各点収束

同義語:pointwise convergence各点極限各点収束位相topology of pointwise convergence

概要

各点収束(pointwise convergence)とは、集合 $S$ 上の写像の列 $(f_n)$ が、各点 $x\in S$ ごとに $f_n(x)\to f(x)$ となることで、収束の速さが点ごとに違ってよい点で一様収束より弱い。単調性・凸性・定数を決めた Lipschitz 条件のように有限個の点の値の間の閉じた条件で書ける性質は各点極限に受け継がれるが、連続性・有界性・Riemann 可積分性・積分の値は一般に受け継がれない。一方、連続関数の列の各点極限の不連続点の集合は第1類集合に含まれ、完備距離空間上では連続点が稠密になる。このため至るところ不連続な Dirichlet の関数は連続関数の列の各点極限にならず、写像全体の空間の各点収束位相は点列では記述できない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 一様収束, 連続写像, 距離空間, Baireのカテゴリー定理

関数の列 $f_1,f_2,f_3,\dots$ が関数 $f$ に近づくとは何か。最も素朴な答えは「定義域の各点 $x$ ごとに、数列 $f_n(x)$ が $f(x)$ に収束する」というもので、これを 各点収束 という。各点収束は扱いやすく、関数の列の極限として現れる関数の多くは、まずこの意味の極限として得られる。その代わり、連続性・有界性・積分の値のように「1 点の値だけでは決まらない性質」は、各点収束の極限には一般に受け継がれない。これを補うのが 一様収束 である。
この記事では、各点収束の定義と一様収束との違いを確かめたあと、各点収束で保たれる性質を「有限個の点の値についての閉じた条件」としてまとめる(prop-pc-closed)。中心の結果は、連続関数の列の各点極限は、たとえ不連続でも「ほとんどの点」で連続であるという定理である(thm-pc-continuity-points)。ここから、至るところ不連続な Dirichlet の関数は連続関数の列の各点極限にならないことが分かり、さらに各点収束の位相が点列では記述できないこと(thm-pc-not-sequential)が従う。

定義

以下、$S$ を集合、$(Y,d)$ を距離空間とする。$Y$ が $\mathbb{R}$ や $\mathbb{C}$ のときは $d(u,v)=|u-v|$ である。各正の整数 $n$ に写像 $f_n\colon S\to Y$ を対応させたもの $(f_n)$ を写像の列($Y=\mathbb{R},\mathbb{C}$ のときは関数列)という。

各点収束

写像の列 $f_n\colon S\to Y$ と写像 $f\colon S\to Y$ について、各 $x\in S$ で $Y$ の点列 $(f_n(x))_n$ が $f(x)$ に収束するとき、$(f_n)$ は $f$ に $S$ 上で 各点収束する(converge pointwise)といい、$f$ を $(f_n)$ の 各点極限 という。すなわち
$$ \forall x\in S\ \ \forall\varepsilon>0\ \ \exists N\ \ \forall n\ge N:\quad d\bigl(f_n(x),f(x)\bigr)<\varepsilon $$
が成り立つことである。ここで $N$ は $x$ と $\varepsilon$ の両方に依存してよい。

点列の極限はただ 1 つなので、各点極限もただ 1 つである。$Y=\mathbb{R}$ の場合は 一様収束 の記事の定義「関数列の各点収束」と同じである。一様収束は、上の式の $\exists N$ を $\forall x$ の前に出したもの、つまり $N$ を $x$ によらずに選べることを要求する。量化記号の順序の違いを表にまとめる。

収束の種類条件$N$ が依存してよいもの
各点収束$\forall x\ \forall\varepsilon\ \exists N\ \forall n\ge N:\ d(f_n(x),f(x))<\varepsilon$$x$ と $\varepsilon$
一様収束$\forall\varepsilon\ \exists N\ \forall x\ \forall n\ge N:\ d(f_n(x),f(x))<\varepsilon$$\varepsilon$ だけ
広義一様収束($S$ が位相空間)コンパクト部分集合 $K$ ごとに $K$ 上で一様収束$\varepsilon$ と $K$

