数直線(高校数学)

同義語:number line (high school mathematics)

概要

数直線(number line)とは、直線の上に原点 $O$、長さ $1$ の単位、正の向きを決め、各点に原点からの向きつきの長さを座標として対応させたものである。この対応で直線の上の点と実数はちょうど 1 対 1 に対応し、2 点 $A(a)$、$B(b)$ の距離は $|b-a|$、$A\ne B$ のとき $AM=MB$ となる直線上の点 $M$ の座標は $\frac{a+b}{2}$ で、$a< b$ は $B$ が $A$ から見て正の向きにあることと同値である。原点を $c$、単位の点を $c+u$($u\ne0$)に取り替えると座標は $\frac{x-c}{u}$ に変わり、距離を保つ座標の付け方は原点と向きの選び方に限られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 実数とは何か:無理数の証明

高校での出発点:数を直線の上の点で表す

中学校から、数は 1 本の直線の上に目盛りを打って表してきた。基準の点に $0$ を置き、右へ $1$ 目盛り進んだ点に $1$ を置くと、ほかの数の置き場所も決まる。このような直線を 数直線 という。数直線の上では、大小は左右の位置に、差は点と点の間の長さになる。まず、数直線で読む計算を見る。

点の位置を読む

数直線の上に $A(-2)$、$B(1.5)$、$C(3)$ をとる(図 1)。$A(-2)$ は「座標が $-2$ の点 $A$」と読む。

  1. $A$ は原点 $O$ から左へ $2$、$B$ は右へ $1.5$、$C$ は右へ $3$ の位置にある。
  2. 左から順に $A$、$O$、$B$、$C$ と並び、数の大小 $-2< 0< 1.5< 3$ と同じ順になっている。
  3. $A$ から $C$ までの長さは、左へ $2$ と右へ $3$ を合わせて $2+3=5$ で、座標の差 $3-(-2)=5$ に等しい。$B$ から $C$ までの長さは $3-1.5=1.5$ である。

原点 O、単位の点 E(座標 1)と、点 A(−2)、B(1.5)、C(3) を示す数直線。右向きが正の向き 原点 O、単位の点 E(座標 1)と、点 A(−2)、B(1.5)、C(3) を示す数直線。右向きが正の向き

気温の差を数直線で読む

ある日の最低気温が $-4$ 度、最高気温が $7$ 度だった。温度計の目盛りは数直線である。$-4$ の点から $0$ の点までの長さが $4$、$0$ の点から $7$ の点までの長さが $7$ なので、気温の差は $4+7=11$ 度である。座標の差で書くと $7-(-4)=11$ で、同じ答えになる。

この 2 つの例では、「長さは座標の差」「大小は左右の順」を当然のように使った。この記事では、数直線をきちんと定めたうえで、次の問いに答える。

  1. 直線の上の点と実数は、なぜちょうど 1 対 1 に対応するのか。→ thm-nlh-bijection
  2. 2 点の間の長さが座標の差の絶対値になるのはなぜか。大小と左右はどう結びつくのか。→ thm-nlh-distance
  3. 線分の中点の座標が 2 つの座標の平均になるのはなぜか。→ cor-nlh-midpoint
  4. 原点や目盛りの幅を取り替えると、座標はどう変わるか。→ prop-nlh-change
  5. 長さを保つように座標を付ける方法は、どれだけあるか。→ thm-nlh-isometry
    数直線の上で見ること数の言葉この記事のボックス
    点の位置実数(座標)def-nlh-line、thm-nlh-bijection
    右にある・左にある大きい・小さいthm-nlh-distance
    2 点の間の長さ座標の差の絶対値thm-nlh-distance
    線分の真ん中2 つの座標の平均cor-nlh-midpoint
    線分・半直線区間def-nlh-interval

数直線の定義

数直線を作るには、直線の上に 3 つのことを決める。基準の点(原点)、長さ $1$ の目盛り(単位)、正の向きである。

数直線と座標

直線 $\ell$ の上に異なる 2 点 $O$、$E$ をとる。$O$ を 原点、$E$ を 単位の点 といい、線分 $OE$ の長さを長さの単位 $1$ とする。$O$ から見て $E$ のある側を 正の側、反対側を 負の側 といい、$O$ から $E$ へ向かう向きを 正の向き という。
実数 $a$ に対し、次の点を $P$ とする。

