媒介変数表示と曲線の長さ(parametric curves and arc length)とは、平面の曲線を $P(t)=(x(t),y(t))$($a\le t\le b$)と表し、長さを定めて計算する主題である。長さは、曲線上の点を順に結んだ折れ線の長さの上限と定める。$x'(t)$、$y'(t)$ が閉区間で連続($C^1$ 級)なら長さは有限で $\int_a^b\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}dt$ に等しく、途中までの長さの導関数が速さになることをはさみうちで示して証明できる。長さは媒介変数を 1 対 1 に替えても変わらず、速さが $0$ にならない曲線では、弧長パラメータ(途中までの長さ)で速さが $1$ になる。サイクロイドの 1 弧の長さは $8$ である。同じ円を 2 周すれば長さは 2 倍になり、$C^1$ 級でない連続曲線の長さは無限大にもなりうる。
前提知識: 微分係数と導関数の定義(高校数学), 定積分, 微分積分学の基本定理, 三角関数, 平均値の定理, はさみうちの原理
高校では、数学 C で、曲線を $x=f(t)$、$y=g(t)$ のように第 3 の変数 $t$(媒介変数)を使って表すこと(媒介変数表示)を習う。$t$ を時刻と思えば、点 $(x,y)$ が平面上を動く様子を表している。そして数学 III の積分の応用で、こう表した曲線の長さは
$$
L=\int_a^b\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}\,dt
$$
で計算する、と習う。
$x=\cos t$、$y=\sin t$($0\le t\le2\pi$)は単位円を反時計回りに 1 周する。$\frac{dx}{dt}=-\sin t$、$\frac{dy}{dt}=\cos t$ なので、根号の中は $\sin^2t+\cos^2t=1$ で
$$
L=\int_0^{2\pi}1\,dt=2\pi
$$
となり、円周の長さ $2\pi$ と一致する。
半径 $1$ の円が $x$ 軸の上を滑らずに転がるとき、円周上の 1 点が描く曲線をサイクロイドという。はじめ点は原点にあり、円は右へ転がるとする。円が角 $t$ だけ回ったとき、次のようになる(図 1)。
半径 1 の円が x 軸上を転がるとき、円周上の点(橙)が描くサイクロイドを見る図。円が角 t 回ると(中心から接点への破線の半径と、点への半径の間の角が t)、原点から接点 (t,0) までの長さと、円周上で接点から点までの弧(どちらも緑)が等しく t になる
$\frac{dx}{dt}\ne0$ となる $t$ の近くでは、$t$ を $x$ の関数と見ることができ、連鎖律(高校数学)により $\frac{dy}{dx}=\dfrac{dy/dt}{dx/dt}$ である($\frac{dx}{dt}$ が連続なら、その $t$ の近くで $\frac{dx}{dt}$ の符号は変わらず、$x$ は $t$ の狭義単調な関数になるので、逆関数 $t=t(x)$ がある。逆関数が微分可能であることは本記事では証明しない)。サイクロイドでは、$0< t<2\pi$ で
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{\sin t}{1-\cos t}=\frac{2\sin\frac t2\cos\frac t2}{2\sin^2\frac t2}=\frac{\cos\frac t2}{\sin\frac t2}
$$
である。$t=\frac\pi2$ では傾き $1$、$t=\pi$(弧の頂上)では傾き $0$ である。$t\to+0$ では傾きが限りなく大きくなり、曲線は $x$ 軸に垂直に立ち上がる(図 1 の左端)。
公式は便利だが、次の疑問が残る。
| 高校での計算 | 大学での言葉 | 本記事の箇所 |
|---|---|---|
| 媒介変数表示 $x=f(t)$、$y=g(t)$ | $C^1$ 級の曲線、速度ベクトル、速さ | def-pcal-curve |
| 曲線の長さ(公式で計算) | 内接する折れ線の長さの上限 | def-pcal-length |
| 長さの公式 | 速さの積分(定理) | thm-pcal-length-formula |
| $y=f(x)$ のグラフの長さ | 媒介変数 $t=x$ の特別な場合 | ex-pcal-graph |
| 表し方を変えても長さは同じ | 媒介変数の取り替えで長さは不変 | prop-pcal-reparametrization |
| 「動いた道のり」 | 弧長パラメータ | def-pcal-arclength-parameter |
