Taylorの円(Taylor circle)とは、直角三角形でない三角形 $ABC$ で、各頂点から向かいの辺(を含む直線)に下ろした垂線の足 $H_A$、$H_B$、$H_C$ のそれぞれから、さらに残りの 2 辺(を含む直線)に垂線を下ろしてできる 6 つの足を通る円である。$H_A$ から 2 辺に下ろした足を結ぶ直線は $BC$ の反平行線(角 $A$ の二等分線で折り返すと $BC$ に平行になる直線)で、$H_B$ から $AB$ に、$H_C$ から $AC$ に下ろした足を結ぶ直線は $BC$ に平行である。この平行線と反平行線の組から、各頂点で方べきの定理の逆の条件がそろい、6 点が 1 つの円の上にあることが示される。鈍角三角形で垂線の足が辺の延長の上にきても成り立つ。九点円とは別の円で、中心は外心と類似重心を結ぶ直線の上にある。
前提知識: Lemoineの円, 三角形の垂心, 方べきの定理(高校数学), ベクトルの内積(高校数学)
三角形の各頂点から向かいの辺に垂線を下ろすと、3 つの垂線の足ができる(3 本の垂線は垂心で交わる。三角形の垂心)。それぞれの足から、今度は残りの 2 辺に垂線を下ろしてみる。足 1 つにつき 2 つ、全部で 6 つの点が辺の上にできる。この 6 点を座標で調べる。
$A(2,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ の三角形をとる。辺 $AB$ は直線 $y=2x$、辺 $CA$ は直線 $x+y=6$、辺 $BC$ は $x$ 軸である。3 つの角はどれも鋭角である($\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=8$、$\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}=12$、$\overrightarrow{CA}\cdot\overrightarrow{CB}=24$ がどれも正)。
(1) 垂線の足。$A$ から $x$ 軸に下ろした足は $H_A(2,0)$ である。$B$ から直線 $x+y=6$ に下ろした足は、$B$ から方向 $(1,1)$(直線の法線の向き)に進んだ点 $(s,s)$ で $2s=6$ となるものなので $H_B(3,3)$ である。$C$ から直線 $y=2x$ に下ろした足は、方向 $(1,2)$ への正射影で、$\dfrac{(6,0)\cdot(1,2)}{1^2+2^2}(1,2)=\dfrac65(1,2)$ より $H_C\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$ である。
(2) $H_A(2,0)$ から 2 辺へ。直線 $y=2x$ への足は $\dfrac{(2,0)\cdot(1,2)}5(1,2)=\left(\dfrac25,\dfrac45\right)$ で、これを $F_a$ とする。直線 $x+y=6$ への足は $(2,0)+s(1,1)$ で $2+2s=6$ となる点 $(4,2)$ で、これを $E_a$ とする。
(3) $H_B(3,3)$ から 2 辺へ。$x$ 軸への足は $D_b(3,0)$、直線 $y=2x$ への足は $\dfrac{(3,3)\cdot(1,2)}5(1,2)=\dfrac95(1,2)$ で $F_b\left(\dfrac95,\dfrac{18}5\right)$ である。
(4) $H_C\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$ から 2 辺へ。$x$ 軸への足は $D_c\left(\dfrac65,0\right)$、直線 $x+y=6$ への足は $\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)+s(1,1)$ で $\dfrac{18}5+2s=6$、$s=\dfrac65$ となる点 $E_c\left(\dfrac{12}5,\dfrac{18}5\right)$ である。
(5) 6 点を通る円。$x$ 軸の上の 2 点 $D_c\left(\dfrac65,0\right)$、$D_b(3,0)$ の垂直二等分線は $x=\dfrac{21}{10}$ である。点 $T\left(\dfrac{21}{10},\dfrac{17}{10}\right)$ をとると
$$
TD_b^2=\left(\frac{30-21}{10}\right)^2+\left(\frac{17}{10}\right)^2=\frac{81+289}{100}=\frac{37}{10},\qquad TF_b^2=\left(\frac{18-21}{10}\right)^2+\left(\frac{36-17}{10}\right)^2=\frac{9+361}{100}=\frac{37}{10}