  1. $a>0$ なら、正の側にあって $OP=a$ となる点。
  2. $a< 0$ なら、負の側にあって $OP=-a$ となる点。
  3. $a=0$ なら、$O$ そのもの。
    このとき $a$ を点 $P$ の 座標 といい、$P(a)$ と書く。原点・単位の点・正の向きを決めた直線を 数直線 という。

ふつうは直線を横にかき、右を正の向きにとる(教科書での導入の例は Abr21 の §1.1)。定義の 1・2 を 1 つにまとめると、「$P$ と $O$ の距離 $OP$ は $|a|$ で、$a$ の符号が $P$ のある側を表す」となる。
この定義が意味をもつには、直線について次のことが必要である。これは直線と長さの基本的な性質で、この記事では証明せずに認める。

この記事で認める直線の性質
  1. (目盛りが打てること)直線の上の点 $O$ について、$O$ 以外の点は $O$ の 2 つの側(片側と反対側)のどちらか一方だけにある。また正の数 $r$ について、$O$ の片側に $O$ からの距離が $r$ の点はちょうど 1 つあり、反対側にもちょうど 1 つある。
  2. (向きつきの長さが足し算できること)直線の上の 2 点 $A$、$B$ について、向きつきの長さ $\overline{AB}$ を、$A$ から $B$ へ向かう向きが正の向きなら $\overline{AB}=AB$、負の向きなら $\overline{AB}=-AB$、$A=B$ なら $\overline{AB}=0$ と定める。このとき、直線の上のどの 3 点 $A$、$B$、$C$ についても
    $$ \overline{AB}+\overline{BC}=\overline{AC} $$
    が成り立つ。
    性質 1 は、定規の目盛りがどこまでも、すき間なく打てることを言っている。性質 2 は、$B$ が $A$ と $C$ の間にあるときの $AB+BC=AC$(長さの和)を、向きを付けてどの並び方でも使えるようにしたものである。たとえば $C$ が $A$ と $B$ の間にあって正の向きに $A$、$C$、$B$ と並ぶときは、$\overline{AB}=AB$、$\overline{BC}=-BC$、$\overline{AC}=AC$ で、性質 2 の式は $AB-BC=AC$、つまり $AC+CB=AB$ と同じである。性質 2 を使うと $\overline{BA}=-\overline{AB}$ もわかる($C=A$ とおくと $\overline{AB}+\overline{BA}=\overline{AA}=0$)。

定義の 1・2 は、向きつきの長さで書くと $\overline{OP}=a$ のことである。$a>0$ なら $P$ は正の側にあり $\overline{OP}=OP=a$、$a< 0$ なら負の側にあり $\overline{OP}=-OP=a$ だからである。つまり 点の座標は、原点からの向きつきの長さ である。

座標と向きつきの長さ

ex-nlh-read の $A(-2)$、$C(3)$ について、$\overline{OA}=-2$、$\overline{OC}=3$ である。性質 2 から
$$ \overline{AC}=\overline{AO}+\overline{OC}=-\overline{OA}+\overline{OC}=2+3=5 $$
で、$A$ から $C$ へは正の向き(右)に長さ $5$ 進む。逆に $\overline{CA}=-5$ で、$C$ から $A$ へは負の向きに $5$ 進む。

点と実数の 1 対 1 対応

数直線の上では、どの実数 $a$ にも座標が $a$ の点がちょうど 1 つあり、直線の上のどの点にも座標がちょうど 1 つある。

定義と性質 1 から点を 1 つに決める

方針:実数から点が 1 つ決まることと、点から実数が 1 つ決まることを、別々に確かめる。
段 1(実数から点へ)。$a>0$ なら、rem-nlh-axioms の性質 1 により、正の側に $OP=a$ の点 $P$ はちょうど 1 つある。$a< 0$ なら $-a>0$ なので、負の側に $OP=-a$ の点がちょうど 1 つある。$a=0$ なら点は $O$ だけである。どの場合も、座標が $a$ の点はちょうど 1 つある。
段 2(点から実数へ)。直線の上の点 $P$ をとる。$P=O$ なら座標は $0$ である。$P\ne O$ なら、$P$ は正の側か負の側のどちらか一方にある。正の側なら $a:=OP>0$ とおくと、$P$ は定義の 1 の点なので座標は $a$ である。負の側なら $a:=-OP< 0$ とおくと、定義の 2 の点なので座標は $a$ である。
段 3(座標がただ 1 つであること)。$P$ の座標が $a$ とも $b$ とも言えたとすると、$\overline{OP}=a$ かつ $\overline{OP}=b$ なので $a=b$ である。$\square$

