Hölderの不等式

同義語:ヘルダーの不等式Hölder's inequality

概要

Hölderの不等式(Hölder's inequality)とは、$1\le p,q\le\infty$、$\frac1p+\frac1q=1$ のとき、数の組や測度空間上の関数について $\sum_i|a_ib_i|\le\|a\|_p\|b\|_q$、$\int|fg|\,d\mu\le\|f\|_p\|g\|_q$ が成り立つという不等式である。$p=q=2$ が Cauchy–Schwarz の不等式であり、Young の不等式 $ab\le\frac{a^p}p+\frac{b^q}q$ から導かれる。$1<p<\infty$ での等号は $|f|^p$ と $|g|^q$ が比例するときに限る。$L^p$ ノルムの三角不等式(Minkowski の不等式)、有限測度での $L^p$ の包含、$L^p$ と $L^q$ の双対の基礎であり、$0<p<1$ では向きが逆になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 凸関数, Lebesgue積分, Cauchy–Schwarzの不等式

何を評価する不等式か

2 つの量の積の和 $\sum_ia_ib_i$ や積の積分 $\int fg$ を、それぞれの大きさで上から押さえたい場面は多い。$a$ と $b$ を同じ 2 乗和で測るなら、答えは Cauchy–Schwarzの不等式 $\bigl|\sum_ia_ib_i\bigr|\le\bigl(\sum_i|a_i|^2\bigr)^{1/2}\bigl(\sum_i|b_i|^2\bigr)^{1/2}$ である。Hölder の不等式は、$a$ を $p$ 乗和で測るなら $b$ は $q$ 乗和($\frac1p+\frac1q=1$)で測ればよいと述べる:
$$ \sum_i|a_ib_i|\le\Bigl(\sum_i|a_i|^p\Bigr)^{1/p}\Bigl(\sum_i|b_i|^q\Bigr)^{1/q}. $$
一方を大きな指数で測ると、他方は小さな指数で測ることになる。たとえば $b$ を最大値($q=\infty$)で測るなら $a$ は絶対値の和($p=1$)で測ればよく、これは $\sum_i|a_ib_i|\le\max_i|b_i|\sum_i|a_i|$ という自明な評価である。Hölder の不等式はその間をすべてつなぐ。
内積をもたない $L^p$ 空間では、Hölder の不等式が Cauchy–Schwarz の不等式の役を果たす。$L^p$ ノルムの三角不等式(Minkowski の不等式)、有限測度での $L^p$ の包含、$L^p$ と $L^q$ の双対、Sobolev 空間や補間定理の評価は、どれもこの不等式から出発する。高校数学の範囲でも、冪の和の評価や Engel 形の不等式の一般化、平均の大小の一般化として現れる。

共役指数と $p$ ノルム

共役指数と $p$ ノルム

$1\le p\le\infty$ に対し、$\frac1p+\frac1q=1$ を満たす $q\in[1,\infty]$ を $p$ の共役指数(双対指数)という。ここで $\frac1\infty:=0$ とし、$1$ と $\infty$ は互いに共役とする。$1< p<\infty$ なら $q=\frac p{p-1}$ である。
数の組 $a=(a_1,\dots,a_n)\in\mathbb{C}^n$ と $0< p<\infty$ について $\|a\|_p:=\bigl(\sum_{i=1}^n|a_i|^p\bigr)^{1/p}$、$\|a\|_\infty:=\max_i|a_i|$ とおく。測度空間 $(X,\mathcal{F},\mu)$ 上の可測関数 $f$ についても $\|f\|_p:=\bigl(\int|f|^p\,d\mu\bigr)^{1/p}\in[0,\infty]$、$\|f\|_\infty$ を本質的上限とする(Lp空間 の記事の定義「$p$ ノルムと本質的上限」)。

