閉包(closure)とは、位相空間 $X$ の部分集合 $A$ を含む $X$ の閉集合すべての共通部分、すなわち $A$ を含む最小の閉集合 $\overline{A}$ のことである。点 $x$ が $\overline{A}$ に属することは、$x$ のどの近傍も $A$ と交わること($x$ が $A$ の触点であること)と同値である。閉包は拡大性・冪等性・有限和の保存・$\overline{\emptyset}=\emptyset$ というクラトフスキの閉包公理を満たし、逆にこの公理から位相が復元される。共通部分とも無限個の和とも一般には交換しない。内部 $A^{\circ}$ とは $\overline{A}=X\setminus(X\setminus A)^{\circ}$ で結ばれ、閉包と補集合を繰り返して得られる集合は高々 $14$ 個である。
位相空間 $X$ の部分集合が閉集合であるとは、その補集合が $X$ の開集合であることをいう。閉集合の任意の族の共通部分はふたたび閉集合であり、有限個の閉集合の和集合も閉集合である。これらは開集合系の公理からDe Morganの法則によって従う。閉包の基本性質(命題「閉包作用素の性質」まで)は、この二つの事実と閉集合の定義だけから導かれる。
位相空間 $X$ の部分集合 $A$ の閉包(closure)とは、$A$ を含む $X$ の閉集合すべての共通部分
$$
\overline{A}=\bigcap\{F\subseteq X\mid A\subseteq F,\ F\text{ は }X\text{ の閉集合}\}
$$
をいう。周囲の空間を明示するときは $\operatorname{Cl}_X(A)$ とも書く。
共通部分を取る族には $X$ 自身が属するので、この族は空ではない。閉集合の任意の共通部分は閉集合だから $\overline{A}$ は閉集合であり、族のどの元も $A$ を含むので $A\subseteq\overline{A}$ である。また $F$ が $A$ を含む閉集合であれば $F$ はこの族の元だから $\overline{A}\subseteq F$ となる。すなわち $\overline{A}$ は $A$ を含む最小の閉集合である。以下ではこの最小性を繰り返し使う。
$X$ を位相空間、$A\subseteq X$、$x\in X$ とする。次の三条件は同値である。
まず 2 と 3 が同値であることを示す。$x$ を含む開集合はそれ自身 $x$ の近傍だから、3 から 2 が従う。逆に 2 を仮定し、$V$ を $x$ の近傍とすると、近傍の定義により $x\in U\subseteq V$ なる開集合 $U$ が取れる。2 より $U\cap A\neq\emptyset$ であり、$U\subseteq V$ だから $V\cap A\neq\emptyset$ である。
1 から 2 を対偶で示す。$x$ を含む開集合 $U$ で $U\cap A=\emptyset$ となるものがあるとする。このとき $A\subseteq X\setminus U$ であり、$X\setminus U$ は閉集合だから、最小性により $\overline{A}\subseteq X\setminus U$ である。$x\in U$ だったので $x\notin X\setminus U$、したがって $x\notin\overline{A}$ となる。
2 から 1 も対偶で示す。$x\notin\overline{A}$ とすると、$\overline{A}$ は閉集合だから $U:=X\setminus\overline{A}$ は開集合であり $x\in U$ を満たす。さらに $A\subseteq\overline{A}$ より $U\cap A=\emptyset$ である。よって 2 が破れる。
以上で 1、2、3 の同値が示された。この証明は選択公理を用いていない。
閉包とは、$A$ の点に加えて「どれほど近傍を小さくしても $A$ を避けられない点」をすべて集めたものであり、$A$ の外側から $A$ に貼り付いている点を $A$ に足して閉じさせる操作である。
$\mathbb{R}$ に通常の位相を入れる。$\overline{(0,1)}=[0,1]$ である。実際 $[0,1]$ は $(0,1)$ を含む閉集合であり、$0$ と $1$ を含むどの開区間(区間)も $(0,1)$ と交わるので、prop-closure-neighborhood により $0,1\in\overline{(0,1)}$ である。$[0,1]$ の外の点 $t$ には $(0,1)$ と交わらない開区間近傍があるので $t\notin\overline{(0,1)}$ である。同じ理由で $\overline{(0,1]}=[0,1]$ となる。また $\overline{\mathbb{Q}}=\mathbb{R}$ である。空でないどの開区間も有理数を含むからである。これは $\mathbb{Q}$ が $\mathbb{R}$ で稠密であることに他ならない。さらに $B=\{1/n\mid n\in\mathbb{Z}_{>0}\}$ とすると $\overline{B}=B\cup\{0\}$ である。$0$ は prop-closure-neighborhood により触点であり(任意の $\varepsilon>0$ に対し $1/n<\varepsilon$ なる $n$ がある)、$B\cup\{0\}$ の外の点は $B$ と交わらない開区間を近傍に持つ。