この対応があるので、「座標が $a$ の点」を単に「点 $a$」と呼ぶこともある。

2 点の距離と大小

2 点の距離と向き

数直線の上の 2 点 $A(a)$、$B(b)$ について、次が成り立つ。

  1. $\overline{AB}=b-a$。
  2. $A$ と $B$ の距離は $AB=|b-a|$ である。
  3. $A\ne B$ のとき、$B$ が $A$ から見て正の向き(右)にあることは、$a< b$ と同値である。
原点を経由して向きつきの長さを足す

方針:rem-nlh-axioms の性質 2 を、$A$、$O$、$B$ の 3 点に使う。
段 1(1 の証明)。性質 2 を $A$、$O$、$B$ に使うと $\overline{AB}=\overline{AO}+\overline{OB}$ である。$\overline{AO}=-\overline{OA}=-a$、$\overline{OB}=b$(座標は原点からの向きつきの長さ)なので、$\overline{AB}=-a+b=b-a$ である。
段 2(2 の証明)。向きつきの長さの定義から、$\overline{AB}$ は $AB$ か $-AB$ か $0$($A=B$ のとき)のどれかで、どの場合も $|\overline{AB}|=AB$ である。段 1 から $AB=|b-a|$ となる。
段 3(3 の証明)。$A\ne B$ とする。$B$ が $A$ から見て正の向きにあることは、定義により $\overline{AB}=AB>0$ ということである。負の向きにあれば $\overline{AB}=-AB< 0$ である。段 1 から $\overline{AB}=b-a$ なので、正の向きにあることは $b-a>0$、つまり $a< b$ と同値である。$\square$

定理の 2 は、絶対値と三角不等式 で「数直線上の 2 点 $a$、$b$ の距離」を $|a-b|$ と定めることの根拠である($|b-a|=|a-b|$)。定理の 3 から、数直線では 右にあるほど大きい。

距離と大小を計算する
  1. $A(-5)$、$B(-1)$ の距離は $|-1-(-5)|=|4|=4$ である。$-5< -1$ なので $B$ は $A$ の右にある。
  2. $P(\sqrt2)$、$Q(1.4)$ の距離は $|1.4-\sqrt2|$ である。$1.4^2=1.96< 2$ なので $1.4< \sqrt2$ で、$Q$ は $P$ の左にあり、距離は $\sqrt2-1.4=0.0142\cdots$ である。
  3. 3 点 $A(-5)$、$B(-1)$、$C(2)$ では、$\overline{AB}+\overline{BC}=4+3=7=\overline{AC}$ で、rem-nlh-axioms の性質 2 のとおりである。
中点の座標

数直線の上の異なる 2 点 $A(a)$、$B(b)$ について、直線の上で $AM=MB$ となる点 $M$ はちょうど 1 つあり、その座標は $\dfrac{a+b}{2}$ である。この点を線分 $AB$ の 中点 という。

絶対値の等式を 2 つの場合に分ける

方針:$M$ の座標を $m$ とおき、thm-nlh-distance で $AM=MB$ を $m$ の式にする。
段 1。thm-nlh-distance の 2 により、$AM=|m-a|$、$MB=|b-m|$ である。2 つの実数の絶対値が等しいのは、2 つが等しいか、符号だけ違うときなので、$AM=MB$ は
$$ m-a=b-m\quad\text{または}\quad m-a=-(b-m) $$
と同値である。
段 2。後の式を整理すると $m-a=m-b$、つまり $a=b$ となり、$A\ne B$ に反する。したがって後の式は起こらない。
段 3。前の式を整理すると $2m=a+b$、$m=\dfrac{a+b}2$ である。逆に $m=\dfrac{a+b}2$ なら $m-a=\dfrac{b-a}2=b-m$ なので、$AM=MB$ が成り立つ。thm-nlh-bijection により座標が $\dfrac{a+b}2$ の点はちょうど 1 つなので、中点はちょうど 1 つである。$\square$

中点を求める
  1. $A(-3)$、$B(7)$ の中点は $\dfrac{-3+7}2=2$ である。$AM=|2-(-3)|=5$、$MB=|7-2|=5$ で、確かに等しい。
  2. $A(-6)$、$B(-1)$ の中点は $\dfrac{-7}2=-3.5$ である。
  3. 中点が $M(4)$ で、一方の端が $A(1)$ なら、もう一方の端 $B(b)$ は $\dfrac{1+b}2=4$ から $b=7$ である。

