曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理

同義語:intersection form and Riemann–Roch theorem for surfacesRiemann–Rochの定理(曲面)曲面のRiemann–Rochの定理Riemann–Roch theorem for surfaces曲面の交点形式交点形式(曲面)intersection form on a surface自己交点数self-intersection number曲面の随伴公式adjunction formula for surfaces

概要

曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理(intersection form and Riemann–Roch theorem for surfaces)とは、代数閉体上の滑らかな射影曲面の因子どうしに整数の交点数を与える対称双線形形式と、それを使って因子 $D$ の可逆層の Euler 標数を $\chi(\mathcal{O}_X(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12D\cdot(D-K_X)$ と表す定理である。交点数は Euler 標数の組合せで定義され、共通成分のない曲線どうしでは交点での局所交点数の和に等しい。Serre 双対性から定理が従い、算術種数の随伴公式 $2p_a(C)-2=C\cdot(C+K_X)$ が出る。1 点の爆発では例外曲線 $E$ が $E^2=-1$ をみたし、標準因子は $\pi^*K_X+E$ に変わる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 交叉理論, Riemann–Rochの定理, Serre双対性, 層コホモロジー, 可逆層

曲面の交点形式(intersection form on a surface)とは、代数閉体 $k$ 上の滑らかな射影曲面 $X$ の 2 つの因子 $C,D$ に整数 $C\cdot D$ を対応させる対称双線形形式で、共通成分をもたない曲線どうしなら交点を重複度込みで数えた個数に等しいものである。曲面の Riemann–Roch の定理は、因子 $D$ が定める可逆層の Euler 標数を、交点形式と標準因子 $K_X$ だけで
$$ \chi(\mathcal{O}_X(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12\,D\cdot(D-K_X) $$
と表す定理である。
曲線の上の Riemann–Rochの定理 では $\chi(\mathcal{O}(D))=\deg D+1-g$ のように因子の次数が主役だった。曲面では次数の代わりに交点数が現れる。交点数は平面曲線の Bézoutの定理 を曲面へ広げたものだが、曲面では新しい現象が起きる。点を爆発してできる曲線 $E$ は $E^2=-1$ という負の自己交点数をもち、「$E$ を少し動かして自分自身との交点を数える」ことはできない。そこでこの記事では、交点数を Euler 標数の組合せで定義し、そこから双線形性と「交点を数える」式の両方を導く。
この記事では、交点形式の存在と性質を証明し、Serre 双対性から Riemann–Roch の定理を導き、曲面の上の曲線の種数を交点数で表す随伴公式を導く。射影平面と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ で確かめたあと、1 点の爆発で交点形式と標準因子がどう変わるかを証明する。
以下、$k$ はいつも代数閉体とし、曲面 $X$ とは $k$ 上の滑らかで連結な 2 次元の射影スキームをいう。

設定と記号

$X$ の各点の局所環は正則局所環で、正則局所環は一意分解整域である(Stacks Tag 0AG0)。したがって Weil因子 と Cartier因子 は一致し、因子 $D$ に可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ が対応して、因子の線形同値類の群と Picard群 $\operatorname{Pic}X$ が同一視される(Vak25 Proposition 15.4.16, p. 446)。因子の和は可逆層のテンソル積に対応する。$0$ でない有効因子を曲線と呼び、既約で被約なものを既約曲線と呼ぶ。曲線 $C$ に対し $\mathcal{O}_C:=\mathcal{O}_X/\mathcal{O}_X(-C)$ とおき、可逆層 $\mathcal{M}$ の制限を $\mathcal{M}|_C:=\mathcal{M}\otimes\mathcal{O}_C$ と書く。連接層 $\mathcal{F}$ の Euler 標数を
$$ \chi(\mathcal{F}):=\sum_{i\ge0}(-1)^i\dim_kH^i(X,\mathcal{F}) $$
とする(射影スキーム上の連接層のコホモロジーは有限次元で(Vak25 Theorem 18.1.3, p. 495)、2 次元なので $i>2$ で $0$ になる(同 Theorem 18.2.6, p. 504))。短完全列 $0\to\mathcal{F}'\to\mathcal{F}\to\mathcal{F}''\to0$ があれば、コホモロジーの長完全列から $\chi(\mathcal{F})=\chi(\mathcal{F}')+\chi(\mathcal{F}'')$ である。
標準因子 $K_X$ とは、$\mathcal{O}_X(K_X)\cong\omega_X:=\Omega^2_{X/k}$(2 次の微分形式の層)となる因子である(Vak25 §21.5.3, p. 623)。曲面の Serre双対性 は、可逆層 $\mathcal{L}$ について
$$ h^i(X,\mathcal{L})=h^{2-i}(X,\omega_X\otimes\mathcal{L}^{-1})\qquad(i=0,1,2) $$
と述べる(この記事では証明しない。Har77 III, Corollary 7.7(p. 244)と Corollary 7.12(p. 246)。複素多様体の形は BHPV04 I (5.3), p. 25)。
各連結成分が滑らかな射影曲線である曲線を滑らかな曲線という。滑らかな曲線 $C$ の上の可逆層 $\mathcal{N}$ の次数 $\deg\mathcal{N}$ は各成分での次数の和であり、テンソル積について加法的である。各成分に Riemann–Rochの定理 の定理「Riemann–Rochの定理(Euler 標数の形)」を使って足し合わせると
$$ \chi(\mathcal{N})=\chi(\mathcal{O}_C)+\deg\mathcal{N} $$
を得る。

