数直線(number line)とは、直線の上に原点 $O$、長さ $1$ の単位、正の向きを決め、各点に原点からの向きつきの長さを座標として対応させたものである。この対応で直線の上の点と実数はちょうど 1 対 1 に対応し、2 点 $A(a)$、$B(b)$ の距離は $|b-a|$、$A\ne B$ のとき $AM=MB$ となる直線上の点 $M$ の座標は $\frac{a+b}{2}$ で、$a< b$ は $B$ が $A$ から見て正の向きにあることと同値である。原点を $c$、単位の点を $c+u$($u\ne0$)に取り替えると座標は $\frac{x-c}{u}$ に変わり、距離を保つ座標の付け方は原点と向きの選び方に限られる。
前提知識: 実数, 実数とは何か:無理数の証明
中学校から、数は 1 本の直線の上に目盛りを打って表してきた。基準の点に $0$ を置き、右へ $1$ 目盛り進んだ点に $1$ を置くと、ほかの数の置き場所も決まる。このような直線を 数直線 という。数直線の上では、大小は左右の位置に、差は点と点の間の長さになる。まず、数直線で読む計算を見る。
数直線の上に $A(-2)$、$B(1.5)$、$C(3)$ をとる(図 1)。$A(-2)$ は「座標が $-2$ の点 $A$」と読む。
原点 O、単位の点 E(座標 1)と、点 A(−2)、B(1.5)、C(3) を示す数直線。右向きが正の向き
ある日の最低気温が $-4$ 度、最高気温が $7$ 度だった。温度計の目盛りは数直線である。$-4$ の点から $0$ の点までの長さが $4$、$0$ の点から $7$ の点までの長さが $7$ なので、気温の差は $4+7=11$ 度である。座標の差で書くと $7-(-4)=11$ で、同じ答えになる。
この 2 つの例では、「長さは座標の差」「大小は左右の順」を当然のように使った。この記事では、数直線をきちんと定めたうえで、次の問いに答える。
| 数直線の上で見ること | 数の言葉 | この記事のボックス |
|---|---|---|
| 点の位置 | 実数(座標) | def-nlh-line、thm-nlh-bijection |
| 右にある・左にある | 大きい・小さい | thm-nlh-distance |
| 2 点の間の長さ | 座標の差の絶対値 | thm-nlh-distance |
| 線分の真ん中 | 2 つの座標の平均 | cor-nlh-midpoint |
| 線分・半直線 | 区間 | def-nlh-interval |
数直線を作るには、直線の上に 3 つのことを決める。基準の点(原点)、長さ $1$ の目盛り(単位)、正の向きである。
直線 $\ell$ の上に異なる 2 点 $O$、$E$ をとる。$O$ を 原点、$E$ を 単位の点 といい、線分 $OE$ の長さを長さの単位 $1$ とする。$O$ から見て $E$ のある側を 正の側、反対側を 負の側 といい、$O$ から $E$ へ向かう向きを 正の向き という。
実数 $a$ に対し、次の点を $P$ とする。
ふつうは直線を横にかき、右を正の向きにとる(教科書での導入の例は Abr21 の §1.1)。定義の 1・2 を 1 つにまとめると、「$P$ と $O$ の距離 $OP$ は $|a|$ で、$a$ の符号が $P$ のある側を表す」となる。
この定義が意味をもつには、直線について次のことが必要である。これは直線と長さの基本的な性質で、この記事では証明せずに認める。
定義の 1・2 は、向きつきの長さで書くと $\overline{OP}=a$ のことである。$a>0$ なら $P$ は正の側にあり $\overline{OP}=OP=a$、$a< 0$ なら負の側にあり $\overline{OP}=-OP=a$ だからである。つまり 点の座標は、原点からの向きつきの長さ である。
ex-nlh-read の $A(-2)$、$C(3)$ について、$\overline{OA}=-2$、$\overline{OC}=3$ である。性質 2 から
$$
\overline{AC}=\overline{AO}+\overline{OC}=-\overline{OA}+\overline{OC}=2+3=5
$$
で、$A$ から $C$ へは正の向き(右)に長さ $5$ 進む。逆に $\overline{CA}=-5$ で、$C$ から $A$ へは負の向きに $5$ 進む。
数直線の上では、どの実数 $a$ にも座標が $a$ の点がちょうど 1 つあり、直線の上のどの点にも座標がちょうど 1 つある。
方針:実数から点が 1 つ決まることと、点から実数が 1 つ決まることを、別々に確かめる。
