Seiberg–Witten方程式(Seiberg–Witten equations)とは、向き付けられた閉 Riemann 4 次元多様体の $\mathrm{spin}^c$ 構造について、行列式直線束の $\mathrm{U}(1)$ 接続 $A$ と正のスピノル $\varphi$ の組に課す、Dirac 方程式 $D_A\varphi=0$ と、曲率の自己双対部分をスピノルの 2 次式で決める方程式の連立方程式である。解のスピノルの大きさはスカラー曲率の最小値だけで抑えられ、モジュライ空間はコンパクトになる。スカラー曲率が非負の計量では解のスピノルは 0 になる。解から作る Seiberg–Witten 不変量は、Thom 予想などの 4 次元多様体の問題を解いた。
前提知識: Clifford代数, Spin群, 接続, Hodgeのスター作用素, Donaldson理論
Seiberg–Witten 方程式(Seiberg–Witten equations)は、向き付けられた Riemann $4$ 次元多様体の上で、spin${}^c$ 構造の行列式直線束の $\mathrm{U}(1)$ 接続 $A$ と、正のスピノル $\varphi$ の組についての、次の連立方程式である。
$$
D_A\varphi=0,\qquad \tfrac12\rho(F_A^+)=(\varphi\varphi^*)_0 .
$$
第 1 式は Dirac 方程式、第 2 式は曲率の自己双対部分をスピノルの $2$ 次式で決める方程式である。1994 年の終わりに Seiberg と Witten が理論物理の考察から導入し、そのモジュライ空間は反自己双対接続(Donaldson理論)の場合よりはるかに扱いやすく、無条件にコンパクトである。そこから作る Seiberg–Witten 不変量によって、Thom 予想などの $4$ 次元多様体の問題が解かれた(Don96 pp. 45, 50, 66–67)。
この記事では、$4$ 次元の Clifford 乗法の性質を確かめたうえで方程式を定義し、解についての基本の 4 つの事実を完全に証明する。ゲージ変換で方程式が保たれ、安定化群が非自明な解はスピノルが $0$ のものに限ること、解のスピノルの大きさがスカラー曲率だけで上から抑えられること(コンパクト性の出発点)、スカラー曲率が非負の計量では解のスピノルが $0$ になること(Witten の消滅定理の核心)、解があれば行列式直線束の Chern 数が上から抑えられることである。不変量の定義と応用は所在を示して述べる。
$X$ を向き付けられた連結な閉 $4$ 次元 Riemann 多様体とし、$s$ をスカラー曲率とする。$e_1,\dots,e_4$ は向きと両立する局所正規直交枠、$e^1,\dots,e^4$ はその双対枠を表す。Hermite 内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$ は第 $1$ 変数について線形とする。
$X$ の spin${}^c$ 構造とは、階数 $2$ の Hermite ベクトル束 $W^\pm$ の直和 $W=W^+\oplus W^-$ と、実線形な束の写像 $\rho\colon TX\to\operatorname{End}W$(Clifford 乗法)の組で、各接ベクトル $v$ について
1 から、$v\perp w$ なら $\rho(v)\rho(w)=-\rho(w)\rho(v)$ である($\rho(v+w)^2=-\lvert v+w\rvert^2$ を展開する)。3 の $\Omega$ は向きと両立する正規直交枠のとり方によらない(枠の取り替えは行列式 $1$ の直交行列で、$\Omega$ はその行列式倍になる)。向き付けられた $4$ 次元 Riemann 多様体はつねに spin${}^c$ 構造をもち(Hirzebruch–Hopf)、$c_1(L)$ を $2$ を法として還元すると第 $2$ Stiefel–Whitney 類 $w_2(X)$ になる。spin${}^c$ 構造の同型類の全体には、直線束とのテンソル積で $H^2(X;\mathbb{Z})$ が自由かつ推移的に作用する(Nic26 pp. 674–676 の Proposition 12.2.36・12.2.38・Example 12.2.39(c)、Don96 p. 46)。$X$ が spin(Spin群)なら、spin 構造から作るスピノル束で $L$ が自明な spin${}^c$ 構造が得られる。
