主束(principal bundle)とは、Lie 群 $G$ が右から自由に作用する多様体 $P$ で、軌道が射影 $p\colon P\to M$ のファイバーになり、局所的には $G$ の作用ごと積 $U\times G$ と同じ形をしているもののことである。主束は $G$ に値をとる変換関数のコサイクルで決まり、コホモロガスなコサイクルが同型な主束を与える。$G$ が作用する多様体や表現から同伴束が作られ、ベクトル束の枠の全体は主 $\mathrm{GL}_r$ 束(枠束)になって、ベクトル束と主 $\mathrm{GL}_r$ 束は互いに移り合う。計量や向きは構造群の縮小として表される。Hopf 束 $S^3\to S^2$、等質空間 $G\to G/H$、被覆空間が代表例である。
主束(principal bundle)とは、Lie 群 $G$ が右から自由に作用する多様体 $P$ で、軌道がちょうど射影 $p\colon P\to M$ のファイバーになり、局所的には積 $U\times G$ と $G$ の作用ごと同じ形をしているもののことである。$G$ を構造群といい、$P$ を $M$ 上の主 $G$ 束という。各ファイバーは $G$ と微分同相だが、どの点を単位元とみなすかは決まっていない。
主束は、ファイバー束の「ねじれ」だけを取り出したものである。ベクトル束 $E$ の各点の基底(枠)を全部集めると主 $\mathrm{GL}_r$ 束 $\mathrm{Fr}(E)$ ができ、逆に主 $\mathrm{GL}_r$ 束から $\mathbb R^r$ を「同伴」させるとベクトル束が戻る。同じ主束から、表現を取り替えるだけで双対束・テンソル積・自己準同型の束などが一斉に作られるので、接続・曲率・特性類を統一して扱うための土台になる。
この記事では、主束を変換関数($G$ に値をとるコサイクル)で分類し、同伴束を構成し、ベクトル束と主 $\mathrm{GL}_r$ 束が互いに移り合うことを完全に証明する。同伴束の切断が同変写像と対応すること、構造群の縮小、Hopf 束や等質空間の例、主束にならない作用の反例も扱う。主束の上の接続は 主束の接続、その曲率は 曲率形式 で扱う。
多様体はすべて $C^\infty$ 級で、Hausdorff かつ第二可算とする。$G$ は Lie 群(Lie群)で、単位元を $e$ と書く。$G$ はそれ自身に左からの積 $h\mapsto gh$ と右からの積 $h\mapsto hg$ で作用し、この二つは可換である($(gh)k=g(hk)$)。
$P$、$M$ を多様体、$p\colon P\to M$ を全射な $C^\infty$ 写像とし、$G$ が $P$ に右から $C^\infty$ 級に作用している($(u,g)\mapsto ug$)とする。次の 2 条件を満たすとき、$p\colon P\to M$(または $P$)を $M$ 上の主 $G$ 束(principal $G$-bundle)という。
条件 2 から、作用は自由($ug=u$ なら $g=e$)で、各ファイバー $P_x:=p^{-1}(x)$ に推移的に作用する。したがって $u\in P_x$ を 1 つ選ぶと $g\mapsto ug$ は微分同相 $G\to P_x$ であり、ファイバーは $G$ の主等質空間(トーサー)である。$G$ を位相群、多様体を位相空間、微分同相を同相に置き換えたものが位相的な主束で、その分類は 分類空間 で扱われている。
$\{(U_\alpha,\psi_\alpha)\}$ を $M$ を覆う局所自明化の族とする。$s_\alpha(x):=\psi_\alpha^{-1}(x,e)$ で定まる $C^\infty$ 写像 $s_\alpha\colon U_\alpha\to P$ は $p\circ s_\alpha=\mathrm{id}$ を満たす(局所切断)。同変性から $\psi_\alpha^{-1}(x,h)=s_\alpha(x)h$ である。$x\in U_\alpha\cap U_\beta$ で $s_\alpha(x)$ と $s_\beta(x)$ は同じファイバーにあるので、ただ 1 つの $g_{\alpha\beta}(x)\in G$ によって
$$
s_\beta(x)=s_\alpha(x)\,g_{\alpha\beta}(x)
$$
と書ける。$g_{\alpha\beta}=\mathrm{pr}_2\circ\psi_\alpha\circ s_\beta$ は $C^\infty$ 写像 $U_\alpha\cap U_\beta\to G$ であり、これを変換関数という。このとき $\psi_\alpha\circ\psi_\beta^{-1}(x,h)=\psi_\alpha(s_\alpha(x)g_{\alpha\beta}(x)h)=(x,g_{\alpha\beta}(x)h)$ である。
この規約は ベクトル束 の変換関数 $\phi_\alpha\circ\phi_\beta^{-1}(x,v)=(x,g_{\alpha\beta}(x)v)$ と同じ向きである。
$p\colon P\to M$ を主 $G$ 束とする。
要点:局所自明化で書くと、切断や射は $(x,h)\mapsto(x,\sigma(x)h)$ の形になり、逆写像 $(x,k)\mapsto(x,\sigma(x)^{-1}k)$ も $C^\infty$ である。