$$
である。残りの 4 点でも、座標の差が $\left(\pm\dfrac9{10},\pm\dfrac{17}{10}\right)$ か $\left(\pm\dfrac3{10},\pm\dfrac{19}{10}\right)$ か $\left(\pm\dfrac{17}{10},\pm\dfrac9{10}\right)$ か $\left(\pm\dfrac{19}{10},\pm\dfrac3{10}\right)$ の形になり、$T$ からの距離の 2 乗は $\dfrac{37}{10}$ である。6 点は $T$ を中心とする半径 $\sqrt{\dfrac{37}{10}}\approx1.924$ の円の上にある。
$TD_c^2=\left(\dfrac{12-21}{10}\right)^2+\left(\dfrac{17}{10}\right)^2=\dfrac{81+289}{100}$、$TE_c^2=\left(\dfrac{24-21}{10}\right)^2+\left(\dfrac{36-17}{10}\right)^2=\dfrac{9+361}{100}$、$TF_a^2=\left(\dfrac{4-21}{10}\right)^2+\left(\dfrac{8-17}{10}\right)^2=\dfrac{289+81}{100}$、$TE_a^2=\left(\dfrac{40-21}{10}\right)^2+\left(\dfrac{20-17}{10}\right)^2=\dfrac{361+9}{100}$ で、どれも $\dfrac{370}{100}=\dfrac{37}{10}$ である。
3 つの垂線の足 HA、HB、HC(灰色)から残りの 2 辺に下ろした垂線(オレンジ)の足 6 点は、1 つの円の上にある
ex-tay-start の 6 点は 1 つの円の上にあった。この円を Taylor の円(テイラーの円)という。垂線の足を通る円としては 九点円 がよく知られているが、Taylor の円はそれとは別の円である(ex-tay-start の三角形では、九点円の中心は $\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$、半径は $\sqrt{\dfrac52}$ で、どちらも違う)。
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の道具 | この記事の言葉 | 使う場所 |
|---|---|---|
| 直角三角形の相似($AH^2=AF\cdot AB$) | 足を結ぶ線分は反平行線 | lem-tay-feet (1) |
| 余弦と正射影($AH_B=c\cos A$) | 足を結ぶ線分は平行線 | lem-tay-feet (2) |
| 方べきの定理の逆 | 3 辺の上の 6 点が円に乗る条件 | thm-tay-main |
以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とし、頂点の角の大きさを $A$、$B$、$C$ で表す。直線の上の点の位置は符号つきの長さで表す。直線 $AB$ の上の点 $P$ について、$\overline{AP}$ は、$P$ が半直線 $AB$ の上にあれば $AP$、反対側にあれば $-AP$ である。直線の上の 3 点 $X,Y,Z$ について、積 $\overline{XY}\cdot\overline{XZ}$ は、$Y$ と $Z$ が $X$ の同じ側にあれば正、反対側にあれば負である。
Lemoineの円 で証明した 2 つの道具を使う。
$F_1,F_2,D_1$ を通る円の方程式 $f(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n=0$ を 1 本の直線の上に制限すると、その直線の上の符号つきの長さ $s$ について $s^2+\beta s+(\text{定数})$ の形の 2 次式になり、定数項はその点での $f$ の値、つまり方べきである(方べきの定理(高校数学))。直線 $BC$ の上では、1 つの解 $\overline{BD_1}$ と、解の積 $f(B)=\overline{BF_1}\cdot\overline{BF_2}=\overline{BD_1}\cdot\overline{BD_2}$ から、もう 1 つの解が $\overline{BD_2}$ と決まる。直線 $CA$ の上では、$A$ と $C$ での値が条件 (i)・(iii) で決まるので、2 次式は $(s-\overline{AE_1})(s-\overline{AE_2})$ に一致する。詳しくは Lemoineの円 にある。