$2$ 次形式には、$\rho(e^i\wedge e^j):=\rho(e_i)\rho(e_j)$($i\ne j$)を線形に延ばして作用させ、複素数値の形式には複素線形に延ばす(Nic26 p. 656 の $c(F)$ の定義)。$4$ 次元の $2$ 次形式は自己双対な $\Lambda^+$ と反自己双対な $\Lambda^-$ の直和に分かれる(Donaldson理論 の補題「$2$ 次形式の分解」)。$\Lambda^+$ は $e^1\wedge e^2+e^3\wedge e^4$、$e^1\wedge e^3-e^2\wedge e^4$、$e^1\wedge e^4+e^2\wedge e^3$ で張られ、$\Lambda^-$ は第 $2$ 項の符号を逆にした 3 つで張られる。
要点:$W^+$ の上では $\Omega=-1$ なので $\rho(e_3)\rho(e_4)=\rho(e_1)\rho(e_2)$ となり、自己双対形式の成分が倍に、反自己双対形式の成分が打ち消し合う。
$c_i:=\rho(e_i)$ と書き、$c_{ij}:=c_ic_j$ とおく。直交するものは反可換で $c_i^2=-1$ である。
$W^+$ の上の関係。$c_{12}c_{34}=\Omega$ で、$c_{12}^2=c_1c_2c_1c_2=-c_1^2c_2^2=-1$ なので $c_{12}^{-1}=-c_{12}$ である。よって $c_{34}=c_{12}^{-1}\Omega=-c_{12}\Omega$ で、$W^+$($\Omega=-1$。$c_{ij}$ は $W^\pm$ をそれぞれ保つ)の上では $c_{34}=c_{12}$ である。同様に $c_{13}c_{24}=c_1c_3c_2c_4=-c_1c_2c_3c_4=-\Omega$、$c_{14}c_{23}=c_1c_4c_2c_3=c_1c_2c_3c_4=\Omega$ から、$W^+$ の上で $c_{24}=-c_{13}$、$c_{23}=c_{14}$ である。
1.$\Lambda^-$ の基底は $\rho$ で $c_{12}-c_{34}$、$c_{13}+c_{24}$、$c_{14}-c_{23}$ に移り、上の関係からどれも $W^+$ の上で $0$ である。
2.$\Lambda^+$ の基底 $\eta_1,\eta_2,\eta_3$ は $W^+$ の上で $2c_{12}$、$2c_{13}$、$2c_{14}$ に移る。$c_{1j}$($j=2,3,4$)は歪 Hermite($(c_1c_j)^*=c_j^*c_1^*=c_jc_1=-c_1c_j$)で $c_{1j}^2=-1$ である。$j\ne k$ なら $c_{1j}c_{1k}=c_1c_jc_1c_k=-c_1^2c_jc_k=c_jc_k$ で、同様に $c_{1k}c_{1j}=c_kc_j=-c_jc_k$ なので、$c_{1j}$ と $c_{1k}$ は反可換である。よって $c_{1k}c_{1j}c_{1k}^{-1}=-c_{1j}$ で、跡は共役で変わらないから $\operatorname{tr}c_{1j}=0$ である。さらに上の関係から、$W^+$ の上で $c_{12}c_{13}=c_{23}=c_{14}$、$c_{12}c_{14}=c_{24}=-c_{13}$、$c_{13}c_{14}=c_{34}=c_{12}$ なので、$j\ne k$ の積 $c_{1j}c_{1k}$ は残りの $c_{1m}$ の $\pm1$ 倍で、跡は $0$ である。$\eta=\sum a_k\eta_k$($a_k$ は実数、$\lvert\eta\rvert^2=2\sum a_k^2$)なら $T:=\rho(\eta)|_{W^+}=2\sum a_kc_{1,k+1}$ は歪 Hermite で跡が $0$ であり、$\operatorname{tr}(T^*T)=-\operatorname{tr}(T^2)=-4\sum_{k,l}a_ka_l\operatorname{tr}(c_{1,k+1}c_{1,l+1})=-4\sum_ka_k^2\operatorname{tr}(-1)=8\sum_ka_k^2=4\lvert\eta\rvert^2$ である($W^+$ は階数 $2$ なので $\operatorname{tr}(-1)=-2$。$k\ne l$ の項は跡が $0$)。
3.2 により写像は単射で、どちらの空間も実 $3$ 次元なので同型である。$\rho$ を複素線形に延ばしているので、$i\eta$ は $i\rho(\eta)$ に移り、跡が $0$ の歪 Hermite な自己準同型の $i$ 倍は跡が $0$ の Hermite な自己準同型である。$\square$
$L$ のユニタリ接続 $A$ を $1$ つ与えると、Levi-Civita 接続と組み合わせて、$W^\pm$ を保ち Clifford 乗法と両立する $W$ の Hermite 接続 $\nabla_A$ がただ 1 つ定まる。$a$ を純虚数値の $1$ 次形式とすると、$A+a$ に対応する接続は $\nabla_{A+a}=\nabla_A+\frac12a$ である($\nabla_A$ は局所的に「スピノル束 $\otimes L^{1/2}$」の接続で、$L^{1/2}$ の接続形式は $A$ の接続形式の半分である。Nic26 pp. 678–680、(12.2.5))。$A$ の曲率 $F_A$ は純虚数値の閉 $2$ 次形式である。