一様収束すれば広義一様収束し、広義一様収束すれば(1 点はコンパクトなので)各点収束する。逆はどちらも成り立たない(ex-pc-power)。

直感

各点収束は、関数のグラフ全体ではなく、縦の直線 $x=x_0$ の上だけを見る収束である。直線を 1 本固定すると、グラフとの交点 $(x_0,f_n(x_0))$ が $(x_0,f(x_0))$ に近づいていく。直線ごとに近づき方の速さはばらばらでよく、ある直線の上ではすでに近いのに、すぐ隣の直線の上ではまだ遠い、ということが起こりうる。そのため、隣り合う点の値どうしの関係で決まる性質(連続性)や、無限個の点の値をまとめて決まる量(積分)は極限で崩れうる。一方、有限個の点の値の間の不等式(単調性・凸性)は、それぞれの点で極限をとるだけで極限に移る。

例

冪の関数列

$[0,1]$ 上の $f_n(x)=x^n$ は、$0\le x<1$ で $x^n\to0$、$x=1$ で $1$ なので、$x<1$ で $0$、$x=1$ で $1$ をとる不連続な関数 $f$ に各点収束する。$\sup_{0\le x<1}|x^n-0|=1$ なので一様収束しない(一様収束 の記事の例「冪の関数列」)。区間 $[0,1)$ はコンパクトでなく、$[0,1)$ 上では広義一様収束する($[0,r]$ 上の差の上限は $r^n\to0$)が、一様収束はしない。

積分が 1 のまま 0 に各点収束する山

$[0,1]$ 上の連続関数 $f_n$($n\ge2$)を、$0\le x\le\frac1n$ で $n^2x$、$\frac1n\le x\le\frac2n$ で $n^2\bigl(\frac2n-x\bigr)$、$x\ge\frac2n$ で $0$ と定める。グラフは底辺 $\frac2n$、高さ $n$ の三角形なので $\int_0^1f_n(x)\,dx=1$ である。一方、$f_n(0)=0$ であり、$x>0$ なら $n>\frac2x$ で $f_n(x)=0$ となる。よって $(f_n)$ は $0$ に各点収束するが、
$$ \lim_{n\to\infty}\int_0^1f_n(x)\,dx=1\ne0=\int_0^1\lim_{n\to\infty}f_n(x)\,dx $$
である。山は $x=0$ のほうへ逃げながら高くなるので、どの点でも最終的には山の外に出るが、面積は消えない。

Dirichlet の関数を 2 回の極限で表す

$\mathbb{R}$ 上の関数 $\chi$ を、$x$ が有理数なら $1$、無理数なら $0$ と定める(Dirichlet の関数)。整数 $m\ge1$ について
$$ g_m(x):=\lim_{n\to\infty}\bigl(\cos(m!\,\pi x)\bigr)^{2n},\qquad \chi(x)=\lim_{m\to\infty}g_m(x) $$
が成り立つ。実際、$|\cos(m!\pi x)|=1$ となるのは $m!x$ が整数のときだけなので、内側の極限は $m!x\in\mathbb{Z}$ なら $1$、そうでなければ $0$ である($0\le c<1$ なら $c^{2n}\to0$)。$x=p/q$($p,q$ は整数、$q\ge1$)が有理数なら、$m\ge q$ で $m!x$ は整数なので $g_m(x)=1$ が $m\ge q$ で続き、$x$ が無理数ならどの $m$ でも $m!x$ は整数でないので $g_m(x)=0$ である。
各 $g_m$ は連続関数 $(\cos(m!\pi x))^{2n}$ の各点極限で、不連続点は $\frac1{m!}\mathbb{Z}$ という離散的な集合である。一方、$\chi$ はどの点でも不連続である(どの区間も有理数と無理数を含む)。$\chi$ は各点極限の各点極限として得られたが、連続関数の列 1 本の各点極限にはならない(cor-pc-dirichlet)。

各点収束で保たれる性質

関数 $f\colon S\to\mathbb{R}$ についての性質の多くは、「ある $k$ 個の点 $x_1,\dots,x_k$ での値の組 $(f(x_1),\dots,f(x_k))$ が、ある閉集合に入る」という条件を、点の組を動かしてすべて要求する形をしている。たとえば単調増加は「$x< y$ を満たすすべての組 $(x,y)$ で $(f(x),f(y))\in\{(u,v)\mid u\le v\}$」である。この形の性質は各点極限に受け継がれる。

