角錐数(pyramidal number)とは、整数 $s\ge3$ に対し、$s$ 角数 $P_s(1),\ldots,P_s(n)$ を段にして積み上げた点の総数 $Q_s(n)=P_s(1)+\cdots+P_s(n)$ のことである。三角数を積んだ四面体数はパスカルの三角形の斜めの和により $\binom{n+2}3=\frac{n(n+1)(n+2)}6$ となる。一般には $Q_s(n)=Q_3(n)+(s-3)Q_3(n-1)=\frac{n(n+1)\{(s-2)n+(5-s)\}}6$ で、平方数を積んだ四角錐数 $\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ は2つの四面体数の和であり、平方の和の公式を与える。
前提知識: 多角数, 二項定理と組合せの恒等式, 数列の和と差分
果物屋の店先では、みかんを三角錐や四角錐の形に積むことがある。三角錐なら、いちばん上に1個、2段目に3個、3段目に6個、4段目に10個と、各段に三角数の個数が並ぶ。4段で $1+3+6+10=20$ 個である。四角錐なら各段が平方数で、4段で $1+4+9+16=30$ 個である。このように、多角数を段にして積み上げた点の数を 角錐数 という。
三角錐の各段は三角数 $T_k=\frac{k(k+1)}2$ で、$T_1,T_2,T_3,T_4=1,3,6,10$ である。合計は
$$
1+3+6+10=20.
$$
四角錐の各段は平方数で、合計は
$$
1+4+9+16=30.
$$
5段目を足すと、三角錐は $20+15=35$ 個、四角錐は $30+25=55$ 個になる。
上は三角錐の各段(三角数)、下は四角錐の各段(平方数)を横に並べて足した図
多角数 では、鉤の形の点の数が等差数列になることから、多角数の一般項を求めた。この記事では、多角数の和をとる。和の計算には2つの道がある。1つは $\sum k$ と $\sum k^2$ の公式を使う道、もう1つはパスカルの三角形を使う道である。2つ目の道を通ると、逆に $\sum k^2$ の公式が新しく導ける。
この記事の問いは次の2つである。
| 高校の計算 | この記事の見方 | つながる先 |
|---|---|---|
| $\sum k$、$\sum k^2$ | 多角数の和 | $n$ の3次式 |
| 組合せ $\binom nr$ | 四面体数 $\binom{n+2}3$ | パスカルの三角形の斜めの和 |
| 錐の体積 $\frac13Sh$ | 四角錐数の増え方 $\frac{n^3}3$ | 和と積分の類似 |
$s\ge3$ を整数とする。$s$ 角数 $P_s(k)$(多角数)を $k=1$ から $n$ まで足した
$$
Q_s(n)=P_s(1)+P_s(2)+\cdots+P_s(n)
$$
を、$n$ 番目の $s$ 角錐数 という。$Q_s(0)=0$ とする。$s=3$ のときを 四面体数、$s=4$ のときを 四角錐数 という。
$P_3(k)=T_k$、$P_4(k)=k^2$ なので、四面体数は三角数の和、四角錐数は平方数の和である。
三角数 $1,3,6,10,15,21$ を順に足すと、四面体数は
$$
Q_3(1),\ldots,Q_3(6)=1,\ 4,\ 10,\ 20,\ 35,\ 56.
$$
平方数 $1,4,9,16,25,36$ を順に足すと、四角錐数は
$$
Q_4(1),\ldots,Q_4(6)=1,\ 5,\ 14,\ 30,\ 55,\ 91.
$$
五角数 $1,5,12,22,35,51$ を足すと、五角錐数は $1,6,18,40,75,126$ である。
パスカルの三角形の数 $\binom nr$ を、$n$ 行目の左から $r$ 番目に置く。三角数は $T_k=\frac{(k+1)k}2=\binom{k+1}2$ なので、パスカルの三角形の左から2番目の斜めの列 $1,3,6,10,\ldots$ に並んでいる(図2)。
パスカルの三角形で、三角数 1、3、6、10 の斜めの列を足すと、その下の行の 20 になることを示す図
$n\ge1$ のとき
$$
Q_3(n)=\binom{n+2}3=\frac{n(n+1)(n+2)}6
$$
である。
方針:三角数を二項係数で書き、パスカルの三角形の斜めの和にする。
段1(三角数を二項係数で書く)。$T_k=\frac{k(k+1)}2=\binom{k+1}2$ である。よって
$$
Q_3(n)=\sum_{k=1}^n\binom{k+1}2=\sum_{j=2}^{n+1}\binom j2
$$
となる。2つ目の等号では $j=k+1$ とおいた。
段2(斜めの和)。ホッケースティック恒等式 $\displaystyle\sum_{j=r}^{m}\binom jr=\binom{m+1}{r+1}$(二項定理と組合せの恒等式)を $r=2$、$m=n+1$ として使うと
$$
\sum_{j=2}^{n+1}\binom j2=\binom{n+2}3.
