古典群の分類空間のコホモロジー(cohomology of classifying spaces of classical groups)とは、分類空間 $BU(n)$・$BSp(n)$・$BSU(n)$ の整数係数のコホモロジー環のことで、それぞれ $\mathbb{Z}[c_1,\dots,c_n]$、$\mathbb{Z}[q_1,\dots,q_n]$、$\mathbb{Z}[c_2,\dots,c_n]$($\deg c_i=2i$、$\deg q_i=4i$)という多項式環になる。無限 Grassmann 多様体を模型にとり、トートロジー束の Gysin 列で $n$ について帰納すると、最高次の生成元が Euler 類として現れる。生成元 $c_i$ は Chern 類で、極大トーラスの分類空間に引き戻すと対称多項式の環と同型になる。
前提知識: 分類空間, Grassmann多様体, Gysin列, Euler類
古典群の分類空間のコホモロジー(cohomology of classifying spaces of classical groups)は、ユニタリ群 $U(n)$、コンパクトシンプレクティック群 $Sp(n)$、特殊ユニタリ群 $SU(n)$ の分類空間 $BU(n)$・$BSp(n)$・$BSU(n)$ の整数係数のコホモロジー環である。どれも多項式環で、
$$
H^*(BU(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[c_1,\dots,c_n],\quad H^*(BSp(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[q_1,\dots,q_n],\quad H^*(BSU(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[c_2,\dots,c_n]
$$
($\deg c_i=2i$、$\deg q_i=4i$)となる。生成元を分類写像で引き戻したものがベクトル束の特性類であり、$BU(n)$ の生成元 $c_i$ は Chern 類である。
この記事では、$BU(n)$ と $BSp(n)$ の環を、トートロジー束の零でないベクトルの空間が 1 つ小さい分類空間とホモトピー同値であることと Gysin 列から、$n$ についての帰納法で同時に証明する。$BSU(n)$ の環は円周束の Gysin 列から求める。最後に、極大トーラス(四元数の場合は対角に並んだ $Sp(1)^n$)の分類空間への制限が対称多項式の環への同型になることを述べる。
$\mathbb K$ を $\mathbb C$ または四元数体 $\mathbb H$ とし、$d:=\dim_{\mathbb R}\mathbb K$($2$ または $4$)、$G(n):=U(n)$($\mathbb K=\mathbb C$)または $Sp(n)$($\mathbb K=\mathbb H$)とする(古典群のコホモロジー環 の定義「コンパクト古典群」)。$\mathbb K^\infty:=\bigoplus_{i\ge1}e_i\mathbb K$(有限和、スカラーは右から掛ける)に内積 $\langle x,y\rangle=\sum_i\bar x_iy_i$ を入れる。
$m\ge0$ について、$\mathbb K^\infty$ の $m$ 次元 $\mathbb K$ 部分空間の全体を $G_m=G_m(\mathbb K^\infty)$ と書き、有限段 $G_m(\mathbb K^N)$ による帰納極限の位相を入れる($G_0$ は 1 点 $\{0\}$)。$E(\gamma_m):=\{(X,v)\in G_m\times\mathbb K^\infty\mid v\in X\}$ にも有限段による帰納極限の位相を入れ、$(X,v)\mapsto X$ をトートロジー束 $\gamma_m$ という。$E_0(\gamma_m):=\{(X,v)\in E(\gamma_m)\mid v\ne0\}$、$\pi_0\colon E_0(\gamma_m)\to G_m$ を射影とする。
$\gamma_m$ は階数 $m$ の $\mathbb K$ ベクトル束であり、実ベクトル束としての階数は $dm$ である(局所自明性は MS74 Lemma 5.4(p. 64)の実の場合の証明が、直交射影を $\mathbb K$ 線形にしてそのまま通る)。
1 の束と可縮性は Hat02 Example 4.53(pp. 381–382)にあり、可縮な全空間をもつ主束が普遍束であることは 分類空間 の定理「普遍束の可縮性による判定」による($G_n$ はコンパクト空間の帰納極限なのでパラコンパクトである。MS74 p. 66)。2 はホモトピー完全列(分類空間 の命題「分類空間のホモトピー群」)から従い、$G(n)$ の弧状連結性は 古典群のコホモロジー環 の定理「$U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ のコホモロジー環」の証明にある。この記事では 1 を証明しない。