以下、平面の点 $P=(x,y)$ の原点からの距離を $|P|=\sqrt{x^2+y^2}$、2 点 $P$、$Q$ の距離を $|P-Q|$ と書く。
閉区間 $[a,b]$($a< b$)で定義された 2 つの関数 $x(t)$、$y(t)$ の組 $P(t)=\bigl(x(t),y(t)\bigr)$ を、媒介変数表示された曲線という。$x(t)$、$y(t)$ が $[a,b]$ で微分可能で(端点では片側の微分係数)、導関数 $x'(t)$、$y'(t)$ が $[a,b]$ で連続なとき、曲線は $C^1$ 級であるという。このとき $P'(t)=\bigl(x'(t),y'(t)\bigr)$ を速度ベクトル、その大きさ $|P'(t)|=\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}$ を速さという。
曲線は「点の集まり(像)」ではなく、「$t$ に点を対応させる規則」として定義する。同じ円でも、1 周するものと 2 周するものは別の曲線である(ex-pcal-twice)。
曲線 $P\colon[a,b]\to\mathbb{R}^2$ と、区間の分け方(分割)$\Delta\colon a=t_0< t_1<\cdots< t_n=b$ に対し、曲線上の点 $P(t_0),P(t_1),\ldots,P(t_n)$ を順に結んだ折れ線の長さを
$$
\ell(\Delta)=\sum_{i=1}^n|P(t_i)-P(t_{i-1})|
$$
とする。すべての分割 $\Delta$ についての $\ell(\Delta)$ の上限を、曲線の長さといい $L(P)$ と書く。$\ell(\Delta)$ がいくらでも大きくなるときは $L(P)=\infty$ とする。区間 $[c,d]\subset[a,b]$ に制限した曲線の長さを $L(c,d)$ と書き、$L(c,c)=0$ とする。
2 点を結ぶ最短の線は線分なので、内接する折れ線は曲線より短いはずである。点を増やすほど曲線に沿うので、「内接折れ線の長さのいちばん大きいところ」を長さと定めるのである。
円に内接する正多角形の周で円周率を挟む方法は 正多角形で円周率を挟む で扱う。
例 2 のサイクロイド $P(t)=(t-\sin t,1-\cos t)$($0\le t\le2\pi$)で、分割を選んで折れ線の長さを計算してみる。
単位円 $P(t)=(\cos t,\sin t)$($0\le t\le2\pi$)を $n$ 等分し、$t_i=\frac{2\pi i}n$ とする。隣り合う 2 点は中心角 $\frac{2\pi}n$ の弦の両端なので、距離は $2\sin\frac\pi n$ で、$\ell(\Delta)=2n\sin\frac\pi n$ である。
| $n$ | $4$ | $6$ | $12$ | $96$ | $1000$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $2n\sin\frac\pi n$ | $5.65685$ | $6$ | $6.21166$ | $6.28206$ | $6.28317$ |
$2\pi=6.28319$ に下から近づく。$n=96$ は、Archimedes が円周率の評価に用いた正 96 角形である。
単位円に内接する正 4・8・16 角形。点を増やすと折れ線の長さが円周 2π に下から近づくことを見る図
分割 $\Delta$ に分点を付け加えた分割を $\Delta'$ とすると、$\ell(\Delta)\le\ell(\Delta')$ である。
分点を 1 つずつ加えればよいので、$t_{i-1}< u< t_i$ となる $u$ を 1 つ加える場合を示す。変わるのは $|P(t_i)-P(t_{i-1})|$ の項だけで、これが $|P(u)-P(t_{i-1})|+|P(t_i)-P(u)|$ に置き換わる。三角不等式(三角形の 2 辺の和は他の 1 辺以上)により
$$
|P(t_i)-P(t_{i-1})|\le|P(u)-P(t_{i-1})|+|P(t_i)-P(u)|
$$
なので、$\ell$ は減らない。$\square$
$a\le c\le b$ ならば $L(a,b)=L(a,c)+L(c,b)$ である(値が $\infty$ の場合も含めて成り立つ)。
$c=a$ なら $L(a,a)=0$ なので両辺は等しく、$c=b$ でも同様である。以下 $a< c< b$ とする。