$X$ のすべての部分集合を開集合とする位相(離散位相)では、どの部分集合も補集合が開なので閉集合でもある。したがって任意の $A\subseteq X$ について、$A$ 自身が $A$ を含む最小の閉集合であり $\overline{A}=A$ となる。閉包は集合 $A$ だけでなく $X$ に入れた位相にも依存する。
無限集合 $X$ に、空集合と「補集合が有限である部分集合」を開集合とする位相(補有限位相)を入れる。$F$ が閉集合であることは $X\setminus F$ が開集合であること、すなわち $X\setminus F=\emptyset$ または $F$ が有限であることだから、閉集合は $X$ と有限集合に限られる。したがって有限集合 $A$ については $A$ 自身が閉集合なので $\overline{A}=A$ であり、無限集合 $A$ については、$A$ を含む閉集合が $X$ しかないので $\overline{A}=X$ である。$A=X$ の場合も後者に含まれ、$\overline{X}=X$ となる。
後述の prop-closure-axioms により閉包は有限和と交換するが、共通部分とは交換しない。$\mathbb{R}$ に通常の位相を入れ、$A=(0,1)$、$B=(1,2)$ とする。$A\cap B=\emptyset$ なので $\overline{A\cap B}=\emptyset$ である一方、
$$
\overline{A}\cap\overline{B}=[0,1]\cap[1,2]=\{1\}
$$
である。この例は「$\overline{A\cap B}=\overline{A}\cap\overline{B}$ がつねに成り立つ」という含意を破る。破れる原因は $A$ と $B$ が交わらないまま同じ点 $1$ に貼り付いていることである。一般に成り立つのは包含 $\overline{A\cap B}\subseteq\overline{A}\cap\overline{B}$ だけであり、これは $A\cap B\subseteq A$ と $A\cap B\subseteq B$ に単調性を適用すれば従う。
prop-closure-axioms の有限和の保存は、無限個の族へは拡張できない。通常の位相を入れた $\mathbb{R}$ で $A_n=\{1/n\}$($n\in\mathbb{Z}_{>0}$)とする。一点集合は閉集合なので $\overline{A_n}=A_n$ であり、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}\overline{A_n}=\{1/n\mid n\in\mathbb{Z}_{>0}\}
$$
は $0$ を含まない。一方 $0$ を含むどの開区間も、十分大きい $n$ に対する $1/n$ を含むので、prop-closure-neighborhood により $0\in\overline{\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n}$ である。したがって
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}\overline{A_n}\subsetneq\overline{\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n}
$$
となり、この例は「任意の族について $\overline{\bigcup_i A_i}=\bigcup_i\overline{A_i}$ が成り立つ」という含意を破る。単調性から一般に成り立つのは包含 $\bigcup_i\overline{A_i}\subseteq\overline{\bigcup_i A_i}$ だけである。
$X$ を位相空間、$A,B\subseteq X$ とする。
1 は定義の直後に述べたとおり、共通部分を取る族のどの元も $A$ を含むことから従う。
単調性:$A\subseteq B$ とすると $A\subseteq B\subseteq\overline{B}$ であり、$\overline{B}$ は閉集合だから、$\overline{B}$ は $A$ を含む閉集合である。最小性より $\overline{A}\subseteq\overline{B}$ を得る。
