正多面体群

同義語:多面体群polyhedral group

概要

正多面体群(polyhedral group)とは、正四面体・正八面体(立方体)・正二十面体(正十二面体)を自分自身に重ねる 3 次元空間の回転全体のなす群 $T,O,I$ で、位数はそれぞれ $12,24,60$ である。$\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群は巡回群・二面体群・$T$・$O$・$I$ のちょうど 1 つと共役であり、回転の固定点を二通りに数えて証明される。頂点・対角線・半回転の軸の組への作用により $T\cong A_4$、$O\cong S_4$、$I\cong A_5$ である。単位四元数の共役による二対一の準同型 $S^3\to\mathrm{SO}(3)$ で引き戻すと、$S^3$ の有限部分群は巡回群・一般四元数群・二項多面体群 $T^*,O^*,I^*$ で尽くされる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 特殊直交群, 群作用, 二面体群, 交代群, 四元数

正多面体群(polyhedral group)とは、正四面体・正八面体・正二十面体を自分自身に重ねる $3$ 次元空間の回転の全体がなす群 $T$・$O$・$I$ のことで、位数はそれぞれ $12$・$24$・$60$ である。立方体と正八面体、正十二面体と正二十面体はそれぞれ互いに双対なので、同じ回転群をもつ。これらは $\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群の分類に現れる。$\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群は、巡回群 $C_m$、二面体群 $\operatorname{Dih}_m$、$T$、$O$、$I$ のどれかと共役である。
この記事では、回転の固定点(極)を二通りに数えてこの分類を証明し、$T\cong A_4$、$O\cong S_4$、$I\cong A_5$ を示す。さらに単位四元数の共役 $S^3\to\mathrm{SO}(3)$ で引き戻し、$S^3$ の有限部分群が巡回群・一般四元数群・二項多面体群 $T^*,O^*,I^*$ で尽くされることを示す。

定義

$\mathbb{R}^3$ には標準内積 $\langle\ ,\ \rangle$ を入れ、単位球面を $S^2$、標準基底を $e_1,e_2,e_3$ とする。単位ベクトル $u$ と実数 $\theta$ について、$u$ を軸とする角 $\theta$ の回転(特殊直交群 の例「空間の回転と回転角」)を $R_{u,\theta}$ と書く。$R_{-u,\theta}=R_{u,-\theta}$ であり、$g\in\mathrm{SO}(3)$ について
$$ gR_{u,\theta}g^{-1}=R_{gu,\theta} $$
である(Rodrigues の公式と、$g\in\mathrm{SO}(3)$ について $g(a\times b)=ga\times gb$ であることによる)。$R_{u,\pi}$ を軸 $u$ のまわりの半回転という。

有限回転群の極

$K$ を $\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群とする。点 $x\in S^2$ が $K$ の極(pole)であるとは、$K$ の単位元でないある元が $x$ を動かさないことをいう。$x$ を動かさない $K$ の元の全体を $K_x$ と書き、その位数を $r_x:=|K_x|$ とおく。

$h\in K$ が $x$ を動かさなければ $ghg^{-1}$ は $gx$ を動かさないので、$K$ は極の集合 $P$ に作用し、$K_{gx}=gK_xg^{-1}$、とくに $r_{gx}=r_x$ である(群作用 の命題「軌道による分割と安定化群」)。また $K_{-x}=K_x$ なので、$-x$ も極で $r_{-x}=r_x$ である。

正多面体群

$m\ge1$ について $C_m:=\langle R_{e_3,2\pi/m}\rangle$、$m\ge2$ について $\operatorname{Dih}_m:=\langle R_{e_3,2\pi/m},R_{e_1,\pi}\rangle$ とおく。また $c:=1/\sqrt5$、$s:=2/\sqrt5$ とし、$j\in\mathbb{Z}/5$ について $w_j:=\bigl(s\cos\frac{2\pi j}{5},\ s\sin\frac{2\pi j}{5},\ c\bigr)$ として
$$ \begin{aligned} V_T&:=\tfrac{1}{\sqrt3}\{(1,1,1),\,(1,-1,-1),\,(-1,1,-1),\,(-1,-1,1)\},\\ V_O&:=\{\pm e_1,\pm e_2,\pm e_3\},\qquad V_I:=\{\pm e_3\}\cup\{\pm w_j\mid j\in\mathbb{Z}/5\} \end{aligned} $$
とおく。$V\in\{V_T,V_O,V_I\}$ について、$gV=V$ をみたす $g\in\mathrm{SO}(3)$ の全体は部分群をなす。これらをそれぞれ $T$、$O$、$I$ と書き、正四面体群・正八面体群・正二十面体群、まとめて正多面体群という。

$V_T$ は正四面体(相異なる 2 点の内積はすべて $-1/3$)、$V_O$ は正八面体、$V_I$ は正二十面体(各点から内積 $c$ の最も近い点がちょうど $5$ 個ある。ph-prf-orders)の頂点である。立方体 $[-1,1]^3$ を保つ回転は面の中心 $\pm e_i$ を置換し、逆に $V_O$ を保つ回転は符号付き置換行列で立方体を保つので、$O$ は立方体の回転群でもある。同じく双対の正十二面体の回転群も $I$ である。$\operatorname{Dih}_m$ では平面の鏡映が半回転として実現されており、二面体群 と同じく位数 $2m$ の群を $\operatorname{Dih}_m$ と書く(文献では $D_{2m}$、$D_m$ とも書く)。

正多面体群の位数

$|C_m|=m$、$|\operatorname{Dih}_m|=2m$、$|T|=12$、$|O|=24$、$|I|=60$ である。具体的には次のとおりである。