有限個の値についての閉じた条件の保存

$\Lambda$ を添字の集合とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に、正の整数 $k_\lambda$、$S$ の点の組 $(x^\lambda_1,\dots,x^\lambda_{k_\lambda})$、$\mathbb{R}^{k_\lambda}$ の閉集合 $F_\lambda$ が与えられているとする。関数 $g\colon S\to\mathbb{R}$ が条件
$$ (\ast)\qquad \bigl(g(x^\lambda_1),\dots,g(x^\lambda_{k_\lambda})\bigr)\in F_\lambda\quad(\text{すべての }\lambda\in\Lambda) $$
を満たすとする。関数列 $(f_n)$ のすべての $f_n$ が $(\ast)$ を満たし、$(f_n)$ が $f$ に各点収束するなら、$f$ も $(\ast)$ を満たす。

$\lambda\in\Lambda$ を固定し、$k=k_\lambda$、$x_i=x^\lambda_i$ と書く。各 $i=1,\dots,k$ で $f_n(x_i)\to f(x_i)$ なので、$\mathbb{R}^k$ の点列 $v_n:=(f_n(x_1),\dots,f_n(x_k))$ は $v:=(f(x_1),\dots,f(x_k))$ に収束する($\mathbb{R}^k$ の点列の収束は成分ごとの収束と同じである)。仮定から $v_n\in F_\lambda$ であり、$F_\lambda$ は閉集合なので、その点列の極限 $v$ も $F_\lambda$ に属する。$\lambda$ は任意なので $f$ は $(\ast)$ を満たす。

prop-pc-closed に当てはまる性質を挙げる。$I$ は区間とする。

性質点の組閉集合
$I$ 上で単調増加$x< y$ を満たす $(x,y)\in I^2$$u\le v$
$I$ 上で凸$x,y\in I$、$t\in[0,1]$ ごとの $(x,y,(1-t)x+ty)$$w\le(1-t)u+tv$
定数 $K$ の Lipschitz連続$(x,y)\in S^2$($S\subset\mathbb{R}$)$\lvert u-v\rvert\le K\lvert x-y\rvert$
$\lvert f\rvert\le M$$x\in S$$\lvert u\rvert\le M$
周期 $p$ をもつ$(x,x+p)$($x\in\mathbb{R}$)$u=v$
加法的 $f(x+y)=f(x)+f(y)$$(x,y,x+y)$$w=u+v$

たとえば、単調増加関数の列の各点極限は単調増加であり、単調関数 の記事の定理「単調関数の不連続点」により、その不連続点は高々可算個である。凸関数の各点極限も凸関数である。
これに対し、連続性は「$x_0$ に近いすべての $x$ で $f(x)$ が $f(x_0)$ に近い」という、近くの無限個の点をまとめて見る条件で、上の形をしていない。有界性も「ある $M$ について $|f|\le M$」であり、$M$ が $n$ ごとに大きくなりうるので受け継がれない。一様収束なら受け継がれる性質が、各点収束では崩れる様子を表にする。

外す条件反例成り立たなくなること
一様収束(各点収束だけにする)$[0,1]$ 上の $x^n$(ex-pc-power)連続関数の極限は連続
一様収束(各点収束だけにする)$(0,1]$ 上の $\min\{n,1/x\}$有界関数の極限は有界
一様収束(各点収束だけにする)$[0,1]$ 上で $\{q_1,\dots,q_n\}$ だけで $1$ をとる関数($q_1,q_2,\dots$ は $[0,1]$ の有理数の番号づけ)Riemann 可積分な関数の極限は Riemann 可積分
一様収束(各点収束だけにする)三角形の山(ex-pc-tent)積分と極限の順序の交換
反例の確認

2 行目:$f_n(x)=\min\{n,1/x\}$ は $0< f_n\le n$ で有界であり、$x\in(0,1]$ を固定すると $n\ge1/x$ で $f_n(x)=1/x$ となるので、$1/x$ に各点収束する。$1/x$ は $(0,1]$ 上で有界でない。
3 行目:$f_n$ は有限個の点を除いて $0$ である。$[0,1]$ の分割を細かくすれば、値 $1$ をとる $n$ 個の点を含む小区間の長さの和はいくらでも小さくできるので、上限和は $0$ にいくらでも近く、下限和は $0$ である。よって $f_n$ は Riemann 可積分で積分は $0$ である(Riemann積分 の記事の定理「可積分性の判定条件」)。各点極限は $[0,1]$ 上の Dirichlet の関数 $\chi$ で、どの小区間でも上限は $1$、下限は $0$ なので、上限和は $1$、下限和は $0$ であり、Riemann 可積分でない。
1 行目と 4 行目の、一様収束の場合に成り立つ側は、一様収束 の記事の定理「連続関数の一様極限の連続性」「一様収束と積分の交換」である。2 行目と 3 行目でも、一様収束なら極限は有界・可積分になる(有界性は、$|f_n-f|\le1$ となる $n$ をとれば $|f|\le|f_n|+1$ から分かる)。