条件 (i) は、頂点 $A$ を通る 2 辺の上の 4 点 $F_1,F_2,E_1,E_2$ が方べきの定理の逆の条件を満たすことである。条件 (ii)・(iii) も同じである。Lemoineの円 では、1 つの頂点を通る 2 辺の上の 4 点が「平行線 1 本と反平行線 1 本」の端点になっていると、比 $c:b$ と $b:c$ が打ち消し合って、この条件が成り立つことを見た。
直線 $AB$ の上の点 $F_1$、$F_2$ と直線 $AC$ の上の点 $E_1$、$E_2$ について、$F_1E_1$ が $BC$ の反平行線、$F_2E_2$ が $BC$ に平行なら、rem-tay-tools (1) から
$$
\overline{AF_1}\cdot c=\overline{AE_1}\cdot b,\qquad \overline{AF_2}\cdot b=\overline{AE_2}\cdot c
$$
である。2 式の辺どうしを掛けて $bc$ で割ると $\overline{AF_1}\cdot\overline{AF_2}=\overline{AE_1}\cdot\overline{AE_2}$、つまり条件 (i) が成り立つ。
ex-tay-start の (6) で見た平行は偶然ではない。6 点のうち直線 $AB$、$AC$ の上にある 4 点 $F_a$、$F_b$、$E_a$、$E_c$ について、次が成り立つ。
三角形 $ABC$ は直角三角形でないとする。$A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $H_A$、$B$ から直線 $CA$ に下ろした足を $H_B$、$C$ から直線 $AB$ に下ろした足を $H_C$ とする。$H_A$ から直線 $AB$、$AC$ に下ろした足を $F_a$、$E_a$、$H_B$ から直線 $AB$ に下ろした足を $F_b$、$H_C$ から直線 $AC$ に下ろした足を $E_c$ とする。このとき次が成り立つ。
(1) $\overline{AF_a}\cdot c=\overline{AE_a}\cdot b=AH_A^2$ である。特に直線 $F_aE_a$ は $BC$ の反平行線である。
(2) $\overline{AF_b}=c\cos^2A$、$\overline{AE_c}=b\cos^2A$ である。特に直線 $F_bE_c$ は $BC$ に平行である。
要点:点 $X$ から直線 $AB$ に下ろした足 $Y$ は $\overline{AY}=\dfrac{\overrightarrow{AX}\cdot\overrightarrow{AB}}c$ を満たす(正射影)。(1) は $\overrightarrow{AH_A}\perp\overrightarrow{H_AB}$ から $\overrightarrow{AH_A}\cdot\overrightarrow{AB}=AH_A^2$($AC$ でも同じ)となることから出る。(2) は $\overline{AH_B}=c\cos A$ をもう一度 $AB$ に正射影すると $c\cos A\cdot\cos A$ になることから出る。あとは rem-tay-tools (1) の判定を使う。
方針:$A$ を始点とするベクトルで考える。点 $X$ から直線 $AB$ に下ろした足 $Y$ について、$\overline{AY}$ は $\overrightarrow{AX}$ の $\overrightarrow{AB}$ 方向への正射影の符号つきの長さで、$\overline{AY}=\dfrac{\overrightarrow{AX}\cdot\overrightarrow{AB}}c$ である(ベクトルの内積(高校数学))。直線 $AC$ でも同じく $\dfrac{\overrightarrow{AX}\cdot\overrightarrow{AC}}b$ である。
段 1((1) の計算)。$\vec h=\overrightarrow{AH_A}$ とおく。$H_A$ は直線 $BC$ の上にあり、$\overrightarrow{H_AB}$ は直線 $BC$ の向き($H_A=B$ なら零ベクトル)なので、$\vec h\cdot\overrightarrow{H_AB}=0$ である。よって
$$\vec h\cdot\overrightarrow{AB}=\vec h\cdot\left(\vec h+\overrightarrow{H_AB}\right)=\lvert\vec h\rvert^2=AH_A^2$$
である。同じく $\vec h\cdot\overrightarrow{AC}=AH_A^2$ である。したがって
$$\overline{AF_a}=\frac{AH_A^2}c,\qquad \overline{AE_a}=\frac{AH_A^2}b$$