2:$\overline{A}$ は $\overline{A}$ を含む閉集合なので、最小性より $\overline{\overline{A}}\subseteq\overline{A}$ である。逆の包含は 1 を $\overline{A}$ に適用すれば得られる。
3:$A\subseteq A\cup B$ と $B\subseteq A\cup B$ に単調性を適用して $\overline{A}\cup\overline{B}\subseteq\overline{A\cup B}$ を得る。逆に $\overline{A}\cup\overline{B}$ は二つの閉集合の和集合なので閉集合であり、1 により $A\cup B\subseteq\overline{A}\cup\overline{B}$ である。したがって最小性より $\overline{A\cup B}\subseteq\overline{A}\cup\overline{B}$ となる。両方を合わせて等号を得る。
4:$\emptyset$ は $X$ が開集合であることから閉集合であり、$\emptyset$ を含む。最小性より $\overline{\emptyset}\subseteq\emptyset$、すなわち $\overline{\emptyset}=\emptyset$ である。
以上の議論は選択公理を用いていない。
$A\mapsto\overline{A}$ を閉包作用素という。逆に、この 4 条件だけから位相を組み立て直すことができる。
集合 $X$ 上の写像 $c\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ が、任意の $A,B\subseteq X$ について $A\subseteq c(A)$、$c(c(A))=c(A)$、$c(A\cup B)=c(A)\cup c(B)$、$c(\emptyset)=\emptyset$ を満たすとする。$c(F)=F$ となる $F$ の全体を $\mathcal{C}$ とし、$\mathcal{O}:=\{X\setminus F\mid F\in\mathcal{C}\}$ とおく。このとき $\mathcal{O}$ は $X$ の位相であり、この位相での閉包は $c$ に一致する。閉包が $c$ になる位相はこれ以外にない。
まず $c$ は単調である。$A\subseteq B$ なら $c(B)=c(A\cup B)=c(A)\cup c(B)\supseteq c(A)$ だからである。
$\mathcal{C}$ が閉集合の族の条件を満たすことを示す。$X\subseteq c(X)\subseteq X$ より $X\in\mathcal{C}$、仮定より $\emptyset\in\mathcal{C}$ である。$F,G\in\mathcal{C}$ なら $c(F\cup G)=c(F)\cup c(G)=F\cup G$ である。$(F_j)_{j\in J}$ を $\mathcal{C}$ の元の族($J\neq\emptyset$)とし $F=\bigcap_jF_j$ とおくと、単調性により各 $j$ で $c(F)\subseteq c(F_j)=F_j$ なので $c(F)\subseteq F$ であり、$F\subseteq c(F)$ と合わせて $F\in\mathcal{C}$ である。補集合をとれば、$\mathcal{O}$ は $\emptyset$、$X$ を含み、有限個の共通部分と任意個の和集合について閉じているので位相である。
この位相での $A$ の閉包を $\overline{A}$ とする。$c(c(A))=c(A)$ より $c(A)\in\mathcal{C}$ は $A$ を含む閉集合なので、最小性により $\overline{A}\subseteq c(A)$ である。逆に $F\in\mathcal{C}$ が $A$ を含めば、単調性により $c(A)\subseteq c(F)=F$ である。このような $F$ すべての共通部分をとって $c(A)\subseteq\overline{A}$ を得る。よって $\overline{A}=c(A)$ である。
一意性:位相 $\mathcal{O}'$ の閉包が $c$ ならば、$\mathcal{O}'$ の閉集合はちょうど $c(F)=F$ となる $F$ である(閉集合 $F$ について $\overline{F}=F$ であり、逆に $\overline{F}=F$ なら $F$ は閉包として閉集合である)。よって $\mathcal{O}'=\mathcal{O}$ である。$\square$
閉包公理と上の命題は Eng89 の Theorem 1.1.3(p. 14)と Proposition 1.2.7(p. 22)にある。触点による特徴づけと閉包の基本性質は Mun00 の §17(Theorem 17.5、p. 96)にもある。
