Kolmogorov–Arnoldの表現定理(Kolmogorov–Arnold representation theorem)とは、連続関数 $\varphi_{p,q}\colon[0,1]\to\mathbb{R}$ を適切に選べば、$[0,1]^n$ 上のどの連続関数 $f$ も、$\mathbb{R}$ 上の連続関数 $\Psi_q$ で $f(x)=\sum_{q=0}^{2n}\Psi_q\bigl(\sum_{p=1}^{n}\varphi_{p,q}(x_p)\bigr)$ と表せるという定理である。内側の関数は $f$ によらず、$f$ ごとに選ぶのは外側の $2n+1$ 個だけである。証明では、どの尺度でも色分けした小さな箱を離れた区間へ写す内側の関数を作り、誤差を一定の割合で減らす近似を繰り返して外側の関数を級数で得る。
Kolmogorov–Arnold の表現定理(Kolmogorov–Arnold representation theorem)は、立方体 $[0,1]^n$ 上の多変数の連続関数がすべて、1 変数の連続関数と足し算だけを組み合わせて書けることを述べる定理である。$[0,1]^n$ 上の連続関数 $f$ は
$$
f(x_1,\dots,x_n)=\sum_{q=0}^{2n}\Psi_q\Bigl(\sum_{p=1}^{n}\varphi_{p,q}(x_p)\Bigr)
$$
の形に表せる。しかも内側の $n(2n+1)$ 個の関数 $\varphi_{p,q}$ は $n$ だけで決めておけて、$f$ によらない。$f$ に合わせて選ぶのは、外側の $2n+1$ 個の 1 変数関数 $\Psi_q$ だけである。名前は A. N. Kolmogorov と V. I. Arnold にちなむ。多変数の関数を少ない変数の関数の合成で表せるかという Hilbert の第 13 問題に関連して知られ、連続関数の範囲では、変数を 1 つずつに分けた関数と足し算で足りることを示している(GO03 pp. 33–34)。
この記事では主定理を完全に証明する。証明は 2 段に分かれる。第 1 段では、内側の関数を「どれほど細かい尺度で見ても、色分けした小さな箱を互いに離れた区間に写す」ように作る。第 2 段では、その性質を使って、任意の $f$ について一様ノルムを一定の割合で減らす近似を繰り返し、外側の関数を級数として作る。
この記事を通じて $n\ge1$ を固定し、
$$
K:=[0,1]^n,\qquad r:=2n+1
$$
とおく。$K$ の点を $x=(x_1,\dots,x_n)$ と書き、距離は Euclid 距離、集合 $B\subset K$ の直径を $\operatorname{diam}B$ と書く。$K$ は $\mathbb{R}^n$ の有界閉集合なのでコンパクトである(コンパクト空間 の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」)。有界な関数 $g$ の一様ノルムを $\|g\|_\infty:=\sup|g|$ とする。添字 $q\in\{0,1,\dots,2n\}$ を色と呼ぶ。
連続関数 $\varphi_{p,q}\colon[0,1]\to\mathbb{R}$($1\le p\le n$、$0\le q\le2n$)の族を内関数の族といい、各色 $q$ について
$$
u_q(x):=\sum_{p=1}^{n}\varphi_{p,q}(x_p)\qquad(x\in K)
$$
とおく。連続関数 $f\colon K\to\mathbb{R}$ に対し、連続関数 $\Psi_0,\dots,\Psi_{2n}\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$(外関数)があって、すべての $x\in K$ で
$$
f(x)=\sum_{q=0}^{2n}\Psi_q\bigl(u_q(x)\bigr)
$$
となるとき、これを $f$ のこの内関数の族による表示という。
$n\ge1$ とする。連続関数 $\varphi_{p,q}\colon[0,1]\to\mathbb{R}$($1\le p\le n$、$0\le q\le2n$)の族で、次をみたすものが存在する:任意の連続関数 $f\colon[0,1]^n\to\mathbb{R}$ に対して、連続関数 $\Psi_0,\dots,\Psi_{2n}\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ があり、すべての $x\in[0,1]^n$ で
$$