向き. $\mathbb K$ ベクトル空間 $X$ の正規直交基底 $u_1,\dots,u_m$ から実の基底 $u_1\epsilon_1,\dots,u_1\epsilon_d,\dots,u_m\epsilon_d$($\epsilon_1,\dots,\epsilon_d$ は $\mathbb K$ の実の標準基底 $1,i$ または $1,i,j,k$)を作る。2 つの正規直交基底の間の変換は $G(m)$ の元で、$G(m)$ は弧状連結で単位行列を含むので、実の行列としての行列式は正である。よってこの実の基底の向きは $X$ だけで決まり、局所的な正規直交枠(Hat02 Example 4.53)で連続に変わるので、$\gamma_m$ は実ベクトル束として向き付けられる。$\mathbb K=\mathbb C$ ではこれは複素構造の定める向きである。$e(\gamma_m)\in H^{dm}(G_m;\mathbb Z)$ をこの向きの Euler 類(Euler類)とする。
ずらしと安定化. $\sigma\colon\mathbb K^\infty\to\mathbb K^\infty$、$\sigma(e_i):=e_{i+1}$ とし、
$$
j_n\colon G_{n-1}\to G_n,\qquad j_n(Y):=\sigma(Y)\oplus e_1\mathbb K
$$
を安定化写像という($\sigma(Y)$ は $e_1$ に直交する)。$(v,\lambda)\mapsto\sigma(v)+e_1\lambda$ により、$j_n^*\gamma_n$ は $\gamma_{n-1}$ と自明な $\mathbb K$ 直線束の直和に同型である。
$n\ge0$ とする。$b_i\in H^{di}(G_n;\mathbb Z)$($1\le i\le n$)で次の 2 条件を満たすものがただ 1 組ある:$n\ge1$ なら $b_n=e(\gamma_n)$ であり、$n\ge2$ なら $1\le i\le n-1$ について $j_n^*b_i$ は $G_{n-1}$ の $b_i$ に等しい。さらに
$\mathbb K=\mathbb C$ では $b_i$ を $c_i$、$\mathbb K=\mathbb H$ では $q_i$ と書く。すなわち $H^*(BU(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]$、$H^*(BSp(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[q_1,\dots,q_n]$ であり、Poincaré 級数は $\prod_{i=1}^n(1-t^{di})^{-1}$ である。$n=1$ では $G_1=\mathbb K\mathrm P^\infty$ で、定理は $H^*(\mathbb K\mathrm P^\infty;\mathbb Z)=\mathbb Z[e(\gamma_1)]$ を述べる(無限次元射影空間 の定理「無限次元射影空間のコホモロジー環」と合う)。証明は次の lem-ccs-sphere を準備したあと prf-ccs-main で与える。
$n\ge1$ とし、$g\colon G_{n-1}\to E_0(\gamma_n)$ を $g(Y):=(\sigma(Y)\oplus e_1\mathbb K,\ e_1)$ で定める。$g$ はホモトピー同値であり、$\pi_0\circ g=j_n$ である。
要点:$f(X,v):=X\cap v^\perp$($X$ の中での $v\mathbb K$ の直交補空間)とおくと、$f\circ g$ は $Y\mapsto\sigma(Y)$ で、これは線形ホモトピー $(1-t)\mathrm{id}+t\sigma$ で恒等写像につながる。$g\circ f$ は、$(X,v)$ をずらして $e_1$ に直交させ、$v$ を $e_1$ の方向へ回すことで恒等写像につながる。
位相についての注意.以下の写像とホモトピーは、どれも有限段 $\mathbb K^N$ の上で連続な式で与えられ、$\mathbb K^N$ の対象を $\mathbb K^{N+1}$ の対象に写す。空間は有限段(局所コンパクト)の帰納極限で、区間 $I$ との積もまた有限段と $I$ の積の帰納極限の位相をもつ(MS74 Lemma 5.5、p. 64)ので、どれも連続である。$f$ が有限段で連続であることは、$X\cap v^\perp$ への直交射影が $P_X-v|v|^{-2}v^*$($P_X$ は $X$ への直交射影)で $(X,v)$ について連続であることによる。