共役指数の例は $1\leftrightarrow\infty$、$2\leftrightarrow2$、$3\leftrightarrow\frac32$、$4\leftrightarrow\frac43$ である。関係 $\frac1p+\frac1q=1$ は $(p-1)(q-1)=1$、$p+q=pq$ とも書け、$q\to\infty$ と $p\to1$ が対応する。Lp空間 の記事では共役指数を $p'$ と書いているが、この記事では 2 つの指数の役を対等に見るため $q$ と書く。$0< p<1$ でも $\|\cdot\|_p$ は定義されるが、2 成分以上ではノルムにならない(三角不等式が成り立たない。三角不等式 の記事の例「反例:指数が1未満の冪和」)。この記事では $0< p<1$ を、逆向きの不等式と一般化の節でだけ扱う。
証明の道具は 2 つの数についての Young の不等式である:$1< p<\infty$、$a,b\ge0$ について
$$ ab\le\frac{a^p}p+\frac{b^q}q $$
が成り立ち、等号は $a^p=b^q$ のときに限る(Axl20 7.8 と Exercise 7A.2、pp. 196・199。凸関数 の記事の系「Youngの不等式」は、対数の凹性、すなわち重み付きの相加相乗平均の不等式から導いている。そこでの等号条件は $a,b>0$ の場合で、$a=0$ または $b=0$ なら両辺が等しいのは $a=b=0$ のとき、すなわちやはり $a^p=b^q$ のときに限る)。
曲線 y=x^(p-1) の下の面積 a^p/p と、曲線の左の面積 b^q/q を合わせると、横 a・縦 b の長方形の面積 ab 以上になる 曲線 y=x^(p-1) の下の面積 a^p/p と、曲線の左の面積 b^q/q を合わせると、横 a・縦 b の長方形の面積 ab 以上になる
図は Young の不等式の面積による見方である。$y=x^{p-1}$ の逆関数は $x=y^{q-1}$($(p-1)(q-1)=1$ による)なので、曲線の下の $0\le x\le a$ の部分の面積 $\int_0^ax^{p-1}dx=\frac{a^p}p$ と、曲線の左の $0\le y\le b$ の部分の面積 $\int_0^by^{q-1}dy=\frac{b^q}q$ を合わせると、長方形 $[0,a]\times[0,b]$ を覆う。図の値($p=3$、$q=\frac32$、$a=1.5$、$b=1.2$)では $ab=1.8$、$\frac{a^p}p+\frac{b^q}q=2.00\ldots$ であり、差は長方形からはみ出した部分の面積である。はみ出しがなくなるのは曲線が長方形の角 $(a,b)$ を通るとき、すなわち $b=a^{p-1}$($a^p=b^q$ と同じ)のときである。

数の組の Hölder の不等式

Hölderの不等式(数の組)

$1\le p\le\infty$ とし、$q$ をその共役指数とする。$a,b\in\mathbb{C}^n$ について
$$ \Bigl|\sum_{i=1}^na_ib_i\Bigr|\le\sum_{i=1}^n|a_ib_i|\le\|a\|_p\,\|b\|_q $$
が成り立つ。さらに $1< p<\infty$ のとき、右の不等号が等号になるのは、少なくとも一方は $0$ でない $\lambda,\kappa\ge0$ で、すべての $i$ について $\lambda|a_i|^p=\kappa|b_i|^q$ となるものがあるときに限る。

左の不等号は三角不等式である。以下、$A:=\|a\|_p$、$B:=\|b\|_q$ とおく。
$p=1$($q=\infty$)のとき:各 $i$ で $|b_i|\le B$ なので $\sum_i|a_ib_i|\le B\sum_i|a_i|=AB$ である。$p=\infty$ は $a$ と $b$ の役を入れ替えればよい。
$1< p<\infty$ のとき:$A=0$ ならすべての $a_i$ が $0$ で、両辺とも $0$ である。$B=0$ でも同じである。$A,B>0$ なら、各 $i$ について Young の不等式を $u_i:=|a_i|/A$、$v_i:=|b_i|/B$ に使って加えると
$$ \frac1{AB}\sum_{i=1}^n|a_ib_i|=\sum_{i=1}^nu_iv_i\le\frac1p\sum_{i=1}^nu_i^p+\frac1q\sum_{i=1}^nv_i^q=\frac1p\cdot\frac{A^p}{A^p}+\frac1q\cdot\frac{B^q}{B^q}=1 $$
であり、$AB$ を掛けて結論を得る。
等号の条件($1< p<\infty$):$A=0$ なら等号が成り立ち、$\lambda=1$、$\kappa=0$ で条件が満たされる。$B=0$ なら $\lambda=0$、$\kappa=1$ でよい。$A,B>0$ のとき、上の計算で等号が成り立つのは、各 $i$ で $u_iv_i\le\frac{u_i^p}p+\frac{v_i^q}q$ がすべて等号のとき、すなわちすべての $i$ で $u_i^p=v_i^q$、つまり $\frac{|a_i|^p}{A^p}=\frac{|b_i|^q}{B^q}$ のときである。これは $\lambda=B^q$、$\kappa=A^p$ で条件を満たす。逆に、条件を満たす $\lambda,\kappa$ があり $A,B>0$ なら、$\kappa=0$ とすると $\lambda|a_i|^p=0$(すべての $i$)かつ $\lambda>0$ から $A=0$ となって矛盾するので $\kappa>0$ であり、同様に $\lambda>0$ である。$i$ について加えると $\lambda A^p=\kappa B^q$ なので、$\frac{|a_i|^p}{A^p}=\frac{\kappa|b_i|^q}{\lambda A^p}=\frac{|b_i|^q}{B^q}$ となり、上の等号の条件が満たされる。$\square$