交点数

可逆層 $\mathcal{L},\mathcal{M}$ に対し
$$ (\mathcal{L}\cdot\mathcal{M}):=\chi(\mathcal{O}_X)-\chi(\mathcal{L}^{-1})-\chi(\mathcal{M}^{-1})+\chi(\mathcal{L}^{-1}\otimes\mathcal{M}^{-1}) $$
と定め、因子 $C,D$ に対し $C\cdot D:=(\mathcal{O}_X(C)\cdot\mathcal{O}_X(D))$ を $C$ と $D$ の交点数という。$D^2:=D\cdot D$ を $D$ の自己交点数という。

右辺は可逆層の同型類だけで決まるので、$C\cdot D$ は $C,D$ の線形同値類だけで決まり、$\mathcal{L}$ と $\mathcal{M}$ について対称である。この定義は Vak25 §20.1–20.2(p. 575–581)と同じである。定義からは、これが「交点の個数」であることも双線形であることも見えない。それを示すのが次の節である。まず滑らかな曲線との交点数を計算する。

滑らかな曲線との交点数は次数

$C$ を滑らかな曲線、$\mathcal{M}$ を可逆層とすると $(\mathcal{O}_X(C)\cdot\mathcal{M})=\deg(\mathcal{M}|_C)$ である。

$\mathcal{O}_X(C)^{-1}=\mathcal{O}_X(-C)$ は $C$ のイデアル層なので、完全列 $0\to\mathcal{O}_X(-C)\to\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_C\to0$ がある。可逆層とのテンソル積は完全性を保つので、$\mathcal{M}^{-1}$ を掛けた $0\to\mathcal{M}^{-1}(-C)\to\mathcal{M}^{-1}\to\mathcal{M}^{-1}|_C\to0$ も完全である。Euler 標数の加法性から
$$ (\mathcal{O}_X(C)\cdot\mathcal{M})=\bigl(\chi(\mathcal{O}_X)-\chi(\mathcal{O}_X(-C))\bigr)-\bigl(\chi(\mathcal{M}^{-1})-\chi(\mathcal{M}^{-1}(-C))\bigr)=\chi(\mathcal{O}_C)-\chi(\mathcal{M}^{-1}|_C) $$
である。曲線の Riemann–Roch により $\chi(\mathcal{M}^{-1}|_C)=\chi(\mathcal{O}_C)+\deg(\mathcal{M}^{-1}|_C)=\chi(\mathcal{O}_C)-\deg(\mathcal{M}|_C)$ なので、右辺は $\deg(\mathcal{M}|_C)$ に等しい。$\square$

双線形性の証明では、任意の可逆層を滑らかな曲線の差で表す。

滑らかな曲線の差

任意の可逆層 $\mathcal{L}$ について、滑らかな曲線 $A,B$ で $\mathcal{L}\cong\mathcal{O}_X(A-B)$ となるものがある。さらに、有限個の点 $P_1,\dots,P_r$ と有限個の既約曲線 $\Gamma_1,\dots,\Gamma_s$ を与えたとき、$A,B$ はどの $P_i$ も通らず、どの $\Gamma_j$ も成分に含まないように選べる。

要点:$\mathcal{L}$ に非常に豊富な可逆層の高い冪を掛けて非常に豊富にし、2 つの非常に豊富な可逆層の比として表す。それぞれの一般の超平面切断を Bertini の定理で滑らかにとる。

詳しい証明を開く

$X$ は射影的なので、非常に豊富な可逆層 $\mathcal{H}$ がある。Vak25 Theorem 16.2.2 (b)(p. 460。この記事では証明しない)により、ある $n_0$ について $\mathcal{G}:=\mathcal{L}\otimes\mathcal{H}^{\otimes n_0}$ は大域切断で生成される。$\mathcal{M}:=\mathcal{G}\otimes\mathcal{H}$ は非常に豊富である。実際、$\mathcal{G}$ を生成する切断 $s_0,\dots,s_a$ が射 $\varphi\colon X\to\mathbb{P}^a$ を、$\mathcal{H}$ の切断 $t_0,\dots,t_b$ が閉埋め込み $\iota\colon X\to\mathbb{P}^b$ を定めるとする。$(\varphi,\iota)\colon X\to\mathbb{P}^a\times\mathbb{P}^b$ は、$\varphi$ のグラフ $X\to\mathbb{P}^a\times X$($\mathbb{P}^a$ は分離的なので閉埋め込み)と閉埋め込み $\mathrm{id}\times\iota$ の合成なので閉埋め込みである。これに Segre 埋め込み $\mathbb{P}^a\times\mathbb{P}^b\to\mathbb{P}^{ab+a+b}$ を合成したものは切断 $s_it_j$ で与えられ、$\mathcal{O}(1)$ の引き戻しは $\mathcal{G}\otimes\mathcal{H}=\mathcal{M}$ である。同じ議論で $\mathcal{N}:=\mathcal{H}^{\otimes(n_0+1)}=\mathcal{H}^{\otimes n_0}\otimes\mathcal{H}$ も非常に豊富で、$\mathcal{L}\cong\mathcal{M}\otimes\mathcal{N}^{-1}$ である。