線分を $m:n$ に分ける点の座標(内分点・外分点)も、同じように絶対値を符号で外して求まる。それは 内分点・外分点の座標 の「数直線上の内分点・外分点」で扱う。

区間:数直線の上の線分と半直線

不等式の解は、数直線の上の線分や半直線として表すと見やすい。

区間の記号

実数 $a< b$ に対し、次の実数の集合を 区間 という。

記号集合数直線の上の図形
$[a,b]$$a\le x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体両端を含む線分
$(a,b)$$a< x< b$ を満たす実数 $x$ 全体両端を除いた線分
$[a,b)$$a\le x< b$ を満たす実数 $x$ 全体端 $a$ だけ含む線分
$(a,b]$$a< x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体端 $b$ だけ含む線分
$[a,\infty)$$x\ge a$ を満たす実数 $x$ 全体端を含む右向きの半直線
$(a,\infty)$$x>a$ を満たす実数 $x$ 全体端を除いた右向きの半直線
$(-\infty,b]$$x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体端を含む左向きの半直線
$(-\infty,b)$$x< b$ を満たす実数 $x$ 全体端を除いた左向きの半直線

$\infty$ は数ではなく、「右にどこまでも続く」ことを表す記号である。図では、含む端を塗りつぶした丸、含まない端を白抜きの丸でかく(図 2)。

上は −1 以上 3 未満の区間(−1 は塗りつぶした丸、3 は白抜きの丸)、下は 2 より大きい実数全体の半直線(2 は白抜きの丸)を示す数直線 上は −1 以上 3 未満の区間(−1 は塗りつぶした丸、3 は白抜きの丸)、下は 2 より大きい実数全体の半直線(2 は白抜きの丸)を示す数直線

1 点からの距離が $r$ より小さい点

実数 $c$ と正の数 $r$ について、数直線の上で点 $c$ からの距離が $r$ より小さい点の座標全体は、区間 $(c-r,c+r)$ である。

絶対値を符号で外す

方針:thm-nlh-distance で距離を $|x-c|$ と書き、$|u|< r$ と $-r< u< r$ が同値であることを示す。
段 1。点 $x$ と点 $c$ の距離は thm-nlh-distance により $|x-c|$ である。$u:=x-c$ とおく。
段 2($|u|< r$ なら $-r< u< r$)。$u\ge0$ なら $u=|u|< r$ で、$-r< 0\le u$ である。$u< 0$ なら $-u=|u|< r$ の両辺に $-1$ を掛けて $u>-r$ で、$u< 0< r$ である。どちらでも $-r< u< r$ となる。
段 3($-r< u< r$ なら $|u|< r$)。$u\ge0$ なら $|u|=u< r$。$u< 0$ なら $|u|=-u$ で、$-r< u$ の両辺に $-1$ を掛けて $-u< r$ である。
段 4。$-r< x-c< r$ の各辺に $c$ を足すと $c-r< x< c+r$ である。$\square$

区間で表す
  1. 点 $3$ からの距離が $2$ より小さい点全体は、$|x-3|< 2$ の解で、区間 $(1,5)$ である。端 $1$、$5$ は距離がちょうど $2$ なので含まない。
  2. 点 $-1$ からの距離が $0.5$ 以下の点全体は、$|x+1|\le0.5$ の解で、区間 $[-1.5,-0.5]$ である(等号つきの場合は 絶対値と三角不等式 の「絶対値の基本性質」の 6 による)。

原点と目盛りを取り替える

同じ直線に、別の原点と別の単位で目盛りを打つこともできる。温度の目盛り(摂氏と華氏)がその例である。

座標の取り替え

数直線(座標 $x$)の上で、点 $c$ を新しい原点 $O'$、点 $c+u$($u\ne0$)を新しい単位の点 $E'$ とする新しい数直線を作る。点 $P(x)$ の新しい座標を $x'$ とすると
$$ x'=\frac{x-c}{u},\qquad x=c+ux' $$
である。