段 1($\ge$)。$[a,c]$ の分割 $\Delta_1$ と $[c,b]$ の分割 $\Delta_2$ をつなぐと $[a,b]$ の分割になり、その折れ線の長さは $\ell(\Delta_1)+\ell(\Delta_2)$ である。これは $L(a,b)$ 以下である。$\Delta_1$、$\Delta_2$ は自由に選べるので、それぞれ上限をとって $L(a,c)+L(c,b)\le L(a,b)$ を得る。
段 2($\le$)。$[a,b]$ の任意の分割 $\Delta$ に分点 $c$ を加えた分割を $\Delta'$ とする。lem-pcal-refine により $\ell(\Delta)\le\ell(\Delta')$ である。$\Delta'$ は $c$ で $[a,c]$ の分割と $[c,b]$ の分割に切れるので、$\ell(\Delta')\le L(a,c)+L(c,b)$ である。$\Delta$ は任意なので、上限をとって $L(a,b)\le L(a,c)+L(c,b)$ を得る。$\square$
証明には、積分についての次の事実を使う。
$C^1$ 級の曲線 $P$ と $a\le c< d\le b$ について
$$
|P(d)-P(c)|\le\int_c^d|P'(t)|\,dt
$$
が成り立つ。
方針:弦の長さを、弦の向きの成分の積分として書き、その成分を速さで押さえる。
段 1。$P(d)=P(c)$ なら左辺は $0$ で、右辺は $0$ 以上なので成り立つ。以下 $P(d)\ne P(c)$ とし、$\ell=|P(d)-P(c)|>0$、$u=(u_1,u_2)=\frac1\ell\bigl(P(d)-P(c)\bigr)$ とおく。$u$ は長さ $1$ のベクトルで、$u_1^2+u_2^2=1$ である。
段 2(弦の長さを積分で書く)。$\ell=\frac{\ell^2}\ell$ であり、$\ell^2=\bigl(x(d)-x(c)\bigr)^2+\bigl(y(d)-y(c)\bigr)^2$ なので
$$
\ell=u_1\bigl(x(d)-x(c)\bigr)+u_2\bigl(y(d)-y(c)\bigr)=\int_c^d\bigl(u_1x'(t)+u_2y'(t)\bigr)\,dt
$$
である。最後の等号は、rem-pcal-premises の 2 を $x$ と $y$ に使った。
段 3(被積分関数を速さで押さえる)。実数 $p$、$q$ について
$$
(u_1^2+u_2^2)(p^2+q^2)-(u_1p+u_2q)^2=(u_1q-u_2p)^2\ge0
$$
(左辺を展開すると $u_1^2q^2+u_2^2p^2-2u_1u_2pq$ になる)なので、$u_1^2+u_2^2=1$ から $(u_1p+u_2q)^2\le p^2+q^2$ である。$u_1p+u_2q$ は負のこともあるので、絶対値を通して
$$
u_1p+u_2q\le|u_1p+u_2q|=\sqrt{(u_1p+u_2q)^2}\le\sqrt{p^2+q^2}
$$
とする(最後の $\le$ は、$0\le A\le B$ なら $\sqrt A\le\sqrt B$ であることによる)。$p=x'(t)$、$q=y'(t)$ とすると $u_1x'(t)+u_2y'(t)\le|P'(t)|$ となる。
段 4。段 3 の不等式を積分し(rem-pcal-premises の 1)、段 2 と合わせると $\ell\le\int_c^d|P'(t)|\,dt$ である。$\square$
$C^1$ 級の曲線 $P$ と $a\le c< d\le b$ について、$L(c,d)\le\int_c^d|P'(t)|\,dt$ である。とくに $L(c,d)$ は有限である。
理由。$[c,d]$ の任意の分割 $c=t_0< t_1<\cdots< t_n=d$ をとる。各小区間 $[t_{i-1},t_i]$ に lem-pcal-chord を使うと $|P(t_i)-P(t_{i-1})|\le\int_{t_{i-1}}^{t_i}|P'(t)|\,dt$ である。これを $i=1,\ldots,n$ について足し、積分の区間についての加法性(rem-pcal-premises の 1)を使うと
$$
\ell(\Delta)=\sum_{i=1}^n|P(t_i)-P(t_{i-1})|\le\sum_{i=1}^n\int_{t_{i-1}}^{t_i}|P'(t)|\,dt=\int_c^d|P'(t)|\,dt
$$
となる。右辺は分割によらない数なので、左辺の上限 $L(c,d)$ も右辺以下である。
次の定理は、実は $[a,b]$ 全体で $L(P)=\int_a^b|P'(t)|\,dt$ と等号が成り立つことを示す。
