変形理論(deformation theory)とは、体 $k$ 上のスキーム $X_0$ を Artin 局所環上の平坦な族として無限小に動かしたもの(変形)を分類する理論である。基本は双対数の環 $k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ 上の 1 次変形で、$X_0$ が滑らかなら 1 次変形の同型類は接層のコホモロジー $H^1(X_0,T_{X_0})$ で分類され、自己同型群は $H^0$、持上げの障害は $H^2$ に住む。$\mathbb{P}^n$ は剛で、楕円曲線は 1 次元の変形をもち、結節点 $xy=0$ は $xy=\epsilon$ に変形する。族の接ベクトルを 1 次変形に送る Kodaira–Spencer 写像は Gauss–Manin 接続と結びつき、標数 $p$ の多様体の Witt 環上への持上げ問題は結晶コホモロジーの出発点である。
前提知識: スキーム, 平坦射, 滑らかな射, Kähler微分, 層コホモロジー, Čechコホモロジー, Artin環, 局所環
変形理論は、体 $k$ 上のスキーム $X_0$ を「無限小のパラメータ」で動かしたものを分類する理論である。パラメータ空間の役をするのは、Artin環である $k$ 上の局所環 $A$ のアフィンスキーム $\operatorname{Spec}A$(1 点からなるが構造層に冪零元をもつ)であり、$X_0$ の $A$ 上の変形とは、$\operatorname{Spec}A$ 上平坦(平坦射)で閉点上のファイバー(ファイバー積)が $X_0$ に一致するスキームである。最も簡単な $A=k[\epsilon]/(\epsilon^2)$ の場合が 1 次変形であり、$X_0$ が滑らかなら 1 次変形は層コホモロジー $H^1(X_0,T_{X_0})$ で分類される(thm-deformation-first-order)。
$k$ を体とする。$\mathrm{Art}_k$ で、Noether(Noether環)な可換環 $A$ であって局所 Artin 環(Artin環かつ局所環)であり、$k$ 代数の構造をもち、その剰余体 $A/\mathfrak{m}_A$ への自然な写像 $k\to A/\mathfrak{m}_A$ が同型であるものの全体のなす圏を表す。射は $k$ 代数の環準同型(自動的に局所準同型)である。$\mathrm{Art}_k$ の対象 $A$ では $\mathfrak{m}_A$ は冪零で、$A$ は $k$ 上有限次元のベクトル空間である。$\mathrm{Art}_k$ の全射 $A'\to A$ が小さい拡大(small extension)であるとは、その核 $I$ が $\mathfrak{m}_{A'}I=0$ をみたすことをいう。このとき $I$ は $k=A'/\mathfrak{m}_{A'}$ 上のベクトル空間であり、とくに $I^2=0$(平方零)である。$k[\epsilon]:=k[t]/(t^2)$($\epsilon$ は $t$ の類、$\epsilon^2=0$)を双対数の環といい、$k[\epsilon]\to k$ は核 $(\epsilon)\cong k$ をもつ小さい拡大である。
$\mathrm{Art}_k$ のどの全射 $A'\to A$ も小さい拡大の有限回の合成である。実際、核 $I$ について $\mathfrak{m}_{A'}^nI=0$ となる $n$ があるので、$A'\to A'/\mathfrak{m}_{A'}^{n-1}I\to\cdots\to A'/I=A$ と分ければよく、各段の核 $\mathfrak{m}_{A'}^{j}I/\mathfrak{m}_{A'}^{j+1}I$ は $\mathfrak{m}_{A'}$ で消える。したがって変形の問題は、小さい拡大に沿った持上げの問題を繰り返せば尽くされる。
$X_0$ を体 $k$ 上のスキーム、$A\in\mathrm{Art}_k$ とする。$X_0$ の $A$ 上の変形(deformation)とは、$\operatorname{Spec}A$ 上平坦なスキーム $X\to\operatorname{Spec}A$ と、閉点上のファイバーの $k$ 上の同型
$$
\varphi\colon X\times_{\operatorname{Spec}A}\operatorname{Spec}k\xrightarrow{\ \sim\ }X_0
$$
との組 $(X,\varphi)$ をいう。2 つの変形 $(X,\varphi)$、$(X',\varphi')$ の同型とは、$\operatorname{Spec}A$ 上の同型 $\alpha\colon X\to X'$ で $\varphi'\circ(\alpha\times_A k)=\varphi$ をみたすものをいう。$X_0\times_k\operatorname{Spec}A$ を(恒等写像とともに)自明な変形という。$A=k[\epsilon]$ 上の変形を 1 次変形(first-order deformation)、$\mathrm{Art}_k$ の対象の上の変形を総称して無限小変形(infinitesimal deformation)という。$A$ に $X_0$ の $A$ 上の変形の同型類の集合 $\mathrm{Def}_{X_0}(A)$ を対応させ、射 $A\to B$ に底変換 $X\mapsto X\times_{\operatorname{Spec}A}\operatorname{Spec}B$ を対応させて得られる関手