$p=q=2$ の場合が数の組の Cauchy–Schwarz の不等式である。そのときの等号条件「$|a_i|^2$ と $|b_i|^2$ が比例する」は絶対値についての条件であり、Cauchy–Schwarz の等号条件($a,b$ が 1 次従属)より弱い。これは右の不等号 $\sum_i|a_ib_i|\le\|a\|_p\|b\|_q$ だけの等号条件だからで、左の不等号 $|\sum_ia_ib_i|\le\sum_i|a_ib_i|$ まで等号になるには、さらに $a_ib_i$ の偏角がそろう必要がある。
$1< p<\infty$ で等号になる例:$p=3$、$q=\frac32$、$a=(1,2)$ のとき、$|b_i|^{3/2}$ が $|a_i|^3$ に比例するように $b=(1,4)$ とすると、$\sum_ia_ib_i=9$、$\|a\|_3\|b\|_{3/2}=9^{1/3}\cdot9^{2/3}=9$ で等号になる。比例しない $b=(2,1)$ では $\sum_ia_ib_i=4$、$\|a\|_3\|b\|_{3/2}=5.09\ldots$ で等号にならない。

積分の形

和を積分に替えても、証明は同じである。以下 $(X,\mathcal{F},\mu)$ を測度空間とし、関数は複素数値の可測関数とする。

Hölderの不等式(積分)

$1\le p\le\infty$ とし、$q$ をその共役指数とする。可測関数 $f,g$ について
$$ \int|fg|\,d\mu\le\|f\|_p\,\|g\|_q $$
が成り立つ(右辺が $0\cdot\infty$ の形のときは $0$ とする)。とくに $\|f\|_p,\|g\|_q<\infty$ なら $fg$ は可積分で $\bigl|\int fg\,d\mu\bigr|\le\|f\|_p\|g\|_q$ である。さらに $1< p<\infty$、$\|f\|_p,\|g\|_q<\infty$ のとき、等号 $\int|fg|\,d\mu=\|f\|_p\|g\|_q$ が成り立つのは、少なくとも一方は $0$ でない $\lambda,\kappa\ge0$ で、ほとんどいたるところ $\lambda|f|^p=\kappa|g|^q$ となるものがあるときに限る。

不等式は Lp空間 の記事の定理「Hölderの不等式」で証明されている(Axl20 7.9、p. 196)。$1< p<\infty$ で $0<\|f\|_p,\|g\|_q<\infty$ の場合の筋は thm-holder-finite と同じで、$u:=|f|/\|f\|_p$、$v:=|g|/\|g\|_q$ に各点で Young の不等式を使って積分すると $\int uv\,d\mu\le\frac1p+\frac1q=1$ となる。
等号の条件:$0<\|f\|_p,\|g\|_q<\infty$ のとき、等号は $0$ 以上の関数 $h:=\frac{u^p}p+\frac{v^q}q-uv$ の積分が $0$ になることと同値であり、したがって、ほとんどいたるところ Young の不等式が等号、すなわち $u^p=v^q$ となることと同値である。これを $\lambda,\kappa$ の条件に言い換えるのは prf-holder-finite と同じである。