$A$ の内部 $A^{\circ}$($\operatorname{int}A$ とも書く)を $A$ に含まれる開集合すべての和集合とし、$A$ の境界を $\partial A:=\overline{A}\setminus A^{\circ}$(境界)とする。$\overline{A}\cap\overline{X\setminus A}$ とも表せる。このとき
$$
\overline{A}=X\setminus(X\setminus A)^{\circ},\qquad
\partial A=\overline{A}\setminus A^{\circ}=\overline{A}\cap\overline{X\setminus A},\qquad
\overline{A}=A^{\circ}\sqcup\partial A
$$
が成り立つ。第 1 式は、$U\mapsto X\setminus U$ が「$X\setminus A$ に含まれる開集合」の全体と「$A$ を含む閉集合」の全体との間の一対一対応を与え、和集合を共通部分に移すことによる。残りの証明は 内部 の記事の命題「閉包との双対性」と 境界 の記事の命題「境界の同値な特徴づけ」が扱う。第 1 式の $A$ を $X\setminus A$ に取り替えると $A^{\circ}=X\setminus\overline{X\setminus A}$ となる。すなわち内部は「補集合をとり、閉包をとり、補集合をとる」操作である。
位相空間 $X$ の位相が開基 $\mathcal{B}$ で与えられているとする($X$ の開集合はちょうど $\mathcal{B}$ の元の和集合である)。$A\subseteq X$、$x\in X$ について、$x\in\overline{A}$ であることと、$x$ を含む $\mathcal{B}$ の任意の元 $B$ が $A$ と交わることとは同値である。
$x\in\overline{A}$ とする。$\mathcal{B}$ の元は開集合なので、prop-closure-neighborhood により $x$ を含む $\mathcal{B}$ の元はすべて $A$ と交わる。逆に、$x$ を含む $\mathcal{B}$ の元がすべて $A$ と交わるとし、$U$ を $x$ を含む開集合とする。$U$ は $\mathcal{B}$ の元の和集合なので、$x\in B\subseteq U$ となる $B\in\mathcal{B}$ がある。仮定より $B\cap A\neq\emptyset$ であり、$U\cap A\supseteq B\cap A$ なので $U\cap A\neq\emptyset$ である。再び prop-closure-neighborhood により $x\in\overline{A}$ である。$\square$
たとえば距離空間 $(X,d)$ では開球の全体が開基なので、$x\in\overline{A}$ であることは、任意の $\varepsilon>0$ について開球 $B(x,\varepsilon)=\{y\mid d(x,y)<\varepsilon\}$ が $A$ と交わることと同値である。これを距離で言い換えたのが次の命題である。
$(X,d)$ を距離空間、$A\subseteq X$ を空でない部分集合とし、$d(x,A):=\inf\{d(x,a)\mid a\in A\}$ とおく。このとき
$$\overline{A}=\{x\in X\mid d(x,A)=0\}$$
である。
この命題は 距離空間の位相の基本的性質 の記事の命題「点と集合の距離」の 2 であり、証明は同記事にある。
たとえば $\mathbb{R}$ で $A=(0,1)$ なら $d(2,A)=1$、$d(0,A)=0$ であり、$\overline{A}=[0,1]$ と合う。距離空間では、各 $n$ について $B(x,1/n)$ から $A$ の点を選ぶと $x$ に収束する点列が得られるので、$x\in\overline{A}$ であることは「$x$ に収束する $A$ の点列がある」ことと同値になる。これは 第1可算公理 の記事の定理「閉包の点列による判定」の特別な場合である(開球 $B(x,1/n)$ が可算な基本近傍系をなす)。
$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、$\prod_\lambda X_\lambda$ に直積位相を入れる。各 $\lambda$ について $A_\lambda\subseteq X_\lambda$ とすると
$$\overline{\prod_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda}=\prod_{\lambda\in\Lambda}\overline{A_\lambda}$$
が成り立つ。
直積位相の開基として、有限個の $\lambda_1,\dots,\lambda_m$ を除いて $U_\lambda=X_\lambda$ であるような開集合の積 $\prod_\lambda U_\lambda$ の全体をとる(直積位相 の記事の命題「直積位相の開基」)。
