線形論理(linear logic)とは、シークエント計算から弱化と縮約を除き、連言を文脈を分ける $\otimes$ と共有する $\&$ に、選言を ⅋ と $\oplus$ に分け、複製と破棄を指数 $!$・$?$ の付いた論理式だけに許した論理で、Girard が導入した。仮定をちょうど 1 回ずつ使うので、論理式を消費される資源のように扱える。指数を除いた断片 MALL ではカット除去定理が成り立ち、そこから部分論理式性と導出可能性の決定可能性が従い、乗法の断片では原子の個数の釣り合いから $p\multimap p\otimes p$ が導出できないことが分かる。直観主義論理の含意 $A\to B$ は $!A\multimap B$ と翻訳される。
線形論理(linear logic)は、シークエント計算から弱化と縮約の構造規則を取り除き、その代わりに論理記号を細かく分けた論理である。Girard が 1987 年に導入した(Bus98 §3.2、p. 70)。古典論理では仮定 $A$ を何度使っても、まったく使わなくてもよいが、線形論理の導出では仮定をちょうど 1 回ずつ使う。このため「$A$ から $A$ かつ $A$」や「$A$ かつ $B$ から $A$」は一般には導出できず、論理式を使えばなくなる 資源 のように扱える。使い回してよい論理式は、指数とよばれる演算子 $!$ で明示する。
この記事では、命題線形論理の片側シークエント計算を定義し、乗法・加法の断片 $\mathbf{MALL}$ のカット除去定理と、そこから従う部分論理式性と決定可能性を証明する。さらに乗法の断片で原子の数が釣り合うことを示して「資源」の直感を定理にし、直観主義論理の含意と連言の断片を $!$ を使って線形論理へ埋め込む Girard の翻訳の片方の向きを証明する。
命題変数 $p,q,\dots$ ごとに、2 つの 原子 $p$ と $p^\perp$ を用意する。論理式は次で作られるものに限る。
論理式 $A$ の 線形否定 $A^\perp$ を、$(p)^\perp=p^\perp$、$(p^\perp)^\perp=p$ と次の de Morgan の法則で帰納的に定める。
$$
\begin{array}{llll}
(A\otimes B)^\perp=A^\perp\mathbin{\text{⅋}}B^\perp, & (A\mathbin{\text{⅋}}B)^\perp=A^\perp\otimes B^\perp, & (A\mathbin{\&}B)^\perp=A^\perp\oplus B^\perp, & (A\oplus B)^\perp=A^\perp\mathbin{\&}B^\perp,\\
\mathbf 1^\perp=\perp,\quad\perp^\perp=\mathbf 1, & \top^\perp=\mathbf 0,\quad\mathbf 0^\perp=\top, & (!A)^\perp=?A^\perp, & (?A)^\perp=!A^\perp.
\end{array}
$$
線形含意 $A\multimap B$ を $A^\perp\mathbin{\text{⅋}}B$ の略記とする。
定義から $(A^\perp)^\perp=A$ であり、$A^\perp$ は $A$ と同じ個数の記号(結合子・定数・指数)を含む。線形否定は論理式を作る記号ではなく、記号の書き換えで定まる操作である(GLT89 §B.2、p. 152)。
論理式の有限列 $\Gamma$ について $\vdash\Gamma$ を シークエント という。列の並べ替えを自由に許す(交換規則)ので、$\Gamma$ は論理式の有限の多重集合とみなす。$?\Gamma$ は、$\Gamma=A_1,\dots,A_n$ のとき $?A_1,\dots,?A_n$ を表す。
体系 $\mathbf{LL}$ の公理と規則は次のとおりである。$A,B$ は任意の論理式、$\Gamma,\Delta$ は任意の多重集合である。
$$
\frac{}{\vdash A,A^\perp}\,\mathrm{ax}\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A\quad\vdash\Delta,A^\perp}{\vdash\Gamma,\Delta}\,\mathrm{cut}\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A\quad\vdash\Delta,B}{\vdash\Gamma,\Delta,A\otimes B}\,\otimes\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A,B}{\vdash\Gamma,A\mathbin{\text{⅋}}B}\,\text{⅋}