$P(t)=\bigl(x(t),y(t)\bigr)$($a\le t\le b$)が $C^1$ 級の曲線ならば
$$
L(P)=\int_a^b|P'(t)|\,dt=\int_a^b\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}\,dt
$$
である。
方針:「$t$ までの長さ」$s(t)=L(a,t)$ を $t$ の関数と見て、その導関数が速さ $|P'(t)|$ に等しいことを、はさみうちで示す。
段 1(2 つの関数)。$a\le t\le b$ で $s(t)=L(a,t)$、$F(t)=\int_a^t|P'(u)|\,du$ とおく。$s(a)=F(a)=0$ である。$|P'|$ は連続なので、rem-pcal-premises の 2 により $F$ は $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で $F'(t)=|P'(t)|$ である。
段 2(小さな区間での挟み込み)。$a\le t< t+h\le b$ とする。lem-pcal-additive により $L(a,t+h)=L(a,t)+L(t,t+h)$、すなわち $s(t+h)=s(t)+L(t,t+h)$ である。rem-pcal-finite により $s(t)=L(a,t)$ は有限($t=a$ なら $0$)なので、両辺から $s(t)$ を引いてよく、$s(t+h)-s(t)=L(t,t+h)$ となる。分点のない分割(両端だけ)を考えると $|P(t+h)-P(t)|\le L(t,t+h)$ であり、rem-pcal-finite を $[t,t+h]$ に使うと $L(t,t+h)\le\int_t^{t+h}|P'(u)|\,du$ である。最後の積分は、積分の区間についての加法性(rem-pcal-premises の 1)により $\int_a^{t+h}-\int_a^t=F(t+h)-F(t)$ に等しい($t=a$ なら $F(a)=0$ なのでそのまま)。まとめると
$$
|P(t+h)-P(t)|\le s(t+h)-s(t)\le F(t+h)-F(t)
$$
である。
段 3($s$ の連続性)。$a\le t\le b$ とする。$h>0$($t+h\le b$)なら、段 2 から $0\le s(t+h)-s(t)\le F(t+h)-F(t)$ である。$k>0$($t-k\ge a$)なら、段 2 を区間 $[t-k,t]$ に使って $0\le s(t)-s(t-k)\le F(t)-F(t-k)$ である。$F$ は連続なので、$h\to+0$、$k\to+0$ でどちらの右辺も $0$ に近づき、はさみうちにより $s(t+h)\to s(t)$、$s(t-k)\to s(t)$ である。よって $s$ は $[a,b]$ で連続である。
段 4(右側からの微分係数)。$a< t< b$ とし、段 2 の不等式を $h>0$ で割ると
$$
\frac{|P(t+h)-P(t)|}h\le\frac{s(t+h)-s(t)}h\le\frac{F(t+h)-F(t)}h
$$
である。左端は $\sqrt{\left(\frac{x(t+h)-x(t)}h\right)^2+\left(\frac{y(t+h)-y(t)}h\right)^2}$ で、$h\to+0$ のとき根号の中の 2 つの差分商はそれぞれ $x'(t)$、$y'(t)$ に近づくので、左端は $|P'(t)|$ に近づく。右端は $F'(t)=|P'(t)|$ に近づく。はさみうちの原理により、真ん中も $|P'(t)|$ に近づく。
段 5(左側からの微分係数)。$k>0$ を小さくとり、段 2 を区間 $[t-k,t]$ に使って $k$ で割ると、同じく
$$
\frac{|P(t)-P(t-k)|}k\le\frac{s(t)-s(t-k)}k\le\frac{F(t)-F(t-k)}k
$$
で、$k\to+0$ のとき両端は $|P'(t)|$ に近づく。段 4 と合わせて、$s$ は $t$ で微分可能で $s'(t)=|P'(t)|$ である。
段 6(まとめ)。$s-F$ は $[a,b]$ で連続で、$(a,b)$ で導関数が $|P'(t)|-|P'(t)|=0$ である。rem-pcal-premises の 3 により $s-F$ は $(a,b)$ で定数で、連続性から $[a,b]$ でも同じ定数であり、$t=a$ での値 $0$ に等しい。よって $s(b)=F(b)$、すなわち $L(P)=\int_a^b|P'(t)|\,dt$ である。$\square$
