\mathbb{R}^1_{\ge0}=\mathbb{H}^1$ である。$n=2$ では、$\mathbb{R}^2=\mathbb{C}$ とみて、極座標で $q(re^{i\theta}):=re^{2i\theta}$($0\le\theta\le\pi/2$)、$q(0)=0$ とおく。$q$ は四分円 $\mathbb{R}^2_{\ge0}$ から閉じた上半平面 $\mathbb{H}^2$ への全単射で、逆写像は $re^{i\theta}\mapsto re^{i\theta/2}$($0\le\theta\le\pi$)であり、どちらも $0$ の外では極座標で連続、$0$ では $\lvert q(z)\rvert=\lvert z\rvert$ から連続である。$\theta=0,\pi/2$(座標軸)は $\theta=0,\pi$(実軸)に写る。
$n\ge3$ では $n$ についての帰納法による。$\mathbb{R}^n_{\ge0}=\mathbb{R}^2_{\ge0}\times\mathbb{R}^{n-2}_{\ge0}$ に $q\times\mathrm{id}$ を施すと、$\mathbb{H}^2\times\mathbb{R}^{n-2}_{\ge0}=\mathbb{R}\times\mathbb{R}^{n-1}_{\ge0}$(第 1 成分が $\operatorname{Re}$、残りが $\operatorname{Im}\ge0$ と $x^3,\dots,x^n\ge0$)に同相に写る。元の点が深さ $1$ 以上であることは、$x^1x^2=0$ または $x^j=0$($j\ge3$)、すなわち像の $\mathbb{R}^{n-1}_{\ge0}$ 成分が深さ $1$ 以上であることと同値である。帰納法の仮定の $h_{n-1}\colon\mathbb{R}^{n-1}_{\ge0}\to\mathbb{H}^{n-1}$ を $\mathbb{R}^{n-1}_{\ge0}$ 成分に施し、成分を並べ替えれば、求める $h$ が得られる。
後半:$h\circ\varphi$ は $U$ から $\mathbb{H}^n$ の開集合への同相写像なので、$M$ は位相的な境界付き多様体である。その境界の点は $h(\varphi(p))\in\partial\mathbb{H}^n$ となる点、すなわち $\operatorname{depth}(\varphi(p))\ge1$ となる点であり(境界付き多様体 の定理「内部の点と境界の点は交わらない」により座標によらない)、$\partial M$ に一致する。$\square$
この $h$ は微分同相写像ではない($\mathbb{H}^2$ を prop-mwc-boundary の 1 で角付き多様体とみると、$h$ は原点の深さ $2$ を深さ $1$ に写すので、thm-mwc-depth により $h$ と $h^{-1}$ がともに $C^\infty$ 級であることはありえない)。深さは位相的な不変量ではなく、滑らかな構造の不変量である。
1:$p$ のまわりの座標近傍 $(U,\varphi)$ を、$\varphi(p)$ を中心とする半径 $1$ 以下の開球の逆像に縮め、$T(x):=(x^1-\varphi^1(p)+1,\ \dots,\ x^{n-1}-\varphi^{n-1}(p)+1,\ x^n)$ と合成する(内部の点では $x^n$ も平行移動して正にする)。像の最初の $n-1$ 成分は正なので、$T\circ\varphi$ は $U$ から $\mathbb{R}^n_{\ge0}$ の開集合 $T(\varphi(U))=T(O)\cap\mathbb{R}^n_{\ge0}$ への同相写像である。座標変換は元の座標変換に平行移動を合成したものなので $C^\infty$ 級である。深さは $x^n=0$ なら $1$、そうでなければ $0$ である。
2:深さ $1$ の点 $p$ と角付きの座標近傍 $(U,\varphi)$ をとり、$Z(\varphi(p))=\{i\}$ とする。$U$ を $\varphi^{-1}(\{x^j>0\ (j\ne i)\})$ に縮めると、$\varphi(U)=O'\cap\{x^i\ge0\}$($O'$ は $\mathbb{R}^n$ の開集合)であり、第 $i$ 成分と第 $n$ 成分を入れ替える写像 $P$ を合成した $P\circ\varphi$ は $\mathbb{H}^n$ の開集合への同相写像である。深さ $0$ の点のまわりは $\mathbb{R}^n$ の開集合への座標近傍を使う。座標変換は元の座標変換に成分の置換を合成したものなので $C^\infty$ 級である。$\square$
この命題により、角付き多様体は境界付き多様体を含む概念である。境界付き多様体でない角付き多様体の代表が、境界付き多様体どうしの積である。