で、$\overline{AF_a}\cdot c=\overline{AE_a}\cdot b=AH_A^2$ である。$AH_A\ne0$ なので $F_a$、$E_a$ は $A$ と異なり、rem-tay-tools (1) により $F_aE_a$ は $BC$ の反平行線である。
段 2((2) の計算)。内積の定義から $\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=bc\cos A$ である。$H_B$ は $B$ から直線 $AC$ に下ろした足なので、正射影の式から $\overline{AH_B}=\dfrac{bc\cos A}b=c\cos A$、つまり $\overrightarrow{AH_B}=\dfrac{c\cos A}b\overrightarrow{AC}$ である。$F_b$ は $H_B$ から直線 $AB$ に下ろした足なので
$$\overline{AF_b}=\frac{\overrightarrow{AH_B}\cdot\overrightarrow{AB}}c=\frac{c\cos A}{bc}\,\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AB}=\frac{c\cos A}{bc}\cdot bc\cos A=c\cos^2A$$
である。$B$ と $C$、$b$ と $c$ の役割を入れかえると $\overline{AE_c}=b\cos^2A$ である。$A$ は直角でないので $\cos^2A\ne0$ で、$F_b$、$E_c$ は $A$ と異なる。$\dfrac{\overline{AF_b}}c=\dfrac{\overline{AE_c}}b=\cos^2A$ なので、rem-tay-tools (1) により $F_bE_c\parallel BC$ である。$\square$
鋭角三角形では、(1) は直角三角形の相似でも分かる。直角三角形 $AH_AB$ の直角の頂点 $H_A$ から斜辺 $AB$ に下ろした足が $F_a$ なので、三角形 $AF_aH_A$ と $AH_AB$ は相似で、$AH_A^2=AF_a\cdot AB$ である。(2) も、$AH_B=c\cos A$ を $AB$ に正射影すると、さらに $\cos A$ 倍されて $c\cos^2A$ になる、と読める。
ex-tay-start の三角形で、$a=6$、$b=4\sqrt2$、$c=2\sqrt5$、$AH_A=4$、$\cos A=\dfrac{\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}}{bc}=\dfrac8{8\sqrt{10}}=\dfrac1{\sqrt{10}}$ である。
(1) $\overline{AF_a}=\dfrac{16}{2\sqrt5}=\dfrac{8}{\sqrt5}$、$\overline{AE_a}=\dfrac{16}{4\sqrt2}=2\sqrt2$ である。
(2) $\overline{AF_b}=2\sqrt5\cdot\dfrac1{10}=\dfrac{\sqrt5}5$、$\overline{AE_c}=4\sqrt2\cdot\dfrac1{10}=\dfrac{2\sqrt2}5$ である。
$AF_a=\sqrt{\left(2-\dfrac25\right)^2+\left(4-\dfrac45\right)^2}=\sqrt{\dfrac{64+256}{25}}=\dfrac8{\sqrt5}$、$AE_a=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2$、$AF_b=\sqrt{\left(\dfrac15\right)^2+\left(\dfrac25\right)^2}=\dfrac{\sqrt5}5$、$AE_c=\sqrt{\left(\dfrac25\right)^2+\left(\dfrac25\right)^2}=\dfrac{2\sqrt2}5$ で、どれも補題の値と一致する。4 点はどれも $A$ から見て $B$、$C$ の側にあるので、符号つきの長さは正である。
頂点 A のまわりで、赤い線分 FaEa は BC の反平行線、緑の線分 FbEc は BC に平行で、4 点 Fa、Fb、Ea、Ec は破線の円の上にある
6 点に名前を付ける。lem-tay-feet の記号に加えて、$H_B$ から直線 $BC$ に下ろした足を $D_b$、$H_C$ から直線 $BC$ に下ろした足を $D_c$ とする。まとめると、
直角三角形でない三角形 $ABC$ で、3 つの垂線の足 $H_A$、$H_B$、$H_C$ のそれぞれから、残りの 2 辺(を含む直線)に下ろした垂線の足 6 点 $F_a,E_a,D_b,F_b,E_c,D_c$ は、1 つの円の上にある。
