不分岐拡大と完全分岐拡大(unramified and totally ramified extensions)とは、局所体 $K$ の有限次拡大 $L$ のうち、分岐指数 $e$ が $1$ のもの(剰余体だけが大きくなる拡大)と、$e$ が拡大次数 $[L:K]$ に等しいもの(剰余体が変わらない拡大)のことである。$K$ の不分岐拡大は各次数 $n$ にただ 1 つあって $1$ の $(q^n-1)$ 乗根で生成され、その Galois 群は Frobenius 元が生成する位数 $n$ の巡回群である。完全分岐拡大はちょうど Eisenstein 多項式の根で生成される拡大で、その根が一意化元になり整数環を単項生成する。任意の有限次拡大は、最大不分岐部分拡大と、その上の完全分岐拡大の 2 段に分かれる。
局所体 $K$ の有限次拡大 $L$ では、$K$ の一意化元が $L$ でどれだけ細かく割れるか(分岐指数 $e$)と、剰余体がどれだけ大きくなるか(剰余次数 $f$)の 2 つの量が $[L:K]=ef$ を満たす。$e=1$ の拡大を不分岐拡大、$f=1$ の拡大を完全分岐拡大という。この記事では、不分岐拡大は各次数に 1 つずつあって 1 の冪根で生成され、Galois 群は剰余体の Galois 群と同じ巡回群であること、完全分岐拡大はちょうど Eisenstein 多項式の根で生成される拡大であること、一般の有限次拡大はこの 2 種類を積み重ねたものであることを証明する。
以下、$K$ は 局所体 の記事の定義「局所体」の意味の局所体とする。正規化された離散付値を $v_K\colon K^\times\to\mathbb{Z}$、付値環を $\mathcal{O}_K$、極大イデアルを $\mathfrak{m}_K$、一意化元を $\pi_K$、剰余体を $k=\mathcal{O}_K/\mathfrak{m}_K$ とし、$k$ の元の個数を $q$、$k$ の標数を $p$ と書く。$K$ の代数閉包 $\overline{K}$ を 1 つ固定し、$K$ の有限次拡大はすべて $\overline{K}$ の中でとる。
$L/K$ を次数 $n$ の有限次拡大とする。局所体 の記事の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1 により、$L$ の離散付値 $v_L\colon L^\times\to\mathbb{Z}$(全射)で、ある整数 $e\ge1$ について $v_L|_{K^\times}=e\,v_K$ となるものがただ 1 つあり、$(L,v_L)$ は局所体で、その剰余体 $\ell=\mathcal{O}_L/\mathfrak{m}_L$ の $k$ 上の次数を $f$ とすると
$$
[L:K]=ef
$$
である。この定理はこの記事では証明せず、以下の議論の出発点にする(出典はその記事の注意「分類と拡大の出典」)。
上の $e$ を $L/K$ の分岐指数(ramification index)、$f=[\ell:k]$ を剰余次数(residue degree)といい、$e(L/K)$、$f(L/K)$ と書く。$e$ は $\pi_K$ の $L$ での付値 $v_L(\pi_K)$ に等しく、$\mathfrak{m}_K\mathcal{O}_L=\mathfrak{m}_L^{\,e}$ である。
有限次拡大 $L/K$ が
$K$ 自身は不分岐かつ完全分岐である。剰余体が有限体なので剰余体の拡大 $\ell/k$ はつねに分離的であり、不分岐の定義に「剰余体の拡大が分離的」という条件を別に付ける必要はない(剰余体が完全体でない完備離散付値体を扱う文献では、この条件も定義に含める)。
$\mathcal{O}_K$ 係数のモニック多項式
$$
E(X)=X^n+a_{n-1}X^{n-1}+\dots+a_1X+a_0\qquad(n\ge1)
$$
が Eisenstein 多項式であるとは、$a_0,\dots,a_{n-1}\in\mathfrak{m}_K$ かつ $v_K(a_0)=1$ であることをいう。
$K=\mathbb{Q}_p$ で係数が整数なら、これは 既約多項式 の記事の定理「Eisenstein の判定法」の仮定(素数 $p$ について)と同じである。
