Pontryagin–Thomの定理

同義語:Pontryagin-Thomの定理Pontryagin–Thom theoremポントリャーギン・トムの定理

概要

Pontryagin–Thomの定理(Pontryagin–Thom theorem)とは、$n$ 次元の閉多様体の同境群 $\mathfrak N_n$ と、普遍 $q$ 次元ベクトル束の Thom 空間 $TO(q)$ のホモトピー群を結ぶ定理である。写像 $S^{n+q}\to TO(q)$ を零切断に横断的に動かして逆像をとる写像 $\beta\colon\pi_{n+q}(TO(q))\to\mathfrak N_n$ は $q\ge n+3$ のとき群の同型であり、逆写像は閉多様体を $\mathbb R^{n+q}$ に埋め込み、法束の Gauss 写像と管状近傍で球面を潰す構成で与えられる。$\beta$ は $q$ を上げる構造写像と両立し、$\mathfrak N_n$ は安定ホモトピー群 $\pi_n(MO)$ と同型になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 同境, Thom空間, 横断性定理, 管状近傍定理, ホモトピー群

閉多様体 $M$ を $\mathbb R^{n+q}$ に埋め込み、管状近傍を普遍束のファイバーへ写して管の外を無限遠の 1 点へ潰すと、球面 $S^{n+q}$ から普遍 $q$ 次元ベクトル束の Thom 空間 $TO(q)$ への写像ができる。逆に、写像 $S^{n+q}\to TO(q)$ を零切断に横断的に動かせば、零切断の逆像として $n$ 次元の閉多様体が戻る。Pontryagin–Thom の定理(Pontryagin–Thom theorem)は、$q$ が $n$ に比べて十分大きければ、この往復が群の同型
$$ \beta\colon\pi_{n+q}(TO(q))\xrightarrow{\ \cong\ }\mathfrak N_n $$
を与えることを述べる。ここで $\mathfrak N_n$ は $n$ 次元の閉多様体の(向きを考えない)同境群である(同境)。
この定理により、閉多様体を同境で分類する問題が、Thom 空間のホモトピー群を求める問題に置き換わる。この記事では $n\ge0$、$q\ge n+3$ のときに同型を証明する。全射は閉多様体の埋め込みと法束の Gauss 写像から、単射は零同境 $W$ を半空間 $\mathbb R^{n+q}\times[0,\infty)$ に境界を指定して埋め込み、潰し写像を $W$ の上へ延ばすことから従う。$q\ge n+3$ はこの埋め込みに使う。
あわせて、$\beta$ が $q$ を 1 つ上げる構造写像と両立し、$\mathfrak N_n$ が安定ホモトピー群 $\pi_n(MO)$ と同型になること、$1\le k< q$ なら $\pi_k(TO(q))=0$ であることを示す。

設定

この記事では、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算で、「滑らか」は $C^\infty$ 級を指す。閉多様体はコンパクトで境界のない多様体で、空集合も各次元の閉多様体とみる。$|\cdot|$ は Euclid 空間の標準ノルムである。

有限段の模型

整数 $1\le q\le r$ について、$\mathbb R^r$ の $q$ 次元部分空間をその上への直交射影の行列と同一視し、
$$ \mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r):=\{L\in\mathbb R^{r\times r}\mid L^{\mathsf T}=L=L^2,\ \operatorname{tr}L=q\} $$
とみる。行列としても部分空間(行列の像)としても同じ文字 $L$ を使う。位相は Grassmann多様体 のものと同じである(同記事の定理「多様体の構造」の証明)。
$$ E^r:=\{(L,v)\in\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)\times\mathbb R^r\mid v\in L\} $$
はトートロジー束 $\gamma^r_q$ の全空間である(同記事の命題「トートロジー束」)。$Z^r:=\{(L,0)\}$ を零切断とし、$a>0$ について $D_a:=\{(L,v)\in E^r\mid |v|\le a\}$(コンパクト)とおく。

普遍束の有限段の模型
  1. $\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ は $\mathbb R^{r\times r}$ のコンパクトな部分多様体、$E^r$ は $\mathbb R^{r\times r}\times\mathbb R^r$ の閉部分多様体で、次元はそれぞれ $q(r-q)$、$q(r-q)+q$ である。$Z^r$ は $E^r$ の余次元 $q$ のコンパクトな部分多様体である。
  2. $(L,0)\in Z^r$ で $T_{(L,0)}E^r=T_{(L,0)}Z^r\oplus(\{0\}\times L)$ であり、$T_{(L,0)}Z^r$ の元の第 2 成分は $0$、$T_{(L,0)}E^r$ の元の第 2 成分は $L$ に入る。とくに、滑らかな写像 $g=(L_g,v_g)\colon X\to E^r$ が $g(x)\in Z^r$ となる点 $x$ で $Z^r$ に横断的であることは、$d(v_g)_x(T_xX)=L_g(x)$ と同値である。
  3. $(L,v)\mapsto(L\oplus0,(v,0))$ は $E^r$ から $E^{r+1}$ への滑らかな閉埋め込みで、$Z^r$ を $Z^{r+1}$ に写し、ファイバー $L$ を恒等写像で $L\oplus0$ に写す。

要点:$L_0$ のまわりで、$L_0$ から $L_0^\perp$ への線形写像のグラフを使う座標をとると、零切断は縦の座標が $0$ の集合になる。

証明を開く

$L_0\in\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ を固定し、$V_0:=L_0^\perp$ とおく。$X\in\operatorname{Hom}(L_0,V_0)$ について $\Gamma_X:=\{u+Xu\mid u\in L_0\}$ は $q$ 次元部分空間で、$L_0$ の正規直交基底を並べた $r\times q$ 行列 $Q$ を使うと、$C_X:=(\mathrm{id}+X)Q$ の列は $\Gamma_X$ の基底であり、$\Gamma_X$ への直交射影は $C_X(C_X^{\mathsf T}C_X)^{-1}C_X^{\mathsf T}$ と書けるので $X$ について滑らかである。$\varphi(X,a):=(\Gamma_X,\ a+Xa)$($a\in L_0$)とおく。

$\mathcal U:=\{(L,v)\in\mathbb R^{r\times r}\times\mathbb R^r\mid L_0L|_{L_0}\colon L_0\to L_0\ \text{は可逆}\}$ は開集合で、$\psi(L,v):=\bigl((1-L_0)L(L_0L|_{L_0})^{-1},\ L_0v\bigr)$ は $\mathcal U$ 上で滑らかである($L_0$ を射影の行列とみている)。$L=\Gamma_X$ なら $L_0L|_{L_0}$ は可逆である:$L_0Lu=0$ なら $Lu\in\Gamma_X\cap V_0=0$ なので $u\perp\Gamma_X$ であり、$u\in L_0$ なら $|u|^2=\langle u,u+Xu\rangle=0$ となる。$u\in L_0$ について $Lu\in\Gamma_X$ は $u':=L_0Lu$ を使って $Lu=u'+Xu'$ と書けるので $(1-L_0)Lu=XL_0Lu$、すなわち $\psi(\varphi(X,a))=(X,a)$ である。逆に $(L,v)\in E^r\cap\mathcal U$ なら、$L_0|_L\colon L\to L_0$ は全射($L$ は $L(L_0)$ を含む)で次元が等しいので同型であり、$L$ はある $X'$ のグラフで、同じ計算で $X'$ は $\psi$ の第 1 成分に等しく、$v\in L$ から $v=L_0v+X'L_0v$ となる。すなわち $\varphi(\psi(L,v))=(L,v)$ である。よって $\varphi$ は $\operatorname{Hom}(L_0,V_0)\times L_0$ から $E^r$ の開集合 $E^r\cap\mathcal U$ への同相写像で、滑らかな左逆写像 $\psi$ をもつので単射なはめ込みである。はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の定理「埋め込みの像は部分多様体」により $E^r\cap\mathcal U$ は部分多様体であり、$E^r$ はこれらで覆われるので部分多様体である。$a=0$ に制限すれば $\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ と $Z^r$ について同じことが言える。$E^r$ は多項式の等式 $L^{\mathsf T}=L=L^2$、$\operatorname{tr}L=q$、$Lv=v$ で定まるので閉集合であり、$\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ は $|Le_i|\le1$ より有界でもあるのでコンパクトである。次元は $\dim\operatorname{Hom}(L_0,V_0)=q(r-q)$ から従う。