$$
$$
\frac{}{\vdash\mathbf 1}\,\mathbf 1\qquad
\frac{\vdash\Gamma}{\vdash\Gamma,\perp}\,\perp\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A\quad\vdash\Gamma,B}{\vdash\Gamma,A\mathbin{\&}B}\,\&\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A}{\vdash\Gamma,A\oplus B}\,\oplus_1\qquad
\frac{\vdash\Gamma,B}{\vdash\Gamma,A\oplus B}\,\oplus_2\qquad
\frac{}{\vdash\Gamma,\top}\,\top
$$
$$
\frac{\vdash ?\Gamma,A}{\vdash ?\Gamma,!A}\,!\qquad
\frac{\vdash\Gamma,A}{\vdash\Gamma,?A}\,?\mathrm d\qquad
\frac{\vdash\Gamma}{\vdash\Gamma,?A}\,?\mathrm w\qquad
\frac{\vdash\Gamma,?A,?A}{\vdash\Gamma,?A}\,?\mathrm c
$$
$\mathbf 0$ の規則はない。$!$ 規則では、$!A$ 以外の論理式がすべて $?$ で始まらなければならない。規則の下で新しく現れる論理式($A\otimes B$ など)を 主論理式 という。
指数の規則を除いた体系を $\mathbf{MALL}$(乗法・加法的線形論理)、さらに加法の規則と $\top$ の規則を除き、論理式も原子・$\mathbf 1$・$\perp$・$\otimes$・$\mathbin{\text{⅋}}$ で作られるものに限った体系を $\mathbf{MLL}$(乗法的線形論理)という。cut を使わない導出を カットなし の導出という。
この体系は GLT89 §B.2(pp. 151–153)のものである。両側のシークエント $A_1,\dots,A_n\vdash B_1,\dots,B_m$ は、片側の $\vdash A_1^\perp,\dots,A_n^\perp,B_1,\dots,B_m$ と読む。とくに $\vdash A^\perp,B$、つまり $\vdash A\multimap B$ は「$A$ から $B$ が導ける」と読む。両側の形で左右の規則を並べた同じ体系は Bus98 §3.2(pp. 71–73)にある。
シークエント計算 の記事の体系 $\mathbf{LK}$ と比べると、弱化・縮約がなく、そのため $\mathbf{LK}$ の $\land$ の 2 種類の書き方(文脈を共有するか分けるか)が別の結合子 $\mathbin{\&}$ と $\otimes$ になる。$\mathbf{LK}$ では弱化と縮約があるので両者の区別は消える。弱化と縮約は、$?$ の付いた論理式にだけ $?\mathrm w$、$?\mathrm c$ として残る。
$A\multimap B$ を「資源 $A$ を 1 つ消費して $B$ を得る」と読むと、結合子は次のように読める(Bus98 pp. 71–73、Lin92 pp. 1–2)。
| 記号 | 読み方 | 規則の特徴 |
|---|---|---|
| $A\otimes B$ | $A$ と $B$ を両方同時に持つ | $\otimes$ 規則は文脈を 2 つに分ける |
| $A\mathbin{\&}B$ | $A$ と $B$ のうち、使う側が好きなほうを 1 つ選べる | $\&$ 規則は文脈を共有する |
| $A\oplus B$ | $A$ か $B$ のどちらかだが、どちらかは相手が決める | $\oplus$ 規則は片方だけを使う |
| $!A$ | $A$ を何個でも(0 個でも)取り出せる | $?\mathrm w$・$?\mathrm c$ が使える |
これに対し、命題変数 $p,q$ について $p\multimap p\otimes p$ や $p\otimes q\multimap p$ は導出できない(cor-ll-not-derivable)。$!$ を付けた $!p$ なら複製も破棄もできる、というのが指数の役割である。