$$
\mathrm{Def}_{X_0}\colon\mathrm{Art}_k\longrightarrow\mathrm{Set}
$$
を $X_0$ の変形関手という。全射 $A'\to A$ と $A$ 上の変形 $X$ に対し、$A'$ 上の変形 $X'$ と $A$ 上の変形の同型 $X'\times_{A'}A\cong X$ の組を $X$ の $A'$ への持上げ(lifting)という。
底変換は平坦性を保つので $\mathrm{Def}_{X_0}$ は確かに関手であり、$\mathrm{Def}_{X_0}(k)$ は 1 点である。変形の同型は同一視 $\varphi$ を保つものに限る。$X_0$ の自己同型を許すと分類は粗くなり、これが $\mathrm{Def}_{X_0}$ が一般に表現可能(表現可能関手)でない理由の 1 つである(rem-deformation-schlessinger)。
平坦性の条件は「ファイバーが連続的に動く」ことの代数版であり、$A=k[\epsilon]$ では次のように具体化される。
$k[\epsilon]$ 上の加群 $M$ について次は同値である。
つねに $\epsilon(\epsilon M)=\epsilon^2M=0$ なので $\epsilon M\subset\ker\epsilon$ であり、2 と 3 は同値である。加群 $M$ が平坦であることは、環のすべての有限生成イデアル $J$ について自然な写像 $J\otimes M\to M$ が単射であることと同値である(AM69 第 2 章演習 26、Mat89 定理 7.7)。$k[\epsilon]$ のイデアルは $0$、$(\epsilon)$、$(1)$ の 3 つしかなく、$0$ と $(1)$ については条件は自明に成り立つ。イデアル $(\epsilon)$ は $\epsilon\mapsto1$ により $k[\epsilon]$ 加群 $k=k[\epsilon]/(\epsilon)$ と同型なので、$(\epsilon)\otimes M\cong k\otimes_{k[\epsilon]}M=M/\epsilon M$ であり、写像 $(\epsilon)\otimes M\to M$ はこの同一視のもとで $M/\epsilon M\to M$、$\bar{m}\mapsto\epsilon m$ である。これが単射であることは $\ker\epsilon\subset\epsilon M$ と同値であり、上の注意と合わせて 1 と 2 が同値になる。スキームについての言明は、平坦性が局所的な性質であり、アフィン開集合ごとに座標環に上を適用すればよいことから従う。
$X_0$ を、$k$ 上の代数多様体 $S$ をパラメータとする族 $\{X_s\}_{s\in S}$ の 1 つのファイバー $X_{s_0}$ と思う。点 $s_0$ での接ベクトル $v$ は射 $\operatorname{Spec}k[\epsilon]\to S$ と同じものであり、族をこれで引き戻すと $X_0$ の 1 次変形が得られる。すなわち 1 次変形とは「族の $s_0$ における 1 階の Taylor展開」であり、$A=k[t]/(t^{n+1})$ 上の変形は $n$ 階の展開にあたる。$X_0$ が滑らかなら、$X_0$ をアフィン開集合に分けたとき各片の変形は自明で、変形の情報は片どうしの貼り合わせ方の 1 階のずれ、つまり接ベクトル場の Čech 1 コサイクル(Čechコホモロジー)にすべて入る。これが $H^1(X_0,T_{X_0})$ による分類の意味であり、貼り合わせをもう 1 段高い位数へ延ばそうとするときに現れる矛盾が $H^2(X_0,T_{X_0})$ の障害類である。
以下 $k$ を体、$T_{X_0}:=\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_{X_0}}(\Omega^1_{X_0/k},\mathcal{O}_{X_0})$ を $X_0$ の接層とする。$X_0$ が $k$ 上滑らかなら $\Omega^1_{X_0/k}$ は局所自由層なので $T_{X_0}$ も局所自由であり、アフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}B$ 上の切断は $B$ の $k$ 導分の全体 $\operatorname{Der}_k(B,B)$ である。
射影直線 $\mathbb{P}^1_k$ の 1 次変形はすべて自明である。すなわち $\mathbb{P}^1_k$ は剛(rigid)である。
thm-deformation-first-order により $H^1(\mathbb{P}^1,T_{\mathbb{P}^1})=0$ を示せばよい。$\mathbb{P}^1=U_0\cup U_1$、$U_0=\operatorname{Spec}k[x]$、$U_1=\operatorname{Spec}k[y]$、$U_0\cap U_1=\operatorname{Spec}k[x,x^{-1}]$、$y=x^{-1}$ とする。$T$ は $U_0$ 上で $\partial_x$、$U_1$ 上で $\partial_y$ を基底とする自由層であり、$U_0\cap U_1$ 上では $\partial_x=\frac{dy}{dx}\partial_y=-x^{-2}\partial_y$、すなわち $\partial_y=-x^2\partial_x$ である。Čechコホモロジーで計算する。$\mathbb{P}^1$ は分離的(分離射)でアフィン開被覆 $\{U_0,U_1\}$ の交わりはアフィンなので、準連接層 $T$ の $H^1$ はこの被覆の Čech コホモロジーに一致する(Har77 III.4.5)。Čech 複体は
