Picardの小定理(little Picard theorem)とは、定数でない整関数 $f$ がとらない複素数の値は高々 1 つである、という定理である。$e^z$ が $0$ だけをとらないように除外値が 1 つあることは起こりうるが、相異なる 2 つの値を避ける整関数は定数になる。証明は、$f$ が $0$ と $1$ を避けるとき対数と平方根により $f=e^{2\pi i\cosh^2H}$ と書き、$H$ が平面に一定の密度で散らばった点の集合を避けることと、定数でない整関数の像がいくらでも大きな円板を含むという Bloch 型の補題とを対比させて行う。真性特異点のまわりでの一般化が Picard の大定理で、多項式でない整関数は高々 1 つを除くすべての値を無限回とる。
前提知識: 整関数, Liouvilleの定理(複素解析), Rouchéの定理, 開写像定理(複素解析)
Picardの小定理は、定数でない整関数がとらない複素数の値は高々 1 つしかない、という定理である。Liouvilleの定理(複素解析) は有界な整関数が定数であることを述べ、その命題「値を避ける整関数」は、像がある円板と交わらない整関数が定数であることを述べる。Picard の小定理はこれを大きく強め、円板どころか 2 点を避けるだけで定数になると主張する。
$e^z$ は $0$ をとらないので、「高々 1 つ」を「0 個」に強めることはできない。また定義域を $\mathbb{C}$ から 2 点を除いた集合に狭めたり、極を許したりすると成り立たない(ex-lp-counterexamples)。
$f$ を定数でない整関数とする。このとき $\mathbb{C}\setminus f(\mathbb{C})$ は高々 1 点である。言い換えると、整関数 $f$ が相異なる 2 つの複素数 $a,b$ をどちらもとらなければ、$f$ は定数である。
$f$ が $0$ と $1$ をとらないとすると、$0$ をとらないことから対数、$1$ をとらないことからさらに平方根をとって、$f$ を整関数 $H$ で書き表せる。この $H$ は、平面に一定の密度で散らばった点の集合をとらない。ところが定数でない整関数の像は、大きな円板の像を考えると、いくらでも大きい半径の円板を含む。この 2 つが両立しないので $H$ は定数である。像に円板が含まれることは、Bloch の定理の形の補題として示す。証明は prf-lp-main にある。
以下、$D:=\{z:|z|<1\}$ を単位開円板、$B(c,r)$ を中心 $c$、半径 $r$ の開円板とする。
$f$ を $D$ 上の正則関数とし、$f(0)=0$、$f'(0)=1$、$D$ 上で $|f|\le M$ とする。このとき $M\ge1$ であり、$f(D)\supset B\bigl(0,\frac1{6M}\bigr)$ である。
$f(z)=z+\sum_{n\ge2}c_nz^n$ と書く。$0< r<1$ に対し、半径 $r$ の円周での係数の評価(Cauchyの積分公式 の命題「Cauchy の評価式」)から $|c_n|\le M/r^n$ であり、$r\to1$ として $|c_n|\le M$ を得る。$n=1$ で $1\le M$ である。
$\rho:=\frac1{4M}$ とおくと $\rho\le\frac14$ である。$|z|=\rho$ なら
$$
|f(z)|\ge\rho-\sum_{n\ge2}M\rho^n=\rho-\frac{M\rho^2}{1-\rho}=\frac1{4M}-\frac1{4(4M-1)}\ge\frac1{4M}-\frac1{12M}=\frac1{6M}
$$
である。途中で $4M-1\ge3M$($M\ge1$ による)を使った。$|w|<\frac1{6M}$ とすると、円周 $|z|=\rho$ 上で $|(f(z)-w)-f(z)|=|w|<|f(z)|$ である。Rouchéの定理 の定理「Rouché の定理」($K$ を閉円板 $|z|\le\rho$、$\gamma$ をその円周とする)により、$f-w$ と $f$ は $|z|<\rho$ に同じ個数の零点をもつ。$f(0)=0$ なのでその個数は $1$ 以上であり、$f(z)=w$ となる $|z|<\rho$ がある。$\square$
$f$ を閉円板 $\overline D=\{|z|\le1\}$ を含む開集合上の正則関数とし、$f'(0)=1$ とする。このとき $f(D)$ は半径 $\frac1{24}$ の開円板を含む。
