Golay符号(Golay code)とは、長さ $23$ で $2^{12}$ 個の符号語をもつ二元の $[23,12,7]$ 符号と、長さ $11$ で $3^6$ 個の符号語をもつ三元の $[11,6,5]$ 符号の総称で、符号語を中心とする半径 $3$(三元では $2$)の球が空間をすき間も重なりもなく埋め尽くす完全符号である。1 座標を足した拡大 Golay 符号は自己双対な $[24,12,8]$・$[12,6,6]$ 符号で、重みは $4$(三元では $3$)の倍数になる。拡大二元 Golay 符号の重み $8$ の符号語は Steiner 系 $S(5,8,24)$ をなし、三元 Golay 符号の剰余類からは強正則グラフが作られる。
長さ $23$ の $0,1$ の列は $2^{23}$ 個ある。その中から $2^{12}$ 個の列をうまく選ぶと、どの 2 つも $7$ か所以上で異なり、しかも任意の列が、選んだ列のちょうど 1 つから $3$ か所以内の書き換えで得られるようにできる。$3$ か所以内の書き換えで届く列は、1 つの列あたり $1+23+\binom{23}2+\binom{23}3=2048=2^{11}$ 個あり、$2^{12}\cdot2^{11}=2^{23}$ なので、選んだ列を中心とする「半径 $3$ の球」が空間をすき間も重なりもなく埋め尽くしている。この符号を 二元 Golay 符号 という。同じように $\mathbb F_3^{11}$ を半径 $2$ の球で埋め尽くす 三元 Golay 符号 もあり、両者を合わせて Golay 符号(Golay code)という。
Golay 符号は、球で空間を埋め尽くす 完全符号 のうち、ほかの系列に入らない例外的なものである。$1$ 座標を付け加えた長さ $24$ と $12$ の 拡大 Golay 符号 は、自分自身と直交する符号で、重みが $4$ の倍数(三元では $3$ の倍数)になるという強い対称性をもち、そこから組合せデザインや散在型単純群が現れる。
この記事では、線形符号と完全符号を定義し、拡大 Golay 符号を正二十面体と法 $5$ の平方剰余から作って、二元・三元の Golay 符号が完全符号であること(thm-golay-binary、thm-golay-ternary)、剰余類の代表元の一意性(cor-golay-coset)、重み $8$ の符号語が Steiner 系 $S(5,8,24)$ をなすこと(thm-golay-steiner)を証明する。
以下、$q$ は素数冪、$\mathbb F_q$ は位数 $q$ の 有限体、$n\ge1$ とする。$u=(u_1,\dots,u_n)$、$v\in\mathbb F_q^n$ について、$u_i\ne0$ となる $i$ の個数を 重み $\operatorname{wt}(u)$、$u_i\ne v_i$ となる $i$ の個数を Hamming 距離 $d(u,v)$ という。$d(u,v)=\operatorname{wt}(u-v)$ であり、$d$ は $\mathbb F_q^n$ の距離である(三角不等式は座標ごとに「$u_i\ne w_i$ なら $u_i\ne v_i$ か $v_i\ne w_i$」から従う)。
$\mathbb F_q^n$ の $k$ 次元の線形部分空間 $C$ を、長さ $n$、次元 $k$ の 線形符号 といい、その元を 符号語 という。異なる 2 つの符号語の Hamming 距離の最小値を $C$ の 最小距離 といい、最小距離が $d$ のとき $C$ を $[n,k,d]_q$ 符号($q$ が明らかなら $[n,k,d]$ 符号)という。$k\times n$ 行列 $M$ の行が $C$ の基底をなすとき、$M$ を $C$ の 生成行列 という。
$C$ が線形なので、$d(u,v)=\operatorname{wt}(u-v)$ と $u-v\in C$ から、最小距離は $0$ でない符号語の重みの最小値に等しい(二元の場合は Jud25 Theorem 8.2.3、p. 145)。最小距離が $d\ge2t+1$ なら、送った符号語が $t$ か所以下で書き換わっても、受け取った列にいちばん近い符号語として元の符号語が分かる。これが誤りの訂正である(誤り訂正符号)。検査行列やシンドロームによる復号など、線形符号の一般論は 線形符号 で扱う。
