素数の逆数和の発散

同義語:素数の逆数の和の発散divergence of the sum of the reciprocals of the primesdivergence of the prime harmonic series

概要

素数の逆数和の発散(divergence of the sum of the reciprocals of the primes)とは、素数 $p$ の逆数の和 $\frac12+\frac13+\frac15+\frac17+\cdots$ が有限の値に収束せず、$x$ 以下の素数にわたる部分和が $x\to\infty$ で限りなく大きくなるという Euler の定理である。部分和は $\log\log x$ と定数しか違わないほどゆっくり増えるが、平方数や $2$ の冪の逆数和が収束するのと対照的に、素数がそれらよりはるかに多いことを量として表す。素因数の限られた整数を数える Erdős の証明や、逆数和が収束する集合の密度が $0$ であることを使う Moser の証明があり、ある数字を含む素数が無限にあることなどが帰結として従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 素数, 級数, 調和級数, 素数の無限性

素数の逆数を小さい順に足していくと
$$ \frac12+\frac13+\frac15+\frac17+\frac1{11}+\frac1{13}+\cdots $$
となる。この和は有限の値に落ち着かず、足し続ければどんな数も超える。これを 素数の逆数和の発散 という。調和級数 $\sum1/n$ が発散することはよく知られているが、素数の逆数和はその項の一部だけを足したものであり、しかも素数は先へ行くほどまばらになる。それでも和が発散することは、素数が平方数や $2$ の冪よりはるかに多いことを、量として表している。
この事実は Euler による。Euler の証明は 素数の無限性 の記事の節「Eulerの証明:素数の逆数の和の発散」にあり、そこでは $x$ 以下の素数にわたる和が $\log\log x-1$ より大きいことが示されている。この記事では、Euler の証明とは違う 2 つの証明を与える。素因数の限られた整数を数える Erdős の証明(prf-rpd-erdos)と、逆数和が収束する集合の密度が $0$ であること(prop-rpd-density)を使う Moser の証明(prf-rpd-moser)である。さらに、ある数字を含む素数が無限にあることや、$n$ 番目の素数の大きさについての帰結を導く。

定理

以下、$p$ は素数を表し、$\sum_{p\le x}$ は $x$ 以下の素数にわたる和を表す。$p_1=2< p_2=3< p_3=5<\cdots$ は素数を小さい順に並べたもの、$\pi(x)$ は $x$ 以下の素数の個数である。

素数の逆数和の発散

素数の逆数の和は発散する。すなわち、$x\to\infty$ のとき
$$ \sum_{p\le x}\frac1p\to\infty $$
である。

各項は正なので、部分和は $x$ について単調に増え、発散することは上に有界でないことと同値である。とくに素数は無限に存在する(有限個なら和は有限である)。

発散の速さ

発散は非常に遅い。素数の無限性 の記事の定理「素数の逆数の和の発散」は、$x\ge2$ について
$$ \sum_{p\le x}\frac1p>\log\log x-1 $$
を示している。逆向きの評価も成り立ち、定数 $B_1$ があって
$$ \sum_{p\le x}\frac1p=\log\log x+B_1+o(1)\qquad(x\to\infty) $$
である(HW60 §22.7、Theorem 427、p. 351。算術関数の平均位数 の記事の注意「Mertens の定理(この記事では証明しない)」も参照。この記事では証明しない)。したがって部分和は $\log\log x$ と定数しか違わない。

直感

素数が「多い」か「少ない」かは、何と比べるかで答えが変わる。正の整数全体と比べれば素数は少なく、$x$ 以下の整数のうち素数の割合は $0$ に近づく(素数定理 の記事の定理「Chebyshevの評価」から $\pi(x)<7x/\log x$)。一方、平方数 $1,4,9,\dots$ や $2$ の冪 $1,2,4,\dots$ も無限にあるが、それらの逆数の和は収束する(素数の無限性 の記事の例「反例:無限集合でも逆数の和が収束することがある」)。逆数の和は、集合の各元 $a$ を重み $1/a$ で数えた量であり、大きい元ほど軽く数える。素数の逆数和の発散は、素数が平方数などよりずっと多く、整数全体よりは少ないという中間の位置を表している。

例

部分和の値

$x=10^k$ までの和と $\log\log x$ を比べると、次のようになる(計算機による。小数第 5 位まで)。

$x$$\sum_{p\le x}1/p$$\log\log x$差
$10$$1.17619$$0.83403$$0.34216$
$10^2$$1.80282$$1.52718$$0.27564$
$10^3$$2.19808$$1.93264$$0.26544$
$10^4$$2.48306$$2.22033$$0.26273$
$10^5$$2.70527$$2.44347$$0.26180$
$10^6$$2.88733$$2.62579$$0.26154$
$10^7$$3.04145$$2.77994$$0.26151$

