Bolyai–Gerwienの定理(Bolyai–Gerwien theorem)とは、平面の 2 つの多角形について、面積が等しいことと、一方を有限個の多角形に切り分けて平行移動・回転・裏返しで並べ直すと他方にできること(分割合同)が同値である、という定理である。分割合同なら面積が等しいのは面積の加法性による。逆は、多角形を三角形に分け、三角形を中点を結ぶ線で切って平行四辺形に、平行四辺形を横の帯に切って長方形に直し、長方形を平行四辺形経由で横 $1$ の長方形に直して積み上げ、分割合同が同値関係であることを使って示す。空間の多面体では同じことが成り立たず(Hilbert の第 3 問題)、円板は多角形の片に切れない。
前提知識: 三角形の面積の公式, 中点連結定理, 平面の合同変換の分類, 三角形の合同条件
平行四辺形の面積が「底辺 × 高さ」になることは、小学校以来、図形を切って並べ直すことで説明されてきた。三角形の面積が「底辺 × 高さ ÷ 2」になることも、同じ三角形を 2 枚並べるか、三角形を切って並べ直すことで説明できる。まず、この「切り貼り」を座標で確かめる。
4 点 $O(0,0)$、$P(4,0)$、$Q(5,3)$、$R(1,3)$ を頂点とする平行四辺形 $OPQR$ をとる。底辺 $OP$ の長さは $4$、高さは $3$ である。
(1) 頂点 $R$ から底辺に垂線を下ろすと、足は $H(1,0)$ である。$H$ は線分 $OP$ の上にある($0\le1\le4$)。平行四辺形を線分 $RH$ で切ると、直角三角形 $OHR$ と台形 $HPQR$ の 2 片に分かれる。
(2) 直角三角形 $OHR$ をベクトル $(4,0)$ だけ平行移動すると、$O\to(4,0)=P$、$H\to(5,0)$、$R\to(5,3)=Q$ に移る。移した三角形と台形 $HPQR$ を合わせると、4 点 $H(1,0)$、$(5,0)$、$Q(5,3)$、$R(1,3)$ を頂点とする長方形になる。
(3) 長方形の横は $5-1=4$、縦は $3$ なので、面積は
$$
\underbrace{4}_{\text{底辺}}\times\underbrace{3}_{\text{高さ}}=12
$$
である。平行四辺形の面積も $12$ である。
1 辺 $1$ の正方形を 2 枚用意する。面積の合計は $2$ なので、1 枚の正方形にするなら 1 辺は $\sqrt2$ である。
(1) 2 枚の正方形をそれぞれ対角線で切ると、直角をはさむ 2 辺が $1$、斜辺が $\sqrt2$ の直角二等辺三角形が 4 枚できる。
(2) 1 辺 $\sqrt2$ の正方形を 2 本の対角線で切ると、4 つの三角形に分かれる。正方形の対角線の長さは $\sqrt2\times\sqrt2=2$ で、2 本の対角線は互いの中点で垂直に交わるので、どの三角形も直角をはさむ 2 辺が $1$、斜辺が $\sqrt2$ の直角二等辺三角形である。
(3) (1) と (2) の三角形は 3 辺の長さが等しいので合同である(三角形の合同条件)。よって (1) の 4 枚を並べ直すと、1 辺 $\sqrt2$ の正方形ができる。
平行四辺形を垂線で切り、左の直角三角形を右へ平行移動すると長方形になる
1 辺 1 の正方形 2 枚を対角線で 4 枚の三角形に切り、1 辺が 2 の平方根の正方形に並べ直す
どちらの例でも、面積の等しい 2 つの図形の一方を有限個の片に切り、片を動かして並べ直すと他方になった。では、面積が等しい多角形なら、いつでもこのように切り貼りで移り合うのだろうか。たとえば、面積の等しい正三角形と正方形はどうか。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 平行四辺形を切って長方形にする | 平行四辺形と長方形の分割合同(lem-bg-para) | せん断(面積を保つ 1 次変換)の切り貼りによる実現 |
| 三角形の面積 $\dfrac12\times$ 底辺 $\times$ 高さ | 三角形と長方形の分割合同(lem-bg-tri) | 面積の加法性 |
| 図形を三角形に分けて面積を足す | 多角形の三角形分割(lem-bg-triangulate) | 単体分割 |
| 面積が等しければ切り貼りで移る | Bolyai–Gerwien の定理(thm-bg-main) | 分割合同類は面積だけで決まる |
この記事で 多角形 とは、有限個の線分をつないだ閉じた折れ線で、自分自身と交わらないもので囲まれた図形のことで、周(その折れ線)も含める。凸でなくてもよい。
多角形 $P$ が多角形 $P_1,\dots,P_m$ に 分割 されるとは、次の 2 つが成り立つことをいう。
(R1) $P=P_1\cup P_2\cup\cdots\cup P_m$ である。
