Deligne–Lusztig理論(Deligne–Lusztig theory)とは、有限体上の連結な簡約群 $G^F$ の複素表現を、Frobenius 写像 $F$ で保たれる極大トーラス $T$ とその指標 $\theta$ の組ごとに Deligne–Lusztig 多様体の $\ell$ 進コホモロジーの交代和として作った仮想指標 $R_{T,\theta}$ で調べる理論である。$T$ が $F$ で保たれる Borel 部分群に入るとき $R_{T,\theta}$ は主系列の誘導表現になり、そうでないときは尖点表現が現れることがある。次数と内積の公式から、一般の位置にある $\theta$ の $R_{T,\theta}$ は符号を除いて既約で、すべての既約表現がどれかの $R_{T,\theta}$ に現れる。
Deligne–Lusztig理論(Deligne–Lusztig theory)は、有限体上の簡約群 $G^F$(有限簡約群)の複素表現を、代数閉体上の多様体の $\ell$ 進コホモロジーから作る理論である。有限群 $G^F$ の表現を作る素朴な方法は、部分群の表現からの誘導である。$G^F$ の Borel 部分群 $B^F$ からの誘導(放物型誘導表現)で得られるものを主系列という。Borel 部分群に限らず真の放物型部分群からの誘導(Harish-Chandra 誘導)のどれにも現れない既約表現を尖点表現(尖点表現)という。尖点表現はこうした誘導からは得られないので、別の構成が要る。
Deligne と Lusztig は、$G^F$ の $F$ で保たれる極大トーラス $T$ とその指標 $\theta$ の組ごとに、ある多様体の $\ell$ 進コホモロジーの交代和として仮想指標 $R_{T,\theta}$ を作った。$T$ が $F$ で保たれる Borel 部分群に入るとき、$R_{T,\theta}$ は普通の誘導(主系列)になる。$T$ がそうでないときは、$R_{T,\theta}$ の既約成分に尖点表現が現れることがある($\mathrm{GL}_2(\mathbb F_q)$ の例を下で見る)。$G^F$ のすべての既約表現が、ある $R_{T,\theta}$ に現れる。
この記事では、Weyl 群の元 $w$ で $T$ を表す形で Deligne–Lusztig 多様体と仮想指標を定義し、$F$ で保たれる極大トーラスの共役類が Weyl 群の $F$ 共役類と一対一に対応することを証明する。次に、$w=1$ の多様体が主系列を与えることを示し、次数と内積の公式(引用)から「一般の位置にある指標」の $R_{T,\theta}$ が符号を除いて既約であることを導く。最後に $\mathrm{GL}_2(\mathbb F_q)$ の $q-1$ 次の尖点表現をこの方法で作る。
$p$ を素数、$q$ を $p$ の冪、$k=\overline{\mathbb F}_q$ とする。$G\subset\mathrm{GL}_n(k)$ を $\mathbb F_q$ 係数の多項式で定まる連結な簡約群、$F=\sigma_q|_G$ を標準 Frobenius 写像とし(有限簡約群 の定義「Steinberg 自己準同型」)、$G^F=G\cap\mathrm{GL}_n(\mathbb F_q)$ とする。$L(g):=g^{-1}F(g)$ と書く。Lang–Steinberg の定理(有限簡約群 の定理「Lang–Steinberg の定理」)により、連結な閉部分群 $H\subset G$ で $F(H)=H$ を満たすものについて $L|_H\colon H\to H$ は全射である。
$F$ で保たれる Borel 部分群 $B_0$ を一つ固定する(有限簡約群 の定理「$F$ で保たれる Borel 部分群」)。$B_0$ の極大トーラス $T$ をとると $F(T)$ も $B_0$ の極大トーラスで、極大トーラスは $B_0$ の中で共役なので(MilAG Theorem 18.14、p. 316)$F(T)=bTb^{-1}$($b\in B_0$)と書ける。$L(c)=b^{-1}$ となる $c\in B_0$ をとって $T_0:=cTc^{-1}$ とおくと、$F(c)=cb^{-1}$ より $F(T_0)=cb^{-1}F(T)bc^{-1}=T_0$ である。$U_0$ を $B_0$ の冪単根基とすると $B_0=U_0\rtimes T_0$ である。