左辺 $\subseteq$ 右辺:$x=(x_\lambda)$ が左辺に属するとし、添字 $\mu$ を一つ固定する。$V$ を $x_\mu$ を含む $X_\mu$ の開集合とすると、$\mu$ 成分だけが $V$ で他の成分が $X_\lambda$ である積 $W$ は $x$ を含む開集合なので、$\prod_\lambda A_\lambda$ の点 $y=(y_\lambda)$ を含む。このとき $y_\mu\in V\cap A_\mu$ である。$V$ は任意なので $x_\mu\in\overline{A_\mu}$ であり、$\mu$ は任意なので $x$ は右辺に属する。
右辺 $\subseteq$ 左辺:$x=(x_\lambda)$ が右辺に属するとし、$U=\prod_\lambda U_\lambda$ を $x$ を含む開基の元とする。各 $\lambda$ について $x_\lambda\in U_\lambda\cap\overline{A_\lambda}$ なので、$U_\lambda$ は開集合であることから $U_\lambda\cap A_\lambda\neq\emptyset$ である。各 $\lambda$ についてその点 $y_\lambda$ を選ぶと(選択公理を用いる。$\Lambda$ が有限なら不要)、$y=(y_\lambda)$ は $U\cap\prod_\lambda A_\lambda$ に属する。prop-closure-basis により $x$ は左辺に属する。$\square$
とくに $\prod_\lambda A_\lambda$ が閉集合であることと、(どの $A_\lambda$ も空でないとき)各 $A_\lambda$ が閉集合であることとは同値である。$\mathbb{R}^2$ で $\overline{(0,1)\times\mathbb{Q}}=[0,1]\times\mathbb{R}$ となるのはこの命題の例である。
閉包をとる操作 $k(A):=\overline{A}$ と補集合をとる操作 $c(A):=X\setminus A$ を、一つの集合 $A$ に何度でも繰り返して施すと、得られる集合は何通りあるか。$c$ は 2 回で元に戻り($cc=\mathrm{id}$)、$k$ は冪等($kk=k$、prop-closure-axioms)なので、$k$ と $c$ が交互に並ぶ操作だけを考えればよいが、それでも並びは無限にある。答えは、どんな空間のどんな集合から始めても高々 $14$ 通りである。以下、内部を $i(A):=A^{\circ}$ と書く。前節の式により $i=ckc$ であり、$ii=i$ である($ckcckc=ckkc=ckc$)。
任意の位相空間 $X$ と $A\subseteq X$ について
$$\overline{\bigl(\overline{A^{\circ}}\bigr)^{\circ}}=\overline{A^{\circ}},\qquad\Bigl(\overline{\bigl(\overline{A}\bigr)^{\circ}}\Bigr)^{\circ}=\bigl(\overline{A}\bigr)^{\circ}$$
が成り立つ。記号で書けば $kiki=ki$、$ikik=ik$ である。
$U:=A^{\circ}$ とおくと $U$ は開集合である。$U\subseteq\overline{U}$ であり、$U$ は $\overline{U}$ に含まれる開集合なので、内部の最大性(内部は含まれる開集合すべての和集合)により $U\subseteq(\overline{U})^{\circ}$ である。単調性により $\overline{U}\subseteq\overline{(\overline{U})^{\circ}}$ を得る。逆に $(\overline{U})^{\circ}\subseteq\overline{U}$ なので、単調性と冪等性により $\overline{(\overline{U})^{\circ}}\subseteq\overline{\overline{U}}=\overline{U}$ である。よって $kik(U)=k(U)$、すなわち $kiki(A)=ki(A)$ である。
第 2 式は第 1 式から補集合をとって得られる。まず $ik=c\,ki\,c$ である。実際、$i=ckc$ と $cc=\mathrm{id}$ により $c\,ki\,c=c\,k\,(ckc)\,c=ckck=(ckc)k=ik$ である。よって
$$ikik=(c\,ki\,c)(c\,ki\,c)=c\,kiki\,c=c\,ki\,c=ik$$
である。$\square$
位相空間 $X$ の部分集合 $A$ から、閉包をとる操作と補集合をとる操作を任意の順で任意の回数施して得られる集合は、高々 $14$ 個である。それらはすべて