長さの公式に現れる根号を含む積分の計算法は 根号を含む関数の積分 で扱う。
証明の核心は段 4 である。短い時間 $h$ のあいだの道のり $s(t+h)-s(t)$ は、弦の長さ(まっすぐ進んだ場合の道のり)以上で、速さの積分以下である。証明の途中では、道のりと速さの積分が等しいことはまだ分からず、大小しか使えない。しかし両端は、どちらも $h$ で割ると同じ速さ $|P'(t)|$ に近づくので、真ん中の「道のり ÷ 時間」も速さに近づく。「道のり ÷ 時間 → 速さ」を正確に述べたのがこの定理である。
$y=f(x)$($a\le x\le b$、$f'$ は連続)のグラフは、$t=x$ を媒介変数として $P(t)=\bigl(t,f(t)\bigr)$ と表せる。$P'(t)=\bigl(1,f'(t)\bigr)$ なので、thm-pcal-length-formula から $L=\int_a^b\sqrt{1+f'(x)^2}\,dx$ である。
$x=\cos^3t$、$y=\sin^3t$($0\le t\le2\pi$)は、4 つのとがった点をもつアステロイドを描く。$x'=-3\cos^2t\sin t$、$y'=3\sin^2t\cos t$ なので
$$
x'^2+y'^2=9\sin^2t\cos^2t(\cos^2t+\sin^2t)=9\sin^2t\cos^2t
$$
で、速さは $3|\sin t\cos t|=\frac32|\sin2t|$ である。$0\le t\le\frac\pi2$ では $\sin2t\ge0$ で、$\int_0^{\pi/2}\frac32\sin2t\,dt=\frac32\Bigl[-\frac{\cos2t}2\Bigr]_0^{\pi/2}=\frac32$ である。対称性から 4 倍して $L=6$ となる。
とがった点 $t=0,\frac\pi2,\pi,\frac{3\pi}2$ では速さが $0$ になる。サイクロイドの $t=0,2\pi$ も同じである。速さが $0$ になる点があっても、$C^1$ 級である限り thm-pcal-length-formula はそのまま使える。
同じ道筋を、速く通っても遅く通っても、道のりは同じはずである。def-pcal-length はこれを自然に保証する。
$P\colon[a,b]\to\mathbb{R}^2$ を曲線とし、$\varphi\colon[c,d]\to[a,b]$ を、$\varphi(c)=a$、$\varphi(d)=b$ を満たす連続な狭義増加関数で、$[c,d]$ から $[a,b]$ の上への 1 対 1 の対応であるものとする。$Q(u)=P\bigl(\varphi(u)\bigr)$ とおくと、$L(Q)=L(P)$ である。
$[c,d]$ の分割 $c=u_0< u_1<\cdots< u_n=d$ に対して、$t_i=\varphi(u_i)$ とおくと、$\varphi$ が狭義増加で両端を両端に移すので、$a=t_0< t_1<\cdots< t_n=b$ は $[a,b]$ の分割である。逆に $[a,b]$ の分割 $(t_i)$ に対して、$\varphi$ が 1 対 1 かつ上への対応なので $\varphi(u_i)=t_i$ となる $u_i$ がただ 1 つずつ決まり、$(u_i)$ は $[c,d]$ の分割になる。対応する 2 つの分割では $Q(u_i)=P(t_i)$ なので、内接折れ線はまったく同じで、長さも等しい。したがって、$\ell$ の値全体の集まりは $P$ と $Q$ で一致し、その上限も等しい。$\square$
$Q(u)=(\cos2u,\sin2u)$($0\le u\le\pi$)は、例 1 の単位円を 2 倍の速さで 1 周する。$\varphi(u)=2u$ で、prop-pcal-reparametrization により長さは $2\pi$ のはずである。公式でも、$Q'(u)=(-2\sin2u,2\cos2u)$、$|Q'(u)|=2$ なので $\int_0^\pi2\,du=2\pi$ となる。
$R(u)=(\cos u^2,\sin u^2)$($0\le u\le\sqrt{2\pi}$)のように、だんだん速くなる表し方でも、$|R'(u)|=2u$ で $\int_0^{\sqrt{2\pi}}2u\,du=\bigl[u^2\bigr]_0^{\sqrt{2\pi}}=2\pi$ である。
途中までの長さそのものを媒介変数に使うと、速さがつねに $1$ の表し方が得られる(rem-pcal-unit-speed)。