1.$\Phi(x,h):=s(x)h$ は $C^\infty$ で同変であり、作用がファイバー上で自由かつ推移的なので全単射である。$x_0\in U$ を含む局所自明化 $(U_\beta,\psi_\beta)$ をとり、$\sigma:=\mathrm{pr}_2\circ\psi_\beta\circ s$ とおくと、$U\cap U_\beta$ 上で $\psi_\beta\circ\Phi(x,h)=(x,\sigma(x)h)$ である。これは逆写像 $(x,k)\mapsto(x,\sigma(x)^{-1}k)$ をもつ微分同相なので、$\Phi$ は局所的に微分同相であり、全単射なので微分同相である。$\Phi^{-1}$ は局所自明化の条件を満たす。$U=M$ とすれば、大域切断から自明化が得られる。逆に自明化 $\psi$ があれば $x\mapsto\psi^{-1}(x,e)$ が大域切断である。
2.$s_\alpha=s_\alpha e$ と作用の自由性から $g_{\alpha\alpha}=e$。$s_\gamma=s_\beta g_{\beta\gamma}=s_\alpha g_{\alpha\beta}g_{\beta\gamma}$ と $s_\gamma=s_\alpha g_{\alpha\gamma}$ を比べ、自由性から $g_{\alpha\gamma}=g_{\alpha\beta}g_{\beta\gamma}$。
3.射 $f\colon P\to P'$ と、$P,P'$ の同じ開集合 $U$ 上の局所自明化 $\psi,\psi'$($\psi$ の局所切断を $s$)をとる。$\varphi:=\mathrm{pr}_2\circ\psi'\circ f\circ s\colon U\to G$ は $C^\infty$ で、同変性から $\psi'\circ f\circ\psi^{-1}(x,h)=\psi'(f(s(x))h)=(x,\varphi(x)h)$ である。これは $(x,k)\mapsto(x,\varphi(x)^{-1}k)$ を逆にもつ微分同相なので、$f$ は各 $p^{-1}(U)$ の上で微分同相であり、したがって微分同相である。$\square$
逆に、変換関数から主束を組み立てられる。次の補題は、ファイバーに $G$ が作用する一般の場合に述べておく(同伴束でも使う)。
$\{U_\alpha\}$ を $M$ の開被覆、$g_{\alpha\beta}\colon U_\alpha\cap U_\beta\to G$ をコサイクル条件を満たす $C^\infty$ 写像の族、$F$ を $G$ が左から $C^\infty$ 級に作用する多様体とする。$\bigsqcup_\alpha U_\alpha\times F$ に
$$
(\beta,x,f)\sim(\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)f)\qquad(x\in U_\alpha\cap U_\beta)
$$
で同値関係を入れ、商を $X$、$\pi[\alpha,x,f]:=x$ とおく。このとき $X$ は多様体の構造をただ 1 つもち、各 $\Phi_\alpha\colon U_\alpha\times F\to\pi^{-1}(U_\alpha)$、$(x,f)\mapsto[\alpha,x,f]$ が開集合の上への微分同相になる。このとき $\Phi_\alpha^{-1}\circ\Phi_\beta(x,f)=(x,g_{\alpha\beta}(x)f)$ であり、$\pi$ はファイバー $F$ のファイバー束(ファイバー束)である。
要点:ベクトル束 の命題「変換関数の連続性・コサイクル条件と束の再構成」の証明と同じで、線形性の代わりに $C^\infty$ 性を確かめる。
コサイクル条件から $g_{\alpha\alpha}=e$、$g_{\alpha\beta}g_{\beta\alpha}=e$ なので、$\sim$ は反射的・対称的・推移的である。$\Phi_\alpha$ は全単射である($[\beta,x,f]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)f]$ で全射、$(\alpha,x,f)\sim(\alpha,x,f')$ なら $f'=g_{\alpha\alpha}(x)f=f$ で単射)。$h_{\beta\alpha}(x,f):=(x,g_{\beta\alpha}(x)f)$ は $(U_\alpha\cap U_\beta)\times F$ の微分同相(逆は $h_{\alpha\beta}$)である。商写像 $q$ について、開集合 $W\subset U_\alpha\times F$ の飽和の $U_\beta\times F$ への制限は $h_{\beta\alpha}(W\cap(U_\alpha\cap U_\beta)\times F)$ で開なので、$q$ は開写像であり、$\Phi_\alpha$ は開集合 $\pi^{-1}(U_\alpha)$ への同相である。$X$ が Hausdorff であることは、異なるファイバーの 2 点は $\pi$(連続)で $M$ の分離開集合を引き戻して分け、同じファイバーの 2 点は Hausdorff な $\pi^{-1}(U_\alpha)\cong U_\alpha\times F$ の中で分けることによる。$M$ は第二可算なので可算個の $U_{\alpha_n}$ で覆われ、$X=\bigcup_n\pi^{-1}(U_{\alpha_n})$ は第二可算な開集合の可算和なので第二可算である。$U_\alpha$ と $F$ の座標近傍の積を $\Phi_\alpha$ で運んだものを座標近傍とすると、座標変換は $h_{\alpha\beta}$ の座標表示なので $C^\infty$ であり、$X$ は多様体になる。$\Phi_\alpha$ が微分同相になる構造はこの座標近傍で決まるので一意である。$\Phi_\alpha^{-1}\circ\Phi_\beta(x,f)=\Phi_\alpha^{-1}[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)f]=(x,g_{\alpha\beta}(x)f)$ である。$\square$