$$T(A),\quad X\setminus T(A)\qquad(T\in\{\mathrm{id},\ k,\ i,\ ki,\ ik,\ kik,\ iki\})$$
のいずれかである。
上に並べた $14$ 個の集合の族を $\mathcal{S}(A)$ とおく。$A\in\mathcal{S}(A)$ であるから、$\mathcal{S}(A)$ が $k$ と $c$ で閉じていることを示せば、$A$ から得られる集合はすべて $\mathcal{S}(A)$ に属する。
$c$ で閉じていること:$c(T(A))=X\setminus T(A)$ と $c(X\setminus T(A))=T(A)$ はいずれも $\mathcal{S}(A)$ に属する。
$k$ で閉じていること($T(A)$ の場合):$kk=k$ と lem-closure-kiki の $kiki=ki$ により
$$k\cdot\mathrm{id}=k,\quad kk=k,\quad ki=ki,\quad k\,ki=ki,\quad k\,ik=kik,\quad k\,kik=kik,\quad k\,iki=kiki=ki$$
であり、どれも表の $T$ の形である。
$k$ で閉じていること($X\setminus T(A)$ の場合):$k\,c=c\,(ckc)=c\,i$ なので $k(X\setminus T(A))=X\setminus i(T(A))$ である。$ii=i$ と $ikik=ik$ により
$$i\cdot\mathrm{id}=i,\quad ik=ik,\quad ii=i,\quad i\,ki=iki,\quad i\,ik=ik,\quad i\,kik=ikik=ik,\quad i\,iki=iki$$
であり、$X\setminus iT(A)$ は $\mathcal{S}(A)$ に属する。以上で $\mathcal{S}(A)$ は $k$ と $c$ で閉じており、個数は高々 $7\times2=14$ である。$\square$
$\mathbb{R}$(通常の位相)で
$$A=(0,1)\cup(1,2)\cup\{3\}\cup\bigl([4,5]\cap\mathbb{Q}\bigr)$$
とすると、thm-closure-kuratowski-14 の $7$ 個の $T(A)$ は次のとおりで、すべて異なる。
| $T$ | $T(A)$ |
|---|---|
| $\mathrm{id}$ | $(0,1)\cup(1,2)\cup\{3\}\cup([4,5]\cap\mathbb{Q})$ |
| $k$ | $[0,2]\cup\{3\}\cup[4,5]$ |
| $i$ | $(0,1)\cup(1,2)$ |
| $ik$ | $(0,2)\cup(4,5)$ |
| $ki$ | $[0,2]$ |
| $kik$ | $[0,2]\cup[4,5]$ |
| $iki$ | $(0,2)$ |
計算の要点は次のとおりである。$[4,5]\cap\mathbb{Q}$ の閉包は $[4,5]$(有理数の稠密性)で内部は $\emptyset$(どの開区間も無理数を含む)、一点 $\{3\}$ の内部は $\emptyset$、$(0,1)\cup(1,2)$ の閉包は $[0,2]$ でその内部は $(0,2)$ であり、点 $1$ は閉包をとると埋まる。7 個はどれも $1/2$ を含むので、どれも補集合 $X\setminus T'(A)$($1/2$ を含まない)とは一致しない。7 個どうしが異なることは表から読み取れる($0$、$1$、$3$、$4$、$\sqrt{17}$ のそれぞれを含むかどうかで区別できる。$\sqrt{17}$ は $[4,5]$ の無理数である)。よって $14$ 個の集合がすべて異なる。
この問題と例は Mun00 の §17 の演習 21(p. 102)にある。
閉包の公式の仮定を外すと、次のように成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 和集合の個数の有限性 | $\mathbb{R}$ で $A_n=\{1/n\}$ | $\overline{\bigcup_nA_n}=\bigcup_n\overline{A_n}$(rem-closure-infinite-union) |
| 和集合を共通部分に替える | $\mathbb{R}$ で $(0,1)$ と $(1,2)$ | $\overline{A\cap B}=\overline{A}\cap\overline{B}$(rem-closure-intersection) |
| 第 1 可算公理(距離空間であること) | 非可算集合の余可算位相 | 閉包の点が点列の極限で書けること(prop-closure-metric の後の注意) |