$0\le r\le1$ に対し $K(r):=\max_{|z|=r}|f'(z)|$、$h(r):=(1-r)K(r)$ とおく。$f'$ は $\overline D$ 上で一様連続なので $K$ と $h$ は連続であり、$h(0)=|f'(0)|=1$、$h(1)=0$ である。集合 $\{r\in[0,1]:h(r)=1\}$ は空でない閉集合なので最大元 $r_0$ をもち、$r_0<1$ である。$r_0< r\le1$ なら $h(r)<1$ である($h(r)\ge1$ なら、$h(1)=0$ と中間値の定理により $[r,1]$ に $h=1$ となる点があり、$r_0$ の最大性に反する)。
$|a|=r_0$、$|f'(a)|=K(r_0)=\frac1{1-r_0}$ となる点 $a$ をとり、$\rho_0:=\frac{1-r_0}2$、$r_1:=r_0+\rho_0=\frac{1+r_0}2<1$ とおく。$B(a,\rho_0)$ の点 $z$ は $|z|< r_1$ を満たす。開写像定理(複素解析) の系「正則関数の最大値原理」により、$|f'|$ の閉円板 $|z|\le r_1$ 上の最大値は円周 $|z|=r_1$ でとられるので、$z\in B(a,\rho_0)$ について
$$
|f'(z)|\le K(r_1)=\frac{h(r_1)}{1-r_1}<\frac1{1-r_1}=\frac2{1-r_0}=\frac1{\rho_0}
$$
である。
$D$ 上の関数 $g(\zeta):=\dfrac{f(a+\rho_0\zeta)-f(a)}{\rho_0f'(a)}$ を考える。$g(0)=0$、$g'(0)=1$ である。$\rho_0|f'(a)|=\frac{1-r_0}2\cdot\frac1{1-r_0}=\frac12$ なので、
$$
|g(\zeta)|=\frac1{\rho_0|f'(a)|}\Bigl|\int_0^1\rho_0\zeta f'(a+t\rho_0\zeta)\,dt\Bigr|\le2\rho_0|\zeta|\cdot\frac1{\rho_0}<2
$$
である。lem-lp-bounded-image を $M=2$ で使うと $g(D)\supset B(0,\frac1{12})$ である。$f(a+\rho_0\zeta)=f(a)+\rho_0f'(a)g(\zeta)$ と $\rho_0|f'(a)|=\frac12$ により、$f(B(a,\rho_0))\supset B(f(a),\frac1{24})$ である。$B(a,\rho_0)\subset D$ なので主張を得る。$\square$
$F$ を整関数、$z_0\in\mathbb{C}$ を $F'(z_0)\ne0$ となる点とする。任意の $R>0$ について、$F(B(z_0,R))$ は半径 $\frac{R|F'(z_0)|}{24}$ の開円板を含む。とくに $F$ の像は、いくらでも大きい半径の開円板を含む。
$f(\zeta):=\dfrac{F(z_0+R\zeta)}{RF'(z_0)}$ は整関数で $f'(0)=1$ である。lem-lp-bloch により $f(D)$ はある $B(c,\frac1{24})$ を含む。$F(B(z_0,R))=RF'(z_0)\cdot f(D)$ は $B\bigl(RF'(z_0)c,\frac{R|F'(z_0)|}{24}\bigr)$ を含む。$\square$
まず、証明の最後に使う点の集合を用意する。$\cosh w=(e^w+e^{-w})/2$ である。
整数 $n\ge1$ に対し $x_n:=\log\bigl(\sqrt n+\sqrt{n-1}\bigr)$ とおき、
$$
A:=\{\pm x_n+\pi im : n\ge1,\ m\in\mathbb{Z}\}
$$
とする。このとき次が成り立つ。
1:$e^{x_n}=\sqrt n+\sqrt{n-1}$、$e^{-x_n}=\dfrac1{\sqrt n+\sqrt{n-1}}=\sqrt n-\sqrt{n-1}$ なので $\cosh x_n=\sqrt n$ である。$\cosh(x+iy)=\cosh x\cos y+i\sinh x\sin y$ に $y=\pi m$ を入れると $\cosh(\pm x_n+\pi im)=(-1)^m\cosh x_n$ なので、$\cosh^2w=n$ である。
2:$x_1=0$ で、$x_n$ は $n$ について単調に増加し、$x_n\to\infty$ である。隣り合う差は
$$
x_{n+1}-x_n=\log\frac{\sqrt{n+1}+\sqrt n}{\sqrt n+\sqrt{n-1}}\le\log\bigl(1+\sqrt2\bigr)<1
$$
である。ここで $\sqrt{n+1}\le\sqrt2\sqrt n$ から $\sqrt{n+1}+\sqrt n\le(1+\sqrt2)\sqrt n\le(1+\sqrt2)(\sqrt n+\sqrt{n-1})$ を使った。よって実数の集合 $\{\pm x_n\}$ は、隣り合う点の間隔が $1$ 未満で両方向に限りなく延びるので、どの実数 $t$ にも $|t-x|\le\frac12$ となる点 $x$ がある。虚部の集合 $\pi\mathbb{Z}$ については、どの実数 $s$ にも $|s-\pi m|\le\frac\pi2$ となる $m$ がある。したがって任意の $c\in\mathbb{C}$ に対し、$A$ の点 $w$ で