$\mathbb F_q^n$ の標準の内積を $u\cdot v=\sum_iu_iv_i$ とし、$C^\perp=\{v:u\cdot v=0\ (u\in C)\}$ を $C$ の 双対符号 という。$\dim C^\perp=n-\dim C$ である($C^\perp$ は生成行列 $M$ を係数とする連立一次方程式 $Mv^{\mathsf T}=0$ の解空間)。$C\subset C^\perp$ のとき $C$ は 自己直交、$C=C^\perp$ のとき 自己双対 であるという。
$v\in\mathbb F_q^n$ を中心とする半径 $t$ の球 $B_t(v)=\{u:d(u,v)\le t\}$ の元の個数は、ちょうど $i$ か所で $v$ と異なる列が $\binom ni(q-1)^i$ 個あることから
$$
V_q(n,t)=\sum_{i=0}^t\binom ni(q-1)^i
$$
で、$v$ によらない。
$C\subset\mathbb F_q^n$ を最小距離 $d\ge2t+1$ の線形符号とする。このとき符号語を中心とする半径 $t$ の球は互いに交わらず、
$$
\lvert C\rvert\cdot V_q(n,t)\le q^n
$$
が成り立つ。等号が成り立つことと、$\mathbb F_q^n$ のすべての元が、ある符号語からの距離 $t$ 以下にあることは同値である。
三角不等式から球が交わらないことを示し、和集合の元を数える。
符号語 $c\ne c'$ と $u\in B_t(c)\cap B_t(c')$ があれば、三角不等式から $d(c,c')\le d(c,u)+d(u,c')\le2t< d$ となり、最小距離の定義に反する。よって球 $B_t(c)$($c\in C$)は互いに交わらず、その和集合の元の個数は $\lvert C\rvert V_q(n,t)$ で、これは $q^n$ 以下である。等号は和集合が $\mathbb F_q^n$ 全体であること、すなわちすべての元がある符号語から距離 $t$ 以下にあることと同値である。$\square$
最小距離 $d\ge2t+1$ の線形符号 $C\subset\mathbb F_q^n$ が lem-golay-hamming-bound の等号 $\lvert C\rvert\cdot V_q(n,t)=q^n$ を満たすとき、$C$ を $t$ 個の誤りを訂正する 完全符号(perfect code)という。
完全符号では、どの列についても、そこから距離 $t$ 以下にある符号語がちょうど 1 つある(Mac03 §13.3、p. 208)。長さ $7$ の Hamming 符号は $1$ 個の誤りを訂正する二元の完全符号である($2^4(1+7)=2^7$)。線形とは限らない符号の完全符号(半径 $t$ の球が空間を分割する符号)とその一般論は 完全符号 で扱う。線形符号に限れば、その定義は上の定義と一致する(完全符号 の命題「完全符号の最小距離」の 2)。
$C\subset\mathbb F_q^n$ を $t$ 個の誤りを訂正する $k$ 次元の完全符号とする。このとき $q^{n-k}$ 個の剰余類 $v+C$ のそれぞれは、重み $t$ 以下の元をちょうど 1 つ含む。
lem-golay-hamming-bound の等号により、$v$ からの距離が $t$ 以下の符号語 $c$ があり、$v-c\in v+C$ の重みは $d(v,c)\le t$ である。$u,u'\in v+C$ がともに重み $t$ 以下なら、$u-u'\in C$ で $\operatorname{wt}(u-u')\le2t< d$ なので $u=u'$ である。剰余類の個数は $\lvert\mathbb F_q^n\rvert/\lvert C\rvert=q^{n-k}$ である。$\square$
1 は $u,v$ がともに $1$ の座標の個数を数え、2 は $\mathbb F_3$ の $0$ でない元の平方が $1$ であることを使う。