2:$\varphi$ の $(0,0)$ での微分は $(\dot X,0)\mapsto(\dot L,0)$、$(0,\dot a)\mapsto(0,\dot a)$ なので、$T_{(L_0,0)}Z^r$ は第 2 成分が $0$ のベクトルからなり、$\{0\}\times L_0\subset T_{(L_0,0)}E^r$ である。次元が足し合わさるので直和である。$E^r$ 上の曲線 $(L(\tau),v(\tau))$、$v(0)=0$ について $L(\tau)v(\tau)=v(\tau)$ を $\tau=0$ で微分すると $L(0)\dot v=\dot v$ なので $\dot v\in L_0$ である。したがって直和の第 2 成分への射影は $(\dot L,\dot v)\mapsto\dot v$ であり、横断性($dg_x(T_xX)+T_{(L,0)}Z^r=T_{(L,0)}E^r$)は $d(v_g)_x(T_xX)=L$ と同値である。

3:写像は線形写像の制限なので滑らかで、左逆写像(行列と列ベクトルの対応する成分を取り出す写像)は滑らかである。像は閉集合で、残りは定義から明らかである。$\square$

有限段の Thom 空間と $TO(q)$
  1. $T^r:=(E^r)^+$(一点コンパクト化)を、無限遠点 $\infty$ を基点とする基点付き空間とみる。$\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ はコンパクトなので、Thom空間 の命題「コンパクトな底空間と一点コンパクト化」により、$T^r$ は $\gamma^r_q$ の Thom 空間と同相である。
  2. lem-ptt-model の 3 の写像は $\infty$ を $\infty$ に送って閉埋め込み $T^r\to T^{r+1}$ に延びる($E^r$ は $E^{r+1}$ の閉集合なので延長は連続で、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な単射である)。和集合 $TO(q):=\bigcup_rT^r$ に、「$C$ が閉集合 $\iff$ すべての $r$ で $C\cap T^r$ が $T^r$ の閉集合」で定まる位相を入れる。

$TO(q)$ は普遍 $q$ 次元ベクトル束の Thom 空間の模型で、$MO(q)$ とも書かれる(May99 Chapter 25 §1、p. 220、MS74 p. 215)。$TO(q)$ の位相については次の補題だけを使う。

コンパクト集合と有限段
  1. 各 $T^r$ は $TO(q)$ の閉集合で、$TO(q)$ から誘導される位相は $T^r$ の元の位相に一致する。
  2. $TO(q)$ のコンパクト集合は、ある $T^r$ に含まれる。
  3. したがって、基点付き写像 $S^N\to TO(q)$ はある $T^r$ への連続写像であり、$TO(q)$ の中で基点付きホモトピックな 2 つの写像 $S^N\to T^r$ は、ある $T^{r'}$($r'\ge r$)の中で基点付きホモトピックである。

要点:各段から 1 点ずつとった無限列は、閉じた離散集合になる。

証明を開く

1:$C\subset T^r$ が $T^r$ の閉集合なら、$r'\ge r$ では $C\cap T^{r'}=C$ は $T^{r'}$ の閉集合であり($T^r$ は $T^{r'}$ の閉集合)、$r'< r$ では $C\cap T^{r'}$ は $T^{r'}$ の閉集合($T^{r'}$ は $T^r$ の部分空間)である。よって $C$ は $TO(q)$ の閉集合である。逆向きは位相の定義そのものである。

2:コンパクト集合 $K$ がどの $T^r$ にも含まれないとすると、$r_1< r_2<\cdots$ と $x_k\in K\cap(T^{r_k}\setminus T^{r_k-1})$ がとれる。$Y:=\{x_k\}$ のどの部分集合 $Y'$ も、各 $T^r$ と有限個の点でしか交わらず、$T^r$ は Hausdorff なので $Y'\cap T^r$ は閉集合である。よって $Y'$ は $TO(q)$ の閉集合であり、$Y$ は無限個の点からなる閉じた離散集合である。$Y$ はコンパクト集合 $K$ の閉集合なのでコンパクトであるが、無限の離散空間はコンパクトでないので矛盾する。

3:像はコンパクトなので 2 によりある $T^r$ に含まれ、1 により $T^r$ への写像として連続である。ホモトピーは $S^N\times[0,1]$ からの写像なので同じことが言える。$\square$

横断的な写像と逆像

横断的な写像

多様体 $X$ からの連続写像 $g\colon X\to T^r$ が 横断的 であるとは、開集合 $U_g:=g^{-1}(E^r)$ の上で $g$ が滑らかで、$Z^r$ に横断的(横断性定理 の定義「横断性」)であることをいう。基点付き写像 $g\colon S^N=(\mathbb R^N)^+\to T^r$ については、$\mathbb R^N$ への制限が横断的であることをいう。

横断的な $g\colon X\to T^r$ について、$g^{-1}(Z^r)$ は $X$ の余次元 $q$ の閉部分多様体である(横断性定理 の定理「横断的な逆像は部分多様体」。$Z^r$ はコンパクト)。$N:=n+q$ とし、横断的な基点付き写像 $g\colon S^N\to T^r$ について $M_g:=g^{-1}(Z^r)$ とおくと、$M_g$ は $\infty$ を含まない閉集合なので、$\mathbb R^N$ の $n$ 次元の閉多様体である。lem-ptt-model の 2・3 により、横断性と $M_g$ は段 $r$ を上げても変わらない。

半径方向の切り詰め

$R>0$、$0\le u\le1$ について、$\kappa_{u,R}\colon T^r\to T^r$ を、$u|v|^2< R^2$ となる $(L,v)$ を $\bigl(L,\ v/(1-u|v|^2/R^2)\bigr)$ に、それ以外の点と $\infty$ を $\infty$ に送る写像とする。

  1. $(u,z)\mapsto\kappa_{u,R}(z)$ は $[0,1]\times T^r$ 上で連続で、$\kappa_{0,R}=\mathrm{id}$ である。
  2. $\kappa_R:=\kappa_{1,R}$ は $\{|v|< R\}$ を $E^r$ の上へファイバーを保って微分同相に写し、零切断の上では恒等写像で縦の微分も恒等写像であり、ほかの点を $\infty$ に送る。

要点:値が有限のとき出力のノルムは入力のノルム以上なので、無限遠点の近くは無限遠点の近くに写る。

証明を開く

1:値が有限な点 $(u_0,(L_0,v_0))$($u_0|v_0|^2< R^2$)の近くでは式そのものが連続である。値が $\infty$ になる点の近くを調べる。$\infty$ の近傍は $E^r$ のコンパクト集合の補集合で、コンパクト集合は $|v|\le b$ をみたすので、「$\infty$ または $|v|>b$」の形の集合に写ることを示せばよい。値が有限なら出力のノルムは $|v|/(1-u|v|^2/R^2)\ge|v|$ である。入力が $\infty$ の点では、近傍 $\{|v|>b\}\cup\{\infty\}$ の点は $\infty$ か $|v|>b$ の点に写る。入力が有限で $u_0|v_0|^2\ge R^2$ の点では $|v_0|\ge R$ であり、近くで $|v|>R/2$、$u|v|^2/R^2>1-R/(2b)$ とすると、値が有限な点では $1-u|v|^2/R^2< R/(2b)<|v|/b$ なので出力のノルムは $b$ より大きい。