$$
T(U_0)\oplus T(U_1)\longrightarrow T(U_0\cap U_1),\qquad(f\partial_x,\,g\partial_y)\longmapsto g\partial_y-f\partial_x=(-x^2g(x^{-1})-f(x))\partial_x
$$
($f\in k[x]$、$g\in k[y]$)であり、$H^1$ はこの写像の余核である。$T(U_0\cap U_1)=k[x,x^{-1}]\partial_x$ の元 $h(x)\partial_x$、$h=\sum_{n\in\mathbb{Z}}a_nx^n$ をとる。$n\ge0$ の項の和 $h_+$ は $k[x]$ に入り、$n\le-1$ の項の和 $h_-$ は $x^2\cdot\sum_{n\le-1}a_nx^{n-2}$ と書けて $x^{n-2}$ は $n-2\le-3$ ゆえ $k[x^{-1}]=k[y]$ の元である。よって $h\partial_x=-(-h_+)\partial_x-x^2g(x^{-1})\partial_x$($g(y):=-\sum_{n\le-1}a_ny^{2-n}$)は上の写像の像に入り、$H^1=0$ である。
同じ計算で $T_{\mathbb{P}^1}\cong\mathcal{O}(2)$ がわかる。より一般に $H^1(\mathbb{P}^n,T_{\mathbb{P}^n})=0$($n\ge1$)で、射影空間はすべて剛である(Euler完全列 $0\to\mathcal{O}\to\mathcal{O}(1)^{n+1}\to T\to0$ と $H^i(\mathbb{P}^n,\mathcal{O}(1))$、$H^i(\mathbb{P}^n,\mathcal{O})$ の計算による。Har77 II.8.13・III.5.1、Har10 第 1 章 §5)。
$X_0=\operatorname{Spec}B_0$ を $k$ 上滑らかなアフィンスキームとする。任意の $A\in\mathrm{Art}_k$ について $X_0$ の $A$ 上の変形は存在して自明な変形に同型であり、したがって $\mathrm{Def}_{X_0}(A)$ は 1 点である。とくに持上げの障害はつねに $0$ である。
$X$ を $A\in\mathrm{Art}_k$ 上の変形とする。$X$ は $X_0$ と同じ位相空間をもち、$X_0$ がアフィンなので $X$ もアフィンである(冪零なイデアル層で定まる閉部分スキームがアフィンならもとのスキームもアフィンである。Har77 III 演習 3.1、Ser06 第 1 章)。$X=\operatorname{Spec}B$ と書く。$B\to B_0$ は核 $\mathfrak{m}_AB$ が冪零な全射であり、$B_0$ は $k$ 上滑らかなので、無限小持上げの性質(滑らかな射は形式的に滑らか(形式的滑らかさ)である。Har77 II 演習 8.6、Har10 第 1 章 §4)により $k$ 代数の準同型 $s\colon B_0\to B$ で、$B\to B_0$ との合成が恒等写像になるものがある。$s$ は $A$ 線型に延びて $A$ 代数の準同型 $\tilde{s}\colon B_0\otimes_kA\to B$ を与え、$\tilde{s}$ は $k=A/\mathfrak{m}_A$ をテンソルすると $B_0$ の恒等写像になる。
$\tilde{s}$ が同型であることを $A$ の $k$ 上の次元についての帰納法で示す。$A=k$ なら明らかである。$A\ne k$ なら小さい拡大 $0\to I\to A\to\bar{A}\to0$($I\ne0$、$\mathfrak{m}_AI=0$)がとれる。$\bar{B}:=B\otimes_A\bar{A}=B/IB$ は $\bar{A}$ 上の変形であり、$s$ の合成 $B_0\to B\to\bar{B}$ は $\bar{B}\to B_0$ の切断なので、帰納法の仮定により対応する $\bar{A}$ 代数の準同型 $B_0\otimes_k\bar{A}\to\bar{B}$ は同型である。$B$ は $A$ 上平坦なので $I\otimes_AB\to B$ は単射であり、$\mathfrak{m}_AI=0$ から $I\otimes_AB=I\otimes_A(B/\mathfrak{m}_AB)=I\otimes_kB_0$ である。$B_0\otimes_kA$ についても同じことが成り立つので、可換図式
$$
\begin{aligned}
0\to I\otimes_kB_0&\to B_0\otimes_kA\to B_0\otimes_k\bar{A}\to0\\
0\to I\otimes_kB_0&\to B\to\bar{B}\to0
\end{aligned}