方針:lem-tay-feet で、各頂点のまわりの 4 点が「反平行線 1 本と平行線 1 本」の端点になることを示す。ex-tay-cancel の計算で rem-tay-tools (2) の 3 つの条件がそろう。
段 1(頂点 $A$)。直線 $AB$ の上には $F_a$、$F_b$、直線 $AC$ の上には $E_a$、$E_c$ がある。lem-tay-feet により、$F_aE_a$ は $BC$ の反平行線、$F_bE_c$ は $BC$ に平行である。ex-tay-cancel により
$$
\overline{AF_a}\cdot\overline{AF_b}=\overline{AE_a}\cdot\overline{AE_c}
$$
である。実際、lem-tay-feet の値を代入すると、両辺とも $AH_A^2\cos^2A$ である。
段 2(頂点 $B$、$C$)。lem-tay-feet を、頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回して頂点 $B$ に使う。$B$ からの足 $H_B$ から直線 $BC$、$BA$ に下ろした足 $D_b$、$F_b$ を結ぶ直線は $CA$ の反平行線である。$C$ からの足 $H_C$ から直線 $BC$ に下ろした足 $D_c$ と、$A$ からの足 $H_A$ から直線 $BA$ に下ろした足 $F_a$ を結ぶ直線は $CA$ に平行である。よって ex-tay-cancel と同じ計算で
$$
\overline{BD_b}\cdot\overline{BD_c}=\overline{BF_b}\cdot\overline{BF_a}
$$
である。もう一度回して頂点 $C$ に使うと、$E_cD_c$ が $AB$ の反平行線、$E_aD_b$ が $AB$ に平行で、
$$
\overline{CE_c}\cdot\overline{CE_a}=\overline{CD_c}\cdot\overline{CD_b}
$$
である。
段 3(補題の仮定)。6 点はどれも頂点と異なる。たとえば lem-tay-feet から $\overline{AF_a}=\dfrac{AH_A^2}c\ne0$ で、$\overline{AF_a}=c$ となるのは $AH_A=c$、つまり $H_A=B$ で角 $B$ が直角のときだけである。$\overline{AF_b}=c\cos^2A$ は $0$ でも $c$ でもない($A$ は直角でなく、$\cos^2A<1$)。ほかの点も頂点の名前を回せば同じである。また、同じ直線の上の 2 点がどの辺でも一致することはない(下の「詳細」)。一致しない 2 点をもつ辺を $AB$ と呼び直せば、$F_1\ne F_2$ の仮定も満たされる。
直線 $AB$ の上の 2 点が一致するのは $\dfrac{AH_A^2}c=c\cos^2A$ のときである。$AH_A=c\sin B$ なので、これは $\sin^2B=\cos^2A$、つまり $\cos^2A+\cos^2B=1$ と同じである。同じく直線 $BC$ の上で一致するのは $\cos^2B+\cos^2C=1$、直線 $CA$ の上で一致するのは $\cos^2C+\cos^2A=1$ のときである。3 つが同時に成り立つと、足して $2$ で割り $\cos^2A+\cos^2B+\cos^2C=\dfrac32$ となり、それぞれの式から $\cos^2A=\cos^2B=\cos^2C=\dfrac12$ となる。すると 3 つの角はどれも $45^\circ$ か $135^\circ$ で、和が $180^\circ$ になる組はない($45^\circ\times3=135^\circ$、$45^\circ\times2+135^\circ=225^\circ$)。
証明の段 1 で、頂点 $A$ のまわりの 4 点が円に乗ったのは、$A$ から出た垂線の足 $H_A$ が作る線分が反平行線に、残りの 2 つの足 $H_B$、$H_C$ が作る線分が平行線になったからである。これは Lemoineの円 で、類似重心を通る平行四辺形の対角線が反平行線に、類似重心を通る直線が平行線になったのと同じ形である。
$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ とする(Fagnanoの問題 と同じ三角形)。$a=14$、$b=15$、$c=13$、$\cos A=\dfrac{33}{65}$ で、垂線の足は $H_A(5,0)$、$H_B\left(\dfrac{224}{25},\dfrac{168}{25}\right)$、$H_C\left(\dfrac{350}{169},\dfrac{840}{169}\right)$ である。$AH_A=12$ なので、lem-tay-feet から