$\mathcal{M}$ で $X\subset\mathbb{P}^m$ と埋め込む。Bertini の定理(この記事では証明しない。Vak25 Theorem 13.4.2, p. 375)により、双対射影空間の空でない開集合 $U$ があり、$U$ の超平面 $\Lambda$ について $\Lambda\cap X$ は滑らかな 1 次元のスキームである。点 $P_i$ を通る超平面は双対空間の超平面をなし、既約曲線 $\Gamma_j$(1 点ではない)を含む超平面は双対空間の真の線形部分空間をなす。双対射影空間は既約なので、$U$ からこれら有限個の真の閉集合を除いても空でない開集合が残り、$k$ は代数閉なのでその $k$ 有理点 $\Lambda$ がとれる。$A:=\Lambda\cap X$ は $\mathcal{M}$ の切断の零点の定める有効因子で、$\mathcal{O}_X(A)\cong\mathcal{M}$、$A$ は滑らかな曲線で、$P_i$ を通らず $\Gamma_j$ を含まない。$\mathcal{N}$ についても同様に $B$ をとればよい。$\square$

交点形式

交点形式
  1. $(\mathcal{L},\mathcal{M})\mapsto(\mathcal{L}\cdot\mathcal{M})$ は $\operatorname{Pic}X$ の上の対称双線形形式 $\operatorname{Pic}X\times\operatorname{Pic}X\to\mathbb{Z}$ である。
  2. $C$ が滑らかな曲線なら、任意の因子 $D$ について $C\cdot D=\deg(\mathcal{O}_X(D)|_C)$ である。
  3. 曲線 $C,D$ が共通の既約成分をもたなければ、$C\cap D$ は有限集合で、各点 $P$ での $C,D$ の局所方程式を $f_P,g_P\in\mathcal{O}_{X,P}$ とすると
    $$ C\cdot D=\sum_{P\in C\cap D}\dim_k\mathcal{O}_{X,P}/(f_P,g_P)\ \ge0 $$
    である。とくに $C$ と $D$ が交わらなければ $C\cdot D=0$ であり、各交点で局所方程式が $\mathcal{O}_{X,P}$ の極大イデアルを生成する(横断的に交わる)なら、$C\cdot D$ は交点の個数である。