$\sigma$ と恒等写像.$L_t:=(1-t)\mathrm{id}+t\sigma$($0\le t\le1$)は単射である。実際 $x\ne0$ の 0 でない成分のうち添字が最大のものを $x_me_m$ とすると、$L_tx$ の $e_{m+1}$ の成分は $tx_m$ で、$t>0$ なら $0$ でなく、$t=0$ なら $L_0x=x\ne0$ である。よって $(Y,t)\mapsto L_t(Y)$ は $\mathrm{id}_{G_{n-1}}$ から $Y\mapsto\sigma(Y)$ へのホモトピーである。$f(g(Y))=(\sigma(Y)\oplus e_1\mathbb K)\cap e_1^\perp=\sigma(Y)$ なので $f\circ g\simeq\mathrm{id}$ である。
$g\circ f\simeq\mathrm{id}$.3 つのホモトピーをつなぐ。(i) $(X,v,t)\mapsto(L_tX,L_tv)$ は恒等写像から $(X,v)\mapsto(\sigma X,\sigma v)$ へのホモトピーである($L_tv\ne0$)。(ii) $\theta:=\pi s/2$($0\le s\le1$)、$u_s:=\sigma(v)\cos\theta+e_1|v|\sin\theta$ とおく。$\sigma$ は内積を保ち、$\sigma(v)$ と $e_1$ はどちらも $\sigma(X\cap v^\perp)$ に直交し、互いにも直交するので、$u_s\ne0$ は $\sigma(X\cap v^\perp)$ に直交する。よって $(\sigma(X\cap v^\perp)\oplus u_s\mathbb K,\ u_s)\in E_0(\gamma_n)$ であり、$s=0$ で $(\sigma X,\sigma v)$、$s=1$ で $(\sigma(X\cap v^\perp)\oplus e_1\mathbb K,\ e_1|v|)$ になる。(iii) $(\sigma(X\cap v^\perp)\oplus e_1\mathbb K,\ e_1((1-t)|v|+t))$ で第 2 成分を $e_1$ にする。終点は $g(f(X,v))$ である。
$\pi_0\circ g=j_n$ は定義から明らかである。$\square$
$n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では $G_0$ は 1 点で、$H^*(G_0)=\mathbb Z$ である。$n\ge1$ とし、$G_{n-1}$ について定理が成り立つとする。
Gysin 列. 向き付けられた実階数 $dn$ の束 $\gamma_n$ に Gysin列 の定理「整数係数の Gysin 列」を当てると、$e:=e(\gamma_n)$ について完全列
$$
\cdots\to H^{q-dn}(G_n)\xrightarrow{\ \smile e\ }H^q(G_n)\xrightarrow{\ \pi_0^*\ }H^q(E_0(\gamma_n))\xrightarrow{\ \partial\ }H^{q-dn+1}(G_n)\xrightarrow{\ \smile e\ }\cdots
$$
がある。lem-ccs-sphere により $g^*\colon H^*(E_0(\gamma_n))\to H^*(G_{n-1})$ は同型で、$g^*\circ\pi_0^*=j_n^*$ なので、$\pi_0^*$ を $j_n^*$ に置き換えた列も完全である。
低い次数の類. $q< dn-1$ では $H^{q-dn}=H^{q-dn+1}=0$ なので $j_n^*$ は次数 $q$ で同型である。$d\ge2$ だから $1\le i\le n-1$ について $di\le d(n-1)< dn-1$ であり、$j_n^*b_i=b_i$ となる $b_i\in H^{di}(G_n)$ がただ 1 つある。$b_n:=e$ とおく。
短完全列. $j_n^*$ は環準同型で、帰納法の仮定から $H^*(G_{n-1})$ は $b_1,\dots,b_{n-1}$ で生成されるので、$j_n^*$ は全射である。よって $\partial=0$ となり、$\smile e$ は単射で、各 $q$ について短完全列
$$
0\to H^{q-dn}(G_n)\xrightarrow{\ \smile b_n\ }H^q(G_n)\xrightarrow{\ j_n^*\ }H^q(G_{n-1})\to0
$$
を得る。また $1\in H^0(G_n)$ について $\pi_0^*(e)=\pi_0^*(1\smile e)=0$ なので $j_n^*b_n=g^*\pi_0^*e=0$ である。これで 2 が示された。