$\{U_\alpha\}$ を $M$ の開被覆とする。
1.$[\beta,x,h]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)h]$ であり、$(\beta,x,hk)\sim(\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)hk)$ なので、どちらの代表で計算しても $[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)hk]$ になる。作用は $\Phi_\alpha$ を通すと $(x,h)k=(x,hk)$ なので $C^\infty$ であり、$\psi_\alpha:=\Phi_\alpha^{-1}$ は局所自明化の条件を満たす。局所切断は $s_\alpha(x)=[\alpha,x,e]$ で、$s_\beta(x)=[\beta,x,e]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)]=s_\alpha(x)g_{\alpha\beta}(x)$ なので、変換関数は $g_{\alpha\beta}$ である。
2.$P$ の局所切断を $s_\alpha$ とし、$F[\alpha,x,h]:=s_\alpha(x)h$ とおく。$[\beta,x,h]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}h]$ の像は $s_\alpha g_{\alpha\beta}h=s_\beta h$ で一致するので $F\colon P_g\to P$ は矛盾なく定まり、$\Phi_\alpha$ を通すと $(x,h)\mapsto s_\alpha(x)h$ なので $C^\infty$ である。$F$ は同変で底空間の恒等写像を覆うので、prop-pb-basic の 3 により同型である。
3.2 により、$P_g,P_{g'}$ の局所切断 $s_\alpha,s'_\alpha$ で考えればよい。同型 $f\colon P_g\to P_{g'}$ があるとき、$f(s_\alpha)=s'_\alpha k_\alpha$ で $C^\infty$ 写像 $k_\alpha:=\mathrm{pr}_2\circ\Phi'^{-1}_\alpha\circ f\circ s_\alpha$ を定める。同変性から $s'_\beta k_\beta=f(s_\alpha g_{\alpha\beta})=s'_\alpha k_\alpha g_{\alpha\beta}$、一方 $s'_\beta k_\beta=s'_\alpha g'_{\alpha\beta}k_\beta$ であり、作用の自由性から $g'_{\alpha\beta}=k_\alpha g_{\alpha\beta}k_\beta^{-1}$ となる。$h_\alpha:=k_\alpha^{-1}$ とおけばよい。逆に $h_\alpha$ があれば、$f(s_\alpha(x)k):=s'_\alpha(x)h_\alpha(x)^{-1}k$ と定める。$U_\alpha\cap U_\beta$ の点 $s_\beta k=s_\alpha g_{\alpha\beta}k$ の像は、$\alpha$ で計算すると $s'_\alpha h_\alpha^{-1}g_{\alpha\beta}k$、$\beta$ で計算すると $s'_\beta h_\beta^{-1}k=s'_\alpha g'_{\alpha\beta}h_\beta^{-1}k=s'_\alpha h_\alpha^{-1}g_{\alpha\beta}k$ で一致する。$f$ は $C^\infty$ で同変なので、prop-pb-basic の 3 により同型である。$\square$
変換関数とコホモロガスの定義、コサイクルから主束が貼り合わされることは Mic08 18.1–18.2(pp. 212–213)にある。したがって、被覆 $\{U_\alpha\}$ 上で自明になる主 $G$ 束の同型類は、コサイクルのコホモロガスによる類と一対一に対応する。被覆の細分について極限をとったものが、$C^\infty$ 関数の層 $\underline{G}$ に係数をもつ Čech コホモロジー(Čechコホモロジー)の「集合」$H^1(M;\underline{G})$ である。$G$ が可換でなければこれは群ではなく、自明束を基点とする集合である。
$p\colon P\to M$ を主 $G$ 束、$F$ を $G$ が左から $C^\infty$ 級に作用する多様体とする。$P\times F$ に $(u,f)\sim(ug,g^{-1}f)$($g\in G$)で同値関係を入れた商を
$$
P\times_GF:=(P\times F)/\!\sim,
$$
$(u,f)$ の類を $[u,f]$ と書き、$p_F[u,f]:=p(u)$ とおく。$p_F\colon P\times_GF\to M$ を $P$ に同伴するファイバー束(associated bundle)という。とくに $G$ の有限次元表現($C^\infty$ な準同型)$\rho\colon G\to\mathrm{GL}(V)$ について $P\times_\rho V:=P\times_GV$($g$ は $\rho(g)$ で作用)を同伴ベクトル束という。