(R1) $i\ne j$ なら、$P_i$ と $P_j$ は周の上でしか重ならない(両方の内部に入る点はない)。
2 つの多角形 $P$、$Q$ が 分割合同 であるとは、$P$ を $P_1,\dots,P_m$ に、$Q$ を $Q_1,\dots,Q_m$ に分割して、すべての $i$ について $P_i$ と $Q_i$ が合同にできることをいう。このとき $P\sim Q$ と書く。ここで「合同」は、平行移動・回転・裏返し(平面の合同変換の分類)を組み合わせて重ねられることである。
ex-bg-start の平行四辺形と長方形は、2 片(直角三角形と台形)で分割合同である。ex-bg-two-squares の「正方形 2 枚を並べた長方形 $2\times1$」と「1 辺 $\sqrt2$ の正方形」は、4 片で分割合同である。同じ定義は 錐体の体積とHilbertの第3問題 でも使っており、そこでは空間の立体に広げている。
面積については、高校で使っている次の 2 つの性質を、証明せずに使う。
$P\sim Q$ なら、$P$ と $Q$ の面積は等しい。
$P$ が $P_1,\dots,P_m$ に、$Q$ が $Q_1,\dots,Q_m$ に分割され、各 $P_i$ と $Q_i$ が合同だとする。(面積 2) により、$P$ の面積は $P_1,\dots,P_m$ の面積の和、$Q$ の面積は $Q_1,\dots,Q_m$ の面積の和である。(面積 1) により $P_i$ と $Q_i$ の面積は等しいので、2 つの和は等しい。$\square$
prop-bg-area の逆、つまり「面積が等しければ分割合同」が、この記事の主定理である。
主定理の証明では、「多角形 → 長方形 → 別の長方形」のように、切り貼りを何回か続ける。続けた結果がまた 1 回の切り貼りで書けることを、先に確かめておく。
多角形 $P$、$Q$、$R$ について、次が成り立つ。
(R1) $P\sim P$(反射律)。
(R1) $P\sim Q$ なら $Q\sim P$(対称律)。
(R1) $P\sim Q$ かつ $Q\sim R$ なら $P\sim R$(推移律)。
(i) $P$ を 1 片のまま($m=1$、$P_1=P$)とみれば、$P$ は自分自身と合同なので $P\sim P$ である。
(ii) 分割合同の定義は $P$ と $Q$ について対称なので、$P\sim Q$ なら $Q\sim P$ である。
(iii) 要点:$Q$ には、$P$ から来た切り方と、$R$ へ行く切り方の 2 通りがある。両方の切り線で同時に切った細かい片を使う。片を三角形にそろえておくと、共通部分 $Q_i\cap Q'_j$ は凸多角形で、これを $P$ の側と $R$ の側へそれぞれの合同変換で移せば、$P$ と $R$ の分割で対応する片が合同なものが得られる。
段 1(片を三角形にする)。$P\sim Q$ を与える分割を $P=P_1\cup\cdots\cup P_m$、$Q=Q_1\cup\cdots\cup Q_m$ とし、$Q_i$ を $P_i$ に重ねる合同変換を $f_i$ とする。各 $Q_i$ をさらに三角形に分割し(後の lem-bg-triangulate)、その三角形を $f_i$ で移すと $P_i$ の三角形分割が得られる。よって、はじめから $Q_i$ はすべて三角形だとしてよい。$Q\sim R$ についても同じく、$Q=Q'_1\cup\cdots\cup Q'_n$(三角形)、$R=R_1\cup\cdots\cup R_n$、$Q'_j$ を $R_j$ に重ねる合同変換を $g_j$ とする。
段 2(重ねた片)。$Q_i\cap Q'_j$ のうち、内部をもつもの(面積が正のもの)を考える。2 つの三角形の共通部分は、三角形の 3 辺の内側という条件を 6 つ合わせたものなので、凸多角形である。これらが $Q$ の分割になる。実際、$i$ が違う 2 つは $Q_i$ と $Q_{i'}$ の周でしか重ならず、$j$ が違う 2 つも同じなので、def-bg-scissors の条件 (ii) が成り立つ。和が $Q$ 全体になることの確認は下の「詳細」に置く。
段 2 で、面積が正の共通部分の和 $U$ が $Q$ 全体になることを確かめる。$Q$ の点 $x$ をとる。$x$ のいくらでも近くに、$Q$ の内部の点で、どの $Q'_j$ の周の上にもない点 $y$ がとれる($Q'_j$ の周は有限本の線分で、線分の近くを避けて $Q$ の内部の点を選べる)。$y$ はある $Q_i$ と、ある $Q'_j$ に入り、$Q'_j$ の周の上にないので $Q'_j$ の内部にある。$y$ が $Q_i$ の周の上にあっても、$y$ の近くには $Q_i$ の内部の点で $Q'_j$ の内部にある点があるので、$Q_i\cap Q'_j$ は内部をもち、$y\in U$ である。$U$ は有限個の多角形の和なので周を含み、$x$ に近づく $U$ の点の極限である $x$ も $U$ に入る。