連続関数の各点極限の連続点

ex-pc-power のように、連続関数の各点極限は不連続になりうる。では、どれほど不連続になれるのか。答えは「不連続点の集合は小さい」というもので、その小ささは Baireのカテゴリー定理 の言葉で測られる。位相空間 $X$ の部分集合 $A$ は、閉包の内部が空のとき 疎集合、疎集合の可算個の和集合として表せるとき 第1類集合 という。$X$ が Baire 空間 であるとは、稠密な開集合の可算個の共通部分がつねに稠密であることで、これは「第1類集合の補集合がつねに稠密である」ことと同値である(Baireのカテゴリー定理 の記事の命題「Baire 性の言い換え」)。完備距離空間と局所コンパクト Hausdorff 空間は Baire 空間である(同記事の定理「Baire のカテゴリー定理」)。

連続関数の各点極限の連続点

$X$ を位相空間、$(Y,d)$ を距離空間とし、連続写像の列 $f_n\colon X\to Y$ が写像 $f\colon X\to Y$ に各点収束するとする。

  1. $f$ の不連続点の集合は $X$ の第1類集合に含まれる。
  2. とくに $X$ が Baire 空間(たとえば完備距離空間)なら、$f$ の連続点の集合は $X$ で稠密である。
値の振れ幅が小さい閉集合を並べる

$\varepsilon>0$ と正の整数 $N$ に対し
$$ F_N(\varepsilon):=\{x\in X\mid \text{すべての }m,n\ge N\text{ について }d(f_m(x),f_n(x))\le\varepsilon\} $$
とおく。
段 1($F_N(\varepsilon)$ は閉集合で、$X$ を覆う)。$m,n$ を固定すると $x\mapsto d(f_m(x),f_n(x))$ は連続なので、$\{x\mid d(f_m(x),f_n(x))\le\varepsilon\}$ は閉集合であり、$F_N(\varepsilon)$ はその共通部分として閉集合である。各 $x$ で $(f_n(x))$ は収束するので Cauchy 列であり、ある $N$ で $x\in F_N(\varepsilon)$ となる。よって $\bigcup_NF_N(\varepsilon)=X$ である。
段 2(内部の和集合の補集合は第1類)。$U(\varepsilon):=\bigcup_N\operatorname{int}F_N(\varepsilon)$ は開集合である。$x\notin U(\varepsilon)$ なら、段 1 により $x\in F_N(\varepsilon)$ となる $N$ があり、$x\notin\operatorname{int}F_N(\varepsilon)$ なので $x\in B_N:=F_N(\varepsilon)\setminus\operatorname{int}F_N(\varepsilon)$ である。$B_N$ は閉集合から開集合を除いたものなので閉集合である。$B_N$ に含まれる開集合 $W$ は $F_N(\varepsilon)$ に含まれる開集合なので $W\subset\operatorname{int}F_N(\varepsilon)$ であり、$B_N$ と交わらないから $W=\emptyset$ である。よって $B_N$ は内部が空の閉集合、すなわち疎集合であり、$X\setminus U(\varepsilon)\subset\bigcup_NB_N$ は第1類集合である。
段 3($C:=\bigcap_{k\ge1}U(1/k)$ の各点で $f$ は連続)。$x_0\in C$ と $\varepsilon>0$ をとり、$\frac1k<\frac\varepsilon3$ となる $k$ を選ぶ。$x_0\in U(1/k)$ なので $x_0\in\operatorname{int}F_N(1/k)$ となる $N$ がある。$f_N$ は $x_0$ で連続なので、$x_0$ の開近傍 $W\subset\operatorname{int}F_N(1/k)$ を、$x\in W$ なら $d(f_N(x),f_N(x_0))<\frac\varepsilon3$ となるようにとれる。$x\in W$ と $n\ge N$ について $d(f_n(x),f_N(x))\le\frac1k$ であり、$n\to\infty$ とすると $f_n(x)\to f(x)$ と距離の連続性から $d(f(x),f_N(x))\le\frac1k<\frac\varepsilon3$ である。これは $x=x_0$ でも成り立つ。よって $x\in W$ なら
$$ d(f(x),f(x_0))\le d(f(x),f_N(x))+d(f_N(x),f_N(x_0))+d(f_N(x_0),f(x_0))<\varepsilon $$
であり、$f$ は $x_0$ で連続である。
段 4(結論)。段 3 により $f$ の不連続点は $X\setminus C=\bigcup_k\bigl(X\setminus U(1/k)\bigr)$ に含まれ、段 2 によりこれは第1類集合の可算和なので第1類集合である。これが 1 である。$X$ が Baire 空間なら、第1類集合の補集合 $C$ は稠密であり、$C$ は連続点の集合に含まれるので 2 が従う。