2:$\lambda_R(v):=v/(1-|v|^2/R^2)$ は開球 $\{|v|< R\}$ から各部分空間 $L$ の上への、半径方向の微分同相写像で、逆写像は $v'\mapsto2v'/\bigl(1+\sqrt{1+4|v'|^2/R^2}\bigr)$ である($s:=|v|$ について $s/(1-s^2/R^2)=a$ を解くと $s=2a/(1+\sqrt{1+4a^2/R^2})$)。どちらも $|v|^2$ の滑らかな関数をかけたものなので滑らかで、$\lambda_R(v)=v+O(|v|^3)$ より $0$ での微分は恒等写像である。$\square$

横断的な写像への変形

$X$ を多様体、$f\colon X\to T^r$ を連続写像、$O\subset X$ を開集合、$A\subset O$ を $X$ の閉集合とする。$f$ は $O\cap f^{-1}(E^r)$ の上で滑らかで $Z^r$ に横断的であり、$f^{-1}(D_2)\setminus O$ はコンパクトであるとする。このとき連続写像 $F\colon X\times[0,1]\to T^r$($F_s:=F(\cdot,s)$)で次をみたすものがある。

  1. $F_0=f$ であり、$F_1$ は横断的である。
  2. $X\setminus A$ のコンパクト集合 $C$ と連続関数 $u\colon[0,1]\to[0,1]$ があって、$C$ の外では $F_s=\kappa_{u(s),1}\circ f$ である。
  3. $A$ のある開近傍の上で $F_1=\kappa_{1,1}\circ f$ である。

要点:滑らかでない部分を Whitney の近似で滑らかにし、半径方向に切り詰めてから、ファイバーの中の平行移動の族にパラメータ族の横断性定理を当てる。

証明を開く

lem-ptt-model の 1 により $E^r$ は $\mathbb R^m$($m=r^2+r$)の閉部分多様体なので、管状近傍定理 の定理「管状近傍による引き込み」により、$E^r$ を含む開集合 $V_E$ と、$E^r$ の上で恒等写像となる滑らかな $\rho\colon V_E\to E^r$ がある。$Y:=f^{-1}(E^r)$ は開集合で、$K:=f^{-1}(D_2)\setminus O$ はコンパクトで $Y\setminus A$ に含まれる。隆起関数 の定理「コンパクト集合に対する隆起関数」により、$K$ のある開近傍 $\Omega_\lambda$ の上で $1$ となり、台 $S$ がコンパクトで $Y\setminus A$ に含まれる滑らかな $\lambda\colon X\to[0,1]$ をとる。

段 1(滑らかにする).$f(S)$ はコンパクトなので、$\delta_1>0$ を、$f(S)$ からの距離が $\delta_1$ 以下の点の集合 $N_1$ が $V_E$ に含まれるようにとる。$\rho$ はコンパクト集合 $N_1$ の上で一様連続なので、$0<\delta\le\delta_1$ を、距離が $\delta$ 未満の $N_1$ の 2 点の $\rho$ による値の距離が $\tfrac12$ 未満になるようにとる。Whitneyの近似定理 の定理「Whitneyの近似定理」($A=\emptyset$)により、滑らかな $h\colon Y\to\mathbb R^m$ で $|h-f|<\delta$ となるものがある。$Y$ の上で $F^1_s:=\rho\bigl((1-s\lambda)f+s\lambda h\bigr)$、$S$ の外で $F^1_s:=f$ とおく。$S$ の上で括弧の中の点は $N_1$ に入るので、$F^1$ は $X\times[0,1]$ 上で連続である。$F^1_1$ は $\Omega_\lambda$ では $\rho\circ h$ であり、$O\cap Y$ では $f$ が滑らかなので、開集合 $\Omega:=\Omega_\lambda\cup O$ と $(F^1_1)^{-1}(E^r)$ の共通部分の上で滑らかである。$S$ の上で $|F^1_1-f|<\tfrac12$ なので、$F^1_1(x)\in D_1$ なら $f(x)\in D_2$ である($x\notin S$ なら $F^1_1(x)=f(x)$)。$f^{-1}(D_2)\subset K\cup O\subset\Omega$ なので、$(F^1_1)^{-1}(D_1)\subset\Omega$ である。

段 2(切り詰める).$F^2_s:=\kappa_{s,1}\circ F^1_1$(lem-ptt-cutoff)とおく。$(F^2_1)^{-1}(E^r)=(F^1_1)^{-1}(\{|v|<1\})\subset\Omega$ であり、$\kappa_1$ は $\{|v|<1\}$ を $E^r$ に微分同相に写すので、$F^2_1$ は $(F^2_1)^{-1}(E^r)$ の上で滑らかである。$A$ を含む開集合 $X\setminus S$ の上では $F^2_1=\kappa_1\circ f$ であり、そこで $F^2_1(x)\in E^r$ なら $x\in f^{-1}(D_1)\setminus S\subset O$($K\subset S$)なので、$\kappa_1$ が零切断を保つ微分同相であることから、$F^2_1$ は $x$ で $Z^r$ に横断的である。

段 3(ファイバーの中で動かす).$(F^2_1)^{-1}(E^r)$ の上で $F^2_1=(L,v)$ と書き、$K_2:=(F^2_1)^{-1}(D_{1/2})\cap S$ とおく。$K_2$ はコンパクトで $(F^2_1)^{-1}(E^r)\setminus A$ に含まれるので、$K_2$ の近傍で $1$ となり、台がコンパクトで $(F^2_1)^{-1}(E^r)\setminus A$ に含まれる滑らかな $\mu\colon X\to[0,1]$ がある。$B\subset\mathbb R^r$ を中心 $0$、半径 $\tfrac12$ の開球とし、$$\Phi(x,a):=\bigl(L(x),\ v(x)+\mu(x)L(x)a\bigr)\qquad(x\in(F^2_1)^{-1}(E^r),\ a\in B)$$とおく($L(x)$ は射影の行列なので値は $E^r$ に入る)。$\Phi$ は滑らかで、$Z^r$ に横断的である。実際、$\Phi(x,a)\in Z^r$ なら $|v(x)|<\tfrac12$ である。$\mu(x)>0$ なら、$a$ 方向の微分の第 2 成分の像は $L(x)$ 全体である。$\mu(x)=0$ なら $x\notin K_2$ なので $x\notin S$ であり、段 2 により $F^2_1$ は $x$ で横断的である。$\mu\ge0$ は $x$ で最小値をとるので $d\mu_x=0$ であり、$x$ 方向の第 2 成分の微分は $dv_x$ に等しい。どちらの場合も lem-ptt-model の 2 により横断的である。横断性定理 の定理「パラメータ族の横断性定理」により、$\Phi(\cdot,a)$ が横断的となる $a\in B$ がある。$(F^2_1)^{-1}(E^r)$ の上で $F^3_s:=\Phi(\cdot,sa)$、$\mu$ の台の外で $F^3_s:=F^2_1$ とおく。

$F^1$、$F^2$、$F^3$ をこの順につないだホモトピーを $F$ とすると、$F_1=F^3_1$ は横断的である。$C:=S\cup\operatorname{supp}\mu$ の外では $F^1_s=f$、$F^2_s=\kappa_{s,1}\circ f$、$F^3_s=\kappa_{1,1}\circ f$ なので 2 が成り立ち、$A$ の開近傍 $X\setminus C$ の上で 3 が成り立つ。$\square$

逆像の写像 $\beta$

$n\ge0$、$q\ge1$、$N=n+q$ とする。

  1. $\pi_N(TO(q))$ のどの元も、ある $r$ についての横断的な基点付き写像 $g\colon S^N\to T^r$ で代表される。
  2. $\beta([g]):=[M_g]\in\mathfrak N_n$ は代表の選び方によらない。
  3. $\beta\colon\pi_N(TO(q))\to\mathfrak N_n$ は群の準同型である($\mathfrak N_n$ の群の構造は 同境 の命題「同境群」)。