  1. $\rho:=R_{e_3,2\pi/m}$、$\tau:=R_{e_1,\pi}$ とすると、$\operatorname{Dih}_m=\{\rho^j,\ \rho^j\tau\mid 0\le j< m\}$。
  2. $T$ は、対角成分が $\pm1$ で行列式が $1$ の対角行列 $4$ 個と、巡回置換の行列 $Z\colon(x,y,z)\mapsto(z,x,y)$ の冪との積 $12$ 個からなる。
  3. $O$ は、行列式が $1$ の符号付き置換行列 $24$ 個からなる。
  4. $I$ は $A:=R_{e_3,2\pi/5}$、$D:=R_{e_2,\pi}$ と、次の行列 $B$ で生成される。
    $$ B:=\begin{pmatrix}-c&0&s\\0&-1&0\\s&0&c\end{pmatrix} $$
軌道と安定化群による上界と具体的な元による下界

要点:有限集合 $V\subset S^2$ を保つ回転の群 $G$ を考える。$v\in V$ の行き先は $|V|$ 通り以下であり、$v$ を動かさない元は軸 $v$ のまわりの回転なので、軸上にない $V$ の 1 点 $y$ の行き先で決まり、その行き先は $v$ との内積が $\langle y,v\rangle$ に等しい $V$ の点である。群作用 の定理「軌道・安定化群定理」により、$|G|$ はこの 2 つの個数の積以下である。下界は具体的な元を並べて示す。

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$\operatorname{Dih}_m$:$\tau\rho\tau^{-1}=R_{\tau e_3,2\pi/m}=R_{-e_3,2\pi/m}=\rho^{-1}$ と $\tau^2=1$ から、$\rho,\tau$ で生成される群は $\{\rho^j,\rho^j\tau\}$ である。$\rho^j$ は $e_3$ を動かさず、$\rho^j\tau$ は $e_3$ を $-e_3$ に写すので両者は重ならず、$\rho^j$($0\le j< m$)は相異なるので、元は $2m$ 個である。$C_m$ も同様に $m$ 個である。

$T$:$V_T$ は成分の積が正の点 $(\pm1,\pm1,\pm1)/\sqrt3$ の全体なので、$\operatorname{diag}(\varepsilon_1,\varepsilon_2,\varepsilon_3)$($\varepsilon_i=\pm1$、$\varepsilon_1\varepsilon_2\varepsilon_3=1$)と $Z$ は $V_T$ を保つ。積 $\operatorname{diag}(\varepsilon)Z^k$($0\le k<3$)は、$0$ でない成分の位置が $k$ で、その符号が $\varepsilon$ で決まるので、$12$ 個が相異なる。上界は $v=(1,1,1)/\sqrt3$ について $4\cdot3=12$ である(残りの $3$ 点と $v$ の内積はどれも $-1/3$)。

$O$:$g\in O$ は各 $e_i$ を $V_O$ の点に写すので、$g$ の各列は $\pm e_j$ の形であり、$g$ は符号付き置換行列である。逆に行列式 $1$ の符号付き置換行列は $V_O$ を保つ。その個数は $3!\cdot2^3/2=24$ である。

$I$:$\theta:=2\pi/5$ とおく。$\zeta=e^{\sqrt{-1}\theta}$ について $1+\zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4=0$ の実部をとると $1+2\cos\theta+2\cos2\theta=0$ であり、$\cos2\theta=2\cos^2\theta-1$ と合わせて $4\cos^2\theta+2\cos\theta-1=0$、$\cos\theta>0$ から $\cos\theta=(\sqrt5-1)/4$、$\cos2\theta=-(\sqrt5+1)/4$ を得る。これを代入すると $$ c(1-\cos\theta)=\cos\theta,\quad s^2\cos\theta+c^2=c,\quad c(1-\cos2\theta)=-\cos2\theta,\quad s^2\cos2\theta+c^2=-c $$ が確かめられる。$B$ は対称な直交行列で($c^2+s^2=1$)、$\det B=c^2+s^2=1$、$B^2=1$ である。$Be_3=(s,0,c)=w_0$ であり、上の 4 式から $Bw_{\pm1}=w_{\mp1}$、$Bw_{\pm2}=-w_{\pm2}$ である。$B^2=1$ から $Bw_0=e_3$、線形性から $B(-y)=-By$ なので、$B$ は $V_I$ を保つ。$A$ は $e_3$ を動かさず $w_j\mapsto w_{j+1}$、$D(x,y,z)=(-x,y,-z)$ は $e_3\mapsto-e_3$、$w_j\mapsto-w_{-j}$ なので、どちらも $V_I$ を保つ。よって $G:=\langle A,B,D\rangle\subset I$ である。$e_3$ の $G$ による軌道は $A^jBe_3=w_j$、$De_3=-e_3$、$DA^{-j}Be_3=Dw_{-j}=-w_j$ を含むので $V_I$ 全体($12$ 点)であり、$e_3$ の安定化群は位数 $5$ の $\langle A\rangle$ を含むので、$|G|\ge60$ である。上界は $v=e_3$、$y=w_0$ として、$e_3$ との内積が $c$ の点が $w_0,\dots,w_4$ の $5$ 個なので $12\cdot5=60$ である。よって $I=G$、$|I|=60$ である。$I$ は $V_I$ に推移的に作用するので、$V_I$ のどの点からも内積 $c$ の点はちょうど $5$ 個ある。$\square$