$$
の 2 つの行はともに完全列である。縦の写像は左から順に、$\tilde{s}$ が誘導する写像であり、左端は $i\otimes b_0\mapsto i\cdot s(b_0)=i\cdot\tilde{b}_0$($\tilde{b}_0$ は $b_0$ の任意の持上げ。$\mathfrak{m}_AI=0$ なので持上げの取り方によらない)で恒等写像、右端は帰納法の仮定により同型である。五項補題により真ん中の $\tilde{s}$ も同型である。
よって $A$ 上のどの変形も自明な変形 $X_0\times_k\operatorname{Spec}A$ に同型であり、自明な変形は任意の $A'\to A$ に沿って $X_0\times_k\operatorname{Spec}A'$ に持ち上がる。
$E$ を $k$ 上の楕円曲線とする。$\Omega^1_{E/k}\cong\mathcal{O}_E$ なので $T_E\cong\mathcal{O}_E$ であり、$H^0(E,T_E)\cong k$、$H^1(E,T_E)\cong H^1(E,\mathcal{O}_E)$ は 1 次元、$H^2(E,T_E)=0$(代数曲線)である(Har77 IV.1)。したがって thm-deformation-first-order により 1 次変形の同型類は 1 次元のベクトル空間をなし、thm-deformation-obstruction により持上げの障害はつねに消える。$E$ の変形関手は $k[\![t]\!]$ を底とする形式的な普遍変形をもつ(rem-deformation-schlessinger。Har10 第 3 章、Ser06 第 2 章)。$k$ が標数 $2$ でない代数閉体のとき、$E$ は Legendre 族 $y^2=x(x-1)(x-\lambda)$($\lambda\ne0,1$)のあるファイバー $E_{\lambda_0}$ に同型で(Har77 IV.4.6)、この変形は $\lambda_0$ における $\lambda$ 方向の 1 階の変化で実現される。j不変量 $j(\lambda)=2^8(\lambda^2-\lambda+1)^3/(\lambda^2(\lambda-1)^2)$ が $\lambda$ の非定数関数なので族は同型な曲線の族ではなく(Har77 IV.4.6)、Kodaira–Spencer 写像(def-deformation-kodaira-spencer)はすべての $\lambda\ne0,1$ で零でない(言明。Picard–Fuchs方程式による説明は Gauss–Manin接続 の記事に譲る)。
滑らかでないスキームの 1 次変形は $H^1(T)$ では捉えられない。アフィンな超曲面については次のように直接計算できる。
$P=k[x_1,\dots,x_n]$、$f\in P$ を零でない非単元、$B_0=P/(f)$、$X_0=\operatorname{Spec}B_0$ とする。
$X_0$ が滑らかなら $(f,\partial_1f,\dots,\partial_nf)=P$(Jacobi判定法、Har77 I.5.1)なので $T^1_{B_0}=0$ となり、ex-deformation-affine-smooth と整合する。
$X_0=\operatorname{Spec}k[x,y]/(xy)$(2 本の直線が交わる結節点)の 1 次変形の空間は $T^1=k[x,y]/(xy,\,y,\,x)=k$ で 1 次元であり、$g=1$ に対応する変形 $B_1=k[\epsilon][x,y]/(xy-\epsilon)$ が生成する。prop-deformation-hypersurface の 2 により $B_1$ は自明な変形 $k[\epsilon][x,y]/(xy)$ に同型でない。直接には、$B_1$ の中で $x$、$y$ の持上げ $x+\epsilon a$、$y+\epsilon b$($a,b\in k[x,y]/(xy)$)の積は $\epsilon(1+xb+ya)$ で、$1+xb+ya$ は定数項が $1$ なので $0$ でなく、積が $0$ になる持上げの組($x$、$y$ 自身)をもつ自明な変形と区別される。これは $k[t]$ 上の族 $xy=t$($t\ne0$ では滑らかな双曲線、$t=0$ で結節点)の $t=0$ における 1 階の変化である。族 $xy=t$ は $k[t]$ 上平坦である。実際 $k[t][x,y]/(xy-t)$ は $t\mapsto xy$ により $k[x,y]$ と同型で、$k[x,y]$ は $k[xy]$ 上 $\{x^i\}_{i\ge0}\cup\{y^j\}_{j\ge1}$ を基底とする自由加群である。
以下は言明である。
$X_0$ を $k$ 上滑らかなスキームとする。ex-deformation-affine-smooth により、$X_0$ のアフィン開集合上では 1 次変形はすべて自明である。したがって 1 次変形の情報は、自明な変形どうしの貼り合わせの自己同型に集約される。
$B_0$ を $k$ 代数、$B_0[\epsilon]:=B_0\otimes_kk[\epsilon]$ とする。$B_0$ 上恒等写像を誘導する $k[\epsilon]$ 代数の自己準同型 $\phi\colon B_0[\epsilon]\to B_0[\epsilon]$ は、$k$ 導分 $D\in\operatorname{Der}_k(B_0,B_0)$ を用いて