1:$u,v$ がともに $1$ である座標の個数を $s$ とすると、$\operatorname{wt}(u+v)=\operatorname{wt}(u)+\operatorname{wt}(v)-2s$ である。$u\cdot v$ は $s$ の $2$ を法とする剰余類なので、$u\cdot v$ を $0,1$ の整数とみて $2s\equiv2(u\cdot v)\pmod4$ であり、$-2s\equiv2s\pmod 4$ から式が従う。生成元 $g_1,\dots,g_r$ の和 $w=g_{i_1}+\dots+g_{i_m}$ の重みが $4$ の倍数であることを $m$ についての帰納法で示す。$w'=w-g_{i_m}$ は符号語で、自己直交性から $w'\cdot g_{i_m}=0$ なので、式から $\operatorname{wt}(w)\equiv\operatorname{wt}(w')+\operatorname{wt}(g_{i_m})\equiv0\pmod4$ である。
2:$x\in\mathbb F_3$ が $0$ でなければ $x=\pm1$ で $x^2=1$ だから、$v\cdot v=\sum v_i^2$ は $0$ でない成分の個数の $3$ を法とする剰余類である。自己直交なら $v\cdot v=0$ なので $\operatorname{wt}(v)$ は $3$ の倍数である。$\square$
正二十面体の $12$ 個の頂点を、北極 $N$、上の五角形 $u_0,\dots,u_4$、下の五角形 $l_0,\dots,l_4$、南極 $S$ とし、添字は $5$ を法として読む。辺は次の $30$ 本である:$N$–$u_i$、$S$–$l_i$、$u_i$–$u_{i+1}$、$l_i$–$l_{i+1}$、$u_i$–$l_i$、$u_i$–$l_{i+1}$($i=0,\dots,4$)。このグラフの頂点 $v$ と $v'$ が辺で結ばれるとき隣接するといい、$v$ に隣接する頂点の集合を $\mathcal N(v)$ と書く。$N$ と $S$、$u_i$ と $l_{i+3}$ を 対蹠 な頂点の組という($6$ 組あり、各頂点にちょうど 1 つの対蹠点がある)。
各頂点はちょうど $5$ 個の頂点に隣接する。相異なる 2 頂点 $v,v'$ について、$\lvert\mathcal N(v)\cap\mathcal N(v')\rvert$ は、対蹠なら $0$、そうでなければ $2$ である。
隣接点は $\mathcal N(N)=\{u_0,\dots,u_4\}$、$\mathcal N(u_i)=\{N,u_{i-1},u_{i+1},l_i,l_{i+1}\}$、$\mathcal N(l_i)=\{S,l_{i-1},l_{i+1},u_i,u_{i-1}\}$、$\mathcal N(S)=\{l_0,\dots,l_4\}$ で、どれも $5$ 個である。
グラフの自己同型(辺を辺に写す頂点の置換)は対蹠の組を対蹠の組に写し、共通の隣接点の個数を保つ。回転 $u_i\mapsto u_{i+1}$、$l_i\mapsto l_{i+1}$ と、下の折りたたみの $\varphi$、$\psi$ が自己同型であり、これらで任意の 2 頂点の組を次の表のどれかに写せるので、表を確かめればよい。
| 組 | 共通の隣接点 | 個数 |
|---|---|---|
| $N,u_0$ | $u_1,u_4$ | $2$ |
| $N,l_0$ | $u_0,u_4$ | $2$ |
| $N,S$ | なし | $0$ |
| $u_0,u_1$ | $N,l_1$ | $2$ |
| $u_0,u_2$ | $N,u_1$ | $2$ |
| $u_0,l_0$ | $u_4,l_1$ | $2$ |
| $u_0,l_1$ | $u_1,l_0$ | $2$ |
| $u_0,l_2$ | $u_1,l_1$ | $2$ |
| $u_0,l_3$ | なし | $0$ |
| $u_0,l_4$ | $u_4,l_0$ | $2$ |
対蹠なのは表の $N,S$ と $u_0,l_3$ だけで、ちょうど共通の隣接点が $0$ 個の組である。$\square$