有限回転群の分類

回転の固定点と極の安定化群
  1. $g\in\mathrm{SO}(3)$、$g\ne1$ なら、$g$ が動かさない $S^2$ の点はちょうど 2 点 $\pm u$ であり、$g=R_{u,\theta}$($0< \theta<2\pi$)と書ける。
  2. $K$ を $\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群、$x$ をその極とすると、$K_x=\langle R_{x,2\pi/r_x}\rangle$ は位数 $r_x\ge2$ の巡回群である。
  3. 2 の状況で $y\in S^2$、$y\ne\pm x$ なら、$K_x$ による $y$ の軌道はちょうど $r_x$ 点からなり、そのどの点も $x$ との内積が $\langle y,x\rangle$ に等しい。
標準形と最小の角

要点:$g$ を回転の標準形に直すと固定点が見え、$K_x$ は円周群 $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ の有限部分群と同型になる。

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1:特殊直交群 の定理「$\mathrm{SO}(3)$ の共役類」により、$P\in\mathrm{SO}(3)$ と $0\le\theta\le\pi$ で $g=PR_{e_3,\theta}P^{-1}=R_{Pe_3,\theta}$ と書け、$g\ne1$ から $\theta\ne0$ である。$R_{e_3,\theta}$ は $e_3$ に直交する平面を角 $\theta$ だけ回すので、動かさないベクトルは $e_3$ の実数倍だけである。よって $g$ が動かさない $S^2$ の点は $\pm Pe_3$ である。

2:$K_x$ の元は $x$ を動かさないので、1 により $R_{x,\alpha}$ の形である。$\alpha\mapsto R_{x,\alpha}$ は $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ から $\mathrm{SO}(3)$ への単射な準同型なので、$K_x$ は $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ の有限部分群 $\Lambda$ と同型である。$\Lambda$ の $0$ でない元を $(0,2\pi)$ の代表で表したときの最小値を $\alpha_0$ とする。$\alpha\in\Lambda$ の代表 $\alpha\in[0,2\pi)$ を $\alpha=q\alpha_0+\beta$($q\in\mathbb{Z}$、$0\le\beta< \alpha_0$)と割ると $\beta\in\Lambda$ なので、最小性から $\beta=0$ である。$2\pi$ についても同様に $2\pi=r\alpha_0$ となる。よって $\Lambda$ は $\alpha_0=2\pi/r$ で生成され、$r=|\Lambda|=r_x$ である。$x$ は極なので $r_x\ge2$ である。

3:$R_{x,\alpha}\ne1$ が $y\ne\pm x$ を動かさないことは 1 によりないので、$y$ の $K_x$ での安定化群は自明であり、軌道は $r_x$ 点からなる。$K_x$ の元は $x$ を動かさず内積を保つので、$\langle R_{x,\alpha}y,x\rangle=\langle y,x\rangle$ である。$\square$

有限回転群の分類

$\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群 $K$ は、$C_m$($m\ge1$)、$\operatorname{Dih}_m$($m\ge2$)、$T$、$O$、$I$ のうちちょうど 1 つと $\mathrm{SO}(3)$ の中で共役である。