f(x_1,\dots,x_n)=\sum_{q=0}^{2n}\Psi_q\Bigl(\sum_{p=1}^{n}\varphi_{p,q}(x_p)\Bigr)
$$
が成り立つ。
下の def-ka-separating の意味で、すべての $\delta>0$ について分離被覆をもつ内関数の族が存在する(prop-ka-inner)。そのような族を 1 つとると、prop-ka-reduction により、任意の連続関数 $f\colon[0,1]^n\to\mathbb{R}$ はこの族による表示をもつ。内関数の族は $f$ を見る前に選んであるので、主張が従う。$\square$
量化の順序が要点である。内関数の族は「すべての $f$」より前に選ばれ、$f$ ごとに取り替えるのは外関数だけである。外関数は $f$ から一意には決まらない(ex-ka-nonunique)。また外関数は $\mathbb{R}$ 全体で連続であり、像 $u_q(K)$ の上だけで定義されたものではない。
証明に使う性質を定める。
内関数の族と $\delta>0$ について、次をみたす有限個の空でないコンパクト集合 $B_{q,j}\subset K$ と有限個の閉区間 $J_{q,j}\subset\mathbb{R}$($0\le q\le2n$、$j$ は色ごとに有限個)があるとき、族は尺度 $\delta$ の分離被覆をもつという。
同じ色の箱は、$u_q$ で互いに交わらない区間に写る。したがって $u_q(x)$ の値を見れば、$x$ が色 $q$ のどの箱にいるかが分かる。主定理の証明は次の 2 つの命題からなる。
内関数の族がすべての $\delta>0$ について分離被覆をもつとし、$\theta:=\dfrac{4n+1}{4n+2}$ とおく。このとき任意の連続関数 $h\colon K\to\mathbb{R}$ について、$M:=\|h\|_\infty$ とすると、連続関数 $v_0,\dots,v_{2n}\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ で
$$
\|v_q\|_\infty\le\frac{M}{r}\quad(0\le q\le2n),\qquad \Bigl\|h-\sum_{q=0}^{2n}v_q\circ u_q\Bigr\|_\infty\le\theta M
$$
をみたすものがある。
$M=0$ なら $v_q=0$ でよい。$M>0$ とし、$\varepsilon:=\dfrac1{2r}$ とおく。$h$ は $K$ 上で一様連続なので(一様連続 の定理「Heine–Cantorの定理」)、$\delta>0$ を $|x-y|<\delta$ なら $|h(x)-h(y)|<\varepsilon M$ となるようにとる。この $\delta$ の分離被覆 $B_{q,j}$、$J_{q,j}$ をとり、各 $B_{q,j}$ から点 $z_{q,j}$ を 1 つ選ぶ。
外関数の候補. 色 $q$ を固定する。色 $q$ の箱が 1 つもなければ $v_q:=0$ とする(このとき色 $q$ はどの $x$ についても下の悪い色である)。区間 $J_{q,j}$ は有限個で互いに交わらない閉区間なので、左から順に並べられる。$v_q$ を、各 $J_{q,j}$ の上で定数 $h(z_{q,j})/r$、隣り合う 2 つの区間のあいだでは両端の値を結ぶ 1 次関数、すべての区間より左(右)では最も左(右)の区間の値に等しい定数と定める。$v_q$ は有限個の区間でつないだ連続関数で、その値はどれも $h(z_{q,j})/r$ の間にあるから $\|v_q\|_\infty\le M/r$ である。
誤差の評価. $x\in K$ を固定し、$x$ を含む箱 $B_{q,j}$ がある色 $q$ をよい色、そうでない色を悪い色と呼ぶ。よい色の個数を $k$ とすると、分離被覆の 3 により $k\ge n+1$、したがって悪い色は $r-k\le n$ 個である。
よい色 $q$ について、$x\in B_{q,j}$ とすると $u_q(x)\in J_{q,j}$ なので $v_q(u_q(x))=h(z_{q,j})/r$ である。同じ色の $J$ は交わらないので、この $j$ は $u_q(x)$ だけで決まる。$|x-z_{q,j}|\le\operatorname{diam}B_{q,j}<\delta$ から
$$
\Bigl|v_q(u_q(x))-\frac{h(x)}{r}\Bigr|=\frac{|h(z_{q,j})-h(x)|}{r}<\frac{\varepsilon M}{r}.