写像 $\varphi$:$N\leftrightarrow S$、$u_i\mapsto l_{-i}$、$l_i\mapsto u_{-i}$ は、$u_i$–$u_{i+1}$ を $l_{-i}$–$l_{-i-1}$ に、$u_i$–$l_i$ を $l_{-i}$–$u_{-i}$ に、$u_i$–$l_{i+1}$ を $l_{-i}$–$u_{-i-1}$ すなわち $u_j$–$l_{j+1}$($j=-i-1$)に、$N$–$u_i$ を $S$–$l_{-i}$ に写すので自己同型である。写像 $\psi$:$N\mapsto N$、$S\mapsto S$、$u_i\mapsto u_{-i}$、$l_i\mapsto l_{1-i}$ を考える。$u_i$–$u_{i+1}$ は $u_{-i}$–$u_{-i-1}$ に、$l_i$–$l_{i+1}$ は $l_{1-i}$–$l_{-i}$ に、$u_i$–$l_i$ は $u_{-i}$–$l_{1-i}$ すなわち $u_j$–$l_{j+1}$($j=-i$)に、$u_i$–$l_{i+1}$ は $u_{-i}$–$l_{-i}$ に写るので、$\psi$ は自己同型である。$\psi$ は $u_0$ を固定し、$u_3=u_{-2}$ を $u_2$ に、$u_4=u_{-1}$ を $u_1$ に写す。帰着:回転と $\varphi$ で組の片方を $N$ か $u_0$ にできる($S$ は $\varphi$ で $N$ に、$l_i$ は $\varphi$ で $u_{-i}$ に、$u_i$ は回転で $u_0$ に移る)。$N$ を含む組は、$N$ を固定する回転で $N,u_0$、$N,l_0$、$N,S$ のどれかになる。$N$ を含まず $u_0$ を含む組のうち、$u_0,S$ は $\varphi$ で $l_0,N$ に写り、$u_0,u_3$ と $u_0,u_4$ は $\psi$ で $u_0,u_2$ と $u_0,u_1$ に写り、残りは表にある。
正二十面体の隣接行列(頂点を $N,u_0,\dots,u_4,l_0,\dots,l_4,S$ の順に並べ、隣接すれば $1$、そうでなければ $0$)を $A$、すべての成分が $1$ の $12\times12$ 行列を $J$ とし、$\mathbb F_2$ の上の行列
$$
B=J-A
$$
を考える。$B$ の $(v,v')$ 成分は、$v=v'$ か $v,v'$ が隣接しないとき $1$ である。
$12\times24$ 行列 $M=(I_{12}\mid B)$ を生成行列とする $\mathbb F_2^{24}$ の線形符号 $\mathcal G_{24}$ を 拡大二元 Golay 符号 という。$\mathcal G_{24}$ の符号語から最後の座標を除いて得られる $\mathbb F_2^{23}$ の線形符号 $\mathcal G_{23}$ を 二元 Golay 符号 という。
$B$ は対称で、各行の重みは $7$ であり、$\mathbb F_2$ の上で $B^2=I_{12}$ が成り立つ。さらに、相異なる 2 行の和の重みは $6$ か $10$ である。
$A$ は対称なので $B$ も対称である。各行の $1$ は、対角成分と、隣接しない $12-1-5=6$ 個の頂点の位置なので $7$ 個である。整数の行列として $AJ=JA=5J$、$J^2=12J$ だから
$$
B^2=(J-A)^2=J^2-JA-AJ+A^2=2J+A^2\equiv A^2\pmod2
$$
である。$A^2$ の $(v,v')$ 成分は $v$ と $v'$ の共通の隣接点の個数で、lem-golay-icosahedron により $v=v'$ なら $5$、$v\ne v'$ なら $0$ か $2$ なので、$\mathbb F_2$ では $A^2=I$ となり、$B^2=I$ である。
$v\ne v'$ の行の和は、$J$ の行が打ち消し合うので $A$ の 2 行の和に等しく、その $1$ の位置は対称差 $\mathcal N(v)\triangle\mathcal N(v')$ である。重みは $5+5-2\lvert\mathcal N(v)\cap\mathcal N(v')\rvert$ で、lem-golay-icosahedron により $10$ か $6$ である。$\square$