導出 $\pi$ の 高さ $h(\pi)$ を、木の根から葉までの道の長さ(規則の数)の最大値とし、論理式 $A$ の 大きさ $|A|$ を $A$ に含まれる結合子と定数の個数とする。$|A^\perp|=|A|$ である。まず、カット 1 つを除けることを示す。
$\pi_1$ が $\vdash\Gamma,A$ の、$\pi_2$ が $\vdash\Delta,A^\perp$ のカットなしの $\mathbf{MALL}$ の導出なら、$\vdash\Gamma,\Delta$ はカットなしで導出可能である。
組 $(|A|,\ h(\pi_1)+h(\pi_2))$ に関する辞書式順序の帰納法による。$\pi_1,\pi_2$ の最後の規則を $r_1,r_2$ とし、場合を分ける。
(i) 一方が公理. $\pi_1$ が $\vdash A^\perp,A$ なら $\Gamma=A^\perp$ で、求める $\vdash A^\perp,\Delta$ は $\pi_2$ の結論そのものである。$\pi_2$ が公理の場合も同じである。
(ii) カットする論理式が $r_1$ の主論理式でない. $r_1$ を後回しにする。たとえば $r_1$ が $\text{⅋}$ で $\pi_1$ が $\pi_1'\colon\vdash\Gamma',C,D,A$ から $\vdash\Gamma',C\mathbin{\text{⅋}}D,A$ を導くなら、$\pi_1'$ と $\pi_2$ に帰納法の仮定(高さの和が減る)を使って $\vdash\Gamma',C,D,\Delta$ をカットなしで得て、$\text{⅋}$ 規則で $\vdash\Gamma',C\mathbin{\text{⅋}}D,\Delta$ を得る。
$\perp$、$\oplus_i$ も同じである。$r_1$ が $\otimes$ で、$A$ が前提 $\vdash\Gamma_1,C,A$ の側にあるとき(もう一方の前提は $\vdash\Gamma_2,D$)、$\vdash\Gamma_1,C,A$ と $\pi_2$ に帰納法の仮定を使って $\vdash\Gamma_1,C,\Delta$ を得て、$\vdash\Gamma_2,D$ と $\otimes$ でつなげば $\vdash\Gamma_1,\Gamma_2,C\otimes D,\Delta$ である。$r_1$ が $\&$ で前提が $\vdash\Gamma',C,A$ と $\vdash\Gamma',D,A$ なら、それぞれと $\pi_2$ に帰納法の仮定を使い(どちらも高さの和が減る)、$\vdash\Gamma',C,\Delta$ と $\vdash\Gamma',D,\Delta$ を $\&$ でつなぐ。$r_1$ が $\top$ で主論理式 $\top$ が $\Gamma$ の中にあるなら、$\vdash\Gamma,\Delta$ は $\top$ を含むので $\top$ 規則 1 回で得られる。$r_1$ が $\mathbf 1$ なら結論は $\vdash\mathbf 1$ だけなので、$A=\mathbf 1$ は主論理式であり、この場合には当たらない。
$\mathbf{MALL}$ で導出可能なシークエントは、$\mathbf{MALL}$ でカットなしで導出可能である。
導出に含まれるカットの個数に関する帰納法による。カットがあれば、その上にカットがないものを 1 つ選ぶ。その 2 つの前提の導出はカットなしなので、lem-ll-one-cut によりこのカットをカットなしの導出に置き換えられる。カットが 1 つ減る。$\square$
Bus98 p. 73 は、$\mathbf{MALL}$ のカット除去が弱化と縮約がないために易しく、カットなしの導出がもとの導出より短くできることを述べている。指数を含む $\mathbf{LL}$ 全体でもカット除去定理が成り立つ(LMSS92 Appendix A、Theorem A.3(p. 307)。この記事では証明しない)。同所の体系(Appendix B、pp. 308–309)は公理を原子の $\vdash p,p^\perp$ に限るが、一般の $\vdash A,A^\perp$ はそこから $A$ の構成についての帰納法でカットなしに導けるので(同 p. 308)、ここの体系でも同じことが成り立つ。$\mathbf{LL}$ では $?\mathrm c$ と $!$ の組でカットを上へ移すと導出が複製されるため、上の帰納法はそのままでは通らない。LMSS92 は、$?A$ の何個かの複製を一度に $!A^\perp$ とカットする規則を補助に加え、カットの論理式の記号の個数についての帰納法で証明している(pp. 296–307)。