段 3(両側へ移す)。片 $Q_i\cap Q'_j$ を $f_i$ で移すと $P_i$ の中に入り、$i$ を止めて $j$ を動かした片の和は $P_i$ になる(段 2 の分割を $Q_i$ の中だけで見て、$f_i$ で移す)。よって $f_i(Q_i\cap Q'_j)$ の全体は $P$ の分割である。同じく $g_j(Q_i\cap Q'_j)$ の全体は $R$ の分割である。$f_i(Q_i\cap Q'_j)$ と $g_j(Q_i\cap Q'_j)$ はどちらも $Q_i\cap Q'_j$ と合同なので、互いに合同である。よって $P\sim R$ である。$\square$
もう 1 つ、切り貼りを「部分ごとにして、まとめて貼る」こともできる。
多角形 $P$ が $P_1,\dots,P_k$ に、多角形 $Q$ が $Q_1,\dots,Q_k$ に分割され、各 $i$ について $P_i\sim Q_i$ なら、$P\sim Q$ である。
要点:各 $P_i$ と $Q_i$ の分割の片を全部集めると、$P$ と $Q$ の分割になり、対応する片は合同である。
各 $i$ について、$P_i\sim Q_i$ を与える $P_i$ と $Q_i$ の分割をとる。$P_1,\dots,P_k$ の分割の片を全部集めると、$P$ の分割になる。和が $P$ になるのは $P=P_1\cup\cdots\cup P_k$ だからで、違う $P_i$ に入る 2 片は $P_i$ どうしが周でしか重ならないので周でしか重ならず、同じ $P_i$ に入る 2 片は $P_i$ の分割の片なので周でしか重ならない。$Q$ の側も同じである。対応する片は合同なので $P\sim Q$ である。$\square$
最後に、どんな多角形も三角形に切り分けられることを確かめる。凸多角形なら 1 つの頂点から対角線を引けばよい(Catalan数(高校数学) でも使う三角形分割)。凸でない多角形でもできる。
どの多角形も、有限個の三角形に分割できる。
要点:頂点が $4$ 個以上の多角形には、内部を通って 2 つの頂点を結ぶ線分(対角線)が必ずある。対角線で切ると頂点の少ない 2 つの多角形になるので、頂点の個数についての帰納法で三角形まで切り分けられる。
頂点の個数 $n$ についての帰納法で示す。$n=3$ なら三角形そのものである。$n\ge4$ とし、$n$ より少ない頂点の多角形では成り立つとする。
段 1(とがった頂点)。$x$ 座標が最小の頂点のうち $y$ 座標が最小のものを $v$ とし、その両隣の頂点を $u$、$w$ とする。多角形は直線 $x=(v\text{ の }x\text{ 座標})$ の右側(直線を含む)にあるので、$v$ での内角は $180^\circ$ より小さい。
段 2(対角線を見つける)。三角形 $uvw$ の中(周を含む)に $u,v,w$ 以外の頂点がないとする。多角形の辺で三角形 $uvw$ の内部に入るものがあれば、その辺は内部に頂点をもたないので、三角形の周を横切って入って出る。辺 $vu$、$vw$ は多角形の辺なので、ほかの辺はこれらを横切らない。すると入口も出口も辺 $uw$ の上になるが、線分と直線は $1$ 点でしか交わらないので、これは起こらない。よって三角形 $uvw$ の内部に多角形の周はなく、線分 $uw$ は対角線である。三角形 $uvw$ の中に $u,v,w$ 以外の頂点があるときは、それらのうち直線 $uw$ から最も遠いものを $z$ とする。$z$ を通り $uw$ に平行な直線より $v$ の側にある三角形 $uvw$ の部分には、ほかの頂点が内部にないので、同じ議論で線分 $vz$ は多角形の周と $v$、$z$ 以外で交わらず、対角線である。
段 3(帰納法)。対角線で多角形を切ると、2 つの多角形に分割される。それぞれの頂点の個数は $n$ より少なく $3$ 以上なので、帰納法の仮定から三角形に分割できる。2 つの三角形分割を合わせると、もとの多角形の三角形分割になる。$\square$
主定理の証明の筋は、「どの多角形も、横が $1$ の長方形に切り貼りで直せる」ことである。そのために、平行四辺形 → 三角形 → 長方形の順に、切り貼りの補題を 3 つ用意する。
ex-bg-start では 1 回切るだけで済んだ。平行四辺形が大きく傾いていると、1 回では済まない。