差は rem-rpd-growth の定数 $B_1$ に近づいていく。部分和が初めて $1$ を超えるのは $p=5$ まで足したとき($\frac12+\frac13+\frac15=\frac{31}{30}$)、$2$ を超えるのは $p=277$ まで、$3$ を超えるのは $p=5195977$ まで足したときである。$\log\log x$ が $1$ 増えるには、$x$ が $x^e$ まで大きくならなければならない。表の差がこのまま $0.2615$ 程度で続くとして見積もると、部分和が $4$ を超えるのは $x$ が $10^{18}$ 程度に達してからである。

ある数字を含まない整数の逆数和は収束する

$d\in\{0,1,\dots,9\}$ を 1 つ固定し、10 進法で書いたときに数字 $d$ が現れない正の整数の集合を $K_d$ とする。このとき
$$ \sum_{n\in K_d}\frac1n\le90 $$
である。
実際、$K_d$ の $k$ 桁の数は、各桁が $d$ 以外の $9$ 通りなので $9^k$ 個以下であり、どれも $10^{k-1}$ 以上である。よって $k$ 桁の部分の逆数和は $9^k/10^{k-1}=9\cdot(9/10)^{k-1}$ 以下で、$k=1,2,\dots$ について足すと $9\cdot\frac1{1-9/10}=90$ 以下である。正の項の級数なので、部分和が上に有界であることから収束する。
$K_d$ は無限集合であり(たとえば $d\ne1$ なら $1,11,111,\dots$ を含み、$d=1$ なら $2,22,222,\dots$ を含む)、整数全体のうち多くを占めるように見えるが、桁数が増えると $d$ を含まない数の割合は $(9/10)^{k-1}$ 程度に減っていく。

Euler の証明

Euler の証明は、素数の逆数和を、すべての正の整数にわたる和と結びつける。$x$ 以下の素数 $p$ について $(1-1/p)^{-1}=\sum_{e\ge0}p^{-e}$ を掛け合わせて展開すると、素因数分解の一意性 により $x$ 以下のすべての整数の逆数が現れるので、
$$ \prod_{p\le x}\Bigl(1-\frac1p\Bigr)^{-1}\ge\sum_{1\le n\le x}\frac1n>\log x $$
となる(素数の無限性 の記事の命題「Euler積の下からの評価」)。両辺の対数をとって $-\log(1-1/p)$ と $1/p$ の差を評価すると、rem-rpd-growth の下からの評価が得られる。証明の詳細は同記事の定理「素数の逆数の和の発散」にある。この記事ではこれと独立な証明を 2 つ与える。

Erdős の証明:素因数の限られた整数を数える

整数 $k\ge0$ と実数 $x\ge1$ について、素因数がすべて $p_1,\dots,p_k$ のどれかであるような $x$ 以下の正の整数の個数を $N_k(x)$ と書く($k=0$ のときは $1$ だけを数え、$N_0(x)=1$ である)。

素因数の限られた整数の個数

整数 $k\ge0$ と実数 $x\ge1$ について $N_k(x)\le2^k\sqrt x$ である。

平方因子をもたない部分と平方の部分に分ける

$n$ を、素因数がすべて $p_1,\dots,p_k$ のどれかであるような $x$ 以下の正の整数とする。$n=p_1^{c_1}\cdots p_k^{c_k}$ と書き、各 $c_i$ を $c_i=2a_i+b_i$($b_i\in\{0,1\}$)と分けると、
$$ n=m^2r,\qquad m:=p_1^{a_1}\cdots p_k^{a_k},\qquad r:=p_1^{b_1}\cdots p_k^{b_k} $$
と書ける。指数の組 $(b_1,\dots,b_k)$ は $2^k$ 通りなので、$r$ のとりうる値は $2^k$ 個以下である。また $m^2\le m^2r=n\le x$ なので $m\le\sqrt x$ であり、$m$ のとりうる値は $\sqrt x$ 個以下である。$n$ は組 $(m,r)$ から $n=m^2r$ で決まるので、$n$ の個数は組の個数 $2^k\sqrt x$ 以下である。$\square$

素因数の側から整数を数える

thm-rpd-main を示す。$\sum_p1/p$ が収束すると仮定して矛盾を導く。収束する正項級数の残りの和は $0$ に近づくので、
$$ \sum_{i>k}\frac1{p_i}<\frac12 $$
となる $k\ge1$ がとれる。$x:=2^{2k+2}$ とおき、$x$ 以下の正の整数 $n$ を 2 種類に分ける。