詳細

$\|f\|_p=0$ なら、ほとんどいたるところ $f=0$ なので両辺は $0$ で、$\lambda=1$、$\kappa=0$ で条件が満たされる($\|g\|_q=0$ も同様)。$0<\|f\|_p,\|g\|_q<\infty$ とすると、$\int u^p\,d\mu=\int v^q\,d\mu=1$ なので $\int h\,d\mu=1-\int uv\,d\mu$ である。よって等号は $\int h\,d\mu=0$ と同値であり、$h\ge0$ なので、これは、ほとんどいたるところ $h=0$ であることと同値である(Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 2)。Young の不等式の等号条件から、$h=0$ は $u^p=v^q$ と同値である。$u^p=v^q$ は $\lambda=\|g\|_q^q$、$\kappa=\|f\|_p^p$ で条件を満たす。逆に条件を満たす $\lambda,\kappa$ があれば、$\|f\|_p,\|g\|_q>0$ から $\lambda,\kappa>0$ であり、積分すると $\lambda\|f\|_p^p=\kappa\|g\|_q^q$ なので、ほとんどいたるところ $u^p=\frac{|f|^p}{\|f\|_p^p}=\frac{\kappa|g|^q}{\lambda\|f\|_p^p}=\frac{|g|^q}{\|g\|_q^q}=v^q$ である。$\square$

等号条件は Axl20 の Exercise 7A.5(p. 199)にある。$p=1$ の等号条件は形が違い、$\|g\|_\infty<\infty$ のとき、$f\ne0$ となるほとんどすべての点で $|g|=\|g\|_\infty$ となることである(同 Exercise 7A.6、p. 200)。$p=q=2$ の場合は、$L^2$ の内積についての Cauchy–Schwarzの不等式 と同じ評価である。Axl20 の傍注(p. 197)によれば、この不等式は 1889 年に O. Hölder が証明した。

例

冪の和の評価

$a_1,\dots,a_n\ge0$、$p\ge1$ とする。thm-holder-finite を $a$ と $b=(1,\dots,1)$ に使うと $\sum_ia_i\le\|a\|_p\,n^{1/q}$ であり、両辺を $p$ 乗すると $\frac pq=p-1$ から
$$ \Bigl(\sum_{i=1}^na_i\Bigr)^p\le n^{p-1}\sum_{i=1}^na_i^p $$
を得る($p=1$ では等号)。$p>1$ での等号は $a_i^p$ が $1$ に比例するとき、すなわち $a_1=\cdots=a_n$ のときに限る。$p=2$ は Cauchy–Schwarzの不等式 の例「和と 2 乗の和、和と逆数の和」の不等式であり、$p=3$、$a=(1,2,3)$ では $216\le9\cdot36=324$ である。$p=5$ の場合 $(a_1+\cdots+a_n)^5\le n^4(a_1^5+\cdots+a_n^5)$ は Axl20 の Exercise 7A.3(p. 199)である。

Engel 形の不等式の一般化

$p>1$、$x_i\ge0$、$y_i>0$($i=1,\dots,n$)について
$$ \sum_{i=1}^n\frac{x_i^p}{y_i^{p-1}}\ge\frac{\bigl(\sum_ix_i\bigr)^p}{\bigl(\sum_iy_i\bigr)^{p-1}} $$
が成り立つ。$p=2$ が Engel形の不等式 であり、同記事の「さらに先へ」の節は一般の $p$ の形を証明なしに挙げている。証明:$x_i=\frac{x_i}{y_i^{(p-1)/p}}\cdot y_i^{(p-1)/p}$ と分け、thm-holder-finite を使うと、$q\cdot\frac{p-1}p=1$ から
$$ \sum_ix_i\le\Bigl(\sum_i\frac{x_i^p}{y_i^{p-1}}\Bigr)^{1/p}\Bigl(\sum_iy_i\Bigr)^{1/q} $$
である。両辺を $p$ 乗し、$\frac pq=p-1$ を使って $\bigl(\sum_iy_i\bigr)^{p-1}$ で割ればよい。等号は $x_i^p/y_i^{p-1}$ が $y_i$ に比例するとき、すなわち $x_i/y_i$ が $i$ によらないときに限る。$p=3$、$x=(1,2)$、$y=(1,3)$ では左辺 $1+\frac89=\frac{17}9$、右辺 $\frac{27}{16}$ で、$\frac{17}9=1.88\ldots\ge1.6875$ である。