1:$M$ は $I_{12}$ を含むので階数 $12$ で、$\dim\mathcal G_{24}=12$ である。$B$ が対称で $B^2=I$(prop-golay-b)だから $MM^{\mathsf T}=I+BB^{\mathsf T}=I+B^2=2I=0$ であり、$M$ の行どうしの内積はすべて $0$ である。よって $\mathcal G_{24}\subset\mathcal G_{24}^\perp$ で、両辺の次元はともに $12$ だから $\mathcal G_{24}$ は自己双対である。$M$ の各行の重みは $1+7=8$ なので、lem-golay-weights の 1 により、すべての符号語の重みは $4$ の倍数である。
最小距離を調べる。符号語は $c=(x,xB)$($x\in\mathbb F_2^{12}$)の形で、$y=xB$ とおくと $B^2=I$ より $x=yB$ である。$\operatorname{wt}(c)=\operatorname{wt}(x)+\operatorname{wt}(y)$ が $4$ の $0$ でない符号語 $c$ があったとする。$\operatorname{wt}(x)\le2$ か $\operatorname{wt}(y)\le2$ のどちらかが成り立つ。$\operatorname{wt}(x)\le2$ の場合、$x=0$ なら $c=0$ なので $x\ne0$ であり、$\operatorname{wt}(x)=1$ なら $y$ は $B$ の 1 行で重み $7$、$\operatorname{wt}(x)=2$ なら $y$ は $B$ の相異なる 2 行の和で重み $6$ 以上である(prop-golay-b)。どちらでも $\operatorname{wt}(c)\ge7$ となり矛盾する。$\operatorname{wt}(y)\le2$ の場合は、$x=yB$ なので $x$ と $y$ の役割を入れ替えて同じ議論が使える。よって重み $4$ の符号語はなく、$0$ でない符号語の重みは $8$ 以上である。$M$ の行の重みが $8$ なので最小距離は $8$ である。
2:座標 $j$ を除く写像 $\pi_j\colon\mathcal G_{24}\to\mathbb F_2^{23}$ は線形で、核の元は重み $1$ 以下の符号語なので $0$ だけである。よって像 $\pi_j(\mathcal G_{24})$ は $2^{12}$ 個の元をもつ $12$ 次元の符号で、1 座標を除くと重みは高々 $1$ しか減らないので、最小距離は $7$ 以上である。$t=3$ について
$$
2^{12}\cdot V_2(23,3)=2^{12}\Bigl(1+23+\binom{23}2+\binom{23}3\Bigr)=2^{12}(1+23+253+1771)=2^{12}\cdot2^{11}=2^{23}
$$
なので、lem-golay-hamming-bound の等号が成り立ち、完全符号である。最小距離がちょうど $7$ であることは次のように確かめる。$\mathcal G_{23}$($j=24$)では、$M$ の最後の行は最後の座標が $B$ の対角成分 $1$ なので、それを除いた符号語の重みは $7$ である。ほかの $j$ でも、$\mathcal G_{24}$ の重み $8$ の符号語で $j$ 番目が $1$ のもの($M$ の行で $j$ 番目が $1$ のもの)を除くと重み $7$ になる。$\square$
Mac03 §13.3(pp. 208–209)は、$2^{12}$ 個の符号語をもつ長さ $23$ の $3$ 個の誤りを訂正する二元の完全符号として $\mathcal G_{23}$ を挙げ、上の数の一致を示している。
$\mathcal G_{24}$ の $2^{12}=4096$ 個の符号語を重みごとに数えると次のとおりである(すべての符号語を書き出して数えると確かめられる。重み $8$ の個数 $759$ は下の thm-golay-steiner から計算でも得られる)。