| 周囲の空間を固定すること | $(0,1)$ を $\mathbb{R}$ と $(0,\infty)$ の中で見る | 閉包が $[0,1]$ から $(0,1]$ に変わる |
| 写像の連続性のもとで像を等号に | $\arctan\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$、$A=\mathbb{R}$ | $f(\overline{A})=\overline{f(A)}$(成り立つのは $\subseteq$ だけ) |
| 閉包と内部の順序 | $\mathbb{R}$ で $A=\mathbb{Q}$ | $\overline{A^{\circ}}=(\overline{A})^{\circ}$(左辺 $\emptyset$、右辺 $\mathbb{R}$) |
3 行目:非可算集合 $X$ に、$\emptyset$ と補集合が可算な部分集合を開集合とする位相(余可算位相)を入れる。$A$ を $X$ から一点 $p$ を除いた集合とすると、$A$ は可算集合でないので $A$ を含む閉集合(可算集合か $X$)は $X$ だけで、$\overline{A}=X\ni p$ である。一方、$A$ の点列 $(a_n)$ について $V:=X\setminus\{a_n\mid n\ge1\}$ は補集合が可算なので $p$ の開近傍であり、どの項も含まない。よって $A$ の点列は $p$ に収束しない。詳しくは 余可算位相 の記事が扱う。
4 行目:ex-closure の $\overline{(0,1)}=[0,1]$ は $\mathbb{R}$ の中の閉包である。部分空間 $(0,\infty)$ の中の閉包は $(0,\infty)\cap[0,1]=(0,1]$ である(相対位相 の記事の命題「部分空間の閉集合と閉包」)。
5 行目:$\arctan$ は連続で、$\arctan(\overline{\mathbb{R}})=\arctan(\mathbb{R})=(-\pi/2,\pi/2)$ であるが、$\overline{\arctan(\mathbb{R})}=[-\pi/2,\pi/2]$ である。連続写像で一般に成り立つのは $f(\overline{A})\subseteq\overline{f(A)}$ であり、この包含が連続性を特徴づける(連続写像 の記事の命題「連続性の同値条件(閉包・各点連続)」)。
6 行目:$\mathbb{Q}$ はどの開区間も含まないので $\mathbb{Q}^{\circ}=\emptyset$、$\overline{\emptyset}=\emptyset$ である。一方 $\overline{\mathbb{Q}}=\mathbb{R}$ で $\mathbb{R}^{\circ}=\mathbb{R}$ である。
$A$ が閉集合であることと $\overline{A}=A$ が同値であること、および $\overline{A}$ が $A$ と $A$ の集積点全体との和に等しいことは 閉集合 が扱う。
閉包はどの空間の中で取るかに依存する。通常の位相を入れた $\mathbb{R}$ の中では $\overline{(0,1)}=[0,1]$ だが、部分空間 $(0,\infty)$ の中で取ると $(0,1]$ となり、$(0,1)$ 自身を空間とすれば $(0,1)$ 自身になる。記号 $\overline{A}$ だけでは周囲の空間が読み取れないので文脈で明示する。部分空間 $Y\subseteq X$ と $A\subseteq Y$ について $\operatorname{Cl}_Y(A)=Y\cap\operatorname{Cl}_X(A)$ が成り立つ(相対位相 の記事の命題「部分空間の閉集合と閉包」、Mun00 Theorem 17.4、p. 95)。
$A$ の点列 $(a_n)$ が $x$ に収束すれば、$x$ のどの近傍も十分先の項を含むのでその近傍は $A$ と交わり、prop-closure-neighborhood により $x\in\overline{A}$ となる。逆向きは一般の位相空間では成り立たない(rem-closure-table-proofs の 3 行目)。各点が可算な基本近傍系を持つ空間(距離空間を含む)では逆向きも成り立ち、その証明は 第1可算公理 の記事の定理「閉包の点列による判定」にある。
連続写像 $f\colon X\to Y$ と閉包の関係 $f(\overline{A})\subseteq\overline{f(A)}$ は 連続写像 の記事が、稠密な集合と開集合の交わりの閉包は 稠密 の記事が扱う。
「閉包」という語は数学の中で多義的である。体の代数的閉包、部分群や部分環の生成、関係の推移閉包などはいずれも「もとの対象を含む最小の良い対象」を作る操作だが、本記事の位相的な閉包とは別の概念である。どの操作に関する閉包かを文脈で確認する必要がある。
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