$$
段3(式に直す)。$\binom{n+2}3=\frac{(n+2)(n+1)n}{3\cdot2\cdot1}=\frac{n(n+1)(n+2)}6$ である。$\square$
ホッケースティック恒等式は、パスカルの関係 $\binom jr=\binom{j+1}{r+1}-\binom j{r+1}$ を足して打ち消し合わせれば示せる。図2では $1+3+6+10$ の斜めの列の和が、その右下の $20=\binom63$ になっている。
$n=4$ なら $\binom63=\frac{6\cdot5\cdot4}{6}=20$ で、ex-pyr-oranges の三角錐と一致する。$n=10$ なら $\binom{12}3=\frac{12\cdot11\cdot10}6=220$ である。
$\binom{n+2}3$ は、$n+2$ 個のものから3個を選ぶ選び方の数でもある。たとえば $n=2$ なら、4個から3個を選ぶ方法は4通りで、$Q_3(2)=1+3=4$ と一致する。
$s\ge3$、$n\ge1$ のとき
$$
Q_s(n)=Q_3(n)+(s-3)Q_3(n-1)=\frac{n(n+1)\{(s-2)n+(5-s)\}}6
$$
である。とくに四角錐数は
$$
Q_4(n)=Q_3(n)+Q_3(n-1)=\frac{n(n+1)(2n+1)}6=\frac{(2n+1)T_n}3
$$
である。
方針:多角数 の定理「多角数と三角数」の式 $P_s(k)=T_k+(s-3)T_{k-1}$ を $k=1$ から $n$ まで足し、四面体数の式を入れる。
段1(段ごとに足す)。$P_s(k)=T_k+(s-3)T_{k-1}$($T_0=0$)を $k=1,\ldots,n$ について足すと
$$
Q_s(n)=\sum_{k=1}^nT_k+(s-3)\sum_{k=1}^{n}T_{k-1}=Q_3(n)+(s-3)Q_3(n-1).
$$
2つ目の和は $T_0+T_1+\cdots+T_{n-1}=Q_3(n-1)$ である($n=1$ なら $0=Q_3(0)$)。
段2(四面体数の式を入れる)。thm-pyr-tetra により $Q_3(n)=\frac{n(n+1)(n+2)}6$、$Q_3(n-1)=\frac{(n-1)n(n+1)}6$ である($n=1$ でも右辺は $0$ で正しい)。よって
$$
Q_s(n)=\frac{n(n+1)}6\{(n+2)+(s-3)(n-1)\}=\frac{n(n+1)}6\{(s-2)n+(5-s)\}.
$$
中かっこの中は $n+2+(s-3)n-(s-3)=(s-2)n+5-s$ である。
段3(四角錐数)。$s=4$ とおくと $Q_4(n)=Q_3(n)+Q_3(n-1)=\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ である。$T_n=\frac{n(n+1)}2$ なので、これは $\frac{(2n+1)}3\cdot\frac{n(n+1)}2=\frac{(2n+1)T_n}3$ とも書ける。$\square$
$Q_4(n)=1^2+2^2+\cdots+n^2$ なので、段3はそのまま 平方の和の公式
$$
\sum_{k=1}^nk^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6
$$
を与える。この証明では $\sum k^2$ の公式を一度も使っていない。使ったのは、多角数の式(等差数列の和)と、パスカルの三角形の斜めの和だけである。教科書の $(k+1)^3-k^3$ を足す方法は 数列の和と差分 にある。
$Q_4(4)=30$ を確かめる。$Q_3(4)+Q_3(3)=20+10=30$ である。段ごとに見ると、四角錐の $k$ 段目の $k^2$ 個は、多角数 の系 $k^2=T_k+T_{k-1}$ により、$T_k$ 個と $T_{k-1}$ 個に分かれる。$T_k$ の段を積むと4段の三角錐、$T_{k-1}$ の段を積むと(1段目は $T_0=0$ なので)3段の三角錐になる。
$\frac{(2n+1)T_n}3$ の形でも、$n=4$ なら $\frac{9\cdot10}3=30$ である。
| $s$ | 名前 | $Q_s(n)$ | $n=1,\ldots,6$ |
|---|---|---|---|
| $3$ | 四面体数 | $\frac{n(n+1)(n+2)}6$ | $1,4,10,20,35,56$ |
| $4$ | 四角錐数 | $\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ | $1,5,14,30,55,91$ |
| $5$ | 五角錐数 | $\frac{n^2(n+1)}2$ | $1,6,18,40,75,126$ |