要点:横断的な写像のホモトピーも、端を止めて横断的に動かせば、零切断の逆像が両端の逆像の間の同境になる。和は互いに交わらない半空間に分けて代表すると、逆像の非交和になる。

証明を開く

1.lem-ptt-compact により代表 $f\colon S^N\to T^r$ がとれる。$f^{-1}(D_2)$ は $S^N$ の閉集合で $\infty$ を含まないので、$\mathbb R^N$ のコンパクト集合である。lem-ptt-transverse を $X=\mathbb R^N$、$O=A=\emptyset$ で当てると、補題の 2 によりホモトピーはコンパクト集合の外で $\kappa_{u(s),1}\circ f$ なので、$\infty$ を $\infty$ に送って $S^N\times[0,1]$ 上の基点付きホモトピーに延びる。その終わりの写像が求める代表である。

2.$g_0$、$g_1$ を同じ元の横断的な代表とする。lem-ptt-compact の 3 と、横断性が段を上げても保たれることから、ある $T^r$ の中の基点付きホモトピー $H\colon S^N\times[0,1]\to T^r$ で $g_0$ と $g_1$ をつなぐものがあるとしてよい。滑らかな $\varphi\colon\mathbb R\to[0,1]$ を $t\le\tfrac13$ で $0$、$t\ge\tfrac23$ で $1$ にとり、$X:=\mathbb R^N\times\mathbb R$ 上で $f(y,t):=H(y,\varphi(t))$、$O:=\mathbb R^N\times\bigl((-\infty,\tfrac13)\cup(\tfrac23,\infty)\bigr)$、$A:=\mathbb R^N\times\bigl((-\infty,\tfrac14]\cup[\tfrac34,\infty)\bigr)$ とおく。$O$ の上で $f$ は $g_0$ または $g_1$ と射影の合成なので横断的である。$f^{-1}(D_2)\setminus O$ は $\{(y,t)\mid\tfrac13\le t\le\tfrac23,\ H(y,\varphi(t))\in D_2\}$ に含まれ、$H^{-1}(D_2)$ は $\{\infty\}\times[0,1]$ と交わらないコンパクト集合なので、これは有界閉集合でありコンパクトである。lem-ptt-transverse の $F_1$ について、$V:=F_1^{-1}(Z^r)$ は $\mathbb R^N\times\mathbb R$ の $(n+1)$ 次元の部分多様体で、補題の 3 と $\kappa_1$ が零切断の逆像を変えないことから、$t<\tfrac14$ では $M_{g_0}\times(-\infty,\tfrac14)$ に、$t>\tfrac34$ では $M_{g_1}\times(\tfrac34,\infty)$ に一致する。$H$ は $\{\infty\}\times[0,1]$ を $\infty$ に送るので、$|y|$ が大きい点では $H(y,t)\notin D_1$ であり、補題の 2 により補題の $C$ の外の $|y|$ が大きい点で $F_1=\infty$ となる。よって $W:=V\cap(\mathbb R^N\times[0,1])$ は有界閉集合でコンパクトであり、$\partial W=M_{g_0}\times\{0\}\sqcup M_{g_1}\times\{1\}$ の境界付き多様体である(境界の近くでは $M_{g_i}$ と区間の積である)。したがって $[M_{g_0}]=[M_{g_1}]$ である。

3.$\tau(s):=\tan\pi(s-\tfrac12)$ とし、$s\mapsto(\tau(s_1),\dots,\tau(s_N))$ で $I^N/\partial I^N$ と $(\mathbb R^N)^+$ を同一視すると、ホモトピー群 の定義「ホモトピー群の演算($n\geq1$)」の和 $[g_1]+[g_2]$ は、$y_1<0$ で $g_1\circ\psi_-$、$y_1>0$ で $g_2\circ\psi_+$、$y_1=0$ と $\infty$ で $\infty$ となる写像 $g$ で代表される。ここで $\psi_-$ は開半空間 $\{y_1<0\}$ で第 1 座標を $\tau(2\tau^{-1}(y_1))$ に替える写像、$\psi_+$ は $\{y_1>0\}$ で $\tau(2\tau^{-1}(y_1)-1)$ に替える写像で、どちらも $\mathbb R^N$ の上への微分同相写像である。$g_1$、$g_2$ が横断的なら $g$ も横断的で、$M_g=\psi_-^{-1}(M_{g_1})\sqcup\psi_+^{-1}(M_{g_2})$ は $M_{g_1}\sqcup M_{g_2}$ と微分同相である。よって $\beta([g_1]+[g_2])=\beta([g_1])+\beta([g_2])$ である。$\square$

Pontryagin–Thom 構成

Pontryagin–Thom 構成

$M\subset\mathbb R^N$ を $n$ 次元のコンパクトな部分多様体(境界なし)、$\nu_x:=(T_xM)^\perp$ を法空間、$\nu M$ を法束とし、$\varepsilon_M>0$ を、$\theta(x,v):=x+v$ が長さ $\varepsilon_M$ 未満の法ベクトルの全体から $M$ の $\varepsilon_M$ 近傍 $M_{\varepsilon_M}$ への微分同相写像となる定数とする(管状近傍定理 の系「コンパクトな部分多様体の ε 近傍」)。

  1. 各 $x\in M$ に単射な線形写像 $A_x\colon\nu_x\to\mathbb R^r$ を与え、$(x,v)\mapsto A_xv$ が $\nu M$ 上で滑らかなものを、$\nu M$ の 単射族 という。$L_A(x):=A_x(\nu_x)\in\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$、$m_A:=\min\{|A_xv|\mid(x,v)\in\nu M,\ |v|=1\}$ とおく($M=\emptyset$ なら $m_A:=\infty$)。
  2. $0< R< m_A\varepsilon_M$ について、基点付き写像 $c_{A,R}\colon S^N\to T^r$ を
    $$ c_{A,R}(x+v):=\bigl(L_A(x),\ \lambda_R(A_xv)\bigr)\quad\bigl((x,v)\in\nu M,\ |A_xv|< R\bigr),\qquad\lambda_R(w):=\frac{w}{1-|w|^2/R^2} $$
    とし、それ以外の点を $\infty$ に送る写像と定める。これを Pontryagin–Thom 構成(潰し写像)という。
  3. $r=N$ で $A_x$ が包含 $\nu_x\subset\mathbb R^N$ のとき、$L_A(x)=\nu_x$ は法空間をとる Gauss 写像であり、このときの $c_{A,R}$ を $c_M$ と書く。
潰し写像の性質

def-ptt-collapse の $c_{A,R}$ は連続で横断的であり、$M_{c_{A,R}}=M$ である。とくに $\beta([c_M])=[M]$ である。

要点:管の中のコンパクト集合の外では値が $\infty$ なので連続であり、零切断の近くでは法方向の微分が $A_x$ になる。

証明を開く

$|A_xv|< R$ なら $|v|\le|A_xv|/m_A< R/m_A<\varepsilon_M$ なので、$x+v$ から $(x,v)$ はただ一通りに定まり、$c_{A,R}$ は矛盾なく定まる。$L_A$ は滑らかである。実際、$\nu M$ は滑らかなベクトル束なので(管状近傍定理 の命題「法束の局所表示」)局所的に滑らかな基底 $e_1,\dots,e_q$ がとれ、$A_xe_i$ を並べた $r\times q$ 行列 $P(x)$ は階数 $q$ で、$L_A(x)=P(P^{\mathsf T}P)^{-1}P^{\mathsf T}$ である。$M_{\varepsilon_M}$ の上では $c_{A,R}=\kappa_R\circ\Lambda\circ\theta^{-1}$($\Lambda(x,v):=(L_A(x),A_xv)$、$\kappa_R$ は lem-ptt-cutoff)なので連続である。$K:=\theta(\{|v|\le R/m_A\})$ はコンパクトで $M_{\varepsilon_M}$ に含まれ、$c_{A,R}$ は $S^N\setminus K$ の上で $\infty$ である。2 つの開集合 $M_{\varepsilon_M}$、$S^N\setminus K$ は $S^N$ を覆うので、$c_{A,R}$ は連続である。$c_{A,R}^{-1}(E^r)=\theta(\{|A_xv|< R\})$ の上で $c_{A,R}$ は滑らかで、零切断の逆像は $v=0$、すなわち $M$ である。$x\in M$ で $v\mapsto\lambda_R(A_xv)$ の $0$ での微分は $A_x$ で、その像は $L_A(x)$ なので、lem-ptt-model の 2 により横断的である。最後の主張は prop-ptt-beta の 2 の定義による。$\square$