$\Gamma$ 関数の対数凸性

$x,y>0$、$0<\lambda<1$ について、$t^{\lambda x+(1-\lambda)y-1}e^{-t}=\bigl(t^{x-1}e^{-t}\bigr)^\lambda\bigl(t^{y-1}e^{-t}\bigr)^{1-\lambda}$ に $(0,\infty)$ 上の thm-holder-integral を指数 $p=\frac1\lambda$、$q=\frac1{1-\lambda}$ で使うと
$$ \Gamma(\lambda x+(1-\lambda)y)\le\Gamma(x)^\lambda\,\Gamma(y)^{1-\lambda} $$
を得る。すなわち $\log\Gamma$ は凸関数である。Γ関数 の記事の定理「$\Gamma$ 関数の対数凸性」は、この議論を補題「広義積分に対する Hölder の不等式」として広義積分の範囲で行っている。$x=1$、$y=3$、$\lambda=\frac12$ では $\Gamma(2)=1\le\sqrt{\Gamma(1)\Gamma(3)}=\sqrt2$ である。

冪平均の単調性

正の数 $a_1,\dots,a_n$ と、和が $1$ の正の重み $w_1,\dots,w_n$ について、$r>0$ の冪平均を $M_r:=\bigl(\sum_iw_ia_i^r\bigr)^{1/r}$ とおく。$0< r< s$ なら $M_r\le M_s$ である。実際、$P:=\frac sr>1$ とその共役指数 $P'$ について thm-holder-finite を $w_i^{1/P}a_i^r$ と $w_i^{1/P'}$ に使うと
$$ \sum_iw_ia_i^r\le\Bigl(\sum_iw_ia_i^s\Bigr)^{r/s}\Bigl(\sum_iw_i\Bigr)^{1/P'}=M_s^r $$
であり、$\frac1r$ 乗すればよい。等号は $a_1=\cdots=a_n$ のときに限る。$r=1$、$s=2$ が相加平均と 2 乗平均の大小(平均の大小関係 の定理「調和・相乗・相加・2 乗平均の大小」の一部)である。$a=(1,4)$、$w=(\frac12,\frac12)$ では $M_{1/2}=2.25$、$M_1=2.5$、$M_2=2.91\ldots$、$M_3=3.19\ldots$ と増える。これは次の節の cor-holder-probability の、有限の確率空間の場合である。

一般化:指数が 3 つ以上の場合と補間

指数の関係 $\frac1p+\frac1q=1$ は「逆数の和が $1$」ということであり、$1$ を一般の $\frac1r$ に、2 つの関数を $k$ 個に広げられる。ここでは $0< p\le\infty$ について $\|f\|_p$ を def-holder-conjugate のとおりに定め($p<1$ でも同じ式)、$\frac1\infty=0$ とする。

一般化された Hölder の不等式

$0< r,p_1,\dots,p_k\le\infty$ が $\frac1{p_1}+\cdots+\frac1{p_k}=\frac1r$ を満たすとき、可測関数 $f_1,\dots,f_k$ について
$$ \|f_1f_2\cdots f_k\|_r\le\|f_1\|_{p_1}\|f_2\|_{p_2}\cdots\|f_k\|_{p_k} $$
が成り立つ(右辺に $0\cdot\infty$ が現れるときは $0$ とする)。

要点:$k=2$、$f_1=f$、$f_2=g$、$p_1=p$、$p_2=q$($p,q<\infty$)では、$P:=\frac pr$、$Q:=\frac qr$ が $\frac1P+\frac1Q=1$ を満たすので、thm-holder-integral を $|f|^r$ と $|g|^r$ に指数 $P,Q$ で使うと
$$ \int|fg|^r\,d\mu\le\Bigl(\int|f|^{rP}\,d\mu\Bigr)^{1/P}\Bigl(\int|g|^{rQ}\,d\mu\Bigr)^{1/Q}=\|f\|_p^r\,\|g\|_q^r $$
となる。$k\ge3$ は $k$ についての帰納法による。

詳しい証明を開く

$k=2$ とする。$r=\infty$ なら $p=q=\infty$ で、ほとんどいたるところ $|fg|\le\|f\|_\infty\|g\|_\infty$ から従う。$r<\infty$ で $q=\infty$ なら $p=r$ であり、ほとんどいたるところ $|fg|^r\le\|g\|_\infty^r|f|^r$ を積分すればよい($p=\infty$ も同様)。$p,q<\infty$ なら $\frac1p,\frac1q<\frac1r$ から $P,Q>1$ であり、$\frac1P+\frac1Q=r\bigl(\frac1p+\frac1q\bigr)=1$ なので、上の式の $\frac1r$ 乗が結論である。