2 は lem-sirr-degree で $\mathcal{M}=\mathcal{O}_X(D)$ としたものである。対称性は定義から明らかである。
段 1(双線形性)。 可逆層 $\mathcal{L}_1,\mathcal{L}_2,\mathcal{L}_3$ に対し
$$ s(\mathcal{L}_1,\mathcal{L}_2,\mathcal{L}_3):=(\mathcal{L}_1\cdot\mathcal{L}_2\otimes\mathcal{L}_3)-(\mathcal{L}_1\cdot\mathcal{L}_2)-(\mathcal{L}_1\cdot\mathcal{L}_3) $$
とおく。定義を代入して整理すると、$\chi(\mathcal{O}_X)$ の項と $\chi(\mathcal{L}_1^{-1})$ の項の一部が打ち消し合い、
$$ s=-\chi(\mathcal{O}_X)+\sum_{i}\chi(\mathcal{L}_i^{-1})-\sum_{i< j}\chi(\mathcal{L}_i^{-1}\otimes\mathcal{L}_j^{-1})+\chi(\mathcal{L}_1^{-1}\otimes\mathcal{L}_2^{-1}\otimes\mathcal{L}_3^{-1}) $$
となる。これは $\mathcal{L}_1,\mathcal{L}_2,\mathcal{L}_3$ について対称である。$\mathcal{L}_1\cong\mathcal{O}_X(C)$($C$ は滑らかな曲線)なら、2 と次数の加法性から
$$ s=\deg\bigl((\mathcal{L}_2\otimes\mathcal{L}_3)|_C\bigr)-\deg(\mathcal{L}_2|_C)-\deg(\mathcal{L}_3|_C)=0 $$
である。対称性により、3 つのうちどれかが滑らかな曲線の可逆層なら $s=0$ である。
任意の $\mathcal{L},\mathcal{L}'$ をとる。lem-sirr-difference により滑らかな曲線 $A,B$ で $\mathcal{L}'\otimes\mathcal{O}_X(B)\cong\mathcal{O}_X(A)$ となるものがある。$s(\mathcal{L},\mathcal{L}',\mathcal{O}_X(B))=0$ は $(\mathcal{L}\cdot\mathcal{O}_X(A))=(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}')+(\mathcal{L}\cdot\mathcal{O}_X(B))$ を意味するので、対称性と 2 により
$$ (\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}')=\deg(\mathcal{L}|_A)-\deg(\mathcal{L}|_B) $$
である。右辺は $\mathcal{L}$ について加法的なので、$(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}')$ は $\mathcal{L}$ について加法的であり、対称性から双線形である。$\operatorname{Pic}X$ の元の逆元についての式も加法性から従う。
段 2(交点を数える式)。 $C$ の各既約成分 $\Gamma$ は $D$ の台に含まれない(含まれれば、$\Gamma$ は 1 次元の既約閉集合なので $D$ の既約成分になる)。よって $\Gamma\cap D$ は $\Gamma$ の真の閉集合で有限であり、$C\cap D$ は有限集合である。
イデアル層 $\mathcal{O}_X(-C)$、$\mathcal{O}_X(-D)$ の和で定まる閉部分スキームを $C\cap D$ と書き、次の層の列を考える。
$$ 0\to\mathcal{O}_X(-C-D)\xrightarrow{\ \alpha\ }\mathcal{O}_X(-C)\oplus\mathcal{O}_X(-D)\xrightarrow{\ \beta\ }\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_{C\cap D}\to0 $$
ここで $\alpha(u)=(u,-u)$、$\beta(a,b)=a+b$(いずれもイデアル層としての包含を使う)である。点 $P$ で $\mathcal{O}_X(-C)_P=f\mathcal{O}_{X,P}$、$\mathcal{O}_X(-D)_P=g\mathcal{O}_{X,P}$($f=f_P$、$g=g_P$)とすると、$\alpha$ の単射性と $\beta$ の余核が $\mathcal{O}_{C\cap D}$ であることは明らかである。$\beta$ の核が $\alpha$ の像であることを示す。$fa'+gb'=0$ とする。$\mathcal{O}_{X,P}$ は一意分解整域で、その素元は $P$ を通る既約曲線の局所方程式なので、$C,D$ が共通の既約成分をもたないことは $f$ と $g$ が共通の素因子をもたないことを意味する。$fa'=-gb'$ から $g\mid a'$ であり、$a'=ga''$、$b'=-fa''$ となって $(fa',gb')=\alpha(fga'')$ である。こうして列は完全である。
$\mathcal{O}_X(-C-D)\cong\mathcal{O}_X(-C)\otimes\mathcal{O}_X(-D)$ なので、Euler 標数の加法性(4 項の完全列は 2 つの短完全列に分かれる)から
$$ \chi(\mathcal{O}_{C\cap D})=\chi(\mathcal{O}_X)-\chi(\mathcal{O}_X(-C))-\chi(\mathcal{O}_X(-D))+\chi(\mathcal{O}_X(-C-D))=C\cdot D $$
である。$\mathcal{O}_{C\cap D}$ は有限集合 $C\cap D$ に台をもつので、$i\ge1$ で $H^i=0$ となり、$H^0$ は各点の茎の直和である。茎は $\mathcal{O}_{X,P}/(f,g)$ なので 3 の式を得る。交わらなければ和は空で $0$、局所方程式が極大イデアルを生成すれば各項は $\dim_kk=1$ である。$\square$

3 の和の各項 $\dim_k\mathcal{O}_{X,P}/(f_P,g_P)$ を $P$ での局所交点数という。$X=\mathbb{P}^2$ ならこれは 交点数(平面曲線) と同じ量である。交叉理論 の定理「曲面の交叉形式」は、線形同値で不変で 3 の性質をもつ対称双線形形式がただ 1 つ存在することを述べている。上の定理はその存在を与える。
3 は共通成分がないという仮定のもとでしか使えない。たとえば後で見る爆発の曲線 $E$ では $E^2=-1< 0$ であり、$E$ と線形同値な曲線で $E$ と共通成分をもたないものは存在しない(あれば 3 により $E^2\ge0$ となる)。自己交点数は「動かして数える」ことができない場合にも、Euler 標数の式で定まる。

Riemann–Roch の定理と随伴公式

曲面の Riemann–Roch の定理

$X$ の任意の因子 $D$ について
$$ \chi(\mathcal{O}_X(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12\,D\cdot(D-K_X) $$
が成り立つ。

Serre 双対性により $h^i(\mathcal{L})=h^{2-i}(\omega_X\otimes\mathcal{L}^{-1})$ で、$(-1)^i=(-1)^{2-i}$ なので、任意の可逆層について $\chi(\mathcal{L})=\chi(\omega_X\otimes\mathcal{L}^{-1})$、すなわち因子 $F$ について $\chi(\mathcal{O}_X(F))=\chi(\mathcal{O}_X(K_X-F))$ である。
交点数の定義を $-D$ と $D-K_X$ に当てると、$-(-D)=D$、$-(D-K_X)=K_X-D$、$-(-D)-(D-K_X)=K_X$ なので
$$ (-D)\cdot(D-K_X)=\chi(\mathcal{O}_X)-\chi(\mathcal{O}_X(D))-\chi(\mathcal{O}_X(K_X-D))+\chi(\mathcal{O}_X(K_X)) $$
である。双対性により $\chi(\mathcal{O}_X(K_X-D))=\chi(\mathcal{O}_X(D))$、$\chi(\mathcal{O}_X(K_X))=\chi(\mathcal{O}_X)$ なので、右辺は $2\chi(\mathcal{O}_X)-2\chi(\mathcal{O}_X(D))$ である。双線形性で左辺は $-D\cdot(D-K_X)$ なので、両辺を $-2$ で割って定理を得る。$\square$