$P\colon[a,b]\to\mathbb{R}^2$ を $C^1$ 級の曲線とし、すべての $t$ で $|P'(t)|>0$ とする。$s(t)=\int_a^t|P'(u)|\,du$ は $[a,b]$ から $[0,L]$($L=L(P)$)への狭義増加で上への連続関数になる(理由は rem-pcal-arclength-well-defined)。その逆関数を $t=\tau(s)$ として、$\widetilde P(s)=P\bigl(\tau(s)\bigr)$($0\le s\le L$)を、$P$ の弧長パラメータによる表示という。
段 1(連続)。$|P'|$ は連続なので、rem-pcal-premises の 2 により $s$ は $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能で $s'(t)=|P'(t)|$ である。
段 2(狭義増加)。$a\le t_1< t_2\le b$ とする。$s$ は $[t_1,t_2]$ で連続、$(t_1,t_2)$ で微分可能なので、平均値の定理により $s(t_2)-s(t_1)=s'(c)(t_2-t_1)$ となる $c$($t_1< c< t_2$)がある。仮定から $s'(c)=|P'(c)|>0$ なので $s(t_2)>s(t_1)$ である。
段 3(上への関数)。$s(a)=0$ であり、thm-pcal-length-formula により $s(b)=\int_a^b|P'(u)|\,du=L$ である。$s$ は連続なので、中間値の定理(本記事では証明しない)により、$0$ と $L$ の間のどの値も $s$ の値としてとられる。段 2 と合わせて、$s$ は $[a,b]$ から $[0,L]$ への 1 対 1 で上への対応であり、逆関数 $\tau$ がある。$\tau$ も連続な狭義増加関数である(連続な狭義増加関数の逆関数が連続であることは、本記事では証明しない)。
なお thm-pcal-length-formula を $[a,t]$ に使うと $s(t)=L(a,t)$ なので、$s(t)$ は「出発点から $t$ までの道のり」である。$\tau$ は $\tau(0)=a$、$\tau(L)=b$ を満たす連続な狭義増加の 1 対 1 対応なので、prop-pcal-reparametrization により $\widetilde P$ の長さも $L$ である。
def-pcal-arclength-parameter の $\widetilde P$ が、$0< s< L$ で速さ $1$ で動くことを確かめる(端点 $s=0$、$L$ での片側の微分係数についても同じ結論が成り立つが、本記事では確かめない)。
段 1。rem-pcal-arclength-well-defined の段 1 により $s'(t)=|P'(t)|>0$ である。
段 2(逆関数の微分)。$\tau$ は $s$ の逆関数なので、$\tau'(s)=\dfrac1{s'(\tau(s))}=\dfrac1{|P'(\tau(s))|}$ である(逆関数が微分可能であることは本記事では証明しない)。
段 3(連鎖律)。$\widetilde P(s)=\bigl(x(\tau(s)),y(\tau(s))\bigr)$ の各成分を連鎖律(高校数学)で微分すると
$$
\widetilde P'(s)=\bigl(x'(\tau(s))\,\tau'(s),\ y'(\tau(s))\,\tau'(s)\bigr)=P'(\tau(s))\,\tau'(s)
$$
である。
段 4。$\tau'(s)>0$ なので、段 2・段 3 から
$$
|\widetilde P'(s)|=|P'(\tau(s))|\,\tau'(s)=\frac{|P'(\tau(s))|}{|P'(\tau(s))|}=1
$$
である。
| 外した仮定・条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 曲線が像の上を 1 回だけ通る | 曲線の長さ=像の図形としての長さ | ex-pcal-twice |
| 近似に使う折れ線の頂点が曲線上にある | 曲線に近づく折れ線の長さは、曲線の長さに近づく | ex-pcal-staircase |
| $C^1$ 級(閉区間で導関数が連続) | 長さは有限で、公式で計算できる | ex-pcal-infinite |
$P(t)=(\cos t,\sin t)$($0\le t\le4\pi$)の像は単位円そのものだが、$L(P)=\int_0^{4\pi}1\,dt=4\pi$ である。def-pcal-length は曲線(点の動き)の長さであり、同じ場所を 2 回通れば 2 回分数える。曲線の長さは、像(点の集まり)だけでは決まらない。prop-pcal-reparametrization が、区間どうしを 1 対 1 に対応させる取り替えだけを扱うのはこのためである。
