コンパクト空間

概要

コンパクト空間(Compact space)とは、位相空間論において「有限集合」の持つ好ましい性質を一般化した空間のことである。厳密には、任意の開被覆が有限部分被覆を持つような位相空間として定義される。Euclid空間においては「有界かつ閉集合であること」と同値になる(Heine-Borelの定理)ため、直感的には「無限に広がっておらず、かつ端点を含んでいる空間」と捉えられる。この性質は、最大値・最小値の存在定理や一様連続性など、解析学の多くの基本定理を成立させるための土台となっている。

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コンパクト空間

コンパクト空間は、解析学や幾何学において、関数の挙動を制御しやすくするための極めて重要な舞台設定である。「有界な閉区間」の性質を抽象的な位相空間へと拡張した概念といえる。

定義

コンパクト性の定義は、一見すると抽象的で難解に見える「開被覆」という言葉を用いて行われる。

コンパクト性 (Compactness)

位相空間 $X$コンパクトであるとは、以下の条件を満たすことをいう。
$X$ の任意の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}$ に対して、そこから有限個のメンバー $U_{\lambda_1}, \dots, U_{\lambda_n}$ を選び出して、$X$ を覆うことができる(すなわち $X = \bigcup_{i=1}^n U_{\lambda_i}$ とできる)。
これを「任意の開被覆は有限部分被覆を持つ」と表現する。

直感的理解とEuclid空間での判定

定義の「任意の開被覆から有限個を選び出せる」という性質は、直感的には「空間が無限の彼方へ広がっておらず、かつ境界が欠けていない」ことを意味する。
特に、我々に馴染み深い有限次元のEuclid空間 $\mathbb{R}^n$ においては、以下の定理により幾何学的なイメージと直結する。

(Heine-Borelの定理)

Euclid空間 $\mathbb{R}^n$ の部分集合 $K$ について、以下は同値である。

  1. $K$ はコンパクト空間である(相対位相に関して)。
  2. $K$有界かつ閉集合である。
  • 有界: 無限遠方に伸びていない(ある巨大な球の中に収まる)。
  • : 極限点が集合から逃げない(境界を含んでいる)。

具体例と反例

具体例
  • 有限集合:
    任意の位相を入れた有限集合はコンパクトである。
  • 有界閉区間:
    $\mathbb{R}$ 上の閉区間 $[a, b]$ はコンパクトである(Heine-Borelの定理より)。
  • 球面・トーラス:
    $n$ 次元球面 $S^n$ やトーラス $T^n$ は、$\mathbb{R}^{n+1}$ 等の有界閉集合として実現できるためコンパクトである。
  • Cantor集合:
    Cantor集合はコンパクトである。
反例(コンパクトでない空間)
  • 開区間 $(0, 1)$:
    有界だが閉ではないためコンパクトではない。
    実際、開被覆 $U_n = (1/n, 1)$ ($n \ge 2$) を考えると、どのような有限個の $U_n$ を集めても $(0, 1)$ 全体を覆うことはできない($0$ に近づく部分が必ず漏れる)。
  • 全空間 $\mathbb{R}$:
    閉だが有界ではないためコンパクトではない。
    開被覆 $V_n = (-n, n)$ ($n \in \mathbb{N}$) は、有限個では全直線を覆えない。
  • 離散位相を入れた無限集合:
    各点 $\{x\}$ が開集合となるため、全点の集合を開被覆とすると、そこから有限個を選んで全体を覆うことは不可能である。

重要な性質

コンパクト空間上では、解析学の強力な定理が成立する。

最大値・最小値の定理

コンパクト空間 $X$ から実数 $\mathbb{R}$ への連続写像 $f: X \to \mathbb{R}$ は、最大値および最小値を持つ。すなわち、$f(X)$$\mathbb{R}$ の有界閉集合となる。

連続写像による保存

コンパクト空間の連続写像による像はコンパクトである。
すなわち、$X$ がコンパクトで $f: X \to Y$ が連続ならば、$f(X)$$Y$ のコンパクト部分集合である。

位相的性質
  • 閉部分集合: コンパクト空間の閉部分集合はコンパクトである。
  • Hausdorff空間内のコンパクト集合: Hausdorff空間のコンパクト部分集合は閉集合である。
    • 注意: Hausdorffでない空間では、コンパクト集合でも閉とは限らない。
  • 積空間 (Tychonoffの定理): コンパクト空間族の直積空間は(無限個の積であっても)コンパクトである。

関連概念

  • 点列コンパクト:
    任意の点列が収束する部分列を持つ空間。距離空間においてはコンパクト性と同値になる(Bolzano-Weierstrassの定理)。
  • 局所コンパクト:
    各点がコンパクトな近傍を持つ空間(例: $\mathbb{R}$ はコンパクトではないが、局所コンパクトである)。

関連項目