Dioclesのシッソイド(cissoid of Diocles)とは、$a>0$ について、原点 $O$ を通り $y$ 軸でない直線が円 $(x-a)^2+y^2=a^2$ と再び交わる点を $R$、直線 $x=2a$ と交わる点を $S$ とするとき、$\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{RS}$ となる点 $P$ の全体である。曲線は式 $y^2(2a-x)=x^3$ でちょうど表される。点 $(2a,0)$ を通る傾き $-m$($m>0$)の直線はシッソイドとただ 1 点 $P$ で交わり、$OP$ の傾きは $\sqrt[3]m$ である。$m=2$ とすれば $\sqrt[3]2$ が作図でき、立方体の倍積が解ける。直線 $x=2a$ は漸近線で、曲線と漸近線の間の面積は $3\pi a^2$ である。
前提知識: Nicomedesのコンコイド, 3大作図問題の不可能性, 直径に対する円周角, 媒介変数表示と曲線の長さ, 置換積分の使い方
1 辺 $1$ の立方体の 2 倍の体積をもつ立方体の 1 辺は $\sqrt[3]2$ である。3大作図問題の不可能性 では、$\sqrt[3]2$ が目盛りのない定規とコンパスでは作図できないことを示した。Nicomedesのコンコイド では、曲線を 1 本使うと角の 3 等分ができることを見た。この記事では、別の曲線を 1 本使うと $\sqrt[3]2$ が作図できることを示す。
その曲線は、円と、その円に接する直線から作る。まず座標で点を打ってみる。
中心 $(1,\ 0)$、半径 $1$ の円 $C\colon(x-1)^2+y^2=1$ と、直線 $k\colon x=2$ をとる。$k$ は $C$ に点 $K(2,\ 0)$ で接している。原点 $O$ を通る直線が $C$ と再び交わる点を $R$、$k$ と交わる点を $S$ とし、$O$ から $S$ の向きに長さ $RS$ だけ進んだ点を $P$ とする。
(1) 直線 $y=x$。$C$ の式に代入すると $(x-1)^2+x^2=1$、つまり $2x^2-2x=0$ で、$O$ 以外の解は $x=1$ なので $R(1,\ 1)$ である。$k$ との交点は $S(2,\ 2)$ である。$\overrightarrow{RS}=(1,\ 1)$ なので、$P$ は $O$ から $(1,\ 1)$ だけ進んだ点 $P(1,\ 1)$ で、この場合は $P=R$ になる。
(2) 直線 $y=\dfrac12x$。$C$ の式に代入すると $(x-1)^2+\dfrac14x^2=1$、つまり $\dfrac54x^2-2x=0$ で、$x=\dfrac85$ なので $R\left(\dfrac85,\ \dfrac45\right)$ である。$S(2,\ 1)$ なので $\overrightarrow{RS}=\left(\dfrac25,\ \dfrac15\right)$ で、$P\left(\dfrac25,\ \dfrac15\right)$ である。
(3) 直線 $y=2x$。$(x-1)^2+4x^2=1$、つまり $5x^2-2x=0$ で、$x=\dfrac25$ なので $R\left(\dfrac25,\ \dfrac45\right)$、$S(2,\ 4)$ である。$\overrightarrow{RS}=\left(\dfrac85,\ \dfrac{16}5\right)$ で、$P\left(\dfrac85,\ \dfrac{16}5\right)$ である。
3 つの $P$ は、どれも $y^2(2-x)=x^3$ を満たす。たとえば (3) では $\left(\dfrac{16}5\right)^2\cdot\dfrac25=\dfrac{512}{125}=\left(\dfrac85\right)^3$ である。
(1) $1^2\cdot(2-1)=1=1^3$。(2) $\left(\dfrac15\right)^2\cdot\dfrac85=\dfrac8{125}=\left(\dfrac25\right)^3$。
こうして得られる曲線を Diocles のシッソイド という。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 原点を通る直線の傾き $t$ | 媒介変数 $t$ | 有理的な媒介変数表示 |