$N_0:=N_G(T_0)$、$W:=N_0/T_0$ を Weyl 群とする。$G$ が簡約なので $C_G(T_0)=T_0$ であり(MilAG Corollary 19.19 (a)、p. 341)、$W$ は有限群である(同 Definition 18.58・Corollary 18.59、p. 328)。$F(N_0)=N_0$ なので $F$ は $W$ の自己同型 $\sigma$ を引き起こす。$w\in W$ の $N_0$ での代表元を $\dot w$ と書く。$w,w'\in W$ が $\sigma$ 共役であるとは、ある $x\in W$ について $w'=xw\sigma(x)^{-1}$ となることをいう。たとえば $G=\mathrm{GL}_n$ で $B_0$ を上三角行列、$T_0$ を対角行列の群にとると、$W$ は置換行列の像で表され(Weyl群 の命題「一般線形群の Weyl 群」)、置換行列は $F$ で動かないので $\sigma=\mathrm{id}$ であり、$\sigma$ 共役は $S_n$ の普通の共役である。
$\ell\ne p$ を素数とし、$\overline{\mathbb Q}_\ell$ と $\mathbb C$ を体として同一視する(Gec17 1.1、p. 2)。$k$ 上の多様体 $Y$ のコンパクト台 $\ell$ 進コホモロジーを $H^i_c(Y)=H^i_c(Y,\overline{\mathbb Q}_\ell)$ と書く(ℓ進コホモロジー)。以下では、$H^i_c(Y)$ が有限次元で有限個の $i$ を除いて $0$ であることと、$Y$ への有限群の作用が $H^i_c(Y)$ への線形作用を引き起こすことを使う(Gec17 2.2、p. 3 が使う標準的な性質。この記事では証明しない)。
$w\in W$ に対し
$$
Y_{\dot w}:=\{x\in G\mid x^{-1}F(x)\in\dot wU_0\},\qquad T_0[w]:=\{t\in T_0\mid F(t)=\dot w^{-1}t\dot w\}
$$
とおく。$Y_{\dot w}$ を($w$ に付随する)Deligne–Lusztig 多様体という。$T_0[w]$ は代表元 $\dot w$ の取り方によらない($T_0$ は可換)。
$w\in W$ とする。
1:$Y_{\dot w}$ は閉集合 $\dot wU_0$ の、射 $L$ による逆像なので閉である。$h\in G^F$ なら $L(hx)=x^{-1}h^{-1}hF(x)=L(x)$ である。$t\in T_0[w]$、$x\in Y_{\dot w}$ とし $L(x)=\dot wu$($u\in U_0$)とすると、$F(t)=\dot w^{-1}t\dot w$ と、$T_0$ が $U_0$ を正規化することから
$$
L(xt)=t^{-1}\dot wu\,\dot w^{-1}t\dot w=\dot w\,(\dot w^{-1}t^{-1}\dot w)\,u\,(\dot w^{-1}t\dot w)\in\dot wU_0
$$
である。
2:$g$ の存在は Lang–Steinberg の定理による。$F(g)=g\dot w$ なので $F(T_w)=g\dot wT_0\dot w^{-1}g^{-1}=T_w$ である。$t\in T_0$ について $F(gtg^{-1})=g\dot wF(t)\dot w^{-1}g^{-1}$ なので、$gtg^{-1}\in T_w^F$ と $F(t)=\dot w^{-1}t\dot w$ は同値である。$T_w^F\subset G^F$ は有限である。$\square$
$w\in W$、$\theta\in\operatorname{Irr}(T_0[w])$ に対し、$G^F$ 上の類関数
$$
R_w^\theta(g):=\frac1{|T_0[w]|}\sum_{t\in T_0[w]}\sum_{i\in\mathbb Z}(-1)^i\operatorname{Trace}\bigl((g,t),H^i_c(Y_{\dot w})\bigr)\,\theta(t)\qquad(g\in G^F)
$$
を Deligne–Lusztig の仮想指標という($(g,t)$ は $x\mapsto gxt$ として作用する)。