$$
\overline{AF_a}=\frac{144}{13},\qquad \overline{AE_a}=\frac{144}{15}=\frac{48}5,\qquad \overline{AF_b}=13\cdot\left(\frac{33}{65}\right)^2=\frac{1089}{325},\qquad \overline{AE_c}=15\cdot\left(\frac{33}{65}\right)^2=\frac{3267}{845}
$$
で、$\overline{AF_a}\cdot\overline{AF_b}=\overline{AE_a}\cdot\overline{AE_c}=\dfrac{144\cdot1089}{4225}$ である。6 点を通る円の中心は $\left(\dfrac{23303}{4225},\dfrac{134193}{33800}\right)\approx(5.516,\ 3.970)$、半径の 2 乗は $\dfrac{7470369}{270400}$、半径は約 $5.256$ である。
$F_a\left(\dfrac{125}{169},\dfrac{300}{169}\right)$、$E_a\left(\dfrac{269}{25},\dfrac{108}{25}\right)$、$D_b\left(\dfrac{224}{25},0\right)$、$F_b\left(\dfrac{3136}{845},\dfrac{37632}{4225}\right)$、$E_c\left(\dfrac{30926}{4225},\dfrac{37632}{4225}\right)$、$D_c\left(\dfrac{350}{169},0\right)$ である。$F_b$ と $E_c$ の $y$ 座標が等しく、$F_bE_c\parallel BC$ である。6 点が中心から等しい距離にあることは sympy で確かめた。
$A(-1,2)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ とする。$\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}=-5<0$ なので角 $B$ は鈍角である。垂線の足は $H_A(-1,0)$(辺 $CB$ の $B$ の先の延長の上)、$H_B\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$、$H_C(1,-2)$(辺 $AB$ の $B$ の先の延長の上)である。6 点は
$$
F_a\left(-\frac15,\frac25\right),\quad E_a\left(-\frac25,\frac95\right),\quad D_b\left(\frac12,0\right),\quad F_b\left(-\frac12,1\right),\quad E_c(2,1),\quad D_c(1,0)
$$
で、$T\left(\dfrac34,\dfrac54\right)$ からの距離の 2 乗はどれも $\dfrac{13}8$ である。たとえば $TD_b^2=\left(\dfrac14\right)^2+\left(\dfrac54\right)^2=\dfrac{26}{16}=\dfrac{13}8$、$TF_a^2=\left(\dfrac{19}{20}\right)^2+\left(\dfrac{17}{20}\right)^2=\dfrac{650}{400}=\dfrac{13}8$ である。$F_b$ と $E_c$ の $y$ 座標はどちらも $1$ で、$F_bE_c\parallel BC$ である。
頂点 $A$ での条件は、$\cos A=\dfrac{\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}}{bc}=\dfrac{10}{\sqrt5\cdot2\sqrt{10}}=\dfrac1{\sqrt2}$、$AH_A=2$ から、$\overline{AF_a}\cdot\overline{AF_b}=\overline{AE_a}\cdot\overline{AE_c}=AH_A^2\cos^2A=2$ である。垂線の足が延長の上にあっても、証明は符号つきの長さで書いたので、そのまま成り立つ。
13, 14, 15 の三角形の Taylor の円
角 B が鈍角の三角形の Taylor の円。垂線の足 HA、HC は辺の延長の上にある
図 3 は鋭角三角形、図 4 は鈍角三角形の Taylor の円である。図 4 では、垂線の足 $H_A$、$H_C$ が辺の延長(点線)の上にあるが、6 点はやはり 1 つの円の上にある。