定義から $[ug,f]=[u,gf]$ である。$u\in P$ を 1 つ固定すると $\iota_u\colon F\to(P\times_GF)_{p(u)}$、$f\mapsto[u,f]$ が定まり、$\iota_{ug}=\iota_u\circ g$ を満たす。
$\{(U_\alpha,\psi_\alpha)\}$ を $P$ の局所自明化の族、$s_\alpha$ をその局所切断、$g_{\alpha\beta}$ を変換関数とする。
1.$\Phi_\alpha$ が全単射であることを示す。$p(u)=x\in U_\alpha$ なら、ただ 1 つの $h\in G$ で $u=s_\alpha(x)h$ と書け、$[u,f]=[s_\alpha(x)h,f]=[s_\alpha(x),hf]=\Phi_\alpha(x,hf)$ なので全射である。$[s_\alpha(x),f]=[s_\alpha(x),f']$ なら、ある $g$ で $s_\alpha(x)=s_\alpha(x)g$、$f'=g^{-1}f$ となり、作用の自由性から $g=e$、$f=f'$ である。次に、$x\in U_\alpha\cap U_\beta$ について
$$
\Phi_\beta(x,f)=[s_\beta(x),f]=[s_\alpha(x)g_{\alpha\beta}(x),f]=[s_\alpha(x),g_{\alpha\beta}(x)f]=\Phi_\alpha(x,g_{\alpha\beta}(x)f)
$$
である。したがって、lem-pb-gluing の $X$ から $P\times_GF$ への写像 $[\alpha,x,f]\mapsto\Phi_\alpha(x,f)$ は矛盾なく定まる全単射であり、これで $X$ の多様体の構造を運べば、$\Phi_\alpha$ は開集合の上への微分同相になる。$\Phi_\alpha$ たちが微分同相になる構造は座標近傍で決まるので一意である。$u=s_\alpha(x)h$ について $\iota_u(f)=\Phi_\alpha(x,hf)$ なので、$\iota_u$ は微分同相 $f\mapsto hf$ と $\Phi_\alpha(x,\cdot)$ の合成で、微分同相である。
2.$F=V$ とする。$(P\times_\rho V)_x$ に、$\Phi_\alpha(x,\cdot)\colon V\to(P\times_\rho V)_x$ が線形同型になるようにベクトル空間の構造を入れる。別の $\beta$ を使うと $\Phi_\alpha^{-1}\circ\Phi_\beta(x,v)=(x,\rho(g_{\alpha\beta}(x))v)$ は $v$ について線形なので、この構造は $\alpha$ によらない。$\Phi_\alpha^{-1}$ はファイバーごとに線形な局所自明化で、その変換関数は $\rho\circ g_{\alpha\beta}$($C^\infty$)である。$\iota_u(v)=\Phi_\alpha(x,\rho(h)v)$ なので $\iota_u$ は線形同型である。$\square$
同伴束の構成は Mic08 18.7(pp. 217–219)、同伴ベクトル束は 18.11(p. 221)にある。商写像 $P\times F\to P\times_GF$ は、局所的に $(s_\alpha(x)h,f)\mapsto\Phi_\alpha(x,hf)$ と書けるので $C^\infty$ である。$G$ が $F$ に自明に作用すれば $P\times_GF\cong M\times F$ であり、$P\times_GG$($G$ が $G$ に左からの積で作用)は $[u,h]\mapsto uh$ によって $P$ 自身と同型である。表現の直和・テンソル積・双対をとると、同伴ベクトル束の直和・テンソル積・双対が得られる(変換関数がそれぞれ $\rho\circ g_{\alpha\beta}$ の直和・テンソル積・逆転置になるため)。
$C^\infty$ 写像 $\varphi\colon P\to F$ で $\varphi(ug)=g^{-1}\varphi(u)$ を満たすもの(同変写像)と、$P\times_GF$ の $C^\infty$ 切断とは、$\sigma_\varphi(p(u)):=[u,\varphi(u)]$ によって一対一に対応する。
要点:$[ug,\varphi(ug)]=[ug,g^{-1}\varphi(u)]=[u,\varphi(u)]$ なので $\sigma_\varphi$ は代表によらない。逆は $\varphi(u):=\iota_u^{-1}(\sigma(p(u)))$ である。
$\sigma_\varphi$ は局所的に $\sigma_\varphi(x)=\Phi_\alpha(x,\varphi(s_\alpha(x)))$ なので $C^\infty$ である。逆に切断 $\sigma$ に対し $\varphi_\sigma(u):=\iota_u^{-1}(\sigma(p(u)))$ とおく。$\iota_{ug}=\iota_u\circ g$ から $\iota_{ug}^{-1}=g^{-1}\circ\iota_u^{-1}$ なので $\varphi_\sigma(ug)=g^{-1}\varphi_\sigma(u)$ である。$\Phi_\alpha^{-1}\sigma(x)=(x,y(x))$ と書くと、$u=s_\alpha(x)h$ で $\iota_u(f)=\Phi_\alpha(x,hf)$ なので $\varphi_\sigma(u)=h^{-1}y(x)$ であり、$(x,h)\mapsto h^{-1}y(x)$ は $C^\infty$ である。$\varphi_{\sigma_\varphi}(u)=\iota_u^{-1}[u,\varphi(u)]=\varphi(u)$、$\sigma_{\varphi_\sigma}(p(u))=[u,\iota_u^{-1}\sigma(p(u))]=\sigma(p(u))$ なので、二つの対応は互いに逆である。$\square$