| 重み | $0$ | $8$ | $12$ | $16$ | $24$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 個数 | $1$ | $759$ | $2576$ | $759$ | $1$ |
すべての成分が $1$ の列 $\mathbf 1$ は、$M$ の各行 $m$ と $\mathbf 1\cdot m=8\equiv0$ なので $\mathcal G_{24}^\perp=\mathcal G_{24}$ に入り、$c\mapsto c+\mathbf 1$ が重み $w$ と $24-w$ の符号語を入れ替えるので、分布は左右対称である。
$\mathcal G_{24}$ の重み $8$ の符号語の台(成分が $1$ の座標の集合)を オクタッド という。座標の集合 $\{1,\dots,24\}$ の $5$ 元部分集合は、どれもちょうど 1 つのオクタッドに含まれる。すなわちオクタッドの全体は Steiner 系 $S(5,8,24)$ をなす。オクタッドの個数は $759$ である。
$T$ を $5$ 元部分集合とし、$j\in T$ をとる。座標 $j$ を除いた $\mathbb F_2^{23}$ で、$T\setminus\{j\}$ の座標だけが $1$ の重み $4$ の列を $v$ とする。thm-golay-binary の 2 により $\pi_j(\mathcal G_{24})$ は $3$ 個の誤りを訂正する完全符号なので、$d(v,c')\le3$ となる $c'\in\pi_j(\mathcal G_{24})$ がある。$d(v,0)=4$ なので $c'\ne0$ で、$\operatorname{wt}(c')\ge7$ である。$v$ と $c'$ がともに $1$ の座標の個数を $s$ とすると
$$
3\ge d(v,c')=\operatorname{wt}(v)+\operatorname{wt}(c')-2s\ge4+7-2s
$$
なので $s\ge4$、すなわち $c'$ は $v$ の $1$ の座標をすべて含み、さらに $\operatorname{wt}(c')\le3-4+2\cdot4=7$ だから $\operatorname{wt}(c')=7$ である。$\pi_j(c)=c'$ となる $c\in\mathcal G_{24}$ の重みは $7$ か $8$ で、thm-golay-binary の 1 により $4$ の倍数だから $8$ であり、$c$ の $j$ 番目の成分は $1$ である。よって $c$ の台は $T$ を含むオクタッドである。
一意性:相異なるオクタッドの台 $X,Y$ がともに $T$ を含めば、$\lvert X\cap Y\rvert\ge5$ で、対応する符号語の和の重みは $8+8-2\lvert X\cap Y\rvert\le6$ であり、$0$ でない。これは最小距離 $8$ に反する。
個数:各オクタッドは $\binom85=56$ 個の $5$ 元部分集合を含み、各 $5$ 元部分集合はちょうど 1 つのオクタッドに含まれるので、オクタッドの個数は $\binom{24}5/56=42504/56=759$ である。$\square$
法 $5$ の平方剰余は $1,4$、平方非剰余は $2,3$ である。$\chi\colon\mathbb F_5\to\{0,\pm1\}$ を $\chi(0)=0$、平方剰余で $1$、非剰余で $-1$ と定め(Legendre記号)、$\mathbb F_3$ の上の $6\times6$ 行列 $C$ を、行と列を $\infty,0,1,2,3,4$ で番号づけて
$$
C_{\infty\infty}=0,\quad C_{\infty i}=C_{i\infty}=1,\quad C_{ij}=\chi(j-i)\quad(i,j\in\mathbb F_5)
$$
と定める。具体的には
$$
C=\begin{pmatrix}0&1&1&1&1&1\\1&0&1&-1&-1&1\\1&1&0&1&-1&-1\\1&-1&1&0&1&-1\\1&-1&-1&1&0&1\\1&1&-1&-1&1&0\end{pmatrix}
$$
である。