$\mathbb{Q}_p$ の上に $\sqrt p$ を添加すると、$p=(\sqrt p)^2$ なので $p$ が 2 つに割れ、付値の目盛りが半分になる。これが分岐である。一方、法 $p$ で平方でない単元 $u$ の平方根 $\sqrt u$ を添加しても付値の目盛りは変わらず、剰余体が $\mathbb{F}_p$ から $\mathbb{F}_{p^2}$ に広がる。これが不分岐である。不分岐拡大は剰余体の拡大をそのまま持ち上げたものなので、有限体の理論がそのまま使えて、各次数に 1 つずつしかなく、Galois 群も有限体と同じ巡回群になる。複雑さはすべて完全分岐の部分にあり、そこは「一意化元の最小多項式」という 1 つの多項式で記述できる。
$L\subset L'$ を $K$ の有限次拡大とすると、$v_{L'}|_{L}=e(L'/L)\,v_L$ で、両辺を $K$ に制限すると
$$
e(L'/K)=e(L'/L)\,e(L/K),\qquad f(L'/K)=f(L'/L)\,f(L/K)
$$
である(剰余次数は剰余体の拡大次数の乗法性による)。そこで $L$ ごとに $w:=v_L/e(L/K)$ とおくと、これは $L$ 上で $v_K$ を延長する有理数値の付値で、$L\subset L'$ なら $L'$ の $w$ の $L$ への制限は $L$ の $w$ に一致する。したがってこれらをつなぐと、$\overline{K}^\times$ 上の写像 $w\colon\overline{K}^\times\to\mathbb{Q}$ が 1 つ定まる($w(0):=\infty$)。$w(xy)=w(x)+w(y)$、$w(x+y)\ge\min\{w(x),w(y)\}$ であり、$w(x)\ne w(y)$ なら $w(x+y)=\min\{w(x),w(y)\}$ である。この最後の性質から、有限個の元の和でただ 1 つの項の $w$ が他のすべての項より真に小さければ、和は $0$ でない。以下この事実を「最小項の原理」と呼ぶ。
$x\in\overline{K}$ と、$x$ の $K$ 上の最小多項式の任意の根 $x'$ について $w(x')=w(x)$ である。
要点:$x'\mapsto x$ で定まる $K$ 上の同型 $K(x')\cong K(x)$ で $w$ を引き戻すと $K(x')$ 上の $v_K$ の延長になり、延長の一意性から元の $w$ と一致する。
$K$ 上の同型 $\varphi\colon K(x')\to K(x)$ で $\varphi(x')=x$ となるものがある(MilFT Proposition 2.1(b))。$u:=w\circ\varphi$ は $K(x')$ 上の付値で、$K$ 上では $v_K$ に一致し、値の集合は $K(x)$ 上の $w$ の値の集合 $\frac{1}{e}\mathbb{Z}$($e=e(K(x)/K)$)に等しい。よって $e\,u$ は $K(x')^\times\to\mathbb{Z}$ の全射な離散付値で、$K$ への制限は $e\,v_K$ である。延長の一意性により $e\,u=v_{K(x')}$ で $e=e(K(x')/K)$ だから、$u$ は $K(x')$ 上の $w$ に等しい。とくに $w(x')=u(x')=w(\varphi(x'))=w(x)$ である。$\square$
$L/K$ を有限次拡大とする。$x\in L$ について、次は同値である。
要点:整な元の付値が負なら最高次の項だけが真に最小になり、逆に付値が $0$ 以上の元の共役はすべて付値が $0$ 以上なので、最小多項式の係数も付値が $0$ 以上になる。
3 ⇒ 2 は明らか。2 ⇒ 1:$x^m+c_{m-1}x^{m-1}+\dots+c_0=0$($c_i\in\mathcal{O}_K$)とし、$w(x)<0$ と仮定する。$i< m$ について $w(c_ix^i)\ge i\,w(x)>m\,w(x)=w(x^m)$ なので、$x^m$ だけが真に最小の $w$ をもち、最小項の原理により左辺は $0$ でない。これは矛盾なので $w(x)\ge0$ である。1 ⇒ 3:最小多項式を $\prod_{j}(X-x_j)$($x_j\in\overline{K}$ は根)と書くと、lem-urext-conjugate により $w(x_j)=w(x)\ge0$ である。係数は $x_j$ たちの整数係数の多項式(基本対称式の $\pm1$ 倍)なので $w\ge0$ で、しかも $K$ の元だから $v_K\ge0$、すなわち $\mathcal{O}_K$ に属する。$\square$