$k\ge3$ のとき、$\frac1s:=\frac1{p_2}+\cdots+\frac1{p_k}$ とおくと $\frac1{p_1}+\frac1s=\frac1r$ なので、$k=2$ の場合と帰納法の仮定から $\|f_1(f_2\cdots f_k)\|_r\le\|f_1\|_{p_1}\|f_2\cdots f_k\|_s\le\|f_1\|_{p_1}\|f_2\|_{p_2}\cdots\|f_k\|_{p_k}$ である。$\square$

$r=1$、$k=2$ が thm-holder-integral である。数え上げ測度に当てれば、たとえば $\sum_i|a_ib_ic_i|\le\|a\|_3\|b\|_3\|c\|_3$ のような 3 つの数の組の評価が得られる。この形の主張は Axl20 の Exercise 7A.7・7A.8(p. 200)にある。

補間の不等式

$0< p_0< p_1\le\infty$、$0<\theta<1$ とし、$\frac1{p_\theta}=\frac{1-\theta}{p_0}+\frac\theta{p_1}$ で $p_\theta$ を定める。可測関数 $f$ について
$$ \|f\|_{p_\theta}\le\|f\|_{p_0}^{1-\theta}\,\|f\|_{p_1}^{\theta} $$
が成り立つ。とくに $f\in L^{p_0}\cap L^{p_1}$ なら、$p_0$ と $p_1$ の間のすべての $p$ について $f\in L^p$ である。

$|f|=|f|^{1-\theta}\cdot|f|^\theta$ と分け、thm-holder-general を指数 $\frac{p_0}{1-\theta}$、$\frac{p_1}\theta$(逆数の和が $\frac1{p_\theta}$)で使う。$\bigl\||f|^{1-\theta}\bigr\|_{p_0/(1-\theta)}=\|f\|_{p_0}^{1-\theta}$、$\bigl\||f|^\theta\bigr\|_{p_1/\theta}=\|f\|_{p_1}^\theta$($p_1=\infty$ でも成り立つ)から結論を得る。$p_0< p< p_1$ なら $p=p_\theta$ となる $\theta\in(0,1)$ があるので、後半が従う。$\square$

補間の不等式は、$\frac1p$ の関数として $\log\|f\|_p$ が凸であることを述べている。$(0,1)$ 上の $f(x)=x^{-1/3}$ では $\|f\|_1=\frac32$、$\|f\|_2=\sqrt3$ であり、$p_0=1$、$p_1=2$、$\theta=\frac23$($p_\theta=\frac32$)とすると、左辺 $\|f\|_{3/2}=\bigl(\int_0^1x^{-1/2}dx\bigr)^{2/3}=2^{2/3}=1.587\ldots$、右辺 $\bigl(\frac32\bigr)^{1/3}(\sqrt3)^{2/3}=1.650\ldots$ である。

確率空間での $L^p$ ノルムの単調性

$\mu(X)=1$ とし、$0< p< q\le\infty$ とする。可測関数 $f$ について $\|f\|_p\le\|f\|_q$ である。とくに確率変数 $Z$ について $E[|Z|]\le E[Z^2]^{1/2}$ であり、$L^q\subset L^p$ である。

$\frac1s:=\frac1p-\frac1q>0$ とおくと $\frac1q+\frac1s=\frac1p$ なので、thm-holder-general を $f$ と定数関数 $1$ に使うと $\|f\|_p=\|f\cdot1\|_p\le\|f\|_q\|1\|_s=\|f\|_q$ である($\|1\|_s=\mu(X)^{1/s}=1$)。$\square$

$p\ge1$ の場合は Lp空間 の記事の命題「有限測度空間での包含」にあり、一般の有限測度では $\mu(X)^{\frac1p-\frac1q}$ の因子がつく。この系は $0< p<1$ も含む。

双対の形

Hölder の不等式は、$\|b\|_q\le1$ のとき $\bigl|\sum_ia_ib_i\bigr|\le\|a\|_p$ であることを述べている。この上界は実際に達成され、$p$ ノルムは「長さ $1$ の $b$ との積の和の最大値」として表せる。