底辺の長さ $a$、高さ $h$ の平行四辺形は、横 $a$・縦 $h$ の長方形と分割合同である。
方針:傾きが小さければ ex-bg-start と同じく 1 回切ればよい。傾きが大きいときは、横に細い帯に切ると、帯 1 本ずつの傾きが小さくなる。
段 1(座標をとる)。合同変換で動かして、平行四辺形の頂点を $O(0,0)$、$A(a,0)$、$(a+d,h)$、$(d,h)$、$d\ge0$ としてよい($d$ は上の辺が右にずれている量)。
底辺を $x$ 軸の上に、残りの頂点を $x$ 軸より上に置くと、頂点は $O(0,0)$、$A(a,0)$、$(a+d,h)$、$(d,h)$ の形になる。$d<0$ なら、裏返し $(x,y)\mapsto(a-x,y)$ でこの平行四辺形はずれ $-d>0$ の平行四辺形に移る。合同な図形は 1 片のまま分割合同なので、推移律(lem-bg-equiv)により $d\ge0$ の場合に帰着する。
$O(0,0)$、$A(2,0)$、$(5,3)$、$(3,3)$ を頂点とする平行四辺形は、$a=2$、$h=3$、$d=3$ である。頂点 $(3,3)$ から真下に下ろした点 $(3,0)$ は底辺 $OA$ の外にあるので、1 回の縦の切り方では長方形にならない。
$\dfrac32\le2$ なので $n=2$ とし、高さ $y=\dfrac32$ の横線で 2 本の帯に切る。
(1) 下の帯は $(0,0)$、$(2,0)$、$\left(\dfrac72,\dfrac32\right)$、$\left(\dfrac32,\dfrac32\right)$ を頂点とし、ずれは $\dfrac32$ である。$x=\dfrac32$ で縦に切り、左の直角三角形を $(2,0)$ だけ動かすと、長方形 $\dfrac32\le x\le\dfrac72$、$0\le y\le\dfrac32$ になる。
(2) 上の帯も同じように長方形 $2\times\dfrac32$ に直し、(1) の長方形の上に載せる。
上の帯は $\left(\dfrac32,\dfrac32\right)$、$\left(\dfrac72,\dfrac32\right)$、$(5,3)$、$(3,3)$ を頂点とする。$x=3$ で縦に切り、左の直角三角形を $(2,0)$ だけ動かすと、長方形 $3\le x\le5$、$\dfrac32\le y\le3$ になる。これを $\left(-\dfrac32,0\right)$ だけ動かして (1) の長方形の上に載せる。
傾きの大きい平行四辺形を高さの半分の横線で 2 本の帯に切り、帯ごとに長方形に直して積む
lem-bg-para と prop-bg-area から、平行四辺形の面積は、どの辺を底辺にとっても「底辺 × 高さ」である。これは次の lem-bg-rect で使う。
1 辺の長さが $b$ で、その辺を底辺としたときの高さが $h$ の三角形は、横 $b$・縦 $\dfrac h2$ の長方形と分割合同である。
三角形を $ABC$ とし、底辺を $AB$(長さ $b$)、$C$ から直線 $AB$ までの距離を $h$ とする。
段 1(中点で切る)。辺 $CA$ の中点を $M$、辺 $CB$ の中点を $N$ とし、線分 $MN$ で切る。上に三角形 $CMN$、下に四角形 $ABNM$ ができる。中点連結定理 により $MN\parallel AB$、$MN=\dfrac b2$ である。$M$ は $CA$ の中点なので、$M$ から直線 $AB$ までの距離は $\dfrac h2$ である。
段 2($N$ のまわりに $180^\circ$ 回す)。三角形 $CMN$ を点 $N$ のまわりに $180^\circ$ 回転する。$N$ は $CB$ の中点なので $C$ は $B$ に移る。$M$ は、直線 $MN$ の上で $N$ について反対側の点 $M'$($NM'=NM=\dfrac b2$)に移る。回した三角形 $BNM'$ と四角形 $ABNM$ は、直線 $NB$ をはさんで反対側にあり、辺 $NB$ でだけ接する。
段 3(平行四辺形になる)。合わせた図形は四角形 $ABM'M$ である。$MM'=MN+NM'=b=AB$ で、$MM'$ は $AB$ に平行なので、1 組の向かい合う辺が平行で長さが等しく、四角形 $ABM'M$ は平行四辺形である。底辺 $AB$ の長さは $b$、高さは段 1 より $\dfrac h2$ である。
段 4(長方形へ)。三角形 $ABC$ は平行四辺形 $ABM'M$ と分割合同(2 片)で、lem-bg-para により平行四辺形は長方形 $b\times\dfrac h2$ と分割合同である。lem-bg-equiv の推移律により、三角形は長方形 $b\times\dfrac h2$ と分割合同である。$\square$