$E(X)\in\mathcal{O}_K[X]$ を $n$ 次の Eisenstein 多項式、$\alpha\in\overline{K}$ をその根とし、$L:=K(\alpha)$ とおく。このとき
段 1:$w(\alpha)=1/n$。 $E(\alpha)=0$ を $n+1$ 個の項 $\alpha^n,\ a_{n-1}\alpha^{n-1},\dots,a_1\alpha,\ a_0$ の和とみる。$w(a_0)=1$、$1\le i\le n-1$ について $w(a_i)\ge1$ である。
段 2:1〜3。 $d:=[L:K]$ とおくと、$\alpha$ の最小多項式は $E$ を割り切るので $d\le n$ である。$e:=e(L/K)$ とすると $v_L(\alpha)=e\,w(\alpha)=e/n$ は正の整数なので $e\ge n$ である。一方 $e\le ef=d\le n$ だから $e=d=n$、$f=1$ である。$d=n$ から最小多項式は $E$ 自身で、$E$ は既約である。$e=n=[L:K]$ から $L/K$ は完全分岐で、$v_L(\alpha)=e/n=1$ である。
段 3:4。 $1,\alpha,\dots,\alpha^{n-1}$ は $L$ の $K$ 上の基底である。$x=\sum_{i=0}^{n-1}c_i\alpha^i$($c_i\in K$)の $0$ でない項について $v_L(c_i\alpha^i)=n\,v_K(c_i)+i$ であり、$0\le i\le n-1$ が異なれば $n$ を法として異なるので、これらの値はすべて相異なる。最小項の原理($v_L$ についても同じ)から
$$
v_L(x)=\min_{c_i\ne0}\bigl(n\,v_K(c_i)+i\bigr)
$$
である。$0\le i< n$ なので、$n\,v_K(c_i)+i\ge0$ は $v_K(c_i)\ge0$ と同値である。よって $x\in\mathcal{O}_L$ はすべての $c_i$ が $\mathcal{O}_K$ に属することと同値で、$\mathcal{O}_L=\bigoplus_{i< n}\mathcal{O}_K\alpha^i$ である。右辺は $\alpha^n=-\sum_{i< n}a_i\alpha^i$ から $\mathcal{O}_K[\alpha]$ に等しい。$\square$
逆に、完全分岐拡大はすべてこの形で得られる。
$L/K$ を次数 $n$ の完全分岐拡大、$\pi_L$ を $L$ の一意化元とする。このとき $\pi_L$ の $K$ 上の最小多項式は $n$ 次の Eisenstein 多項式であり、$L=K(\pi_L)$、$\mathcal{O}_L=\mathcal{O}_K[\pi_L]$ である。
$w(\pi_L)=v_L(\pi_L)/e(L/K)=1/n$ である。部分体 $M:=K(\pi_L)$ では $v_M(\pi_L)=e(M/K)\,w(\pi_L)=e(M/K)/n$ が整数なので $e(M/K)\ge n$ となり、$[M:K]\ge e(M/K)\ge n=[L:K]$ から $M=L$ である。よって $\pi_L$ の最小多項式 $g$ は $n$ 次である。
$g=\prod_{j=1}^n(X-x_j)$($x_j\in\overline{K}$)と書くと、lem-urext-conjugate により $w(x_j)=1/n$ である。$g$ の $X^i$($0\le i\le n-1$)の係数は、$n-i$ 個の $x_j$ の積の和の $\pm1$ 倍なので $w\ge(n-i)/n>0$ であり、$K$ の元だから $v_K\ge1$、すなわち $\mathfrak{m}_K$ に属する。定数項は $\pm x_1\cdots x_n$ で $w=1$、すなわち $v_K=1$ である。したがって $g$ は Eisenstein 多項式であり、残りは thm-urext-eisenstein の 4 から従う。$\square$
2 つの定理を合わせると、「$K$ 上の $n$ 次の完全分岐拡大」と「Eisenstein 多項式の根で生成される拡大」は同じものである。とくに完全分岐拡大の整数環は一意化元 1 つで単項生成される。