$$
|c-w|\le\sqrt{\tfrac14+\tfrac{\pi^2}4}<2
$$
となるものがある($\pi^2<10$ より根号の中は $\frac{11}4<4$)。$\square$
$f$ を相異なる $a,b$ をとらない整関数とする。$f_1:=(f-a)/(b-a)$ は $0$ と $1$ をとらない整関数で、$f_1$ が定数なら $f$ も定数である。よって $f$ は $0$ と $1$ をとらないとしてよい。
対数をとる. $f$ は零点をもたないので、整関数 の命題「零点をもたない整関数」により $f=ce^{G}$($c\ne0$、$G$ は整関数)と書ける。$c=e^{c'}$ となる $c'$ をとり $h:=(G+c')/(2\pi i)$ とおくと、$h$ は整関数で $f=e^{2\pi ih}$ である。$e^{2\pi ih(z)}=1$ となるのは $h(z)\in\mathbb{Z}$ のときに限るので、$f\ne1$ から $h$ は整数の値をとらない。
平方根をとる. とくに $h$ と $h-1$ は零点をもたない。再び同じ命題により $h=c_1e^{G_1}$ と書けるので、$c_1$ の平方根 $\sqrt{c_1}$ を 1 つ選んで $S:=\sqrt{c_1}e^{G_1/2}$ とおくと、$S$ は整関数で $S^2=h$ である。同様に $T^2=h-1$ となる整関数 $T$ がある。$(S+T)(S-T)=S^2-T^2=1$ なので、$g:=S+T$ は零点をもたず、$S-T=1/g$ である。もう一度同じ命題により $g=e^{H}$ となる整関数 $H$ がとれる。すると
$$
S=\frac{g+g^{-1}}2=\cosh H,\qquad h=S^2=\cosh^2H
$$
である。
$H$ の像を調べる. $h$ は整数の値をとらないので、lem-lp-cosh-lattice の 1 により $H$ は集合 $A$ の点を値にとらない。lem-lp-cosh-lattice の 2 により、$H(\mathbb{C})$ は半径 $2$ の開円板を含まない。もし $H'(z_0)\ne0$ となる点 $z_0$ があれば、cor-lp-entire-disk を $R:=48/|H'(z_0)|$ で使うと、$H(\mathbb{C})$ は半径 $2$ の開円板を含むことになり、矛盾する。よって $H'$ は恒等的に $0$ で、$H$ は定数である。したがって $h=\cosh^2H$ も、$f=e^{2\pi ih}$ も定数である。$\square$
$H$ が避ける集合 $A$ は離散的で、どの点の近くにも円板を残さない。円板を避けるだけなら Liouville の定理で済むが、2 点を避けるという弱い条件を、対数と平方根で「一定の密度で散らばった点の集合を避ける」という条件に変え、それを cor-lp-entire-disk で否定するのがこの証明の要である。
Picard 自身の証明は、上半平面から $\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ への楕円モジュラー関数 $\lambda$ を使う。$f$ の値を $\lambda$ で上半平面へ持ち上げ、一価性定理により上半平面に値をとる整関数 $h$ で $\lambda\circ h=f$ となるものを作ると、$e^{ih}$ は有界なので Liouville の定理により定数になる(Ahl66 Chapter 8 §3.1, Theorem 5, pp. 297–298)。現代的に言い換えると、$\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ の普遍被覆が単位円板と正則に同型であることを使い、$f$ を単位円板への写像に持ち上げて Liouville の定理を当てる(Mil91 §2, 2.3, p. 2-2)。Nevanlinna理論 の定理「Picard の小定理」は、第二主要定理から同じ結論を導く。
整関数 $f,g$ が $e^{f}+e^{g}=1$ を満たすなら、$f$ と $g$ は定数である。
$e^f$ は $0$ をとらない。$e^{f(z)}=1$ なら $e^{g(z)}=0$ となって不可能なので、$e^f$ は $1$ もとらない。thm-lp-main により $e^f$ は定数 $c$ で、微分すると $f'e^f=0$ から $f'=0$、すなわち $f$ は定数である。$e^g=1-c$ から $g$ も同様に定数である。$\square$