証明から、もう少し多くのことが分かる。各 $U(1/k)$ は補集合が第1類の開集合なので、$X$ が Baire 空間なら稠密な開集合であり、連続点の集合は稠密な開集合の可算個の共通部分 $C$ を含む。この定理は Mun00 Theorem 48.5(pp. 297–298)にあり、そこでは連続点の稠密性を Baire 空間の開部分空間についての補題を使って示している。上の証明は段 2 で第1類集合を直接作る形にした。

Dirichlet の関数は連続関数の各点極限でない

ex-pc-dirichlet の Dirichlet の関数 $\chi$ は、$\mathbb{R}$ 上のどんな連続関数の列の各点極限にもならない。$\chi$ を $[0,1]$ に制限した関数も、$[0,1]$ 上のどんな連続関数の列の各点極限にもならない。

$\mathbb{R}$ と $[0,1]$ は完備距離空間なので Baire 空間である。$\chi$ はどの点でも不連続なので連続点の集合は空であり、稠密でない。thm-pc-continuity-points の 2 により、$\chi$ は連続関数の列の各点極限でない。$[0,1]$ でも同じである。

連続関数の列の各点極限として表せる関数を 第1級の Baire 関数(Baire class one function)という。連続関数を第0級とし、第 $k$ 級の関数の列の各点極限を第 $k+1$ 級とよぶと、ex-pc-dirichlet と cor-pc-dirichlet により、Dirichlet の関数は第2級であって第1級でない。
Baire 空間であることは外せない。

外す条件反例成り立たなくなること
$X$ が Baire 空間$X=\mathbb{Q}$ 上で、2 進有理数(分母が 2 の冪の有理数)で $1$、それ以外で $0$ をとる関数 $\psi$連続点の集合が稠密
反例の確認:有理数の空間

$\mathbb{Q}$ は Baire 空間でない(Baireのカテゴリー定理 の記事の例「有理数全体は Baire 空間でない」)。2 進有理数全体を $D$、$D_n:=\{m/2^n\mid m\in\mathbb{Z}\}$ とし、$\mathbb{R}$ 上の連続関数を $h_n(x):=\max\{0,\,1-4^n\operatorname{dist}(x,D_n)\}$ と定める($\operatorname{dist}(x,D_n)$ は $x$ から $D_n$ の点までの距離の下限で、$x$ について連続である)。$x\in D$ なら、ある $n_0$ 以上のすべての $n$ で $x\in D_n$ となり $h_n(x)=1$ である。$x=p/q\in\mathbb{Q}\setminus D$(既約分数、$q\ge1$)なら、$q$ は 2 の冪でないので、$x-\frac m{2^n}=\frac{2^np-mq}{q2^n}$ の分子は $0$ でない整数である($2^np=mq$ なら、$q$ は $2^np$ を割り切り $p$ と互いに素なので $2^n$ を割り切り、2 の冪になってしまう)。よって $\operatorname{dist}(x,D_n)\ge\frac1{q2^n}$、$4^n\operatorname{dist}(x,D_n)\ge\frac{2^n}q$ であり、$2^n\ge q$ なら $h_n(x)=0$ である。こうして $h_n$ を $\mathbb{Q}$ に制限した連続関数の列は $\psi$ に各点収束する。$D$ も $\mathbb{Q}\setminus D$ も $\mathbb{Q}$ で稠密なので、$\psi$ は $\mathbb{Q}$ のどの点でも不連続である。