$$
悪い色 $q$ については、$|v_q|\le M/r$ と $|h(x)|\le M$ から $\bigl|v_q(u_q(x))-h(x)/r\bigr|\le 2M/r$ である。$h(x)=\sum_q h(x)/r$ と書いて足し合わせると
$$
\Bigl|h(x)-\sum_{q}v_q(u_q(x))\Bigr|\le k\cdot\frac{\varepsilon M}{r}+(r-k)\cdot\frac{2M}{r}\le\varepsilon M+\frac{2n}{2n+1}M=\frac{4n+1}{4n+2}M.
$$
ここで $k\le r$ と $r-k\le n$ を使った。$x$ は任意なので主張が従う。$\square$
悪い色の箱の外での $v_q$ の値は何も制御していない。それでも誤差が $M$ より真に小さくなるのは、よい色が過半数($2n+1$ 色のうち $n+1$ 色以上)を占めるからである。
内関数の族がすべての $\delta>0$ について分離被覆をもつなら、任意の連続関数 $f\colon K\to\mathbb{R}$ はこの族による表示をもつ。
$h_0:=f$ とし、$m\ge0$ について $h_m$ が連続関数として定まったら、lem-ka-step を $h_m$ に当てはめて得た外関数の候補を $v_{q,m}$ とし、
$$
h_{m+1}:=h_m-\sum_{q=0}^{2n}v_{q,m}\circ u_q
$$
とおく。$u_q$ と $v_{q,m}$ は連続なので $h_{m+1}$ も連続である。帰納法により $\|h_m\|_\infty\le\theta^m\|f\|_\infty$、$\|v_{q,m}\|_\infty\le\theta^m\|f\|_\infty/r$ である。
$0\le\theta<1$ なので $\sum_m\theta^m\|f\|_\infty/r$ は収束し、一様収束 の定理「Weierstrassの優級数判定法」により $\Psi_q:=\sum_{m\ge0}v_{q,m}$ は $\mathbb{R}$ 上で一様収束する。各項は連続なので、同記事の定理「連続関数の一様極限の連続性」により $\Psi_q$ は $\mathbb{R}$ 上で連続である。
定義を足し合わせると、各 $N$ について
$$
f-\sum_{q=0}^{2n}\Bigl(\sum_{m=0}^{N-1}v_{q,m}\Bigr)\circ u_q=h_N
$$
であり、$\|h_N\|_\infty\le\theta^N\|f\|_\infty\to0$ である。左辺は各 $x$ で $f(x)-\sum_q\Psi_q(u_q(x))$ に収束するので、$f=\sum_q\Psi_q\circ u_q$ が $K$ 上で成り立つ。$\square$
内関数は、区分的に 1 次の関数の列の一様極限として作る。各段で使う道具は 3 つある。区間を色ごとに少しずつずらして刻むこと(lem-ka-colored-cover)、有限個の値を少しずらして和を互いに異ならせること(lem-ka-perturb)、前の段の関数を、刻んだ区間の上で定数になるように少しだけ変えること(lem-ka-flatten)である。
整数 $N\ge2$ について $s:=1/N$、$d:=s/(3n)$ とし、色 $q$ ごとに $\mathbb{R}$ の開集合
$$
G_q:=\bigcup_{j\in\mathbb{Z}}\bigl(js+qd,\ js+(q+1)d\bigr)
$$
を考える。
1:$0\le q\le 2n\le3n-1$ なので $(q+1)d\le3nd=s$ であり、開区間 $(js+qd,js+(q+1)d)$ は、$(js,(j+1)s)$ を長さ $d$ の $3n$ 個の開区間に分けたうちの $q$ 番目($0$ から数える)に含まれる。色が違えば番目が違い、$j$ が違えば $(js,(j+1)s)$ が交わらないので、$G_q$ と $G_{q'}$ は交わらない。
2:要点は、$0$ と $1$ が $G_q$ に属さないことである。