不分岐拡大は 1 の冪根で記述できる。そのために、位数が $p$ と互いに素な 1 の冪根が剰余体へ単射に落ちることを確かめる。$\mu_m$ で $\overline{K}$ の中の $1$ の $m$ 乗根全体を表す。
$m\ge1$ を $p$ と互いに素な整数とする。$\mu_m$ はちょうど $m$ 個の元からなる巡回群で、各 $\zeta\in\mu_m$ は $w(\zeta)=0$ を満たし、相異なる $\zeta,\zeta'\in\mu_m$ について $w(\zeta-\zeta')=0$ である。とくに、$\mu_m$ を含む有限次拡大 $L$ では、還元写像 $\mathcal{O}_L\to\ell$ は $\mu_m$ 上で単射で、$\mu_m$ を $\ell^\times$ の位数 $m$ の部分群に同型に写す。
要点:$1$ 以外の $1$ の $m$ 乗根 $\eta$ について $\prod_{\eta\ne1}(1-\eta)=m$ であり、$m$ は $\mathcal{O}_K$ の単元なので、各因子 $1-\eta$ も単元である。
$m\cdot1\in\mathcal{O}_K$ の剰余体での像は、$k$ の標数 $p$ が $m$ を割らないので $0$ でなく、$w(m)=0$ である。$X^m-1$ の導関数 $mX^{m-1}$ は $X^m-1$ の根で $0$ にならないので、$X^m-1$ は $\overline{K}$ で $m$ 個の相異なる根をもち、$\mu_m$ は体の乗法群の位数 $m$ の有限部分群として巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」の後半)。$\zeta^m=1$ から $m\,w(\zeta)=0$ である。
$\eta\in\mu_m$、$\eta\ne1$ の全体について、$X^m-1=(X-1)\prod_{\eta\ne1}(X-\eta)$ を $X-1$ で割って $X=1$ を代入すると $\prod_{\eta\ne1}(1-\eta)=1+1+\dots+1=m$ である。各因子は $\mathcal{O}_K$ 上整なので $w(1-\eta)\ge0$(lem-urext-integral-closure)で、和が $w(m)=0$ だから各 $w(1-\eta)=0$ である。$\zeta\ne\zeta'$ なら $\zeta-\zeta'=\zeta(1-\zeta'/\zeta)$ で $\zeta'/\zeta\ne1$ だから $w(\zeta-\zeta')=0$ である。後半は、還元が乗法的であることと、相異なる元の差が $\mathfrak{m}_L$ に入らないことから従う。$\square$
次数 $n\ge1$ ごとに
$$
K_n:=K(\mu_{q^n-1})
$$
とおく($q^n-1$ は $p$ と互いに素である)。
$n\ge1$ とする。
$\operatorname{Frob}$ を $K_n/K$ の Frobenius 元という。
1。 $k$ の $n$ 次拡大 $\mathbb{F}_{q^n}$ があり(有限体 の記事の定理「有限体の存在と一意性」)、その乗法群の生成元 $\theta$ について $\mathbb{F}_{q^n}=k(\theta)$ なので、$\theta$ の $k$ 上の最小多項式 $\bar g$ は $n$ 次の既約多項式である。$\bar g$ の係数を $\mathcal{O}_K$ に持ち上げたモニック多項式を $G$、その根を $\beta\in\overline{K}$、$L:=K(\beta)$ とする。$\beta$ は $\mathcal{O}_K$ 上整なので $\beta\in\mathcal{O}_L$(lem-urext-integral-closure)で、還元 $\bar\beta\in\ell$ は $\bar g(\bar\beta)=0$ を満たす。よって $\ell\supset k(\bar\beta)$ は $k$ 上 $n$ 次で、$f(L/K)\ge n$ である。$[L:K]\le\deg G=n$ と $[L:K]=ef$ から $e=1$、$f=n=[L:K]$ となり、$L$ は次数 $n$ の不分岐拡大である。