$$
\phi(a+\epsilon b)=a+\epsilon(b+D(a))\qquad(a,b\in B_0)
$$
と一意に書け、逆にどの $D$ もこの式で自己準同型を与える。これらはすべて自己同型であり、$D$ に対応する自己同型を $1+\epsilon D$ と書くと $(1+\epsilon D)\circ(1+\epsilon D')=1+\epsilon(D+D')$ である。したがって $B_0$ 上恒等な自己同型の群は加法群 $\operatorname{Der}_k(B_0,B_0)$ に同型である。
$\phi$ が $B_0$ 上恒等を誘導するので、$a\in B_0$ について $\phi(a)-a\in\epsilon B_0[\epsilon]=\epsilon B_0$ であり、$\phi(a)=a+\epsilon D(a)$ となる写像 $D\colon B_0\to B_0$ が一意に定まる。$\phi$ は $k[\epsilon]$ 線型なので $\phi(a+\epsilon b)=a+\epsilon D(a)+\epsilon b$ である。$\phi$ が加法的で $k$ 線型であることは $D$ が $k$ 線型であることと同値であり、乗法的であることは
$$
\phi(aa')=aa'+\epsilon D(aa'),\qquad\phi(a)\phi(a')=(a+\epsilon D(a))(a'+\epsilon D(a'))=aa'+\epsilon(aD(a')+a'D(a))
$$
の比較から Leibniz則 $D(aa')=aD(a')+a'D(a)$ と同値である。よって $\phi\mapsto D$ は $B_0$ 上恒等な自己準同型と $k$ 導分の 1 対 1 対応を与える。合成については
$$
(1+\epsilon D)\bigl((1+\epsilon D')(a+\epsilon b)\bigr)=(1+\epsilon D)\bigl(a+\epsilon(b+D'(a))\bigr)=a+\epsilon(b+D'(a)+D(a))
$$
であり、$1+\epsilon D$ は $1-\epsilon D$ を逆写像にもつ自己同型である。
$X_0$ を体 $k$ 上の滑らかで分離的なスキームとする。$X_0$ の 1 次変形の同型類の集合 $\mathrm{Def}_{X_0}(k[\epsilon])$ と $H^1(X_0,T_{X_0})$ の間に自然な全単射があり、自明な変形が $0$ に対応する。この全単射により $\mathrm{Def}_{X_0}(k[\epsilon])$ は $k$ ベクトル空間の構造をもつ。
$\mathfrak{U}=\{U_i\}_{i\in I}$ を $X_0$ のアフィン開被覆とする。$X_0$ は分離的なので有限個の $U_i$ の交わりはアフィンであり、準連接層 $T_{X_0}$ について $H^1(X_0,T_{X_0})=\check{H}^1(\mathfrak{U},T_{X_0})$ である(Har77 III.4.5)。$T_{X_0}(U_i)=\operatorname{Der}_k(\mathcal{O}(U_i),\mathcal{O}(U_i))$ である。
変形からコサイクルへ。$X$ を $X_0$ の 1 次変形とする。$X$ は $X_0$ と同じ位相空間をもつので、$X|_{U_i}$ は $U_i$ の 1 次変形であり、ex-deformation-affine-smooth により自明である。すなわち $k[\epsilon]$ 代数の層の同型 $\psi_i\colon\mathcal{O}_X|_{U_i}\xrightarrow{\sim}\mathcal{O}_{U_i}[\epsilon]$ で $\epsilon$ を法として恒等写像を誘導するものがある。$U_{ij}:=U_i\cap U_j$ 上で $\psi_i\circ\psi_j^{-1}$ は $\mathcal{O}_{U_{ij}}[\epsilon]$ の $k[\epsilon]$ 代数としての自己同型で $\mathcal{O}_{U_{ij}}$ 上恒等を誘導するので、lem-deformation-automorphism により
$$
\psi_i\circ\psi_j^{-1}=1+\epsilon\theta_{ij},\qquad\theta_{ij}\in T_{X_0}(U_{ij})
$$
と書ける(補題はアフィンな $U_{ij}$ の座標環に適用する)。$U_{ijk}$ 上で $\psi_i\psi_k^{-1}=(\psi_i\psi_j^{-1})(\psi_j\psi_k^{-1})$ であるから、補題の合成則により $\theta_{ik}=\theta_{ij}+\theta_{jk}$、すなわち $(\theta_{ij})$ は Čech 1 コサイクルである。$\psi_i$ の取り方を $\psi_i'=(1+\epsilon\eta_i)\psi_i$($\eta_i\in T_{X_0}(U_i)$。lem-deformation-automorphism により他の取り方はこれに限る)に変えると $\theta'_{ij}=\theta_{ij}+\eta_i-\eta_j$ となり、コサイクルは Čech コバウンダリだけ変わる。よってコホモロジー類 $[\theta]\in\check{H}^1(\mathfrak{U},T_{X_0})$ は $X$ だけで決まる。変形の同型 $\alpha\colon X\to X'$ があれば、$X'$ の自明化 $\psi'_i$ から $X$ の自明化 $\psi'_i\circ(\alpha^\sharp)^{-1}$ が得られ、同じコサイクルを与えるので、$[\theta]$ は同型類の不変量である。自明な変形では $\psi_i$ を恒等写像にとれて $[\theta]=0$ である。