$\chi(\mathcal{O}_X(D))$ は整数なので、$D\cdot(D-K_X)$ は偶数、すなわち $D^2\equiv D\cdot K_X\pmod 2$ である。$K_X=0$ の曲面(たとえば K3曲面)では、すべての $D^2$ が偶数になる。
曲線 $C$ に対し $p_a(C):=1-\chi(\mathcal{O}_C)$ を $C$ の算術種数という。$C$ が滑らかで連結なら $h^0(\mathcal{O}_C)=1$ であり、$C$ の種数は $g:=h^1(\mathcal{O}_C)$ である(Riemann–Rochの定理 の定義「標準因子と種数」)から、$p_a(C)=g$ である。

随伴公式

$X$ の任意の曲線 $C$ について
$$ 2p_a(C)-2=C\cdot(C+K_X) $$
である。とくに $C$ が滑らかで連結なら、$C$ の種数 $g$ は $2g-2=C^2+C\cdot K_X$ をみたす。

完全列 $0\to\mathcal{O}_X(-C)\to\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_C\to0$ から $\chi(\mathcal{O}_C)=\chi(\mathcal{O}_X)-\chi(\mathcal{O}_X(-C))$ である。thm-sirr-rr を $D=-C$ に使うと $\chi(\mathcal{O}_X(-C))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12(-C)\cdot(-C-K_X)=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12C\cdot(C+K_X)$ なので、$\chi(\mathcal{O}_C)=-\frac12C\cdot(C+K_X)$、すなわち $p_a(C)=1+\frac12C\cdot(C+K_X)$ である。$\square$

随伴公式は、曲面の上の曲線の種数を、曲線そのものを調べずに交点数だけで求める式である。特異点のある既約曲線では、算術種数は正規化の種数より特異点の分だけ大きい。

算術種数と正規化の種数

$C$ を $X$ の既約曲線、$\nu\colon\tilde C\to C$ をその正規化、$\tilde g$ を $\tilde C$ の種数とする。
$$ p_a(C)=\tilde g+\delta(C),\qquad\delta(C):=\sum_{P\in C}\dim_k\bigl(\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C}/\mathcal{O}_C\bigr)_P $$
であり、$\delta(C)=0$ となるのは $C$ が滑らかなときに限る。とくに $p_a(C)\ge0$ であり、$p_a(C)=0$ となるのは $C\cong\mathbb{P}^1$ のときに限る。

要点:正規化の完全列 $0\to\mathcal{O}_C\to\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C}\to\mathcal{Q}\to0$ の Euler 標数を比べる(BHPV04 II §11 (a), p. 84 と同じ筋)。

詳しい証明を開く

$C$ は被約な曲線なので滑らかでない点は有限個で、$\nu$ はそれ以外の点の上で同型であり、有限射である(体上有限型の環は Nagata 環なので整閉包は有限。Stacks Tag 0335(Proposition 10.162.16))。したがって $\mathcal{Q}:=\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C}/\mathcal{O}_C$ は有限集合に台をもち、$\chi(\mathcal{Q})=h^0(\mathcal{Q})=\delta(C)$ である。$\nu$ はアフィン射なので $H^i(C,\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C})=H^i(\tilde C,\mathcal{O}_{\tilde C})$ であり、$\chi(\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C})=1-\tilde g$($\tilde C$ は滑らかで連結な射影曲線)である。加法性から $1-p_a(C)=\chi(\mathcal{O}_C)=1-\tilde g-\delta(C)$ を得る。

$\delta(C)=0$ は $\mathcal{O}_C\to\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C}$ が同型、すなわち $C$ が正規であることと同値である。1 次元の正規な Noether 局所環は離散付値環なので、これは $C$ の各点が正則、代数閉体上では滑らかであることと同値である。$\tilde g\ge0$、$\delta(C)\ge0$ なので $p_a(C)\ge0$ であり、$p_a(C)=0$ なら $\tilde g=\delta(C)=0$ で、$C$ は種数 $0$ の滑らかな射影曲線になる。Riemann–Rochの定理 の定理「射影直線の特徴づけ」により $C\cong\mathbb{P}^1$ である。逆に $\mathbb{P}^1$ の算術種数は $0$ である。$\square$