$\mathbb{R}\setminus G_q$ は閉区間 $[js+(q+1)d,\ (j+1)s+qd]$($j\in\mathbb{Z}$)の互いに交わらない和で、各区間の長さは $s-d$、隣り合う区間のあいだは $G_q$ の長さ $d$ の開区間である。$G_q$ の $j=0$ の開区間の左端は $qd\ge0$、$j=-1$ の開区間の右端は $-s+(q+1)d\le0$ なので、どちらも $0$ を含まず、ほかの $j$ の開区間は $0$ から離れている。よって $0\notin G_q$ であり、$1=Ns$ も同じ理由で $G_q$ に属さない。$G_q$ の各開区間は連結で $0$ も $1$ も含まないので、$[0,1]$ と交わるものは $(0,1)$ に含まれる。したがって閉区間 $[js+(q+1)d,(j+1)s+qd]$ と $[0,1]$ の共通部分のうち空でないもの($-1\le j\le N$ の有限個)が $A_{q,a}$ で、主張の性質をもつ。
色の数を $2n+1$ にしたのは 3 のためである。$n$ 個の座標がそれぞれ別の色の隙間に落ちても、その色は $n$ 個までで、$n+1$ 色が残る。これが lem-ka-step の「よい色が過半数」を支えている。
$a=(a_1,\dots,a_M)\in\mathbb{R}^M$、$\eta>0$ とし、$\ell_1,\dots,\ell_R$ を $\mathbb{R}^M$ 上の $0$ でない 1 次形式とする。このとき $\lambda\in\mathbb{R}^M$ で、すべての $\nu$ について $|\lambda_\nu-a_\nu|<\eta$、すべての $\rho$ について $\ell_\rho(\lambda)\ne0$ となるものがある。
要点:$\lambda=(a_1+t,a_2+t^2,\dots,a_M+t^M)$ とずらすと、各 $\ell_\rho(\lambda)$ は $t$ の $0$ でない多項式になり、根は有限個である。
$t\in\mathbb{R}$ について $\lambda(t):=(a_1+t,\ a_2+t^2,\ \dots,\ a_M+t^M)$ とおく。$\ell_\rho(x)=\sum_\nu c_{\rho,\nu}x_\nu$ と書くと $P_\rho(t):=\ell_\rho(\lambda(t))=\ell_\rho(a)+\sum_{\nu=1}^{M}c_{\rho,\nu}t^\nu$ であり、$0$ でない係数 $c_{\rho,\nu}$ が $t^\nu$ の係数として残るので、$P_\rho$ は $0$ でない多項式である。$0$ でない多項式の根は有限個なので、開区間 $(0,\min\{1,\eta\})$ から、どの $P_\rho$ の根でもない $t$ を選べる。このとき $|\lambda_\nu(t)-a_\nu|=t^\nu\le t<\eta$ である。$\square$
以下、区分 1 次関数とは、$[0,1]$ を有限個の閉区間に分けて各区間の上で 1 次関数になる連続関数をいう。区分 1 次関数 $g$ は、傾きの絶対値の最大を $L$ とすると $|g(x)-g(y)|\le L|x-y|$ をみたす($x< y$ のあいだの分点で差を分けて足せばよい)。
$g_{p,q}$($1\le p\le n$、$0\le q\le2n$)を区分 1 次関数とし、ある $L\ge0$ についてすべてが $|g_{p,q}(x)-g_{p,q}(y)|\le L|x-y|$ をみたすとする。$\eta>0$ と整数 $N\ge2$ が $2L/N\le\eta$ をみたすとし、$A_{q,a}$、$B_{q,\alpha}$ を lem-ka-colored-cover の $N$ についてのものとする。このとき区分 1 次関数 $g'_{p,q}$ で次をみたすものがある。
要点:各区間 $A_{q,a}$ の左端での $g_{p,q}$ の値を lem-ka-perturb で $\eta$ 未満だけずらして定数値 $\lambda_{p,q,a}$ とし、区間のあいだを 1 次関数でつなぐ。ずれは「値のずらし $\eta$」と「$L$ と刻み幅の積」で押さえられる。