  1. 素因数がすべて $p_1,\dots,p_k$ のどれかであるもの。lem-rpd-smooth により、その個数は $2^k\sqrt x=2^k\cdot2^{k+1}=2^{2k+1}$ 以下である。
  2. $p_{k+1},p_{k+2},\dots$ のどれかで割り切れるもの。$x$ 以下の $p_i$ の倍数は $\lfloor x/p_i\rfloor\le x/p_i$ 個なので、その個数は
    $$ \sum_{i>k}\frac x{p_i}< \frac x2=2^{2k+1} $$
    より小さい($p_i>x$ の項は $0$ 個なので、和は実際には有限個の $i$ にわたる)。
    $x$ 以下の正の整数はどれも 1 か 2 に入るので($n=1$ は 1 に入る)、
    $$ x\le N_k(x)+\sum_{i>k}\Bigl\lfloor\frac x{p_i}\Bigr\rfloor< 2^{2k+1}+2^{2k+1}=2^{2k+2}=x $$
    となり矛盾する。よって $\sum_p1/p$ は発散する。$\square$

この証明は HW60 §2.6、Theorem 19(pp. 16–17)にあり、同書の注(p. 22)は Erdős(1938)の論文を挙げている。lem-rpd-smooth は単独でも素数の個数の下からの評価を与える。

素数の個数の対数的な下界

整数 $x\ge1$ について $\pi(x)\ge\dfrac{\log x}{2\log2}$ である。とくにすべての $n\ge1$ について $p_n\le4^n$ である。

$k=\pi(x)$ とおく

$k:=\pi(x)$ とおくと、$x$ 以下の正の整数の素因数はどれも $x$ 以下の素数、すなわち $p_1,\dots,p_k$ のどれかである。よって $N_k(x)=x$ であり、lem-rpd-smooth から $x\le2^k\sqrt x$、すなわち $\sqrt x\le2^k$ である。対数をとって $\pi(x)=k\ge\log x/(2\log2)$ を得る。後半は $x=p_n$ とおくと $\pi(p_n)=n$ なので $n\ge\log p_n/(2\log2)$、すなわち $p_n\le2^{2n}=4^n$ である。$\square$

これは HW60 §2.6、Theorem 20(p. 17)である。$p_n\le4^n$ は、素数の無限性 の記事の命題「素数の大きさの二重指数の上界」$p_n\le2^{2^{n-1}}$ より、$n\ge5$ でははるかに強い($n\ge5$ で $4^n<2^{2^{n-1}}$ であり、$n\le4$ では二重指数の上界のほうが小さいか等しい)が、実際の大きさ $p_n\sim n\log n$(素数定理 の記事の系「$n$ 番目の素数の大きさ」)と比べればまだ非常に弱い。

Moser の証明:密度による

正の整数の部分集合 $A$ について、$A(x):=\#\{a\in A\mid a\le x\}$ とおく。$A(x)/x$ は、$x$ 以下の整数のうち $A$ に属するものの割合である。

逆数和が収束する集合の密度

正の整数の部分集合 $A$ について $\sum_{a\in A}1/a$ が収束するなら、$A(x)/x\to0$($x\to\infty$)である。

部分和で個数を書き直す

整数 $N\ge0$ について $R(N):=\sum_{a\in A,\ a\le N}1/a$ とおく($R(0)=0$)。$R(k)-R(k-1)$ は $k\in A$ なら $1/k$、そうでなければ $0$ なので、$k\,(R(k)-R(k-1))$ は $k\in A$ なら $1$、そうでなければ $0$ である。整数 $N\ge1$ について足し合わせ、和の順序を組み替えると
$$ A(N)=\sum_{k=1}^Nk\bigl(R(k)-R(k-1)\bigr)=NR(N)-\sum_{k=0}^{N-1}R(k) $$
である($R(k)$($1\le k\le N-1$)の係数は $k-(k+1)=-1$、$R(N)$ の係数は $N$、$R(0)$ の係数は $-1$)。したがって
$$ \frac{A(N)}N=R(N)-\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}R(k) $$
である。仮定から $R(N)$ は極限 $R$ に収束する。$\varepsilon>0$ に対し、$k\ge K$ なら $\lvert R(k)-R\rvert<\varepsilon$ となる $K$ をとると、$N>K$ について
$$ \Bigl\lvert\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}R(k)-R\Bigr\rvert\le\frac1N\sum_{k=0}^{K-1}\lvert R(k)-R\rvert+\frac{N-K}N\varepsilon $$
であり、右辺の第 1 項は $N\to\infty$ で $0$ に近づくので、左辺の $\limsup$ は $\varepsilon$ 以下である。$\varepsilon$ は任意なので、$\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}R(k)\to R$ であり、$A(N)/N\to R-R=0$ である。実数 $x\ge1$ については $A(x)=A(\lfloor x\rfloor)$ と $\lfloor x\rfloor\le x$ から $A(x)/x\le A(\lfloor x\rfloor)/\lfloor x\rfloor\to0$ である。$\square$