多項式環. $\Phi\colon\mathbb Z[X_1,\dots,X_n]\to H^*(G_n)$ を $X_i\mapsto b_i$ とする。全射性を次数 $q$ についての帰納法で示す。$x\in H^q(G_n)$ をとると、帰納法の仮定から $j_n^*x=P(b_1,\dots,b_{n-1})$ となる多項式 $P$ がある。$x-P(b_1,\dots,b_{n-1})$ は $j_n^*$ の核にあるので $b_ny$($y\in H^{q-dn}(G_n)$)と書け、$y$ は次数についての帰納法の仮定から $\Phi$ の像にある。単射性:$\Phi(P)=0$ とし、$P=P_0(X_1,\dots,X_{n-1})+X_nP_1$ と書く。$j_n^*$ を当てると $j_n^*b_n=0$ から $P_0(b_1,\dots,b_{n-1})=0$ となり、$G_{n-1}$ についての仮定から $P_0=0$ である。すると $b_n\Phi(P_1)=0$ で、$\smile b_n$ は単射だから $\Phi(P_1)=0$、次数についての帰納法から $P_1=0$ である。$\square$
$\mathbb K=\mathbb C$ では、$c_i=b_i$ は普遍束 $\gamma_n$ の第 $i$ Chern 類 $c_i(\gamma_n)$ に等しい。とくに $H^*(G_n(\mathbb C^\infty);\mathbb Z)=\mathbb Z[c_1(\gamma_n),\dots,c_n(\gamma_n)]$ である。
MS74 §14(pp. 157–158)は Chern 類を、最高次を $c_n(\omega)=e(\omega_{\mathbb R})$(複素構造の向き)とし、$i< n$ では $E_0(\omega)$ の上の直交補空間の束 $\omega_0$ について $\pi_0^*c_i(\omega)=c_i(\omega_0)$ となる類として帰納的に定め、自然性(Lemma 14.2、p. 158)と自明な束を足しても変わらないこと(Lemma 14.3、p. 159)を示している。$j_n^*\gamma_n\cong\gamma_{n-1}\oplus\varepsilon$ なので $j_n^*c_i(\gamma_n)=c_i(\gamma_{n-1})$ であり、thm-ccs-main の一意性から $n$ についての帰納法で $c_i(\gamma_n)=b_i$ を得る。これらは Chern類 の公理を満たす Chern 類である(MS74 (14.7)、p. 164。Chern類 の注意「存在の証明の出典」)。$\square$
これは MS74 Theorem 14.5(p. 161)である。Grassmann多様体のコホモロジー の定理「無限 Grassmann 多様体のコホモロジー環」は、胞体の個数と対称多項式を比べる別の証明を与える。
この節では $\mathbb K=\mathbb C$ とする。$j_n$ により $G_0\subset G_1\subset\cdots$ とみなし($j_n$ は閉集合の上への同相写像。下の折りたたみ)、和集合 $BU:=\bigcup_nG_n$ に弱位相を入れ、包含を $\iota_n\colon G_n\to BU$ と書く。
$\alpha(e_i):=e_{2i-1}$、$\beta(e_i):=e_{2i}$ とおくと、Whitney 和の写像 $\omega_{m,n}\colon G_m\times G_n\to G_{m+n}$、$(X,Y)\mapsto\alpha(X)\oplus\beta(Y)$ は $\omega_{m,n}^*\gamma_{m+n}\cong\mathrm{pr}_1^*\gamma_m\oplus\mathrm{pr}_2^*\gamma_n$ を満たす。$G_m$ の $c_k$ は $k>m$ では $0$ とし、$c_0:=1$ とおく。
有限段への制限. $BU$ のコンパクト集合はある $G_n$ に含まれる(下の折りたたみ)ので、余鎖複体は $\varprojlim_n\operatorname{Hom}(S_\bullet(G_n),\mathbb Z)$ で、推移写像は全射である。Milnor完全列 の定理「複体の射影系のMilnor完全列」の $\varprojlim^1_nH^{q-1}(G_n)$ は、$j_n^*$ が全射(thm-ccs-main の 2)なので Mittag-Leffler条件 の定理「Mittag-Leffler条件のもとでの消滅」の 2 により $0$ であり、$\lambda(x):=(\iota_n^*x)_n$ は環の同型 $H^*(BU)\cong\varprojlim_nH^*(G_n)$(次数ごとの極限)である。
多項式環. $j_n^*c_k=c_k$($k< n$)、$j_n^*c_n=0$ なので $(c_k)_n$ は極限の元で、$c_k\in H^{2k}(BU)$ がただ 1 つ定まる。$2N\ge q$ なら $\iota_N^*$ は $H^q(BU)\cong H^q(G_N)$ を与え、次数 $q$ の単項式には $c_k$($k\le N$)しか現れないので、thm-ccs-main の 1 から 1 を得る(下の折りたたみ)。