この対応は Mic08 18.12(p. 223)にある。同伴ベクトル束 $P\times_\rho V$ の切断は、$\varphi(ug)=\rho(g)^{-1}\varphi(u)$ を満たす $V$ 値関数である。局所切断 $s_\alpha$ に沿って $\varphi_\alpha:=\varphi\circ s_\alpha$ と書くと、$\varphi_\beta=\rho(g_{\alpha\beta})^{-1}\varphi_\alpha$ となる。接続はこの $V$ 値関数を微分する規則として主束の側で定義される(主束の接続)。また、$G$ を共役 $g\cdot h:=ghg^{-1}$ で自身に作用させた同伴束 $P\times_GG$(上の $P\times_GG$ とは別物)の切断は、同変性 $\tau(ug)=g^{-1}\tau(u)g$ を満たす $\tau\colon P\to G$ と対応し、$u\mapsto u\,\tau(u)$ は $P$ の自己同型を与える。これをゲージ変換という。
$\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$ とし、$\mathrm{GL}_r:=\mathrm{GL}(r,\mathbb K)$ とする(一般線形群)。
$E\to M$ を階数 $r$ の $C^\infty$ ベクトル束とする。$x\in M$ について、線形同型 $u\colon\mathbb K^r\to E_x$(すなわち $E_x$ の基底 $(u(e_1),\dots,u(e_r))$)の全体を $\mathrm{Fr}(E)_x$ とし、$\mathrm{Fr}(E):=\bigsqcup_x\mathrm{Fr}(E)_x$、$p(u):=x$ とおく。$\mathrm{GL}_r$ は合成 $u\cdot g:=u\circ g$ で右から作用する。$\mathrm{Fr}(E)$ を $E$ の枠束(frame bundle)という。$E=TM$ のとき $M$ の枠束という。
1.$E$ の局所自明化 $\phi_\alpha\colon E|_{U_\alpha}\to U_\alpha\times\mathbb K^r$ から、$e^\alpha(x)\colon\mathbb K^r\to E_x$、$v\mapsto\phi_\alpha^{-1}(x,v)$ を作る。これは $\mathrm{Fr}(E)_x$ の元であり、$\phi_\alpha\circ\phi_\beta^{-1}(x,v)=(x,g_{\alpha\beta}(x)v)$ から $e^\beta(x)=e^\alpha(x)\circ g_{\alpha\beta}(x)$ である。thm-pb-cocycle の $P_g$ から $\mathrm{Fr}(E)$ への写像 $[\alpha,x,h]\mapsto e^\alpha(x)\circ h$ は、$[\beta,x,h]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}h]$ の像が $e^\alpha g_{\alpha\beta}h=e^\beta h$ で一致するので矛盾なく定まる。これは全単射である:$u\in\mathrm{Fr}(E)_x$ は $u=e^\alpha(x)\circ(e^\alpha(x)^{-1}\circ u)$ とただ一通りに書ける。この全単射で $P_g$ の構造を運ぶと、$\mathrm{Fr}(E)$ は変換関数 $g_{\alpha\beta}$ の主 $\mathrm{GL}_r$ 束になり、右作用は合成と一致する。局所切断 $s$ は $x\mapsto e^\alpha(x)\circ h(x)$($h$ は $C^\infty$)の形であり、これは $E$ の $C^\infty$ な局所枠 $(s(x)e_1,\dots,s(x)e_r)$ にほかならない。
2.$[u\circ g,v]$ と $[u,gv]$ の像は $(u\circ g)(v)=u(gv)$ で一致するので、$\mathrm{ev}$ は矛盾なく定まる。thm-pb-associated の座標 $\Phi_\alpha(x,v)=[e^\alpha(x),v]$ で書くと $\mathrm{ev}\circ\Phi_\alpha(x,v)=e^\alpha(x)v=\phi_\alpha^{-1}(x,v)$ であり、これはファイバーごとに線形な微分同相である。よって $\mathrm{ev}$ はベクトル束の同型である。
3.$E:=P\times_{\mathrm{GL}_r}\mathbb K^r$ とする。thm-pb-associated の 2 により $\iota_u\colon\mathbb K^r\to E_{p(u)}$ は線形同型なので $\iota_u\in\mathrm{Fr}(E)$ であり、$\iota_{ug}=\iota_u\circ g$ なので $u\mapsto\iota_u$ は同変である。$P$ の局所切断 $s_\alpha$ に対し、$E$ の局所自明化を $\Phi_\alpha^{-1}$ ととると $e^\alpha(x)=\Phi_\alpha(x,\cdot)=\iota_{s_\alpha(x)}$ なので、$s_\alpha(x)h\mapsto\iota_{s_\alpha(x)h}=e^\alpha(x)\circ h$ は 1 の座標で $(x,h)\mapsto(x,h)$ と書け、$C^\infty$ である。prop-pb-basic の 3 により同型である。