| 円の弦の長さ $2a\cos\varphi$ | 補題「原点から $R$、$S$ までの距離」 | 円の極方程式 |
| 傾き $-m$ の直線との交点 | 立方根の作図 | 3 次の拡大 |
| 置換 $x=2a\sin^2u$ | 漸近線までの面積 | 広義積分 |
円 C と接線 k の間にはさまれた線分 RS を、原点 O から同じ向きに移した点 P がシッソイド(赤)をえがく
$a>0$ とする。原点を $O$ とし、中心 $(a,\ 0)$、半径 $a$ の円を $C$、直線 $x=2a$ を $k$ とする($k$ は $C$ に点 $K(2a,\ 0)$ で接する)。
$O$ を通り $y$ 軸でない直線を、$x$ 軸の正の向きから測った向き $\varphi$($-\dfrac\pi2<\varphi<\dfrac\pi2$)で表す。この直線が $C$ と $O$ 以外で交わる点を $R$、$k$ と交わる点を $S$ とし、
$$
\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{RS}
$$
となる点 $P$ をとる。こうして得られる点 $P$ の全体を、円 $C$ と直線 $k$ から作られる Diocles のシッソイド という。
$y$ 軸を除いたのは、$y$ 軸が $C$ に $O$ で接していて $O$ 以外の交点をもたず、$k$ とも交わらないからである。$\varphi=0$($x$ 軸)のときは $R=S=K$ で、$\overrightarrow{RS}=\vec 0$ なので $P=O$ である。Wei26 は条件を長さの等式 $OP=RS$ で述べている。この記事では、$P$ を $O$ から $S$ の向きにとることをベクトルの等式で決めた。
def-ciss の記号で、$OR=2a\cos\varphi$、$OS=\dfrac{2a}{\cos\varphi}$ である。$R$ と $S$ は $O$ から向き $\varphi$ の半直線の上にあり、
$$
RS=OS-OR=\frac{2a\sin^2\varphi}{\cos\varphi}
$$
である。
段 1($OS$)。$S$ は向き $\varphi$ の直線の上の点なので $S=OS\,(\cos\varphi,\ \sin\varphi)$ と書け($\cos\varphi>0$ なので $S$ は $x>0$ の側、つまり向き $\varphi$ の半直線の上にある)、$x$ 座標が $2a$ だから $OS\cos\varphi=2a$、$OS=\dfrac{2a}{\cos\varphi}$ である。
段 2($OR$)。$\varphi=0$ なら $R=K$ で $OR=2a=2a\cos0$ である。$\varphi\ne0$ のとき、$OK$ は $C$ の直径($O$ と $K$ は中心 $(a,\ 0)$ からの距離がどちらも $a$ で、中心をはさんで反対側にある)で、$R$ は $C$ の上の $O$、$K$ 以外の点なので、$\angle ORK=90^\circ$ である(直径に対する円周角)。直角三角形 $ORK$ で $\angle KOR=\lvert\varphi\rvert$ だから、$OR=OK\cos\varphi=2a\cos\varphi$ である。$OR>0$ で、$R$ は $C$ の上にあって $x$ 座標が正なので、$R$ も向き $\varphi$ の半直線の上にある。
段 3($RS$)。$0<\cos\varphi\le1$ から $OR=2a\cos\varphi\le2a\le\dfrac{2a}{\cos\varphi}=OS$ で、$R$ と $S$ は同じ半直線の上にあるので、$RS=OS-OR$ である。通分すると
$$
RS=\frac{2a}{\cos\varphi}-2a\cos\varphi=\frac{2a(1-\cos^2\varphi)}{\cos\varphi}=\frac{2a\sin^2\varphi}{\cos\varphi}
$$
である。$\square$
def-ciss のシッソイドについて、次が成り立つ。
(1) 向き $\varphi$ に対応する点は $P=\left(2a\sin^2\varphi,\ \dfrac{2a\sin^3\varphi}{\cos\varphi}\right)$ である。$t=\tan\varphi$ とおくと、$t$ はすべての実数を動き、