$(\varphi\varphi^*)_0$ は跡が $0$ の Hermite な自己準同型なので、lem-sw-clifford の 3 により、第 2 式は純虚数値の自己双対形式 $F_A^+$ を $\varphi$ からただ 1 通りに決める方程式である。係数と符号の流儀は文献によって違う(たとえば Don96 p. 46 は第 2 式を $F_A^+=-\sigma(\varphi,\varphi)$ の形に書く)が、右辺の $2$ 次式の符号が下の thm-sw-estimate の計算に効くことはどの流儀でも同じである(Don96 p. 47)。この記事では上の規約で計算する。
$\varphi\varphi^*$ は $\varphi$ の方向に固有値 $\lvert\varphi\rvert^2$、その直交補空間に固有値 $0$ をもつので、$(\varphi\varphi^*)_0$ の固有値は $\pm\frac12\lvert\varphi\rvert^2$ である。したがって
$$
(\varphi\varphi^*)_0\,\varphi=\tfrac12\lvert\varphi\rvert^2\varphi,\qquad \operatorname{tr}\bigl((\varphi\varphi^*)_0^2\bigr)=\tfrac12\lvert\varphi\rvert^4\qquad(1)
$$
である。
計算の道具は次の Weitzenböck の公式(Lichnerowicz の公式)である。この記事では証明しない。
$$
D_A^2=\nabla_A^*\nabla_A+\frac s4+\frac12\rho(F_A)
$$
が成り立つ。ここで $\nabla_A^*\nabla_A=-\sum_i\bigl(\nabla_{A,e_i}\nabla_{A,e_i}-\nabla_{A,\nabla_{e_i}e_i}\bigr)$ である。
これは Nic26 Theorem 12.1.67(p. 656)と (12.2.6)(p. 680)による。正のスピノルに施すと、lem-sw-clifford の 1 により $\rho(F_A)$ を $\rho(F_A^+)$ に替えてよい。
要点:$u$ による共役で $\nabla_A$ は $\nabla_A-u^{-1}du$ に、$A$ は $A-2u^{-1}du$ に移り、$u^{-1}du$ は閉形式なので曲率は変わらない。
1. $u=e^{i\theta}$ と局所的に書くと $u^{-1}du=i\,d\theta$ で、$u^{-1}du$ は純虚数値の閉 $1$ 次形式である。$A':=A-2u^{-1}du$ とおくと、$\nabla_{A'}=\nabla_A-u^{-1}du$ である(def-sw-equations の前の段落の規則 $\nabla_{A+a}=\nabla_A+\frac12a$)。一方、切断 $\psi$ について $u\nabla_A(u^{-1}\psi)=\nabla_A\psi+u\,d(u^{-1})\psi=\nabla_A\psi-u^{-1}du\,\psi$ なので、$\nabla_{A'}=u\circ\nabla_A\circ u^{-1}$ である。$\rho(e_i)$ は複素スカラー $u$ と可換なので $D_{A'}=u\circ D_A\circ u^{-1}$ で、$D_{A'}(u\varphi)=uD_A\varphi=0$ である。曲率は $F_{A'}=F_A-2\,d(u^{-1}du)=F_A$ である。最後に $\lvert u\rvert=1$ なので $(u\varphi)(u\varphi)^*=\lvert u\rvert^2\varphi\varphi^*=\varphi\varphi^*$ で、第 2 式も保たれる。
2. $u\cdot(A,\varphi)=(A,\varphi)$ は $u^{-1}du=0$ かつ $u\varphi=\varphi$ と同じである。前者は $du=0$ と同じで、$X$ は連結なので $u$ は定数である。$\varphi(x)\ne0$ となる点があれば、そこで $u\varphi(x)=\varphi(x)$ から $u=1$ である。$\varphi\equiv0$ なら、どの定数 $u$ も第 2 の条件をみたす。$\square$
可約な解 $(A,0)$ は、第 2 式により $F_A^+=0$ をみたす $L$ の接続、すなわち $\mathrm{U}(1)$ の反自己双対接続にほかならない。安定化群が $\mathrm{U}(1)$ の可約な解では、モジュライ空間は多様体にならない。Seiberg–Witten 理論で可約な解が問題になるのはこのためである(Don96 p. 50)。