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ の三角形(底辺 $4$、高さ $3$、面積 $6$)で、prf-bg-tri の切り方をたどる。
(1) $M=\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$、$N=\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$ である。三角形 $CMN$ を $N$ のまわりに $180^\circ$ 回すと、点 $X$ は $2N-X$ に移るので、$C(1,3)\to(4,0)=B$、$M\to M'=\left(\dfrac92,\dfrac32\right)$ である。
(2) 平行四辺形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$M'\left(\dfrac92,\dfrac32\right)$、$M\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$ は、底辺 $4$、高さ $\dfrac32$、ずれ $\dfrac12\le4$ なので、$x=\dfrac12$ で 1 回切れば長方形 $\dfrac12\le x\le\dfrac92$、$0\le y\le\dfrac32$ になる。
(3) この長方形 $4\times\dfrac32$ を $x=\dfrac52$ で 2 つの長方形 $2\times\dfrac32$ に切り、一方を他方の上に積むと、長方形 $2\times3$ になる。
面積は $4\times\dfrac32=2\times3=6$ で、三角形の面積 $\dfrac12\times4\times3=6$ と一致する。これで ex-bg-area の (2) の三角形と長方形 $2\times3$ が分割合同であることが、実際の切り方で確かめられた。
三角形を中点を結ぶ線で切って回すと平行四辺形になり、1 回切って長方形、半分に切って積むと横 2・縦 3 の長方形になる
ex-bg-tri の (3) のように、長方形を半分に切って積むと、横を $\dfrac12$ 倍、縦を $2$ 倍にできる。しかし、これだけでは横を $2$ 倍・$\dfrac12$ 倍にしかできない。横を $\sqrt2$ のような長さにするには、平行四辺形を経由する。
横 $a$・縦 $b$ の長方形と正の数 $c$ について、横 $a$・縦 $b$ の長方形は、横 $c$・縦 $\dfrac{ab}c$ の長方形と分割合同である。
方針:辺 $a$ と辺 $c$ をもつ平行四辺形を作り、lem-bg-para を 2 回使う。1 回目は辺 $a$ を底辺として、2 回目は辺 $c$ を底辺として見る。
段 1(縦を $c$ 以下にする)。長方形を $90^\circ$ 回したり、横線で半分に切って横に並べたりして、面積 $ab$ のまま縦が $c$ 以下の長方形と分割合同にできる。以下、はじめから $b\le c$ とする。
長方形 $a\times b$ は、$90^\circ$ 回すと長方形 $b\times a$ と合同である。また、高さ $\dfrac b2$ の横線で 2 枚に切って横に並べると、長方形 $a\times b$ は長方形 $2a\times\dfrac b2$ と分割合同である。$b\le c$ でも $a\le c$ でもないときは、これを $k$ 回くり返して $\dfrac b{2^k}\le c$ にする。どの場合も、lem-bg-equiv の推移律により、面積 $ab$ の長方形で縦が $c$ 以下のものと分割合同になる。以下、はじめから $b\le c$ とする。
横 $2$・縦 $1$ の長方形(面積 $2$)を、1 辺 $c=\sqrt2$ の正方形にする。$b=1\le\sqrt2$ なので段 1 は要らない。
(1) $d=\sqrt{(\sqrt2)^2-1^2}=1$ なので、$\Pi$ は $O(0,0)$、$A(2,0)$、$(3,1)$、$D(1,1)$ を頂点とする平行四辺形である。辺 $OD$ の長さは $\sqrt{1+1}=\sqrt2$ である。長方形 $0\le x\le2$、$0\le y\le1$ から $\Pi$ へは、線分 $(0,0)$–$(1,1)$ で切った直角三角形 $(0,0)$、$(1,1)$、$(0,1)$ を $(2,0)$ だけ平行移動すればよい。移した三角形は $(2,0)$、$(3,1)$、$(2,1)$ になり、残りと合わせて $\Pi$ になる。