$A_{q,a}$ の左端を $e_{q,a}$ とする。有限個の実数 $\lambda_{p,q,a}$ を変数とし、基準値を $g_{p,q}(e_{q,a})$ とする。色 $q$ と相異なる多重添字 $\alpha\ne\alpha'$ ごとに、1 次形式 $\ell(\lambda):=\sum_{p}\lambda_{p,q,\alpha_p}-\sum_{p}\lambda_{p,q,\alpha'_p}$ を考える。$\alpha_{p_0}\ne\alpha'_{p_0}$ となる $p_0$ をとると、変数 $\lambda_{p_0,q,\alpha_{p_0}}$ は第 1 の和の $p=p_0$ の項にだけ現れ(最初の添字が $p_0$ の変数は $p=p_0$ の項にしか現れない)、第 2 の和には現れないので、その係数は $1$ である。よって $\ell\ne0$ である。この有限個の 1 次形式に lem-ka-perturb を当てはめ、$|\lambda_{p,q,a}-g_{p,q}(e_{q,a})|<\eta$ で、3 をみたす値を選ぶ。
$g'_{p,q}$ を、各 $A_{q,a}$ の上で $\lambda_{p,q,a}$、隣り合う $A_{q,a}$ と $A_{q,a+1}$ のあいだで両端の値を結ぶ 1 次関数と定める。lem-ka-colored-cover の 2 により $[0,1]$ はこれらの区間で覆われるので、$g'_{p,q}$ は区分 1 次関数で、1 をみたす。
2 を示す。$x\in A_{q,a}$ なら $|x-e_{q,a}|\le s$ なので、$|g'_{p,q}(x)-g_{p,q}(x)|\le|\lambda_{p,q,a}-g_{p,q}(e_{q,a})|+Ls<\eta+Ls$ である。$x$ が $A_{q,a}$ と $A_{q,a+1}$ のあいだにあれば、$|x-e_{q,a}|\le s+d\le2s$、$|x-e_{q,a+1}|\le d\le s$ なので、$\lambda_{p,q,a}$ と $\lambda_{p,q,a+1}$ はどちらも $g_{p,q}(x)$ との差が $\eta+2Ls$ 未満であり、その間の値 $g'_{p,q}(x)$ も同じである。$2Ls=2L/N\le\eta$ なので、どの場合も差は $2\eta$ 未満である。$\square$
すべての $\delta>0$ について分離被覆をもつ内関数の族が存在する。
再帰. 区分 1 次関数の族 $\varphi^{(k)}_{p,q}$ と正の数 $b_k$($k=0,1,2,\dots$)を作る。$\varphi^{(0)}_{p,q}:=0$、$b_0:=1$ とする。$k\ge1$ で $\varphi^{(k-1)}$ と $b_{k-1}$ ができたとし、$L$ を族 $\varphi^{(k-1)}_{p,q}$ に共通の Lipschitz 定数(傾きの絶対値の最大)、$\eta_k:=b_{k-1}/32$ とする。整数 $N_k\ge2$ を
$$
\frac{2L}{N_k}\le\eta_k,\qquad\frac{\sqrt n}{N_k}<2^{-k}
$$
となるようにとり、lem-ka-flatten を $g=\varphi^{(k-1)}$、$\eta=\eta_k$、$N=N_k$ に当てはめて得た $g'$ を $\varphi^{(k)}$ とする。この段の区間・箱・値を $A^{(k)}_{q,a}$、$B^{(k)}_{q,\alpha}$、$\lambda^{(k)}_{p,q,a}$、$c^{(k)}_{q,\alpha}$ と書く。
$$
\|\varphi^{(k)}_{p,q}-\varphi^{(k-1)}_{p,q}\|_\infty<2\eta_k=\frac{b_{k-1}}{16}
$$
である。同じ色の相異なる箱の $c^{(k)}$ の差の絶対値の最小を $D_k>0$ とし(比べる組がなければ $D_k:=1$)、
$$
b_k:=\min\Bigl\{\frac{b_{k-1}}2,\ \frac{D_k}{2n}\Bigr\}
$$
とおく。$b_k$ は第 $k$ 段の値が決まったあとに決まり、後の段の関数を使わない。
極限. $b_{k+j}\le2^{-j}b_k$ なので
$$
\sum_{i=k+1}^{\infty}\|\varphi^{(i)}_{p,q}-\varphi^{(i-1)}_{p,q}\|_\infty\le\sum_{j=0}^{\infty}\frac{b_{k+j}}{16}\le\frac{b_k}{8}.