$G^F\times T_0[w]$ の表現 $H^i_c(Y_{\dot w})$ を $T_0[w]$ の指標 $\theta^{-1}$ の固有空間に制限したものを $H^i_c(Y_{\dot w})_\theta$ と書くと、指標の直交関係から $R_w^\theta$ は $G^F$ の表現 $\sum_i(-1)^iH^i_c(Y_{\dot w})_\theta$ の指標である。したがって $R_w^\theta$ は既約指標の整数係数の和、すなわち仮想指標である。$R_w^\theta$ は $\dot w$ の取り方によらず、prop-dl-action の 2 のトーラス $T_w$ と、$T_w^F$ の指標 $\theta(g^{-1}\cdot g)$ について Deligne と Lusztig が定めた仮想指標 $R_{T_w,\theta}$ に等しい(Gec17 2.2・Remark 2.3、p. 3)。
古典的には、旗多様体 $G/B_0$ の点 $B$ のうち $B$ と $F(B)$ が「相対位置 $w$」にある($B=xB_0x^{-1}$ と書くと $x^{-1}F(x)\in B_0\dot wB_0$)ものの集合 $X(w)$ を Deligne–Lusztig 多様体と呼ぶことが多い。$x\mapsto xB_0x^{-1}$ は $Y_{\dot w}$ から $X(w)$ への写像を与え、$X(w)$ は $G^F$ だけが作用する多様体である。
prop-dl-action の 2 のトーラス $T_w$ は $w$ だけで決まるわけではないが、$G^F$ の共役を除けば $w$ の $\sigma$ 共役類で決まり、しかもすべての $F$ で保たれる極大トーラスがこうして現れる。
$F$ で保たれる $G$ の極大トーラス $T$ は $T=gT_0g^{-1}$($g\in G$)と書け、このとき $L(g)\in N_0$ である。$T$ に $L(g)$ の $W$ での像の $\sigma$ 共役類を対応させる写像は、$F$ で保たれる極大トーラスの $G^F$ 共役類の集合から、$W$ の $\sigma$ 共役類の集合への全単射である。
要点:$gT_0g^{-1}$ が $F$ で保たれることは $L(g)\in N_0$ と同値である。$g$ の取り替え $g\mapsto gn$($n\in N_0$)は像を $\sigma$ 共役に変え、$g\mapsto hg$($h\in G^F$)は $L(g)$ を変えない。全射は Lang–Steinberg の定理から、単射は $T_0$ の上の「ひねった Frobenius」$s\mapsto aF(s)a^{-1}$ に Lang–Steinberg の定理を当てることから従う。
代表の存在と条件。極大トーラスは $G$ の中で共役なので(MilAG Theorem 18.14、p. 316)$T=gT_0g^{-1}$ と書ける。$F(T)=F(g)T_0F(g)^{-1}$ なので、$F(T)=T$ は $L(g)=g^{-1}F(g)$ が $T_0$ を正規化することと同値である。
well-defined。$gT_0g^{-1}=g'T_0g'^{-1}$ なら $n:=g^{-1}g'\in N_0$ で、$L(g')=n^{-1}L(g)F(n)$ である。$n$ の像を $x$ とすると、$W$ での像は $x^{-1}w\sigma(x)$ で、$w$ と $\sigma$ 共役である。$h\in G^F$ なら $L(hg)=L(g)$ である。よって写像は $G^F$ 共役類の上で定まる。
全射。$w\in W$ に対し、Lang–Steinberg の定理で $L(g)=\dot w$ となる $g$ をとれば、$gT_0g^{-1}$ の像は $w$ である。
単射。$T=gT_0g^{-1}$、$T'=g'T_0g'^{-1}$ の像が $\sigma$ 共役であるとする。$g'$ を $g'n$($n\in N_0$)に取り替えて、$a:=L(g)$ と $a':=L(g')$ の $W$ での像が等しい、すなわち $a'=at_0$($t_0\in T_0$)としてよい。$T_0$ の自己準同型 $F'(s):=aF(s)a^{-1}$ を考える。$F'$ が Steinberg 自己準同型であることを下で示す。それを認めると、Lang–Steinberg の定理により $s^{-1}F'(s)=at_0a^{-1}$ となる $s\in T_0$ がある。$g'':=gs$ とおくと $g''T_0g''^{-1}=T$ で、$L(g'')=s^{-1}aF(s)=s^{-1}F'(s)a=at_0=a'$ である。$h:=g'g''^{-1}$ とおくと、$F(h)=g'a'\,a'^{-1}g''^{-1}=h$ なので $h\in G^F$ であり、$hTh^{-1}=g'T_0g'^{-1}=T'$ である。