正方形 $[0,1]\times[0,1]$ の対角線(長さ $\sqrt2=1.414\ldots$)を、横に $\frac1n$ 進んで縦に $\frac1n$ 上がる $n$ 段の階段で近似する。横の部分の合計は $1$、縦の部分の合計も $1$ なので、階段の長さは段数によらず $2$ である。$n$ を大きくすると、階段のどの点も対角線から $\frac1n$ 以内に来るのに、長さは $2$ のままで $\sqrt2$ に近づかない。
def-pcal-length が「頂点が曲線の上にある折れ線」だけを使うのはこのためである。階段の角のうち $(\frac kn,\frac kn)$ は対角線の上にあるが、$(\frac kn,\frac{k-1}n)$($k=1,\ldots,n$)の $n$ 個は対角線の上にない(図 3 で、右に進みきった角が破線から離れている)。よって階段は対角線の内接折れ線ではない。
対角線(破線)を 2・4・16 段の階段で近似しても、階段の長さは 2 のままであることを見る図
$f(x)=x\cos\frac\pi x$($0< x\le1$)、$f(0)=0$ とし、グラフ $P(t)=\bigl(t,f(t)\bigr)$($0\le t\le1$)を考える。$|f(x)|\le x$ なので $f$ は $x=0$ でも連続である。
段 1。$k=1,2,\ldots$ に対し $f\left(\frac1k\right)=\frac1k\cos k\pi=\frac{(-1)^k}k$ である。隣り合う $k$ と $k+1$ で符号が逆なので、2 点 $P\left(\frac1{k+1}\right)$、$P\left(\frac1k\right)$ の高さの差は $\frac1k+\frac1{k+1}\ge\frac1k$ である。2 点の距離は高さの差以上なので、距離も $\frac1k$ 以上である。
段 2。$n\ge2$ として、分割 $0<\frac1n<\frac1{n-1}<\cdots<\frac12<1$ をとると、段 1 から
$$
\ell(\Delta)\ge\sum_{k=1}^{n-1}\frac1k
$$
である。
段 3(右辺はいくらでも大きくなる)。$m\ge1$ について $\sum_{k=1}^m\frac1k\ge\log(m+1)$ を示す($\log$ は自然対数)。$k\le x\le k+1$ では $\frac1x\le\frac1k$ なので、rem-pcal-premises の 1 により
$$
\frac1k=\int_k^{k+1}\frac{dx}k\ge\int_k^{k+1}\frac{dx}x=\log(k+1)-\log k
$$
である(最後の等号は、$(\log x)'=\frac1x$ と rem-pcal-premises の 2 による)。これを $k=1,\ldots,m$ について足すと、右辺は隣どうしが打ち消し合って
$$
\sum_{k=1}^m\frac1k\ge\bigl(\log2-\log1\bigr)+\bigl(\log3-\log2\bigr)+\cdots+\bigl(\log(m+1)-\log m\bigr)=\log(m+1)
$$
となる($\log1=0$)。たとえば $m=3$ では $1+\frac12+\frac13=1.833\ldots\ge\log4=1.386\ldots$ である。$\log(m+1)$ は $m$ とともにいくらでも大きくなる(どんな $M$ に対しても $m+1\ge e^M$ なら $\log(m+1)\ge M$)。段 2 で $m=n-1$ とすると、$\ell(\Delta)\ge\log n$ はいくらでも大きくなる。よって $L(P)=\infty$ である(この和は 調和級数 の部分和である)。
この曲線は $0< x\le1$ では微分可能だが、$f'(x)=\cos\frac\pi x+\frac\pi x\sin\frac\pi x$ は $x\to+0$ で有界でなく、閉区間 $[0,1]$ で連続な導関数をもたない。$C^1$ 級という仮定を外すと、長さは有限とは限らない。
y = x cos(π/x) のグラフ(灰色)と、点 (1/k, (−1)ᵏ/k) を結ぶ内接折れ線(青)。原点に近づくほど細かく振動し、折れ線の長さがいくらでも大きくなることを見る図
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