$M$ を $m$ 次元、$N$ を $k$ 次元の角付き多様体とする。$M\times N$ は、角付きの座標近傍の積 $\varphi\times\psi$ を座標近傍として $(m+k)$ 次元の角付き多様体であり、
$$
\operatorname{depth}(p,q)=\operatorname{depth}(p)+\operatorname{depth}(q)
$$
である。とくに、境界が空でない 2 つの境界付き多様体の積は、深さ $2$ の点 $\partial M\times\partial N$ をもつ角付き多様体である。
$\mathbb{R}^m_{\ge0}\times\mathbb{R}^k_{\ge0}=\mathbb{R}^{m+k}_{\ge0}$ であり、$\varphi(U)=O\cap\mathbb{R}^m_{\ge0}$、$\psi(U')=O'\cap\mathbb{R}^k_{\ge0}$ なら $\varphi(U)\times\psi(U')=(O\times O')\cap\mathbb{R}^{m+k}_{\ge0}$ は $\mathbb{R}^{m+k}_{\ge0}$ の開集合である。$\varphi\times\psi$ は同相写像で、座標変換は $C^\infty$ 級写像の積なので $C^\infty$ 級である(延長の積が積の延長になる)。Hausdorff 性と第 2 可算性は積に遺伝する。$(\varphi(p),\psi(q))$ の $0$ の成分の個数は、$\varphi(p)$ と $\psi(q)$ の $0$ の成分の個数の和である。後半は prop-mwc-boundary の 1 で境界付き多様体を角付き多様体とみて、境界の点どうしの組の深さが $1+1=2$ になることによる。$\square$
$[0,1]\times[0,1]$ を積の構造で見ると、4 つの頂点が深さ $2$ の点である。thm-mwc-depth により、この構造はどの境界付き多様体の構造(prop-mwc-boundary の 1 で角付き多様体とみたもの)とも一致しない。積 $M\times N$ に境界付き多様体の構造を入れるには、角の近くで座標を取り替えて角をならす操作(角の解消、角の解消)が要る。境界付き多様体を境界の一部に沿って貼り合わせるときにも角が現れ、同じ操作で滑らかにする(Kos93 Ch. VI §8、p. 110 は、ハンドルを直接貼り付ける構成では角の解消が要ると注意している)。
$M$ を $n$ 次元の角付き多様体とし、$0\le k\le n$ とする。$\partial_kM$ は、角付きの座標近傍の制限($0$ である $k$ 個の成分を落としたもの)を局所座標として、$(n-k)$ 次元の境界のない滑らかな多様体である。$M$ は $\partial_0M=\operatorname{Int}M,\ \partial_1M,\ \dots,\ \partial_nM$ の非交和であり、$\partial_0M$ は $M$ の開集合で、$\bigcup_{j\ge k}\partial_jM$ は $M$ の閉集合である。
$p\in\partial_kM$ と角付きの座標近傍 $(U,\varphi)$ をとり、$I:=Z(\varphi(p))$ とする。$U$ を $\varphi^{-1}(\{x^j>0\ (j\notin I)\})$ に縮めると、thm-mwc-depth により $U\cap\partial_kM$ は $\varphi(U)\cap\{x^i=0\ (i\in I)\}$ の逆像であり、$I$ に属さない成分 $(x^j)_{j\notin I}$ を並べた写像は、これを $\mathbb{R}^{n-k}$ の開集合 $\{(x^j)_{j\notin I}\mid x\in\varphi(U),\ x^i=0\ (i\in I)\}$ の上へ同相に写す。2 つの座標近傍の座標変換は、元の座標変換を座標平面に制限して成分を選んだもの(thm-mwc-depth により深さ $k$ の点は深さ $k$ の点に写るので、制限は座標平面の間の写像になる)なので $C^\infty$ 級である。Hausdorff 性と第 2 可算性は部分空間に遺伝する。後半:深さは座標で見ると上半連続($x^j>0$ は開条件)なので、深さ $k$ 以上の点の集合は閉集合、深さ $0$ の点の集合は開集合である。$\square$
ex-mwc-cube-simplex の立方体 $I^3$ では、$\partial_1,\partial_2,\partial_3$ はそれぞれ 6 枚の開いた面、12 本の開いた辺、8 個の頂点で、それぞれ 2 次元・1 次元・0 次元の多様体である。一方、境界 $\partial M=\bigcup_{k\ge1}\partial_kM$ 自身は一般に角付き多様体ではない(Lee13 p. 417 は立方体の境界を例に挙げる)。境界は、角で折れ曲がった面の和になっている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 角で交わる面が座標面のように横断的に交わる | 四角錐 $P=\{\lvert x\rvert\le z,\ \lvert y\rvert\le z\}$ の頂点 | 頂点のまわりに角付きの座標近傍($C^\infty$ 級の逆写像をもつもの)がある |