$$
とくに級数 $\sum_{i\ge1}(\varphi^{(i)}_{p,q}-\varphi^{(i-1)}_{p,q})$ は 一様収束 の定理「Weierstrassの優級数判定法」により $[0,1]$ 上で一様収束する。その第 $k$ 部分和が $\varphi^{(k)}_{p,q}$ なので、$\varphi^{(k)}_{p,q}$ は一様収束し、極限 $\varphi_{p,q}$ は連続で(同記事の定理「連続関数の一様極限の連続性」)、すべての $k$ で $\|\varphi_{p,q}-\varphi^{(k)}_{p,q}\|_\infty\le b_k/8$ である。
分離被覆. $\delta>0$ を与え、$2^{-k}<\delta$ となる $k\ge1$ をとる。$x\in B^{(k)}_{q,\alpha}$ なら $\varphi^{(k)}_{p,q}(x_p)=\lambda^{(k)}_{p,q,\alpha_p}$ なので $\sum_p\varphi^{(k)}_{p,q}(x_p)=c^{(k)}_{q,\alpha}$ であり、
$$
\bigl|u_q(x)-c^{(k)}_{q,\alpha}\bigr|\le\sum_{p=1}^{n}\|\varphi_{p,q}-\varphi^{(k)}_{p,q}\|_\infty\le\frac{nb_k}{8}.
$$
そこで $J^{(k)}_{q,\alpha}:=\bigl[c^{(k)}_{q,\alpha}-nb_k/8,\ c^{(k)}_{q,\alpha}+nb_k/8\bigr]$ とおく。同じ色の相異なる $\alpha,\alpha'$ について中心の距離は $D_k$ 以上であり、$D_k\ge2nb_k$ は半径の和 $nb_k/4$ より大きいので、$J^{(k)}_{q,\alpha}$ と $J^{(k)}_{q,\alpha'}$ は交わらない。箱 $B^{(k)}_{q,\alpha}$ は空でないコンパクト集合で、直径は $\sqrt n/N_k$ 以下で $\sqrt n/N_k<2^{-k}<\delta$ であり、lem-ka-colored-cover の 3 により $n+1$ 重の被覆の条件もみたす。よって極限の族は尺度 $\delta$ の分離被覆をもつ。$\delta$ は任意である。$\square$
各段の関数は前の段の関数の近くにあり、ずれの合計が、その段で得た値の分離の幅より十分小さくなるように $b_k$ を選んでいる。こうして、ある段で分けた箱は、極限の関数でも分かれたまま残る。どの段の構成にも $f$ は現れないので、極限の内関数はすべての $f$ に共通である。これで thm-ka-main の証明に使った 2 つの命題がそろった。
$n=1$ では $r=3$ で、主定理は易しい。$\varphi_{1,0}(t):=t$、$\varphi_{1,1}=\varphi_{1,2}:=0$ とする。連続関数 $f\colon[0,1]\to\mathbb{R}$ に対し、$C(t):=\min\{\max\{t,0\},1\}$($[0,1]$ への切り詰め)とおいて $\Psi_0:=f\circ C$、$\Psi_1=\Psi_2:=0$ とすれば、$\Psi_0$ は $\mathbb{R}$ 上で連続で、$x\in[0,1]$ では $\Psi_0(x)=f(x)$ である。内関数は $f$ によらない。主定理の内容は $n\ge2$ にある。
$[0,1]^2$ 上の $f(x,y)=xy$ は
$$
xy=\frac14(x+y)^2-\frac14(x-y)^2
$$
と書けるので、内関数 $x,\ y$(第 1 項)と $x,\ -y$(第 2 項)、外関数 $t\mapsto t^2/4$ と $t\mapsto-t^2/4$ による 2 項の表示をもつ。ただし、この内関数は積という 1 つの関数のために選んだものである。主定理の内関数はすべての連続関数に共通でなければならず、このような個別の式とは役割が違う。2 項より少なくはできない(ex-ka-counterexamples の 2 行目)。