横断的な写像の線形化

$g\colon S^N\to T^r$ を横断的な基点付き写像とし、$M:=M_g$ とおき、$U:=g^{-1}(E^r)$ の上で $g=(L_g,v_g)$ と書く。$x\in M$ について $A_x:=d(v_g)_x|_{\nu_x}\colon\nu_x\to\mathbb R^r$ とおく。このとき $A$ は $\nu M$ の単射族で $L_A=L_g|_M$ であり、ある $0< R_0< m_A\varepsilon_M$ について、$0< R< R_0$ なら $g$ は $T^r$ の中で $c_{A,R}$ に基点付きホモトピックである。

要点:管の中で $g$ を法方向に拡大した差分商 $v_g(x+sv)/s$ は、$s\to0$ で法方向の微分 $A_xv$ に一様に近づく。

証明を開く

$A$ の性質:$M$ の上で $v_g=0$ なので、$d(v_g)_x$ は $T_xM$ の上で $0$ である。lem-ptt-model の 2 により横断性は $d(v_g)_x(\mathbb R^N)=L_g(x)$ を意味するので、$A_x\colon\nu_x\to L_g(x)$ は全射で、次元がともに $q$ なので同型である。$(x,v)\mapsto d(v_g)_x(v)$ は滑らかなので、$A$ は単射族で $L_A=L_g|_M$ である。$M=\emptyset$ なら $c_{A,R}$ は定値写像 $\infty$ で、以下の議論はそのまま通る。

半径:$U$ は開集合で $M$ はコンパクトなので、$0<\varepsilon\le\tfrac12\varepsilon_M$ を、閉じた管 $N_\varepsilon:=\theta(\{|v|\le\varepsilon\})$ が $U$ に含まれるようにとれる。$d(v_g)$ はコンパクト集合 $N_\varepsilon$ の上で一様連続なので、$\varepsilon$ を小さくして、$u\in\nu_x$、$|u|\le\varepsilon$ なら作用素ノルムで $\|d(v_g)_{x+u}-d(v_g)_x\|\le m_A/2$ となるようにできる。$S^N\setminus\theta(\{|v|<\varepsilon\})$ はコンパクトで、その $g$ による像は $Z^r$ と交わらず、$\bigcap_jD_{1/j}=Z^r$ なので、ある $R_1>0$ についてこの像は $D_{R_1}$ と交わらない。$R_0:=\min(R_1,\ m_A\varepsilon/2)$ とし、$0< R< R_0$ とする。

差分商:$0< s\le1$、$|v|\le\varepsilon$ について $w_s(x,v):=v_g(x+sv)/s$、$L_s(x,v):=L_g(x+sv)$ とし、$w_0(x,v):=A_xv$、$L_0(x,v):=L_g(x)$ とおく。$v_g(x)=0$ なので、微積分の基本定理により $$w_s(x,v)-A_xv=\int_0^1\bigl(d(v_g)_{x+\tau sv}-d(v_g)_x\bigr)(v)\,d\tau$$ であり、$|w_s(x,v)-A_xv|\le\tfrac{m_A}2|v|$、したがって $|w_s(x,v)|\ge\tfrac{m_A}2|v|$ である。同じ式と一様連続性により $s\to0$ で $w_s\to w_0$ は一様に収束するので、$(s,x,v)\mapsto(L_s,w_s)\in E^r$ は $[0,1]\times\{|v|\le\varepsilon\}$ 上で連続である($w_s\in L_s$ は定義から、$s=0$ では $A_xv\in L_g(x)$ から従う)。

ホモトピー:$|v|\le\varepsilon$ で $\Gamma_s(x+v):=\kappa_R(L_s(x,v),w_s(x,v))$、$\theta(\{|v|<\varepsilon\})$ の外で $\Gamma_s:=\infty$ とおく。$|v|=\varepsilon$ では $|w_s|\ge m_A\varepsilon/2>R$ なので 2 つの定めは $\infty$ で一致し、$\Gamma$ は 2 つの閉集合の上の連続写像を貼り合わせたものとして $[0,1]\times S^N$ 上で連続で、基点を保つ。管の外では $g(y)\notin D_R$ なので $\kappa_R(g(y))=\infty$ であり、$\Gamma_1=\kappa_R\circ g$ である。$|A_xv|< R$ なら $|v|<\varepsilon$ なので、$\Gamma_0(x+v)=\kappa_R(L_g(x),A_xv)$ は $c_{A,R}$ に等しい。lem-ptt-cutoff の $\kappa_{u,R}\circ g$ が $g$ と $\kappa_R\circ g$ をつなぐので、$g\simeq\kappa_R\circ g=\Gamma_1\simeq\Gamma_0=c_{A,R}$ である。$\square$

境界を指定した埋め込み

$M\subset\mathbb R^N$ を $n$ 次元のコンパクトな部分多様体、$N\ge2n+3$ とし、$W$ を、どの連結成分も空でない境界をもち $\partial W$ が $M$ と微分同相なコンパクトな境界付き多様体とする。このとき $\mathbb R^N\times\mathbb R$(最後の座標を $t$ と書く)の $(n+1)$ 次元のコンパクトな部分多様体 $\widehat W$(境界なし)で、次をみたすものがある。

  1. $\widehat W\cap\bigl(\mathbb R^N\times(-\tfrac14,\tfrac14)\bigr)=M\times(-\tfrac14,\tfrac14)$ であり、$\widehat W$ のそれ以外の点は $|t|\ge\tfrac14$ をみたす。
  2. $W':=\widehat W\cap(\mathbb R^N\times[0,\infty))$ は $W$ と微分同相な境界付き多様体で、$\partial W'=M\times\{0\}$ である。

要点:$W$ の二重化を、境界の両側のカラーの座標 $(x,t)$ がそのまま現れる形で大きな Euclid 空間に埋め込み、余分な座標を、カラーの部分を動かさない一般の方向への射影で 1 つずつ消す。

証明を開く

微分同相 $\partial W\cong M$ で $\partial W$ と $M$ を同一視する。カラー近傍定理 の定理「カラー近傍定理」のカラーをとって 多様体の二重化 の定理「二重化の滑らかな構造」を当てると、$D:=D(W)$ は $(n+1)$ 次元の閉多様体で、$\Theta\colon M\times(-1,1)\to D$ は開集合への微分同相写像、$i_0\colon W\to D$ は閉集合 $i_0(W)$ への微分同相写像であり、$\Theta(x,t)$ は $t\ge0$ なら $i_0(W)$、$t\le0$ なら $i_1(W)$ に属する。