極の二重の数え上げ

$N:=|K|$ とする。$N=1$ なら $K=C_1$ である。以下 $N\ge2$ とし、$P$ を極の集合、$P=P_1\sqcup\dots\sqcup P_k$ を $K$ の軌道への分解、$r_i$ を $P_i$ の点の安定化群の位数とする。群作用 の定理「軌道・安定化群定理」により $|P_i|=N/r_i$ である。
$g\ne1$、$x\in P$、$gx=x$ をみたす組 $(g,x)$ を数える。各 $g\ne1$ は ph-lem-axis の 1 によりちょうど 2 つの極を動かさないので、組は $2(N-1)$ 個ある。一方、各 $x\in P$ に対して $g$ は $r_x-1$ 個ある。よって $2(N-1)=\sum_i\frac{N}{r_i}(r_i-1)$、すなわち
$$ \sum_{i=1}^{k}\Bigl(1-\frac{1}{r_i}\Bigr)=2-\frac{2}{N}\qquad(\star) $$
である。左辺の各項は $1/2$ 以上 $1$ 未満、右辺は $1$ 以上 $2$ 未満なので、$k=2$ か $k=3$ である。
(i) $k=2$ のとき:$\frac1{r_1}+\frac1{r_2}=\frac2N$ と $r_i\le N$ から $r_1=r_2=N$ であり、$P_1$ の点 $x$ について $K=K_x=\langle R_{x,2\pi/N}\rangle$ である(ph-lem-axis の 2)。$hx=e_3$ となる $h\in\mathrm{SO}(3)$ をとると $hKh^{-1}=\langle R_{e_3,2\pi/N}\rangle=C_N$ である。
(ii) $k=3$ のとき:$r_1\le r_2\le r_3$ と並べると $\frac1{r_1}+\frac1{r_2}+\frac1{r_3}=1+\frac2N>1$ である。$r_1\ge3$ なら左辺は $1$ 以下なので $r_1=2$、$r_2\ge4$ なら左辺は $\frac12+\frac14+\frac14=1$ 以下なので $r_2\in\{2,3\}$ である。$r_2=2$ なら $r_3=:m\ge2$ は任意で $N=2m$、$r_2=3$ なら $\frac1{r_3}>\frac16$ から $r_3\in\{3,4,5\}$ で、$N=12,24,60$ である。以下、型 $(r_1,r_2,r_3)$ ごとに $K$ を決める。
(iii) 型 $(2,2,m)$:$r_x=m$ の極 $x$ をとる。その軌道は $N/m=2$ 点 $\{x,y\}$ で、$K_x$ は $x$ を動かさずこの軌道を保つので $y$ も動かさない。ph-lem-axis の 1 から $y=-x$ である。よって $K$ の各元は $x$ を $\pm x$ に写す。$x$ を動かさない元は $K_x$ の $m$ 個なので、$gx=-x$ となる $g\in K$ がある。$g$ の $x^\perp$ への制限は行列式 $-1$ の直交変換、すなわち直線 $\mathbb{R}u$($u\perp x$)に関する鏡映なので、$g$ は $u$ を動かさず $x$ を $-x$ に写す回転、すなわち半回転 $R_{u,\pi}$ である。$hx=e_3$、$hu=e_1$ となる $h\in\mathrm{SO}(3)$ をとると、$hKh^{-1}$ は $hR_{x,2\pi/m}h^{-1}=R_{e_3,2\pi/m}$ と $R_{e_1,\pi}$ を含むので $\operatorname{Dih}_m$ を含み、位数がともに $2m$ なので $hKh^{-1}=\operatorname{Dih}_m$ である。
(iv) 型 $(2,3,3)$:$r_x=3$ の極 $x$ の軌道を $V$ とすると $|V|=12/3=4$ である。ph-lem-axis の 3 により $V\setminus\{x\}$ は、$-x$($V$ に属すれば)と $3$ 点ずつの $K_x$ の軌道に分かれる。$|V\setminus\{x\}|=3$ なので $-x\notin V$ で、$V\setminus\{x\}$ は 1 つの $K_x$ の軌道であり、その 3 点と $x$ の内積は共通の値 $a$ である。$V$ の相異なる 2 点 $y,z$ について $gy=x$ となる $g\in K$ をとれば $\langle y,z\rangle=\langle x,gz\rangle=a$ なので、$V$ のグラム行列は $(1-a)E+aJ$($E$ は単位行列、$J$ は成分がすべて $1$ の $4$ 次行列)で、固有値は $1-a$(3 重)と $1+3a$ である。$\mathbb{R}^3$ の 4 つのベクトルのグラム行列は正則でなく、$a\ne1$ なので $a=-1/3$ である。$V=\{v_1,\dots,v_4\}$、$V_T=\{t_1,\dots,t_4\}$ と番号を付ける。$v_1,v_2,v_3$ のグラム行列の固有値は $4/3,4/3,1/3$ で正則なので、$v_1,v_2,v_3$ は基底であり、$v_i\mapsto t_i$($i\le3$)で定まる線形写像 $Q$ は内積を保つので直交行列である。$|v_1+\dots+v_4|^2=4+12a=0$ なので $v_4=-(v_1+v_2+v_3)$、同様に $t_4=-(t_1+t_2+t_3)$ で、$QV=V_T$ である。$Q$ と $-Q$ のどちらかが $\mathrm{SO}(3)$ に属し、両者による共役は同じなので、$h:=\pm Q\in\mathrm{SO}(3)$ について $hKh^{-1}=QKQ^{-1}$ は $V_T$ を保ち、$T$ に含まれる。位数はともに $12$ なので $hKh^{-1}=T$ である。
(v) 型 $(2,3,4)$:$r_x=4$ の極 $x$ の軌道を $V$ とすると $|V|=6$ である。$|V\setminus\{x\}|=5$ が $-x$ と $4$ 点ずつの軌道に分かれるので、$-x\in V$ で、残りは 1 つの $K_x$ の軌道 $W$(4 点、$x$ との内積は共通の値 $a$)である。$y=gx$ なら $-y=g(-x)\in V$ なので $V$ は $y\mapsto-y$ で閉じ、$W$ も閉じる。$\langle -y,x\rangle=-a$ から $a=0$ である。$W$ の点 $y$ と $\rho:=R_{x,\pi/2}$ について $W=\{y,\rho y,-y,-\rho y\}$ で、$(y,\rho y,x)$ は正規直交基底である。$hx=e_3$、$hy=e_1$ となる $h\in\mathrm{SO}(3)$ をとると $h\rho y=\pm e_2$ なので $hV=V_O$ であり、$hKh^{-1}\subset O$ で、位数を比べて $hKh^{-1}=O$ である。
(vi) 型 $(2,3,5)$:$r_x=5$ の極 $x$ の軌道を $V$ とすると $|V|=12$ である。$|V\setminus\{x\}|=11$ が $-x$ と $5$ 点ずつの軌道に分かれるので、$-x\in V$ で、残りは 2 つの $K_x$ の軌道 $W_1,W_2$ である。(v) と同じく $V$ は $y\mapsto-y$ で閉じ、$-W_1$ も $K_x$ の軌道なので $-W_1\in\{W_1,W_2\}$ である。$5$ は奇数なので $-W_1\ne W_1$、よって $W_2=-W_1$ である。必要なら入れ替えて、$W_1$ と $x$ の内積 $a$ は $0\le a<1$ としてよい。$hx=e_3$ で、$hW_1$ の 1 点が $e_1,e_3$ の張る平面の $e_1$ 成分が正の部分にある $h\in\mathrm{SO}(3)$ をとる。$hK_xh^{-1}=\langle R_{e_3,2\pi/5}\rangle$ なので、$b:=\sqrt{1-a^2}$、$\theta:=2\pi/5$ として
$$ hV=\{\pm e_3\}\cup\{\pm y_j\mid j\in\mathbb{Z}/5\},\qquad y_j:=(b\cos j\theta,\ b\sin j\theta,\ a) $$
である。$e_3$ と $hV$ の他の 11 点の内積は $a$(5 個)、$-a$(5 個)、$-1$(1 個)である。$hKh^{-1}$ は $hV$ に推移的に作用して内積を保つので、$y_0$ と他の 11 点の内積も同じ値を同じ個数だけとる。一方、直接計算すると $y_0$ と $\pm e_3$ の内積は $\pm a$、$\pm y_{\pm1}$ とは $\pm\alpha$、$\pm y_{\pm2}$ とは $\pm\beta$、$-y_0$ とは $-1$ である。ここで
$$ \alpha:=a^2+b^2\cos\theta,\qquad\beta:=a^2+b^2\cos2\theta $$
である。内積が $-1$ になるのは対蹠点 $-y_0$ との 1 個だけなので、$\alpha,\beta\in\{a,-a\}$ である。$\alpha-\beta=b^2(\cos\theta-\cos2\theta)>0$ なので $\alpha\ne\beta$ で、$a\ne0$、$\alpha=a$、$\beta=-a$ となる。$\alpha+\beta=0$ と $\cos\theta+\cos2\theta=-\frac12$(ph-prf-orders)から $2a^2-\frac12(1-a^2)=0$、すなわち $a=1/\sqrt5=c$ である。よって $hV=V_I$ であり、$hKh^{-1}\subset I$ で、位数を比べて $hKh^{-1}=I$ である。
最後に、$K$ と共役な群は位数と ph-prop-types の型が $K$ と同じであり、$C_m$、$\operatorname{Dih}_m$、$T$、$O$、$I$ は位数か型が互いに異なるので、$K$ と共役なものはちょうど 1 つである。$\square$