角 $A$ が直角なら、$B$ と $C$ から下ろした垂線の足はどちらも $A$ になる($H_B=H_C=A$)。$H_B=A$ から 2 辺に下ろした足は $A$ と $H_A$、$H_C=A$ から下ろした足も $H_A$ と $A$ で、6 点は $A$、$H_A$、$F_a$、$E_a$ の 4 点に重なる。四角形 $AF_aH_AE_a$ は 4 つの角が直角の長方形なので、この 4 点は 1 つの円の上にある。ただし 6 点のうち 2 点が頂点 $A$ に一致するので、rem-tay-tools (2) は使えない。thm-tay-main で直角三角形を除いたのはこのためである。
垂線の足を通る円、平行線と反平行線でできる円を並べる。
| 九点円 | Taylor の円 | Lemoine の円 | |
|---|---|---|---|
| 通る点 | 3 つの垂線の足、3 辺の中点など | 垂線の足から 2 辺に下ろした足 6 点 | $K$ を通る平行線と辺の交点 6 点 |
| 頂点のまわりの 4 点の組 | — | 反平行線 1 本と平行線 1 本 | 反平行線 1 本と平行線 1 本 |
| 中心 | 外心と垂心を結ぶ線分の中点 | 直線 $OK$ の上(rem-tay-center) | $OK$ の中点 |
| ex-tay-start の三角形 | 中心 $\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$、半径 $\approx1.581$ | 中心 $\left(\dfrac{21}{10},\dfrac{17}{10}\right)$、半径 $\approx1.924$ | 中心 $\left(\dfrac{57}{22},\dfrac{29}{22}\right)$、半径 $\approx1.801$ |
青い Taylor の円(中心 T)と、緑の一点鎖線の九点円(中心 N9)は別の円である。九点円は垂線の足と辺の中点(緑の点)を通る
九点円は垂線の足 $H_A$、$H_B$、$H_C$ そのものを通る(九点円)。Taylor の円は、その足からもう 1 回垂線を下ろした点を通る。図 5 のように、2 つの円は別の円である。
thm-tay-main で、垂線を下ろす出発点を垂線の足から別の点に替えると、6 点は同じ円に乗らなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 出発点が垂線の足 | ex-tay-start の三角形で、3 辺の中点から 2 辺に下ろした足 | 6 点が 1 つの円の上にある |
| 出発点が垂線の足 | 同じ三角形で、角の二等分線の足から 2 辺に下ろした足 | 6 点が 1 つの円の上にある |
ex-tay-start の三角形 $A(2,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ で、辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点 $M_A(3,0)$、$M_B(4,2)$、$M_C(1,2)$ から、残りの 2 辺に垂線を下ろす。足は
$$
M_A\text{ から}\ \left(\frac35,\frac65\right),\ \left(\frac92,\frac32\right),\qquad M_B\text{ から}\ (4,0),\ \left(\frac85,\frac{16}5\right),\qquad M_C\text{ から}\ \left(\frac52,\frac72\right),\ (1,0)
$$
である。3 点 $\left(\dfrac35,\dfrac65\right)$、$\left(\dfrac85,\dfrac{16}5\right)$、$(4,0)$ を通る円は $x^2+y^2-\dfrac{26}5x-\dfrac{29}{10}y+\dfrac{24}5=0$ で、$(1,0)$ を左辺に代入すると $1-\dfrac{26}5+\dfrac{24}5=\dfrac35\ne0$ になる。6 点は同じ円の上にない。
理由は、$M_A$ から下ろした 2 つの足を結ぶ線分が $BC$ の反平行線でないことにある。$A$ からの距離は $\dfrac{7\sqrt5}5$ と $\dfrac{5\sqrt2}2$ で、$\dfrac{7\sqrt5}5\cdot c=14$、$\dfrac{5\sqrt2}2\cdot b=20$ と等しくない(rem-tay-tools (1))。lem-tay-feet (1) の等式 $\overline{AF_a}\cdot c=\overline{AE_a}\cdot b=AH_A^2$ は、$H_A$ から $AB$、$AC$ への正射影がどちらも $AH_A^2$ になること、つまり $AH_A$ が $BC$ に垂直であることから出ていた。中点ではこれが成り立たない。