整関数 $f$ について、$f\circ f$ が不動点をもたない($f(f(z))\ne z$ がすべての $z$ で成り立つ)なら、$0$ でない定数 $b$ により $f(z)=z+b$ である。逆にこの形の $f$ では $f(f(z))=z+2b\ne z$ である。
要点:$f$ の不動点は $f\circ f$ の不動点なので、$f(z)\ne z$ である。比 $\dfrac{f(f(z))-z}{f(z)-z}$ が $0$ と $1$ を避けることから、Picard の小定理を 2 回使う。
$f(w)=w$ なら $f(f(w))=w$ となるので、$f$ は不動点をもたない。とくに $f$ は定数でない(定数 $c$ なら $f(c)=c$)。$\varphi(z):=\dfrac{f(f(z))-z}{f(z)-z}$ は分母が $0$ にならないので整関数である。$\varphi(z)=0$ は $f(f(z))=z$ を意味するので起こらない。$\varphi(z)=1$ は $f(f(z))=f(z)$、すなわち $f(z)$ が $f$ の不動点であることを意味するので起こらない。thm-lp-main により $\varphi$ は定数 $c$($c\ne0,1$)である。
$f(f(z))-z=c(f(z)-z)$ を微分すると $f'(f(z))f'(z)-1=c(f'(z)-1)$、すなわち $f'(z)\bigl(f'(f(z))-c\bigr)=1-c\ne0$ である。よって $f'$ は零点をもたず、整関数 $f'\circ f$ は値 $c$ をとらない。$f'$ が零点をもたないので $f'\circ f$ は値 $0$ もとらない。thm-lp-main により $f'\circ f$ は定数 $k$ である。$f$ は定数でないので $f(\mathbb{C})$ は空でない開集合であり(開写像定理(複素解析))、$f'$ はその上で $k$ に等しいので、一致の定理 により $\mathbb{C}$ 全体で $f'=k$、すなわち $f(z)=kz+b$ である。$f(f(z))-z=(k^2-1)z+(k+1)b$ が零点をもたないので $k^2=1$ かつ $(k+1)b\ne0$、すなわち $k=1$、$b\ne0$ である。
Casorati–Weierstrass の定理は、真性特異点のどの穴あき近傍でも像が $\mathbb{C}$ で稠密であることを述べる(Leb26 Theorem 5.2.7, p. 129)。これを強めたのが Picard の大定理である。
$f$ を穴あき円板 $0<|z-z_0|< r$ 上の正則関数とし、$z_0$ を $f$ の真性特異点とする。このとき、$z_0$ のどの穴あき近傍 $0<|z-z_0|<\varepsilon$ でも、$f$ は高々 1 つの例外を除くすべての複素数の値をとる。
要点:2 つの値を避けるなら、$f(2^{-n}z)$ の族は円環上で正規族になり、$f$ は原点の近くの円周の列の上で有界になるか、無限大に向かう。最大値原理によりそれぞれ除去可能特異点・極になり、真性特異点であることに反する。
$z_0=0$ とし、ある $\varepsilon$ について $0<|z|<\varepsilon$ で $f$ が相異なる $a,b$ をとらないとする。$(f-a)/(b-a)$ に替えて $a=0$、$b=1$ としてよい(真性特異点であることは保たれる)。$\sigma$ を Riemann 球面の弦距離とし、$\sigma(w,\infty)=2/\sqrt{1+|w|^2}$ を使う(Julia集合 の命題「球面距離の式」)。
円環 $\Omega:=\{1/2<|z|<2\}$ 上の正則関数 $f_n(z):=f(2^{-n}z)$($2^{1-n}<\varepsilon$ となる $n$)は、$\hat{\mathbb{C}}$ の 3 点 $0,1,\infty$ を値にとらない。Montel の定理(Mil91 §2, 2.5, p. 2-4)により、ある部分列 $f_{n_k}$ が $\Omega$ のコンパクト集合上で $\sigma$ について一様に正則写像 $g\colon\Omega\to\hat{\mathbb{C}}$ に収束し、$g$ の像は $\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ に含まれるか、$0,1,\infty$ のどれか 1 点である。