余積. cor-ccs-chern と Chern類 の定義「Chern類の公理的定義」の自然性・Whitney の和公式・正規化(階数を超える類は $0$)により
$$
\omega_{m,n}^*c_k=c_k(\mathrm{pr}_1^*\gamma_m\oplus\mathrm{pr}_2^*\gamma_n)=\sum_{a+b=k}c_a\times c_b
$$
である。等式の両辺は環準同型で、$c_k$ での値がこれで一致するので等しい。一意性は Künneth公式 による(下の折りたたみ)。$\square$
$j_n$ と $\iota_n$.$X\ni e_1$ なら $X=e_1\mathbb C\oplus(X\cap e_1^\perp)$ で $e_1^\perp=\sigma(\mathbb C^\infty)$ なので、$j_n$ の像は $\{X\in G_n\mid e_1\in X\}$ である。$j_n$ は有限段 $G_{n-1}(\mathbb C^{N})$ を $G_n(\mathbb C^{N+1})$ の中の集合 $\{X\mid e_1\in X\}$ の上へ写す連続な単射(コンパクトから Hausdorff への写像)なので、有限段ごとに閉集合の上への同相写像であり、$j_n(Y)\subset\mathbb C^{N+1}$ と $Y\subset\mathbb C^N$ は同値である。両側の空間は有限段による弱位相をもつので、$j_n$ は閉集合の上への同相写像である。$C\subset G_n$ が閉なら、$m\ge n$ では $C$ は $G_m$ の閉集合で、$m< n$ では $C\cap G_m$ は $G_m$ の閉集合なので、$\iota_n(C)$ は $BU$ の閉集合である。よって $\iota_n$ は閉集合の上への同相写像であり、$S_q(G_n)$ は $S_q(G_{n+1})$ の基底の一部で張られ、余鎖の制限は全射である。
コンパクト集合.コンパクト集合 $K\subset BU$ がどの $G_n$ にも含まれないとする。$n_1:=0$ から始めて、$x_k\in K\setminus G_{n_k}$ を選び、$x_k\in G_{n_{k+1}}$ となる $n_{k+1}>n_k$ をとることを繰り返せる($BU$ の各点はある $G_m$ に属する)。点列 $\{x_k\}$ のどの部分集合も、各 $G_n$ とは有限個の点でしか交わらず($n_k\ge n$ なら $x_k\notin G_n$)、$G_n$ は Hausdorff なので、$BU$ の閉集合である。すると $\{x_k\}$ は $K$ の無限個の点からなる閉集合で相対位相は離散なので、$K$ がコンパクトであることに反する。特異単体の像はコンパクトなので、ある $G_n$ に入る。
多項式環の残り.$n\ge N$ なら $j_{n+1}^*$ は全射で、核は $c_{n+1}H^*(G_{n+1})$(thm-ccs-main の 2)なので次数 $q$ では $0$ であり、$j_{n+1}^*$ は次数 $q$ で同型である。よって射影 $\varprojlim_nH^q(G_n)\to H^q(G_N)$ は同型で、$\iota_N^*=(\text{射影})\circ\lambda$ も同型である。次数 $q$ の単項式に現れる $c_k$ は $2k\le q$ を満たすので $k\le N$ であり、$\mathbb Z[c_1,c_2,\dots]$ の次数 $q$ の部分は $\mathbb Z[c_1,\dots,c_N]$ の次数 $q$ の部分に等しく、thm-ccs-main の 1 によりこれは $\iota_N^*$ を通して $H^q(G_N)$ へ同型に写る。よって $\mathbb Z[c_1,c_2,\dots]\to H^*(BU)$ は同型である。$\iota_n^*$ は $c_k\mapsto c_k$($k\le n$)、$c_k\mapsto0$($k>n$)で定まる環準同型 $\mathbb Z[c_1,c_2,\dots]\to\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]$ なので、全射で、核は $(c_{n+1},c_{n+2},\dots)$ である。
$G_m\times G_n$ と $\omega_{m,n}$.$G_m$、$G_n$ は可算個の胞体をもつ CW 複体(Schubert胞体 の定理「Schubert 胞体による CW 構造」)なので、積位相の $G_m\times G_n$ は積の CW 構造をもち、その位相は有限段 $G_m(\mathbb C^N)\times G_n(\mathbb C^N)$ による弱位相に一致する(Hat02 Theorem A.6、p. 524)。CW 複体はパラコンパクト Hausdorff なので(パラコンパクト空間 の定理「CW 複体のパラコンパクト性」)、Chern 類の公理が使える。$\omega_{m,n}$ と束の同型 $(v,w)\mapsto\alpha(v)+\beta(w)$ は、有限段 $G_m(\mathbb C^N)\times G_n(\mathbb C^N)\to G_{m+n}(\mathbb C^{2N})$ の上で直交射影の行列の連続な式で与えられるので連続である。