コサイクルから変形へ。逆に 1 コサイクル $(\theta_{ij})$ が与えられたとき、スキーム $U_i\times_k\operatorname{Spec}k[\epsilon]$ を $U_{ij}$ 上の同型 $1+\epsilon\theta_{ij}$(の定めるスキームの同型)で貼り合わせる。コサイクル条件は貼り合わせの整合条件そのものであり、貼り合わせて得られるスキーム $X_\theta$ は $\operatorname{Spec}k[\epsilon]$ 上局所的に自明なので平坦であり、$\epsilon$ を法として $X_0$ を与える(Har77 II 演習 2.12)。構成から $X_\theta$ のコサイクルは $(\theta_{ij})$ 自身である。
単射性。$X$、$X'$ のコサイクル $\theta$、$\theta'$ が同じ類をもつとする。自明化を取り替えて $\theta=\theta'$ としてよい。このとき $U_i$ 上の同型 $\psi_i'^{-1}\circ\psi_i\colon\mathcal{O}_X|_{U_i}\to\mathcal{O}_{X'}|_{U_i}$ は $U_{ij}$ 上で一致する($\psi_j'^{-1}\psi_j=\psi_i'^{-1}(\psi_i'\psi_j'^{-1})(\psi_i\psi_j^{-1})^{-1}\psi_i=\psi_i'^{-1}\psi_i$)ので貼り合わさって変形の同型 $X\to X'$ を与える。
以上で $\mathrm{Def}_{X_0}(k[\epsilon])\to\check{H}^1(\mathfrak{U},T_{X_0})=H^1(X_0,T_{X_0})$ が全単射であることが示された。被覆の取り替えに関する自然性は、細分に沿ってコサイクルを制限すればよいことから従う。
$X_0$ を $k$ 上滑らかなスキーム、$X$ をその任意の 1 次変形とする。$X_0$ 上恒等写像を誘導する $X$ の $\operatorname{Spec}k[\epsilon]$ 上の自己同型の群は、加法群 $H^0(X_0,T_{X_0})$ に自然に同型である。
$\alpha$ をそのような自己同型、$\{U_i\}$、$\psi_i$、$\theta_{ij}$ を thm-deformation-first-order の証明のとおりとする。$\psi_i\alpha^\sharp\psi_i^{-1}$ は $\mathcal{O}_{U_i}[\epsilon]$ の $\mathcal{O}_{U_i}$ 上恒等な自己同型なので $1+\epsilon\eta_i$($\eta_i\in T_{X_0}(U_i)$)と書ける。$U_{ij}$ 上で
$$
1+\epsilon\eta_j=\psi_j\alpha^\sharp\psi_j^{-1}=(\psi_j\psi_i^{-1})(\psi_i\alpha^\sharp\psi_i^{-1})(\psi_i\psi_j^{-1})=(1-\epsilon\theta_{ij})(1+\epsilon\eta_i)(1+\epsilon\theta_{ij})=1+\epsilon\eta_i
$$
(lem-deformation-automorphism の合成則は可換)なので $\eta_i$ は貼り合わさって大域切断 $\eta\in H^0(X_0,T_{X_0})$ を与える。逆に $\eta$ から各 $U_i$ 上の自己同型 $\psi_i^{-1}(1+\epsilon\eta|_{U_i})\psi_i$ を作ると同じ計算で $U_{ij}$ 上一致し、貼り合わさって $X$ の自己同型を与える。合成が加法に対応することは補題の合成則による。
分離的でない滑らかなスキームでも thm-deformation-first-order は成り立つ。証明の Čech コホモロジーを、被覆を細分した帰納極限 $\varinjlim_{\mathfrak{U}}\check{H}^1(\mathfrak{U},T_{X_0})$ に置き換えればよく、これは任意の層について $H^1$ に一致する(Har77 III 演習 4.4)。滑らかでない $X_0$ では、$T_{X_0}$ の代わりに $T^1$ 関手(rem-deformation-schlessinger)を使う必要がある。
$X_0$ を $k$ 上滑らかで分離的なスキーム、$0\to I\to A'\to A\to0$ を $\mathrm{Art}_k$ の小さい拡大、$X$ を $X_0$ の $A$ 上の変形とする。