$$
P=\left(\frac{2at^2}{1+t^2},\ \frac{2at^3}{1+t^2}\right)
$$
である。$P\ne O$ のとき、直線 $OP$ の傾きは $t$ である。
(2) 平面の点 $(x,\ y)$ がシッソイドの上にあるための必要十分条件は
$$
y^2(2a-x)=x^3
$$
である。
(3) シッソイドは $0\le x<2a$ の範囲にあり、$x$ 軸に関して対称である。$t\to\pm\infty$ のとき $x\to2a$、$\lvert y\rvert\to\infty$ で、直線 $k\colon x=2a$ に限りなく近づく。
段 1((1) の $\varphi$ の式)。$\overrightarrow{RS}$ は向き $\varphi$ の半直線の上で $R$ から $S$ へ向かうベクトルなので、lem-ciss-dist から $\overrightarrow{RS}=RS\,(\cos\varphi,\ \sin\varphi)$ である。よって
$$
P=\frac{2a\sin^2\varphi}{\cos\varphi}(\cos\varphi,\ \sin\varphi)=\left(2a\sin^2\varphi,\ \frac{2a\sin^3\varphi}{\cos\varphi}\right)
$$
である。
段 2((1) の $t$ の式)。$\tan\varphi$ は $\left(-\dfrac\pi2,\ \dfrac\pi2\right)$ で増加し、すべての実数の値をとるので、$t=\tan\varphi$ はすべての実数を動く。$1+\tan^2\varphi=\dfrac1{\cos^2\varphi}$ から $\cos^2\varphi=\dfrac1{1+t^2}$、$\sin^2\varphi=1-\cos^2\varphi=\dfrac{t^2}{1+t^2}$ である。よって $x=2a\sin^2\varphi=\dfrac{2at^2}{1+t^2}$、$y=2a\sin^2\varphi\cdot\dfrac{\sin\varphi}{\cos\varphi}=x\,t=\dfrac{2at^3}{1+t^2}$ である。$y=tx$ なので、$P\ne O$($t\ne0$)のとき直線 $OP$ の傾きは $t$ である。
段 3((2) の必要性)。段 2 の点について、$2a-x=2a-\dfrac{2at^2}{1+t^2}=\dfrac{2a}{1+t^2}$ なので
$$
y^2(2a-x)=\frac{4a^2t^6}{(1+t^2)^2}\cdot\frac{2a}{1+t^2}=\frac{8a^3t^6}{(1+t^2)^3}=\left(\frac{2at^2}{1+t^2}\right)^3=x^3
$$
である。
段 4((2) の十分性)。点 $(x,\ y)$ が $y^2(2a-x)=x^3$ を満たすとする。$x=2a$ なら左辺は $0$、右辺は $8a^3\ne0$ で成り立たないので、$x\ne2a$ である。$x>2a$ なら左辺は $0$ 以下、右辺は正で成り立たない。$x<0$ なら左辺は $0$ 以上($2a-x>0$)、右辺は負で成り立たない。よって $0\le x<2a$ である。$x=0$ なら $2ay^2=0$ から $y=0$ で、点は原点、つまり $t=0$ の点である。$0< x<2a$ なら $t=\dfrac yx$ とおくと $y=tx$ で、式に代入して $x^2$ で割ると
$$
t^2(2a-x)=x,\qquad\text{すなわち}\qquad x=\frac{2at^2}{1+t^2}
$$
となり、$y=tx=\dfrac{2at^3}{1+t^2}$ である。これは (1) の $t$ の点である。
段 5((3))。段 4 より $0\le x<2a$ である。$t$ を $-t$ に替えると $x$ は変わらず $y$ は符号が変わるので、$x$ 軸に関して対称である。$x=2a-\dfrac{2a}{1+t^2}$ なので $t\to\pm\infty$ のとき $x\to2a$ で、$\lvert y\rvert=\lvert t\rvert\,x\to\infty$ である。$\square$
Nicomedesのコンコイド の直交座標の式には、曲線の上にない原点が紛れ込むことがあった。シッソイドの式 $y^2(2a-x)=x^3$ には余分な点がなく、式を満たす点の全体がちょうどシッソイドである(段 4)。