新しい原点からの向きつきの長さを、新しい単位で測る

方針:新しい座標は、新しい原点からの向きつきの長さを、新しい単位の長さで割り、新しい正の向きで符号を付けたものである。
段 1(新しい単位と向き)。thm-nlh-distance により、$O'E'=|(c+u)-c|=|u|$ である。新しい正の向きは $O'$ から $E'$ への向きで、これは $u>0$ なら元の正の向き、$u< 0$ なら元の負の向きである。
段 2($u>0$ のとき)。向きが同じなので、新しい単位で測った向きつきの長さは、元の向きつきの長さを $u$ で割ったものである。thm-nlh-distance の 1 により $\overline{O'P}=x-c$ なので、$x'=\dfrac{x-c}{u}$ である。
段 3($u< 0$ のとき)。向きが逆なので、元の向きつきの長さ $x-c$ の符号を変え、新しい単位 $|u|=-u$ で割る。$x'=\dfrac{-(x-c)}{-u}=\dfrac{x-c}{u}$ で、段 2 と同じ式になる。
段 4。$x'=\dfrac{x-c}u$ の両辺に $u$ を掛けて $c$ を足すと $x=c+ux'$ である。$\square$

摂氏と華氏

摂氏 $C$ 度と華氏 $F$ 度の関係は $F=32+1.8C$ である。これは、摂氏の目盛り(座標 $C$)を元の数直線とし、華氏の目盛りを新しい数直線と見ると、prop-nlh-change の $x=c+ux'$ の形を逆に読んだもの、$C=\dfrac{F-32}{1.8}$ にあたる。つまり華氏の目盛りは、摂氏 $c=-\dfrac{32}{1.8}=-17.77\cdots$ 度の点を原点とし、$1$ 目盛りが摂氏 $u=\dfrac1{1.8}=0.55\cdots$ 度の幅の数直線である。

  1. 摂氏 $100$ 度は華氏 $32+1.8\times100=212$ 度である。
  2. 摂氏で $10$ 度の差は、華氏では $1.8\times10=18$ 度の差になる。一般に、2 点 $x_1$、$x_2$ の新しい座標の差は $x_1'-x_2'=\dfrac{x_1-c}{u}-\dfrac{x_2-c}{u}=\dfrac{x_1-x_2}{u}$ なので、新しい座標で測った距離は元の距離の $\dfrac1{|u|}$ 倍になる。ここでは $\dfrac1{|u|}=1.8$ である。

長さを保つ座標の付け方

prop-nlh-change で $u=1$ または $u=-1$ とすると、単位の長さは変わらず、距離もそのまま保たれる。逆に、距離を変えない座標の付け方はこれしかないことを示す。

距離を保つ対応

実数全体から実数全体への対応 $f$ が、すべての実数 $x$、$y$ について $|f(x)-f(y)|=|x-y|$ を満たすとする。このとき、ある定数 $c$ と、$s=1$ または $s=-1$ があって、すべての $x$ について $f(x)=c+sx$ である。

2 点 0 と 1 の行き先で決まることを示す

方針:まず $f(0)=0$ の場合に、$f(1)$ の符号が全体を決めることを示し、最後に一般の場合をこれに帰着させる。
段 1($f(0)=0$ の場合の準備)。$f(0)=0$ とする。$y=0$ とおくと $|f(x)|=|x|$ なので、各 $x$ について $f(x)=x$ か $f(x)=-x$ である。特に $s:=f(1)$ は $1$ か $-1$ である。
段 2($f(x)=sx$ を示す)。$x$ を 1 つとり、$f(x)=-sx$ だったとする。$y=1$ とおいた式 $|f(x)-f(1)|=|x-1|$ に代入すると、$|-sx-s|=|x-1|$ である。左辺は $|s|\cdot|x+1|=|x+1|$ なので $|x+1|=|x-1|$、両辺を 2 乗して $x^2+2x+1=x^2-2x+1$、$x=0$ である。$x=0$ なら $-sx=sx=0$ である。したがって、どの $x$ でも $f(x)=sx$ である。
段 3(一般の場合)。$c:=f(0)$ とし、$g(x):=f(x)-c$ とおく。$g(x)-g(y)=f(x)-f(y)$ なので $g$ も条件を満たし、$g(0)=0$ である。段 1・2 により $g(x)=sx$($s=\pm1$)で、$f(x)=c+sx$ となる。$\square$

数直線の言葉で言えば、同じ単位で目盛りを打つ方法は「原点をどこに置くか」と「どちらを正の向きにするか」の選び方だけである。長さを測る目盛りとしての座標は、この 2 つの選択を除いてただ 1 つに決まる。