関数の準備:滑らかな $\chi\colon(-1,1)\to\mathbb R$ を、単調増加で、$|t|\le\tfrac12$ で $\chi(t)=t$、$|t|\ge\tfrac34$ で $\chi(t)=\pm1$($t$ の符号)となるようにとる。$D$ 上の関数 $T$ を、$\Theta(x,t)$ で $\chi(t)$、$\Theta$ の像の外の $i_0(W)$ の点で $1$、$i_1(W)$ の点で $-1$ と定める。偶関数 $\varphi_1,\varphi_2\colon(-1,1)\to[0,1]$ を、$\varphi_1$ は $|t|\le\tfrac14$ で $0$、$|t|\ge\tfrac38$ で $1$、$\varphi_2$ は $|t|\le\tfrac12$ で $1$、$|t|\ge\tfrac34$ で $0$ となる滑らかな関数とし、$\Theta(x,t)$ で $\lambda:=\varphi_1(t)$、$\Psi_0:=\varphi_2(t)x\in\mathbb R^N$、$\Theta$ の像の外で $\lambda:=1$、$\Psi_0:=0$ とおく。$\Theta(M\times(-1,1))$ と $D\setminus\Theta(M\times[-\tfrac34,\tfrac34])$ は $D$ を覆う開集合で、重なりでは 2 つの定めが一致するので、$T,\lambda,\Psi_0$ は滑らかである。Whitneyの埋め込み定理 の定理「コンパクトな多様体の埋め込み」により、埋め込み $j\colon D\to\mathbb R^{2n+3}$ をとる。

最初の埋め込み:$\Phi:=(\Psi_0,T,\lambda j)\colon D\to\mathbb R^N\times\mathbb R\times\mathbb R^{2n+3}$ は単射なはめ込みである。実際、$T(p)=T(p')=s$ とする。$|s|<\tfrac12$ なら $p=\Theta(x,s)$、$p'=\Theta(x',s)$ と書け、$\Psi_0$ の値から $x=x'$ である。$|s|\ge\tfrac12$ なら $p,p'$ は $\Theta(M\times(-\tfrac12,\tfrac12))$ の外にあって $\lambda=1$ なので、$j(p)=j(p')$ から $p=p'$ である。$\Theta(M\times(-\tfrac12,\tfrac12))$ の上では $(\Psi_0,T)=(x,t)$ がはめ込みであり、開集合 $D\setminus\Theta(M\times[-\tfrac38,\tfrac38])$ の上では $\lambda=1$ なので $\lambda j=j$ がはめ込みである。$\Theta(M\times(-\tfrac14,\tfrac14))$ の上では $\Phi(\Theta(x,t))=(x,t,0)$ である。

射影で次元を下げる:$\Phi=(\Psi,T,z)\colon D\to\mathbb R^N\times\mathbb R\times\mathbb R^k$($k\ge1$)が単射なはめ込みで、$\Theta(M\times(-\tfrac14,\tfrac14))$ の上で $(x,t,0)$ に等しいとする。$p\ne p'$、$a\in\mathbb R$ について $\sigma(p,p',a):=a\bigl(\Psi(p)-\Psi(p'),\ z(p)-z(p')\bigr)$、$\xi\in TD$ について $\sigma'(\xi):=(d\Psi(\xi),dz(\xi))$ とおく。これらは次元 $2n+3$、$2n+2$ の多様体から $\mathbb R^{N+k}$($N+k\ge2n+4$)への滑らかな写像なので、局所座標で Sardの定理 の補題「次元の低い空間からの写像の像」を当てて可算個の和をとると、像は測度零である。像はスカラー倍で閉じているので、最後の成分が $1$ で $\sigma$、$\sigma'$ の像に入らないベクトル $e=(e_y,e',1)\in\mathbb R^N\times\mathbb R^{k-1}\times\mathbb R$ がある。線形写像 $\pi_e(y,s,z',z_k):=(y-z_ke_y,\ s,\ z'-z_ke')$ の核は $(e_y,0,e',1)$ で張られる。$p\ne p'$ で $\pi_e\Phi(p)=\pi_e\Phi(p')$ なら、$\Phi(p)-\Phi(p')$ は核の $0$ でない元なので $T(p)=T(p')$ であり、ある $a\ne0$ について $e=\sigma(p,p',a)$ となって矛盾する。同様に $\xi\ne0$ で $d(\pi_e\Phi)(\xi)=0$ なら $e$ は $\sigma'$ の像に入る。よって $\pi_e\circ\Phi$ は単射なはめ込みで、$T$ 成分を変えず、$z=0$ の点では $\Phi$ と同じ値をとる。これを $2n+3$ 回くり返すと、単射なはめ込み $\Phi'=(\Psi',T)\colon D\to\mathbb R^N\times\mathbb R$ で、$\Theta(M\times(-\tfrac14,\tfrac14))$ の上で $(x,t)$ に等しいものが得られる。

結論:$D$ はコンパクトなので、はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の命題「コンパクトな多様体からの単射はめ込みは閉埋め込み」と定理「埋め込みの像は部分多様体」により、$\widehat W:=\Phi'(D)$ はコンパクトな部分多様体である。$|T|<\tfrac14$ となるのは $\Theta(M\times(-\tfrac14,\tfrac14))$ の点だけなので 1 が成り立つ。$T\ge0$ となるのは $i_0(W)$ の点だけなので、$W'=\Phi'(i_0(W))$ は $W$ と微分同相で、その境界は $\Phi'(\Theta(M\times\{0\}))=M\times\{0\}$ である。$\square$

主定理

十分大きい余次元での Pontryagin–Thom の同型

$n\ge0$、$q\ge n+3$、$N:=n+q$ とする。prop-ptt-beta の写像
$$ \beta\colon\pi_N(TO(q))\to\mathfrak N_n,\qquad[g]\mapsto[g^{-1}(Z^r)]\quad(g\colon S^N\to T^r\ \text{は横断的}) $$
は群の同型である。逆写像は、$n$ 次元の閉多様体 $M$ の類を、$M$ を $\mathbb R^N$ のコンパクトな部分多様体として埋め込んだときの $c_M$(def-ptt-collapse)の類に送る。この類は埋め込みと $R$ の選び方によらない。