$F'$ が Steinberg 自己準同型であること。$F'^m(s)=n_mF^m(s)n_m^{-1}$、$n_m:=aF(a)\cdots F^{m-1}(a)\in N_0$ である。$\sigma$ の位数を $M$ とすると、$F^M=\sigma_{q^M}$ は $W$ に自明に作用する。$n_M$ の像 $z\in W$ の位数を $r$ とすると、$n_{Mr}=n_MF^M(n_M)\cdots F^{M(r-1)}(n_M)$ の像は $z^r=1$ なので $n_{Mr}\in T_0$ であり、$T_0$ は可換だから $F'^{Mr}=F^{Mr}=\sigma_{q^{Mr}}$ が $T_0$ の上で成り立つ。$\square$
$G=\mathrm{GL}_n$ では $\sigma=\mathrm{id}$ なので、$F$ で保たれる極大トーラスの $G^F$ 共役類は $S_n$ の共役類、すなわち $n$ の分割 $\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_r)$ と一対一に対応する。$w$ が長さ $\lambda_1,\dots,\lambda_r$ の巡回置換の積なら $T_0[w]\cong\prod_i\mathbb F_{q^{\lambda_i}}^\times$ である。たとえば $n=2$、$w=s=(1\,2)$ のとき、$\dot s=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ について $\dot s^{-1}\operatorname{diag}(a,b)\dot s=\operatorname{diag}(b,a)$ なので
$$
T_0[s]=\{\operatorname{diag}(a,b)\mid a^q=b,\ b^q=a\}=\{\operatorname{diag}(a,a^q)\mid a\in\mathbb F_{q^2}^\times\}\cong\mathbb F_{q^2}^\times
$$
であり、$|T_0[s]|=q^2-1$ である。$w=1$ では $T_0[1]=T_0^F\cong(\mathbb F_q^\times)^2$ である。
$n=2$ の場合の計算は定義から直接確かめられる。一般の巡回置換の場合も、$\operatorname{diag}(a_1,\dots,a_m)$ に $F(t)=\dot w^{-1}t\dot w$ を課すと $a_{i+1}=a_i^q$ と $a_1^{q^m}=a_1$ の形の条件になることから同様に従う。
$F(U_0)=U_0$ なので、$T_0$ が $U_0$ を正規化することと合わせて、$B_0^F=U_0^F\rtimes T_0^F$ であり、射影 $\pi\colon B_0^F\to T_0^F$ がある。$T_0[1]=T_0^F$ の指標 $\theta$ に対し、$\theta\circ\pi$ を $G^F$ に誘導した表現が主系列である(放物型誘導表現)。
1:$x\in Y_1$ なら $L(x)\in U_0$ で、Lang–Steinberg の定理を連結な $U_0$ に当てて $L(u)=L(x)$ となる $u\in U_0$ をとると、$L(xu^{-1})=uL(x)F(u)^{-1}=u\,u^{-1}F(u)F(u)^{-1}=1$ となり、$x\in G^FU_0$ である。逆に $L(yu)=u^{-1}F(u)\in U_0$($y\in G^F$)である。$xB_0=yB_0$ は $F$ で動かず、有限簡約群 の命題「$F$ で固定される剰余類」により $(G/B_0)^F=\{yB_0\mid y\in G^F\}$ なので全射である。
2:1 から、$Y_1$ は $(G/B_0)^F$ の点の上のファイバー $yB_0^FU_0$($y\in G^F$)の交わらない和で、これらは閉かつ開であり、$G^F$ はこれらを推移的に置換し、$B_0^FU_0$ の固定部分群は $B_0^F$ である。この分解から $\ell$ 進コホモロジーを計算すると、$R_1^\theta$ が $\operatorname{Ind}_{B_0^F}^{G^F}(\theta\circ\pi)$ に等しいことが従う(Gec17 Example 2.4、pp. 3–4。この記事ではこの計算を証明しない)。$\square$