同じ三角形で、各頂点の角の二等分線が向かいの辺と交わる点から、残りの 2 辺に垂線を下ろす。$A$ の二等分線の足から $AB$、$AC$ に下ろした足の $A$ からの距離を $p$、$q$ とすると、二等分線は 2 辺と同じ角をなすので $p=q$ である。反平行線になる条件 $pc=qb$ は $c=b$ となり、$b=4\sqrt2\ne2\sqrt5=c$ なので成り立たない。数値では $pc\approx14.70$、$qb\approx18.60$ である。$A$ の二等分線の足から $AB$ に下ろした足と、$B$ の二等分線の足から $AB$、$BC$ に下ろした足の 3 点を通る円の方程式に、$A$ の二等分線の足から $AC$ に下ろした足を代入すると約 $-0.324$ になり、$0$ にならない。6 点は同じ円の上にない(sympy で計算した)。
辺の中点から下ろした足の 6 点。破線の円は 3 点を通るが、赤い 3 点はこの円の上にない
thm-tay-main は円があることを示したが、中心の位置は求めていない。中心と半径については、次のことが知られている(Wei26、Wei26b。(1) の $\lambda$ は Wei26b の Tucker の円の $\lambda=\frac{KT}{KO}$ で、Wei26 は Taylor の円をこの値の Tucker の円としている。この記事では証明せず、数値で確かめる)。
外心を $O$、外接円の半径を $R$、類似重心を $K$ とする(類似重心)。
(1) Taylor の円の中心 $T$ は直線 $OK$ の上にあり、$\overrightarrow{KT}=\lambda\overrightarrow{KO}$、$\lambda=-\cos A\cos B\cos C$ である。
(2) 半径は $R\sqrt{\sin^2A\sin^2B\sin^2C+\cos^2A\cos^2B\cos^2C}$ である。
(3) 鋭角三角形では、中心 $T$ は垂足三角形 $H_AH_BH_C$ の Spieker 中心(中点三角形の内心。Spieker中心)である。鈍角三角形では一致しない(下の確認を参照)。
ex-tay-start の三角形では、$O(3,1)$、$K\left(\dfrac{24}{11},\dfrac{18}{11}\right)$、$R^2=10$、$\cos A=\dfrac1{\sqrt{10}}$、$\cos B=\dfrac1{\sqrt5}$、$\cos C=\dfrac1{\sqrt2}$ で、$\lambda=-\dfrac1{10}$ である。
$$
K+\lambda(O-K)=\left(\frac{24}{11}-\frac1{10}\cdot\frac9{11},\ \frac{18}{11}+\frac1{10}\cdot\frac7{11}\right)=\left(\frac{231}{110},\frac{187}{110}\right)=\left(\frac{21}{10},\frac{17}{10}\right)
$$
で、ex-tay-start の中心 $T$ と一致する。半径は $\sin^2A\sin^2B\sin^2C=\dfrac9{10}\cdot\dfrac45\cdot\dfrac12=\dfrac{36}{100}$、$\cos^2A\cos^2B\cos^2C=\dfrac1{100}$ から $R^2\cdot\dfrac{37}{100}=\dfrac{37}{10}$ で、これも一致する。
ex-tay-1315 の三角形では $\lambda=-\dfrac{33}{65}\cdot\dfrac5{13}\cdot\dfrac35=-\dfrac{99}{845}$ で、(1)(2) の式が中心 $\left(\dfrac{23303}{4225},\dfrac{134193}{33800}\right)$ と半径の 2 乗 $\dfrac{7470369}{270400}$ を与える。ex-tay-obtuse の鈍角三角形では $\lambda=\dfrac3{10}$($\cos B<0$ なので正)で、中心 $\left(\dfrac34,\dfrac54\right)$ と半径の 2 乗 $\dfrac{13}8$ を与える。(3) は鋭角三角形 3 つで一致した。鈍角三角形 $A(-2,3)$、$B(0,0)$、$C(8,0)$ では、垂足三角形の Spieker 中心は Taylor の円の中心と一致しなかった(どれも sympy で確かめた)。
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