各点収束の位相

写像全体の集合 $Y^S$ に 直積位相 を入れると、その位相での収束はちょうど各点収束になる(始位相 の記事の例「各点収束の位相」と命題「始位相でのネットの収束」)。この位相を 各点収束位相 という。$Y=\mathbb{R}$ のとき、$f\in\mathbb{R}^S$ の近傍の基本形は、有限個の点 $x_1,\dots,x_k\in S$ と $\varepsilon>0$ で決まる
$$ N(f;x_1,\dots,x_k;\varepsilon):=\{g\in\mathbb{R}^S\mid |g(x_i)-f(x_i)|<\varepsilon\ (i=1,\dots,k)\} $$
である(直積位相 の記事の命題「直積位相の開基」)。近傍が有限個の点の値しか制限しないことが、各点収束の性質のもとになっている。
$S$ が可算集合 $\{s_1,s_2,\dots\}$ なら、関数列の各点収束は距離で表せる。$\rho(f,g):=\sum_{j\ge1}2^{-j}\min\{1,|f(s_j)-g(s_j)|\}$ とおくと、$f_n\to f$ が各点収束であることと $\rho(f_n,f)\to0$ は同値である。実際、$\rho(f_n,f)\to0$ なら各 $j$ で $2^{-j}\min\{1,|f_n(s_j)-f(s_j)|\}\le\rho(f_n,f)\to0$ であり、逆に各点収束するなら、$\varepsilon>0$ に対し $\sum_{j>J}2^{-j}<\varepsilon$ となる $J$ をとり、$j\le J$ の有限個の点で差を小さくすれば $\rho(f_n,f)<2\varepsilon$ となる。$S$ が非可算になると、このような記述は不可能になる。実際、$\mathbb{R}^S$ 上のある距離 $\rho$ について、関数列の各点収束と $\rho$ での収束が一致したとする。$s\in S$ の指示関数($s$ で $1$、ほかで $0$)を $e_s$ とし、$k\ge1$ について $S_k:=\{s\in S\mid \rho(e_s,0)\ge\frac1k\}$ とおく。$S_k$ が無限集合なら、相異なる点の列 $s_1,s_2,\dots$ を $S_k$ からとれる。各 $x\in S$ で $e_{s_n}(x)\ne0$ となる $n$ は高々 1 つなので $e_{s_n}$ は $0$ に各点収束し、$\rho(e_{s_n},0)\to0$ となって $\rho(e_{s_n},0)\ge\frac1k$ に反する。よって各 $S_k$ は有限集合である。$e_s\ne0$ なので $\rho(e_s,0)>0$ であり、$S=\bigcup_{k\ge1}S_k$ となるから、$S$ は可算である。

連続関数は各点収束位相で稠密

$C([0,1])$ を $[0,1]$ 上の実数値連続関数全体とする。$C([0,1])$ は各点収束位相を入れた $\mathbb{R}^{[0,1]}$ で稠密である。

有限個の点を折れ線で結ぶ

$f\in\mathbb{R}^{[0,1]}$ と近傍 $N(f;x_1,\dots,x_k;\varepsilon)$ をとる。点を並べ替えて重複を除き、$x_1<\dots< x_k$ としてよい。$g$ を、$[0,x_1]$ で $f(x_1)$、$[x_k,1]$ で $f(x_k)$、各 $[x_i,x_{i+1}]$ では $(x_i,f(x_i))$ と $(x_{i+1},f(x_{i+1}))$ を結ぶ 1 次関数と定める。$g$ は連続で $g(x_i)=f(x_i)$ なので、$g\in N(f;x_1,\dots,x_k;\varepsilon)\cap C([0,1])$ である。どの近傍も $C([0,1])$ と交わるので、$C([0,1])$ は稠密である。

各点収束位相は点列では決まらない

各点収束位相を入れた $\mathbb{R}^{[0,1]}$ で、$C([0,1])$ の閉包は全体であるが、$[0,1]$ 上の Dirichlet の関数 $\chi$ は $C([0,1])$ のどの点列の極限でもない。したがって、この位相空間は第1可算公理を満たさず、距離化可能でない。