こうして $R_w^\theta$ は誘導表現の一般化とみなせる。$w\ne1$ の多様体のコホモロジーからは、誘導では得られない表現も現れる(prop-dl-gl2-cuspidal)。
次の三つの定理が理論の骨格である。$N$ を $W$ の鏡映($W$ の中で $S$ の元と共役な元)の個数とし、$w,w'\in W$ について $N_{W,\sigma}(w,w'):=\{x\in W\mid xw\sigma(x)^{-1}=w'\}$ とおく。$x\in N_{W,\sigma}(w,w')$ なら $\dot xT_0[w]\dot x^{-1}=T_0[w']$ である(Gec17 2.5 と 2.6 の間、p. 4)。
$\theta$ が一般の位置にあるとは、$x\in N_{W,\sigma}(w,w)$ で $\theta(\dot xt\dot x^{-1})=\theta(t)$(すべての $t\in T_0[w]$)となるものが $x=1$ だけであることをいう。
$\theta\in\operatorname{Irr}(T_0[w])$ が一般の位置にあれば、$(-1)^{\ell(w)}R_w^\theta$ は $G^F$ の既約指標であり、その次数は $q^{-N}|G^F:T_0[w]|$ である。
$R:=R_w^\theta$ は仮想指標なので、互いに異なる既約指標 $\chi_i$ と整数 $n_i$ により $R=\sum_in_i\chi_i$ と書け、$\langle R,R\rangle=\sum_in_i^2$ である。thm-dl-main の 2 で $w'=w$、$\theta'=\theta$ とすると、一般の位置の仮定から $\langle R,R\rangle=1$ なので、ちょうど一つの $i$ で $n_i=\pm1$、他は $0$ である。よって $R=\pm\chi$($\chi$ は既約)であり、thm-dl-main の 1 から $R(1)$ の符号は $(-1)^{\ell(w)}$ なので $(-1)^{\ell(w)}R=\chi$ で、$\chi(1)=q^{-N}|G^F:T_0[w]|$ である。$\square$
$G=\mathrm{GL}_2$、$B_0$ を上三角行列、$T_0$ を対角行列の群とする。$W=\{1,s\}$、$\sigma=\mathrm{id}$、$N=1$ で、$|G^F|=q(q-1)(q^2-1)$ である。ex-dl-gln-tori により $T_0[s]=\{\operatorname{diag}(a,a^q)\}\cong\mathbb F_{q^2}^\times$ で、$\dot s\operatorname{diag}(a,a^q)\dot s^{-1}=\operatorname{diag}(a^q,a)$ は $a\mapsto a^q$ にあたる。
$\theta$ を $\mathbb F_{q^2}^\times\cong T_0[s]$ の指標で $\theta\ne\theta^q$($\theta^q(a):=\theta(a^q)$)を満たすものとする。このとき $\chi_\theta:=-R_s^\theta$ は $q-1$ 次の既約指標であり、尖点表現の指標である。$\chi_\theta=\chi_{\theta'}$ となるのは $\theta'\in\{\theta,\theta^q\}$ のときに限り、こうして $(q^2-q)/2$ 個の互いに異なる尖点表現が得られる。
$N_{W}(s,s)=W$ で、$x=s$ についての条件は $\theta^q=\theta$ なので、仮定から $\theta$ は一般の位置にある。cor-dl-general-position から $-R_s^\theta$ は既約で、次数は $q^{-1}\cdot q(q-1)(q^2-1)/(q^2-1)=q-1$ である。
尖点性を示す。$\mathrm{GL}_2$ の真の標準放物型部分群は $B_0$ だけで、その Levi 部分群は $T_0$ である。prop-dl-w1 の 2 から、$T_0^F$ の既約表現からの Harish-Chandra 誘導(放物型誘導表現)の指標は $R_1^\chi$($\chi\in\operatorname{Irr}(T_0^F)$)である。$xs x^{-1}=1$ となる $x$ はないので $N_W(s,1)=\emptyset$ で、thm-dl-main の 2 から $\langle R_1^\chi,\chi_\theta\rangle=0$ である。よって $\chi_\theta$ はどの $R_1^\chi$ にも現れず、尖点表現 の定理「尖点性の誘導による特徴づけ」により尖点表現である。