2。 $L$ は局所体で剰余体の元は $q^n$ 個なので、局所体 の記事の命題「Teichmüller代表元」の 2 を $L$ に使うと、$L$ は $1$ の $(q^n-1)$ 乗根をちょうど $q^n-1$ 個含む。$\mu_{q^n-1}$ の元は $q^n-1$ 個しかないので $\mu_{q^n-1}\subset L$、すなわち $K_n\subset L$ である。逆に $K_n$ の剰余体は、lem-urext-roots-of-unity により位数 $q^n-1$ の乗法的な部分群を含むので、元の個数が $q^n$ 以上であり、$f(K_n/K)\ge n$ である。よって $[K_n:K]\ge n=[L:K]$ となり $K_n=L$ である。
3。 1 と 2 から $K_n$ は次数 $n$ の不分岐拡大で、剰余体は $\mathbb{F}_{q^n}$ である。$K_n$ は分離多項式 $X^{q^n-1}-1$(lem-urext-roots-of-unity の証明)の分解体なので $K$ 上 Galois である(MilFT Theorem 3.10)。$\sigma\in G:=\operatorname{Gal}(K_n/K)$ について、$\sigma(x)$ は $x$ の最小多項式の根なので lem-urext-conjugate により $w(\sigma(x))=w(x)$ であり、$\sigma$ は $\mathcal{O}_{K_n}$ と $\mathfrak{m}_{K_n}$ を保つ。したがって $\bar\sigma(\bar x):=\overline{\sigma(x)}$ は剰余体の $k$ 上の自己同型で、$\sigma\mapsto\bar\sigma$ は群準同型である。
単射であること:$\zeta$ を巡回群 $\mu_{q^n-1}$ の生成元とすると $K_n=K(\zeta)$ である。$\bar\sigma=\mathrm{id}$ なら $\overline{\sigma(\zeta)}=\bar\zeta$ で、$\sigma(\zeta)\in\mu_{q^n-1}$ だから lem-urext-roots-of-unity により $\sigma(\zeta)=\zeta$、したがって $\sigma=\mathrm{id}$ である。
全単射であること:Galois 拡大なので $|G|=[K_n:K]=n$ である。$q=p^r$ とすると、有限体 の記事の定理「有限体の自己同型群」により $\operatorname{Aut}(\mathbb{F}_{q^n})$ は Frobenius 自己同型 $\phi(x)=x^p$ が生成する位数 $rn$ の巡回群であり、$\phi^j$ が $\mathbb{F}_q$ を各点固定するのは、同じ記事の命題「有限体の部分体」により $r\mid j$ のときに限る。よって $\operatorname{Gal}(\mathbb{F}_{q^n}/\mathbb{F}_q)$ は $\phi^r\colon x\mapsto x^q$ が生成する位数 $n$ の巡回群である。単射な準同型で位数が等しいので同型である。$x\mapsto x^q$ に対応する元が $\operatorname{Frob}$ であり、「$\operatorname{Frob}(x)\equiv x^q$」は $\overline{\operatorname{Frob}}$ が $x\mapsto x^q$ であることの言い換えなので、この条件を満たす元はただ 1 つである。$\operatorname{Frob}(\zeta)$ と $\zeta^q$ はともに $\mu_{q^n-1}$ の元で還元が等しいので、lem-urext-roots-of-unity により一致する。
4。 $n:=[L:K]=f$ とすると $\bar\beta$ の $k$ 上の次数は $n$ なので、$1,\bar\beta,\dots,\bar\beta^{n-1}$ は $k$ 上 1 次独立である。$c_0,\dots,c_{n-1}\in K$ が全部は $0$ でないとし、$\mu:=\min_iv_K(c_i)$ とおく。$c_i':=\pi_K^{-\mu}c_i\in\mathcal{O}_K$ は全部は $\mathfrak{m}_K$ に入らないので、$\sum_i\bar c_i'\bar\beta^i\ne0$、すなわち $\sum_ic_i'\beta^i$ は単元である。$e=1$ より $v_L(\pi_K)=1$ なので
$$
v_L\Bigl(\sum_ic_i\beta^i\Bigr)=\mu=\min_iv_K(c_i)
$$