$g$ が $\infty$ を値にとらない場合:$g$ は円周 $|z|=1$ 上で連続なので $|g|\le M$ となる $M$ がある。$\sigma(g,\infty)\ge2/\sqrt{1+M^2}$ なので、一様収束により十分大きい $k$ では円周上で $\sigma(f_{n_k},\infty)>2/\sqrt{1+(M+1)^2}$、すなわち $|f_{n_k}|< M+1$ である。これは $|z|=2^{-n_k}$ 上で $|f|< M+1$ を意味する。円環 $2^{-n_{k+1}}\le|z|\le2^{-n_k}$ では、開写像定理(複素解析) の系「正則関数の最大値原理」により $|f|$ の最大値は境界の 2 つの円周でとられるので、$|f|< M+1$ である。よって $f$ は $0$ の近くで有界で、$0$ は除去可能特異点になり、仮定に反する。
$g\equiv\infty$ の場合:円周 $|z|=1$ 上で $|f_{n_k}|\to\infty$ が一様に成り立つ。$f$ は $0$ をとらないので $1/f$ は穴あき円板で正則であり、前段と同じ議論で $1/f$ は $0$ の近くで有界、したがって $0$ に正則に延びる。円周 $|z|=2^{-n_k}$ 上で $|1/f|\to0$ なので延長した値は $0$ であり、$1/f$ は恒等的に $0$ ではないので $0$ は $1/f$ の有限位数の零点である。よって $0$ は $f$ の極になり、仮定に反する。$\square$
$e^{1/z}$ は $z=0$ に真性特異点をもつ。$w\ne0$ を任意にとり、$\log w$ の値を 1 つ選ぶと、$z_k:=1/(\log w+2\pi ik)$ は $e^{1/z_k}=w$ を満たし、$k\to\infty$ で $z_k\to0$ である。よって $0$ のどの穴あき近傍でも、$e^{1/z}$ は $0$ 以外のすべての値をとる。除外値 $0$ はちょうど 1 つである。
多項式でない整関数 $f$ は、高々 1 つの例外を除くすべての複素数の値を無限回とる。
$F(w):=f(1/w)$ は $0<|w|<\infty$ で正則で、$f$ が多項式でないので $w=0$ は $F$ の真性特異点である(整関数 の命題「無限遠の特異点による分類」)。相異なる 2 つの値 $c_1,c_2$ を $f$ が有限回しかとらないとすると、それらをとる点の絶対値の最大値より大きい $R$ について、$F$ は $0<|w|<1/R$ で $c_1,c_2$ をとらない。これは thm-lp-big に反する。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 定義域が $\mathbb{C}$ 全体 | $\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ 上の $f(z)=z$ | 定数でないのに $0$ と $1$ をとらない |
| 極をもたないこと | $\mathbb{C}$ 上の有理型関数 $\tan z$ | 定数でないのに $i$ と $-i$ をとらない |
| 除外する値が 2 つであること | $e^z$ | 値 $0$ を 1 つ除外するだけでは定数にならない |
| 特異点が真性であること(thm-lp-big) | $0<\lvert z\rvert<1$ 上の $1/z$ | $0$ は極で、$\lvert w\rvert\le1$ の値をすべて除外する |
表の 4 行を順に確かめる。
1 行目:$\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ 上で恒等写像は $0,1$ をとらない。定理は定義域が $\mathbb{C}$ 全体であることを使っている(証明で整関数の対数・平方根をとった段と、cor-lp-entire-disk で半径 $R$ を限りなく大きくとった段)。
2 行目:$\tan z=\sin z/\cos z$ は $\cos z$ の零点に極をもつ $\mathbb{C}$ 上の有理型関数である。$\tan z=\pm i$ とすると $\sin z=\pm i\cos z$、すなわち $\frac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}=\pm i\,\frac{e^{iz}+e^{-iz}}2$ である。両辺に $2i$ を掛けると $e^{iz}-e^{-iz}=\mp(e^{iz}+e^{-iz})$ となり、複号が上なら $2e^{iz}=0$、下なら $2e^{-iz}=0$ となって、どちらも成り立たない。極を値 $\infty$ とみると $\tan z$ は Riemann 球面の 2 点 $\pm i$ だけを除外しており、Nevanlinna理論 の定理「Picard の小定理」の「3 点を除外する有理型関数は定数」と矛盾しない。
3 行目:ex-lp-examples で確かめた。
4 行目:$0<|z|<1$ での $1/z$ の像は $\{|w|>1\}$ である。
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