全射と単射

全射. $M$ を $n$ 次元の閉多様体とする(空でもよい)。Whitneyの埋め込み定理 の定理「コンパクトな多様体の埋め込み」により $M$ は $\mathbb R^{2n+1}$ に埋め込める。$q\ge n+1$ より $2n+1\le N$ なので、$M$ を $\mathbb R^N$ のコンパクトな部分多様体とみてよい(微分同相な閉多様体は同境である)。prop-ptt-collapse により $\beta([c_M])=[M]$ である。
単射. prop-ptt-beta の 3 により、$\beta(x)=0$ なら $x=0$ であることを示せばよい。$x$ を横断的な $g\colon S^N\to T^r$ で代表し、$M:=M_g$ とし、lem-ptt-normal-form の単射族 $A$ と $R_0$ をとる。$[M]=0$ なので、コンパクトな境界付き多様体 $W$ で $\partial W$ が $M$ と微分同相なものがある。境界のない連結成分は除いてよい。$M=\emptyset$ なら $W=\emptyset$、$\widehat W=\emptyset$ とし、そうでなければ $q\ge n+3$ より $N\ge2n+3$ なので、lem-ptt-neat の $\widehat W\subset\mathbb R^N\times\mathbb R$ と $W'$ をとる。$|t|<\tfrac14$ の点 $(x,t)\in\widehat W$ での $\widehat W$ の法空間は $\nu_x\times\{0\}$ である。
法方向のデータを $W'$ へ延ばす. $r':=r+N+1$ とし、$\iota_1\colon\mathbb R^r\to\mathbb R^{r'}$、$\iota_2\colon\mathbb R^{N+1}\to\mathbb R^{r'}$ をそれぞれ前の $r$ 個、後ろの $N+1$ 個の座標への包含とする。$x\in M$、$0\le s\le1$ について
$$ A^s_x(v):=(1-s)\,\iota_1A_xv+s\,\iota_2(v,0)\qquad(v\in\nu_x) $$
は単射である(2 つの項は直交し、係数の少なくとも一方は $0$ でない)。滑らかな $\varphi\colon\mathbb R\to[0,1]$ を $t\le\tfrac1{12}$ で $0$、$t\ge\tfrac16$ で $1$ にとる。$p\in W'$ について、$\widehat W$ の法空間 $\nu_p$ からの線形写像 $B_p$ を、$p=(x,t)$、$t<\tfrac14$ なら $A^{\varphi(t)}_x$、$t>\tfrac16$ なら $\iota_2|_{\nu_p}$ と定める(重なりでは一致する)。$B$ は連続で、各 $B_p$ は単射であり、$t=0$ では $B=\iota_1A$ である。$L_B(p):=B_p(\nu_p)$、$m_B:=\min\{|B_pv|\mid p\in W',\ v\in\nu_p,\ |v|=1\}>0$ とおく。
潰し写像を $W'$ の管へ延ばす. $\widehat W$ はコンパクトなので、管状近傍定理 の系「コンパクトな部分多様体の ε 近傍」により、$0<\varepsilon\le\tfrac18$ を、$(p,v)\mapsto p+v$ が $\widehat W$ の長さ $\varepsilon$ 未満の法ベクトルの全体の上で単射になるようにとれる。$p\in W'$ なら $p+v$ の $t$ 座標は $0$ 以上であり($|t|<\tfrac14$ では $v$ の $t$ 成分が $0$、それ以外では $t\ge\tfrac14>\varepsilon$)、$p\in\widehat W\setminus W'$ なら負である。$0< R<\min(R_0,\ m_B\varepsilon)$ をとり、
$$ G(p+v):=\bigl(L_B(p),\ \lambda_R(B_pv)\bigr)\quad(p\in W',\ |B_pv|< R),\qquad G:=\infty\quad(\text{それ以外の点}) $$
で $G\colon\mathbb R^N\times[0,\infty)\to T^{r'}$ を定める。$|B_pv|< R$ なら $|v|< R/m_B<\varepsilon$ なので $G$ は矛盾なく定まり、prop-ptt-collapse の証明と同じく、コンパクト集合 $\{p+v\mid p\in W',\ |v|\le R/m_B\}$ の外で $\infty$ となるので連続である。$t=0$ では $B=\iota_1A$ なので、$G(y,0)$ は $c_{A,R}(y)$ を $T^r\subset T^{r'}$ の点とみたものに等しい。$G$ が $\infty$ でない値をとる点の $t$ 座標は有界なので、
$$ h_s(y):=G\Bigl(y,\ \frac{s}{1-s}\Bigr)\quad(0\le s<1),\qquad h_1:=\infty $$
は $c_{A,R}$ から定値写像 $\infty$ への $T^{r'}$ の中の基点付きホモトピーである。lem-ptt-normal-form により $g\simeq c_{A,R}$ なので、$\pi_N(TO(q))$ で $x=[g]=0$ である。
逆写像. $\beta([c_M])=[M]$ と $\beta$ の単射性により $[c_M]=\beta^{-1}([M])$ なので、$[c_M]$ は埋め込みと $R$ の選び方によらない。$\square$

全射の証明は $q\ge n+1$ で通り、$q\ge n+3$ は lem-ptt-neat だけで使う($q$ が小さい場合は ex-ptt-counterexamples の 1)。

安定化と次数の低いホモトピー群

この節では $q$ を動かすので $E^r_q$、$Z^r_q$、$T^r_q$ と書き、$s\colon\mathbb R^r\to\mathbb R^{r+1}$、$(x_1,\dots,x_r)\mapsto(0,x_1,\dots,x_r)$、$e_1:=(1,0,\dots,0)\in\mathbb R^{r+1}$ とする。基点付き写像 $g\colon S^N\to T^r_q$ に対し、$\Sigma g\colon S^{N+1}=(\mathbb R\times\mathbb R^N)^+\to T^{r+1}_{q+1}$ を、$g(y)=(L,v)$ なら $\Sigma g(t,y):=\bigl(\mathbb Re_1\oplus s(L),\ te_1+s(v)\bigr)$、それ以外の点では $\infty$ と定める。これは $g$ の懸垂と構造写像 $\Sigma TO(q)\to TO(q+1)$(May99 Chapter 25 §1、p. 220)の合成にあたる。

構造写像との両立

$n\ge0$、$q\ge1$、$N=n+q$ とし、$\pi_{n+q}(TO(q))$ の上の prop-ptt-beta の写像を $\beta_q$ と書く。

  1. $\Sigma g$ は連続で、$g\mapsto\Sigma g$ は写像 $\Sigma\colon\pi_N(TO(q))\to\pi_{N+1}(TO(q+1))$ を定める。
  2. $g$ が横断的なら $\Sigma g$ も横断的で、$M_{\Sigma g}=\{0\}\times M_g$ である。したがって $\beta_{q+1}\circ\Sigma=\beta_q$ である。
  3. $q\ge n+3$ なら $\Sigma=\beta_{q+1}^{-1}\circ\beta_q$ は群の同型である。したがって $\Sigma$ による余極限 $\pi_n(MO):=\operatorname{colim}_q\pi_{n+q}(TO(q))$ は $\mathfrak N_n$ と同型である。

要点:$\Sigma g$ の零切断の逆像は $t=0$ の切り口で、懸垂の方向の微分が新しいファイバーの方向 $e_1$ を埋める。

証明を開く

1:$|te_1+s(v)|^2=t^2+|v|^2$ であり、$\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^r)$ はコンパクトなので、$g(y)\to\infty$ は $|v|\to\infty$ を意味する。$T^{r+1}_{q+1}$ の $\infty$ の近傍はノルムが有界なコンパクト集合の補集合なので、$(t,y)$ が $\infty$ に近づくときや $g(y)$ が $\infty$ に近づくとき $\Sigma g$ は $\infty$ に近づき、$\Sigma g$ は連続である。基点付きホモトピー $(H_u)$ には $(\Sigma H_u)$ が対応し、段を上げる包含 $(L,v)\mapsto(L\oplus0,(v,0))$ と $\Sigma$ の式は可換である。lem-ptt-compact の 3 により $\Sigma$ は $\pi_N(TO(q))$ の上で定まる。

2:$y\in U_g$、$t\in\mathbb R$ で $\Sigma g$ は滑らかで、零切断の逆像は $t=0$ かつ $v(y)=0$ の点、すなわち $\{0\}\times M_g$ である。その点で第 2 成分の微分は $(\dot t,\dot y)\mapsto\dot te_1+s(dv_y(\dot y))$ で、lem-ptt-model の 2 により $dv_y$ の像は $L$ なので、その像は $\mathbb Re_1\oplus s(L)$ 全体である。よって $\Sigma g$ は横断的で、$\beta_{q+1}(\Sigma[g])=[\{0\}\times M_g]=[M_g]=\beta_q([g])$ である。

3:$q\ge n+3$ なら $q+1\ge n+3$ でもあるので、thm-ptt-main により $\beta_q$ と $\beta_{q+1}$ は群の同型であり、2 により $\Sigma=\beta_{q+1}^{-1}\circ\beta_q$ は群の同型である。列の余極限は共終な部分列 $q\ge n+3$ だけで決まるので、$\mathfrak N_n$ と同型である。$\square$

スペクトラム(ホモトピー論) の言葉では、$TO(q)$ と構造写像の列は Thomスペクトル $MO$ をなし、$\pi_n(MO)$ はその $n$ 次のホモトピー群である(May99 Chapter 25 §1、p. 220)。