$A\otimes B$、$A\mathbin{\text{⅋}}B$、$A\mathbin{\&}B$、$A\oplus B$ の部分論理式は、それ自身と $A,B$ の部分論理式である。$!A$、$?A$ も同様に定める。
$\mathbf{MALL}$ の導出可能性の判定は PSPACE 完全であり、指数を含む命題 $\mathbf{LL}$ の導出可能性は決定不能である(Lin92 §6、pp. 5–6、Bus98 p. 74。この記事では証明しない)。$\mathbf{LL}$ では $?\mathrm c$ の前提が結論より大きいので、上の議論が使えない。
原子 $p$ について、論理式または多重集合 $X$ に現れる $p$ の個数を $n_p(X)$、$p^\perp$ の個数を $n_{\bar p}(X)$ と書く。de Morgan の法則から $n_p(A^\perp)=n_{\bar p}(A)$、$n_{\bar p}(A^\perp)=n_p(A)$ である。
$\mathbf{MLL}$ で導出可能なシークエント $\vdash\Gamma$ では、すべての命題変数 $p$ について $n_p(\Gamma)=n_{\bar p}(\Gamma)$ である。
導出に関する帰納法による。公理 $\vdash A,A^\perp$ では $n_p=n_p(A)+n_{\bar p}(A)=n_{\bar p}$。$\otimes$ と $\text{⅋}$ の規則は、前提の多重集合の論理式をつなぐだけなので個数を保つ($\otimes$ では 2 つの前提の個数の和になる)。$\mathbf 1$ と $\perp$ は原子を含まない。cut では、前提 $\vdash\Gamma,A$ と $\vdash\Delta,A^\perp$ で釣り合いが成り立つとすると、結論で消える $A,A^\perp$ に含まれる $p$ の個数は $n_p(A)+n_{\bar p}(A)$、$p^\perp$ の個数は $n_{\bar p}(A)+n_p(A)$ で等しいので、結論でも釣り合いが成り立つ。$\square$
$p,q$ を異なる命題変数とする。$\vdash p\multimap p\otimes p$ と $\vdash p\otimes q\multimap p$ は $\mathbf{MALL}$ で導出できない。
2 つのシークエントは $\vdash p^\perp\mathbin{\text{⅋}}(p\otimes p)$ と $\vdash(p^\perp\mathbin{\text{⅋}}q^\perp)\mathbin{\text{⅋}}p$ で、$\mathbf{MLL}$ の論理式からなる。$\mathbf{MALL}$ で導出できたとすると、thm-ll-cut-elimination によりカットなしの導出があり、cor-ll-decidable の 1 によりそこに現れる論理式はすべて結論の部分論理式なので、$\mathbin{\&},\oplus,\top,\mathbf 0$ を含まない。したがってその導出は $\mathbf{MLL}$ の導出である。ところが前者は $n_p=2$、$n_{\bar p}=1$、後者は $n_q=0$、$n_{\bar q}=1$ なので、thm-ll-balance に反する。$\square$
指数を含む $\mathbf{LL}$ でも同じ 2 つは導出できない。$\mathbf{LL}$ のカット除去定理(引用)を認めれば、上と同じ議論でカットなしの導出に指数の規則が現れないからである。釣り合いは $\mathbf{MALL}$ では成り立たない($\vdash\top,p$ は導出可能)。
直観主義論理の論理式のうち、命題変数から $\land$ と $\to$ だけで作られるものを考え、シークエント計算 の記事の体系 $\mathbf{LJ}$ の規則のうち、始シークエント $A\Rightarrow A$、左の弱化・縮約・交換、カット、$\land$ と $\to$ の左右の規則だけからなる体系を $\mathbf{LJ}_{\land\to}$ とする。この体系の導出に現れるシークエントは、右辺がちょうど 1 個の論理式である。
$\land,\to$ だけの直観主義の論理式 $A$ に、線形論理の論理式 $A^\ast$ を
$$