極の型

$\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群 $K\ne\{1\}$ の極の軌道を $P_1,\dots,P_k$、$P_i$ の点の安定化群の位数を $r_i$ とし、組 $(r_1,\dots,r_k)$ を小さい順に並べたものを $K$ の型とよぶ。型は共役で変わらない。$C_m$($m\ge2$)、$\operatorname{Dih}_m$、$T$、$O$、$I$ の型はそれぞれ $(m,m)$、$(2,2,m)$、$(2,3,3)$、$(2,3,4)$、$(2,3,5)$ である。

群位数型極の軌道の大きさ単位元以外の元
$C_m$$m$$(m,m)$$1,1$軸 $e_3$ のまわりの回転 $m-1$ 個
$\operatorname{Dih}_m$$2m$$(2,2,m)$$m,m,2$軸 $e_3$ のまわりの回転 $m-1$ 個、軸が $e_3$ に直交する半回転 $m$ 個
$T$$12$$(2,3,3)$$6,4,4$半回転 $3$ 個、位数 $3$ の元 $8$ 個
$O$$24$$(2,3,4)$$12,8,6$半回転 $6+3$ 個、位数 $3$ の元 $8$ 個、位数 $4$ の元 $6$ 個
$I$$60$$(2,3,5)$$30,20,12$半回転 $15$ 個、位数 $3$ の元 $20$ 個、位数 $5$ の元 $24$ 個

最後の列の個数は $|P_i|(r_i-1)/2$ の和である($T$ では $3+4+4=11$)。

半回転と位数の大きい元の有無

要点:共役 $h$ は極を極に、軌道を軌道に写し、安定化群の位数を保つ。各群の型は、軸の異なる回転を含むかどうかと、位数の大きい元を含みうるかどうかで $(\star)$ の解から選ばれる。

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$K'=hKh^{-1}$ なら $h$ は $K$ の極を $K'$ の極に写し、$K'_{hx}=hK_xh^{-1}$ なので型は等しい。$C_m$($m\ge2$)の単位元でない元が動かさない点は $\pm e_3$ だけなので、極は $\pm e_3$ の 2 点で、どちらの安定化群も $C_m$ であり、型は $(m,m)$ である。$(\star)$ の (i) の場合は $K$ のすべての元が 1 つの軸を共有するが、$\operatorname{Dih}_m$ は $R_{e_3,2\pi/m}$ と $R_{e_1,\pi}$、$T$ と $O$ は $R_{e_1,\pi}=\operatorname{diag}(1,-1,-1)$ と $R_{e_3,\pi}=\operatorname{diag}(-1,-1,1)$、$I$ は $A$ と $B$ を含むので、どれも $k=3$ である。$\operatorname{Dih}_m$ では $e_3$ の安定化群の位数が $m$ であるが、型 $(2,3,n)$ の安定化群の位数は $5$ 以下で、$N=2m\in\{12,24,60\}$ なら $m\ge6$ なので、型は $(2,2,m)$ である。$T,O,I$ の型が $(2,2,N/2)$ なら、位数 $N/2=6,12,30$ の安定化群をもつ極 $u$ がある。$V=V_T,V_O,V_I$ は $\mathbb{R}^3$ を張るので $\pm u$ でない点 $y\in V$ があり、ph-lem-axis の 3 により $y$ の $K_u$ による軌道は $V$ の中の $N/2$ 点からなるが、$N/2>|V|=4,6,12$ なので矛盾する。よって型はそれぞれ $(2,3,3)$、$(2,3,4)$、$(2,3,5)$ である。$\square$

置換群としての見方

頂点・対角線・半回転の組の置換
  1. $T$ の $V_T$ への作用は同型 $T\cong A_4$ を与える。
  2. $d_1=(1,1,1)$、$d_2=(1,1,-1)$、$d_3=(1,-1,1)$、$d_4=(-1,1,1)$ とすると、$O$ は立方体の 4 本の対角線 $\mathbb{R}d_i$ を置換し、この作用は同型 $O\cong S_4$ を与える。
  3. $I$ は単純群である。$I$ の 15 個の半回転は、軸が互いに直交する 3 個ずつの 5 組に分かれ、$I$ の共役によるこの 5 組への作用は同型 $I\cong A_5$ を与える。
作用の核を調べる