$p$ ノルムの双対表示

$1\le p\le\infty$、$q$ をその共役指数とする。$a\in\mathbb{C}^n$ について
$$ \|a\|_p=\max\Bigl\{\Bigl|\sum_{i=1}^na_ib_i\Bigr|\ \Bigm|\ b\in\mathbb{C}^n,\ \|b\|_q\le1\Bigr\} $$
である。$a\ne0$ のとき最大値を与える $b$ は次のようにとれる。ここで $\sigma_i:=\overline{a_i}/|a_i|$($a_i\ne0$ のとき)、$\sigma_i:=0$($a_i=0$ のとき)とする。

  • $1< p<\infty$:$b_i:=\sigma_i\,|a_i|^{p-1}/\|a\|_p^{p-1}$。
  • $p=1$:$b_i:=\sigma_i$。
  • $p=\infty$:$|a_k|=\|a\|_\infty$ となる $k$ を 1 つとり、$b_k:=\sigma_k$、$i\ne k$ では $b_i:=0$。

$\|b\|_q\le1$ なら、thm-holder-finite から $\bigl|\sum_ia_ib_i\bigr|\le\|a\|_p\|b\|_q\le\|a\|_p$ である。$a=0$ なら $b=0$ で最大値 $0$ が達成される。$a\ne0$ なら、上の $b$ が $\|b\|_q\le1$ と $\sum_ia_ib_i=\|a\|_p$ を満たすことを、$a_i\sigma_i=|a_i|$ と $(p-1)q=p$ を使って直接確かめればよい。

確かめる計算を開く

$1< p<\infty$:$\sum_ia_ib_i=\sum_i|a_i|^p/\|a\|_p^{p-1}=\|a\|_p^p/\|a\|_p^{p-1}=\|a\|_p$ である。$(p-1)q=p$ から $\|b\|_q^q=\sum_i|a_i|^{(p-1)q}/\|a\|_p^{(p-1)q}=\sum_i|a_i|^p/\|a\|_p^p=1$ である。

$p=1$:$\|b\|_\infty\le1$ で、$\sum_ia_ib_i=\sum_i|a_i|=\|a\|_1$ である。$p=\infty$:$\|b\|_1=1$ で、$\sum_ia_ib_i=a_k\sigma_k=|a_k|=\|a\|_\infty$ である。$\square$

$1< p<\infty$ の最大値を与える $b$ は、$|b_i|^q$ が $|a_i|^p$ に比例するように選んだもので、thm-holder-finite の等号条件にちょうど合っている。たとえば $p=3$、$a=(1,-2)$ では $\|a\|_3=9^{1/3}=2.080\ldots$ であり、$b=(1,-4)/9^{2/3}$ が $\|b\|_{3/2}=1$、$\sum_ia_ib_i=9/9^{2/3}=9^{1/3}$ を与える。積分の形($1\le p<\infty$、$\|f\|_p<\infty$ のとき $\|f\|_p=\sup\{|\int fg\,d\mu|:\|g\|_q\le1\}$)は Axl20 7.12(p. 198)にあり、$\overline f\,|f|^{p-2}$($f=0$ の点では $0$)を正規化した $g$ が上限を与える。この表示から、上限の中の不等式を足し合わせるだけで $\|a+c\|_p\le\|a\|_p+\|c\|_p$(Minkowskiの不等式)が出る。また $1< p\le\infty$ なら($p=1$ では測度に σ-有限性などの仮定が要る)、$L^q$ の元 $g$ が $f\mapsto\int fg\,d\mu$ によって $L^p$ 上の有界線形汎関数を与え、そのノルムが $\|g\|_q$ であることも同じ計算による(Lp空間 の記事の注意「双対空間」)。

逆向きの不等式($0< p<1$)

$0< p<1$ のとき、$\frac1p+\frac1q=1$ を満たす $q$ は $q=\frac p{p-1}<0$ となる。このとき不等号の向きが逆になる。

逆向きの Hölder の不等式

$0< p<1$、$q:=\frac p{p-1}$($q<0$)とする。$a_i\ge0$、$b_i>0$($i=1,\dots,n$)について
$$ \sum_{i=1}^na_ib_i\ge\Bigl(\sum_{i=1}^na_i^p\Bigr)^{1/p}\Bigl(\sum_{i=1}^nb_i^q\Bigr)^{1/q} $$
が成り立つ。