$(A,\varphi)$ を Seiberg–Witten 方程式の解とし、$s_-:=\max\bigl(0,-\min_Xs\bigr)$ とおく。このとき $X$ のすべての点で
$$
\lvert\varphi\rvert^2\le\frac{s_-}2
$$
である。
Laplace 作用素の公式。 関数 $f$ の Laplace 作用素を $\Delta f:=d^*df=-\sum_i\bigl(e_ie_if-(\nabla_{e_i}e_i)f\bigr)$ と書く。$\nabla_A$ は計量を保つので $e_i\lvert\varphi\rvert^2=2\operatorname{Re}\langle\nabla_{A,e_i}\varphi,\varphi\rangle$ で、もう一度微分すると
$$
e_ie_i\lvert\varphi\rvert^2=2\operatorname{Re}\langle\nabla_{A,e_i}\nabla_{A,e_i}\varphi,\varphi\rangle+2\lvert\nabla_{A,e_i}\varphi\rvert^2
$$
である。$(\nabla_{e_i}e_i)\lvert\varphi\rvert^2=2\operatorname{Re}\langle\nabla_{A,\nabla_{e_i}e_i}\varphi,\varphi\rangle$ と合わせて $i$ について足すと、thm-sw-weitzenbock の $\nabla_A^*\nabla_A$ の式により
$$
\tfrac12\Delta\lvert\varphi\rvert^2=\operatorname{Re}\langle\nabla_A^*\nabla_A\varphi,\varphi\rangle-\lvert\nabla_A\varphi\rvert^2\qquad(2)
$$
である。
方程式の代入。 $D_A\varphi=0$ なので $D_A^2\varphi=0$ で、thm-sw-weitzenbock と lem-sw-clifford の 1、第 2 式と (1) により
$$
\nabla_A^*\nabla_A\varphi=-\frac s4\varphi-\frac12\rho(F_A^+)\varphi=-\frac s4\varphi-(\varphi\varphi^*)_0\varphi=-\frac s4\varphi-\frac12\lvert\varphi\rvert^2\varphi
$$
である。これを (2) に入れると
$$
\tfrac12\Delta\lvert\varphi\rvert^2+\lvert\nabla_A\varphi\rvert^2=-\frac s4\lvert\varphi\rvert^2-\frac12\lvert\varphi\rvert^4\qquad(3)
$$
を得る。
最大点での評価。 $X$ はコンパクトなので、$\lvert\varphi\rvert^2$ はある点 $x_0$ で最大値をとる。$x_0$ を中心とする正規座標では、$x_0$ で計量は単位行列、その 1 階微分は $0$ なので $\Delta f(x_0)=-\sum_i\partial_i^2f(x_0)$ であり、最大点では $\partial_i^2f(x_0)\le0$ なので $\Delta\lvert\varphi\rvert^2(x_0)\ge0$ である。よって (3) の左辺は $x_0$ で $0$ 以上で、
$$
0\le-\frac{s(x_0)}4\lvert\varphi(x_0)\rvert^2-\frac12\lvert\varphi(x_0)\rvert^4
$$
である。$\varphi(x_0)\ne0$ なら $\lvert\varphi(x_0)\rvert^2$ で割って $\lvert\varphi(x_0)\rvert^2\le-s(x_0)/2\le s_-/2$ である。$\varphi(x_0)=0$ なら $\lvert\varphi\rvert^2\equiv0$ である。どちらの場合も、最大値が $s_-/2$ 以下なので主張が従う。$\square$
この評価は計量だけで決まり、解によらない。これと第 2 式から $F_A^+$ が一様に抑えられ、楕円型の方程式の評価によって $F_A$ 全体も抑えられる。これがモジュライ空間のコンパクト性の出発点である(Don96 p. 50)。反自己双対接続では曲率の $L^2$ ノルムしか抑えられず、モジュライ空間はコンパクトにならない(同所)。
$s\ge0$($X$ の各点で)とする。