1:$V_T$ は $\mathbb{R}^3$ を張るので $T\to S_4$ は単射で、像は指数 $2$ の部分群なので、交代群 の命題「対称群の指数 2 の部分群」により $A_4$ である。
2:$O$ の元は符号付き置換行列なので 4 本の直線を置換する。$g\in O$ が各直線を保ち $gd_i=\varepsilon_id_i$($\varepsilon_i=\pm1$)なら、$d_1=d_2+d_3+d_4$ と $d_2,d_3,d_4$ の一次独立性から $\varepsilon_i$ はすべて等しく、$g=\pm1$、$\det g=1$ から $g=1$ である。単射で $|O|=24=|S_4|$ なので同型である。
3:要点は次の 2 つである。(a) 共役 $hR_{u,\alpha}h^{-1}=R_{hu,\alpha}$ により、同じ極の軌道の軸のまわりの同じ角の回転は共役であり、元の内訳(ph-prop-types の表)から正規部分群の位数は $1$ に $15,20,12,12$ のいくつかを足した数になるが、そのうち $60$ を割るのは $1$ と $60$ だけである。(b) 半回転の中心化群は位数 $4$ の Klein の四元群で、その 3 つの半回転の軸は互いに直交する。

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(a) ph-prop-types により $I$ の極の軌道は、安定化群の位数が $r=2,3,5$ の $P_2,P_3,P_5$(大きさ $30,20,12$)である。$r_{-u}=r_u$ なので各 $P_r$ は $u\mapsto-u$ で閉じている。$S_{r,\alpha}:=\{R_{u,\alpha}\mid u\in P_r\}$ は、$P_r$ が 1 つの軌道なので 1 つの共役類に含まれる。$R_{-u,\alpha}=R_{u,-\alpha}$ に注意すると、単位元以外の $59$ 個の元は $S_{2,\pi}$(半回転 $15$ 個)、$S_{3,2\pi/3}$(位数 $3$ の元 $20$ 個)、$S_{5,2\pi/5}$(角 $\pm2\pi/5$ の $12$ 個)、$S_{5,4\pi/5}$(角 $\pm4\pi/5$ の $12$ 個)に分かれる。正規部分群 $N$ は共役類の合併なので、$|N|$ は $1$ に $15,20,12,12$ のいくつかを足した数で、その値は $1,13,16,21,25,28,33,36,40,45,48,60$ である。Lagrangeの定理 により $|N|$ は $60$ を割るので $|N|\in\{1,60\}$ で、$I$ は単純群である。

(b) 半回転 $\eta=R_{u,\pi}$ について $h\eta h^{-1}=R_{hu,\pi}$ なので、中心化群は $C(\eta)=\{h\in I\mid hu=\pm u\}$ である。$I$ は $15$ 本の軸 $\{\pm u\}$($u\in P_2$)に推移的に作用するので $|C(\eta)|=60/15=4$ である。$hu=-u$ となる回転 $h$ は、ph-prf-classification の (iii) と同じく軸が $u$ に直交する半回転である。よって $C(\eta)=\{1,\eta,\eta',\eta''\}$ で、$\eta',\eta''$ は軸が $u$ に直交する半回転であり、単位元以外の元の位数がすべて $2$ なので $C(\eta)$ は Kleinの四元群 で可換である。$\eta',\eta''$ の軸を $u',u''$ とすると、$\eta''$ は $\eta'$ と可換なので $R_{\eta''u',\pi}=\eta'$、すなわち $\eta''u'=\pm u'$ であり、$\eta''\ne\eta'$ なので $u'\ne\pm u''$ で、ph-lem-axis の 1 から $\eta''u'=-u'$、すなわち $u'\perp u''$ である。$\eta'\in C(\eta)$ なら可換性から $C(\eta')\supset C(\eta)$ で、位数が等しいので $C(\eta')=C(\eta)$ である。したがって 15 個の半回転は組 $C(\eta)\setminus\{1\}$ の 5 組に分かれる。$hC(\eta)h^{-1}=C(h\eta h^{-1})$ なので $I$ は共役で 5 組を置換し、半回転は 1 つの共役類をなすので作用は推移的である。核は正規部分群で、組を動かす元があるので $I$ ではなく、(a) から $\{1\}$ である。よって $I$ は $S_5$ の位数 $60$ の部分群、すなわち指数 $2$ の部分群に同型に写り、交代群 の命題「対称群の指数 2 の部分群」により像は $A_5$ である。$\square$

これらの同型は DF04 の演習でも扱われている(§1.7 Exercise 21, p. 45、§3.5 Exercise 7, p. 111、§4.5 Exercise 42, p. 148)。

単位四元数による回転

純四元数 $xi+yj+zk$ の全体を $\mathbb{R}^3$ と同一視し($e_1,e_2,e_3$ が $i,j,k$ に対応する)、単位四元数の全体を $S^3\subset\mathbb{H}$ と書く。$|pq|=|p||q|$ なので $S^3$ は積で群をなす(四元数)。

単位四元数の共役と回転

$q\in S^3$ について $C_q(v):=qv\bar q$ とおく。$q=\cos\frac\theta2+u\sin\frac\theta2$($u$ は単位純四元数)なら $C_q=R_{u,\theta}$ である。$C\colon S^3\to\mathrm{SO}(3)$、$q\mapsto C_q$ は全射準同型で、核は $\{\pm1\}$ であり、2 重の被覆写像である。