段 1(実数から点へ)。$a>0$ なら、rem-nlh-axioms の性質 1 により、正の側に $OP=a$ の点 $P$ はちょうど 1 つある。$a< 0$ なら $-a>0$ なので、負の側に $OP=-a$ の点がちょうど 1 つある。$a=0$ なら点は $O$ だけである。どの場合も、座標が $a$ の点はちょうど 1 つある。
段 2(点から実数へ)。直線の上の点 $P$ をとる。$P=O$ なら座標は $0$ である。$P\ne O$ なら、$P$ は正の側か負の側のどちらか一方にある。正の側なら $a:=OP>0$ とおくと、$P$ は定義の 1 の点なので座標は $a$ である。負の側なら $a:=-OP< 0$ とおくと、定義の 2 の点なので座標は $a$ である。
段 3(座標がただ 1 つであること)。$P$ の座標が $a$ とも $b$ とも言えたとすると、$\overline{OP}=a$ かつ $\overline{OP}=b$ なので $a=b$ である。$\square$
この対応があるので、「座標が $a$ の点」を単に「点 $a$」と呼ぶこともある。
数直線の上の 2 点 $A(a)$、$B(b)$ について、次が成り立つ。
方針:rem-nlh-axioms の性質 2 を、$A$、$O$、$B$ の 3 点に使う。
段 1(1 の証明)。性質 2 を $A$、$O$、$B$ に使うと $\overline{AB}=\overline{AO}+\overline{OB}$ である。$\overline{AO}=-\overline{OA}=-a$、$\overline{OB}=b$(座標は原点からの向きつきの長さ)なので、$\overline{AB}=-a+b=b-a$ である。
段 2(2 の証明)。向きつきの長さの定義から、$\overline{AB}$ は $AB$ か $-AB$ か $0$($A=B$ のとき)のどれかで、どの場合も $|\overline{AB}|=AB$ である。段 1 から $AB=|b-a|$ となる。
段 3(3 の証明)。$A\ne B$ とする。$B$ が $A$ から見て正の向きにあることは、定義により $\overline{AB}=AB>0$ ということである。負の向きにあれば $\overline{AB}=-AB< 0$ である。段 1 から $\overline{AB}=b-a$ なので、正の向きにあることは $b-a>0$、つまり $a< b$ と同値である。$\square$
定理の 2 は、絶対値と三角不等式 で「数直線上の 2 点 $a$、$b$ の距離」を $|a-b|$ と定めることの根拠である($|b-a|=|a-b|$)。定理の 3 から、数直線では 右にあるほど大きい。
数直線の上の異なる 2 点 $A(a)$、$B(b)$ について、直線の上で $AM=MB$ となる点 $M$ はちょうど 1 つあり、その座標は $\dfrac{a+b}{2}$ である。この点を線分 $AB$ の 中点 という。
方針:$M$ の座標を $m$ とおき、thm-nlh-distance で $AM=MB$ を $m$ の式にする。
段 1。thm-nlh-distance の 2 により、$AM=|m-a|$、$MB=|b-m|$ である。2 つの実数の絶対値が等しいのは、2 つが等しいか、符号だけ違うときなので、$AM=MB$ は
$$
m-a=b-m\quad\text{または}\quad m-a=-(b-m)
$$
と同値である。
段 2。後の式を整理すると $m-a=m-b$、つまり $a=b$ となり、$A\ne B$ に反する。したがって後の式は起こらない。
段 3。前の式を整理すると $2m=a+b$、$m=\dfrac{a+b}2$ である。逆に $m=\dfrac{a+b}2$ なら $m-a=\dfrac{b-a}2=b-m$ なので、$AM=MB$ が成り立つ。thm-nlh-bijection により座標が $\dfrac{a+b}2$ の点はちょうど 1 つなので、中点はちょうど 1 つである。$\square$
線分を $m:n$ に分ける点の座標(内分点・外分点)も、同じように絶対値を符号で外して求まる。それは 内分点・外分点の座標 の「数直線上の内分点・外分点」で扱う。
不等式の解は、数直線の上の線分や半直線として表すと見やすい。
実数 $a< b$ に対し、次の実数の集合を 区間 という。
| 記号 | 集合 | 数直線の上の図形 |
|---|---|---|
| $[a,b]$ | $a\le x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 両端を含む線分 |
| $(a,b)$ | $a< x< b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 両端を除いた線分 |
| $[a,b)$ | $a\le x< b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端 $a$ だけ含む線分 |