この命題と次の証明は Mos11 Chapter 3(pp. 17–18)にある。

1 つの素数が割る数を数える

thm-rpd-main を示す。$\sum_p1/p$ が収束すると仮定して矛盾を導く。整数 $N\ge3$ を
$$ \sum_{p>N}\frac1p<\frac12 $$
となるようにとる。素数全体の集合に prop-rpd-density を使うと $\pi(x)/x\to0$ なので、$\pi(mN!)/(mN!)<1/(2N!)$、すなわち
$$ \pi(mN!)<\frac m2 $$
となる整数 $m\ge1$ がとれる。$i=1,2,\dots,m$ について $T_i:=iN!-1$ とおく。
素因数の範囲. $T_i\ge N!-1\ge5$ なので、$T_i$ は素因数をもつ。$N$ 以下の素数 $p$ は $N!$ を割るので $T_i\equiv-1\pmod p$ であり、$T_i$ を割らない。よって $T_i$ の素因数 $p$ は $N< p\le T_i< mN!$ を満たす。
1 つの素数が割る $T_i$ の個数. 素数 $p>N$ が $T_i$ と $T_j$($i>j$)を割るとすると、$p$ は差 $T_i-T_j=(i-j)N!$ を割る。$p>N$ なので $p$ は $1,2,\dots,N$ のどれも割らず、$N!$ を割らないから、$p\mid i-j$ である。したがって $p$ が割る $T_i$ の添字 $i$ は $\{1,\dots,m\}$ の中の法 $p$ の 1 つの剰余類に入り、その個数は $m/p+1$ 以下である。
数え上げ. $T_1,\dots,T_m$ はどれも $N< p< mN!$ のある素数 $p$ で割り切れるので、
$$ m\le\sum_{N< p< mN!}\Bigl(\frac mp+1\Bigr)\le m\sum_{p>N}\frac1p+\pi(mN!)< \frac m2+\frac m2=m $$
となり矛盾する。よって $\sum_p1/p$ は発散する。$\square$

Moser はこの証明を Euclid の証明に近いものとして紹介している。実際、Euclid の証明が $2\cdot3\cdots p+1$ には $p$ 以下の素因数がないことを使うのと同じく、この証明は $N!$ の倍数から $1$ を引いた数には $N$ 以下の素因数がないことを使う。Erdős の証明が整数を素因数の側から数えるのに対し、この証明は素数の側から、1 つの素数が割る数がどれくらいあるかを数えている。

帰結

逆数和が収束する集合の外にある素数

正の整数の部分集合 $S$ について $\sum_{s\in S}1/s$ が収束するなら、$S$ に属さない素数の逆数和 $\sum_{p\notin S}1/p$ は発散する。とくに $S$ に属さない素数は無限に存在する。

2 つに分けた和

$x\ge2$ について
$$ \sum_{p\le x}\frac1p=\sum_{p\le x,\ p\in S}\frac1p+\sum_{p\le x,\ p\notin S}\frac1p\le\sum_{s\in S}\frac1s+\sum_{p\le x,\ p\notin S}\frac1p $$
である。$x\to\infty$ で左辺は thm-rpd-main により発散し、右辺の第 1 項は定数なので、第 2 項は上に有界でない。$S$ に属さない素数が有限個なら第 2 項は有界なので、そのような素数は無限にある。$\square$

どの数字についても、その数字を含む素数は無限にある

ex-rpd-kempner の集合 $K_d$ は逆数和が収束するので、cor-rpd-subset により、$K_d$ に属さない素数、すなわち 10 進法で書いたときに数字 $d$ を含む素数は無限にあり、その逆数和は発散する。たとえば数字 $7$ を含む素数 $7,17,37,47,67,71,73,\dots$ も、数字 $0$ を含む素数 $101,103,107,109,307,\dots$ も無限にある。

素数が具体的な形の数として無限に現れるかどうかは一般には難しい問題であるが(素数の無限性 の記事の注意「Euclidの証明が生む未解決問題」)、逆数和が収束する集合を避けることだけなら、thm-rpd-main からただちに分かる。