4.$f$ が同型なら、$F(u):=f\circ u$ は $\mathrm{Fr}(E')$ の元で、$F(u\circ g)=F(u)\circ g$ を満たし、局所枠を局所枠に送るので $C^\infty$ である。逆に同変な同型 $F\colon\mathrm{Fr}(E)\to\mathrm{Fr}(E')$ があれば、$f(u(v)):=F(u)(v)$ と定める。$u(v)=u'(v')$、$u'=u\circ g$ なら $v=gv'$ で、$F(u')(v')=F(u)(gv')=F(u)(v)$ なので $f$ は矛盾なく定まり、$f=\mathrm{ev}'\circ(F\times_{\mathrm{GL}_r}\mathrm{id})\circ\mathrm{ev}^{-1}$ はベクトル束の同型である。二つの対応が互いに逆であることは定義から直ちに従う。最後の主張は 2・3・4 による。$\square$
枠束が主 $\mathrm{GL}_r$ 束で、同伴束として $E$ が戻ることは Mic08 18.11(pp. 221–222)にある。$E=TM$ のとき、$\mathrm{Fr}(TM)$ の局所切断は $M$ 上の局所的なベクトル場の枠であり、座標近傍 $(x_1,\dots,x_n)$ の座標ベクトル場 $(\partial_1,\dots,\partial_n)$ はその例である。
主 $G$ 束 $P$ と閉部分群 $H\subset G$ について、主 $H$ 束 $Q\subset P$ で $Q\times_HG\cong P$ となるものを、$P$ の構造群の $H$ への縮小という。変換関数の言葉では、コサイクルを $H$ に値をとるものとコホモロガスにとれることである。
実ベクトル束 $E$ に内積の $C^\infty$ な族(計量)$\langle\ ,\ \rangle$ を与えると、正規直交枠の全体 $\mathrm{O}(E)\subset\mathrm{Fr}(E)$ は主 $\mathrm{O}(r)$ 束であり、$\mathrm{O}(E)\times_{\mathrm{O}(r)}\mathbb R^r\cong E$ である。計量はつねに存在するので、実ベクトル束の構造群はつねに $\mathrm{O}(r)$ に縮小できる。
要点:局所枠に Gram–Schmidt の直交化を施すと正規直交な局所枠が得られ、その変換関数は $\mathrm{O}(r)$ に値をとる。
局所枠 $(e_1,\dots,e_r)$ に Gram–Schmidt の直交化(Gram–Schmidtの直交化)を施すと、係数が内積の有理式と平方根で書けるので $C^\infty$ な正規直交局所枠 $s_\alpha$ が得られる。二つの正規直交枠の変換行列 $g_{\alpha\beta}(x)$ は正規直交基底どうしの変換なので $\mathrm{O}(r)$ に入る。よって $\mathrm{O}(E)$ は $\{s_\alpha\}$ を局所切断とし変換関数 $g_{\alpha\beta}\colon U_\alpha\cap U_\beta\to\mathrm{O}(r)$ をもつ主 $\mathrm{O}(r)$ 束であり(prop-pb-basic の 1 と thm-pb-cocycle)、$\mathrm{O}(E)\times_{\mathrm{O}(r)}\mathbb R^r\to E$、$[u,v]\mapsto u(v)$ は thm-pb-frame の 2 と同じ理由で同型である。また $\mathrm{O}(E)\times_{\mathrm{O}(r)}\mathrm{GL}_r(\mathbb R)$($\mathrm{O}(r)$ は左からの積で作用)は、thm-pb-associated の 1 により座標 $\Phi_\alpha(x,g)=[s_\alpha(x),g]$ と座標変換 $(x,g)\mapsto(x,g_{\alpha\beta}(x)g)$ をもち、右作用 $[u,g]k:=[u,gk]$($\Phi_\alpha$ を通すと $(x,g)k=(x,gk)$)で局所切断 $[s_\alpha,e]$ と変換関数 $g_{\alpha\beta}$ をもつ主 $\mathrm{GL}_r(\mathbb R)$ 束になる。$\mathrm{Fr}(E)$ も局所切断 $s_\alpha$ について同じ変換関数をもつので、thm-pb-cocycle の 2 により両者はともに $P_g$ と同型であり、同型は $[u,g]\mapsto u\circ g$ で与えられる($[u\circ h,h^{-1}g]$ も同じ $u\circ g$ に移る)。よって $\mathrm{O}(E)\times_{\mathrm{O}(r)}\mathrm{GL}_r(\mathbb R)\cong\mathrm{Fr}(E)$ である。計量の存在は、局所自明化の上の標準内積を 1 の分割(1の分割)で貼り合わせればよい(正定値対称形式の全体は凸なので、凸結合は計量である。Lee13 Proposition 13.3 の証明と同じ)。$\square$
同様に、向きは $\mathrm{GL}_r^+(\mathbb R)$(行列式が正)への縮小、向きと計量は $\mathrm{SO}(r)$ への縮小、複素ベクトル束の Hermite 計量(Hermite計量)は $\mathrm{U}(r)$ への縮小である。向きについて言えば、Euler類 の定義「ベクトル束の向き」の「向きを保つ局所自明化」の族は、変換関数が $\mathrm{GL}_r^+(\mathbb R)$ に値をとる局所自明化の族にほかならず、その局所枠の全体が $\mathrm{Fr}(E)$ の中の主 $\mathrm{GL}_r^+(\mathbb R)$ 束(向きの付いた枠の束)になる。