余積の等式.両辺は $H^*(BU)$ から $H^*(G_m\times G_n)$ への環準同型である(クロス積は環準同型:Künneth公式 の命題「クロス積は環準同型」。次数はすべて偶数なので符号は出ない)。$c_k$ での値は、左辺が $\omega_{m,n}^*c_k$、右辺が $\sum_{a+b=k}\iota_m^*c_a\times\iota_n^*c_b$ で、上の式により等しい($k>m+n$ ではどちらも $0$)。$H^*(BU)$ は $c_k$ で生成されるので両辺は等しい。
一意性.次数 $q$ を固定し $2m,2n\ge q$ とすると、多項式環の段により $\iota_m^*$、$\iota_n^*$ は次数 $q$ 以下で同型である。$G_m$、$G_n$ は CW 複体で、コホモロジーは各次数で有限生成自由なので、Künneth公式 の定理「コホモロジー環の Künneth の公式」によりクロス積 $H^*(G_m)\otimes H^*(G_n)\to H^*(G_m\times G_n)$ は同型である。したがって $\times\circ(\iota_m^*\otimes\iota_n^*)$ は次数 $q$ 以下の部分で単射である。等式を満たす準同型 $\Delta'$ と $x\in H^*(BU)$ について、$\Delta(x)$ と $\Delta'(x)$ の $0$ でない成分の次数がどれも $q$ 以下になるように $q$ をとれば、等式から $\Delta'(x)=\Delta(x)$ を得る。$\square$
$\tilde G_n:=V_n(\mathbb C^\infty)/SU(n)$(右からの作用の軌道空間)とし、$r\colon\tilde G_n\to G_n(\mathbb C^\infty)$ を枠の張る部分空間をとる写像とする。$r$ はファイバーが $U(n)/SU(n)\cong S^1$(行列式による)のファイバー束で、$V_n(\mathbb C^\infty)\to\tilde G_n$ はファイバー $SU(n)$ の主束である(Hat02 Example 4D.7、pp. 439–440)。$V_n(\mathbb C^\infty)$ は可縮なので、$\tilde G_n$ は $BSU(n)$ の模型である。
$n\ge1$ とする。$r^*\colon H^*(BU(n);\mathbb Z)=\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]\to H^*(BSU(n);\mathbb Z)$ は全射で、その核は $c_1$ の生成するイデアルである。したがって
$$
H^*(BSU(n);\mathbb Z)\cong\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]/(c_1)\cong\mathbb Z[c_2,\dots,c_n]
$$
であり(右辺の $c_i$ は $r^*c_i$)、$n=1$ では右辺は $\mathbb Z$ である。
$\tilde G_n$ は 2 連結. 可縮な全空間をもつ束 $SU(n)\to V_n(\mathbb C^\infty)\to\tilde G_n$ のホモトピー完全列から $\pi_k(\tilde G_n)\cong\pi_{k-1}(SU(n))$ である。$SU(n)$ は弧状連結かつ単連結(ユニタリ群 の定理「$\mathrm{SU}(n)$ の単連結性と $\mathrm{U}(n)$ の基本群」)なので $\pi_1(\tilde G_n)=\pi_2(\tilde G_n)=0$ であり、Hurewiczの定理 から $H_1(\tilde G_n)=H_2(\tilde G_n)=0$、普遍係数定理 から $H^2(\tilde G_n;\mathbb Z)=0$ である。
Euler 類は $\pm c_1$. 底空間 $G_n(\mathbb C^\infty)$ は単連結なので円周束 $r$ は向き付け可能であり、ある $e'\in H^2(G_n(\mathbb C^\infty))$ について Gysin 列
$$
\cdots\to H^{k-2}(G_n)\xrightarrow{\ \smile e'\ }H^k(G_n)\xrightarrow{\ r^*\ }H^k(\tilde G_n)\to H^{k-1}(G_n)\xrightarrow{\ \smile e'\ }H^{k+1}(G_n)\to\cdots