$f=\sum_q\Psi_q\circ u_q$ を表示とし、$c\ne0$ を定数とする。$\Psi'_0:=\Psi_0+c$、$\Psi'_1:=\Psi_1-c$、$\Psi'_q:=\Psi_q$($q\ge2$)とおけば、どれも連続で $\sum_q\Psi'_q\circ u_q=f$ であり、$\Psi'_0\ne\Psi_0$ である。したがって内関数を固定しても、外関数は $f$ から一意には決まらない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ の連続性 | $x_1>1/2$ で $1$、$x_1\le1/2$ で $0$ となる $f$ | $f$ の表示の存在 |
| 外関数の個数 $2n+1$($n=2$ で項を $1$ つにする) | $f(x,y)=xy$ | 連続な $\varphi_1,\varphi_2,\Psi$ で $f(x,y)=\Psi(\varphi_1(x)+\varphi_2(y))$ と書けること |
| 外関数を通すこと($\Psi_q$ を恒等写像に限る) | $f(x,y)=xy$ | $f$ が $\sum_q u_q$ の形に書けること |
1 行目. 連続関数 $\Psi_q$ と $u_q$ の合成の和はつねに連続なので、不連続な $f$ は表示をもたない。
2 行目. 連続な $\varphi_1,\varphi_2\colon[0,1]\to\mathbb{R}$ と $\Psi\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ で、$[0,1]^2$ 上 $xy=\Psi(\varphi_1(x)+\varphi_2(y))$ となったとする。$x=1$ とすると $y=\Psi(\varphi_1(1)+\varphi_2(y))$ なので、$\varphi_2(y)=\varphi_2(y')$ なら $y=y'$ であり、$\varphi_2$ は単射である。単射な連続関数は狭義単調なので(中間値の定理)、$\varphi_2([0,1])$ は閉区間で、$\varphi_2(1/2)$ はその内点である。$\varphi_1$ は $0$ で連続なので、十分小さい $x>0$ について $\varphi_2(1/2)+\varphi_1(x)-\varphi_1(0)\in\varphi_2([0,1])$、すなわちある $y'\in[0,1]$ で $\varphi_1(x)+\varphi_2(1/2)=\varphi_1(0)+\varphi_2(y')$ となる。すると
$$
\frac x2=f\Bigl(x,\frac12\Bigr)=\Psi\bigl(\varphi_1(x)+\varphi_2(1/2)\bigr)=\Psi\bigl(\varphi_1(0)+\varphi_2(y')\bigr)=f(0,y')=0
$$
となり、$x>0$ に反する。
3 行目. $\Psi_q$ が恒等写像なら $\sum_qu_q(x,y)=g_1(x)+g_2(y)$($g_p:=\sum_q\varphi_{p,q}$)であり、この形の関数は $F(1,1)-F(1,0)-F(0,1)+F(0,0)=0$ をみたす。$f(x,y)=xy$ ではこの値が $1$ である。
2 行目は、1 変数の関数の和を 1 つの外関数に通すだけでは、2 変数の積すら表せないことを示している。主定理は、項を $2n+1$ 個に増やせば、外関数だけを取り替えてすべての連続関数が表せることを述べている。
近似との違い. Weierstrassの近似定理 や Stone–Weierstrassの定理 は、多変数の連続関数を多項式などで一様に近似できることを述べる。この定理は近似でなく厳密な等式を与える。ただし証明の中身は近似の繰り返しで、lem-ka-step の近似を外関数の級数に積み上げ、誤差が等比級数的に $0$ に近づくことで等式を得ている。
内関数の作り方. 内関数は区分 1 次関数の一様極限として得られるが、極限そのものは区分 1 次とは限らない。各段で区間を細かく刻み直し、値を少しずつずらすので、極限は一般に複雑な関数になる。構成で使ったのは、多項式の根が有限個であること、一様収束の完備性(完備距離空間)、Lipschitz連続 な区分 1 次関数の評価だけである。
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