完全な証明は SGA1 Exposé III §5–6、Har10 第 2 章 §10、FGAex 第 8 章(Illusie)、Ser06 第 1 章に譲る。筋は次のとおりである。$X_0$ のアフィン開被覆 $\{U_i\}$ をとる。ex-deformation-affine-smooth により $X|_{U_i}$ は $A'$ 上の持上げ $X'_i$ をもち、それは $U_i$ 上同型を除いて一意なので、$U_{ij}$ 上で $X'_i$ と $X'_j$ の間の($X$ 上恒等な)同型 $\alpha_{ij}$ を選べる。$X_0$ が滑らかで $\mathfrak{m}_{A'}I=0$ なので、持上げの $X$ 上恒等な自己同型の層は $T_{X_0}\otimes_kI$ に同型であり(lem-deformation-automorphism の $k[\epsilon]$ を $A'$ に取り替えた形。核 $I\cdot\mathcal{O}_{X'}\cong\mathcal{O}_{X_0}\otimes_kI$ を使う)、$U_{ijk}$ 上の $\alpha_{ij}\alpha_{jk}\alpha_{ki}$ は $T_{X_0}\otimes I$ の切断 $c_{ijk}$ を与える。$(c_{ijk})$ は Čech 2 コサイクルで、$\alpha_{ij}$ の取り替えで 2 コバウンダリだけ変わるので、類 $o(X,A')\in\check{H}^2(\{U_i\},T_{X_0}\otimes I)=H^2(X_0,T_{X_0})\otimes I$ が定まる。$o=0$ なら $\alpha_{ij}$ を取り替えて $\alpha_{ij}\alpha_{jk}\alpha_{ki}=1$ とでき、$X'_i$ が貼り合わさって持上げが得られる。逆に持上げ $X'$ があれば $X'_i=X'|_{U_i}$、$\alpha_{ij}=\mathrm{id}$ とできて $o=0$ である。2 と 3 は thm-deformation-first-order・cor-deformation-automorphism-group の証明を、$k[\epsilon]$ を $A'\to A$ に、$T_{X_0}$ を $T_{X_0}\otimes I$ に取り替えて繰り返せばよい。2 つの持上げ $X'$、$X''$ の差は、$U_i$ 上の同型 $X'|_{U_i}\cong X''|_{U_i}$ の $U_{ij}$ 上のずれ $\theta_{ij}\in T_{X_0}(U_{ij})\otimes I$ の類 $[\theta]\in H^1(X_0,T_{X_0})\otimes I$ で、これが torsor の作用である。
$H^2(X_0,T_{X_0})=0$ なら障害はつねに消える(曲線、アフィンスキーム(ex-deformation-affine-smooth)、$\mathbb{P}^n$)。障害類が $0$ でない例は ex-deformation-nonliftable にある。$k[\epsilon]$ から始めて小さい拡大 $k[t]/(t^{n+1})\to k[t]/(t^n)$ を重ねると、1 次変形 $\xi\in H^1(X_0,T_{X_0})$ が $n$ 次に延びるための障害が順に現れる。とくに $k[t]/(t^3)\to k[t]/(t^2)$ に沿った障害は $\xi$ の 2 次式、すなわち接ベクトル場の Lie括弧とカップ積で定まる $[\xi,\xi]\in H^2(X_0,T_{X_0})$ の定数倍で与えられる($k$ の標数が $2$ でないとき。Ser06 第 1 章、Har10 第 2 章 §10)。
以下は言明である。
$S$ を $k$ 上のスキーム、$f\colon\mathcal{X}\to S$ を滑らかな射、$s\in S$ を $k$ 有理点、$X_0:=\mathcal{X}_s=f^{-1}(s)$ とする。$s$ における接空間 $T_sS$ の元は $s$ を通る射 $v\colon\operatorname{Spec}k[\epsilon]\to S$ と同じものであり、底変換 $\mathcal{X}\times_{S,v}\operatorname{Spec}k[\epsilon]$ は $X_0$ の 1 次変形である。対応
$$
\kappa_s\colon T_sS\longrightarrow\mathrm{Def}_{X_0}(k[\epsilon])=H^1(X_0,T_{X_0})
$$
を族 $f$ の $s$ における Kodaira–Spencer 写像という。$\kappa_s$ は $k$ 線型写像である。
$\kappa_s$ は次のようにも書ける。$S$ も $k$ 上滑らかとする。$f$ が滑らかなので相対接層の完全列 $0\to T_{\mathcal{X}/S}\to T_{\mathcal{X}}\to f^*T_S\to0$ が成り立ち、$X_0$ に制限すると $f^*T_S|_{X_0}=T_sS\otimes_k\mathcal{O}_{X_0}$ なので、$H^0$ から $H^1$ への連結準同型との合成
$$
T_sS\longrightarrow T_sS\otimes_kH^0(X_0,\mathcal{O}_{X_0})=H^0(X_0,f^*T_S|_{X_0})\longrightarrow H^1(X_0,T_{X_0})
$$