積の公式による計算

要点:四元数 の命題「スカラー部とベクトル部による積の公式」で $qv\bar q$ を展開すると Rodrigues の公式になる。

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$\alpha:=\cos\frac\theta2$、$\beta:=\sin\frac\theta2$ とすると $\bar q=\alpha-\beta u$ である。$u$ は $q$ と可換なので $C_q(u)=uq\bar q=u$ である。$v\perp u$ なら積の公式から $uv=u\times v$、$vu=-u\times v$、$(u\times v)u=(u\times v)\times u=v$ なので $$ qv\bar q=(\alpha v+\beta\,u\times v)(\alpha-\beta u)=(\alpha^2-\beta^2)v+2\alpha\beta\,u\times v=\cos\theta\,v+\sin\theta\,u\times v $$ である。よって $C_q$ は $R_{u,\theta}$ と基底の上で一致する。どの $q\in S^3$ もこの形に書ける(四元数 の定理「$x^2=-1$ の解と極表示」。$q=\pm1$ なら $u$ は任意)ので $C_q\in\mathrm{SO}(3)$ であり、$\overline{qr}=\bar r\bar q$ から $C_{qr}=C_qC_r$ である。ph-lem-axis の 1 によりどの回転も $R_{u,\theta}$ と書けるので $C$ は全射である。$C_q=1$ は $R_{u,\theta}=1$、すなわち $\sin\frac\theta2=0$、$q=\pm1$ と同値である。$C$ は連続で、$S^3$ はコンパクト、$\mathrm{SO}(3)$ は Hausdorff なので、$C$ が引き起こす全単射 $S^3/\{\pm1\}\to\mathrm{SO}(3)$ は同相写像である。$x\in S^3$ の半径 $1$ の開球 $U$ は $(-1)U\cap U=\emptyset$ をみたす($y\in U\cap(-U)$ なら $2=\lvert 2x\rvert\le\lvert x-y\rvert+\lvert x+y\rvert<2$ となる)ので、$S^3\to S^3/\{\pm1\}$ は 2 重の被覆写像であり(被覆空間 の命題「自由で固有不連続な作用から得られる被覆」)、$C$ も 2 重の被覆写像である。$\square$

$C$ は 二重被覆群 の代表例であり、$\mathrm{SO}(3)$ は $\mathbb{R}P^3=S^3/\{\pm1\}$ と同相である。

二項多面体群

二項多面体群

$\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群 $K$ について $K^*:=C^{-1}(K)\subset S^3$ とおく。$C$ の核は $\{\pm1\}$ なので $|K^*|=2|K|$ である。$T^*,O^*,I^*$ をそれぞれ二項四面体群・二項八面体群・二項二十面体群、まとめて二項多面体群(binary polyhedral group)という。$m\ge2$ について $Q_{4m}:=\operatorname{Dih}_m^*$ を一般四元数群(二項二面体群)という。

$a:=\cos\frac\pi m+k\sin\frac\pi m$ と $i$ について $C_a=R_{e_3,2\pi/m}$、$C_i=R_{e_1,\pi}$ であり、$\langle a,i\rangle$ は $\operatorname{Dih}_m$ 全体に写り $-1=i^2$ を含むので $Q_{4m}=\langle a,i\rangle$ である。$a^m=i^2=-1$、$iai^{-1}=a^{-1}$ が成り立ち、$Q_8=\{\pm1,\pm i,\pm j,\pm k\}$ は 四元数群 である。同様に $C_m^*=\langle\cos\frac\pi m+k\sin\frac\pi m\rangle$ は位数 $2m$ の巡回群である。

$K$$C_m$$\operatorname{Dih}_m$$T$$O$$I$
$K^*$巡回群 $C_{2m}$$Q_{4m}$$T^*$$O^*$$I^*$
位数$2m$$4m$$24$$48$$120$
$T^*$ と $O^*$ の元

$T^*$ は $\{\pm1,\pm i,\pm j,\pm k\}$ と $\frac12(\pm1\pm i\pm j\pm k)$(符号は任意)の $8+16=24$ 個からなる。$O^*$ は $T^*$ と、$\{1,i,j,k\}$ の相異なる 2 元 $\epsilon,\epsilon'$ による $\frac1{\sqrt2}(\pm\epsilon\pm\epsilon')$ の $24$ 個の、計 $48$ 個からなる。

確かめ

ph-prop-conj により、$\pm i,\pm j,\pm k$ は座標軸のまわりの半回転 $\operatorname{diag}(1,-1,-1)$ などに写り、$\frac12(\pm1\pm i\pm j\pm k)=\cos\frac\theta2+u\sin\frac\theta2$($\cos\frac\theta2=\pm\frac12$、$u=\frac1{\sqrt3}(\pm i\pm j\pm k)$)は対角線 $u$ のまわりの角 $\pm2\pi/3$ の回転に写る。$T$ は $Z=R_{d_1/\sqrt3,2\pi/3}$ を含み、$\operatorname{diag}(\varepsilon)\in T$ による共役で 4 本の対角線すべてのまわりの $\pm2\pi/3$ の回転を含むので、列挙した 24 個はすべて $T^*$ に属する。相異なる 24 個で $|T^*|=24$ なので一致する。$O^*$ の残りの 24 個のうち、$\epsilon=1$ のものは座標軸のまわりの $\pm\pi/2$ の回転に、$\epsilon,\epsilon'$ が純四元数のものは $\frac1{\sqrt2}(\pm\epsilon\pm\epsilon')$ を軸とする半回転に写り、どちらも符号付き置換行列なので $O$ に属する。成分の絶対値の形が $T^*$ の元と違うので重ならず、計 48 個で $|O^*|=48$ と一致する。

$S^3$ の有限部分群

$S^3$ の有限部分群 $H$ は、位数 $n$ の巡回群 $\langle\cos\frac{2\pi}n+k\sin\frac{2\pi}n\rangle$、$Q_{4m}$($m\ge2$)、$T^*$、$O^*$、$I^*$ のどれかと $S^3$ の中で共役である。$H$ が巡回群でなければ $-1\in H$ かつ $H=C^{-1}(C(H))$ である。

半回転の持ち上げは位数 4

$K:=C(H)$ は $\mathrm{SO}(3)$ の有限部分群である。
$K$ が巡回群のとき:$K$ のすべての元が動かさない単位ベクトル $u$ をとると、$H$ は円周 $S_u:=\{\cos t+u\sin t\}$ の有限部分群なので巡回群である。