1. $s_-=0$ なので thm-sw-estimate により $\varphi\equiv0$ で、第 2 式から $F_A^+=0$ である。
2. 解 $(A,\varphi)$ があったとする。1 により $F_A^+=0$、すなわち $*F_A=-F_A$ である。$F_A$ は閉で($\mathrm{U}(1)$ 接続の曲率は局所的に $d$ の像)、$d(*F_A)=-dF_A=0$ なので余閉でもある(余微分は $\pm*d*$)。閉かつ余閉な形式は調和形式である(Laplace–de Rham作用素 の定理「閉多様体上の調和形式の特徴づけ」)。$\frac i{2\pi}F_A$ は $c_1(L)$ の実係数の像を表す実の閉形式である(Nic26 §8.2.2、p. 350)から、調和代表元の一意性(Hodgeの定理 の 3)により $\frac i{2\pi}F_A=h$ である。$F_A$ は反自己双対なので $h^+=0$ となり、仮定に反する。$\square$
2 の証明の前半は $s$ についての仮定を使わない。すなわち、可約な解 $(A,0)$ があれば $\frac i{2\pi}F_A$ は反自己双対な調和形式で、$h^+=0$ である。$c_1(L)$ がねじれ元なら $h=0$ で、可約な解はどの計量でも現れうる。一般には、第 2 式の右辺に小さな自己双対形式 $\delta$ を加えた摂動方程式も使う(Don96 p. 50)。$b^+(X)$(交叉形式の正の固有値の個数。Donaldson理論 の節「交叉形式と $b^\pm$」)が $r$ より大きければ、この摂動も含めて一般にとった $r$ 径数の計量の族には、可約な解は現れない(同所)。
Seiberg–Witten 方程式が解をもつなら
$$
\langle c_1(L)^2,[X]\rangle\le\frac{s_-^2}{32\pi^2}\operatorname{vol}(X)
$$
である。
$F_A=i\eta$($\eta$ は実の閉 $2$ 次形式)と書く。$\frac i{2\pi}F_A=-\frac1{2\pi}\eta$ が $c_1(L)$ を表すので、
$$
\langle c_1(L)^2,[X]\rangle=\frac1{4\pi^2}\int_X\eta\wedge\eta=\frac1{4\pi^2}\int_X\bigl(\lvert\eta^+\rvert^2-\lvert\eta^-\rvert^2\bigr)\mathrm{vol}\le\frac1{4\pi^2}\int_X\lvert\eta^+\rvert^2\mathrm{vol}
$$
である(2 つ目の等号は Donaldson理論 の補題「$2$ 次形式の分解」)。第 2 式の両辺の $\operatorname{tr}(T^*T)$ を比べると、lem-sw-clifford の 2($\rho(i\eta^+)=i\rho(\eta^+)$ なのでノルムは同じ)と (1) により
$$
\frac14\cdot4\lvert\eta^+\rvert^2=\operatorname{tr}\bigl((\varphi\varphi^*)_0^2\bigr)=\frac12\lvert\varphi\rvert^4
$$
である。thm-sw-estimate により $\lvert\varphi\rvert^4\le s_-^2/4$ なので
$$
\langle c_1(L)^2,[X]\rangle\le\frac1{4\pi^2}\int_X\frac12\lvert\varphi\rvert^4\mathrm{vol}\le\frac1{4\pi^2}\cdot\frac12\cdot\frac{s_-^2}4\operatorname{vol}(X)=\frac{s_-^2}{32\pi^2}\operatorname{vol}(X)
$$
である。$\square$
Don96 p. 47 は、Weitzenböck の公式を積分した等式から同じ種類の上界を導き、解をもつ $L$ についての有限性の手がかりにしている。
$X=S^4$ に半径 $1$ の球面の計量を入れる。スカラー曲率は $s=12>0$ である(スカラー曲率 の例「定曲率空間の例」)。$H^1(S^4;\mathbb{R})=H^2(S^4;\mathbb{R})=0$、$H^2(S^4;\mathbb{Z})=0$ なので、spin${}^c$ 構造はただ 1 つで、$L$ は自明な直線束 $S^4\times\mathbb{C}$ である($\mathbb{C}$ 直線束は $c_1$ で分類される。第1Chern類 の定義「位相的定義」)。このとき Seiberg–Witten のモジュライ空間は 1 点で、その点は自明な接続 $d$ と $\varphi=0$ の組のゲージ同値類であり、安定化群は $\mathrm{U}(1)$ である。