を得る。これが $\kappa_s$ に一致する(Ser06 第 2 章、Har10 第 1 章 §5)。大域的には $\mathcal{O}_S$ 線型写像 $T_S\to R^1f_*T_{\mathcal{X}/S}$ となる。この定義は Kodaira–Spencer(1958 年、KS58)が複素多様体の複素構造の変形について導入したものの翻訳で、そこでは $H^1(X_0,T_{X_0})$ が複素構造の無限小変形の空間である。
Kodaira–Spencer 写像は Gauss–Manin接続と次の関係にある。$f$ が固有滑らかで $k$ の標数が $0$ のとき、相対 de Rhamコホモロジー $\mathcal{H}^n=R^nf_*\Omega^\bullet_{\mathcal{X}/S}$ は Gauss–Manin 接続 $\nabla$ をもち、Hodgeフィルトレーションについて Griffiths 横断性 $\nabla(F^p)\subset F^{p-1}\otimes\Omega^1_S$ をみたす。誘導される $\mathcal{O}_S$ 線型写像 $\mathrm{gr}^p_F\mathcal{H}^n\to\mathrm{gr}^{p-1}_F\mathcal{H}^n\otimes\Omega^1_S$ の $s$ でのファイバー $H^{n-p}(X_0,\Omega^p)\to H^{n-p+1}(X_0,\Omega^{p-1})\otimes T_s^\vee S$ は、Kodaira–Spencer 類 $\kappa_s(v)\in H^1(X_0,T_{X_0})$ とのカップ積と縮約 $T_{X_0}\otimes\Omega^p\to\Omega^{p-1}$ の合成に一致する($k=\mathbb{C}$ について Voi02 第 10 章。代数的な扱いは Gauss–Manin接続 の記事に譲る)。すなわち Gauss–Manin 接続の「Hodge フィルトレーションを 1 段ずらす部分」が Kodaira–Spencer 写像である。ex-deformation-elliptic-curve の Legendre 族では $n=p=1$ で、$H^0(E,\Omega^1)\to H^1(E,\mathcal{O})$ が $\kappa_\lambda(\partial_\lambda)$ とのカップ積であり、それが零でないことが Picard–Fuchs 方程式の非自明性にあたる。
$k$ を標数 $p>0$ の完全体、$W=W(k)$ を Wittベクトルの環、$W_n:=W/p^{n+1}W$ とする。$W_n$($n\ge1$)は剰余体 $k$ をもつ Artin 局所環だが $k$ 代数ではない($p\ne0$)ので $\mathrm{Art}_k$ の対象ではない。しかし $W_n\to W_{n-1}$ は核 $p^nW/p^{n+1}W\cong k$ をもつ小さい拡大であり、thm-deformation-obstruction とその帰結(滑らかなアフィンスキームの持上げは各段で存在し同型を除いて一意)は、$\mathrm{Art}_k$ を「剰余体 $k$ をもつ $W$ 上の Artin 局所環」の圏に置き換えてそのまま成り立つ($X_0$ の滑らかさは $k$ 上でよい。自明な変形 $X_0\times_k\operatorname{Spec}A$ はもはや意味をもたないので、アフィンの場合は ex-deformation-affine-smooth の証明ではなく、障害類 $H^2=0$ と torsor $H^1=0$ による。SGA1 III、FGAex 第 8 章、Ill96 §8)。したがって $k$ 上の滑らかなスキーム $X_0$ について、$W_{n-1}$ 上の変形 $X_{n-1}$ を $W_n$ へ持ち上げる障害は $H^2(X_0,T_{X_0})$ に、持上げの同型類の集合は $H^1(X_0,T_{X_0})$ のトーサーに住む。両立する持上げの列 $(X_n)_{n\ge0}$ が $X_0$ の $W$ 上の形式的持上げであり、$\operatorname{Spf}W$ 上の形式スキームと同じものである。$X_0$ が固有で豊富な可逆層も持ち上がるとき(たとえば $H^2(X_0,\mathcal{O}_{X_0})=0$)、形式的持上げは Grothendieck の存在定理(形式スキームの記事)により $W$ 上の固有滑らかなスキームに代数化される。曲線とアフィンスキームは $H^2(X_0,T_{X_0})=0$ により各 $W_n$ へつねに持ち上がって形式的持上げをもち(固有曲線は代数化もされる)、Serre の例(ex-deformation-nonliftable)は $W$ 上に持ち上がらない。
持上げが存在するときその選択によらない不変量を作ることが結晶コホモロジーの動機である。$X_0$ が $W$ 上の固有滑らかな持上げ $X$ をもてば、$X$ の de Rham コホモロジー $H^i_{\mathrm{dR}}(X/W)$ は $X_0$ の結晶コホモロジー $H^i_{\mathrm{cris}}(X_0/W)$ に一致し(Berthelot の比較定理、BO78 7.1)、とくに持上げ $X$ の取り方によらない。結晶コホモロジーは、持上げが大域的に存在しないときにも、局所的な持上げと分割冪構造を景の対象の側に置くことで同じ不変量を定義する(Gro68c、BO78 第 7 章、結晶コホモロジーの記事)。
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