$a=1$ とする。(1) の $t$ の式で、ex-ciss-start の 3 点がもう一度得られる。
原点の近くでは、$x$ が小さいので $2a-x\approx2a$ で、$y^2\approx\dfrac{x^3}{2a}$ となる。上半分と下半分がどちらも $x$ 軸に接する向きから原点に入ってくるので、原点はとがった点(尖点)である(Wei26 もシッソイドが原点に尖点をもつことを述べている)。Nicomedesのコンコイド の $b=a$ の場合の尖点と同じ形である。
thm-ciss-eq の $t$ の式を、$2a-x$ と $y$ の比で見直す。prf-ciss-eq の段 3 で求めたように $2a-x=\dfrac{2a}{1+t^2}$ で、$y=\dfrac{2at^3}{1+t^2}$ なので、
$$
y=t^3\,(2a-x)
$$
が成り立つ。左辺と右辺を見比べると、点 $K(2a,\ 0)$ から見た $P$ の「傾きの大きさ」が $t^3$ になっている。これが立方根を作る鍵である。
def-ciss のシッソイドと点 $K(2a,\ 0)$ をとり、$m>0$ とする。$K$ を通る傾き $-m$ の直線は、シッソイドとただ 1 点 $P$ で交わり、直線 $OP$ の傾きは $\sqrt[3]m$ である。
段 1(交わる条件)。$K$ を通る傾き $-m$ の直線は $y=-m(x-2a)=m(2a-x)$ である。シッソイドの点は thm-ciss-eq (1) により媒介変数 $t$ の点 $\left(\dfrac{2at^2}{1+t^2},\ \dfrac{2at^3}{1+t^2}\right)$ で、上で見たように $y=t^3(2a-x)$ を満たす。よって、$t$ の点がこの直線の上にあるための必要十分条件は
$$
t^3(2a-x)=m(2a-x)
$$
である。シッソイドの点では $2a-x=\dfrac{2a}{1+t^2}>0$ なので、両辺を $2a-x$ で割って、条件は $t^3=m$ となる。
段 2(ただ 1 点)。関数 $t\mapsto t^3$ は増加し、すべての実数の値をとるので、$t^3=m$ となる実数 $t$ は $t=\sqrt[3]m$ のただ 1 つである。prf-ciss-eq の段 4 で見たように、シッソイドの点は $t$ で 1 つずつ決まるので、交点 $P$ はただ 1 つである。
段 3(傾き)。$m>0$ より $t=\sqrt[3]m\ne0$ なので $P\ne O$ で、thm-ciss-eq (1) により直線 $OP$ の傾きは $t=\sqrt[3]m$ である。$\square$
傾き $\sqrt[3]m$ の直線が引ければ、長さ $\sqrt[3]m$ の線分が作れる。直線 $OP$ と直線 $x=1$ の交点は $\left(1,\ \sqrt[3]m\right)$ で、この点と $(1,\ 0)$ を結ぶ線分の長さが $\sqrt[3]m$ だからである。$m=2$ とすれば $\sqrt[3]2$ が得られ、1 辺 $1$ の立方体の 2 倍の体積をもつ立方体の 1 辺が作図できる。傾き $-2$ の直線は、$K$ と点 $(2a-1,\ 2)$ を結べば定規で引ける。
a=1 のシッソイドで、K(2,0) から傾き −2 の直線を引き、交点 P と原点を結ぶ。直線 OP と x=1 の交点の高さが 2 の立方根 1.2599… になる
$a=1$、$K(2,\ 0)$ とする。
(1) $m=8$ のとき、thm-ciss-cube によれば $t=\sqrt[3]8=2$ で、$P$ は ex-ciss-points の点 $\left(\dfrac85,\ \dfrac{16}5\right)$ である。実際、$K$ を通る傾き $-8$ の直線 $y=8(2-x)$ に $x=\dfrac85$ を代入すると $y=8\cdot\dfrac25=\dfrac{16}5$ で、$P$ はこの直線の上にある。直線 $OP$ の傾きは $\dfrac{16/5}{8/5}=2=\sqrt[3]8$ である。
(2) $m=2$ のとき、$t=\sqrt[3]2=1.259921\ldots$ で、$t^2=1.587401\ldots$ なので
$$