(2) 辺 $OD$ を底辺に見る。直線 $OD$ は $y=x$ で、$A(2,0)$ からこの直線までの距離は $\dfrac{\lvert2-0\rvert}{\sqrt2}=\sqrt2=\dfrac{ab}c$ である。$A$ から直線 $OD$ に下ろした垂線の足は $(1,1)=D$ である。
(3) 線分 $AD$ で $\Pi$ を切り、三角形 $OAD$ をベクトル $\overrightarrow{OD}=(1,1)$ だけ平行移動すると、$O\to(1,1)$、$A\to(3,1)$、$D\to(2,2)$ に移る。残りの三角形 $A(2,0)$、$(3,1)$、$D(1,1)$ と合わせると、4 点 $(1,1)$、$(2,0)$、$(3,1)$、$(2,2)$ を頂点とする図形になる。隣り合う頂点を結ぶベクトルは $(1,-1)$、$(1,1)$、$(-1,1)$、$(-1,-1)$ で、長さはどれも $\sqrt2$、隣どうしの内積は $0$ なので、1 辺 $\sqrt2$ の正方形である。
長方形 $2\times1$ は正方形 2 枚を並べたものなので、これは ex-bg-two-squares の別の切り方になっている。
横 2・縦 1 の長方形を平行四辺形に直し、斜めの辺を底辺に見てもう一度切ると、1 辺が 2 の平方根の正方形になる
2 つの多角形 $P$、$Q$ について、次の 2 つは同値である。
(R1) $P$ と $Q$ の面積は等しい。
(R1) $P$ と $Q$ は分割合同である。
(ii) から (i) は prop-bg-area である。(i) から (ii) を示す。
方針:面積 $S$ のどの多角形も、横 $1$・縦 $S$ の長方形と分割合同であることを示す。すると $P$ と $Q$ は同じ長方形と分割合同になり、lem-bg-equiv でつながる。
段 1(三角形に分ける)。lem-bg-triangulate により、$P$ を三角形 $T_1,\dots,T_m$ に分割する。$T_i$ の面積を $s_i$ とすると、(面積 2) により $s_1+\cdots+s_m=S$ である。
段 2(三角形を横 $1$ の長方形に直す)。$T_i$ の 1 辺の長さを $b_i$、その辺を底辺としたときの高さを $h_i$ とする。lem-bg-tri により、$T_i$ は長方形 $b_i\times\dfrac{h_i}2$ と分割合同である。lem-bg-rect を $c=1$ で使うと、長方形 $b_i\times\dfrac{h_i}2$ は長方形 $1\times\dfrac{b_ih_i}2=1\times s_i$ と分割合同である。推移律により $T_i\sim(1\times s_i\text{ の長方形})$ である。
段 3(積む)。長方形 $1\times s_1$、$1\times s_2$、…、$1\times s_m$ を、下から順に
$$
0\le x\le1,\qquad s_1+\cdots+s_{i-1}\le y\le s_1+\cdots+s_i\quad(i=1,\dots,m)
$$
の位置に置く。これらは横線でしか接しないので、長方形 $0\le x\le1$、$0\le y\le S$ の分割になっている。段 2 と lem-bg-union により、$P$ は長方形 $1\times S$ と分割合同である。
段 4(つなぐ)。同じことを $Q$ にも行うと、$Q$ も長方形 $1\times S$ と分割合同である($Q$ の面積も $S$ だから、同じ長方形になる)。対称律と推移律(lem-bg-equiv)により $P\sim Q$ である。$\square$
この証明の切り方は、実際にはさみで行える。ただし片の数はとても多くなることがあり、最も少ない片で切る方法を与えるものではない。
5 点 $(0,0)$、$(4,0)$、$(4,3)$、$(2,1)$、$(0,3)$ を順に結んだ五角形 $P$ を考える。頂点 $(2,1)$ で内側にへこんでいる。
(1) 面積は、靴ひも公式 で
$$
\frac12\bigl\lvert(0\cdot0-4\cdot0)+(4\cdot3-4\cdot0)+(4\cdot1-2\cdot3)+(2\cdot3-0\cdot1)+(0\cdot0-0\cdot3)\bigr\rvert=\frac12\lvert0+12-2+6+0\rvert=8
$$
である。