$C$ は対称で、各行の重みは $5$ であり、整数の行列として $CC^{\mathsf T}=5I_6$ が成り立つ。とくに $\mathbb F_3$ の上で $C^2=-I_6$ である。
要点は、$c\ne0$ について $\sum_{u\in\mathbb F_5}\chi(u)\chi(u+c)=-1$ となることである。
$\chi(-1)=1$($-1\equiv4=2^2$)なので $\chi(j-i)=\chi(i-j)$ であり、$C$ は対称である。各行は $0$ を 1 つだけ含むので重みは $5$ である。$CC^{\mathsf T}$ の成分を整数で計算する。$\infty$ 行どうしは $5$。$\infty$ 行と $i$ 行は $\sum_{j\in\mathbb F_5}\chi(j-i)=\sum_{u\in\mathbb F_5}\chi(u)=1+1-1-1=0$。$i$ 行どうしは $1+\sum_j\chi(j-i)^2=1+4=5$。$i\ne i'$ の行は $1+\sum_j\chi(j-i)\chi(j-i')$ で、$u=j-i$、$c=i-i'\ne0$ とおくと和は $\sum_{u\ne0}\chi(u)\chi(u+c)=\sum_{u\ne0}\chi(u^2)\chi(1+cu^{-1})=\sum_{u\ne0}\chi(1+cu^{-1})$ である($\chi$ は乗法的で $\chi(u^2)=1$)。$u$ が $\mathbb F_5^\times$ を動くと $1+cu^{-1}$ は $1$ 以外の $\mathbb F_5$ の元をちょうど 1 回ずつとるので、和は $\sum_{w\ne1}\chi(w)=0-\chi(1)=-1$ であり、成分は $1-1=0$ である。よって $CC^{\mathsf T}=5I$ で、$5\equiv-1\pmod3$ と対称性から $\mathbb F_3$ の上で $C^2=-I$ である。$\square$
$6\times12$ 行列 $(I_6\mid C)$ を生成行列とする $\mathbb F_3^{12}$ の線形符号 $\mathcal G_{12}$ を 拡大三元 Golay 符号、その最後の座標を除いた $\mathbb F_3^{11}$ の符号 $\mathcal G_{11}$ を 三元 Golay 符号 という。
1:生成行列の行どうしの内積の行列は $I+CC^{\mathsf T}=6I\equiv0\pmod3$ なので、$\mathcal G_{12}$ は自己直交で、次元 $6$ は $12$ の半分だから自己双対である。lem-golay-weights の 2 により重みは $3$ の倍数である。符号語は $c=(x,xC)$ と書け、$y=xC$ とおくと prop-golay-c より $x=-yC$ である。重み $3$ の $0$ でない符号語があったとすると、$\operatorname{wt}(x)+\operatorname{wt}(y)=3$ なので $\operatorname{wt}(x)\le1$ か $\operatorname{wt}(y)\le1$ である。$\operatorname{wt}(x)=0$ なら $c=0$、$\operatorname{wt}(x)=1$ なら $y$ は $C$ の 1 行の $\pm1$ 倍で重み $5$ となり矛盾する。$\operatorname{wt}(y)\le1$ の場合も $x=-yC$ から同様に矛盾する。よって $0$ でない符号語の重みは $6$ 以上で、生成行列の行の重みは $1+5=6$ だから最小距離は $6$ である。
2:最後の座標を除く写像は、重み $1$ 以下の符号語が $0$ だけなので単射であり、$\mathcal G_{11}$ は $3^6$ 個の元をもつ $6$ 次元の符号で、最小距離は $5$ 以上である。生成行列の第 1 行は最後の成分が $C_{\infty4}=1$ なので、除くと重み $5$ になり、最小距離は $5$ である。$t=2$ について
$$
3^6\cdot V_3(11,2)=3^6\Bigl(1+11\cdot2+\binom{11}2\cdot4\Bigr)=3^6(1+22+220)=3^6\cdot3^5=3^{11}