P=\left(\frac{2t^2}{1+t^2},\ \frac{2t^3}{1+t^2}\right)=\left(\frac{3.174802\ldots}{2.587401\ldots},\ \frac{4}{2.587401\ldots}\right)\approx(1.22702,\ 1.54595)
$$
である($t^3=2$ を使った)。直線 $y=2(2-x)$ に $x=1.22702$ を代入すると $y=1.54595$ で、確かに直線の上にある。直線 $OP$ の傾きは $\dfrac{1.54595}{1.22702}\approx1.25992$ で、$\left(1.25992\right)^3\approx2.0000$ である。
折り紙による作図 の例「立方体の倍積:2 の立方根を折る」では、2 点を 2 本の直線に同時に重ねる折り目の傾きとして $\sqrt[3]2$ を得た。この記事の方法では、シッソイドと直線の交点をとる操作 1 回で同じ傾きが得られる。どちらの方法も、定規とコンパスにない操作を 1 つ加えている。
シッソイドは直線 $k\colon x=2a$ に限りなく近づき、上下に無限に伸びている。それでも、シッソイドと $k$ の間の部分の面積は有限の値になる。
面積の計算には、端で被積分関数が限りなく大きくなる積分を使う。区間 $[0,\ 2a)$ で連続な関数 $f(x)\ge0$ について、$0< X<2a$ で $\displaystyle\int_0^Xf(x)\,dx$ を求め、$X\to2a-0$ のときの極限が有限の値 $I$ になれば、$\displaystyle\int_0^{2a}f(x)\,dx=I$ と書き、これを面積とする。端が $\infty$ の場合の同じ考え方は Gauss積分(高校数学) の定義「広義積分の収束」にある。
def-ciss のシッソイドと直線 $k\colon x=2a$ の間の部分、つまり $0\le x<2a$、$\lvert y\rvert\le\sqrt{\dfrac{x^3}{2a-x}}$ の範囲の面積は
$$
2\int_0^{2a}\sqrt{\frac{x^3}{2a-x}}\,dx=3\pi a^2
$$
である。これは円 $C$ の面積 $\pi a^2$ のちょうど 3 倍である。
段 1(範囲と積分)。thm-ciss-eq (2) から、$0\le x<2a$ でシッソイドの上半分は $y=\sqrt{\dfrac{x^3}{2a-x}}$、下半分はその符号を変えたもので、間の部分の面積は $x$ 軸で上下に分けて 2 倍すればよい。$0< X<2a$ について $\displaystyle J(X)=\int_0^X\sqrt{\frac{x^3}{2a-x}}\,dx$ を求める。
段 2(置換)。thm-ciss-eq (1) の $x=2a\sin^2\varphi$ にならって、$x=2a\sin^2u$($0\le u<\dfrac\pi2$)とおく(置換積分の使い方)。$u$ が $0$ から $\dfrac\pi2$ に近づくとき $x$ は $0$ から $2a$ に近づき、$X=2a\sin^2U$ となる $U$($0< U<\dfrac\pi2$)がただ 1 つある。$dx=4a\sin u\cos u\,du$ で、$2a-x=2a\cos^2u$ なので、$\sin u\ge0$、$\cos u>0$ に注意して
$$
\sqrt{\frac{x^3}{2a-x}}=\sqrt{\frac{8a^3\sin^6u}{2a\cos^2u}}=\frac{2a\sin^3u}{\cos u}
$$
である。よって
$$
J(X)=\int_0^U\frac{2a\sin^3u}{\cos u}\cdot4a\sin u\cos u\,du=8a^2\int_0^U\sin^4u\,du
$$
となる。
段 3($\sin^4u$ の積分)。半角の公式 $\sin^2u=\dfrac{1-\cos2u}2$、$\cos^22u=\dfrac{1+\cos4u}2$ を使うと
$$
\sin^4u=\frac{(1-\cos2u)^2}4=\frac{1-2\cos2u+\cos^22u}4=\frac{3-4\cos2u+\cos4u}8
$$
なので
$$
\int_0^U\sin^4u\,du=\frac18\left(3U-2\sin2U+\frac14\sin4U\right)
$$
である。