(2) へこんだ頂点 $(2,1)$ から、$(0,0)$ と $(4,0)$ へ線分を引くと、3 つの三角形に分割される。面積は、三角形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(2,1)$ が $\dfrac12\times4\times1=2$、三角形 $(4,0)$、$(4,3)$、$(2,1)$ が $\dfrac12\times3\times2=3$(縦の辺 $3$ を底辺、$(2,1)$ までの横の距離 $2$ を高さ)、三角形 $(2,1)$、$(0,3)$、$(0,0)$ が $\dfrac12\times3\times2=3$ で、和は $2+3+3=8$ である。
(3) prf-bg-main により、3 つの三角形はそれぞれ長方形 $1\times2$、$1\times3$、$1\times3$ に直り、積むと長方形 $1\times8$ になる。
(4) 1 辺 $2\sqrt2$ の正方形(面積 $8$)も、lem-bg-rect により長方形 $1\times8$ と分割合同である。よって、五角形 $P$ と 1 辺 $2\sqrt2$ の正方形は分割合同である。
凹んだ五角形を 3 つの三角形に分け、それぞれを横 1 の長方形に直して積むと横 1・縦 8 の長方形になる
prf-bg-main の方法で正三角形を正方形に直すと、片の数は多くなる。実は、正三角形と、それと面積の等しい正方形は、わずか 4 片で分割合同にできる。パズル作家の Dudeney が 1902 年に新聞の連載で出した問題で、4 片の切り方は読者の McElroy が見つけ、Dudeney が紹介した。4 片をちょうつがいでつないだまま、正三角形と正方形の間で折りたためることでも知られる(Wei26)。多角形の片 3 つ以下では切れないことも、2024 年に Demaine・Kamata・Uehara が証明した(Wei26)。
1 辺 $2$ の正三角形 $A(0,0)$、$B(2,0)$、$C(1,\sqrt3)$ をとる。面積は $\dfrac12\times2\times\sqrt3=\sqrt3$ なので、同じ面積の正方形の 1 辺は
$$
s=\sqrt{\sqrt3}=\sqrt[4]3\approx1.3161
$$
である。次のように切る。
(1) $D$ を辺 $AB$ の中点 $(1,0)$、$E$ を辺 $BC$ の中点 $\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ とする。
(2) 辺 $CA$ の上に、$EJ=s$ となる点 $J$ をとる。$J\approx(0.2545,\,0.4408)$ である。さらに辺 $CA$ の上に、$J$ から $C$ の方へ $JK=1$(辺の半分)となる点 $K\approx(0.7545,\,1.3068)$ をとる。
(3) 線分 $EJ$ で切る。さらに $D$ と $K$ から直線 $EJ$ に垂線を下ろし、足を $L\approx(0.7874,\,0.6227)$、$M\approx(0.9671,\,0.6841)$ として、線分 $DL$、$KM$ で切る。
片は、四角形 $ADLJ$、四角形 $DBEL$、四角形 $ECKM$、三角形 $KJM$ の 4 つである($L$ は辺 $JM$ の上にある)。面積は順に約 $0.4057$、$0.6808$、$0.3979$、$0.2477$ で、和は $\sqrt3\approx1.7321$ である。
(4) 四角形 $DBEL$ はそのままにし、四角形 $ADLJ$ を $D$ のまわりに $180^\circ$ 回し、四角形 $ECKM$ を $E$ のまわりに $180^\circ$ 回す。三角形 $KJM$ は $K$ のまわりに $180^\circ$ 回してから、四角形 $ECKM$ と一緒に $E$ のまわりに $180^\circ$ 回す。すると 4 片は、$L\approx(0.7874,\,0.6227)$、$(1.2126,\,-0.6227)$、$(2.4581,\,-0.1975)$、$(2.0329,\,1.0480)$ を頂点とする正方形を作る。この正方形の辺の長さはどれも $s\approx1.3161$ である。
(3) の長さの間には $DL+KM=s$、$EM=LJ$ という関係がある($DL=KM\approx0.6580$、$EM=LJ\approx0.5631$)。これらは座標を文字のまま計算して厳密に確かめられる。この記事では数値で示すにとどめる。
1 辺 2 の正三角形を線分 EJ と 2 本の垂線 DL、KM で 4 片に切る
4 片を D、E、K のまわりに半回転させて並べ直すと、同じ面積の正方形になる
図 7 と図 8 の 4 片は、同じ色どうしが対応している。$D$、$E$、$K$ の 3 点を「ちょうつがい」にして片を回すと、正三角形と正方形の間を行き来できる。
空間でも、2 つの多面体が「有限個の多面体に切って並べ直すと移り合う」ことを分割合同という(錐体の体積とHilbertの第3問題)。平面と空間では、答えが大きく違う。