次数の低いホモトピー群

$1\le k< q$ なら $\pi_k(TO(q))=0$ である。

要点:$S^k$ からの横断的な写像の零切断の逆像は余次元 $q>k$ なので空であり、零切断を避ける写像は無限遠へ押し出せる。

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$\pi_k(TO(q))$ の元を、prop-ptt-beta の 1 の証明と同じく($X=\mathbb R^k$ で lem-ptt-transverse を当てて)横断的な $g\colon S^k\to T^r$ で代表する。$g(x)\in Z^r$ となる点では、lem-ptt-model の 2 により $dv_x\colon\mathbb R^k\to L$ が $q$ 次元の $L$ の上への全射でなければならないが、$k< q$ なのでそのような点はない。よって $g(S^k)$ は $Z^r$ と交わらないコンパクト集合で、$\bigcap_jD_{1/j}=Z^r$ より、ある $a>0$ について $D_a$ とも交わらない。$0\le u<1$ で $\rho_u(L,v):=(L,v/(1-u))$、$\rho_u(\infty):=\infty$ とし、$\rho_1$ を定値写像 $\infty$ とする。$g(S^k)$ の点の $\rho_u$ による値は、有限ならノルムが $a/(1-u)$ 以上なので、$u\mapsto\rho_u\circ g$ は $g$ から定値写像への基点付きホモトピーである。$\square$

例

低い次元の同境群
  1. $n=0$:$\mathfrak N_0\cong\mathbb Z/2$(同境 の命題「0 次元の同境群」)なので、$q\ge3$ なら $\pi_q(TO(q))\cong\mathbb Z/2$ であり、1 点 $M=\{0\}\subset\mathbb R^q$ の $c_M\colon S^q\to T^q=S^q$ の類が生成する。
  2. $n=1$:$\mathfrak N_1=0$(同記事の命題「0 次元の同境群」の後の段落)なので、$q\ge4$ なら $\pi_{q+1}(TO(q))=0$ である。
  3. $n=2$:$\mathbb{RP}^2$ は境界にならない(同記事の例「実射影空間」)ので、$q\ge5$ なら、$\mathbb{RP}^2\subset\mathbb R^5\subset\mathbb R^{q+2}$ の $c_{\mathbb{RP}^2}$ の類は $0$ でない。$\mathfrak N_2\cong\mathbb Z/2$ なので(非有向同境環 の例「小さい次元の基底」)、この類が $\pi_{q+2}(TO(q))\cong\mathbb Z/2$ を生成する。

反例と注意

外す条件反例成り立たなくなること
$q\ge n+3$$n=2$、$q=1$$\beta$ は全射
代表が零切断に横断的$q=r$、$h(y)=\lvert y\rvert^2e_1$零切断の逆像の同境類がホモトピー類だけで決まる
反例の確かめ
  1. $q=1$ では $\pi_3(TO(1))=0$ だが $[\mathbb{RP}^2]\ne0$ なので、$\beta\colon\pi_3(TO(1))\to\mathfrak N_2$ は全射でない。
  2. $h$ の零切断の逆像は 1 点だが、$h$ は横断的でなく、逆像が空の横断的な写像とホモトピックである。
    確かめを開く

    1:$q=1$ では $\mathrm{Gr}_1(\mathbb R^r)=\mathbb{RP}^{r-1}$ で、$E^r$ はトートロジー直線束の全空間なので、Thom空間 の定理「トートロジー直線束の Thom 空間」により $T^r\cong\mathbb{RP}^r$ である。$r\ge4$ なら、被覆 $S^r\to\mathbb{RP}^r$ による同型(ホモトピー群 の命題「被覆空間と$n$-単純性」)と $\pi_3(S^r)=0$(同記事の例「球面の次元未満の群 $\pi_k(S^n)=0\ (1\leq k< n)$」)から $\pi_3(T^r)=0$ である。lem-ptt-compact の 3 により $\pi_3(TO(1))$ のどの元も $r\ge4$ の $T^r$ で代表されるので、$\pi_3(TO(1))=0$ である。一方 $[\mathbb{RP}^2]\ne0$ なので、prop-ptt-beta の $\beta\colon\pi_3(TO(1))\to\mathfrak N_2$ は全射でない。満たす性質は「$n\ge0$、$q\ge1$」で、満たさない性質は「$q\ge n+3$」であり、破る含意は「$\beta$ は全射」である。全射の証明が使うのは $M$ の $\mathbb R^N$ への埋め込みだけなので、とくに $\mathbb{RP}^2$ は $\mathbb R^3$ に埋め込めないこともわかる。

    2:$q=r$ では $\mathrm{Gr}_q(\mathbb R^q)$ は 1 点で $T^q=S^q$ である。$h(y):=|y|^2e_1$($y\in\mathbb R^q$、$e_1=(1,0,\dots,0)$)、$h(\infty):=\infty$ は基点付きの連続写像で、$\mathbb R^q$ の上で滑らかであり、$h^{-1}(Z^q)=\{0\}$ は 1 点である。しかし $h$ の $0$ での微分は $0$ なので、$h$ は横断的でない。$h_s(y):=(|y|^2+s)e_1$ は $h$ から $h_1$ への基点付きホモトピーで、$h_1$ は零切断と交わらないので横断的で $M_{h_1}=\emptyset$ である。よって $\beta([h])=0$ だが、$[h^{-1}(Z^q)]=[\mathrm{pt}]\ne0$ である。満たす性質は「滑らか」で、満たさない性質は「零切断に横断的」であり、破る含意は「零切断の逆像の同境類がホモトピー類だけで決まる」である。

補足

  • 余次元の範囲:同型は $q\ge n+2$ でも成り立つ(Hir76 Chapter 7 Theorem 2.3、p. 174。全射を $q>n$、単射を $q>n+1$ で証明している)。MS74 §18 は向き付けられた場合の準同型(Theorem 18.6、pp. 211–212)と全射性(Lemma 18.7、p. 215)を証明し、同型を $q>n+1$ で述べている(Theorem of Thom、p. 215)。
  • 向き付けられた同境:向き付けられた普遍束の Thom 空間 $MSO(q)$ のホモトピー群 $\pi_{n+q}(MSO(q))$ は、$q>n+1$ なら向き付けられた同境群 $\Omega_n$ と同型になる(MS74 p. 215。この記事では証明しない)。
  • 環の構造と Thom の計算:直積は Thom 空間のスマッシュ積に対応し、$\mathfrak N_*\cong\pi_*(MO)$ は次数付き環の同型になる(May99 Chapter 25 §2、pp. 222–223。この記事では証明しない)。$H^*(MO;\mathbb F_2)$ が Steenrod 代数上自由であることは Thomスペクトル、$\mathfrak N_*$ が $\mathbb Z/2$ 上の多項式環であること(Thom)は 非有向同境環 で証明する。
  • 枠付きの場合:$TO(q)$ を $S^q$ に替えると、境界のないコンパクトな多様体 $X$ から $S^q$ への写像のホモトピー類は、$X$ の余次元 $q$ の枠付き部分多様体の枠付き同境類に対応する(Pontryagin。Mil97 §7 Theorem B・C、pp. 43–44)。

関連項目

参考文献

[1]
John W. Milnor, James D. Stasheff, Characteristic Classes, Annals of Mathematics Studies 76, Princeton University Press, 1974, §18 Theorem 18.6(pp. 211–212、横断性による準同型)、Theorem of Thom(p. 215)、Lemma 18.7(p. 215、全射性)
[2]
J. P. May, A Concise Course in Algebraic Topology, Chicago Lectures in Mathematics, University of Chicago Press, 1999, Chapter 25 §1(p. 219、Thom の定理:$\mathfrak N_*$ は多項式環;p. 220、$TO(q)$ と前スペクトル、$\mathfrak N_n\cong\pi_{n+q}(TO(q))$)、§2(pp. 220–222、証明の概略と環の構造)、§3–§4(pp. 223–228、$H_*(TO)$ の計算と多項式環の主張)、§6(pp. 230–232、多項式環の決定の証明の完了)
[3]
Morris W. Hirsch, Differential Topology, Graduate Texts in Mathematics 33, Springer, 1976, Ch. 7 §2 Theorem 2.3(p. 174、Thom 準同型の全射性と単射性。証明 pp. 174–175)
[4]
John W. Milnor, Topology from the Differentiable Viewpoint, 1965 年版の再版, Princeton University Press, 1997, §7 Theorem B(p. 43)・Theorem C(p. 44、Pontryagin 構成と枠付き同境)

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