$P:=\frac1p>1$ とおくと、その共役指数は $P'=\frac1{1-p}$ である。$a_i^p=(a_ib_i)^p\cdot b_i^{-p}$ と分けて thm-holder-finite を指数 $P,P'$ で使うと
$$ \sum_ia_i^p\le\Bigl(\sum_ia_ib_i\Bigr)^p\Bigl(\sum_ib_i^{-p/(1-p)}\Bigr)^{1-p}=\Bigl(\sum_ia_ib_i\Bigr)^p\Bigl(\sum_ib_i^q\Bigr)^{1-p} $$
である($-\frac p{1-p}=q$)。両辺を $\frac1p$ 乗すると $\bigl(\sum_ia_i^p\bigr)^{1/p}\le\bigl(\sum_ia_ib_i\bigr)\bigl(\sum_ib_i^q\bigr)^{(1-p)/p}$ であり、$\frac{1-p}p=-\frac1q$ なので、両辺に $\bigl(\sum_ib_i^q\bigr)^{1/q}>0$ を掛けて結論を得る。$\square$

$p=\frac12$($q=-1$)、$a=(1,4)$、$b=(1,2)$ では、左辺 $\sum_ia_ib_i=9$、右辺 $(1+2)^2\cdot\bigl(1+\frac12\bigr)^{-1}=6$ である。$0< p<1$ では $\|\cdot\|_p$ がノルムにならず、単位球が凸でないことと同じく、凸性に基づく不等式の向きが入れ替わる。

成り立たない場合

外す条件反例成り立たなくなること
指数が共役($\frac1p+\frac1q=1$)$\mathbb{R}$ 上で $f=g=1_{[0,t]}$定数 $C$ を掛けた形 $\int\lvert fg\rvert\le C\Vert f\Vert_p\Vert g\Vert_q$ さえ
$p\ge1$$p=\frac12$、$q=-1$、$a=(1,4)$、$b=(1,2)$$\le$ の向き(逆向きになる)
$\lvert f\rvert^p$ と $\lvert g\rvert^q$ の比例$p=3$、$a=(1,2)$、$b=(2,1)$等号
測度の有限性$[0,\infty)$ 上の $\frac1{1+x}$$L^2\subset L^1$(cor-holder-probability の形の包含)
反例:共役でない指数

$\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度で $t>0$ とし、$f=g=1_{[0,t]}$(区間 $[0,t]$ の定義関数)とする。$\int|fg|\,dx=t$、$\|f\|_p\|g\|_q=t^{1/p}t^{1/q}=t^{s}$($s:=\frac1p+\frac1q$)である。$s\ne1$ なら、どんな定数 $C$ についても $t\le Ct^s$ はすべての $t>0$ では成り立たない:$s>1$ なら $t\to0$ で $Ct^s/t=Ct^{s-1}\to0$、$s<1$ なら $t\to\infty$ で $Ct^{s-1}\to0$ となるからである。したがって、$\mathbb{R}$ の上で「$\int|fg|\le C\|f\|_p\|g\|_q$」が成り立つには $\frac1p+\frac1q=1$ が必要である。関数を横に $t$ 倍に伸ばすと両辺の大きさの変わり方(左辺は $t$ 倍、右辺は $t^{1/p+1/q}$ 倍)が合わないので、共役の条件は尺度の比べ方から決まっている。有限測度空間では $s<1$ の側は成り立つ(cor-holder-probability と同じ議論)ので、この反例には測度が無限であることも使っている。

反例:測度が無限なら包含は成り立たない

$[0,\infty)$ 上の Lebesgue 測度で $f(x)=\frac1{1+x}$ とすると、$\int_0^\infty\frac{dx}{(1+x)^2}=1$ なので $f\in L^2$ だが、$\int_0^\infty\frac{dx}{1+x}=\infty$ なので $f\notin L^1$ である。cor-holder-probability の証明は定数関数 $1$ が $L^s$ に入ること($\mu(X)<\infty$)を使っており、それが崩れると $\|f\|_1\le\|f\|_2$ の形の評価も $L^2\subset L^1$ も成り立たない。

関連項目

参考文献

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