同伴束の別の例として、複素ベクトル束 $E$ の射影束 $P(E)$(Leray–Hirschの定理 の例「射影束」)は、$\mathrm{GL}_r(\mathbb C)$ が $\mathbb{CP}^{r-1}$ に直線の像として作用する同伴束 $\mathrm{Fr}(E)\times_{\mathrm{GL}_r}\mathbb{CP}^{r-1}$ と、$[u,\ell]\mapsto u(\ell)$ によって同一視される(thm-pb-frame の 2 と同じく、$[u\circ g,\ell]$ と $[u,g\ell]$ は同じ直線に移る)。
$H$ を Lie 群 $G$ の閉部分群とすると、$G/H$ は射影 $G\to G/H$ が沈め込みになる多様体の構造をただ 1 つもち(Lee13 Theorem 21.17)、$H$ の右からの積によって $G\to G/H$ は主 $H$ 束である(Mic08 18.5。この記事では証明しない)。例えば $\mathrm{SO}(3)\to S^2$、$A\mapsto Ae_1$ は、$\mathrm{SO}(2)$ を $\mathrm{diag}(1,R)$ として右から作用させた主 $\mathrm{SO}(2)$ 束である。$A=(x\mid a\mid b)$ の第 2・第 3 列 $(a,b)$ は、$x\in S^2$ での接平面 $T_xS^2=x^{\perp}$ の正規直交基底で $\det(x,a,b)=1$ を満たすものなので、$\mathrm{SO}(3)$ は $S^2$ の向きの付いた正規直交枠束(prop-pb-reduction の $\mathrm{SO}(2)$ 版)と同一視される。
$S^3=\{(z_1,z_2)\in\mathbb C^2:|z_1|^2+|z_2|^2=1\}$ に $\mathrm U(1)=\{\lambda\in\mathbb C:|\lambda|=1\}$ を $(z_1,z_2)\lambda:=(z_1\lambda,z_2\lambda)$ で作用させ、$p\colon S^3\to\mathbb{CP}^1$、$p(z)=[z_1:z_2]$ とする($\mathbb{CP}^1\cong S^2$、射影空間)。作用は自由で、軌道は $p$ のファイバーである。$U_2:=\{z_2\neq0\}$ の座標 $w=z_1/z_2$ について
$$
s_2(w):=\frac{(w,1)}{\sqrt{1+|w|^2}}
$$
は局所切断で、$(w,\lambda)\mapsto s_2(w)\lambda$ の逆写像 $z\mapsto(z_1/z_2,\ z_2/|z_2|)$ も $C^\infty$ なので局所自明化を与える(prop-pb-basic の 1)。$U_1:=\{z_1\neq0\}$ でも同様に $s_1:=(z_1,z_2)\,\bar z_1/|z_1|$ をとると、$s_2=(z_1,z_2)\,\bar z_2/|z_2|$ なので
$$
s_2=s_1\,g_{12},\qquad g_{12}=\frac{z_1\bar z_2}{|z_1||z_2|}=\frac{w}{|w|}\quad(U_1\cap U_2=\{w\neq0\})
$$
である。これが $p\colon S^3\to S^2$ を主 $\mathrm U(1)$ 束にする(Hopf 束)。標準表現 $\lambda\mapsto(\lambda\cdot)$ の同伴直線束は、$[(z_1,z_2),c]\mapsto([z],\ c\,(z_1,z_2))$ により $\mathbb{CP}^1$ 上のトートロジー直線束 $\{([z],v):v\in\mathbb Cz\}$ と同型である($[(z\lambda),\lambda^{-1}c]$ も同じ点に移るので矛盾なく定まり、ファイバーごとに線形同型である)。Hopf 束が自明でないことは 曲率形式 で曲率の積分を使って示す。
離散群 $\Gamma$($0$ 次元の Lie 群)が連結な多様体 $Y$ に右から $C^\infty$ 級に、自由かつ固有に(任意のコンパクト集合 $K\subset Y$ について $K\gamma\cap K\neq\emptyset$ となる $\gamma\in\Gamma$ が有限個しかない)作用すれば、$Y/\Gamma$ は $Y\to Y/\Gamma$ が $C^\infty$ 級の被覆写像(被覆空間)になる多様体の構造をただ 1 つもち(Lee13 Theorem 21.13。この記事では証明しない)、$Y\to Y/\Gamma$ は主 $\Gamma$ 束である(局所切断は被覆の各シートへの逆写像)。各点が $\gamma\neq e$ について $U\gamma\cap U=\emptyset$ となる近傍 $U$ をもつだけでは足りない:$\mathbb Z$ が $\mathbb R^2\setminus\{0\}$ に $(x,y)n:=(2^nx,2^{-n}y)$ で作用するとき、この条件は満たされる($x\neq0$ の点では $|x|$ の比が $2$ 未満の近傍をとればよく、$y\neq0$ でも同様)が、$n\to\infty$ で $(1,2^{-n})\to(1,0)$ であり、同じ軌道の点 $(1,2^{-n})(-n)=(2^{-n},1)$ は $(0,1)$ に近づくので、$(1,0)$ と $(0,1)$ の軌道は軌道空間で分離できず、軌道空間は Hausdorff でない。例えば $S^1\to S^1$、$z\mapsto z^2$ は $\{\pm1\}$ による主 $\mathbb Z/2$ 束である。$S^1=U_+\cup U_-$($U_\pm:=S^1\setminus\{\mp1\}$)の上で平方根の分枝を局所切断にとると、$U_+\cap U_-$ の 2 つの弧の上で変換関数は $+1$ と $-1$ になる。符号表現 $\{\pm1\}\to\mathrm{GL}_1(\mathbb R)$ の同伴直線束は変換関数 $+1,-1$ をもつので、ベクトル束 の Möbius 束である。