例:射影平面と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$

射影平面

$X=\mathbb{P}^2$ とし、$h$ を直線の類とする。相異なる 2 直線は 1 点で横断的に交わるので thm-sirr-form の 3 により $h^2=1$ である。次数 $d$ の形式の零点として定まる曲線 $C$ は $\mathcal{O}(C)\cong\mathcal{O}(d)$、すなわち $C\sim dh$ をみたす。したがって共通成分のない次数 $m,n$ の曲線 $C,D$ について
$$ \sum_{P\in C\cap D}\dim_k\mathcal{O}_{X,P}/(f_P,g_P)=C\cdot D=mn\,h^2=mn $$
であり、Bézoutの定理 が双線形性から出てくる。
$\omega_{\mathbb{P}^2}\cong\mathcal{O}(-3)$(Euler 完全列から、Vak25 Theorem 21.3.6, p. 614)なので $K_X=-3h$、また $\chi(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2})=1$ である。Riemann–Roch の定理は
$$ \chi(\mathcal{O}(d))=1+\frac12\,dh\cdot(dh+3h)=1+\frac{d(d+3)}2=\frac{(d+1)(d+2)}2 $$
を与え、これは $\mathcal{O}(d)$ のコホモロジーの直接の計算(Vak25 Theorem 18.1.2, p. 494)と一致する。随伴公式から次数 $d$ の曲線の算術種数は
$$ p_a(C)=1+\frac12\,dh\cdot(d-3)h=\frac{(d-1)(d-2)}2 $$
である。滑らかな 3 次曲線は種数 $1$、滑らかな 4 次曲線は種数 $3$ である。

$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$

$X=\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ とし、$F_1:=\{a\}\times\mathbb{P}^1$、$F_2:=\mathbb{P}^1\times\{b\}$ とおく。$a\ne a'$ なら $\{a\}\times\mathbb{P}^1$ と $\{a'\}\times\mathbb{P}^1$ は線形同値で交わらないので $F_1^2=0$、同様に $F_2^2=0$ で、$F_1$ と $F_2$ は 1 点で横断的に交わるので $F_1\cdot F_2=1$ である。$K_X=-2F_1-2F_2$(交叉理論 の例「射影直線の積」)で、Künneth の公式(Stacks Tag 0BED)から $\chi(\mathcal{O}_X)=\chi(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1})^2=1$ である。$D=aF_1+bF_2$ について Riemann–Roch の定理は
$$ \chi(\mathcal{O}_X(D))=1+\frac12\bigl(aF_1+bF_2\bigr)\cdot\bigl((a+2)F_1+(b+2)F_2\bigr)=1+\frac{a(b+2)+b(a+2)}2=(a+1)(b+1) $$
を与え、Künneth の公式による $\chi(\mathcal{O}(a)\boxtimes\mathcal{O}(b))=(a+1)(b+1)$ と一致する。$aF_1+bF_2$ に線形同値な曲線の算術種数は、随伴公式から $1+\frac12\bigl(a(b-2)+b(a-2)\bigr)=(a-1)(b-1)$ である。
対角線 $\Delta$ は $\mathbb{P}^1$ に同型で、$F_1,F_2$ とそれぞれ 1 点で横断的に交わるので $K_X\cdot\Delta=-4$ である。随伴公式 $-2=\Delta^2+K_X\cdot\Delta$ から $\Delta^2=2$ を得る。$\Delta$ を動かした曲線(たとえば $\{(x,\lambda x)\}$ の閉包、$\lambda\ne1$)は $\Delta$ と $2$ 点で交わり、これと合う。

1 点の爆発

$P\in X$ を点とし、$\pi\colon\tilde X\to X$ を $P$ でのブローアップ(爆発)、$E:=\pi^{-1}(P)$ とする。$\tilde X$ は曲面で、$\pi$ は $\tilde X\setminus E\to X\setminus\{P\}$ の同型であり、$E\cong\mathbb{P}^1$ で $\mathcal{O}_{\tilde X}(E)|_E\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1)$ である(この記事では証明しない。Stacks Tag 0AGQ、ブローアップ の定理「滑らかな中心のブローアップ」)。可逆層の引き戻しで $\pi^*\colon\operatorname{Pic}X\to\operatorname{Pic}\tilde X$ が定まり、$P$ を通らない曲線 $A$ については $\pi^*A=\pi^{-1}(A)$ である。

爆発と交点形式
  1. 因子 $D,D'$ について $\pi^*D\cdot\pi^*D'=D\cdot D'$、$\pi^*D\cdot E=0$ であり、$E^2=-1$ である。
  2. $\operatorname{Pic}\tilde X=\pi^*\operatorname{Pic}X\oplus\mathbb{Z}E$ である。
  3. $K_{\tilde X}\sim\pi^*K_X+E$ であり、$K_{\tilde X}^2=K_X^2-1$ である。