閉包が全体であることは prop-pc-dense である。$C([0,1])$ の点列 $(g_n)$ が $\chi$ にこの位相で収束したとすると、それは $(g_n)$ が $\chi$ に各点収束することであり、cor-pc-dirichlet に反する。
第1可算公理を満たす空間では、部分集合 $A$ の閉包の点 $p$ は $A$ の点列の極限である。実際、$p$ の可算な基本近傍系 $V_1,V_2,\dots$ をとって $W_n:=V_1\cap\dots\cap V_n$ とおき、各 $n$ で $a_n\in W_n\cap A$ を選ぶと、$p$ の任意の近傍は $W_n$ を含み、$W_n\supset W_{n+1}\supset\cdots$ なので $a_n\to p$ である。$\chi$ は $C([0,1])$ の閉包の点だが点列の極限でないので、$\mathbb{R}^{[0,1]}$ は第1可算公理を満たさない。距離空間は第1可算公理を満たす(半径 $1/n$ の開球の全体が基本近傍系になる)ので、距離化可能でもない。

非可算個の直積が第1可算公理を満たさないことは、直積位相 の記事の命題「非可算個の直積と第1可算公理」でも、近傍を直接調べる方法で示されている。thm-pc-not-sequential はそれより強く、「閉包の点はすべて点列の極限で届く」ことすら成り立たないことを、具体的な集合 $C([0,1])$ と点 $\chi$ で示している。各点収束位相で収束を調べるには、点列の代わりに ネット を使う必要がある。

一様収束への格上げ

各点収束から一様収束を引き出すには、何らかの追加の条件が要る。代表的なものを挙げる(いずれも証明は各記事にある)。

追加の条件結論所在
$X$ がコンパクト、$f_n$ と $f$ が連続、各 $x$ で $f_n(x)$ が $n$ について単調一様収束Diniの定理 の記事の定理「Diniの定理」
各 $f_n$ が $[a,b]$ 上で $x$ について単調、$f$ が連続一様収束Diniの定理 の記事の命題「単調関数の列の連続関数への収束」
$K$ がコンパクト距離空間、$(f_n)$ が同程度連続$f$ は連続で一様収束Arzelà–Ascoliの定理 の記事の命題「同程度連続な列の各点収束」

どの条件にも反例がある。ex-pc-power の $x^n$ は $[0,1]$ 上で 1 つ目と 2 つ目の条件のうち「$f$ が連続」だけを満たさず、3 つ目の同程度連続性も点 $1$ で満たさない。
測度論では、条件を「小さい集合を除いて」に緩めることで、各点収束をほとんど一様収束にできる。Lebesgue 可測関数の列 $f_n\colon\mathbb{R}^d\to\mathbb{C}$ がほとんどすべての点で $f$ に各点収束するなら、任意の $\varepsilon>0$ に対し、測度が $\varepsilon$ 以下の可測集合 $A$ があって、$A$ の外で $f_n$ は $f$ に局所一様収束する(Egorov の定理、Tao11 Theorem 1.3.26、p. 75。この記事では証明しない)。積分と極限の交換も、ほとんどすべての点での各点収束に「$|f_n|\le G$ となる可積分関数 $G$ がある」という押さえを加えれば成り立つ(優収束定理、Tao11 Theorem 1.4.49、p. 111。この記事では証明しない)。ex-pc-tent の山の列には、そのような $G$ がない(あれば $\int_0^1f_n\,dx\to0$ となるはずである)。

補足

連続な微分の各点極限

$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が微分可能なら、$f'(x)=\lim_{n\to\infty}n\bigl(f(x+\frac1n)-f(x)\bigr)$ であり、右辺の各項は連続関数である。よって導関数は第1級の Baire 関数であり、thm-pc-continuity-points により、どんな導関数もその連続点の集合は $\mathbb{R}$ で稠密である。微分可能な関数の導関数が至るところ不連続になることはない。

一様収束の記事との関係

各点収束と一様収束の基本的な対比(一様極限の連続性、積分・微分との交換、Weierstrass の判定法)は 一様収束 の記事で扱っている。各点収束の定義は Leb26 §6.1 の Definition 6.1.1(p. 227)、一様収束の定義は Definition 6.1.6(p. 229)にある。

関連項目

参考文献

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