である。とくに $\sum c_i\beta^i\ne0$ なので $1,\beta,\dots,\beta^{n-1}$ は $L$ の $K$ 上の基底であり、$\sum c_i\beta^i\in\mathcal{O}_L$ はすべての $c_i$ が $\mathcal{O}_K$ に属することと同値である。よって $\mathcal{O}_L=\bigoplus_{i< n}\mathcal{O}_K\beta^i\subset\mathcal{O}_K[\beta]\subset\mathcal{O}_L$ である。$\square$
$\mu_{q^n-1}$ の生成元 $\zeta$ の還元は $\mathbb{F}_{q^n}^\times$ を生成するので、4 を $\beta=\zeta$ に使うと $\mathcal{O}_{K_n}=\mathcal{O}_K[\zeta]$ である。1 の証明の $\beta$($G$ の根)にも 4 が使える。
$L/K$ を有限次拡大とし、$e=e(L/K)$、$f=f(L/K)$ とおく。
$K_f$ を $L/K$ の最大不分岐部分拡大という。
3。 $K_a\subset K_b$ なら剰余体について $\mathbb{F}_{q^a}\subset\mathbb{F}_{q^b}$ なので $a\mid b$ である(有限体 の記事の命題「有限体の部分体」)。逆に $a\mid b$ なら $q^a-1\mid q^b-1$ なので $\mu_{q^a-1}\subset\mu_{q^b-1}$、すなわち $K_a\subset K_b$ である。合成体 $K_aK_b$ は $K_{\operatorname{lcm}(a,b)}$ に含まれ、分岐指数の乗法性から、不分岐拡大の部分拡大は不分岐である($e(K_c/K)=1$ は $e(K_c/M)\,e(M/K)$ に等しい)。
1。 $L$ の剰余体は $q^f$ 個の元をもつので、thm-urext-unramified の 2 の証明と同じく Teichmüller 代表元により $\mu_{q^f-1}\subset L$、すなわち $K_f\subset L$ である。$e(K_f/K)=1$、$f(K_f/K)=f$ なので、乗法性から $e(L/K_f)=e$、$f(L/K_f)=1$、$[L:K_f]=e$ であり、$L/K_f$ は完全分岐である。
2。 $M\subset L$ を $K$ の次数 $d$ の不分岐拡大とすると、$M=K_d$ で(thm-urext-unramified の 2)、剰余体の包含から $d\mid f$ なので、3 により $M\subset K_f$ である。$\square$
thm-urext-totally-ramified と合わせると、任意の有限次拡大 $L/K$ は「不分岐拡大 $K_f/K$」と「Eisenstein 多項式の根で生成される完全分岐拡大 $L/K_f$」の 2 段に分かれる。
$p$ を奇素数とし、$u\in\mathbb{Z}$ を法 $p$ で平方でない整数とする。$\mathbb{Q}_p$ の 2 次拡大はちょうど 3 つあり、
$$
\mathbb{Q}_p(\sqrt u)\ (\text{不分岐}),\qquad \mathbb{Q}_p(\sqrt p),\quad \mathbb{Q}_p(\sqrt{up})\ (\text{完全分岐})
$$
である。$X^2-u$ の還元 $X^2-\bar u$ は $\mathbb{F}_p$ 上既約なので、thm-urext-unramified の 1 の証明により $\mathbb{Q}_p(\sqrt u)$ は不分岐で、2 により $\mathbb{Q}_p(\sqrt u)=K_2=\mathbb{Q}_p(\mu_{p^2-1})$ である。$X^2-p$、$X^2-up$ は Eisenstein 多項式なので、残り 2 つは完全分岐である(thm-urext-eisenstein)。