| 滑らかな構造で比べる | prop-mwc-topological の同相写像 $h\colon\mathbb{R}^2_{\ge0}\to\mathbb{H}^2$ | 同相写像が深さを保つ |
| 角の点がない | 正方形 $[0,1]^2$ | $\mathbb{R}^2$ の中で滑らかな境界付き多様体である |
| 境界付き多様体の積(両方に境界がある) | $[0,1]\times[0,1]$ の積の構造 | 境界付き多様体の構造から得られる角付き多様体である |
$P:=\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3\mid\lvert x\rvert\le z,\ \lvert y\rvert\le z\}$ は 4 枚の平面の面が頂点 $0$ で出会う錐である。$0$ の $P$ における開近傍 $U$ と、$U$ から $\mathbb{R}^3_{\ge0}$ の開集合への全単射 $F$ で $F$ と $F^{-1}$ がともに $C^\infty$ 級(延長の意味)であるものは存在しない。
要点:あったとすると、thm-mwc-depth の証明の段 1・2 と同じ議論で、$L:=D\widetilde F(0)$ は $P$ の接錐を $\mathbb{R}^3_{\ge0}$ のある点の接錐の上へ写す線形同型になる。$P$ の接錐は $P$ 自身で、「端の半直線」を 4 本もつが、$\mathbb{R}^3_{\ge0}$ の接錐は高々 3 本しかもたない。線形同型は端の半直線を端の半直線に写すので矛盾する。
$P$ は閉じた凸錐である($tv$、$v+w$ が $P$ に入る)。$v\in P$ なら $\gamma(t)=tv$ は $U$ の中の曲線なので $P\subset C_0(U)$、逆に $\gamma(t)\in P$ なら $\gamma'(0)=\lim\gamma(t)/t\in P$($P$ は閉じた錐)なので $C_0(U)=P$ である。$C_0(U)$ は $\mathbb{R}^3$ を張る($(0,0,1)$ のまわりの開球を含む)ので、thm-mwc-depth の証明の段 1・2 がそのまま使え、$L(P)=C_b$($b:=F(0)$、$C_b$ は lem-mwc-cone の錐)となる線形同型 $L$ がある。$v,-v\in P$ なら $\lvert x\rvert\le z$ と $\lvert x\rvert\le-z$ から $z=0$、$x=y=0$ なので $P\cap(-P)=\{0\}$ であり、$C_b\cap(-C_b)=\{0\}$、すなわち $\operatorname{depth}(b)=3$、$C_b=\mathbb{R}^3_{\ge0}$ である。
凸錐 $C$ の $0$ でないベクトル $v$ が端の半直線を張るとは、$v=u+w$($u,w\in C$)なら $u,w$ が $v$ の正の倍数か $0$ であることをいう。この性質は線形同型で保たれる。$\mathbb{R}^3_{\ge0}$ では、$v$ に正の成分が 2 つ以上あれば $v$ はその一方の成分だけを残したベクトルと残りの和に分かれるので、端の半直線は 3 本の座標軸だけである。$P$ では $v=(1,1,1)$ が端の半直線を張る:$v=u+w$、$u=(a,b,c)$ とすると、$u\in P$ から $a\le c$、$w=(1-a,1-b,1-c)\in P$ から $1-a\le1-c$、すなわち $a\ge c$ なので $a=c$、同様に $b=c$ で、$u=c\,v$ である。対称性から $(\pm1,\pm1,1)$ の 4 本がすべて端の半直線を張る。$L$ はこれらを $\mathbb{R}^3_{\ge0}$ の相異なる端の半直線に写すので、4 本が 3 本に単射で写ることになり矛盾する。$\square$
2 行目:$h$ は原点(深さ $2$)を $\mathbb{H}^2$ の縁の点(prop-mwc-boundary の 1 で深さ $1$)に写す。prop-mwc-topological の後の注意のとおり、深さを保たない同相写像がある。3 行目は 境界付き多様体 の例「正方形の角」で証明されている(GP74 Ch. 2 §1 の演習 3、p. 62 も同じ事実を演習としている)。ただし ex-mwc-cube-simplex により $[0,1]^2$ は角付き多様体である。4 行目は prop-mwc-product の後で述べた。
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