p^\ast=p,\qquad(A\land B)^\ast=A^\ast\mathbin{\&}B^\ast,\qquad(A\to B)^\ast=\,!A^\ast\multimap B^\ast
$$
で対応させる。$\mathbf{LJ}_{\land\to}$ で $A_1,\dots,A_n\Rightarrow C$ が導出可能ならば、$\mathbf{LL}$ で $\vdash ?(A_1^\ast)^\perp,\dots,?(A_n^\ast)^\perp,C^\ast$(両側の形で $!A_1^\ast,\dots,!A_n^\ast\vdash C^\ast$)が導出可能である。
$\mathbf{LJ}_{\land\to}$ の導出に関する帰納法による。$\Gamma=A_1,\dots,A_n$ のとき $?\Gamma^{\ast\perp}$ で $?(A_1^\ast)^\perp,\dots,?(A_n^\ast)^\perp$ を表す。要になるのは次の 2 点である。左辺の論理式はすべて $?$ が付いた形で現れるので、左の弱化・縮約は $?\mathrm w$・$?\mathrm c$ で写せる。また、文脈がすべて $?$ で始まるので、$!$ 規則がいつでも使える。
$\land$ の左規則($A,\Gamma\Rightarrow C$ から $A\land B,\Gamma\Rightarrow C$):$((A\land B)^\ast)^\perp=(A^\ast)^\perp\oplus(B^\ast)^\perp$ である。$\vdash(A^\ast)^\perp,A^\ast$ から $\oplus_1$ で $\vdash(A^\ast)^\perp\oplus(B^\ast)^\perp,A^\ast$、$?\mathrm d$ で $\vdash ?((A^\ast)^\perp\oplus(B^\ast)^\perp),A^\ast$、$!$ 規則で $\vdash ?((A^\ast)^\perp\oplus(B^\ast)^\perp),!A^\ast$ を得て、前提 $\vdash ?(A^\ast)^\perp,?\Gamma^{\ast\perp},C^\ast$ と $!A^\ast$ でカットする。もう一方の形($B,\Gamma\Rightarrow C$ から)は $\oplus_2$ を使う。
$\to$ の左規則($\Gamma\Rightarrow A$ と $B,\Pi\Rightarrow C$ から $A\to B,\Gamma,\Pi\Rightarrow C$):$((A\to B)^\ast)^\perp=(?(A^\ast)^\perp\mathbin{\text{⅋}}B^\ast)^\perp=\,!A^\ast\otimes(B^\ast)^\perp$ である。$\vdash ?\Gamma^{\ast\perp},A^\ast$ から $!$ 規則で $\vdash ?\Gamma^{\ast\perp},!A^\ast$、これと $\vdash(B^\ast)^\perp,B^\ast$ を $\otimes$ でつないで $\vdash ?\Gamma^{\ast\perp},!A^\ast\otimes(B^\ast)^\perp,B^\ast$、$?\mathrm d$ で $\vdash ?\Gamma^{\ast\perp},?(!A^\ast\otimes(B^\ast)^\perp),B^\ast$ を得る。$B^\ast$ 以外はすべて $?$ で始まるので $!$ 規則で $\vdash ?\Gamma^{\ast\perp},?(!A^\ast\otimes(B^\ast)^\perp),!B^\ast$ とし、前提 $\vdash ?(B^\ast)^\perp,?\Pi^{\ast\perp},C^\ast$ と $!B^\ast$ でカットすれば $\vdash ?((A\to B)^\ast)^\perp,?\Gamma^{\ast\perp},?\Pi^{\ast\perp},C^\ast$ である。
左の弱化・縮約は $?\mathrm w$・$?\mathrm c$、交換は多重集合なので何もしなくてよい。$\square$
GLT89 p. 153 は、$\lor$ と否定も $A\lor B=\,!A\oplus!B$、$\lnot A=\,!A\multimap\mathbf 0$ と翻訳した Girard の翻訳について、直観主義の論理式が妥当であることと翻訳が導出可能であることが同値だと述べている(この記事では逆向きを証明しない)。直観主義論理の含意 $A\to B$ は、線形論理では「$A$ を何度でも使って $B$ を得る」$!A\multimap B$ に分解される。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 弱化を許さないこと | 弱化を加えると $\vdash p\otimes q\multimap p$ が導出できる | cor-ll-not-derivable の後者 |