| 平面の多角形 | 空間の多面体 | |
|---|---|---|
| 分割合同なら大きさが等しいか | はい(面積。prop-bg-area) | はい(体積) |
| 大きさが等しければ分割合同か | はい(thm-bg-main) | いいえ(立方体と正四面体) |
| 分割合同を決める量 | 面積だけ | 体積と Dehn 不変量 |
| 基本の片 | 三角形 → 長方形 | 四面体。ただし直方体に直せるとは限らない |
thm-bg-main の仮定を 1 つずつ外すと、結論が成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 平面の図形である | 体積の等しい立方体と正四面体 | 大きさが等しければ分割合同 |
| 多角形である(周が線分) | 半径 $1$ の円板と 1 辺 $\sqrt\pi$ の正方形 | 面積が等しければ多角形の片で分割合同 |
| 片を回転・裏返しで動かしてよい | 1 辺 $2$ の正三角形と、面積 $\sqrt3$ の正方形 | 平行移動だけで分割合同 |
体積の等しい立方体と正四面体は、有限個の多面体に切って並べ直しても移り合わない。これは Hilbert が 1900 年に問題として出し、Dehn が解いた(Hilbert の第 3 問題)。証明の鍵は、二面角と辺の長さから作る量(Dehn 不変量)が、切り貼りで変わらないことである。証明は 錐体の体積とHilbertの第3問題 で扱う。平面で lem-bg-tri のように三角形を長方形に直せたのに対し、空間では正四面体を直方体に直すことができない。
半径 $1$ の円板 $K$(面積 $\pi$)と、1 辺 $\sqrt\pi$ の正方形(面積 $\pi$)は、面積が等しい。しかし $K$ は有限個の多角形に分割できないので、def-bg-scissors の意味で分割合同にならない。
理由の要点:円周の上の点は、どれも片の周の上にある。片の周の線分は円周と高々 $2$ 点でしか交わらないので、有限個の片では円周の無限個の点を覆いきれない。
$K$ が多角形 $P_1,\dots,P_m$ に分割されたとする。円周の上の点 $x$ は、ある $P_i$ に入る。$x$ が $P_i$ の内部にあれば、$x$ のまわりの小さな円板が $P_i\subset K$ に入るはずだが、$x$ のすぐ外側の点は $K$ に入らないので、そうはならない。よって $x$ は $P_i$ の周、つまり有限本の線分のどれかの上にある。$K$ に含まれる線分は、円周と高々 $2$ 点でしか交わらない(線分の内側の点はすべて、円の中心からの距離が両端の大きい方より小さく、半径 $1$ より小さい)。すると、円周の上にあるのは有限個の点だけになるが、円周には無限個の点があるので矛盾する。
片を平行移動だけで動かす(回転も裏返しもしない)分割合同を考える。Hadwiger と Glur は 1951 年に、平行移動だけで分割合同になるための条件を、次の量で与えた(HN06 の定理 1.5。この記事では証明しない)。長さ $1$ のベクトル $v$ に対し、多角形の辺のうち $v$ に垂直なものの長さを、$v$ が外向きの法線なら正、内向きなら負として足した量 $\Phi(v)$ である。面積の等しい 2 つの多角形が平行移動だけで分割合同になるのは、すべての $v$ について $\Phi(v)$ が等しいときに限る。
正三角形 $A(0,0)$、$B(2,0)$、$C(1,\sqrt3)$ と $v=(0,-1)$ では、$v$ に垂直な辺は辺 $AB$ だけで、$v$ はその外向きの法線なので $\Phi(v)=2$ である。正方形は向かい合う辺が平行で長さが等しく、一方の外向きの法線が $v$ なら他方は $-v$ なので、どの $v$ でも $\Phi(v)=0$ である。よって、正三角形はどの向きに置いた正方形とも、平行移動だけでは分割合同にならない。ex-bg-dudeney で片を $180^\circ$ 回していたのは、このためである。平行移動に $180^\circ$ 回転を加えれば、面積の等しい 2 つの多角形はいつも分割合同になることも知られている(HN06)。
thm-bg-main は、「多角形を切り貼りで移り合うものどうしに分類すると、分類は面積という 1 つの数で決まる」と言い換えられる。大学では、このように切り貼りで変わらない量(不変量)で図形を分類する見方をする。空間では体積のほかに Dehn 不変量が、平行移動だけの切り貼りでは ex-bg-cx-translation の $\Phi$ が、面積に加わる不変量になる。
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