$$
がある(Hat02 pp. 438、440–444。底空間が単連結な球面束は向き付け可能である。同書 p. 442)。$k=2$ の部分 $H^0(G_n)\xrightarrow{\smile e'}H^2(G_n)\to H^2(\tilde G_n)=0$ から、$\mathbb Z\cdot e'=H^2(G_n)=\mathbb Z\cdot c_1$ であり、$e'=\pm c_1$ である。
短完全列. $\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]$ は整域なので $\smile e'$ はどの次数でも単射である。よって列の連結準同型は $0$ で、$r^*$ は全射、核は $e'H^{k-2}(G_n)=c_1H^{k-2}(G_n)$ である。$r^*$ は環準同型なので、環の同型 $\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]/(c_1)\cong H^*(\tilde G_n)$ を得る。$\square$
$SU(2)$ と $Sp(1)$ はどちらも単位四元数の群 $S^3$ と同型なので、$BSU(2)\simeq BSp(1)=\mathbb H\mathrm P^\infty$ である(分類空間 の命題「分類空間のホモトピー型の一意性」)。実際 $H^*(BSU(2))=\mathbb Z[c_2]$($\deg c_2=4$)と $H^*(\mathbb H\mathrm P^\infty)=\mathbb Z[q_1]$ は次数まで一致する。
$T^n\subset U(n)$ を対角行列のトーラス(ユニタリ群 の例「対角行列のトーラス」)とする。Grassmann多様体のコホモロジー の「積からの写像」
$$
f\colon(\mathbb{CP}^\infty)^n\to G_n(\mathbb C^\infty),\qquad f(\ell_1,\dots,\ell_n)=\iota_1(\ell_1)\oplus\cdots\oplus\iota_n(\ell_n)
$$
($\iota_j$ は像が互いに直交する線形な埋め込み)は $f^*\gamma_n\cong\pi_1^*\gamma_1\oplus\cdots\oplus\pi_n^*\gamma_1$ を満たす。$(\mathbb{CP}^\infty)^n$ は $BT^n$ の模型であり、右辺は普遍 $T^n$ 束から $T^n\subset U(n)$ で構造群を広げた束にあたるので、$f$ は包含 $T^n\subset U(n)$ が誘導する写像 $BT^n\to BU(n)$ を表す(分類空間 の例「ユニタリ群とGrassmann多様体」)。
1 は cor-ccs-chern と、Grassmann多様体のコホモロジー の定理「無限 Grassmann 多様体のコホモロジー環」の 2 による。2 は Hat02 Theorem 4D.4 の証明(pp. 436–437。旗の束に Leray–Hirsch の定理を当て、Poincaré 級数を比べる)による。$F_n(\mathbb H^\infty)=V_n(\mathbb H^\infty)/Sp(1)^n$ は対角に並んだ部分群 $Sp(1)^n\subset Sp(n)$ の分類空間の模型である。この記事では 2 を証明しない。
1 により、$BU(n)$ の類は「$n$ 個の直線束の和に引き戻すと、それぞれの第 1 Chern 類の対称式になる」ものとして完全に決まる。これが 分裂原理 の位相的な形である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 群が $U(n)$・$Sp(n)$・$SU(n)$ のどれかであること | $O(1)=\mathbb Z/2$、$BO(1)=\mathbb{RP}^\infty$ | $H^2(\mathbb{RP}^\infty;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ で、整数係数の環が多項式環にならない |
| 円周束の Euler 類が $\pm c_1$ であること(thm-ccs-bsu の証明) | 自明な円周束 $G_n(\mathbb C^\infty)\times S^1$ | $H^1=\mathbb Z\ne0$ で、コホモロジーは $\mathbb Z[c_1,\dots,c_n]/(c_1)$ と同型でない |
| 空間が無限次元であること($\mathbb K^\infty$ の部分空間をとる) | 有限の射影空間 $\mathbb{CP}^N=G_1(\mathbb C^{N+1})$ | $H^*(\mathbb{CP}^N)=\mathbb Z[c_1]/(c_1^{N+1})$ で多項式環でない |
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する