段 4(極限)。$X\to2a-0$ のとき $U\to\dfrac\pi2-0$ で、$\sin2U\to\sin\pi=0$、$\sin4U\to\sin2\pi=0$ だから
$$
J(X)\to8a^2\cdot\frac18\cdot\frac{3\pi}2=\frac{3\pi a^2}2
$$
である。面積はその 2 倍で $\boxed{3\pi a^2}$ である。$\square$
a=1 のシッソイドと漸近線 x=2 の間の部分(色を付けた部分)。上下に無限に伸びているが、面積は 3π で有限である
$a=1$ とし、$0\le x\le1$ の部分の面積を求める。$X=1$ は $2\sin^2U=1$ から $U=\dfrac\pi4$ である。prf-ciss-area の段 3 の式で
$$
\int_0^{\pi/4}\sin^4u\,du=\frac18\left(\frac{3\pi}4-2\sin\frac\pi2+\frac14\sin\pi\right)=\frac18\left(\frac{3\pi}4-2\right)
$$
なので、$J(1)=8\cdot\dfrac18\left(\dfrac{3\pi}4-2\right)=\dfrac{3\pi}4-2\approx0.3562$ で、面積は $2J(1)=\dfrac{3\pi}2-4\approx0.7124$ である。全体の面積 $3\pi\approx9.4248$ のうち、ほとんどは $x$ が $2$ に近い、上下に伸びた部分にある。
3大作図問題の不可能性 の 3 つの問題は、どれも定規とコンパスでは解けないが、道具を 1 つ加えると解けるようになる。この組の記事で扱う道具を並べる。
| 問題 | 作る数 | 解く道具 | 扱う記事 |
|---|---|---|---|
| 角の 3 等分 | $4v^3-3v=\cos\theta$ の根 $v=\cos\dfrac\theta3$ | コンコイド、折り紙、Archimedes の螺旋、Hippias の円積曲線 | Nicomedesのコンコイド、折り紙による作図、Archimedesの螺旋、Hippiasの円積曲線 |
| 立方体の倍積 | $\sqrt[3]2$ | シッソイド、折り紙 | この記事、折り紙による作図 |
| 円積問題 | $\sqrt\pi$ | Hippias の円積曲線 | Hippiasの円積曲線 |
角の 3 等分と立方体の倍積は 3 次方程式の根を作る問題で、シッソイドやコンコイドのように、直線との交点を求めると 3 次方程式が出てくる曲線を 1 本加えれば解ける(円は $x$、$y$ の多項式で書けるが、直線や円との交点は 2 次方程式で決まるので足りない)。円積問題の $\sqrt\pi$ は、$0$ でない整数係数のどんな多項式に代入しても $0$ にならない数(超越数)である(3大作図問題の不可能性 の定理「Lindemann の定理」)。Hippiasの円積曲線 は、角の大きさと長さが比例するように作られた曲線で、この曲線を使うと $\pi$ に関係する長さが作れる。
thm-ciss-cube では、直線を引く点が $K(2a,\ 0)$ であることと、シッソイドが円 $C$ と接線 $k$ から作られていることが効いている。どれかを替えると、$OP$ の傾きは立方根にならない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 直線を引く点が $K(2a,\ 0)$ | $a=1$ で、中心 $(1,\ 0)$ から傾き $-2$ | 直線 $OP$ の傾きが $\sqrt[3]2$ |
| 直線 $k$ が円 $C$ の接線 $x=2a$ | $a=1$ で、$x=3$ に替えた曲線と、$(3,\ 0)$ から傾き $-2$ | 直線 $OP$ の傾きが $\sqrt[3]2$ |
| $\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{RS}$ で $P$ を決める | $P=R$ として円 $C$ そのものを使う | 直線 $OP$ の傾きが $\sqrt[3]2$ |
$a=1$ とし、$K$ の代わりに円の中心 $(1,\ 0)$ から傾き $-2$ の直線 $y=2(1-x)$ を引く。シッソイドの点 $\left(\dfrac{2t^2}{1+t^2},\ \dfrac{2t^3}{1+t^2}\right)$ では $1-x=\dfrac{1-t^2}{1+t^2}$ なので、直線の上にある条件は