距離を保つ対応と保たない対応
  1. $f(x)=5-x$ は $c=5$、$s=-1$ の形で、$|f(x)-f(y)|=|-(x-y)|=|x-y|$ を満たす。数直線を点 $2.5$ を中心に折り返す対応である($f(2.5)=2.5$)。
  2. $f(x)=2x$ は $|f(1)-f(0)|=2\ne1$ なので距離を保たない。目盛りの幅を変える対応である。
  3. $f(x)=x^3$ は $f(0)=0$、$f(1)=1$ だが、$|f(2)-f(0)|=8\ne2$ で距離を保たない。$0$ と $1$ の行き先が合っていても、距離を保つという仮定がなければ全体は決まらない。

例と反例

数直線の定義の 3 つの決めごと(原点・単位・向き)や、実数を使うことを外すと何が崩れるかを確かめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
正の向きを決める点と実数が 1 対 1 に対応する(thm-nlh-bijection)ex-nlh-no-direction
座標として実数全体を使うどの点にも座標がある(thm-nlh-bijection)ex-nlh-rational-gap
$M$ は直線 $AB$ の上の点$AM=MB$ の点がただ 1 つ(cor-nlh-midpoint)ex-nlh-off-line
$A\ne B$$AM=MB$ の点がただ 1 つ(cor-nlh-midpoint)ex-nlh-same-point
反例:向きを決めないと 1 対 1 にならない

原点と単位だけを決め、点に「原点からの距離」だけを対応させるとする。$O$ の左右で距離が $2$ の点は 2 つあり、どちらにも同じ数 $2$ が対応する。また負の数に対応する点はない。点と数の対応は 1 対 1 にならない。向きを決めて符号を付けることで、左右の 2 点が $2$ と $-2$ に分かれる。

反例:有理数だけでは穴があく

1 辺の長さが $1$ の正方形を、$O$ と $E$ を 1 辺にもつようにかき、対角線の長さ $\sqrt2$ をコンパスで直線の上の正の側に写すと、点 $P$ が 1 つ決まる。三平方の定理により $OP^2=1^2+1^2=2$ である。$\sqrt2$ は有理数でない(実数とは何か:無理数の証明)ので、座標として有理数だけを使うと、$P$ には座標がない。直線の上の点をすべて数で表すには、無理数を含む実数全体が要る。

反例:直線の外では中点は決まらない

平面の上で $A$、$B$ から等しい距離にある点は、線分 $AB$ の垂直二等分線の上にいくらでもある。たとえば $A$、$B$ を $2$ だけ離れた 2 点とし、$AB$ の中点 $M$ から $AB$ に垂直に長さ $1$ 進んだ点 $N$ をとると、三平方の定理から $AN=NB=\sqrt2$ である。$N$ は直線 $AB$ の上にない。$AM=MB$ の点がただ 1 つに決まるのは、点を直線 $AB$ の上に限ったからである。

反例:2 点が一致するとき

$A=B=4$ なら、$|m-4|=|4-m|$ はすべての $m$ で成り立ち、$AM=MB$ を満たす点は直線の上のすべての点である。公式 $\dfrac{a+b}2=4$ は $A$ 自身を返すが、それは「ただ 1 つの点」ではない。prf-cor-nlh-midpoint の段 2 は $A\ne B$ を使っている。

大学数学で見る:実数直線

大学の数学では、数直線を図として使うだけでなく、実数全体の集合 $\mathbb{R}$ そのものを「直線」と見る。これを 実数直線 という。

実数直線と距離
  1. rem-nlh-axioms の性質 1(すき間なく目盛りが打てること)は、実数の 連続性(完備性)にあたる。有理数だけでは穴があくこと(ex-nlh-rational-gap)が、実数を作る理由の 1 つである。実数の公理的な扱いは 実数 にあり、最小上界性をもつ順序体として実数が(順序を保つ体の同型を除いて)ただ 1 つに定まることは、実数 の「実数体の一意性」で証明されている。
  2. $\mathbb{R}$ の 2 点 $x$、$y$ の距離を $|x-y|$ と定めると、$\mathbb{R}$ は 距離空間 になる。この記事の thm-nlh-isometry は、「$\mathbb{R}$ からそれ自身への距離を保つ写像は、平行移動と折り返しを組み合わせたものに限る」という主張である。
  3. 区間(def-nlh-interval の 8 種類に、実数全体 $(-\infty,\infty)$ を加えた 9 種類)は、「2 点以上を含み、2 点を含めばその間の点もすべて含む」集合として特徴づけられる(Leb の Proposition 1.4.1(p. 41)。この記事では証明しない)。大学の解析学では、この形で区間を扱う(区間)。

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関連項目

参考文献

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