$n$ 番目の素数が小さくなる $n$

実数 $\varepsilon>0$ を固定すると、$p_n< n^{1+\varepsilon}$ を満たす $n$ は無限に存在する。

冪の逆数の級数と比べる

そのような $n$ が有限個しかないとすると、ある $n_0$ があって、$n\ge n_0$ ならすべて $p_n\ge n^{1+\varepsilon}$、すなわち $1/p_n\le1/n^{1+\varepsilon}$ である。調和級数 の記事の命題「冪の逆数の級数」により $\sum_n1/n^{1+\varepsilon}$ は収束するので、比較により $\sum_{n\ge n_0}1/p_n$ も収束し、$\sum_p1/p$ が収束することになる。これは thm-rpd-main に反する。$\square$

実際には 素数定理 の記事の系「$n$ 番目の素数の大きさ」により $p_n\sim n\log n$ なので、十分大きいすべての $n$ で $p_n< n^{1+\varepsilon}$ である。cor-rpd-nth-prime は、素数定理を使わずに、逆数和の発散だけから得られる弱い形である。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
素数全体にわたって足す(素数の無限部分集合にする)各 $k\ge1$ について $2^k$ より大きい最小の素数 $q_k$ の集合 $Q$逆数和が発散する
prop-rpd-density の「逆数和が収束」(逆向きに、密度 $0$ から逆数和の収束を導く)素数全体逆数和が収束する
cor-rpd-subset の「$S$ の逆数和が収束」$S$ が奇数全体$S$ に属さない素数が無限にある
cor-rpd-nth-prime の「$\varepsilon>0$」$\varepsilon=0$$p_n< n^{1+\varepsilon}$ を満たす $n$ が無限にある
反例の確認

1 行目:$2^k$ より大きい素数は存在するので(素数の無限性)、$q_k$ は定まる。$q_k>2^k$ なので $Q$ は上に有界でない無限集合である。$Q$ の各元は少なくとも 1 つの $k$ について $q_k$ に等しいので、$\sum_{q\in Q}1/q\le\sum_{k\ge1}1/q_k\le\sum_{k\ge1}2^{-k}=1$ である(正項級数なので項の並べ方によらない)。よって素数の無限集合でも、逆数和は収束しうる。thm-rpd-main は素数全体が「十分多い」ことを述べており、素数の無限性だけからは従わない。
2 行目:素数定理 の記事の定理「Chebyshevの評価」により $x\ge2$ で $\pi(x)<7x/\log x$ なので、$\pi(x)/x\to0$ であり、素数全体の密度は $0$ である。しかし thm-rpd-main により逆数和は発散する。したがって prop-rpd-density の逆は成り立たない。
3 行目:奇数全体の逆数和は $\sum_{n\ge1}\frac1{2n-1}\ge\sum_{n\ge1}\frac1{2n}$ で、調和級数 の発散により発散する。$2$ 以外の素数はすべて奇数なので、$S$ に属さない素数は $2$ だけである。
4 行目:$p_1=2>1$ であり、素数の列は狭義単調増加する整数の列なので $p_n\ge n+1>n$ がすべての $n$ で成り立つ。よって $p_n< n$ を満たす $n$ は 1 つもない。

補足

歴史と別の証明

thm-rpd-main は Euler が 1737 年に示した(HW60 第 II 章の注、p. 22)。Moser は、Euler がこれを「素数は平方数より多い」と言い表したと述べている(Mos11 Chapter 3、p. 17)。HW60 §2.6(pp. 16–17)は、lem-rpd-smooth と同じ数え方で、まず素数の無限性を示し、続けて thm-rpd-main と cor-rpd-pi-lower を導いている。Euler の議論は、Riemann ゼータ関数の Euler 積 $\sum_nn^{-s}=\prod_p(1-p^{-s})^{-1}$($s>1$)の $s\to1$ での振る舞いにあたる(素数の無限性 の記事の注意「より精密な評価と別証明」、Riemannゼータ関数)。

等差数列の中の素数

$a$ と $q$ が互いに素なら、$q$ で割って $a$ 余る素数は無限に存在する(Dirichletの算術級数定理。HW60 §2.3、Theorem 15、p. 13、Sho08 §5.5.4、Theorem 5.20、p. 121)。さらに、そのような $x$ 以下の素数の個数は $x/(\varphi(q)\log x)$ に漸近し、素数は $q$ と互いに素な $\varphi(q)$ 個の剰余類に均等に分布する(Sho08 §5.5.4、Theorem 5.21、p. 122)。どちらもこの記事では証明しない。後者は、素数全体についての 素数定理 を剰余類ごとに精密にしたものにあたる。

関連項目

参考文献

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