1:lem-sirr-difference により $D\sim A-B$、$D'\sim A'-B'$($A,B,A',B'$ は滑らかな曲線)で、どれも $P$ を通らず、$A',B'$ は $A,B$ の成分を含まないようにとれる。$\pi^*A=\pi^{-1}(A)$ と $\pi^*A'$ は $E$ と交わらず、共通成分をもたず、交点はすべて $\pi$ が同型になる $\tilde X\setminus E$ にあるので、局所交点数は $A,A'$ のものと同じである。thm-sirr-form の 3 により $\pi^*A\cdot\pi^*A'=A\cdot A'$ で、ほかの 3 組も同様だから、双線形性により $\pi^*D\cdot\pi^*D'=D\cdot D'$ である。$\pi^*A$、$\pi^*B$ は $E$ と交わらないので $\pi^*D\cdot E=0$ である。$E\cong\mathbb{P}^1$ は滑らかな曲線なので、thm-sirr-form の 2 により $E^2=\deg(\mathcal{O}_{\tilde X}(E)|_E)=-1$ である。
2:$\tilde X$ の因子 $\tilde D=\sum_in_i\Gamma_i$($\Gamma_i$ は既約曲線)に対し、$\Gamma_i\ne E$ の像の和 $D:=\sum_{\Gamma_i\ne E}n_i\pi(\Gamma_i)$ をとると、$\tilde D-\pi^*D$ の $\tilde X\setminus E$ への制限は $0$ なので、$\tilde D-\pi^*D=mE$ となる整数 $m$ がある。一意性:$\pi^*D+mE\sim0$ なら、$E$ との交点数をとって 1 から $-m=0$ である。すると $\pi^*D=\operatorname{div}(\varphi)$($\varphi$ は $\tilde X$ の、したがって $X$ の有理関数)で、$X\setminus\{P\}$ に制限すると $D$ と $\operatorname{div}_X(\varphi)$ が一致する。$X$ の因子は $X\setminus\{P\}$ への制限で決まる(既約曲線は 1 点に含まれない)ので、$D\sim0$ である。
3:$\pi$ は $\tilde X\setminus E$ の上で同型なので、可逆層 $\mathcal{N}:=\omega_{\tilde X}\otimes\pi^*\omega_X^{-1}$ は $\tilde X\setminus E$ の上で自明であり、そこで消えない切断 $t$ がとれる。$t$ を $\mathcal{N}$ の有理切断とみると、その因子は $E$ に台をもつので $aE$ の形であり、$K_{\tilde X}\sim\pi^*K_X+aE$ となる。$E\cong\mathbb{P}^1$ の算術種数は $0$ なので、随伴公式と 1 から
$$ -2=E\cdot(E+K_{\tilde X})=E^2+E\cdot\pi^*K_X+aE^2=-1+0-a $$
となり、$a=1$ である。最後に $K_{\tilde X}^2=(\pi^*K_X)^2+2\pi^*K_X\cdot E+E^2=K_X^2-1$ である。$\square$

2 と 3 は BHPV04 I (9.1) (vi)・(vii)(p. 35)に、複素多様体の爆発の性質として述べられている。$K^2$ が爆発のたびに $1$ ずつ減ることは、Noetherの公式 と Castelnuovoの収縮定理 で使う。
点 $P$ での曲線の重複度も交点数に現れる。曲線 $C$ の $P$ での局所方程式 $f$ について、$f\in\mathfrak{m}_P^m\setminus\mathfrak{m}_P^{m+1}$ となる $m\ge0$ を $C$ の $P$ での重複度 $m_P(C)$ という。

固有変換の交点数と種数

$C$ を曲線、$m:=m_P(C)$ とすると、$E$ を成分に含まない曲線 $\tilde C$($C$ の固有変換)で $\pi^*C=\tilde C+mE$ となるものがあり、
$$ \tilde C\cdot E=m,\qquad\tilde C^2=C^2-m^2,\qquad p_a(\tilde C)=p_a(C)-\frac{m(m-1)}2 $$
が成り立つ。

要点:局所座標で $\pi^*f$ が $E$ の方程式のちょうど $m$ 乗で割り切れることを確かめ、あとは thm-sirr-blowup の 1・3 と随伴公式で計算する。

詳しい証明を開く

$x,y$ を $\mathfrak{m}_P$ の生成元とする。$E$ の近くで $\tilde X$ は 2 つの開集合で覆われ、一方では $t=y/x$ が正則関数で $\pi^*y=\pi^*x\cdot t$、$E=\{\pi^*x=0\}$、$E$ との交わりは座標 $t$ のアフィン直線である(Stacks Tag 0AGQ の証明、BHPV04 I §9, p. 34)。もう一方でも $x,y$ の役を入れ替えて同様である。$f\in\mathfrak{m}_P^m$ なので $f=\sum_{i+j=m}a_{ij}x^iy^j$($a_{ij}\in\mathcal{O}_{X,P}$)と書け、$f\notin\mathfrak{m}_P^{m+1}$ なので $a_{ij}(P)\ne0$ となる $(i,j)$ がある。第 1 の開集合で $\pi^*f=(\pi^*x)^m\sum_{i+j=m}a_{ij}t^j$ であり、右の和の $E$ への制限は $0$ でない多項式 $\sum a_{ij}(P)t^j$ である。よって $\pi^*C$ は $E$ をちょうど $m$ 回含み、$\tilde C:=\pi^*C-mE$ は $E$ を成分に含まない曲線である。

thm-sirr-blowup の 1 から $\tilde C\cdot E=\pi^*C\cdot E-mE^2=m$、$\tilde C^2=C^2-2m\,\pi^*C\cdot E+m^2E^2=C^2-m^2$ である。3 から $K_{\tilde X}\cdot\tilde C=(\pi^*K_X+E)\cdot(\pi^*C-mE)=K_X\cdot C+m$ である。随伴公式に代入すると $2p_a(\tilde C)-2=C^2+K_X\cdot C-m^2+m=2p_a(C)-2-m(m-1)$ となる。$\square$