$$
なので完全符号である。$\square$
cor-golay-coset により、$\mathcal G_{11}$ の $3^5=243$ 個の剰余類は、それぞれ重み $2$ 以下の元をちょうど 1 つ含む。この剰余類を頂点とし、重み $1$ の列だけ異なる代表元をもつ 2 つの剰余類を隣接させると、パラメータ $(243,22,1,2)$ の 強正則グラフ(Berlekamp–van Lint–Seidel グラフ)が得られる(BH11 p. 138 の例と §9.10 の Exercise 2、p. 146。この記事では証明しない)。これは Conwayの99グラフ問題 で挙げられる例である。同じ例によれば、$\mathcal G_{11}$ の双対符号は重み $6$ と $9$ の符号語だけをもつ $[11,5,6]_3$ 符号である(BH11 p. 138)。
$\mathcal G_{12}$ の $3^6=729$ 個の符号語を重みごとに数えると、重み $0,6,9,12$ がそれぞれ $1,264,440,24$ 個である(すべての符号語を書き出して数えると確かめられる)。$\mathcal G_{11}$ では重み $0,5,6,8,9,11$ がそれぞれ $1,132,132,330,110,24$ 個である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 最後の座標を除く(thm-golay-binary の 2) | $\mathcal G_{24}$ そのもの | $3$ 個の誤りを訂正する完全符号である |
| $A$ が正二十面体の隣接行列(def-golay-binary) | $A=O$、すなわち $B=J$ とした $(I_{12}\mid J)$ の符号 | 最小距離が $8$ |
| $C$ が平方剰余から作った行列(def-golay-ternary) | $C=J-I$(対角が $0$、ほかが $1$) とした $(I_6\mid C)$ の符号 | 最小距離が $6$ |
1 行目:$\mathcal G_{24}$ の最小距離は $8$ で $t=3$ だが、$2^{12}V_2(24,3)=2^{12}(1+24+276+2024)=2^{12}\cdot2325<2^{24}$ なので、lem-golay-hamming-bound の等号が成り立たない。2 行目:$(I_{12}\mid J)$ の第 1 行と第 2 行の和は $(1,1,0,\dots,0\mid0,\dots,0)$ で重み $2$ である。$J$ では 2 行の和が $0$ になり、prop-golay-b の「相異なる 2 行の和の重みは $6$ か $10$」が成り立たない。3 行目:第 1 行と第 2 行の差は左半分が $(1,-1,0,0,0,0)$、右半分が $(0,1,1,1,1,1)-(1,0,1,1,1,1)=(-1,1,0,0,0,0)$ で、重み $4$ である。$J-I$ の相異なる 2 行の内積は $4\equiv1\pmod3$ で、prop-golay-c の $CC^{\mathsf T}=5I$ が成り立たない。
二元の自明でない完全符号のパラメータ(長さ $n$、符号語の個数、訂正できる誤りの個数 $t$)は、Hamming 符号($t=1$)、奇数の長さの反復符号、そして $\mathcal G_{23}$ のものに限られる(Mac03 §13.3、p. 209。線形でない符号まで含めて、半径 $t$ の球が空間をすき間も重なりもなく埋め尽くすものを考えても同じである。この記事では証明しない)。$q$ が素数冪の場合の分類は 完全符号 の定理「完全符号の分類」にある(そこでは奇数の長さの反復符号を自明な完全符号に数える)。これはパラメータについての主張であり、同じパラメータをもつ完全符号どうしが座標の並べ替えで移り合うことまでは述べていない。三元の Golay 符号は、サッカーくじの研究をしていた Virtakallio が 1947 年に見つけていたことが知られている(同 p. 209)。
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