詳しい証明を開く

$u$ は ph-thm-classification の証明の (i) の極($K=\{1\}$ なら任意)である。$q=\gamma+w$($\gamma\in\mathbb{R}$、$w$ は純四元数)について、積の公式から $qu-uq=2\,w\times u$ なので、$C_q(u)=u$ は $w$ が $u$ に平行であること、すなわち $q\in S_u$ と同値である。$S_u$ は $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ と同型なので、その有限部分群 $H$ は ph-prf-axis の 2 と同じ議論で巡回群 $\langle\cos\frac{2\pi}n+u\sin\frac{2\pi}n\rangle$ である。$C_z(u)=e_3$ となる $z\in S^3$ をとれば $z(\cos t+u\sin t)z^{-1}=\cos t+k\sin t$ なので、$zHz^{-1}$ は主張の巡回群である。


$K$ が巡回群でないとき:ph-thm-classification により $K=gK_0g^{-1}$($K_0$ は $\operatorname{Dih}_m,T,O,I$ のどれか、$g\in\mathrm{SO}(3)$)であり、ph-prop-types により $K$ は位数 $2$ の安定化群をもつ極 $x$、すなわち半回転 $R_{x,\pi}$ を含む。$C_h=R_{x,\pi}$ となる $h\in H$ は、ph-prop-conj により $h=\pm(\cos\frac\pi2+x\sin\frac\pi2)=\pm x$ であり、$h^2=-1$ である。よって $-1\in H$ である。$q\in C^{-1}(K)$ なら $C_q=C_h$ となる $h\in H$ があり、$q=\pm h\in H$ なので $H=C^{-1}(K)$ である。$g=C_z$ となる $z\in S^3$ をとれば $C^{-1}(K)=zC^{-1}(K_0)z^{-1}=zK_0^*z^{-1}$ である。$\square$

球面への自由な作用

$S^3$ の有限部分群 $H$ は左からの積で $S^3$ に自由に作用し、商写像 $S^3\to S^3/H$ は被覆写像で、$\pi_1(S^3/H)\cong H$ である。

距離を保つ自由な作用

要点:$gx=x$ なら右から $x^{-1}$ を掛けて $g=1$ である。被覆であることは Hat02 Proposition 1.40(p. 72)による。

詳しい証明を開く

左からの積は距離を保つ。$H=\{1\}$ なら主張は明らかなので $H\ne\{1\}$ とする。$x\in S^3$ について $\delta:=\min_{g\ne1}|gx-x|>0$ とし、$U$ を $x$ の半径 $\delta/2$ の近傍とする。$y\in U\cap gU$($g\ne1$)があれば $y=gy'$($y'\in U$)で $|gx-x|\le|gx-gy'|+|y-x|< \delta$ となり矛盾するので、$U\cap gU=\emptyset$ である。$S^3$ は単連結で局所弧状連結なので、Hat02 Proposition 1.40 により $S^3\to S^3/H$ は被覆写像で $\pi_1(S^3/H)\cong H$ である。$\square$

$H$ が巡回群なら $S^3/H$ は レンズ空間 であり($\mathbb{R}+\mathbb{R}k$ を複素数体と見て $\mathbb{H}=(\mathbb{R}+\mathbb{R}k)\oplus(\mathbb{R}+\mathbb{R}k)i$ とすると、$\cos t+k\sin t$ を左から掛けることは両成分のスカラー倍になる)、$H=I^*$ なら Poincaré球面 である。球面に自由に作用する有限群の一般論は 球面に自由に作用する有限群 にある。$S^3$ の有限部分群の一覧は Hat02 §1.3(p. 75)にも述べられている。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
有限であること(ph-thm-classification)軸 $e_3$ のまわりの回転全体5 種のどれかと共役であること
行列式が $1$ であること(ph-lem-axis)$\{\pm1\}\subset\mathrm{O}(3)$単位元でない元が $S^2$ のちょうど 2 点を動かさないこと
回転に限ること(ph-thm-perm の 2)符号付き置換行列 48 個対角線への作用が単射であること
$H$ が巡回群でないこと(ph-thm-s3)$H=\langle\cos\frac{2\pi}3+k\sin\frac{2\pi}3\rangle$$-1\in H$、$H=C^{-1}(C(H))$
反例:表の各行の確かめ

1 行目:無限群で、どの有限群とも共役でない。2 行目:$-1$ は $S^2$ のどの点も動かさない。3 行目:立方体を保つ直交行列は符号付き置換行列 48 個で、$-1$ は 4 本の対角線をすべて保つので作用の核に入る。4 行目:$H$ は位数 $3$ で $-1\notin H$ であり、$C(H)=C_3$ の逆像は位数 $6$ で $H$ より大きい。

補足

二重被覆の非分裂

$S^3$ の元 $x$ が $x^2=1$ なら、$(x-1)(x+1)=0$ と $\mathbb{H}$ が斜体であることから $x=\pm1$ である。よって $S^3$ の位数 $2$ の元は $-1$ だけである。$K$ が巡回群でないとき、半回転の持ち上げは位数 $4$ なので、$C$ の $K^*$ への制限 $K^*\to K$ は切断(右逆の準同型)をもたない。たとえば $T^*$ は $T\times C_2$ と同型でない。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.3:Proposition 1.40(p. 72、自由な作用の商と被覆)、球面に自由に作用する有限群と S^3 の有限部分群の一覧(p. 75)
[2]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, John Wiley & Sons, 2004, §1.7 Exercise 21(p. 45、立方体の回転群と S_4)、§3.5 Exercise 7(p. 111、正四面体の回転群と A_4)、§4.5 Exercise 42(p. 148、正二十面体の回転群と A_5)

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