$(d,0)$ は明らかに解である。逆に解 $(A,\varphi)$ をとる。cor-sw-psc の 1 により $\varphi\equiv0$、$F_A^+=0$ で、その証明の 2 と同じく $\frac i{2\pi}F_A$ は調和形式である。$H^2(S^4;\mathbb{R})=0$ なので調和 $2$ 次形式は $0$ で(Hodgeの定理 の 3)、$F_A=0$ である。$A=d+a$($a$ は純虚数値の $1$ 次形式)と書くと $da=F_A=0$ で、$H^1(S^4;\mathbb{R})=0$ から $a=i\,df$($f$ は実関数)と書ける。$u:=e^{if/2}$ とおくと $u^{-1}du=\frac i2df$ で、$u\cdot(A,0)=(d+a-i\,df,0)=(d,0)$ である。安定化群は prop-sw-gauge の 2 による。
この例では、Atiyah–Singer の指数定理による期待される次元 $\frac14\bigl(c_1(L)^2-2\chi(X)-3\sigma(X)\bigr)$(下の thm-sw-invariant の前の段落)は $\frac14(0-4-0)=-1$ で負だが、可約な解がある。安定化群をもつ解は次元の数え方の外にあり、これが可約な解を避ける必要がある理由である。
次の結果はこの記事では証明しない。$\chi(X)$ は Euler 標数、$\sigma(X)$ は符号数(符号数(多様体))である。解の線形化は、$\mathrm{U}(1)$ 反自己双対方程式の線形化 $d^*+d^+$ と Dirac 作用素 $D_A$ の和を主要部にもつ楕円型作用素になり、Atiyah–Singer の指数定理(Atiyah–Singerの指数定理)による指数
$$
d(L):=\frac14\Bigl(\langle c_1(L)^2,[X]\rangle-\bigl(2\chi(X)+3\sigma(X)\bigr)\Bigr)
$$
がモジュライ空間の期待される次元である(Don96 p. 50 の (7))。
$b^+(X)\ge2$ とし、$b_1(X)-b^+(X)$ は奇数とする(このとき $d(L)$ は偶数)。$\det H^1(X)\otimes\det H^+(X)$ の向きを固定する。
Don96 pp. 50–51 による(1 はコンパクト性・横断性・向きの議論、2 は (8)、3 は p. 51)。1 のコンパクト性の出発点が thm-sw-estimate で、3 の有限性の出発点は、prf-sw-chern の中の等式 $\lvert\eta^+\rvert^2=\frac12\lvert\varphi\rvert^4$ と thm-sw-estimate から出る $\int_X\lvert F_A^+\rvert^2\mathrm{vol}$ の上界($c_1(L)$ の調和代表元の自己双対部分を抑える)と、期待される次元が $0$ 以上であることからくる $c_1(L)^2$ の下界(反自己双対部分を抑える)である(同 p. 51)。$b^+(X)=1$ のときは、計量の自己双対調和形式が定める「部屋」ごとに不変量が決まる(同 p. 51)。
不変量の主な応用は次のとおりである。どれもこの記事では証明しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X$ が連結(prop-sw-gauge の 2) | $X=X_1\sqcup X_2$ の上の組 $(A,\varphi)$ で、$\varphi$ が $X_1$ で $0$ でなく $X_2$ で恒等的に $0$ のもの | $\varphi\not\equiv0$ なら安定化群は自明 |
| $h^+\ne0$(cor-sw-psc の 2) | 半径 $1$ の $S^4$(ex-sw-sphere) | $s\ge0$ なら解がない |
1 行目:$X_1$、$X_2$ をそれぞれ連結な閉 $4$ 次元多様体とし、$X_1$ の上の組 $(A_1,\varphi_1)$ で $\varphi_1\not\equiv0$ のものと、$X_2$ の上の組 $(A_2,0)$ を並べる(prop-sw-gauge の 2 は解に限らない組についての主張で、その証明も方程式を使わない)。$X_1$ で $1$、$X_2$ で定数 $e^{i\theta}$ をとる $u$ は、$du=0$ で $u\varphi=\varphi$ をみたすので安定化群に入り、安定化群は自明でない。証明で使った「$du=0$ なら $u$ は定数」が成り立たないことが原因である。
2 行目:ex-sw-sphere のとおり $s=12\ge0$ だが、$(d,0)$ は解である。$c_1(L)=0$ なので $h=0$ で、$h^+\ne0$ が破れている。
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