主束の定義の 2 条件(ファイバーを保つ自由な作用、同変な局所自明化)は、どちらも省けない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 作用の自由性 | $S^1$ が $S^2$ に $z$ 軸まわりの回転で作用する | 北極・南極が固定点になり、軌道が $G$ と微分同相でなく、$S^2\to[-1,1]$ は主束にならない |
| 軌道空間が多様体であること(局所自明性) | $\mathbb R$ が $T^2=\mathbb R^2/\mathbb Z^2$ に $t\cdot[x,y]=[x+t,y+\alpha t]$($\alpha$ は無理数)で作用する | 作用は自由だが軌道空間が Hausdorff でなく、底空間になる多様体がない |
| ファイバーに主束としての右作用があること | Möbius の帯(ファイバー $\mathbb R$ のファイバー束) | ファイバーは $G=\mathbb R$ と微分同相だが、主 $\mathbb R$ 束の構造は入らない |
1 行目:回転 $R_\theta$ は $(0,0,\pm1)$ を固定するので自由でない。軌道は高さ $z$ の円周で、$z=\pm1$ では 1 点なので、軌道の射影 $(x,y,z)\mapsto z$ のファイバーはすべてが $S^1$ と微分同相ではない。
2 行目:$t\cdot p=p$ なら $(t,\alpha t)\in\mathbb Z^2$ で、$\alpha$ が無理数なので $t=0$、すなわち作用は自由である。各軌道は $T^2$ で稠密である。実際、まず $\{n\alpha\bmod1:n\in\mathbb Z\}$ は円周 $\mathbb R/\mathbb Z$ で稠密である:正の整数 $N$ に対し、$k\alpha\bmod1$($k=0,1,\dots,N$)は $\alpha$ が無理数なので相異なる $N+1$ 点であり、$[0,1)$ を長さ $1/N$ の $N$ 個の区間に分けると鳩の巣原理で 2 点が同じ区間に入るので、$0<|n_0\alpha-m_0|<1/N$ となる整数 $n_0,m_0$ がとれる。$\delta:=n_0\alpha-m_0$ の倍数 $j\delta$($j\in\mathbb Z$)は円周上に間隔 $|\delta|$($<1/N$)で並ぶので、$\{n\alpha\bmod1\}$ は円周のどの点からも距離 $1/N$ 未満の点を含む。$N$ は任意なので稠密である。次に、点 $[x_0,y_0]$ の軌道の $t=n-x_0+s$($n\in\mathbb Z$、$s\in[0,1)$)での点は $[s,\ y_0+\alpha(s-x_0)+n\alpha]$ なので、軌道は各円周 $\{s\}\times\mathbb R/\mathbb Z$ と稠密な集合で交わり、したがって $T^2$ で稠密である。また軌道と円周 $\{0\}\times\mathbb R/\mathbb Z$ の交わりは可算集合なので、軌道は 2 つ以上ある。空でない飽和開集合 $W$ をとると、どの点 $q$ の軌道も稠密なので $W$ と交わり、$W$ が飽和なので $q\in W$ となる。よって軌道空間の開集合は $\emptyset$ と全体だけで、軌道空間は Hausdorff でない。主 $\mathbb R$ 束 $P\to M$ があれば軌道空間は $M$ と同相で Hausdorff なので、この作用はどんな主束の作用にもならない。
3 行目:主 $\mathbb R$ 束($\mathbb R$ は加法群)は必ず自明である。実際、変換関数 $g_{\alpha\beta}$ は $g_{\alpha\gamma}=g_{\alpha\beta}+g_{\beta\gamma}$ を満たすので、$\{U_\alpha\}$ に従属する 1 の分割 $\{\rho_\gamma\}$ で $h_\alpha:=-\sum_\gamma\rho_\gamma g_{\gamma\alpha}$ とおくと $h_\beta-h_\alpha=-\sum_\gamma\rho_\gamma(g_{\gamma\beta}-g_{\gamma\alpha})=-g_{\alpha\beta}$ となる。thm-pb-cocycle の 3 の式は加法で書くと $g'_{\alpha\beta}=-h_\alpha+g_{\alpha\beta}+h_\beta$ であり、これは $0$ なので、$g$ は自明なコサイクルとコホモロガスで、束は自明である。もし Möbius の帯が射影を変えずに主 $\mathbb R$ 束の構造をもてば、全空間は $S^1\times\mathbb R$ と微分同相になるが、$S^1\times\mathbb R$ は向き付け可能で Möbius の帯は向き付け不可能(向き付け可能多様体)なので矛盾する。「ファイバーが $G$ と微分同相なファイバー束」と「主 $G$ 束」は別の概念である。
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