最後に、thm-dl-main の 2 から $\langle R_s^\theta,R_s^{\theta'}\rangle$ は $\theta'=\theta$ のとき $1$ を、$\theta'=\theta^q$ のとき $1$ を加えた値(両方なら $2$)なので、$\theta'\notin\{\theta,\theta^q\}$ なら直交し、$\theta'=\theta^q$ なら一致する。$\theta\ne\theta^q$ となる指標は $(q^2-1)-(q-1)=q^2-q$ 個あり($\theta=\theta^q$ は $\theta$ が $a\mapsto a^{q-1}$ の像 $\{b\mid b^{q+1}=1\}$ の上で自明なこと、すなわち $\mathbb F_{q^2}^\times/\{b^{q+1}=1\}\cong\mathbb F_q^\times$ から来ることと同値)、二つずつ組になる。$\square$
$\mathrm{GL}_2(\mathbb F_q)$ の既約表現は、主系列から得られる $1$ 次、$q$ 次、$q+1$ 次のもの(放物型誘導表現 の定理「主系列表現の既約性と分解」)と、この $q-1$ 次の尖点表現で尽くされる。実際、$1$ 次が $q-1$ 個、$q$ 次が $q-1$ 個、$q+1$ 次が $(q-1)(q-2)/2$ 個、$q-1$ 次が $(q^2-q)/2$ 個で、次数の二乗の和は
$$
(q-1)\bigl(1+q^2\bigr)+\tfrac{(q-1)(q-2)}2(q+1)^2+\tfrac{q(q-1)}2(q-1)^2=q(q-1)(q^2-1)
$$
となり、$|G^F|$ に一致する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\theta$ が一般の位置にあること | $G=\mathrm{GL}_2$、$w=1$、$\theta=1$ | $\pm R_w^\theta$ の既約性:$R_1^1=\operatorname{Ind}_{B_0^F}^{G^F}\mathbf 1$ は自明な指標と Steinberg 指標の和 |
| $w\ne1$ の多様体を使うこと | $w=1$ の $R_1^\chi$ だけを使う | すべての既約指標がどれかに現れること($\mathrm{GL}_2$ の $q-1$ 次の尖点表現が現れない) |
| Lang–Steinberg の定理での群の連結性 | $H=\{\pm1\}\subset\mathrm{GL}_1$、$F=\sigma_q$($q$ は奇数) | $L\colon H\to H$ の全射性:$L(\pm1)=1$ で $-1$ は像にない |
1 行目は 放物型誘導表現 の定理「主系列表現の既約性と分解」の 2 である。ここで $N_W(1,1)=W$ で、$x=s$ でも $\theta(\dot st\dot s^{-1})=\theta(t)$ が成り立つので $\langle R_1^1,R_1^1\rangle=2$ である。2 行目は prop-dl-gl2-cuspidal の証明の後半による。3 行目では $F(-1)=(-1)^q=-1$ なので $L(\pm1)=1$ である。連結性は、prop-dl-action の 2 と thm-dl-tori の証明で $L(g)=\dot w$ の解を得るのに使う。
$\mathrm{SL}_2$ の場合の $R_w^\theta$ の分解は Gec17 Example 2.11(pp. 5–6)にあり、$q$ が奇数のとき、$q+1$ 次と $q-1$ 次の表現に加えて次数 $(q\pm1)/2$ の表現が $R_w^\theta$ の和として現れる。$R_w^\theta$ の冪単元での値(Green 関数)は $\theta$ によらず(Gec17 Remark 2.9、p. 5)、$\mathrm{GL}_n$ では Green 多項式として Springer対応 の Springer ファイバーのコホモロジーと結びつく(Spr82 4.13、pp. 269–270)。既約指標を $R_w^\theta$ の成分として分類する理論は Lusztig により展開され、指標層の理論へと続いている(Gec17 §4・§5・§7)。
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