$$
\frac{2t^3}{1+t^2}=\frac{2(1-t^2)}{1+t^2},\qquad\text{すなわち}\qquad t^3+t^2-1=0
$$
である。この方程式の実数解は $t\approx0.75488$ で、$\sqrt[3]2\approx1.25992$ ではない。$y=t^3(2-x)$ の形の関係は $K$ から見たときにだけ成り立つので、別の点から引くと $t^3$ がきれいに取り出せない。
$a=1$ とし、def-ciss の $k\colon x=2$ を $x=3$ に替えて、同じ規則 $\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{RS}$ で曲線を作る。$OR=2\cos\varphi$、$OS=\dfrac3{\cos\varphi}$ なので $P=\left(\dfrac3{\cos\varphi}-2\cos\varphi\right)(\cos\varphi,\ \sin\varphi)$ である。点 $(3,\ 0)$ から傾き $-2$ の直線 $y=2(3-x)$ との交点を求めると、$\varphi=45^\circ$ で $P=(3\sqrt2-\sqrt2)\left(\dfrac1{\sqrt2},\ \dfrac1{\sqrt2}\right)=(2,\ 2)$ となり、$2=2(3-2)$ で直線の上にある。直線 $OP$ の傾きは $1$ で、$\sqrt[3]2$ ではない。この曲線は $\varphi=0$ で $(1,\ 0)$ を通り、原点を通らない。
$a=1$ とし、$P=R$ とする($P$ は円 $C$ の上の点になる)。$K$ から傾き $-2$ の直線 $y=2(2-x)$ と円 $(x-1)^2+y^2=1$ の交点は、代入して $(x-1)^2+4(2-x)^2=1$、つまり $5x^2-18x+16=0$、$(x-2)(5x-8)=0$ から、$K$ 以外は $\left(\dfrac85,\ \dfrac45\right)$ である。直線 $OP$ の傾きは $\dfrac12$ で、$\sqrt[3]2$ ではない。円の点 $R$ については $y=t\,(2-x)$ ではなく、$\dfrac y{2-x}=\dfrac1t$(直径に対する円周角で $OR\perp RK$)となるので、傾き $-m$ の直線からは $\dfrac1m$ しか得られない。
a=1 のシッソイドに、円の中心 (1,0) から傾き −2 の直線を引くと、OP の傾きは約 0.755 で 2 の立方根にならない
直線 x=2 を x=3 に替えて作った曲線(紫)と、(3,0) から傾き −2 の直線の交点は (2,2) で、OP の傾きは 1 になる
式 $y^2(2a-x)=x^3$ は $x$、$y$ の 3 次式で、シッソイドは 3 次曲線 である。原点を通る直線 $y=tx$ を代入すると
$$
t^2x^2(2a-x)-x^3=-x^2\bigl((1+t^2)x-2at^2\bigr)=0
$$
となり、$x=0$ が 2 重の解、もう 1 つの解が $x=\dfrac{2at^2}{1+t^2}$ である。3 次曲線と直線の交点は、方程式の解として数えると(重なりも数えて)多くても 3 つで、原点の尖点が 2 つ分を占めるので、残りの交点が 1 つだけ決まり、$t$ の分数式(有理式)で書ける。thm-ciss-eq (1) の $t$ の式はこうして出てくる。円 $x^2+y^2=1$ の点 $(-1,\ 0)$ を通る直線の傾きで円の点を表すのと同じ考え方である(ピタゴラス数と円の有理点)。
交点の座標が $t$ の有理式なので、シッソイドの上の点をとる操作は「$t$ から $t$ の有理式を作る」ことにあたる。thm-ciss-cube では、逆に交点の条件 $t^3=m$ を解いて $t=\sqrt[3]m$ を取り出した。定規とコンパスで作れる数は、有理数から四則と平方根をくり返して得られる数で、$\sqrt[3]2$ はその中にない(作図可能数、3大作図問題の不可能性 の定理「立方体の倍積の不可能性」)。シッソイドとの交点をとる操作を 1 つ加えると、立方根がとれるようになる。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する