標数が $2$ でないので、2 次拡大 $L$ の元 $x\notin\mathbb{Q}_p$ の最小多項式 $X^2+bX+c$ を平方完成すると $L=\mathbb{Q}_p(\sqrt a)$、$a=b^2/4-c$ と書け、$a$ は平方でない。$a$ を平方数倍しても $\mathbb{Q}_p(\sqrt a)$ は変わらない。$a=p^ty$($y\in\mathbb{Z}_p^\times$)と書くと、$t$ の偶奇と、Henselの補題 の記事の命題「奇素数での単元の平方根」による「$y$ が平方であることと $\bar y$ が $\mathbb{F}_p$ で平方であることの同値性」から、平方数倍を除いて $a$ は $u,p,up$ のどれかである($\mathbb{F}_p^\times$ は位数が偶数の巡回群なので、平方でない元どうしの比は平方である)。3 つが互いに異なることは、分岐の違いと、$\sqrt{up}=c+d\sqrt p$($c,d\in\mathbb{Q}_p$)を 2 乗すると $cd=0$ となり、$up$ または $u$ が $\mathbb{Q}_p$ で平方になって矛盾することから分かる($up$ は付値が奇数、$u$ は $\bar u$ が平方でない)。
$\zeta_p\in\overline{\mathbb{Q}_p}$ を $1$ の原始 $p$ 乗根とする。$\zeta_p$ は $\Phi_p(X)=X^{p-1}+\dots+X+1$ の根で、
$$
\Phi_p(X+1)=\frac{(X+1)^p-1}{X}=X^{p-1}+\binom{p}{p-1}X^{p-2}+\dots+\binom{p}{2}X+p
$$
の係数 $\binom pj$($1\le j\le p-1$)は $p$ で割り切れ、定数項は $p$ なので、$\Phi_p(X+1)$ は Eisenstein 多項式である。thm-urext-eisenstein により $\mathbb{Q}_p(\zeta_p)/\mathbb{Q}_p$ は次数 $p-1$ の完全分岐拡大で、$\zeta_p-1$ が一意化元、$\mathcal{O}=\mathbb{Z}_p[\zeta_p]$ である。$p=2$ では $\zeta_2=-1$ で拡大は自明である。
$X^3+X+1$ は $\mathbb{F}_2$ に根をもたない 3 次式なので既約である。thm-urext-unramified の 1 の証明により、その根 $\beta$ について $\mathbb{Q}_2(\beta)$ は $\mathbb{Q}_2$ の不分岐 3 次拡大であり、2 により $\mathbb{Q}_2(\beta)=\mathbb{Q}_2(\mu_7)$、4 により整数環は $\mathbb{Z}_2[\beta]$ である。剰余体は $\mathbb{F}_8$ で、Frobenius 元は $\mu_7$ 上で $\zeta\mapsto\zeta^2$ と働く。
$X^2+1$ に $X=Y-1$ を代入すると $Y^2-2Y+2$ となり、これは $\mathbb{Q}_2$ 上の Eisenstein 多項式である。よって $\mathbb{Q}_2(i)/\mathbb{Q}_2$ は完全分岐の 2 次拡大で、$i+1$ が一意化元、$\mathcal{O}=\mathbb{Z}_2[i]$ である。$e=2$ は $p=2$ で割り切れるので、これは暴分岐の例である。一方、奇素数 $p$ についての $\mathbb{Q}_p(\sqrt p)$ は $e=2$ で順分岐である。
仮定を 1 つ外すと結論が崩れる例を並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Eisenstein の $v_K(a_0)=1$ | $X^2-p^2$($\mathbb{Q}_p$ 上) | 既約であること |
| Eisenstein の $v_K(a_0)=1$ | $X^2-p^3$($\mathbb{Q}_p$ 上) | 根が一意化元で $\mathcal{O}_L=\mathcal{O}_K[\alpha]$ となること |
| Eisenstein の $a_1\in\mathfrak{m}_K$ | $X^2+X+p$($\mathbb{Q}_p$ 上) | 既約であること |
| 剰余体の多項式が既約 | $X^2-p$ の還元 $X^2$ | 持ち上げの根が不分岐拡大を生成すること |
| 不分岐 | $\mathbb{Q}_2(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}_2$ | Galois 拡大であること |
表の 5 つの反例は、それぞれ外した条件以外の仮定を満たし、右の列の結論が実際に破れる。
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