| $(a,b]$ | $a< x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端 $b$ だけ含む線分 |
| $[a,\infty)$ | $x\ge a$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端を含む右向きの半直線 |
| $(a,\infty)$ | $x>a$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端を除いた右向きの半直線 |
| $(-\infty,b]$ | $x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端を含む左向きの半直線 |
| $(-\infty,b)$ | $x< b$ を満たす実数 $x$ 全体 | 端を除いた左向きの半直線 |
$\infty$ は数ではなく、「右にどこまでも続く」ことを表す記号である。図では、含む端を塗りつぶした丸、含まない端を白抜きの丸でかく(図 2)。
上は −1 以上 3 未満の区間(−1 は塗りつぶした丸、3 は白抜きの丸)、下は 2 より大きい実数全体の半直線(2 は白抜きの丸)を示す数直線
実数 $c$ と正の数 $r$ について、数直線の上で点 $c$ からの距離が $r$ より小さい点の座標全体は、区間 $(c-r,c+r)$ である。
方針:thm-nlh-distance で距離を $|x-c|$ と書き、$|u|< r$ と $-r< u< r$ が同値であることを示す。
段 1。点 $x$ と点 $c$ の距離は thm-nlh-distance により $|x-c|$ である。$u:=x-c$ とおく。
段 2($|u|< r$ なら $-r< u< r$)。$u\ge0$ なら $u=|u|< r$ で、$-r< 0\le u$ である。$u< 0$ なら $-u=|u|< r$ の両辺に $-1$ を掛けて $u>-r$ で、$u< 0< r$ である。どちらでも $-r< u< r$ となる。
段 3($-r< u< r$ なら $|u|< r$)。$u\ge0$ なら $|u|=u< r$。$u< 0$ なら $|u|=-u$ で、$-r< u$ の両辺に $-1$ を掛けて $-u< r$ である。
段 4。$-r< x-c< r$ の各辺に $c$ を足すと $c-r< x< c+r$ である。$\square$
同じ直線に、別の原点と別の単位で目盛りを打つこともできる。温度の目盛り(摂氏と華氏)がその例である。
数直線(座標 $x$)の上で、点 $c$ を新しい原点 $O'$、点 $c+u$($u\ne0$)を新しい単位の点 $E'$ とする新しい数直線を作る。点 $P(x)$ の新しい座標を $x'$ とすると
$$
x'=\frac{x-c}{u},\qquad x=c+ux'
$$
である。
方針:新しい座標は、新しい原点からの向きつきの長さを、新しい単位の長さで割り、新しい正の向きで符号を付けたものである。
段 1(新しい単位と向き)。thm-nlh-distance により、$O'E'=|(c+u)-c|=|u|$ である。新しい正の向きは $O'$ から $E'$ への向きで、これは $u>0$ なら元の正の向き、$u< 0$ なら元の負の向きである。
段 2($u>0$ のとき)。向きが同じなので、新しい単位で測った向きつきの長さは、元の向きつきの長さを $u$ で割ったものである。thm-nlh-distance の 1 により $\overline{O'P}=x-c$ なので、$x'=\dfrac{x-c}{u}$ である。
段 3($u< 0$ のとき)。向きが逆なので、元の向きつきの長さ $x-c$ の符号を変え、新しい単位 $|u|=-u$ で割る。$x'=\dfrac{-(x-c)}{-u}=\dfrac{x-c}{u}$ で、段 2 と同じ式になる。
段 4。$x'=\dfrac{x-c}u$ の両辺に $u$ を掛けて $c$ を足すと $x=c+ux'$ である。$\square$
摂氏 $C$ 度と華氏 $F$ 度の関係は $F=32+1.8C$ である。これは、摂氏の目盛り(座標 $C$)を元の数直線とし、華氏の目盛りを新しい数直線と見ると、prop-nlh-change の $x=c+ux'$ の形を逆に読んだもの、$C=\dfrac{F-32}{1.8}$ にあたる。つまり華氏の目盛りは、摂氏 $c=-\dfrac{32}{1.8}=-17.77\cdots$ 度の点を原点とし、$1$ 目盛りが摂氏 $u=\dfrac1{1.8}=0.55\cdots$ 度の幅の数直線である。
prop-nlh-change で $u=1$ または $u=-1$ とすると、単位の長さは変わらず、距離もそのまま保たれる。逆に、距離を変えない座標の付け方はこれしかないことを示す。