| 縮約を許さないこと | 縮約を加えると $\vdash p\multimap p\otimes p$ が導出できる | cor-ll-not-derivable の前者 |
| $!$ 規則の文脈がすべて $?$ で始まること | 条件なしの $!$ 規則で $\vdash p^\perp,!p$($p\multimap!p$)が導出でき、$\vdash p\multimap p\otimes p$ が導ける | $\mathbf{LL}$ で $p\multimap p\otimes p$ が導出できないこと |
| cor-ll-decidable の 1 の「カットなし」 | $\vdash\mathbf 1$ と $\vdash p^\perp,p,\perp$ を $\mathbf 1$ でカットした $\vdash p^\perp,p$ の導出 | 部分論理式性 |
1 行目:$\vdash p^\perp,p$ に弱化で $q^\perp$ を加え、$\text{⅋}$ 規則で $\vdash p^\perp\mathbin{\text{⅋}}q^\perp,p$、もう一度 $\text{⅋}$ 規則で $\vdash p\otimes q\multimap p$($(p\otimes q)^\perp=p^\perp\mathbin{\text{⅋}}q^\perp$)。2 行目:$\vdash p^\perp,p$ を 2 つ $\otimes$ でつないで $\vdash p^\perp,p^\perp,p\otimes p$、縮約で $\vdash p^\perp,p\otimes p$、$\text{⅋}$ 規則で $p\multimap p\otimes p$。3 行目:条件なしの $!$ 規則を $\vdash p^\perp,p$ に使うと $\vdash p^\perp,!p$。一方 $\vdash p^\perp,p$ を 2 つ $\otimes$ でつなぎ、$?\mathrm d$ を 2 回、$?\mathrm c$ を 1 回使うと $\vdash ?p^\perp,p\otimes p$ である。$(!p)^\perp=?p^\perp$ なので、この 2 つをカットすると $\vdash p^\perp,p\otimes p$ を得る。条件を守る $\mathbf{LL}$ ではこれは導出できない(cor-ll-not-derivable の後の段落。$\mathbf{LL}$ のカット除去定理を引用している)。4 行目:$\vdash p^\perp,p$ に $\perp$ 規則を使うと $\vdash p^\perp,p,\perp$。$\mathbf 1^\perp=\perp$ なので、これと $\vdash\mathbf 1$ をカットすると $\vdash p^\perp,p$ が得られる。この導出には、結論の部分論理式でない $\mathbf 1$ と $\perp$ が現れる。
線形論理は、型付きラムダ計算のコヒーレンス空間による意味論の中から見いだされた(GLT89 Appendix B 冒頭、p. 149)。同書 §B.1(pp. 149–151)は、$\mathbf{LK}$ のカット除去が、弱化で導入された論理式どうしのカットで 2 通りに分かれ、同じシークエントの導出がすべて同一視されてしまう現象を挙げ、弱化と縮約を除くことがその解消の一つになると説明している。乗法の断片では、導出から文脈の書き写しを除いたグラフである 証明網(proof net)が考えられ、証明網はカットのない証明網へ一意に簡約される(GLT89 §B.3–B.4、pp. 154–157。この記事では証明しない)。
Lin92 §6.3(p. 6)の表によれば、指数を含む命題 $\mathbf{LL}$ は決定不能、$\mathbf{MALL}$ は PSPACE 完全、$\mathbf{MLL}$ は NP 完全である(この記事では証明しない)。最後のものについて、カットなしの $\mathbf{MLL}$ の導出は結論の長さの多項式の大きさで収まり、推測して検査できることが NP に属する理由である(同 §6.2.2、p. 6)。
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