| $6$ | 六角錐数 | $\frac{n(n+1)(4n-1)}6$ | $1,7,22,50,95,161$ |
Wei26a も一般の式 $\frac16n(n+1)\{(s-2)n+(5-s)\}$ と、$s=3,4,5$ の場合を挙げている。
四面体数 $1,4,10,20,35,56,84,120,165,\ldots$ のうち奇数は $1,35,165,\ldots$ で、$n=1,5,9,\ldots$ のとき、すなわち $n$ を4で割った余りが1のときである。理由を確かめる。$Q_3(n)=\frac{n(n+1)(n+2)}6$ が奇数であるのは、$n(n+1)(n+2)$ の素因数分解に2がちょうど1個だけ現れるときである(6で割って奇数が残るため)。
$n$ が偶数なら、$n$ と $n+2$ はともに偶数で、そのどちらかは4の倍数なので、2が3個以上現れる。$n$ が奇数なら、偶数は $n+1$ だけで、2がちょうど1個であるのは $n+1$ が4の倍数でない偶数、すなわち $n+1\equiv2\pmod4$、$n\equiv1\pmod4$ のときである。Wei26b も、四面体数は4つに1つを除いて偶数であると述べている。
四角錐数が平方数になることがある。$Q_4(1)=1=1^2$ と $Q_4(24)=\frac{24\cdot25\cdot49}6=4900=70^2$ である。砲弾を四角錐に積んだ山を、並べ直して正方形にできるか、という問題として知られ、Wei26c は平方数になる四角錐数は $n=1$ と $n=24$ のものだけであると述べている。この記事では証明しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 四角錐数を2つの四面体数に分けるときの段数 $n$ と $n-1$ | $Q_3(3)+Q_3(3)=20$ | $Q_4(3)=14$ にならない(正しくは $10+4$) |
| ホッケースティックの和の上端 $n+1$ | $\sum_{j=2}^{n}\binom j2$ で止める | $Q_3(n-1)$ になり、1段少ない |
| 増え方を比べる錐の形(底面が正方形) | 四面体数を $\frac{n^3}3$ と比べる | 比は $1$ でなく $\frac12$ に近づく |
$Q_4(n)=\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ を $\frac{n^3}3$ で割ると
$$
\frac{Q_4(n)}{n^3/3}=\frac{(n+1)(2n+1)}{2n^2}=\left(1+\frac1n\right)\left(1+\frac1{2n}\right)
$$
で、$n\to\infty$ のとき $1$ に近づく(比が $1$ に近づくという意味である)。$\frac{n^3}3$ は、底面が1辺 $n$ の正方形で高さ $n$ の四角錐の体積 $\frac13\cdot n^2\cdot n$ である。
一方、$\frac{Q_3(n)}{n^3/3}=\frac{(n+1)(n+2)}{2n^2}=\frac12\left(1+\frac1n\right)\left(1+\frac2n\right)$ は $\frac12$ に近づく。四面体数を $\frac{n^3}6$ と比べれば、比は $1$ に近づく。$n=10$ では $Q_3(10)=220$、$\frac{1000}6=166.6\ldots$ で、比は $1.32$ である。有限の $n$ の比が $1$ からずれているのは、比の式の $\frac1n$、$\frac2n$ の項による。
錐の体積の $\frac13$ と、高さ $n$ の四角錐数が $\frac{n^3}3$ の程度で増えることは、同じ現象の連続版と離散版である。錐の体積の $\frac13$ の理由は 錐体の体積とHilbertの第3問題 で扱っている。
$\binom{n+2}3=\binom{n+2}{n-1}$ は、4種類のものから重複を許して $n-1$ 個を選ぶ選び方の数(重複組合せ ${}_4\mathrm{H}_{n-1}$)に等しい。たとえば $n=2$ なら、4種類から1個を選ぶ4通りで、$Q_3(2)=4$ と一致する。重複組合せの数え方は 場合の数の数え方の体系 にある。また、四面体数を係数に並べた $\sum_{n\ge1}Q_3(n)x^n$ は $\frac{x}{(1-x)^4}$ に等しく、数列を関数として扱う見方は 母関数:数列を関数として扱う で扱っている。
立方数の和 $1^3+2^3+\cdots+n^3$ は、三角数の2乗 $T_n^2$ に等しい。その証明の1つは、$k^3$ を四面体数の階差で書き、この記事の四面体数の式を使う。これは 立方数の和と三角数 で扱う。
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