実数全体から実数全体への対応 $f$ が、すべての実数 $x$、$y$ について $|f(x)-f(y)|=|x-y|$ を満たすとする。このとき、ある定数 $c$ と、$s=1$ または $s=-1$ があって、すべての $x$ について $f(x)=c+sx$ である。
方針:まず $f(0)=0$ の場合に、$f(1)$ の符号が全体を決めることを示し、最後に一般の場合をこれに帰着させる。
段 1($f(0)=0$ の場合の準備)。$f(0)=0$ とする。$y=0$ とおくと $|f(x)|=|x|$ なので、各 $x$ について $f(x)=x$ か $f(x)=-x$ である。特に $s:=f(1)$ は $1$ か $-1$ である。
段 2($f(x)=sx$ を示す)。$x$ を 1 つとり、$f(x)=-sx$ だったとする。$y=1$ とおいた式 $|f(x)-f(1)|=|x-1|$ に代入すると、$|-sx-s|=|x-1|$ である。左辺は $|s|\cdot|x+1|=|x+1|$ なので $|x+1|=|x-1|$、両辺を 2 乗して $x^2+2x+1=x^2-2x+1$、$x=0$ である。$x=0$ なら $-sx=sx=0$ である。したがって、どの $x$ でも $f(x)=sx$ である。
段 3(一般の場合)。$c:=f(0)$ とし、$g(x):=f(x)-c$ とおく。$g(x)-g(y)=f(x)-f(y)$ なので $g$ も条件を満たし、$g(0)=0$ である。段 1・2 により $g(x)=sx$($s=\pm1$)で、$f(x)=c+sx$ となる。$\square$
数直線の言葉で言えば、同じ単位で目盛りを打つ方法は「原点をどこに置くか」と「どちらを正の向きにするか」の選び方だけである。長さを測る目盛りとしての座標は、この 2 つの選択を除いてただ 1 つに決まる。
数直線の定義の 3 つの決めごと(原点・単位・向き)や、実数を使うことを外すと何が崩れるかを確かめる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 正の向きを決める | 点と実数が 1 対 1 に対応する(thm-nlh-bijection) | ex-nlh-no-direction |
| 座標として実数全体を使う | どの点にも座標がある(thm-nlh-bijection) | ex-nlh-rational-gap |
| $M$ は直線 $AB$ の上の点 | $AM=MB$ の点がただ 1 つ(cor-nlh-midpoint) | ex-nlh-off-line |
| $A\ne B$ | $AM=MB$ の点がただ 1 つ(cor-nlh-midpoint) | ex-nlh-same-point |
原点と単位だけを決め、点に「原点からの距離」だけを対応させるとする。$O$ の左右で距離が $2$ の点は 2 つあり、どちらにも同じ数 $2$ が対応する。また負の数に対応する点はない。点と数の対応は 1 対 1 にならない。向きを決めて符号を付けることで、左右の 2 点が $2$ と $-2$ に分かれる。
1 辺の長さが $1$ の正方形を、$O$ と $E$ を 1 辺にもつようにかき、対角線の長さ $\sqrt2$ をコンパスで直線の上の正の側に写すと、点 $P$ が 1 つ決まる。三平方の定理により $OP^2=1^2+1^2=2$ である。$\sqrt2$ は有理数でない(実数とは何か:無理数の証明)ので、座標として有理数だけを使うと、$P$ には座標がない。直線の上の点をすべて数で表すには、無理数を含む実数全体が要る。
平面の上で $A$、$B$ から等しい距離にある点は、線分 $AB$ の垂直二等分線の上にいくらでもある。たとえば $A$、$B$ を $2$ だけ離れた 2 点とし、$AB$ の中点 $M$ から $AB$ に垂直に長さ $1$ 進んだ点 $N$ をとると、三平方の定理から $AN=NB=\sqrt2$ である。$N$ は直線 $AB$ の上にない。$AM=MB$ の点がただ 1 つに決まるのは、点を直線 $AB$ の上に限ったからである。
$A=B=4$ なら、$|m-4|=|4-m|$ はすべての $m$ で成り立ち、$AM=MB$ を満たす点は直線の上のすべての点である。公式 $\dfrac{a+b}2=4$ は $A$ 自身を返すが、それは「ただ 1 つの点」ではない。prf-cor-nlh-midpoint の段 2 は $A\ne B$ を使っている。
大学の数学では、数直線を図として使うだけでなく、実数全体の集合 $\mathbb{R}$ そのものを「直線」と見る。これを 実数直線 という。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する