結節のある 3 次曲線

標数 $2$ でない $k$ で、$\mathbb{P}^2$ の 3 次曲線 $C\colon Y^2Z=X^2(X+Z)$ を考える。$P=[0:0:1]$ での局所方程式は $y^2-x^2-x^3$ で、$m_P(C)=2$ である。ex-sirr-p2 から $p_a(C)=1$ なので、prop-sirr-strict により $p_a(\tilde C)=1-1=0$ である。$\tilde C$ は既約曲線なので prop-sirr-genus により $\tilde C\cong\mathbb{P}^1$ である。$\pi|_{\tilde C}\colon\tilde C\to C$ は射影的でファイバーが有限($P$ の外では同型、$P$ の上は $\tilde C\cap E$)なので有限射であり(Vak25 Theorem 18.1.6, p. 497)、$P$ の外で同型だから双有理である。$\tilde C$ は滑らかなので正規であり、アフィン開集合の上で $\tilde C$ の座標環は $C$ の座標環の整閉包に等しい。すなわち $\tilde C$ は $C$ の正規化である。$C$ 自身は $p_a(C)=1$ だが正規化の種数は $0$ で、$\delta(C)=1$ である。$\tilde C\cdot E=2$ は、2 つの接線方向 $y=\pm x$ に対応する $E$ の 2 点で $\tilde C$ が $E$ と交わることに当たる。

反例:条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
曲面が滑らか(局所環が一意分解整域)2 次錐 $xz=y^2$($\mathbb{P}^3$ の中)の頂点を通る直線 $L$整数値の双線形形式で $L$ の自己交点数を定めること($L^2=1/2$ になる)
曲面が射影的$\mathbb{A}^2$ の直線 $y=0$、$y=1$、$y=x$線形同値で変わらない交点数が、交点を数える式と一致すること
共通成分がない$\mathbb{P}^2$ の直線 $L$ と $L$ 自身、爆発の曲線 $E$ と $E$ 自身$C\cdot D$ を交点での局所交点数の和として数えること
Riemann–Roch の補正項 $-K_X$$\mathbb{P}^2$ と $D=h$式 $\chi(\mathcal{O}(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12D^2$
曲線が滑らか結節のある 3 次曲線随伴公式の $p_a(C)$ が正規化の種数に等しいこと

各行の反例が破る条件と、崩れる結論を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:2 次錐 $Q$ の頂点 $[0:0:0:1]$ の局所環では $xz=y^2$ なので、既約元 $x,y,z$ について分解が一意でない。超平面 $x=0$ は $Q$ を $\{x=0,\ y^2=0\}$、すなわち直線 $L=\{x=y=0\}$ の 2 倍で切る。$Q$ の 2 つの一般の超平面切断は $\deg Q=2$ 点で交わるので、超平面切断 $H=2L$ について $H^2=2$ となるべきであり、双線形なら $L^2=1/2$ となって整数にならない。$L$ は頂点で Cartier 因子でない。

2 行目:$k[x,y]$ は一意分解整域なので $\operatorname{Pic}\mathbb{A}^2=0$ で、3 本の直線は線形同値である。しかし $y=0$ と $y=1$ は交わらず、$y=0$ と $y=x$ は原点で横断的に交わる。交点を数える値が $0$ と $1$ に分かれるので、両立する形式は存在しない(交叉理論 の例「反例:固有でない多様体では交点数が定まらない」と同じ)。

3 行目:$L$ と $L$ は共通成分をもち、$\mathcal{O}/(f,f)$ は無限次元である。一方 $L^2=h^2=1$ で、これは $L$ を別の直線に動かして得られる。$E$ では動かすこともできず、$E^2=-1$ は負で、交点の個数ではありえない。

4 行目:$\chi(\mathcal{O}(1))=3$ だが $\chi(\mathcal{O})+\frac12h^2=\frac32$ で、整数ですらない。$-\frac12D\cdot K_X=\frac32$ を足して正しい値 $3$ になる。

5 行目:ex-sirr-nodal-cubic のとおり、$p_a(C)=1$ だが正規化の種数は $0$ である。随伴公式が与えるのは算術種数であり、差は $\delta(C)=1$ である。

関連する定理

複素数体上では、交点形式は $H^2(X,\mathbb{Z})$ のカップ積の、代数的な類への制限である(この記事では証明しない。交叉理論 の注意「コホモロジーとの関係」に主張と出典がある)。その符号については、豊富な因子 $H$ と $D\cdot H=0$ をみたす $D$ について $D^2\le0$ という Hodge指数定理 がある(この記事では証明しない。交叉理論 の定理「交叉形式の符号」に主張と出典がある)。
Riemann–Roch の定理の右辺の定数項 $\chi(\mathcal{O}_X)$ を $K_X^2$ と位相的な Euler 数で表すのが Noetherの公式 である。爆発の曲線 $E$ がみたす $E\cong\mathbb{P}^1$、$E^2=-1$ という性質で、逆に爆発で得られた曲線を特徴づけるのが Castelnuovoの収縮定理 である。K3曲面 の記事の Riemann–Roch の定理は、この記事の定理に $K_X=0$、$\chi(\mathcal{O}_X)=2$ を代入したものである。

関連項目

参考文献

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